自分は今年で中学生になる。中学生ともなると、色々と忙しくなる。部活も始まり、勉強もしないといけない。なにより行動範囲も広がるので、携帯端末が欲しいのだ。しかし、自分はまだ子供なので親に頼まなければならない。そういう訳で自分は、ある人物に相談することにした。
「……という訳なんでスマホが欲しいんですが」
「んー、駄目」
相談相手は母親だった。その言葉を聞いて自分は項垂れる。前にも言ったと思うが、なぜか母は自分が電子機器の類に接触するのを嫌がるのだ。それはもう異常なほどに。
「いや、別にゲームとかしたいわけじゃないよ?ただメールとか電話とかできればいいだけで……」
「でも駄目」
「えぇ……」
この会話は何度目だろうか。流石に何度も繰り返していると疲れてくる。母との話し合いでは大抵こうやって却下されるのだ。
「いいかい。スマホだのなんだの、ああいう便利な機械に頼る人間はいずれ自滅するんだよ。連絡なら家にある黒電話でいいじゃないか」
いや……ダイヤル回す式の電話使ってるの町内でも家だけだと思うよ母さん……と思いながら自分はため息をつく。そして、とりあえず今回は諦めて、別の方法で何かないか探してみることにした。
数日後、今度は自分の父に相談したのだが、やはり同じような結果になった。
「あぁ……やっぱりかぁ……」
我が家のヒエラルキーは母が一番上なのだ。父も母には強く出れず
「母さんの許可があるならいいんだが…」
という消極的な答えが返ってきた。さてどうしようかな……。そう思いながら自分は部屋に戻った。すると、机の上に見慣れぬ箱が置かれていた。開けてみるとそこには最新型のスマートフォンが入っていた。これって……箱の中には手紙が同封されていた。
『皐月君へ――皐月君がスマホが欲しいと困っているみたいなので早い中学上がりのプレゼントを贈ります。既に私の電話番号、メールアドレス、ラインなどのデータは入れてあります。通信代も私が何とかするので大丈夫です。これからもよろしくね!――あなたのミコより』
どうやらこのスマホはミコさんが送ってきたようだ。嬉しいのだが、スマホの話の事、ミコさんに話したっけ?と思ってしまう。しかし、せっかく貰ったものなので有り難く使わせてもらうことにした。
こうして、自分は念願のスマホを手に入れたのであった。
◇ ◇ ◇
その後、色々設定などを終わらせ、ある程度使えるようになったので、早速友人に連絡を取る事にした。といっても人間の同級生で知り合いにはまだスマホを持っている人物はいなかったので、取りあえずハネジローを呼んでメールアドレスなどの交換をすることにした。
「パム~」
「うん、念願のスマホが手に入ったんだ。これでメールアドレス交換とかできるね」
「パム!パムパムー」
ハネジローが何言ってるかは今までフィーリングだったが、メールでやり取りすればちゃんと理解できるかな?そうして交換を終えてハネジローと別れた後、早速メールが届いた。ハネジローからのかと思ったがミコさんからのメールだった。内容は他愛のない短めの日常のことだった。今日こんな事があっただとか、今度遊びに行くとかそんな感じの内容だった。正直自分も暇だったので返事を送ったりした。それから何通かメールを送り合い、そろそろ寝ようかという時間になった時、
「サツキ。そろそろ寝る時間……」
「あっ」
自分の部屋のドアを開けた母さんの表情が固まった。しまった、スマホのこと話すの忘れてた……
「サ、サツキ……それはどう見てもスマホ……」
「あっ、母さんこれはね……ミコさんがプレゼントしてくれて……」
なんか○慰してるのがバレた感じになってるけど自分は何一つやましいことはやってないぞ。母さんの眼から水滴が床に垂れる。ちょちょちょ!?なんで泣いてるの母さん!?
「私の子はもう大人なんだねぇ……お母さん寂しいよぉ」
「いや、まだ小学生だよ?」
なんか母さん情緒不安定だなぁ……。それにしても母さんは息子にスマホを渡すのはそんなに嫌なのか?いや、確かに自分はスマホを持っていい年齢ではないかもしれないが、ここまで拒否されると少し悲しいものがある。
結局、母さんはその日ずっと泣きっぱなしだったので、スマホは没収されてしまった。
「母さん……酷いよ」
「ダメなものは駄目なんだよ。せめて中学生になってからにしよう」
母さんはどちらかというと自分に甘い方なのではあるのだがこの件に関しては何故か厳しい。だが、今の自分は子供である。スマホの所持ぐらい許して欲しいものだ。
「はぁ……仕方がない。また別の手を考えないと」
自分はそう言いながら部屋に戻った。すると部屋には
「キヒヒ…お帰り……」
右腕と両脚が金属製でツインテールで眼帯をかけた少女が居た。初めて会うが、この格好は十中八九怪獣だろう。
「貴女は……?」
「キヒヒッ。私、クレージーゴン」
クレージーゴンと言えば、ウルトラセブンに登場するロボット怪獣である。確か別名は○ちがいロボットとも呼ばれ、地球の鉄を奪う為に送り込まれたのだった。なるほど、そういえばあの特徴的な右腕が面影があるな。
「その、クレージーゴンさんは今日は何の用ですか?」
「キヒッ。貴方ならわかるでしょ……鉄よ鉄。鉄が欲しいの」
「えっと……」
鉄が欲しい?どういうことだろう?別に鉄を奪っていたのはバンダ星人の指示であったはずなんだが。
「なんで鉄が欲しいんですか?」
「この姿になっても、鉄を取り込みたくてたまらないのよ…キヒヒ」
そういう事か。恐らく彼女は生前?からの指令が習性のようなものになってしまったのだろう。しょうがないな…なんとかして彼女を納得させて帰ってもらわねば。
「分かりました。鉄は心当たりがあるので、ついて来てください」
自分は彼女を連れて、公園の砂場に向かった。
「キヒッ、鉄はどこ?」
とクレージーゴンが尋ねてくる。
「ちょっと待ってください」
自分はポケットからあるものを取り出した。
「それは……磁石?」
「そうですU字磁石です」
そう言って自分は砂場に磁石を突っ込み、クレージーゴンの前に差し出した。
「これは……」
「砂鉄です」
そう、砂の中には砂鉄があり、磁石で取り出すことが出来るのだ。
「これでどうですか?」
「キヒヒッ、いただきます!」
とクレージーゴンは砂鉄のついた磁石の先を口に含んだ。
「ママ―、あのおねえちゃんなにしてるの?」
「しっ!見ちゃダメよ!」
じょりじょりとクレージーゴンは砂鉄を味わっている。
「キヒヒッ、美味しい♪」
満足したのか、クレージーゴンは笑みを浮かべている。
「どうでしたか?」
「美味しかったけど…もっと欲しいな……」
うーむそれではこの方法だと効率が悪いな……ならば…と考えてるところ。
「ママ―!おねえちゃんがぼくのぶーぶーとったー!」
「キヒヒヒヒヒッ!美味しそうな車……」
「ちょっと!なにをするんですか!?」
クレージーゴンが近くの子供からミニカーを取り上げていた。
「返しなさい!」
自分は必死になってミニカーを取り返そうとしたが、相手の方が背が高く腕の長さが違うため上手くいかない。
「ゼットン!」
自分がゼットンを呼ぶとゼットンが前にでてきた。
「お願いゼットンミニカーを取り返して!」
「はい」
ゼットンは聞くやいなや素早くクレージーゴンに近づき、喉輪をしかけた。
「ギヒッ!?」
それのダメージを受けたクレージーゴンはミニカーを落とした。その後、俺達は親子に謝り慌ててその場を立ち去るのだった。
◇ ◇ ◇
その頃、メトロン星人は居間でお茶を飲んでいた。その時
「私参上!」
居間に印南ミコ……いやガッツ星人が乱入して来た。
「……君に出す茶はないよ」
メトロン星人は冷ややかな目でガッツ星人をみる。
「いいじゃん別に、お茶くらいくれたってさ~」
「駄目だ。君はすぐ私のお菓子を食べるじゃないか」
そう、このガッツ星人はメトロン星人の菓子をよく食べるのだ。そのため、彼女は常にお菓子を持っているのだが……。
「だって貴女が作るのはどれも美味しくないんだもん」
「失礼な奴め……まぁいい、それより君は何の用だい?」
「あっそうだ、本題に入るけど……私がプレゼントしたサツキ君のスマホを返しなさいよ!いくら貴女が母親役だからってやり過ぎよ!」
「これは家庭の問題だ。君に口出しする権利はあるのかい?」
「あーりーまーすー!折角私のとお揃いのスマホプレゼントしたのに意味ないじゃない!貴女ねえ、いくら地球人が退化するのが嫌だからって息子のスマホを取り上げるのはどうなのよ?ぶっちゃけ携帯端末くらいどこの文明人も持ってるわよ」
「……私は地球の文化には疎くてね。それに、地球に来たばかりの頃はまだスマホなんて無かったんだよ。だから仕方がないのさ」
「でも、それでも取り上げなくても良いと思うんだけど?」
「……」
「あの子まだ小学生だけど直ぐに中学生、高校生になるのよ?早いうちから親離れさせないと」
「それは確かにそうだが、今のご時世では必要な事だと思うよ。現に、最近の若者は他人とコミュニケーションをとる機会が減っているらしい。その証拠にほら……」
テレビをつけるとニュースをやっていた。内容は、SNSによるいじめ問題だった。
「最近、SNSで知り合った人間とのトラブルが増えてるみたいだし、そういうのは早めに解決しないと」
「うぐぅ……そ、そんな事言ったら、宇宙人の侵略だって似たようなものよ!」
「あれは、私達が攻めて行った訳じゃなくて、向こうが勝手に騒いだだけだろう?こっちは被害者なんだから、文句を言うならそちらに言ってくれ」
「むきぃー!!もう知らないわ!!」
そう言って、ガッツ星人は出て行ってしまった。
「ふぅ……やれやれ、騒がしい奴だ」
そう言ってメトロン星人は茶を一服すると、
「なあ、私は酷い母親かい?ケンちゃん……」
ここにはいない誰かに呟くのだった。
◇ ◇ ◇
自分達は公園を離れたあと、ドラッグストアへ向かっていた。その道すがら自分は最近の悩みをクレージーゴンに話していた。
「へえ母にスマホを……」
「そうなんです。自分は大丈夫だと言ってるんですけどね…」
「キヒヒ、大変ねえ」
クレージーゴンは同情するように言う。
「ところで、鉄なんかちゃんと吸収できるんですか?」
「ああ、そうね。なんでか分からないけどちゃんと吸収できちゃうの。おかげで私のクローは日に日に固くなっていくわ」
「なるほど……しかしああ、スマホの件はどうすればいいのかな。中学に上がったらどうにかなるだろうか」
「キヒヒッ、そんなに欲しいなら気づかれないよう頭の中にチップを埋め込むってのはどう?テレパシーで連絡できるわよ」
「えぇ……流石にそれはちょっと」
「キヒヒッ、冗談よ♪」
そんなことを話しているうちに自分達は目的地であるドラッグストアに到着した。
「ここにいいものがあるのかしら?」
そういいながらクレージーゴンの視線は駐車場の車に向いている。
「はいこの中にありますよ」
数分後、自分達が持っている袋の中には鉄分のサプリメントがいっぱい入っていた。
「これが……鉄……」
「はい。ただ単に摂取するだけならこれにした方がいいですよ」
「分かったわ。それで、これどうやって飲むの?」
「カプセルです。こうやって……」
自分がカプセルを見せるとクレージーゴンは驚いたような顔をして
「あら凄い…!こんな小さなもので人間の体に吸収されるというの!?」
「そうですね。でも一度に摂取すると副作用があるらしいんで気をつけてください」
「キヒヒ、分かってるわよ。それじゃあ帰りましょうか」
そして、自分達は再び歩き出した。その後、クレージーゴンを帰したあと、母さんとまた話をした。いつになったらスマホを使わせてもらえるのかと。すると母さんは
「スマホを使うことで他人への信頼が無くならなければいいよ」
と言ってきた。
「えっ?どういうこと?」
「そのままの意味だよ。便利な道具を使っていくと、自然と他人への信頼も薄れていくから」
「つまり、信じろって事?」
「そうだよ。どんなに優れた技術であっても、使い続ければ必ず壊れてしまう。そうならないためには、使う人間が強くなきゃいけないんだ。だから君にも強くなって貰わないと」
「強くなるって言われても……」
「まぁ、今すぐってわけじゃないさ。これから少しずつ学んでいけばいい。それより、君は明日休みだよね?」
「うん」
「そうか……実はお父さんも今日は仕事が休みなんだよ。だから、久々に家族水入らずでどこかに出掛けないか?」
「ホントに!?行く!絶対に行く!」
こうして、次の日自分は、家族と一緒に遊園地に行ったのであった。
……うまくはぐらかされたような気もする。
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