光の巨人のいない世界で怪獣娘達との話   作:クォーターシェル

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29話 始まりの敵、終わりの敵

小5の夏休みの半ば、自分は怪獣ベムラーに会った。ベムラーはかつてウルトラマンに追われ地球に飛来した怪獣である。この時の騒動で科特隊のハヤタ隊員は重症を負いウルトラマンと一体化するという歴史的な事件が起こる。すらりとした体型で青髪で褐色のそんなベムラーさんが近所のバイク屋のラインナップを見ていた。どうしたと尋ねると、「自分だけのバイクが欲しい」らしい。それまで何回か怪獣の頼みを聞いてきた自分だが、流石に今回はお小遣いだけでは厳しいのでベムラ―がバイクを購入できるよう。お父さんにお願いしてまともなバイト先や自動車教習所を紹介したのだ。それから1年ほど――

 

「――という訳でやっと私だけのバイクができたの」

 

「それはめでたいですね、ベムラーさん」

 

「そうでしょう? それじゃあ早速乗ってみるわね!」

 

そういうとベムラーはヘルメットを被って店から出てきた

 

「うーん……いい感じ! さて次はどこへ行こうかしら?」

 

「あの……そのバイク代ですけど大丈夫ですか?」

 

「えぇ!? どうしてよぉ!!」

 

「だって予算オーバーだったんですよね……」

 

「あれはその……そう!! 私がアルバイトをして貯めたお金を使ったの!!」

 

「でもそれでしたら俺にも相談してくれればよかったじゃないですか?」

 

「……」

 

「もしかしてベムラーさん……」

 

「なっ……何かしら?」

 

「俺に隠れてこっそり貯金していましたよね?」

 

「ギクッ!?」

 

「しかもそれだけじゃなく、まだ余裕があると思ってまた別の買い物をしたんじゃないんですか?」

 

「ギクゥゥウウッ!?」

 

「図星みたいですね……。もうあんなことはしないでくださいね?」

 

「はい……」

 

「よろしい、では改めてベムラーさんのバイクを見てみましょう」

 

「この黒いボディが格好良いわぁ~」

 

「それにハンドルカバーにタンクキャップまで付いていますね。これなら盗難防止になりますよ」

 

「本当? ありがとうサツキ君!」

 

「いえいえ、喜んで貰えて嬉しいですよ」

 

「あっそうだ! ねぇサツキ君、ちょっと後ろに乗ってみてくれない?」

 

「わかりました」

 

そう言うと自分はベムラーの後ろに乗り込んだ

 

「どう? ちゃんと掴まっている?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ふふっ……なんかデートしている気分だわ」

 

「変なこと言わないで下さいよベムラーさん……」

 

「あら、私は別に構わないけれど?」

 

「俺は構うんでやめて頂けませんかね?」

 

「嫌よ」

 

「なんでですか!?」

 

「だって貴方との会話楽しいんだもの♪」

 

「うぐぅ……」

 

「ふふっ♪照れちゃって可愛いわね~」

 

「べっ……別に照れてなんていませんよ!」

 

「はいはいわかったわよ。それより今日は何するの?」

 

「特に決めていませんでしたね……。ベムラーさんはどこか行きたい場所とかありますか?」

 

「そうね……。せっかくだし竜ヶ森湖に行きたいかな〜」

 

「なるほど、ベムラーさんにとって思い出の場所ですね」

 

「だから今すぐ行くわよ!!」

 

「ちょっ……!? 引っ張らないでくださ〜いっ!!!」

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「到着っと!」

 

「ここが竜ヶ森湖ですか。初めて来ましたけど結構大きいですね」

 

「そりゃあ私が隠れられるくらいなんだから当然よ」

 

「それもそうですね。ところでベムラーさんはここで何をしたいんですか?」

 

「もちろん釣りをするのよ!!」

 

「あぁやっぱりそうなるんですね……」

 

「私こう見えても釣った魚を料理するのが好きなのよ」

 

「それは初耳です」

 

「さてそれじゃあ早速始めましょうか!」

 

相変わらずマイペースな人だな……。まぁそこが良いところでもあるんだけど

 

「あっ」

 

「どうしたんですか?」

 

「エサを忘れたわ…」

 

「忘れたんですか!? 」

 

「うーん……仕方がないわね、もう素手で獲るわ」

 

そう言って彼女は立ち上がると湖に飛び込んだ

 

「えぇ……」

 

それから数分後――

「見て見て!! たくさん捕まえたわよ!!」

 

「凄い量ですね……」

 

「これだけあれば今夜はご馳走ね!!」

 

「あの……ちなみにどうやって食べるつもりなんですか?」

 

「えっ?普通に焼いて食べるけど?」

 

「…………」

 

「なによその目は?」

 

「いや……本当にそれでいいのかなって思って……」

 

「失礼しちゃうわね! 私の料理の腕を知らないくせに!」

 

「そっ……そういえば聞いたことがありますね」

 

「でしょう? でも安心して! 私が美味しく調理してあげるから!!」

 

「おっ……お願いします……」

 

「任せておきなさい!!」

 

そして出来たのは魚の串焼きである。これ料理の腕関係あるんだろうか……?そんなことよりお腹空いたな……

 

「はい、サツキ君できたわよ!!」

 

「ありがとうございますベムラーさん」

 

「いっぱい食べてね!!」

 

「いただきます!!」

 

パクッ……モグモグ……ゴクン

 

「どうかしら?」

 

「とてもおいしいですよ! 素材の味が生きてるって感じです」

 

「もぉ褒め過ぎよ。でも嬉しいわ!」

 

「いえいえ本心から言ったんですよ」

 

「ふふっ、ありがとうね」

 

「こちらこそありがとうございます」

 

それから湖畔の倒木に座って二人で色々話した。その内話題が自分自身の過去のことになった。

 

「へえ…夢の中でシーボーズにあってからあの『門』が出たのね」

 

「はい。シーボーズの方も覚えていたので夢じゃなかったかもしれませんが」

 

「じゃあ私も話そうかな……この竜ヶ森湖で起こったこと」

 

そう言うとベムラーは自分の昔語りを始めた。とても興味深い話を聞けたが、詳細をここに記すのはよしておく

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「さあそろそろ帰る頃合いかしら。サツキの親御さんにどやされちゃう前に」

 

「確かにこれ以上遅くなると心配させてしまうかも知れませんね。では帰りましょうかベムラーさん」

 

「そうねサツキ君!」

 

こうして自分の初めてのバイクでの外出は終わりを迎えた。しかし今回の出来事は一生忘れられないだろう。なぜなら……

 

「また行きたいですね」

 

「そうね! また行きましょう!」

 

「楽しみにしてますね♪」

 

「ふふっ、私に任せておいて♪」

 

こうやって怪獣達と過ごす時間はすごく楽しいからだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

ベムラーと遠出してから数日後。

 

『サツキ様。インカムの調子はどうデスカ?』

 

「うん、大丈夫。バッチリ聴こえてますよキングジョーさん」

 

『それならバ、このままゼットンを追いマスヨー!』

 

自分は学校の下駄箱の辺りでキングジョーと傍目では装着しているのが分からない超小型インカムで会話していた。なぜこんなことをしているのかというと、ある時ふとゼットンが自分の傍にいない時何をしているのか気になった。ゼットンは学校に行っている時以外とかは自分と行動してることが多い。この間ベムラーと遠出した時など姿を見せない時もあるけれど、休日などは大体視界の端からこっちを見ている。ゼットンは余り感情を見せず、考えてみれば自分と一緒にいる時以外はどうしているのか想像がしにくいのだ。それとなく本人に聞いたこともあるがはぐらかされてしまった。それでも気になって仕方がなくなってしまったのでどうしようかと思っていたが、一人こういうことに協力してくれそうな友達が浮かんだ。キングジョーだ。彼女は価値観がアレみたいなのでもしかしたらと思い呼び出した。

 

「お呼びデスカ?サツキ様」

 

「うん。キングジョーさん、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど」

 

「ハイ!サツキ様の為なら何でもヨロコンデーッデスヨ!」

 

「今度1日だけゼットンが何をしているのか知りたいんだ。だから協力して欲しいんだけど……」

 

「ふむふむ。つまりあの根暗女を解雇する為に弱みを握りたいということデスネ」

 

「いや、全然違うんですけど」

 

別にゼットンを雇ってるわけじゃないし、弱みを握ろうという気でもないんだが。

 

「今根暗って言いましたよね?ゼットンのこと?」

 

「HAHAHA。今のはジョークデース。キングジョーだけに」

 

ジョークに聞こえなかったんですが……まあいいや。

 

「とにかく、ゼットンが俺がいない間何をしているのか気になるんです。こんな事頼めるのはキングジョーさんくらいしか居なくて……キングジョーさん?」

 

キングジョーは何やら震えている。怒らせてしまったかな?やっぱり人のプライベートを除くような真似だし、駄目かな?

 

「Oh!!」

 

「うわっ!?」

 

キングジョーはいきなり顔を上げた。どうしたんだ?

 

「サツキ様からワタシを頼ってくれるとは珍しいデス!ワタシ、感動しまシタ!」

 

「そっそうなんだ……」

 

「分かりまシタ。このキングジョーの名に誓ってゼットンの秘密を丸裸にしマス!」

 

「う、うんよろしく…」

 

こうしてゼットンの秘密を探る作戦がスタートした。そして当日キングジョーから超小型インカムを貰った自分は、それを着けてキングジョーからの連絡を待つことにした。朝のホームルーム中、自分は囁くような小声でキングジョーと連絡を取る。

 

「ヒソヒソ…どうですかキングジョーさん。今ゼットンは何をしてます?」

 

『ハイ。ゼットンにバレないようにつけて、今サツキ様がいる学校の近くの建物の屋上に居るのデスガ、そこから学校の方向に向いたまま動きまセンネ』

 

「学校の近く?何かしているの?」

 

『NO。その場に立ったまま微動だにしていないデス。このままモニタリングを続けてみマス』

 

「うん分かった。くれぐれも気づかれない様にしてください」

 

『OK!』

 

一旦通信を切る。さて、ゼットンは何をしてるのだろう?その場に立ったまま動かないとは。日向ぼっこでもしている?それは違う気がする。兎に角今はまだ朝だし、これから何か動きがあるかもしれない。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

そのままゼットンが動かないという定時連絡を受け続け、水泳の授業になった。当然プールのある場所へ移動する。

 

『待ってくだサイ!ゼットンがテレポートしまシタ!』

 

「何だって!追うことはできる?」

 

『まだ反応が近くにありマス。直ぐに追跡しますヨ』

 

「分かったお願いします」

 

通信を切る。一体ゼットンは何処に向かったのだろう?その疑問が晴れぬまま授業は進み、次にキングジョーから連絡があったのは授業が終わり給食が始まる直前だった。

 

『Oh……お待たせしまシタサツキ様。ゼットンは別の建物の屋上に移動していまシタ。また動きません』

 

「そう…また何かあったら連絡してください」

 

『了解しまシタ』

 

そのまま給食の時間が過ぎ、昼休み…5時限目、6時限目が終わり放課後になった。結局、ゼットンが何かしているという情報は無いままだった。

 

『申し訳ありまセンサツキ様……これといった情報が無クテ…』

 

「うん、まあいいよお疲れ様キングジョーさん。もうすぐゼットンも来るだろうし、キングジョーさんも気をみて帰ってきて。今日は付き合ってくれてありがとう」

 

『ハイ!今後も何かあれバ、ワタシを頼ってくだサイサツキ様!』

 

「うん。じゃあね」

 

そう言って通信を切る。はあ…何も分からなかったな…こういうの自分向いてないのかな…

 

「…サツキ、迎えに来ました……」

 

「うわっ!居たのゼットン!?」

 

気づいたら背後にゼットンが居た。脅かさないで欲しい。そのままゼットンと帰ることにする。その道すがら、ゼットンは立ち止まり

 

「……サツキ」

 

「なに?ゼットン」

 

「…何か、私に隠していることはありませんか…?」

 

ぎくっ、もしかしてバレてる?いやまさか。表情を変えずにこう返す。

 

「ゼットンだって、他人に隠していることの1つや2つはあるでしょ?もしあったとしても勘弁して欲しいな」

 

「……そうですか」

 

いつもジト目気味のゼットンだが、心なしかその目がこっちを批判しているように見えた。

 

「…サツキ」

 

「はい?」

 

「1つ言っておきます……私は、貴方を見ています。…これまでも…これからも……」

 

「うん?」

 

そう言うとゼットンは再び歩き出す。一瞬その目に暗い何かが見えた気がした。

 

「……!?」

 

一瞬惚けていた自分は慌てて歩き出す。……取り敢えず、他人のプライベートを除く真似はもう止めておこう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

~~水泳の授業中~~

 

「ふふふふ~ん♪夏場のここは絶好の撮影スポットね♪」

 

「オヤ…?貴女はガッツせ…」

 

「あっキングジョーさん。私がここに居たのは皐月君たちには内緒ね♪口止め料にこれをあげるわ」

 

「Oh!!コレハ……」

 

「私が今まで撮った中でも一番の皐月君のベストショット!折角焼き増ししたのにペガちゃんたちは受け取ってくれなかったのよねー」

 

「分かりまシタ!取引成立デス!」

 

「うんうん♪可愛いものは共有もありよね!」

 

「…………」

 

その場に居たゼットンは、“雑音”は聴いていなかった。

 




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