光の巨人のいない世界で怪獣娘達との話   作:クォーターシェル

9 / 30
擬人化計画公式がほぼ沈黙しちゃってるのが本当につらい…


9話 SIDE:おとん(♀)

ある計画の為この星ひいては宇宙の調査に訪れてから地球時間で早数年が経過していた。

といってもこの宇宙とは別の地球の偵察の為に数十年かけた記憶もあるのでまだまだといったところなのだが。

 

私はゼットン星人。現在ある組織のエージェントとして活動している者だ。詳細は伏せるが組織というのは怪獣墓場を拠点とする墓場の者たちの集まりである。乱暴でメタな言い方をすれば、『いつもの(?)宇宙人連合』といったところだ。

 

そんな感じで今調査を行っているが、やはりこの地球は我々が知っている地球とは大きく違うところは所謂「怪獣」といった存在がいないことだろう。調査の結果、この星の歴史にそういった者が出現した報告は無いに等しく、隠蔽の線も疑ったが、更なる調査でそれもなくなった。異星人に置いても同様で、少なくともこの地球が存在する銀河系近傍には恒星間旅行を行える文明は皆無であろう。

 

侵略者としてはこういう星の侵略は容易いと思われるが、事はそう簡単ではない。現在我々の組織が進めている計画は所謂単純な侵略とは趣が違うものであるし、そもそもこの宇宙のデータはまだ全然集まっていない段階にある。

 

地球の主要な調査は大体終了したといえるが、この宇宙全体に関してはあくまでこの地球視点からの資料しかなく、そろそろ本格的な地球外の調査も必要になるが、これは近日完成する別の拠点と追加人員によってある程度は解決すると思う。

 

次に怪獣墓場とこの宇宙を結ぶ『門』。別名グレイブゲートのことだ。このグレイブゲートは怪獣墓場に複数存在し、それぞれが別の異なる宇宙の出入り口となっている。

 

それでこの地球が存在する宇宙に繋がるグレイブゲートだが、この『門』は他のものと比べると極端に小さいのだ。それが今まで発見を遅らせてきた原因といえるが、それだけではなく通り抜けられるものにも制限があるらしく、かなりの規模までダウンサイジングしないと他の『門』では通り抜けられる物は通る事が出来ないらしい。

お陰で組織の本部のある怪獣墓場から物資を調達するのには苦労している。

 

そして、我々は現在その『門』と密接な関わりがあると思われる少年を保護している。

彼の名はサツキ、私とメトロン星人が彼を擁護施設から引き取って数年経つ訳だが、地球の調査と比べ、彼の『門』に関する調査は余り進んでいないのが現状だ。

 

分かっているのは主に、

・『門』は常に彼の周囲数メートルに浮遊する形で存在している。彼の意識が途切れていても同様。

 

・『門』を彼以外の地球人は視認できない。認識しているのは彼と我々を含む『門』から出て来た存在だけの模様。

 

・彼は『門』に対してテレパシーのようなものを行使することができ、『門』の向こう側の存在と交信することが可能。

 

ということくらいだ。

健康診断と偽って、何度も精密検査にも掛けているが、彼と『門』の関係については未だに不明な点が多い。

組織の中では解剖してみてはという意見も上がっていたが、彼の身に何かあれば門がどうなるか分からないため、それは悪手であるだろう。

 

しかし、これから計画を遂行するためにはこの『門』ひいては彼の存在が必要不可欠と思われるため、彼の成長に伴い何らかの実験をするための手段が必要になってくる。

 

ゼットンからの報告によれば彼自身も自分の能力を自覚はしているらしいが、我々が分かっていること以上のことは知っていないらしい。

一番好ましいのはサツキ自身からこちらに積極的な協力をしてもらうことだが、まだ彼に我々の正体を明かすなどして協力へ持っていくのは時期尚早と言える。

これは彼がもっと成長した段階の話になってくるだろう。

 

いずれにしても時間はあるとは我々の前途には未だに問題は多い。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

――「ただいま」

とこの国の時間で深夜になる頃私はこの地球での拠点に帰って来た。おかえりと、組織の同僚が私を出迎えた。

彼女はメトロン星人。組織に所属する者の一人であり、今回の計画で共に地球に訪れた相棒だ。今回の潜入の役割として私の妻として家事をしたり、収集したデータの整理などしている。

彼女の働きにもまた大変助けられてはいるのだが――

 

「ゴクッ、ゴクッ、…おいちーっ!」

 

「…お前またサツキが口をつけた湯呑で眼兎龍茶を飲んでいるのか…?」

 

「あっ、…バレたかい?」

 

「表情で分かるよ…」

 

何故か彼女はサツキを妙に気に入っているらしく、彼が口づけた湯呑で眼兎龍茶を飲む、夜な夜な眠っている彼の頬に接吻をする、彼の周りに電子機器を近づけたがらないなどの奇行を行っている…

 

彼との関係に問題が生じる恐れがあると諭しても、一向にやめようとしない。結局彼女の奇行をやめさせるのは諦めてしまったが、これらのことがサツキにバレたらと思うと気が重い。最悪記憶を消せばよいとはいえ本当に彼女の謎の執着はなんとかならないものか…

メトロン星で地球製のちゃぶ台が大流行したことといいあの種族はなぜ地球関係で妙な執着を見せるのだ?

 

彼女に比べればゼットンは胃を痛ませることのない本当に信用の置ける存在だ。

ゼットン…我が故郷における最強の怪獣であり、怪獣墓場の住人となる前からの配下だ。

今回は潜入任務に辺り、人化したままでこの地球に来ているがダウンサイジングしたことによりパワーなどは落ちているとはいえ、鍛え抜かれた戦闘技術や数々の能力は健在であり、頼もしいことこの上ない。

 

そんな彼女だが現在はサツキの監視と護衛に就かせている。任務の方は順調で、サツキを外敵から守っていると同時にサツキに気づかれずにサツキの挙動をこちらに伝えている。

お陰で最近サツキが自らの力を行使して怪獣墓場の怪獣とのコンタクトを図っていることなどが分かっている。

 

少し気になるのが報告の中に靴下をどっちの脚から履いた、昼食は何から口をつけていた、風呂では何処から身体を洗い始めていたなどの細かいと言おうか、どうでもいい情報まで報告してくるのだ。そんなことまで報告しなくともと思ったが、本来は諜報の真似をやらせるべき人材ではないし、肝心な情報を逃した訳でもないので、大目にみている。思わぬ効果もあったわけだしな。

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

 

自室に入り眠ろうとしたところ、所持している端末に連絡が入った。

…ガッツ星人か。

 

ガッツ星人は組織の同僚の一人で何故か、サツキの情報を寄越せと躍起になっている。組織本部には定期的に情報を送っているのだが、彼女はそれでは足りぬとぬかす。

本当に面倒くさいのだが、ゼットンが送ってくる「どうでもいい情報」をそのまま送ってやると不思議としばらくは黙り込む。またしばらくすると騒ぎ出すのだがその度にゼットンからの報告を出すの繰り返しでなんとかなっている。

ガッツ星人も近日こちらへの増員として派遣される予定だが、そうすればこのやり取りもしなくて済むのだろうか?

 

いつものように「情報」を送信すると、私は睡眠の為(地球人に比べれば数分で済むが)、寝床へ向かった。




駄文閲覧ありがとうございました。
ご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。