無意識な魔法少女になる計画   作:砂霧

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 魔法少女限定チャット

 

 

 森の音楽家クラムベリーさんが魔法の国に入国しました。

 ルーラさんが魔法の国に入国しました。

 たまさんが入国しました。

 スイムスイムさんが魔法の国に入国しました。

 

 森の音楽家クラムベリー:こんばんは。今日はファヴが言っていた、新しい魔法少女がここに来るらしいですね。

 ルーラ:ふんっ。また馬鹿を増やすなんて、ファヴは何考えてるやら。

 

 ユナエルさんが魔法の国に入国しました。

 ミナエルさんが魔法の国に入国しました。

 

 スイムスイム:うん

 ユナエル:それで、そいつの教育係は誰になるのかな~

 ミナエル:どうせだったら私たちがなってやろうよ!

 

 ファヴさんが魔法の国に入国しました。

 

 ユナエル:いいねぇ!お姉ちゃんマジクールじゃん!

 ファヴ:それには及ばないぽん。既にあの子のレクチャー役は決まってるぽん。

 

 トップスピードさんが魔法の国に入国しました。

 

 たま:優しい子だったらいいな~

 トップスピード:おっす! 今さっき過去ログを見てきたけど、次のレクチャー役はリップルにしてくれって言ったが、採用してくれたのか?

 ファヴ:違うぽん。あの子にはリップルより前に頼まれていた彼女に頼んだんだぽん。

 

♰♰♰♰

 

 静寂が私以外居ない夜の公園を支配する。私はファヴに言われ、ここで待つように言われたのだ。

 何でも、私を教育してくれる人が来てくれるとか。どうせだったら友達になれるといいなぁと思いベンチに座りながら足を動かす。

 すると、ざくざくと砂を踏む音が徐々に私に近づいてくる。

 

「……あんたがあいつの言ってた新しい魔法少女かい?」

 

 外国人のような大人の声が聞こえ、そちらを方を見ると、銃をこちらに向けている魔法少女らしい女の人がいた。

 その姿は、この前テレビで見た西部劇のような服装にカウボーイハットを被り、どこかかっこいいと思ってしまう。

 

「そうだけど、貴方がファヴの言っていた――」

 

 私が話そうとした瞬間、彼女は向けていた銃の引き金を引き発砲した。放たれた弾丸はオーラみたいなものを纏わり、その威力を格段に上げていた。

 けれど、毎日弾幕ごっこをしていた私にとって、それは小さな自機狙い弾に近い。

 瞬時に立ち、弾丸の軌道から外れるよう横に移動する。弾丸は右腕を掠るか掠らないかぎりぎりの距離で横を通り過ぎて行った。

 命中すると思っていた彼女は、驚いた顔をするが、またトカレフを今度は顔に向けて笑う。

 

「まさか、私の弾丸を素人が避けるなんて、正直驚いたよ」

 

 けれどと、トカレフを向けたままゆっくりと私に近づく。そんな様子に、私はいまだに状況を理解できなかった。

 

「カラミティ・メアリに逆らうな。煩わせるな。そして……ムカつかせるな!」

 

 瞬間トカレフから弾丸が連続で3発放たれるが、一直線の軌道のそれをジグザクに避けながらカラミティ・メアリの目の前に近づく。

 彼女は、私の動きに驚き隙を見せてしまう。私はその隙を見逃さず、ポケットから銀のナイフを取り出し首元に振るう。

 しかし、カラミティ・メアリは自らに死が近づいていると気づき、間一髪トカレフでナイフを防ぐ。

 

「あれぇ? よく防げたね。私的には殺せたと思ったのに」

「ふん。馬鹿言うんじゃないよ。私は泣く子も黙るカラミティ・メアリ様だぞ。こんなんで殺せると思うなよ!」

 

 トカレフとナイフが交差する中、徐々にナイフが押され始まる。そして、そのまま押し返されるがバックステップで下がりナイフを構える。

 再びカラミティ・メアリはトカレフを構えるが、そんなので私を殺すなんて無理な話だ。

 私は能力を使う。私の能力は一見弱そうに見えるが、本来これは戦闘用ではないのだ。けれど、この様に敵を錯乱させるにはぴったりなのが私の能力。

 

「っ!? どこだ! 隠れてないで出てこい!」

 

 カラミティ・メアリは急に混乱し始めて、あちこちに弾丸を放つ。そんな彼女に、私はゆっくりと近づき、後ろに張り付いて、ささやく。

 

「――もしもし、私メリー。今、――貴方の後ろにいるの!」

 

 声に気づいた彼女は振り向くが、時すでに遅し。持っていたナイフの柄を彼女の後頭部に勢いよく振り下ろす。

 がんっと大きな音が響き、強い衝撃を受けたカラミティ・メアリは何歩か下がる。

 

「うぅ。……ここまで、私をコケにしたのはあんたが初めてだよ。殺さずに、ただ怪我をさせるだけだなんてね」

 

 出血した後頭部を押させ、私を強く睨みつける。そんな彼女に対し、私は笑い返した。

 

「別に殺してもいいけど、今日はそんな気分でもないし、それに――いつでも殺せるからね」

「このっ! 殺す! ブラッディ・メリー!お前は私が絶対殺してやる!」

 

 声を荒げ、歯を噛み締めながら、カラミティ・メアリはこの場を去っていった。

 その場に残ったのは、夜の静寂だけが残っていた。

 

「――おい。そこの貴様、私の配下になれ!」

 

 その静寂を破るかのように、大きな声が響く。

 その声に反応し、後ろを振り向くと、お姫様のような姿をした女の子は、手に持った王冠がついた杖を私に向けていた。

 

♰♰♰♰

 

 夜にここを通る人は少ないだろう。最近、ここらで幽霊騒ぎが起き、みんな気味悪がって夜は外出しないようにしていたのだ。

 そんな幽霊騒ぎの犯人であるが当の本人はそれに気づいておらず、この町で大きい部類に入り、町の人から見捨てられたボロボロの寺――王結寺の中で行燈の光の中それぞれ過ごしていた。

 

「お姉ちゃんこれかな。『胸に目がついた魔法少女』って言うのが」

「これがファヴが言ってた新しい魔法少女か……今頃どんな酷い目に合ってんやら」

 

 中には魔法少女が四人いて、そのうちの二人は天使のような姿をし、それぞれ右翼と左翼が一つしかない魔法少女がスマホを見え合い、それを見ながら不気味に笑い、もう一人の犬のフードを着た魔法少女は、あまりの遅い時間からか柱に背を預け、頭を上下に動かしながらこくこくと寝て、最後に白いスクール水着に蝙蝠の羽が生えた魔法少女は、奥にある台の上でじっと正座をしていた。

 しばらくの間、こんな時間が続いていると、外へとつながる襖が勢いよく開かれる。その音に天使の魔法少女――ユナエルとミナエルは肩をビクッとさせ、フードの魔法少女――たまは、急な音に驚いてしまい立ってしまい、スクミズの魔法少女――スイムスイムはただ帰ってきた人物を見ていた。。

 そんな状況を生み出して帰ってきたお姫様姿の魔法少女――ルーラは、後ろに連れた魔法少女と共に、奥の台へ立ち上がる。

 

「馬鹿ども! 今週入ってきた魔法少女については知っているな」

 

 彼女の言葉に、魔法少女たちは頷く。

 

「その魔法少女――ブラッディ・メリーが、我が配下に加わった。ブラッディ・メリー。我が下僕達に自己紹介をしろ」

 

 黒い大きな帽子を被り、薔薇の刺繍がある薄緑のワンピースを着て、ワンピースに似合わない水色の閉じた瞳が胸に付き、ブラッディ・メリーと呼ばれた少女は、両手でワンピースの裾を持ち上げ、腰を軽く下げる。

 

「初めまして。私はブラッディ・メリー。ルーラちゃんに言われて、今日からみんなと一緒に協力することになりました」

「おい! 私をちゃん付けで呼ぶな!」

「あら、いいじゃない。ルーラちゃんの方が可愛いわ」

 

 そんなメリーにルーラは怒鳴るが、メリーは悪びれる様子もなくユナエル達に近づく。

 

「なっ何、私に何か用」

 

 ユナエル達は警戒するが、メリーは二人の片手を手に取り、一方的に握手をする。

 

「初めまして! ここに来る途中、ルーラちゃんから聞いたけど、ミナエルちゃんとユナエルちゃんだよね。私とお友達になりましょう」

「……えっ。いきなり何なのこいつ」

「別にいいじゃないそんな事。ルーラちゃんの友達なら私の友達でしょ」

 

 ミナエルはメリーの言葉にはぁっ!? と驚き、ユナエルに至ってはだらしなく口が開きっぱなしになっていた。

 そんな事に気にする様子は無く、次はたまの所へ瞬時に動き手を握る。

 

「初めまして! あなたがたまちゃんね!お友達になりましょう!」

「えぇっ!? ……えっと、私でよければ……喜んで!」

 

 たまは、メリーの勢いに飲まれ、つい返事してしまった。たまが友達になってくれると聞き、メリーは嬉しくなり、喜びのあまり寺の中を踊る。

 

「やったぁっ! 友達が三人も増えたっ! 今日は実に素晴らしい日だわ!」

「ちょっと! 寺の中で暴れるんじゃないわよっ!」

 

 踊るメリーに寺は軋み天井からほこりが落ち、それに対しルーラも怒鳴り散らすが、その言葉にメリーは振り向くが、その視線はルーラの隣で正座しているスイムスイムへ向いていた。

 

「あっ! あなたがスイムスイムね!」

 

 メリーとスイムスイムとの間にユナエル達がいたため、メリーは魔法少女の中でも異常なほどの脚力でスイムスイムの前まで飛び越える。幸い天井にぶつからなかったが、着地した反動で寺を支える柱が倒れかける。それに気づいたミナエル達は、急いで柱を支える。

 

「うっ! お、重いぃ」

「お姉ちゃん、しっかりぃ」

「おっ重いよぉ」

 

 何とか魔法少女三人により柱は元に戻るが、柱が倒れかける原因になった本人は無邪気にスイムスイムと握手をする。

 

「っ!? メリーッ! その場で正座しなさい!」

 

 堪忍袋の緒が切れたルーラは魔法を使いハイテンションのメリーを正座させたのだった。

 

♰♰♰♰

 

 メリーの自己紹介が終え、これからルーラはメリーの魔法少女としての教訓を教えようとするが、メリーのとばっちりを受けた三人もなぜか正座させられていた。

 

「さて、お前にはこれから魔法少女としての教訓を私が直々に教えてやろう」

「わぁ! これからみんなでお勉強会をするのね!」

「黙ってろこの馬鹿っ!今、私がしゃべっている途中だろうが!」

 

 はぁいとメリーは反省してないと分かる声を出し、流石にルーラも頭を抱える。

 そんな様子に隣で座っているミナエル達の二人はメリーを睨んでいた。

 

「なんで私まで正座しなきゃいけないさ。これも全てあの新人のせいだ」

「ホントだよねぇ」

 

 しかし、そんな二人に気づかずいまだにルーラと言い争いをしていた。

 

「あ、あのぉ。ちょっといいかな?」

 

 ピーキーエンジェルズの隣で正座をしていたたまが手を上げる。すると、言い争いをしていた直後だったため、鬼のような形相したまま振り向き、たまは小さな悲鳴をあげる。

 

「んっ、何? 言いたいことがあるなら早く言いなさいよ」

「えっえぇっと、……もし、よかったら私がメリーちゃんの教育係に――」

「馬鹿が教えても馬鹿になるだけでしょっ! それぐらい考えときなさいよっ!」

 

 寺にルーラの怒声が響く、それにたまは縮こまってしまった。すると、さっきまで正座していたメリーが二人の間に入る。

 

「ケンカしちゃだめだよ! それならみんなで勉強しよ! そうすれば丸く収まるはず!」

「丸く収まるわけないでしょ! 私はっ! あんたら馬鹿共の頂点なのよ! 私があんたらと一緒に出来るわけないじゃない!」

 

 今日のルーラはとてもイライラしていた。カラミティ・メアリに勝った新人魔法少女を新しい部下として迎えられると思った矢先、実際に話してみると私を苛つかせる言葉を並べるとんでもない馬鹿だったからだ。本来なら、私がこいつに魔法少女としての教訓を教え、私の忠実な部下になるはずなのだが、たまが余計なことを言ったせいでわざわざ作った書類も無駄になり、何よりメリーのさっきの戦っている時と今の時の落差が激しく、精神体と共に疲れ切っていた。

 そんなルーラは、メリーに次々と怒鳴るが徐々に勢いが無くなり、最後には膝をついて息切れをしていた。

 すると、メリーは座り込んだルーラの後ろに立ち、腕を首に回した。疲れ切ったルーラには驚くことさえできなくなり、ただただ呼吸を整えようと酸素を取りこんでいたが、そんなルーラにメリーは微笑んだ。

 

「……別に、そんなの関係ないと私は思うなぁ。私たちは、みんな友達なんだし、友達同士で勉強することなんて恥ずかしいことじゃないんだよ」

 

 その声は、とても柔らかく疲れ切っていた私によく響いた。まるで、――駄目な私を慰めてくれるお母さんのように。

 私がそんな事を感じている間、メリーはピーキーエンジェルズにそうでしょと問いかけ、そんなピーキーエンジェルズもしぶしぶ一緒に勉強することになった。

 

♰♰♰♰

 

 古明地さとりは、スマホのデジタル時計を見ながら八雲紫の到着を待っていた。

 現在の時刻は午後十時五分前。八雲紫が提示した時間は十時と定められていた。さとりは、スマホを見ているとあるアイコンに目が行く。それは、本来私が魔法少女になるために起動させるはずだったソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』だ。私は、自然とそのアイコンにタップしようと指を近づける。

 本来ならこいしが魔法少女になるのではなく、私が危険な役目をするはずだったのだ。しかし、運命のいたずらか、果ては悪魔の罠か、その役目をこいしが請け負うことになってしまった。今回の失敗は、私の責任だ。だから、私も――

 

「何をしているのかしら?」

「っ!?」

 

 ふいに声が聞こえ、スマホから顔をあげる。すると、いつここに来たのか、向かい側のソファに八雲紫が座っていた。紫は、私の今までの行動を見ていたようで、深いため息を吐くと、持っていた扇子を私のスマホに向けると、スキマが現れそこから伸びる紫の手がスマホを取り上げてしまった。

 

「あっ! なっ何をするんですか!」

「それはこっちのセリフよ。いったい何をしようとしていたのかしら」

 

 スキマからスマホを取り出し、画面を見せびらかすようにして私を睨み上げた。すぐさま反論しようとしたが、私がやろうとしていた事は紫にするなとくぎを刺されていたため言い訳できなかった。

 

「あなたにはあなたの役目があると前にお伝えしたはずよ。なのになぜ私の命令を無視するのかしら」

「……私がいけないから。こいしがあんな危険な役目になったのは私の不注意だから」

 

 手に自然と力が入る。爪が食い込み、とても痛いがそれも私への罰だと感じると痛みはあまり感じられなかった。

 紫はさとりの様子を見ながら、先ほどよりも深いため息を吐くと、スマホを操作する。

 

「貴方が勝手に責任を感じるのなら別にどうでもいいわ。けれど――」

 

 操作し終えたスマホをスキマ経由で私の膝の上に落ちる。そこから見えるのは、デスクトップで、特に変化はなかった。

 

「貴方は幻想郷のために動いているのよ。勝手な理由で動かないでもらいたいわ」

「けれどっ!」

 

 すると、紫は口元を歪める。その意味不明な行動に私は背筋が寒くなるのを感じた。

 なんだ。いったいなんなんだ。彼女は、八雲紫は何を考えているんだ。

 紫は、歪めた口を開き、ささやきかけた。

 

「――そもそも、私的にはどちらが魔法少女になっても構わない。そのために、二つのスマホにわざわざある程度進めておいた『魔法少女育成計画』を入れたのだから」

「……えっ」

 

 どういう事。つまり、私は彼女に嵌められたのか。そう考えると、自責の念は消え、代わりに彼女に対する怒りがふつふつとあらわになる。

 

「このっ! 私は、こいしたちに危険が及ばない条件であなたに協力したんですよ! なのにっ! これじゃぁ意味ないじゃないですか!」

「別に騙したりはしてないわよ。本来のあなたたちの体は、河童が厳重に管理しているし、例え今の体が機能しなくなっても、意識が元の体に移るだけよ」

 

 だからと、紫はソファから立ち上がり、私の後ろに回り込むと、耳元にささやいた。

 

「これも小さな犠牲と思いなさい。悪いのは、私の裏を読めなかった貴方達なのだから」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私は立ち上がり、ポケットからダガーを取り出して、後ろの不届きものに向かって振り下ろす。ダガーは私の狙い通り、彼女の首に刺さる。

 ――はずだった。

 ひゅっと風を切る音が聞こえたと思うと、赤い液体が私の目に、むせ返るような匂いが私の鼻に、そして――ソファの上で今も絶えずどくどくと赤い液体を流す私の手だったものが転がっていた。

 ――いったい何が起きたの。

 そう思考する間に、右手を失った腕から血が噴き出し、私の体にかかり強烈な痛みが襲ってきた。

 

 

「っううっぁ!?」

 

 あまりの痛さに甲高い悲鳴を出してしまうが、それに構うことなく、紫を睨もうとするが、既に彼女はいなかった。

 

「ちなみに貴方達の体は、ただの人間の体ではなく手はちゃんと再生するから安心しなさい」

 

 風に乗って来るこの声は、ただただ私の恐怖心をあおるだけだった。

 


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