【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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最終回の後に話数を増やしてはいけないというルールは無い!
気がする。もしあったとしたら、その時は潔く開き直る所存です。


番外編
番外編その壱(第三十九話)


 これは、まだ少年が赤子だったころの話。森の中で拾って来た赤子を、生活力皆無の師匠がどうやって育てられたのか、その秘密を公開しようと思う。

 

「子供なんて、餌をやってれば勝手に育つんじゃなかったのか……」

「犬猫じゃあるまいし、そんな認識で子育てしようなんて十年早いわよ」

 

 開幕とんでもない事を言うのは我らの師匠。ベビーベッドを錬成して、その中に拾った赤子を寝かせて覗き込んでおります。ベッドの高さは師匠の身長に合わせてあり、とんでもなく低くなっているのでご安心を。

 

「くっ、こんなに面倒臭いと分かっていたら拾ってこなかったのに……」

「はっはっはっ、何事も経験さね。まあ、あたしは二人も育ててるんだ。三人目だって似たようなもんさ」

 

 止めてください、話が終わってしまいます。面倒臭そうに顔を顰める師匠の肩をバシバシしばいているのは、週に一度家の清掃を任されているハウスキーパーの女性であった。後に少年が振り回される事になる、姦し姉妹の母親である。師匠と並ぶと縦も横も幅広で、まさに肝っ玉かーちゃんと言うべき貫禄があった。師匠が小さすぎるとも言う。

 

「私には子育ての経験など皆無だから、今回ばかりは非常に頼りにしている。その分、給金は弾む」

「ははっ、もらえるもんはありがたく貰っておこうかね。うちにも育ち盛りが二人居るからねぇ」

 

 豪快に笑う女性に対して、師匠の方はフードを目深に被って終始押され気味。頼ってはいるが、彼女は師匠にとって苦手な部類の人間であった。ぐいぐい来るタイプは扱いに困ってしまう。

 

「先生でもヤギの乳を温めるぐらいは出来るだろう? さあさ、覚える事はまだまだたくさんあるんだ、シャキシャキ行くからねぇ!」

「あ、ああ……、お手柔らかに頼む……。必要な道具があるなら幾らでも錬金で作り出せるから、その点は任せておいてくれ」

 

 と、まあ、張り切って挑んだ二人ではあったが、ご存知の通り二人が世話をしているのは中身が二十七歳の乳幼児なのだ。生まれた時から拾ってくれた師匠に一目ぼれしている程度には知能があるこの赤子は、他の乳幼児とは一味も二味も違うのだった。

 

「ずいぶんとまあ、手間のかからない赤ん坊だねぇこの子は。ちっとも泣かないし、おしめの取り換えも教えてくれるし。とんでも無い子だねぇ、こりゃあ」

「こ、これで手間がかからない方なのか? 普通はこれ以上の労力が掛かる物なのか……。恐ろしい生き物だな、赤子と言う物は」

 

 何よりこの赤子はまず、むやみに泣かない。腹が減ったら口元を指差す。オムツ交換はオムツを指差すと言った、至れり尽くせりの協力体制だ。子育てに苦労していたかーちゃんには、まるで拍子抜けと言う物である。

 最も、師匠にとってはそれでも今までした事の無い、ミルクの準備やオムツ交換などの作業はかなりの苦難であったようだが。

 

「ふう……、悪臭や汚物にはそれなりに耐性があると思っていたのだが……。生々しさというか……、これは一段ときつい物だな」

「何言ってるんだい、この子が生きている証なんだよ。生きて元気にしていれば、汚れものが出るのは当り前さね」

 

 流石の貫禄。おかーちゃんは師匠相手でも、ズイズイと自分の意見を押し込んで来る。だが、師匠の方はそれに押されながらも、声を掛けられるのには満更でもない様子だ。自分自身を否定せずに受け入れてくれる人間は、師匠にとってはありがたい物だから。

 

「生きている証……、か。確かにな。生きていてくれないと、困るさ」

 

 元より、生きていてこそ使い道があると言う物。フードの奥で口元だけを歪めているお師匠様は、くっくっくっと邪悪に笑う。昔もこの先も変わらない、師匠の悪役ムーブである。

 しかし、そんなものは肝っ玉かーちゃんには通用しない。

 

「あー、そうそう。そんな風に顔を隠してるのもダメだよ。赤ん坊ってのは、親の顔を見て安心するもんなんだからね。ちゃんと顔も出して、話しかける時はちゃんと優しい言葉で。何時もみたいに偉ぶってたら、赤ん坊が懐いちゃくれないよ!」

「ちょっ、まっ!? 勝手にフードを取るな! わ、私のアイデンティティーだぞ!」

 

 無理矢理フードを下ろさせると、その中からは緑がかった銀髪が現れる。一本の太い三つ編みに結われて、後ろから見るとまるで海老の尻尾の様だ。

 唐突に顕わになった師匠の美しい髪に、将来の少年たる赤子は大喜び。キャッキャッと笑って、無邪気に海老に向かって手を伸ばす。幼女を寄越せと、無邪気な顔の裏にどす黒い欲望を滾らせている。

 

「ほらほら、やっぱりこの子も先生の素顔が好きなんだよ。せっかくなんだから、しっかり抱いて話しかけてあげなきゃ。ほらほら! ほらほらほら!」

「ちょっ、ちょっ、おおっ!? 投げるな!? い、意外とおもっ!? は、話しかけるって言ったって、一体何を言えばいいのか分からんぞ!?」

「何だって良いんだよ、そんなもんは! いいかい、優しくだよ! せいいっぱい優しくしてあげな!」

 

 段々テンションが上がって、かーちゃんはどこぞの暴走娘みたいになってきた。やはり、血は争えないと言う事なのだろう。そんな彼女に背中を押されて、師匠も流石に引けなくなったようだ。

 すーっと一度大きく息を吸ってから、はーっと長く吐き出して心を切り替える。

 

「ん……、こほん。あー……、坊や……。いい子ね、沢山眠って早く大きくなるのよ……」

 

 口調を変えながら出来るだけ優しい声色で語り掛け、抱き上げる赤子を腕の中でそっと撫でる。それは、自らがされたかった事の投影なのかもしれない。親の愛と言う物に餓えていた、師匠自身のあこがれの姿。

 腕の中の赤子は、なんて言うかもう尊死寸前になっていた。満ち足りた笑顔で、ふわぁっと逝ってしまいそうだ。

 

「お、おい。なんかうっとりした顔でふにゃふにゃになったぞ。く、薬か? 薬飲ませた方が良いのか!?」

「おんやまあ、こんな坊やまで骨抜きしちまうとは、先生も罪なお人だねぇ」

「そ、そう言う話なのか!? いやまて、おかしくないか? 乳幼児だぞ!?」

 

 あながち間違っていないから厄介でございます。かーちゃんは冗談で言ったのかも知れないが、赤子の方はもう師匠の魅力で第二の人生が終わりそうです。

 そんなこんなで、ドタバタした子育てはまだまだ始まったばかり。師匠の奮闘はこれからも続いて行きます。

 

 ちなみに、この後赤子に対して実際に様々な薬品が使用されたのだが、これは言うまでも無い既定の事項である。

 




次の話に詰まったのでむしゃくしゃして投下した。
今は反芻している。

日付間違えて夜中に投下しちゃったヤッベ。
まあいいか。

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