その日、新たなターゲットであるディーチに決まるのと同時にすぐに動き出した。
ディーチが襲撃したバスの乗客のリストを手に入れた石道と共に見つめる。
「これは、面白いね。
ここにいる人々は皆、転生後の記憶がなく一般人と変わりない生活をしていた。
だけど、その能力はどれも強力だ」
「という事は、ディーチはそれを狙って?」
「いや、全員が別々の目的でバスに乗っている。
おそらくは何かに誘導されたと思うが、ディーチが行ったとは考えられない」
「別の幹部がディーチに唆したのだろうな。
あいつは他の幹部に比べて力に対する執着が強かったからな」
ディーチの事を知っているモルナガの話を聞くと共にその場にいる全員が予測する。
「モルナガ、他の幹部の名前は分かるか?」
「悪いが、俺が知る幹部はディーチの他には、自分の美しさに絶対の自信を持っている『マリエ』自分の芸術の為に動く『イシカワ』に商売を行っている『ヘイ』ぐらいだ。
他の奴は警戒心があって、名前は分からない」
「ディーチの名前からして、歴史の人物と何かしら関係はあると思うが」
「情報が少なすぎるねぇ、これは」
「あぁ、だが、我が輩の記憶の中でも一番に警戒している奴が一人だけいる」
「一番に?」
「あぁ、そいつの名前は分からないが見た目の特徴から、我が輩は鴉と呼んでいる」
「鴉って、そのままじゃな」
「あぁ、だが、おそらくは奴は幹部の中でも最強だ。
今でも」
そう言ったモルナガの身体は震えており、彼がどれだけ恐ろしい存在なのか、よく分かる。
「くよくよしても、仕方ない。
今は寝るぞ、もうすぐ0時だ」
「儂としては、まだまだ足りないがな」
「明日も店だからね。
情報の整理はまた今度だ」
その言葉と共にソーマと石道はすぐに寝る準備を行った。
「おい、お前もそろそろ寝ろよ。
明日も速いんだから」
「あぁ」
モルナガからの声に従うように、雨宮もすぐに寝そべった。
目を向けてみると、ゆっくりと時計の針は0時を指した時だった。
鐘の音が鳴り響くと共に、雨宮の意識はどこかへと飛ばされていった。
「ここは」
「ようこそ、我がベルベットルームへ」
「ベルベットルーム?」
不思議と懐かしい言葉に耳を傾けていると、近くに女の子が来ている事に気づく。
「お久しぶりですね、トリックスター」
「トリックスター?」
その言葉に疑問に思うよりも前に、周りを見渡すと、そこはまるで小さなオーケストラなどを行う為に開かれた会場であった。
「なんだか、違うような」
「それはこの世界でのあなたの心によって、新たに変わったからです」
「ここは、お客様の意思によって、様々な形へと変化していきます。
申し遅れました、私の名前はイゴール、このベルベットルームの主を務めております」
「私はラヴェンツァ、ここであなたの案内をする者です」
「案内か」
「それではまずはこのベルベットルームで行える事から説明します。
ここでは、あなたがこれまで得たペルソナ同士を合体させ、新たなペルソナを生み出す事ができます」
その言葉と共に雨宮の中にいたペルソナであるクラーケンと腕だけだがアースガルドが出てくる。
二つのペルソナは楽譜に刻まれる音符へと変わると、部屋にあったピアノへと導かれた。
「楽譜と楽譜が合わさり、新たな音楽が誕生するように、ペルソナとペルソナが合わされば、新たなペルソナが誕生するのです」
その言葉と共にラヴェンツァはピアノを弾くと、そこから音が広がり、現れたのは背中から巨大な光を発するドラゴンだった。
「我が名はグラジエフ、大地を司るその力で、貴殿を導こう」
その言葉と共にグラジエフはゆっくりと雨宮の中へと合わさっていく。
「なんで、俺に?」
「あなた様は、この部屋の客人であります。
そして、同時に私達にとっての恩人でもあります」
「それって、俺の過去の事を」
雨宮はすぐに飛び出しそうになりながら、詰め寄る。
「勿論、ですが、その事についてはお話する事はできません」
「なんで」
「私達はあなたを導く事が役目。
ですが、もしも全てを知ったとしても今のあなたではこれから待ち受ける困難を超える事はできません」
「それだったら、どうやって」
「絆を紡ぐのです」
「絆って」
「既に知っているはずです。
あなたには立花響と結んだ時に芽生えた力を」
「それって、イザナギの事か?」
「あれは力の始まりにすぎません。
あなたがどのように絆を結ぶ事によって、より大きな力を得られるはず」
「かつてのあなたを知る私達だからこそ言える事です。
そして、どうか、忘れないでください。
あなたには絆があるという事を」
その言葉はどこまでも信じており、優しい言葉だった。
「分かった、約束しよう」
「それでは、新たな絆を紡ぐ為にとある場所へと向かってもらいます」
「とある場所?」
その言葉と共に、扉は開かれ、見てみると薄暗い光が灯っていた。
「あそこは死の淵。
今、あの子を助けられるのは、あなただけです」
「死の淵、よく分からないが、行かなきゃいけないという事なんだな」
「左様、こちらを」
その言葉と共に、VSチェンジャーとレッドダイヤルファイターをイゴールから渡される。
「これは」
「現実にある物を摸した物です」
「なんだか、未だに分からない事ばかりだが、とにかく、やるだけやってみるか」
「いってらしゃいませ」
「お気をつけて」
2人の言葉を聞きながら、ゆっくりと出て行くと、そこに広がっていたのは塔だった。
物理法則や、様々な事を無視した不気味な建物は震えながらもゆっくりと進んでいく。
「一体、どういう建物なんだ、ここは?」
疑問に思いながら、進んでいると、足音が聞こえ、すぐに近くの物陰に隠れた。
すると、そこに歩いていたのは泥のように溶けた仮面をつけた怪物だった。
「なんなんだ、あれは?」
そう疑問に思っていると、別の足音が聞こえた。
「今度は、えっ?」
そこを歩いていたのは風鳴翼だった。
その服装は病院服であり、目には正気がなかった。
「何なんだ、ここは?」
そう思っているが、考えるよりも先に、手に持ったVSチェンジャーにレッドダイヤルファイターを装填し、走り出す。
【RED!】 【0・1・0!怪盗チェンジ!】
「怪盗チェンジ」
【ルパンレンジャー!】
その音声と共に、雨宮はルパンレッドへと変身し、翼を連れて行こうとしていた影を打ち抜いた。
「・・っ!
ここは」
「目が覚めた」
「お前はルパンレッド」
未だに完全に目覚めた状態の風鳴ではないが、少しだけ頭を振りながら、見渡す。
「ここは」
「俺にもさっぱりだ。
ただ、一つ、結構やばそうな所だという事だけだな」
「あぁ、それは分かる。
だが、私は、確か、あの時絶唱を使い」
「絶唱?」
何を言っているのか分からず、首を傾けるが、すぐに後ろを振り向くと、そこには先程と似た影の化け物が次々と現れる。
「とにかく逃げるぞ。
ここがどこかなんて、後で考えるぞ」
「了解した」
その言葉と共に、ルパンレッドは走りながら、風鳴を守るようにVSチェンジャーを撃ちながら走っていく。
敵の数は減る事がなく、行った時と同じルートを辿ったはずだが、出口にたどり着けなかった。
「まったく、死の淵だとは言っていたが、確かにこれだったら生き返るのに時間がかかる訳だ」
「死の淵?」
「あぁ、俺にこの場所を案内してくれた奴の言っていた言葉だが、風鳴さん?」
ふと、足を止めた風鳴は目を閉じる。
「確かにそれならば納得かもしれない。
私は死んでしまったんだ」
「何を言っている」
「すまない、ルパンレッド。
私を置いていってくれ。
そうすれば、助かるかもしれない」
「何を言っているんだ?」
風鳴の言葉に納得ができず、ルパンレッドはすぐに詰め寄る。
「私は防人としての使命を果たす為に命に代えた技を行った。
その結果が、死ならば、私は受け入れよう」
そう言った翼は悲しそうな目をしながら、先程までの道を戻ろうとしたが
「受け入れて、何がある。
例えお前が死ぬと決めたとして、俺が戻れる保証はない。
だったら、俺はお前を連れて生き残る手を探す方が良い」
「しかし」
「生きるのを諦めるな」
「えっ?」
「俺は、いつだって自分の為に生きている。
誰かを悲しんでいる姿なんて、見たくないから。
だから、そんな諦めた顔をするな」
そう言ったルパンレッドだが、風鳴は目に涙を溜め始めた。
「えっ、どうしたんだ!?」
「なんでもないっ!
そうだ、私は、諦めたくない!!
奏の為にも」
「奏?」
誰だか知らない人物だと、疑問に思っていると、影は凄い勢いで集まり、そこには大量の黒い腕のみが集まった怪物だった。
「あれは、私を引き摺る為に来たのか」
「させるかよ」
そう言って、ルパンレッドは風鳴の前に出る。
「戦わなければ生き残れない。
だったら、俺は戦うだけだ」
「あぁ、そうだな」
我は汝・・・ 汝は我・・・
汝、ここに新たな契りを得たり・・・
契りは即ち、捕らわれを破らんとする反逆の翼なり
我、”カフ”のペルソナの生誕に祝福の風を得たり、自由へと至る、更なる力の祝福を与えん・・・
「これは」
その言葉と共に、ルパンレッドの手にはVSチェンジャーとは違う、拳銃があった。
その使い方は響の時と同じく自然に頭に思い浮かぶと共に、ゆっくりと自身の頭へと向ける。
「ペルソナ」
その言い慣れた言葉と共に現れたのは、機械と人が合わさったようなペルソナが現れ、その背中には巨大な琴を背負っていた。
「Dreamless dorm ticking clock 」
そのペルソナが現れると共に、翼もまた歌い始めた。
戸惑いを見せた翼だが、自然とその口は動きを止める事なく続ける。
同時に、襲いかかる存在が襲いかかる。
「オルフェウス!」
ペルソナの名前、オルフェウスの名前と共に叫ぶと、手に持った琴を引くと敵を燃やし始めた。
だが、炎の中から現れた腕は、それでも襲いかかるようにオルフェウスを襲い、動きを封じ込める。
「ぐっ」
締め付けられた事で本体であるルパンレッドも来るし始めるが、翼は
「I will burn my dread 」
その声と共にオルフェウスの腹部にあるスピーカーから、発する音によって、敵の拘束を引きちぎり、そのまま手に持った琴を使い、敵を吹き飛ばした。
「オルフェウス!」
その言葉と共に、VSチェンジャーを構えると、銃口に炎が集まり始めると共に
「アギダイン!」
引き金を引く。
業火とも言える炎が敵を燃やし尽くした。
「はぁはぁ、この歌は」
「それは分からない。
だけど、とにかく脱出だ」
「えっどうやってっ!!」
風鳴はルパンレッドの言葉に理解できないようだったが、説明するよりも先に風鳴を抱えると共に走り出す。
「えっどこにって、きゃぁ!」
ルパンレッドが走り抜けた先、そこは先程のオルフェウスと共に放ったアギダインによってできた穴から脱出する。
「そんな無茶な」
「無茶な事でもできるさ。
生きていれば、いくらでもな」
その言葉と共に風と共に地面へと落ちていく。
もう片方の手から出したワイヤーでスピードを緩めながら、ゆっくりと地面へと降りていく。
「はぁはぁ、本当に無事にたどり着けた」
「まったくな」
そう言っていると、ふと風鳴の足下が光り始めた。
「これは」
「あぁ、なんとなく分かる。
私は元の世界へと戻れる気がする」
「えっ?」
一人、納得するように頷く。
「感謝する、ルパンレッド。
私は」
その言葉続かず、その姿を消した。
「今のは」
「元の世界へと戻っていったんです」
その言葉と共に出てきたのはラヴェンツァが現れる。
「ここはタルタロス。
その昔、あなたと同じペルソナ使いによって、封じられた死の塔です。
生死の曖昧なこの世界において、死を象徴する為にできあがった場所です」
「死の塔、それって、つまりは風鳴さんは」
「今は大丈夫です。
魂は現実の身体へと無事に戻りました」
「それだったら、良かったかな」
そう言いながら、タルタロスを見つめる。
「時間です。
現実のあなたに戻る時間です」
「なぁ、ラヴェンツァ。
最後に質問なんだけどさ」
「なんですか?」
「俺があの力を目覚めた時に聞こえたカフとは一体」
「この世界でのあなたの絆の名です。
生命の樹に記された絆が、きっとあなたを導いてくれるでしょう」
その言葉と共に、ゆっくりと周りの景色が消え、目を覚ますと、そこに飾られている時計の時刻を見てみると、時計の針は僅かに1分程しか経っていなかった。
「ベルベットルームか」
1時間程の体験のはずが、1分しか経っていない事に疑問に思いながらも、身体に来る疲労と共に再び眠りについた。