バードンに拉致られかけてから数週間後、今年も残り少ない時期となっていた。
外はすっかり冬の様相を呈している。一部の生き物は冬ごもり・冬眠を始める時期だが人間にはそんなものは余り関係ない。おそらく人になった怪獣達にとっても。
「寒い…」
「でしょうね」
近所の公園にて、ゴモラと遊んでいたらゴモラが寒がり出した。無理もないあんな薄着じゃ普通の人間なら風邪を引く。ちなみに自分はちゃんと冬物の服をきている。防寒対策はばっちりだ。
「さーむーいー!」
「だから遊びに行く前にいったよね?ゴモラも防寒着着てかない?って」
「だってあの時はそこまで寒くなかったもん!」
まあ確かに出かける頃は晴れていてそこまでの寒さじゃなかったけどさ。
「あーあー故郷は何時でも暖かかった…」
しょうがない。今着てる服のどれかを貸そうか。多少サイズは合わなくてもそこには目をつぶってもらおう。ゴモラに話しかけようとしたその時、
「あっいいこと思いついた!」
「どうしたんです。ゴモラさん。」
「暖かい子を向こうから呼び出そうよ!」
「えっ向こうから?」
この場合の向こうは恐らく怪獣墓場のことだろう。
でもまさかそうほいほいと怪獣を呼び出す訳には…
「服なら自分が貸しますから。いいんじゃないですか?」
「それだとサツキが寒くなっちゃうでしょ」「暖かくなれる子を呼んでみようよ」
うーん彼女は言い出したら聞かない所があるし呼ぶしかないの、か?
「はやくしようよー!」
「分かりました。分かりましたから。」
かくして自分は『門』と交信する。最初灼熱系の怪獣が思い浮かんだけど、危なそうなのでパス。ほどほどに暖かそうな怪獣が来ないか念じてみる。
◇ ◇ ◇
念じて1分ほどだろうか。『門』から人影が二つ現れた。一人はファーコートのような物を身にまとった褐色の長身の女性で、もう一人は同じく褐色の肌でなにやら大きな被り物をしている女性だ。あの被り物、どっかでみたような…。そう考えていると、
「うわぁー♪モフモフだぁー!」
ゴモラがファーコートの女性の方に抱き着いた。
「うわっ!なに!?」
「ちょっ誰よ!?」
と二人の女性は困惑している。自分も焦りながら
「ちょっとゴモラちゃん、初対面の相手に失礼だよ!」
と注意するが、
「えーやだよー。せっかくモフモフで暖かいんだもん」
と離れる気配がない。これはどうしようかと思っていると
「あの…何か知りませんがこのままじゃ動きにくいんで離れてください…」
とファーコートの女性はゴモラを引きはがそうとする。しかしゴモラはそれに応じずしがみ付いたままだ。
「ゴモラちゃん、本当に止めたほうがいいですよ。」
そういいながら自分もゴモラを放そうとしたが離れない。しかし、その時ファーコートに少し触れたのだが、なるほど…モフモフしている。
「もういい加減にお姉ちゃんから離れなさいよ!」
被り物をしている女性の方が業を煮やしたのか、ゴモラに近づく。何をするのかとみていると、
「吸引アトラクタースパウト!」
そう言うと女性のベルトに付いていた五角形の装飾が開いたかと思うと、そこから吸い込むような風が発生した。
「ゴモッ!?」
ゴモラの身体はファーコートの女性の身体から離れ、被り物の女性の腹部にくっ付いた。
今の技は間違いない。ウルトラシリーズでも有名な怪獣ベムスターの技だ。というか被り物がベムスターの姿そのものである。ファーコートの女性の方もよくよく見ると、ベムスターらしき意匠が見受けられ、この二人の正体はどうやらベムスターらしい。
◇ ◇ ◇
「本当にすみませんでした。」
「ゴモォ…」
と自分とゴモラは二人のベムスターに頭を下げる。ちなみにゴモラの方は正座させている。
「別に…そこまで謝らなくてもいいよ。最初はびっくりしたけど訳が分かったらまあいいかな…って」
「お姉ちゃんは甘すぎるよー。仮にも一族のエリートなんだしもっと決然とした態度で臨んでもいいんだよ」
「でも、この子は悪気があったわけじゃなかったし、ちゃんと謝ってくれてるしいいじゃない」
この寛容な態度でこちらを許してくれたのはファーコート改め改造ベムスター。ウルトラマンタロウにてヤプールに改造されたベムスターで、その縁もあって超獣たちとも知り合いでベムスター一族の中でもエリート扱いされているらしい。
「そこまで言うならしょうがないけど…ゴモラとか言ったわね。これからはお姉ちゃんに軽々しく抱き着くような真似は止めなさい」
こちらのは被り物改めベムスター。改造ベムスターの妹で一族の中でもポピュラーなタイプのベムスターだそうだ。
なにはともあれ場が収まったみたいでよかった。一歩間違えれば公園を舞台に大怪獣バトルが勃発してたもしれないし。
「寒い…」
正座していたゴモラは相変わらず寒そうだ。
「やっぱ俺のを貸しますよ。」
とゴモラに自分の上着を掛ける。少し自分が寒くなったがゴモラがトラブルを起こすよりはマシだろう。
「ありがとうサツキ…」
「しかし変わってますね。怪獣相手にそんなに優しくしてくれる人間なんて」
「そうですか?まあ襲ってくるならまだしもちゃんと話も通じる相手ですしね。あっそういえばお詫びといってはなんなんですけど、家に行ってお茶とお菓子でもいただきませんか?」
「えっいいの?」
「じゃあいただきましょうか。でも我々としてはあれの方が…」
あれってもしかして…
◇ ◇ ◇
「ゴモ~食った食った~」
「人間の食べるものは余り経験がないけどいけるね」
「うん。変な味だけど美味しいねー」
家に帰った後、自分達はお茶とお菓子を飲み食いしていた。
何度も家を訪れているゴモラはともかくベムスター姉妹も最初は着心地なかったが落ち着いてきた。
「ああ、結構長居してしまったけどそろそろ帰らなきゃ私たち」
「あーそうだねー他の人間がくるとヤバいかもしれないし」
そうかもう帰るのか。だったら。
「それじゃあこれ少ないですけどお土産です。」
と渡したものは。
「なにこれ風船?ん、この匂いは…」
「ヘリウムガスが詰まってます」
「えー!いいの貰って!」
「これもお詫びです。できたらまた俺たちと仲良くしてください」
「ありがとうサツキくん。人間に爆弾じゃないプレゼントを貰ったなんて初めてよ」
「サツキー。私にも何か頂戴よー」
「ゴモラには後で一緒に夕飯ご馳走するから」
この風船はピグモンから譲ってもらったもので、ベムスターの主食の一つがヘリウムであることを思い出しからこれを実行したのだ。因みにピグモンにはお返しとしてこんど一緒に家族の外食の回転寿司に誘っている。
◇ ◇ ◇
そしてベムスター姉妹は『門』の向こうに帰っていった。
その後ゴモラは
「そういえばサツキはなんで私たちに優しくしてくれるの?」
と聞いてきた。自分は
「怪獣と友達になってみたかったからかな」
と答えた。怪獣との共存を夢見たあの人やあの人のようにはなれないかもしれないけど、これからも出来る限り自分も個性豊かで憧れたこともある怪獣達と仲良くなりたいな。
◇ ◇ ◇
「あ~♡夏服のサツキ君とお別れするのは残念で寂しかったけど、冬服のサツキ君もいいじゃない~♡」
カシャカシャカシャ
公式の通常ベムスターのデザインはツインテールみたいにリファインしてくれればな~なんて。
駄文閲覧ありがとうございました。
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