光の巨人のいない世界で怪獣娘達との話   作:クォーターシェル

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16話 帰ってきた彗星怪獣

ただいま部屋で勉強中だ。机に向かって教科書と格闘している。

そんな時、後ろの方から物音がした。また『門』の方から誰かきたのだろう。

誰かなと後ろを振り返ろうとすると、

 

「動くな」

 

と知らない声がした。一体だれが来たんだ?と思っていると、

 

「いいか、そのままゆっくりと後ろを向け」

 

と言われたのでその通りにする。後ろを振り返ってみると、赤髪に黒い目、更にパッドなのか大きく盛り上がっている肩をした女性が立っていた。このシルエット…もしかしてあの怪獣か?

 

「ジャミラ?」

 

「なんでアタシの名を知ってんだ?まあいい。お前サツキだろ?」

 

どうやら彼女はあの真似されるのと人間だったことで有名な怪獣ジャミラらしい。

 

「そうですけど」

 

「なら話は早い。おい、アタシの言うことを聞け。さもないと――」

 

「さもないと、なんですか?」

 

いつの間にかジャミラの背後にいたゼットンがジャミラの肩の部分を掴んでいた。

 

「なっお前誰…いてててててててててててててててててて!!」

 

「ちょっ、ゼットンどれだけ力込めてるの!?可哀想だから止めてあげてよ!」

 

「こいつはサツキを害そうとしました。見過ごすわけにはいきません」

 

いや、さもないととか言ってたけどそれにしてもやり過ぎな気がする。自分を心配してくれているのは嬉しいけど。

 

「いいから放してあげてよゼットン」

 

「…分かりました。サツキに免じて放しますが、二度はありませんよ?もしまたサツキを害そうとした場合は――」

 

とゼットンはジャミラに対して冷たい目を向ける。こういう時のゼットンは滅多にみないけど恐ろしい。

 

「分かった、分かったから放してくれよ!」

 

ジャミラがそういうとゼットンは手を掴んでいた個所からゆっくりと放した。

 

「あ~、痛てえ。引きちぎられるかと思った。クッソ!まさかこんないかれた用心棒がいるとは思ってなかったよ…」

 

悪態をつくジャミラに自分は質問することにした。

 

「あの、なんで俺を脅すような真似をしたんです?」

 

「あ?答える義務があるかよ?」

 

「…」

 

ゼットンが無言でジャミラの両肩部分に手を添える。

 

「わ、分かったから穏便に済まそう!」

 

「じゃあさっきの質問に答えて欲しいんですけど」

 

「じゃあ話すよ」

 

ジャミラが言うには、自由に出入りできる『門』の噂を聞きつけ、手軽に地球に郷帰りできると踏んだジャミラはこっちに来て『門』の番人のような少年、つまり自分のことだがを脅してある場所に行こうとしていたのだ。そのある場所というのは、

 

「――生まれ故郷だよ」

 

真面目腐った顔でジャミラは言った。

 

「生まれ故郷、ですか」

 

「そう、●●●●って国の×××という町だ。もう怪獣やってる期間の方が長いし大分記憶が摩耗しちまってるんだが、そこで生まれ育ったことは覚えてる」

 

「そうですか。態々故郷に帰る為にこんな事を」

 

「まあ計画と言うにはお粗末だったがアタシにとってはまたとないチャンスだったんだ。頼むから見逃してくれないか?」

 

「うーん…」

 

どうしよう。別に実害を被った訳じゃないんだし、このまま見逃してもいいけど、放っておくと何かしそうな気もするからなあ…

 

「…サツキ」

 

「ん?なにゼットン」

 

「こいつの言うことを聞く義理は我々にはありません。早急に元居た場所に戻って貰いましょう」

 

とゼットンは言う。しかし、それをしたところで根本的な解決にはならない気もするんだよね。『門』の向こうに帰したところで結局は向こう側からやってくるのを自分は止めることはできないのだ。

 

「あっそうだ」

 

いいことを思いついた。うまくいけばジャミラに穏便に帰ってもらうことができるかもしれない。

 

「ジャミラさん、ここ日本ですけどどうやって●●●●に行くつもりだったんですか?」

 

「それは深く考えてなかったな…適当に船なりに潜り込んで海路を何とかしてあとは徒歩で行くつもりだったよ」

 

それはいくら怪獣だからって余りにも無謀ではないだろうか?身分証明書すらないだろうし絶対どこかでトラブりそうだ。

 

「その、もしかしたらですけど、直ぐに●●●●に行ける方法を思いつきました」

 

「何だと!?詳しく教えろ」

 

「教えますけど、その前に約束してください。一つは生家までいったら、大人しく向こう側に戻ってもらうこと。もう一つは道中他の人に迷惑をかける真似はしないこと。最後に自分も同行することです。これを守るなら生まれ故郷に行くのを手伝います」

 

「おお!分かった!約束するよ!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

●●●●国、×××

 

自分は今世で初めて異国の土を踏んでいた。

少し肌寒さを感じる。もうちょっと厚着でも良かったかもしれない。

自分たちが訪れた×××という町は郊外にあるらしく、自然が多めの場所だ。

 

現在のメンバーは4人。自分とジャミラとゼットンとバキシムだ。

なぜ自分達が短時間でここに来れたのかというと、バキシムの異次元通路を通ってきたのだ。バキシムに頼んだら、彼女は快く引き受けてくれた。曰く「貸し一つだね」だそうだ。

後で彼女に何かプレゼントを贈った方がいいのだろうが、何がいいだろう。元は芋虫らしいし、桑の葉とか?それとも普通に装飾品でも贈った方がいいかな?

 

話を戻す。この町のどこかにジャミラの生家があるのだろうか?

 

「ジャミラさんの話が正しいならここがジャミラさんの生まれ故郷らしいけど…どうなんです?」

 

とジャミラに問う。

 

「ああ、随分近代的になっちまってるけど、確かにこの町だったよ」

 

「家がどこだったかも分かりますか?」

 

「町の構造自体は変わってないみたいだから、取りあえず駅の方に行ってからだな」

 

まあ確かに駅などは探す際に目印になるだろう。

 

「それにしても町を散策するって新鮮な気分になるよねー」

 

とバキシム。あれかな。元々デカかったからとかそんな理由なのかな。

 

「俺も初めて訪れる外国だから新鮮かな。ゼットンは?」

 

「…私にとっても今までになかった体験です」

 

あいかわらず表情が乏しいが数年一緒に居た身としては、結構嬉しそうだと思う。

 

そんなこんな一行は駅に到着した。駅のすぐそばには、ロータリや噴水のある広場がある。

キョロキョロと辺りを見回すジャミラの再び質問する。

 

「どうですか?家の位置は分かりそうですか?」

 

「ああ…前は噴水とかは無かったが確かに…とすると方向は……」

 

と言っている。あと少しで見つかりそうかな?

と、そんな時。

 

「ねえ、せっかくだし記念写真撮ってこうよ!」

 

とバキシムが提案した。

 

「記念写真か…まあ海外に来てるわけだし撮っていこうかな?ジャミラさん。少し寄り道してもいいですかね?」

 

「ん?まあ、さほど急いでるわけでもないし構わんが…」

 

「じゃあ決まりだねぇ。ゼットンさんも一緒に写ろ」

 

という訳で自分達は噴水の前で記念撮影をすることにした。

バキシムが持っていた携帯で代わりばんこに撮っていく。

 

「おいアタシもか?噴水に余り近づきたくないんだが…」

 

あっそういえばジャミラって水が弱点なんだっけ。

 

「濡れたくないんですか?」

 

「まあ、今はどうだか分らんが身体が本能的に拒否するんだよ…」

 

それは難儀だなあ。元々人間なのにそれってかなり辛そうだ。

 

「そんなに噴水に近づくわけじゃないし大丈夫だよ。なんならジャミラさんがシャッター押す係なら飛沫もかからないって!」

 

「なんでアタシがシャッター押すことになってんだ?」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

記念撮影を終えた自分達はジャミラの生家の方向へ向かっていた。

自分達のちょっとした旅もあと少しだろう。

 

「ねえねえ、ジャミラさん家ってどんなところだったの?」

 

「まあ、普通っちゃ普通の裕福な家庭だったよ。クリスマスプレゼントに望遠鏡を貰ったっけ」

 

とバキシムとジャミラが話している。道中ジャミラはこの近所で友達と追いかけっこしたことだの、少し遠出して天文台で星座を見せてもらったことだのを懐かしそうに話してくれた。いよいよ帰るときが近づいてきて気分が高揚しているのだろうか。初めて会った時よりも表情が柔らかくなってきている気がする。

 

「楽しそうですねジャミラさん」

 

「当たり前だ。ずっと帰りたかった家に帰れるときが来たんだからな。ほらそこの角を曲がればすぐそこだ」

 

と、その角を曲がってみると――

 

「なっ!?」

 

「あっ」

 

「あら」

 

「…」

 

――そこには真新しいマンションが建っていた。

これは、つまり、そういうことだろう。

そもそもこの世界はジャミラがいた地球ではない。「故郷は地球」は架空の話でありジャミラがいたとしてもこのジャミラとは別の存在だろう。それはジャミラも承知だったろうが、現実は更に残酷だった。嘗ての宇宙飛行士の生家は既に無くなり代わりにマンションが建築されていた。

 

「………」

 

その場に立ち尽くすジャミラにどうにもかける言葉が見つからなかった。

 

それから数分ほど経っただろうか、不意にジャミラが口を開いた。

 

「なあ…このビルぶっ壊してもいいか?」

 

「ちょっ、ジャミラさん!?」

 

焦る自分。

 

「……冗談だよ」

 

「はいはい。話題変えよ~そろそろご飯にしない?」

 

とバキシムが強引に話を変えようとする。

 

「バキシム、流石にそれは…」

 

「いや…いいんだ。心のどこかでこんなことになるんじゃないんかとは思ってたんだ…」

 

「ジャミラさん…」

 

「正直なところ久しぶりに此処までこれただけ儲けもんだ。普通に青い空の下地球の地面を踏んでるだけでな。……今日はありがとうな、お前ら」

 

「これで話は終わりの様ですね。帰りましょうサツキ」

 

「ちょゼットンもう少し空気よんでよ」

 

「じゃあさあ。このままこのメンバーでどっか食べに行こうよー今回は私が奢るからさ」

 

「バキシムとかいったか…悪いなじゃあこの町のレストランに案内するよ」

 

なにはともあれジャミラが調子を取り戻したのは良かった。それならレストランに向かうとしよう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「あとどれくらいで着きますか?」

 

「ああ、もうすぐそこだ。小さいが子供の頃からのなじみでな、味は保証するぞ」

 

と向かった先には、有料駐車場があった。

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「クソッ!ここもかよ!!」

 

結局その後家にジャミラを招待することになった。

 




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