光の巨人のいない世界で怪獣娘達との話   作:クォーターシェル

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8話 古代怪獣参上

それは『門』の向こうの怪獣たちとの交流が始まってからしばらく経ち、今世での小学生として何度目かの夏休みに入った時期だった。

 

その日自分は早い所夏休みを満喫するべく、宿題の処理に取り掛かっていた。

 

「ふぃー。終わった…」

 

この時点で自分は算数、漢字ドリルを終わらせたところで夏休みに入ってから数日目にして宿題を半分以上終わらせた所だった。残りは自由課題で何か絵を描いたり、小物を作って済ますか、読書感想文を何枚か書くかといったところだ。

 

そんな時、後ろからミシッという感じの音がした。なんだろうと思いながら振り返ってみると、見知らぬ少女が『門』の側で尻もちをついていた。

 

「ヴォォ…どこだろ?ここ」

 

辺りを見回す少女の格好は頭に三本の角が生えており、スクール水着のような服を身にまとい、さらに四肢は恐竜の着ぐるみを付けたようになっていて下半身後方からは大きな尻尾が伸びていた。

直ぐにこの風体は怪獣だと思ったが、はて、彼女は『門』の向こうから来たのだろうけど自分はこの子を呼ぶような念を送ったわけじゃないし、どうして彼女はここにいるのだろう?

 

「ねえ君…」

 

「?」

 

声を掛けると少女はこちらに気づいて顔をこちらに向ける。その表情は初めはきょとんとした顔だったが直ぐに笑顔になって

 

「ここでお菓子貰えるの!?」

 

「えっ」

 

と少女はこちらに詰め寄って来た。お菓子?と自分は少し混乱しはじめていた。

 

「ねーちょうだい!ちょうだい!」

 

「いやいきなり言われても…」

 

とりあえず自分は彼女をなだめることにした。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

なんとか彼女をなだめることが出来た自分は彼女から話を聞くことにした。

彼女の名前はゴモラ。番組の主役になったこともある、ウルトラシリーズの中でもかなり有名な怪獣だ。そんなゴモラがなぜこの世界に来たのかというと、

 

「ここに来ればお菓子貰えるって聞いたんだ!」

 

なぜか最近怪獣墓場の方で小さい『門』の向こう側でお菓子を貰えるという噂が出回っているらしく、それでゴモラもお菓子を貰うべく『門』を抜けて来たらしい。

…もしかして自分が呼び出した怪獣達にお菓子のセットを配っていたせいなのか?

後、こちらが念じなくても普通に向こう側から来れるんだ…

 

「ねえ、お菓子貰えないの…?」

 

そんな悲し気な顔で見られても困る。予定があったならまだしも彼女の登場は完全に予定外だ。怪獣達にあげていたお菓子のセットは当然ない。

が、自分が今まで呼び出してきた怪獣達と違ってゴモラは大阪等で大暴れした実績のある怪獣だ。人間の姿になった怪獣はピグモンみたいに元々非力だったものを除くと人間以上の身体能力を持っていることが分かったので(例としてシーボーズと食事した時最初の時は食器を捻じ曲げてしまっていた)、下手に機嫌を損ねて彼女に暴れられる訳にはいかない。

 

「お菓子はないけど、他に欲しいものはある?」

 

「んー、じゃあ…カレー」

 

「カレー…食べたことあるの?」

 

「食べたことないけど、美味しいっていうのは知ってる!」

 

よし、それでいこう。自分はゴモラにちょっと待っててと言って、同居人を探しに自室のドアを開けると、ゼットンが立っていた。いつも彼女を呼びに行くとタイミングが良すぎるくらい近くにいることにふと疑問を覚えたが、今はそれどころではない。

 

「ゼットン。今買い物に行ってる母さんに今日の夕飯カレーライスにして欲しいのと夕飯に友達が来るって伝えてきてお願い」

 

「…分かりました」

 

そういうとゼットンは1階の方へ向かう。家の方針で自分は携帯を持っていないが、急ぎの用事はゼットンに伝えれば親に連絡が行くことになっている。

母さんが出かけてからさほど時間はたってないのでこの夕飯のリクエストは間に合うと思う。…たぶん。

ゼットンを見送った後、後ろを振り返るとゴモラがこっちを見ていた。

 

「ねえ、今の子って怪獣?」

 

「えっと…」

 

そう言われても返答にこまる。ゼットンはそのまんまの名前だし、確証を得ていないが『門』の向こうの住人と同じような存在なんじゃないかと思うのだが、どうにも疑惑の先に踏み切れないのが現状だ。いままでの関係が壊れるんじゃないかとも思うし、まさかとは変な地雷を踏んで自分の身に危険が及ぶなんてしょうもないことも考えてしまう。

 

「どうなんだろう?それよりも夕飯まで時間あるし何かして遊ばない?」

 

と強引に話題を変えてみる。夕飯まで大分時間あるのは本当だし、どのみち穏便に時間を潰さなきゃいけないのは変わりない。

 

「じゃあ、穴掘り!」

 

「この近くじゃできないかな……」

 

この場合、砂場でスコップ使って穴掘りするんじゃなく、ガチで地中潜行する気だろう。田舎の野原とかならともかく住宅街でそれはまずい。

 

「じゃあ、戦いごっこー!」

 

「うーん…それも場所がなぁ…」

 

それって暴れられるのと大して変わらない気がする。所謂ごっこ遊びなら相手は友達怪獣にやってもらうっていう手もあるけどそれによってでる被害が未知数だからな…。

二度目の断りをするとゴモラは機嫌を悪くしたようで、

 

「むー、じゃあどうすればいいのさー!」

 

と不満気な表情で尻尾をぶんぶん降っている。このままでは夕飯を迎える前にまず自分の部屋から破壊されかねん。なんとか他の遊びを提示して時間を稼がねば。

縄跳び…は尻尾引っかかって直ぐ終わりそうだし、マリ○パーティ…は元々孤島育ちの恐竜に操作とか覚えさせる時間はあるか?うーむ……

 

「そうだ!手押し相撲とかどう?」

 

「手押しずもー?」

 

自分は手押しの相撲のルールを説明した。

 

「へー、つまり相手を倒せば勝ちなんだね」

 

「いや単にバランス崩して足が動いちゃったら負けなんだけど」

 

「じゃあ、それでいいよ」

 

よし、これでなんとか夕飯まで時間を稼げそうだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

舞台を庭に移し自分達は手押し相撲をするべく向かい合った。

 

「よーし負けないぞー!」

 

「(ゴモラが夕飯まで飽きませんように…)あっそうだ」

 

「?」

 

「ゴモラさんの方が背が高くて力あるからハンデとして足閉じててね」

 

「むー、分かったゴモ」

 

急に変な語尾つかうようになったな。

 

「こっちのほうがいいザウルス?」

 

地の分を読まないで、ていうかそういう問題じゃないから。ゴモでいいよ。

では気を取り直して、

 

「じゃあ始めるよ」

 

「よおし!いくぞゴモォォォ!!」

 

とゴモラは勢いよく手のひらをこちらへ押して来た。これはまともに押しあったら小学生いや一般人の腕力じゃ押し負けるだろう。ならばと、

自分は構えていた手を後ろに引いた。すると

 

「えっ?ゴッゴモヴォ!」

 

と勢い余って盛大にこけた。

 

「そ、そこまでするつもりじゃなかったんだけど…大丈夫?」

 

「い…今のは反則じゃないの?」

 

「いや、反則ではないよ」

 

これも手押し相撲の立派なテクニックである。力がいると見せかけて相手の攻撃を空かす等は非力な人でも勝ちにいける戦略なのだ。

 

「むむむ、今度はそんな手に引っかからないゴモ!」

 

よしよし、どうやら手押し相撲に食いついてくれたようだ。このまま母が帰ってくるまで待とう。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

手押し相撲を初めてから2、3時間程経っただろうか。日が暮れ始め、お互いの勝敗がそれそれぞれとっくに10を超えた頃、

 

「ただいまー」

 

と、母さんが帰って来た。どうやら自分は耐え抜いたらしい。

 

「おかえりー。今日いきなりリクエストしてごめんね。」

 

「ううん。確かに急だったけど大丈夫だよ。そこにいるのは新しい友達かな?」

 

「うん。彼女は「ゴモラだよ!」…だって」

 

「…そうか。ゴモラちゃんか。今日夕食一緒に食べるんだね?」

 

「うん!早くカレー食べたい!」

 

「それじゃあ身体汚れてるみたいだし、先にお風呂に入ってからだね」

 

そういえばゴモラは手押し相撲の最初の方ですっころんでいたな。

ちょっと気になったことがあるので聞いてみる。

 

「ゴモラさん。シャワーの使い方とか分かる?」

 

「?シャワー?」

 

ゼットン辺りに一緒に入って貰った方が良さそうだ。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

「これがカレー…とっても美味しいゴモ!」

 

食卓に座ったゴモラは早速カレーを頬張ったが、好評なようだ。食べ終わったらこのまま帰ってくれば良いのだが。

 

「作った方としてシンプルな感想ありがとう。眼兎龍茶もたっぷり飲んで構わないよ」

 

「どうゴモラさん?お菓子はあげられなかったけど満足した?」

 

「うん!とっても楽しかったよー!また遊びに来たいな!」

 

えっ、また来るんだ…なんだかんだ仲良くなった感じだけど不安がでかい…

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

――ねえ知ってる?小さな『門』から「娑婆」にいけるんだって――

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

こうして、夏休みのゴモラの出現をきっかけに自分の日常は更に混沌としていくのだった。

 




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