「ほら、ぴょんって言ってみ?ぴょんって」
「くっ…!」
本部から送られてきた支給品。その中になぜかうさ耳のカチューシャが混ざっていた。
いつぞやに行った『ウサギ狩り作戦』に何か関連があるのかと問い合わせてみたものの、本部からの回答は「嗜好品」。意味はわからないが、嗜好品と言うのであれば楽しむべきなのだろう、と思案しているところにタイミングよく現れたのが。
「わーちゃんならぬ、うーちゃんだな」
「何よそれ!うぅ…なんで私がこんな…」
戦術人形WA2000。
作戦結果の報告に"たまたま"やってきた彼女に、うさ耳を装備するよう指示した。
断っておくが、これを提案したのは副官のスプリングフィールドであって、私ではない。だから露骨に嫌がるWAに命令権を使ってまで付けさせたのは、本来ならば職権濫用も甚だしく決してやってはいけないことなのだが、まぁ仕方のないことなのだ。
だってかわいいもの。
「うふふっ、やっぱり。とても似合っていますよ?わーちゃん」
「スプリングフィールド…アンタね?このバカをそそのかしたのは!」
外したくても外せないそのうさ耳を揺らしながら、副官殿を睨むWA。
その顔は赤く染まっており、わなわなと肩を揺らしている。
「まぁまぁ、いいじゃないですかたまには。指揮官もそう思うでしょう?」
「うんうん、かわいいぞうーちゃん」
「か、かわ…っ!てっ適当なコト言って誤魔化そうったってそうはいかないわよ!」
「語尾はぴょんだぞ。ほら、言ってみ?かわいいから言ってみ?一回でいいから」
「言うわけないでしょ!もう知らない!アンタなんかさっさと◯ねばいいのよ!」
ふんっ!という具合に捨て台詞を吐きながら司令室を出て行くWAの背中を見送ったあと、彼女に忠告しそびれたことを代わりに隣のスプリングフィールドに向けて呟いた。
「…あいつ、命令で外せないってことわかった上で見せびらかしに行ったのか?」
「……かわいいからいいんじゃないでしょうか」
「それもそうか」
機嫌取りに後でチョコアイスでも用意しておくか、と考えながら目の前の書類に視線を戻す。すると何を思ったのか、亜麻色の髪の淑女から耳を疑う言葉が飛び出した。
「んっんん……それで、午後からの模擬演習の内容はいかがいたしますぴょん?」
衝撃が脳天を貫いた。
撃たれたときというのはこんな感じなのだろうか。あろうことかスプリングフィールドは先ほどのウサギに触発されたのか、普段は絶対に言わないであろうことを、普段は絶対に見せないような羞恥にほんのり染まった顔で言い放った。
「………あ、あの、すみません。忘れてください」
「録音するからもう一回言ってくれるか」
「えっ」
手元のメモに『ウサ耳 追加発注 他の種類も』と即座に書き込んだ。
おのれ本部め、たまにはいい仕事をするものだ。