今回登場するゲームはモデルはありますが実在してません。
私には姉がいる。姉はお人好しだ。
「…………」
なぜ姉はあんなにも優しいのか?
「……」
私は時々考えるが、答えが出たことはない。ただ一つ言えることは、姉の優しさに付け込んでいる奴は大勢いるということだ。
例えば、今この瞬間も……。
「あら? どうしたの?」
ある人物に貰ったゲーム機をやっていると、姉が声を掛けてきた。
「なにやってるの?」
「この間地球で貰ったゲームだよ」
姉は私の手元を覗き込んでくる。その顔を見ると――
「……」
化粧をしていた。一体いつの間にそんなものしてきたんだろう。怪獣墓場にはそんなもの無いというのに。
「…なんで化粧なんてしているの」
「えーっとね」
姉は少し恥ずかしそうな顔をして言った。
「地球に遊びに行ったらサツキの知り合いの印南って人に会って、それで話していたらいつの間にかそういう話になっちゃって…どう?似合う?」
「別にー」
「あ、そう……」
姉はなんだかガッカリしたようだ。しかしすぐに気を取り直したようでまた話しかけてくる。
「ねえ知ってた? 地球人ってみんなこんな感じらしいよ」
「ふうん」
「地球の女の子ってみんなこうやってメイクするんだって」
「へぇ」
「男の子の方もこういう格好をするらしくてさ」
「へぇ」
「でもやっぱりサツキが一番可愛いわよね!」
「……」
「あれ? どしたの?」
「なんでもない」
「そっかぁ~」
姉は最近どうも地球で知り合ったサツキという男の子のことが気になっているらしい。
それを自覚しているのかしてないのか、私としては余り喜ばしくない。別に姉が取られるのが嫌とかそういう訳ではなく、人間とだなんて絶対上手くいくわけが無いと思うのだ。
私たちベムスターはどうも人間と相性が良くない。過去に何度も人間と戦ったことがあるし、その結末は大抵どちらが死ぬかである。
とにかくだ、私としては人間とはあまり関わり合いになりたくないのだが、姉はちょくちょく地球に遊びに行ってしまう。本当に困ったものだ。それもサツキの存在もそうだが、これまた地球で知り合ったゴモラに誘われている。私は正直ゴモラも好きではない。あの能天気にずけずけとこちらの領域に入ってくるのがどうにも気に入らないのだ。
今日もまた姉は出かけていく。行き先はいつも通り、あの少年のところだろう。姉はここ最近ずっと楽しそうだ。
「いってきまーす」
「いってらっしゃい」
姉を見送る。やはり嬉しい気持ちなど欠片もない。むしろ心配の方が勝ってくる。………………
「おーい」
そんな時私に呼びかける者がいた。あれは…ナックル星人か。
これまたあまり好ましくない客が来た。ナックル星人はこの怪獣墓場の住人の一人で確か今は連合だったか同盟だったかに所属していたはずである。私はこのナックル星人があまり好きではない。あまり多くは語らないが、過去にこいつに手を貸したことがあったのだが、結局のところひどい目にあったというのは覚えている。こいつは自分の為に平気で他者の命を軽んじることができる奴である。
私は無視することにした。相手などしていられない。
「おい! 聞こえてるんだろ!?」
うるさい奴だ。私の神経を逆撫でしようとしているに違いない。
「おいコラァッ!! ちょっと待て!!」
しつこいな。仕方がないから振り返ることにした。
「なんですか?」
「この前の返事を聞かせてもらいたいんだが?」
「ああ、部下になれってあれですね」
そうだ、こいつは私たち姉妹に部下にならないか?と言ってきた。その時はなんかかんやあって保留にしたのだが、
「普通に断るわよ」
「なんでだ?部下になって組織の一員になればお前たちも美味い飯が食えるだろ?」
「それが信用できないのよ。そういって使い捨てられたらたまったもんじゃないわ」
「大丈夫だって」
全くもって信用ならない言葉だが、一応聞いておくことにする。
「じゃあ聞くけど、あなたたち怪獣墓場の組織ってどんなことやってるの?」
「それは秘密だ」
やはりかと思った。
「それならいいです」
「そう言うなって」
「しつこくしないでください」
「分かったわかった。じゃあこうしよう。部下になったら前払いでヘリウムをタンク3つ分はどうだ?」
「なんですって……?」
「嘘はつかない。なんなら水素や窒素でもいいぞ。おい、ブラックキング」
「はっ」
彼女の腹心である怪獣ブラックキングがガスが入っているであろうタンクを持って来た。
「うーん」
さて、どうしようか?姉に相談?それは悪手だろう。お人好しの姉のことだ、この好条件にホイホイつられてしまうだろう。
「やっぱりもう少し返事を待たせてもいいですかね?」
「…まあいいだろう。これはお前だけではなく改造された方のベムスターにも関わることだ。しかし永くは待てないからな。行くぞブラックキング」
「はっ」
そう言ってナックル星人とブラックキングは去っていった。とりあえずこの場は切り抜けられたがさて、どうしよう?あのナックル星人のことだ、部下になったら危険な件でこき使われるかもしれない。しかし、この怪獣墓場に来てから久しくガスの類にはありついていないし…
と、そこまで考えてから最近少量であるが、ガスを貰ったことを思い出す。
「はあ…ダメ元で行ってみるか」
私は姉の様に地球に行くことを決意した。
◇ ◇ ◇
「勧誘…ですか?」
「そう、断り切れなくてどうしようかって、悩んでいるのよ」
人間の民家の居間、そこに私とサツキは座っていた。
テーブルの上にはお茶菓子があり、それをつまみながら話している。
「それでどうしたら良いと思う?」
「えっと、その話は断るべきだと思うのですが……」
「やっぱりそうよね。でも断ったらただではすまなそうな気がするのよね」
「……」
無言になる少年。そりゃそうだ。下手すると命に関わる話をされているのだ。
「その…改ベムさんにはそのことは相談したんですか?」
「お姉ちゃんにはしてないのよ。もししてもよく考えずに首を縦に振っちゃうと思って」
「そうですか…でもなんで俺にそんな話を?」
「だから、その……」
「?」
「私達を保護してくれないかしら」
「えっ?なんですって!?保護!?」
サツキは驚いたような顔をしている。急な話だし当然か。でも私達もここで引くわけにはいかない。
「サツキの所には怪獣が大勢いるでしょ?サツキの所に住まわせてくれたら、ナックル星人も迂闊に手出しができないと思って」
「いや…居るって言っても皆勝手に遊びに来ているだけだし…急に住まわせてくれって言っても」
「やっぱそうだよね…」
困ったことになった。他に頼れる存在と言えば、姉に縁のあるあの怪獣墓場のヤプールの連中くらいしか思い浮かばないが、あいつらは信用できない。
「悪いんだけど、なんとか説得してくれないかしら?この通り!
」
私は頭を下げた。
「ちょっ!?そんなことをされても!そもそもどうして俺に頼むんですか?」
「それは……あなたが一番頼みやすいから」
嘘ではない。
「いや、そういう問題じゃなくって」
「お願いします!!」
再度、今度は深く頭を垂れる。
「はあ……分かりました。やってみます。でもその前に試したいことが…」
「本当!!ありがとうね」
試したいこと?なんだろう。
◇ ◇ ◇
それから数日が経ち、私達は再び卓を囲んでいた。しかし今回は私とサツキの二人だけではない。その場にはナックル星人とブラックキングもいた。彼女らはサツキが呼び出したのだ。
「それで、どうだったんだ?結論は出たのか?」
「そのことなんですが」
サツキがナックル星人に応対する。
「ん?なんだ交渉の席を設けただけじゃないのか?」
「彼女は貴女方の部下になる気はありません。彼女のお姉さんも同様です」
ナックル星人は顔をしかめる。
「ほう。じゃあ交渉は決裂ということか?」
「いえ、ナックル星人さん。ゲームの類は好きですか?」
「うん?まあカードゲームくらいなら嗜むが……」
「そうですか。実は最近新しくボードゲームを買ったんですけど、ベムスターさん達が貴女の部下になるかならないかゲームの勝敗で決めませんか?もちろんナックル星人さん達にもメリットは付けますよ」
「…メリットは?」
「ナックル星人さんが勝ったら…俺がナックル星人さんの言うことを一つ聞くと言うことでどうでしょうか」
「ほう……」
サツキは私達だけじゃなく、色んな怪獣とコネクションのある存在だ。ナックル星人的にももしかしたら私達を部下にするよりも大きなメリットがあるだろう。ナックル星人は少し考え込む素振りをすると、
「いいだろう。その勝負に乗ってやる」
と、言った。
◇ ◇ ◇
「――というゲームです。ではナックル星人さん、貴女はどちらのチームを選びますか?」
サツキは出してきたボードゲームは、あのウルトラマンや私達怪獣を題材にしたゲームだった。ルールの方だがプレイヤーはウルトラマンチームと怪獣チームに分れて対戦し、怪獣チームはボード上の施設を全て破壊するかウルトラマンチームの体力を0にすれば勝利、ウルトラマンチームは施設を守り切り、怪獣チームを全滅させれば勝利といった内容のものだ。
「ふむ…では私は、ウルトラマンチームを選ぼう。ゲーム上のこととは言え、ウルトラマンをこき使うのは面白そうだ」
「分かりました。では俺は怪獣チームを操作しますね」
二人はゲームボードを挟んで向かい合う。その時ナックル星人は
「あっ、そうだ。ブラックキング、サツキがイカサマの類をしないか見張っておけ。これは向こうが仕掛けてきたからな」
とブラックキングに命令した。
「了解しました。ナックル様」
ブラックキングは仏頂面でサツキを睨む。
「さて、そろそろいいか?」
「はい、始めましょうか」
こうして私達の今後を賭けた遊びが始まった。
◇ ◇ ◇
「じゃあまずはサイコロを振ってコマの配置を決めますね」
「いいだろう」
「ではダイスロール。うんこんな配置ですね」
「ウルトラマンとウルトラセブンは分断されたか。まあ単独で怪獣を蹴散らせるステータスだしいいだろ」
「それでは俺のターン、バルタン星人で隣に配置されていた施設を攻撃。残りの怪獣はウルトラマンチームを避けて進軍させます」
「では、私のターンだな。ウルトラマンを施設の近くへ進軍。ウルトラセブンでレッドキングを攻撃する。ダイスロール」
「攻撃は成功ですね。レッドキングは撃破されます……俺のターン。怪獣チームは2ターン目からランダムなマスに助っ人怪獣を出現させられます。俺はゴルザを呼び出します。そしてゴモラでウルトラマンを攻撃。ダイスロール」
「攻撃成功か。だがウルトラマンの体力はまだまだ余裕だ!」
「ですがそれは本命ではありません。バルタン星人で施設を完全破壊」
◇ ◇ ◇
「ウルトラセブンでマグマ星人に攻撃!ダイスロール」
「失敗ですね。カウンターでウルトラセブンの体力が1点削れます」
◇ ◇ ◇
「ウルトラマンでバルタン星人を攻撃。ここで必殺技カードを使い、成功確定にする!」
「バルタン星人は撃破されます。俺のターン。レイキュバスを召喚、そのまま近くのウルトラマンに特攻。ゴルザで3つ目の施設を破壊します」
「私のターン。ウルトラセブンでゴルザを攻撃。ウルトラマンでレイキュバスを撃破したあとマグマ星人のところへ進軍!」
◇ ◇ ◇
「俺のターン!キングジョーで最後の重要施設を攻撃。ダイスロール。出目はクリティカルです!これで最後の施設は破壊。つまり、俺の勝ちです」
「なっなんだと!?」
や、やった。サツキがゲームに勝利したのだ。
「おめでとうサツキ!」
私は思わず拍手してしまった。
「さあナックル星人さん。これでベムスター姉妹には手は出させません」
「ぐぬう……」
ナックル星人は悔しそうにしている。
「ナックル様……」
ブラックキングも呆然としているようだ。
しかしサツキはそんな二人を無視して、私達に向き直ると言った。
「じゃあ、俺が勝ったんで、俺の命令を聞いてください」
「ああ、いいぞ。何なりと言え」
「ありがとうございます。では、俺の仲間になってください」
「仲間?」
「ええ、俺思ったんです。上司部下より仲間って関係ならひどいことにはならなそうだなって。これから俺とベムスターさん達とナックル星人さん達は仲間です」
呆れた。サツキは本当に私達を仲間にする気なのか。でも心の中でそれもいいかなという自分もいた。
「……そうか。私はいいと思うけど、皆はどう?」
私が聞くと、全員が笑顔で賛同してくれた。
「よし決まりですね。じゃあナックル星人さんもよろしくお願いします」
サツキはナックル星人に手を差し出す。
「ふん、仕方ないな……」
ナックル星人は渋々といった感じでその手を握った。
「それで、今日は何をするんだ?」
「いえ特に何も決めてませんね。ただ一緒に遊べればいいんですよ」
「そうなのか?……まあいい、私は私で勝手にさせて貰うよ」
そういうとナックル星人はブラックキングと共に「門」に消えていった。
◇ ◇ ◇
「そんなことがあったんだ。私も参加したかったな」
事の顛末を姉に伝えると姉は呑気そうに言った。
「今度やってみたら」
「そうだね、次は参加することにするよ」
私は姉の返事を聞きながら、この前サツキと交わした会話を思い出していた。
『また来てください』
あの時サツキは確かにそういった。人間に大きな貸しできちゃったな。
「……ねえ、お姉ちゃん」
「ん?」
「私ね……もう少しだけ、ここにいてもいい?」
「もちろんだよ。ずっといていいんだよ」
「……ありがと」
この時、私はまだ知らなかった。このことが切っ掛けでサツキに新たなトラブルが運ばれてくることを。
◇ ◇ ◇
~もしゲームに負けてたら~
ナックル星人「私の勝ちだ!」
サツキ「あっ!ウルトラマンが帰ってきた」
ナックル星人&ブラックキング「「何!!」」
サツキ「……ゼットン」
ゼットン「はい」二人を気絶させる。
ベムスター「どっどうするの!?」
サツキ「取り敢えず勝負はうやむやにして…、ベムスターさん達に護衛を付けましょう」
~そのあと~
サツキ「お菓子一年分贈呈するんでベムスターさん達の護衛に就いてください」
ガタノゾーア「やりますっ!!」
駄文閲覧ありがとうございました。よろしかったら感想・評価お待ちしております。
次回登場予定の怪獣のヒントは…「サルシンバル」です。