仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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アギト編ラストです。


第9話 愛別離苦

 

ダブルのいきなりの行動に三人の反応は遅れる。

そこに撃ち込まれる紅き弾丸、三人は大きく吹き飛びながらも何とか体制を立て直した。

どうやら向こうは本気の様だ、ディケイドたちも頷くとダブルを退ける為に戦う意思を固める。

 

 

『疾走するは裁きを下す紅の猛火』

 

「さあ、ディケイド、クウガ、キバ。ボクらにその力を見せてくれ!」

 

 

ダブルはミュージカルの役者のごとく両手を開き、その存在を大きく見せ付けた。

そこにある確かなオーラに三人は少し気圧される。だがそんな事は言ってられない、翼の身が危ないのだから。

 

 

「ユウスケ、亘、作戦がひとつだけある」

 

「「?」」

 

「いいか? 俺が―――」

 

 

小声ですばやく作戦を伝えていくディケイド。

一方で首を振るダブル、早くしてもらいたいモノだと。どうせ何をしても自分には勝てない、諦めてほしいものだ。

 

 

「言ってくれるな! 変身!」『カメンライド――』『クウガ!』

 

「お願いしますドッガさん!」『いくっすよ! ドッガハンマー!』

 

「薫! タイタンだ!」『うん!』「『超変身!』」

 

 

キバとクウガ、紫の鎧が真紅の弾丸を防ぎながら前進していく。

だが特にダブルに動揺は無い。尚も弾丸を撃ち続けていき、三人をジッと見ていた。

 

 

「ハッ!」『フォームライド――クウガ・ドラゴン!』

 

 

ドラゴンフォームへ姿を変えたディケイド。

クウガたちの影からひとっ飛びでダブルの眼前へと迫る。

 

 

「おや?」

 

「うらッ!」

 

 

いきなり現れたディケイドにダブルは一瞬隙を見せた。そこにディケイドの蹴り上げが決まる!

ダブルの銃、トリガーマグナムは弾かれ、宙を旋回した後ディケイドの手に収まった。

 

 

『フォーム・ライド――』『クウガ・ペガサス!』

 

 

ペガサスの力でトリガーマグナムはペガサスボウガンへと姿を変える。

そしてそのままディケイドはペガサスボウガンをダブルへ向けた。

これで終わりだな、ディケイドは笑う。ダブルはやれやれと言ったジェスチャーをとり、両手を上げて後退しはじめた。

だがそれでもどこか余裕を持ったダブル。ディケイドは注意を払いつつダブルに近づいていく。

 

 

「おやおや、武器がなくなってしまったよ」

 

『大っピンチねゼノン!』

 

「さあ、悪いがそこを通らせて――」

 

 

 

 

 

 

 

 

『トリガァ!』

 

「は?」

 

 

ダブルは素早くメモリを外し、もう一度ボタンを押す。

そして再びベルトへと差し込んだ。すると――

 

 

『ヒート・トリガー!』

 

「げっ!」

 

 

ダブルの体が光ったかと思えば、再びその手にトリガーマグナムが握られているじゃないか。

すぐにボウガンを発射するが、ダブルは体を少し反らすだけで交わしてみせる。

しかもペガサスボウガンとは違いトリガーマグナムは連射がきく。

赤い弾丸は再びディケイドを捉え、大きく後方に吹き飛ばしたのだった。

 

 

「……こ、更新できんのかよ――ッ!」

 

「便利だろう? ふふふ」

 

 

ダブルはその言葉と共に跳び上がると、先程と同じくクウガとキバにトリガーマグナムを向ける。

二人は防御の構えをとるが――

 

 

「うわぁっ!」

 

「くっ…!」

 

 

頑丈なタイタンとドッガが赤き弾丸の前に押され始めている。

どうやら先程までの攻撃は手を抜いていた様だ。

 

 

「ふぅん、70でも結構耐えるのかな。フルーラ、80に出力を上げてみようか」

 

『了解よゼノン!』

 

 

そう言ってダブルの赤い部分が光る。

ソレと同時に弾丸の威力が上がり、クウガとキバは遂に防御の限界を迎えた。

 

 

「ぐわぁ!」

 

「まだまだ未熟な君達はライダーの力を使いこなせていない。防御力もそれに比例するんだ」

 

 

クウガとキバは炎を纏いながら大きく後ろへと後退していった。

やはり強い! しかしココは負ける訳には行かないんだ。

ドラゴンフォームに変わったディケイドは、その弾丸の中を潜り抜けダブルの方へと走る!

 

 

「へぇ……! しぶといじゃないか」

 

 

瞬時マイティにフォームライドしたディケイド。

接近戦に持ち込もうとするが、ダブルはヒラリと攻撃を避け反撃の弾丸を撃ち込んでいく。

笑いながら戦っているダブル。どうやら実力は大きく差が開いている様だ。どんなに拳を振るってもダブルはそれを華麗に交わして反撃の銃弾を打ち込んでいく。

 

 

「ふざッ! けんな!!」『カメンライド』『キバ!』

 

 

キバに変わると変則的な蹴りを繰り出してダブルを翻弄する。

しかし相変わらずダブルはディケイドの攻撃をしっかりと見極めており、攻撃の着弾時には弾くか回避するかの二択だった。

決して直撃は許さない、そして銃を使って的確なカウンターを行う。

 

ならばとバッシャーにフォームチェンジしてもそれは同じだった。

水の弾丸は追尾こそすれどその威力は出力を上げたトリガーマグナムを下回っており、弾丸はぶつかり合うと蒸発して撃ち負けてしまう。

考えろと踏ん張るディケイド。ドッガではスピードが足りずに離れた所から打たれて消耗戦になるだけ、ではガルルではどうか?

ディケイドはすぐにフォームチェンジを行うとガルルセイバーを構えて走り出す。銃と言う武器の性質上インファイトで戦えば厳しい物があるのではないか?

そこに希望を見出していたのだが――

 

 

「申し訳ない、ボクらも変わる事はできるんだ」『ジョーカァ!』『ヒート・ジョーカー!』

 

「何ッ?」

 

 

電子音と共にダブルの体が赤と青から、赤と紫がかった黒へ変化する。

トリガーマグナムが消えたかと一瞬油断するが、すぐに彼は切りかかっていたディケイドの腕を掴んで動きを止める。

しまった、変わった事に気をとられていた。ディケイドがそう思ったときにはダブルの拳が頬を打っていた所だ。

 

 

「―――ッ!!」

 

 

殴られたダメージもそこそこはあるが、何よりも殴った部分が小規模の爆発を起こしてダメージを増加させる事だ。

なんて厄介な、呻きよろけるディケイドへ今度は回し蹴りを命中させるダブル。これもまた例外なく炎があがり、ディケイドはさらに動きを鈍らせる事に。

そこへまた拳。これはヤバイ、ディケイドは一度後ろに跳ぶと体制を立て直――

 

 

「遅いよディケイド、もっと相手を見なくっちゃ」

 

「!!」

 

 

拳を構えたダブルはすでに目の前に。

ディケイドは苦し紛れに拳を突き出すが、当然それも回避されて重い一撃を胴体へ打ち込まれる事に。

 

 

「ガハァ……ッ!!」

 

『熱々の拳はいかがかしらー! うふふふ!!』

 

「兄さん!!」

 

 

回復したキバは立ち上がるとディケイドを助けようと走り出す。

しかしそこへ手をかざすダブル。するとその手から炎が発射されてキバの行く手を妨害する。

どうやら中距離の飛び道具もかねそろえている様だ。キバは熱に怯み動きを止めてしまう。

 

 

「今の君達ではボクらを止めようなんて不可能なのさ!」『トリガァ!』『ヒート・トリガー!』

 

 

ダブルはキバの動きが止まっている隙に、同じく膝をついて呻いていたディケイドを回し蹴りで吹き飛ばす。

さらに回し蹴りの最中にメモリをタッチ、交換する事でターンの終わりには再びトリガーマグナムが手に握られている。

後はその引き金を引いてキバに弾丸を命中させればいいだけ。スムーズな攻撃にキバもまた地面に倒れる事に。

 

 

「うぐっ!!」

 

「がはぁっ!!」

 

 

倒れる二人を見てダブルは愉快だと笑う。

悔しいがあの二人の実力は本物だ、ディケイドはそれを認めざるを得なかった。

 

 

『ああでもゼノン、長引かせていいのかしら? 電王が加わればワタシ達も楽には勝てないわ』

 

「流石はフルーラ! それもそうだね、ならさっさと決めてしまおうか!」

 

「くそっ! 馬鹿にしやがって!」

 

 

ディケイド、クウガ、キバの三人を相手にしながらも余裕を崩さないダブル。

ただ者ではないのだろう。ダブルはメモリを抜き取ると、それをトリガーマグナムに装填しようと手を伸ばす。

 

 

「―――……ふっ、ふふっ!」

 

「『?』」

 

「ははははははは!!」

 

 

だが突如笑い出すディケイド。

確実に何かあるな、ダブルは舌打ちをするとメモリをベルトへ戻した。

 

 

「……何がおかしいんだい? ディケイド」

 

「なにか、気がつかないか?」

 

「………」

 

 

ディケイドクウガ、キバ、クウガ。

三人の仮面ライダーは一列に並ぶ。何をいきなり、ゼノンは意味不明な行動に思わず沈黙した。

すると、どうやら彼より先にフルーラが意味を理解したようだ。

 

 

『あぁ……なんて事なのかしら』

 

「え?」

 

 

とんだピエロだわ、そう言ってフルーラは変身を解く。

まだ意味が分かっていないゼノンに耳打ちすると、ふてくされた様に彼女は頬を膨らませた。

 

 

「……はん! なかなかやるじゃないか、君のカードは把握していたけど――」

 

 

ゼノンは軽く舌打ちをすると、トリガーマグナムでクウガの眉間を撃ち抜いた。

クウガはそのままバタリと倒れるが、すぐにデータの残骸となって消える。

確かにおかしな点はあった、キバだけが立ち上がったあの時に気づくべきだったか。

 

 

「アタックライド、イリュージョンね」

 

「ああ、初めてつかったけど中々凄いなコレ!」

 

「クウガのベルトが君と同じだと気づいた時のボクの気持ちが分かるかい? まったく、とんだ茶番だよ」

 

 

ディケイドはクウガになった時点で質量がある分身を作るイリュージョンを発動させていたのだ。

そして偽者のクウガと本物を戦いの中で交換していた。本物のクウガ、ユウスケと薫はディケイドとダブルが戦っている一瞬の隙を見抜いて、ドラゴンフォームへと変わる。

そのまま二人のはるか頭上を飛び越えて、翼の所へと走って行くのであった。

 

 

「悔しいがお前らに正攻法で勝てるとは初めから思ってないからな、悪いけど一芝居うたせてもらったぜ」

 

「チッ! ベルトには特に注意していなかったからね――!」

 

 

でも、いいのかい? ゼノンはハットで表情を隠しながら口だけを吊り上げる。

 

 

「ここで翼を助けてしまえばアギトに覚醒するチャンスを逃してしまうかもしれない。そうすれば君達は最悪一生この世界で暮らす事になるんだよ」

 

「……それは違うぜ」

 

「?」

 

「人は、一人じゃ強くなれないんだよ」

 

「ああ、そう」

 

 

ゼノンとフルーラはお互いに見合い、少し複雑な表情を浮かべると――

 

 

「まあいいや、それもおもしろいかもね」

 

「ええ、そうねゼノン。ワタシ達はあくまでもナビゲーターなのだから」

 

 

またいつもの様に笑う二人。

そしてオーロラを出現させたかと思えばあっという間に中に消えていく、彼らの目的は何だったんだろう?

だがコレで道は開かれた、なんとかして彼の所へたどり着ければいいのだが――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その翼は幸せだった。

二度と会話すらできなくなってしまった彼女とまたこうして再び笑い合えているのだから。

もう彼は疑わない。いや、心のどこかで怪しく思うところはあったのかもしれないが彼はソレを否定する。

永遠にこの世界にいたいと思う。目の前の彼女は今もこうして笑っているのだから、それでいい。それがいい。

この甘いシロップみたいな世界に魂を浸し続けたい。それを、彼は切に望む。

 

 

「どうしたの?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

 

あれから何日が過ぎたのだろうか?

いやもしかすると一時間も経っていないのかもしれない。だけどどうでもいい、彼女がいれば――それでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にそうなのか?」

 

「!!」

 

 

ふと否定される世界、その得体の知れぬ声が翼の精神に突き刺さる。

 

 

「……葵さん」

 

「ん?」

 

 

そうだ、僕が彼女を呼べば彼女は返事をしてくれる。

それは偽りなんかじゃない、なによりの証拠じゃないか。その何を疑えと?

 

 

「そういえば翼くんってメガネ掛けてたっけ?」

 

「え……」

 

 

トッテモ ニアウヨ。

彼女は優しく、そして機械的にそう言って笑った。

 

 

「……少し、外の空気を吸ってくるよ」

 

「え? ああ、うん、わかった。気をつけてね」

 

 

翼は外に出て海辺へと足を進めた。

波の音、風の音、感じる温度、匂い。全てがリアルに思える。

でもこれは所詮――

 

 

「お前はそれでいいのか?」

 

「………」

 

 

砂浜には名も知らぬ男、いきなり現れて何なんだ。

翼は少し険しい表情で男の言葉に反応する。

 

 

「失礼ですが貴方は?」

 

「俺の事はいい。問題はお前だ」

 

「……なんの事ですか?」

 

「とぼけるな。お前も分かっているんだろう?

 この世界は偽りで塗り固められた虚構の存在、幻で人をあざ笑う偽りの救済。つまり、あの女は――」

 

「違うッッ!」

 

 

違う!

違うっ!!

違うッッ!!!

彼女はそこにいるじゃないか、なのになんでこの人はそれを認めない! 否定する!?

 

 

「誰なんですか貴方は!」

 

「お前と同じ、幻にとらわれた愚かな一人だ」

 

 

男は語り始める。

彼の子供は既に亡くなっているらしい、しかしその子供にこの世界で出会えたと。

もちろん男は歓喜した。また再び家族で一緒にいられると何の疑いすら持たなかった。

 

 

「だがな、ふと気づいてしまったんだよ。所詮は幻、儚く、脆い幻想だと」

 

「……貴方が何者かは知りません…ですが、葵さんは本物です」

 

「本当に、本当にお前はそう思うのか? 過去の記憶だけで形成された幻想にはいつか矛盾が生じる」

 

「くっ!!」

 

 

男は声を荒げ翼に詰め寄った。

知らない、翼はその手を振り払い背を向ける。

耳を塞いで今すぐに走り出したい所ではあったが、翼としても彼の言っている事の意味を理解してしまった。

 

 

「俺も、俺の仲間も皆幻想に囚われた。

 そして残ったのは俺だけだ! なぜお前達はこの幻を否定しない! なぜ認めてしまうッ!?」

 

「貴方だって認めたんでしょう!?」

 

「確かにな。だが俺は今その幻を否定してココにいる! お前はどうなんだ、否定できるのか!?」

 

「辛い事からは逃げていればいい、嫌な事からは目を背ければいい!

 人間はそういう生き物なんですよッ! 彼女は本物だ、それでいいじゃないですか! どうして否定するんですかッッ!?」

 

 

もう、翼はどこかで分かっていた。

この世界が嘘だと言う事を、だけどそれを彼は否定した。いや否定し続けるのだろう。

否定しなければそこで終わってしまう。だから今もこれからも。翼がその思いを込めると、光と共にベルトが現れ装着された。

オルタリング、それはアギトへと変わるためのアイテムなのだが――

 

 

「私は……彼女を守れなかった。でも今度は違う! 私は彼女を守る、守るんです!」

 

「やめろ! 目を背けるな! お前はまだ間に合う!」

 

 

間に合わない? それでもいい、彼女と一緒にいられるのなら!!

変身――ッ!

 

 

「くっ!」

 

 

翼は変身する。アギトではなく――竜骨へと。

 

 

「やめろ! 今ならまだ間に合う!

 そいつに変身し続ければやがてそいつに心も身体も食われる事になるぞ!!」

 

『守る…彼女を…守る…彼女を…僕はどうなってもいいから…』

 

 

竜骨はふらふらと男の方へ歩いていく。

既に声が濁り始めていた、このまま変身したままならば彼は――

 

 

「ふざけるなッッ! お前の命はお前だけの物かッ!?」

 

 

そこでピタリと、竜骨は足を止めた。

 

 

「お前がここで永遠に夢の中を彷徨うのは勝手だ。だがそれを悲しむ奴がいないのかと聞いた!」

 

『――――ッ!』

 

 

鈍る思考の中、ユウスケ達が脳裏を過ぎる。そしてあの日、葵が死んだ日を思い出す――

綺麗な顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら薫は翼にメガネを差し出した。

それは事故で亡くなった姉のモノ、薫はせめてもの形見にと翼にそのメガネを送ったのだった。

正直、彼女の後を追う事も考えた。だがそのメガネを受け取った瞬間その考えは綺麗に消え去る。

今、目の前にいる彼女に、そこにいる弟の為にも。

 

 

「あ……」

 

 

そして今、視線の先に見つけたのは――

 

 

「兄貴ッッ!」

 

「翼さんッ!」

 

 

ドクンッ! そう竜骨の心が揺らいだ。

 

 

「兄貴! 何やってるんだよ! そんな姿になって何やってるんだよ!!」

 

 

竜骨と化した兄に向かって、ユウスケは力いっぱい叫ぶ。

何故翼があのような姿になっているのか? 理由は分かりきっていた事。

しかし、ユウスケは叫ぶ。

 

 

「帰ってきてくれよ兄貴ッ! おれ兄貴に期待して裏切られたこと一回もないんだ、兄貴はおれの憧れなんだよ! だからこんな所で終わらないでくれよっ!」

 

「帰ってきてよ翼さん! ここで諦めたら絶交だから! 人間としても見ないから! サルでもできるんだからこんなのッッ!」

 

 

泣きそうになりながらも薫は叫ぶ。竜骨は頭を抱えてうずくまった。怖い、苦しいッ!!

悲しい! 哀しい!! 嫌だ!! 離れたくないッッ! また、また離れ離れになるのか!? また叶うことの無い夢を見なければならないのか!?

彼女はそこにいるんだぞ!? 彼女は僕の言葉に答えてくれるんだぞッ!!

 

なのに――

 

 

 

なのにッッ!

 

 

 

 

 

 

「兄貴ッッ!!」「翼さんッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは暗闇、そこは無、そしてそこに僕は立っていた。

頭は重く、思考は鈍く働くが、起こった出来事だけは鮮明に覚えている。

いつだって変わるって事は難しい事だった。だからこの変身だって――そう。

 

 

「ねえ、どうしたの? 帰ろうよ」

 

 

後ろから声がして振り向くと、葵さんが僕を迎えに来てくれていた。

僕は彼女に微笑みかけると――

 

 

一歩、後ろに下がる。

 

 

「ねえ、葵さん」

 

「ん?」

 

「君は僕の光りだった」

 

「え? ちょっとどうしたのいきなり」

 

 

普段であれば絶対に言わないだろう恥ずかしい台詞も、この時だけはすぐに言葉にする事ができる。

驚いた様に笑う彼女。それでも僕は続けた、続けなければならないんだから。

もうココを逃してしまえば言えないかもしれないだろ?

 

 

「どんな暗闇でも君がいれば僕は道に迷うことはなかった」

 

 

たとえ幻であったとしても、彼女が彼女である事に変わりは無い。

ならきっと彼女は分かってくれる筈だ、理解してくれる筈だ。

いつもみたいに笑いながら。

 

 

「………」

 

「僕も、キミのように、なれると思うかい?」

 

 

葵さんは何も答えない。しかし構うことなく僕は続けた。

そうしてくれていた方がコッチとしてはやり易い。もしかしてそれすらも分かってくれているのだろうか?

なんて、考えすぎか……。

 

 

「僕は今、本当に形だけだけど彼らの引率者なんだ。

 もし彼らが迷った時に、僕が少しでも力になれたらそれはとても素敵な事だとは思わないかい?」

 

「………」

 

「それが僕の夢なんだ。でもさ、それじゃあまず僕自身がしっかりしないとね」

 

「………」

 

「いつまでも恋人に未練タラタラの男なんて、情けないだろ?」

 

 

軽く笑ってみせる。そしたら彼女もすこし微笑んでくれた。

それが嬉しくて。何より、哀しかった。分かってくれると言う事は否定しなければならないと言う事だ。

この甘い幻想を、そしてその先にあったかもしれない世界を。

 

 

「僕は君に甘えてたのかもね。でもさっきの言葉で分かったんだ、僕はもう充分君に甘えた」

 

「………」

 

「だから次は僕がユウスケや薫ちゃん、司君達に甘えられる存在にならないとね」

 

 

また一歩、彼女から離れる。彼女は何も言わずに微笑むだけ。

本当の事を言えばもっと彼女の声が聞きたかった。だけどこれでいい、じゃないと――

 

 

迷ってしまうから。

 

 

「僕は君の死を受け入れられない。君にまだすがりたい、一緒にいたい。

 でも駄目だ。嫌なことや辛い事から逃げていたい。でも、それでも僕は進まなきゃいけない」

 

 

それが幸か不幸か、選ばれてしまった自分の責任だ。

ベルトから暖かい光りがあふれて来る。僕は彼女に背を向けて歩き出した。振り返りたい、だけど駄目だ。

もう一度彼女の姿を見ればきっと立ち止まってしまうだろう。僕はもう前には進めないだろう。

自分に嘘をついてまでやらなければならない事があるんだ、全く大人って奴は大変なんだからさ。

 

 

「ありがとう葵、君とまた話せて嬉しかったよ。だけど僕はもう行かなくちゃ」

 

 

幸せすぎる夢だった。

でもやっぱりこれは夢でしかない、そろそろ覚めなきゃいけないんだ。

 

 

「………」

 

 

はじめて会った時は引越しの挨拶だったかな。

隣って事もあってユウスケと薫ちゃんはすぐに仲良くなったけど、僕らは少し恥ずかしくてあんまり話せなかったっけ?

足と心が動かなくなりそうだ、しかしそれでも歩かなければならない。振り返ってはいけない。

 

振り返らない事が、死にたいくらい辛いんだな。翼はあまりの事に笑いながら涙を流した。

出会ってそれから、何度も会ううちに仲良くなって。そして――

内ポケットには指輪が入っていた。彼女に送るはずだった……その指輪が。

 

 

「ありがとう」

 

「ッ!!」

 

「――……がんばってね」

 

 

ふと、後ろからそんな言葉が聞こえた。

ああ、頑張ってみるよ。皆を照らす道しるべになれる様にね――

 

 

「さよなら、葵」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……すみませんでした』

 

「お前ッ! まさか!!」

 

 

竜骨は「その」構えをとり、ゆっくりと手を前にかざした。

 

 

『変身――ッ!!』

 

 

その時、天が割れ一筋の光が竜骨を照らす。

直後、その体が光り輝き仮面ライダーアギトへと姿を変えた。

 

 

「兄貴!」

 

「翼さん!」

 

「ユウスケ、薫ちゃん。心配をかけたね。でも、もう大丈夫だよ」

 

 

それに、とアギトは薫を見る。

 

 

「サル以下は嫌だからね」

 

「うんッ!! 最高よ義兄さん!」

 

 

薫は涙を浮かべて微笑んだ。『義兄さん』か……嬉しいね。

そう言いながらアギトは次に黒いコートの男に視線を移す。何も言わずに、しばらく立ち尽くす二人。

 

 

「……幻想を打ち破ったのか」

 

「ええ、すみませんでした。

 ただ気づくだけなのに貴方に言われるまで僕は現実を直視できなかった。貴方は――」

 

「それは、この世界に決着をつけてから聞こうか」

 

 

男は小さく笑って姿を消した。

その際に現れたのはゼノン達が使うオーロラ、それを見てアギトは何かを悟った様だ。

さて、ならばこっちはこっちでケリをつけなければ。アギトは天に手をかざす。すると太陽は眩いオレンジ色の光を放ち、彼に新しい姿を与える!

 

 

『アギト・トワイライト』

 

 

それは司ですら知らないアギトの姿だろう。

この幻想の中を切り裂く橙の輝き。すべての幻、偽りを破壊する太陽の力!

 

 

「………」

 

 

アギトの目には真実が映し出されていた。

この世界の幻影を全て取り除いた世界が。そして、見つける。この世界の心臓を!

 

 

「ッ!」

 

 

アギトはベルトの中心から武器を出現させる、トワイライトアロー。

それをアギトは構え、直後発射した。

 

 

『ガァッ!!』

 

 

矢はアンノウン、"ピーコックロード・バーボス・ミラージュ"に突き刺さる。

それをきっかけに幻の世界は崩れ、真実の世界がさらけ出される!

 

 

「………っ、こんなに狭かったのか」

 

 

ガラスの様に世界が砕けた後、そこに残ったのは何もない砂漠。

そこにバーボスミラージュとディケイド達がいる。しかし驚くべきはその距離だ。

あれ程離れていた筈なのに、今ディケイドたちは少し走れば届く距離ときた。

 

 

「結局この場所は幻影だけの世界だったと言う事だね。街さえも幻だったとは……」

 

 

アギトの発言を聞いて、ディケイド達が駆け寄ってくる。

 

 

「先生! アギトになれたんですね!」

 

「お、俺の知らないフォームだ…」

 

 

展開された橙色のクロスホーン、黒と灰色の身体。

そして黄色の複眼。今のアギトの姿を知っている者はまずいないと見て間違いない。

これは、彼だけのアギトなのだから。

 

 

『何故だ……ッ! 何故この世界を否定するッ!』

 

 

孔雀を模したバーボスミラージュ。彼(?)は矢を引き抜き、アギトに問いかけた。

別名は天使なだけはあるかもしれない、美しい羽を持ったバーボスミラージュ。

その姿は何とも儚げで美しい。

 

 

『お前達人間はいつも間違ってばかりだ! だが、この世界にいればいつまでも幸せに暮らせる。

 そしてすぐに永遠の安らぎである死を迎えられるのだ! なのに……なのに何故それを拒むッ!!』

 

「確かに、君の幻に浸れれば幸せに最期の時を迎えられただろう。だけど覚えておいて欲しい、人間の幸せは個人の問題じゃないと」

 

 

そう言ってアギトはユウスケと薫、ディケイド達を見る。

たとえ自分が幸せになれても、それが原因で親しい人を泣かせる様な事があってはいけない。

だから、その幸せは叶えてはいけないのだ。アギトはそう言って、バーボスミラージュの説いた幸福を否定した。

 

 

「僕……いや私達には守るモノがある。君には悪いけれど、ここを去らせてもらうよ」

 

『やめろ! 人間は間違える! 間違え続ける愚かな生き物だ!』

 

 

こうなれば、自分の手で救済を。

バーボスミラージュは自らの羽を刃に変えて発射した。いきなりの攻撃にアギトは防御が遅れる――

 

 

「……ッ!? 司君!」

 

 

羽はアギトに刺さる事はない。全てディケイドが受け止めているから!

 

 

「間違える事の何が悪い……ッ!」

 

『何っ?』

 

「人間は痛みを知らなければ成長する事はないッ! 痛みを知らなきゃ痛みを理解する事もできない!」

 

 

ディケイドとアギトは並び立ち、目の前にいる天使と対峙した。

 

 

「確かにお前の世界にずっと入れたら幸せかもしれないさ、でもそれは結局自分だけの幸せでしかない!

 

 

それは否定、彼のつくる幸福で終わる世界を否定する意味だった。

自分達はここに滞在しない、だからこの世界の幸せはいらない。

 

 

 

「人は他人と関わる事で良くも悪くも成長するんだ。

 他人を幸せにする事も人間には必要なんだよ。お前はそれを愚かと言うのか!?」

 

『当然だ! お前達はいつまでも幻想の中にいればいい、夢の中で暮らせば良い! 永遠に幸せでいられるのだから!』

 

「それが違うって言ってんだよッ! 人間は誰だって幸せになりたいさ、幸せに暮らしたいさ!」

 

 

それは誰しもが求める事だろう。だからこそそこに格差が生まれる。

世界はなんとも残酷だ、誰しもがただ幸福であり続ける世界を決して作ろうとはしないのだから。

 

 

「現実はそうじゃないんだよ、だけど皆生きてる! 何かの為に必死で生きてるんだよ!」

 

 

なんとも醜い世界が事か。

幸せを求める過程で人は多くの不幸を、悲しみを、そして喜びを体験していく。

 

 

「俺達も、俺達の世界のために! ここで止まる訳にはいかないんだッ! 守りたい人がいるんだよ!!」

 

『守るために傷つく? 人を幸せにする? 愚かなッ! お前達人間はいつまでも夢の中で生きていれば良い! 成長などしなければいい!』

 

 

激しくなる口論。

そんな中でアギトは静かに呟いた、そしてディケイドの前にやってくる。

そのどこか悲しげな背中が、ディケイドには大きく見えた。

 

 

「そうだね、愚かだよ。いつまでも亡くなった人間にすがって……」

 

 

だけど、と。

アギトはグランドフォームへチェンジする。

 

 

「大切なモノの為に戦い」

 

 

アギトはユウスケと薫、自分の『家族』を見た。

 

 

「友達の為に戦い」

 

 

キバ、ディケイドもまたバーボスミラージュに向かって構える。

そしてディケイドが手にしたカード。それは、アギト覚醒の証明。

 

 

「時に間違え、時に迷う。それが――」

 

『ファイナル・フォームライド――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間と言う、愚かな生き物なのさ」

 

『アアアアギト!』

 

 

アギトの体が光り、アギトトルネイダーへと変化する。

空に浮かぶ巨大なスライダーボード、ディケイドはそれに飛び乗るとさらにカードをライドさせた。

 

 

『ファイナルフォームライド』『キキキキバ!』

 

 

キバアローを構え、ディケイドはアギトトルネイダーを発進させる。風を切り裂くそのスピード!

 

 

『理解できぬかッ! ならば永遠の安息を!』

 

 

次々に襲い掛かる羽を楽にかわす小回り、アギトトルネイダーは猛スピードでバーボスミラージュに迫る!

バーボスミラージュも恐れることなく羽を発射した!

 

 

『全ての人間に永久の楽園を!』

 

『ファイナル・アタックライド』『キキキキバ!』

 

「やアアアァアアアアアアッッ!!」

 

 

迫り来る無数の羽を貫き、キバアローがバーボスミラージュを捉える。

しかしそれでもバーボスミラージュは人の永遠たる安息を説き続けた。

ここにいれば、誰もが幸せになれるのに。

 

 

「お前の幸せは……」『ファイナルアタックライド――』

 

 

ディケイドはゆっくりと首を振った。

 

 

「辛すぎる――ッ!」『アアアアギト!』

 

 

ディケイド達の前にアギトの紋章が現れる。

その紋章を通過すると、アギトトルネイダーは金色の光に包まれ加速した。

 

 

『「うおおおおおおおおおおおおッッ!」』

 

『ガャァアアアアァアアアアッ!!』

 

 

そしてそのままバーボスミラージュを吹き飛ばす。

美しい羽根を撒き散らせ、バーボスミラージュは地に伏したのだった。

 

 

『何故だ…! 何故幸福を……否定す…る?』

 

「俺は破壊者だ。だからこそ、この幻を破壊する」

 

『なら…ば…答え……ろ! お…前の幸…せ…とは…なんだ?』

 

「そんなもん……分かるかよ。だから探すんだ、俺達の世界でな」

 

「君は――」

 

 

アギトは瀕死のバーボスミラージュに手を差し伸べる。保健室の治療器具を使えばまだ助かるかもしれない。

確かに多くの人が幻影に飲まれ死んだだろう、だがそれでもアギトはこのアンノウンが気になってしまった。

人の命を奪った重大さは分かっていないのだろうが、どうしてもアギトはバーボスミラージュに話を聞きたかったのだ。

 

 

「君は何故、人に幸福を与えるんだい?」

 

『理由か、それは…儚き夢……叶えたい…願いも、成就…したい望…み…も…あった…だろうに……少女は…幸せに…な…れ………―――』

 

 

バーボスミラージュは訳の分からない事を言う、そしてアギトの手を振り払い消滅した。

アギトはその手を強く握り締める。勝利の余韻も、喜びすらない、ただ存在するのは虚しさ。

 

 

「こんなに……虚しい勝利は初めてだ」

 

 

変身を解いた司は、静かにそう呟いた。

翼もまた変身を解除する。バーボスミラージュは間違った事をしていたのかと聞かれれば、それは口を閉じるしかない。

もしも自分達に守るべき物がなければ、きっと彼の作る幸せは何よりの救いだった筈だから。

 

 

「帰ろうか、もうこの世界には――……」

 

 

翼は何もない世界を見回す、そう。

 

 

『翼くん!』

 

 

何もない世界なのだ。

 

 

「この世界には、何も……『誰も』いないんだから……」

 

 

翼の頬に一筋の雫が流れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は、これからどうするんですか?」

 

「そうだな、もうこの世界で迷う人間もいないだろう、俺の役目は終わった」

 

「役目、ですか」

 

「ああ。少しでも我を取り戻してくれる奴らがいればとな」

 

 

何もない世界で二人の男が立っている。

一人はこれから、一人はもう終わり。二人はそれを理解していたし、互いが羨ましいとも思わなかった。

 

 

「悪い。火を持ってはいないか? 世界が滅んじまってライターがどこにもないんだ」

 

 

男はコートからタバコを一本取り出して咥えた。

しかし生憎だが翼はタバコを吸わない、それを聞くと少し残念そうに男は眉を下げる。

だがそこからはしばらく言葉無く過ごす二人、何を言って良いのか、何をすればいいのか。

 

 

「想う心が強ければ強いほど幻影はソイツを捕らえて離さない。皮肉な話だ」

 

 

その内に男がふいに言った。貴方はどうやって幻想を――

翼はその言葉を口にするのを止めておく。彼もまた自分なりの決着をつけたんだろう。

それを自分が知ってどうとなる事でもない。

 

 

「行く当てはあるんですか?」

 

「何、どこかまた新しい世界へ適当に旅立つさ。俺達の旅はここで終わったが、俺の旅はまだ終わってないからな」

 

 

俺達の旅、その言葉で翼の予想は確信へと変わる。

幻想で作られた世界、そこに何故彼が存在していたのか?

 

 

「やはり、貴方は――」

 

 

お前も薄々気がついていたんだろう? そう言って男は笑う。

翼は申し訳なさそうに微笑み返すと、深く頭を下げた。

今は何も聞かない、聞いてしまえば後悔しそうになるから。だから――

 

 

「お願いがあります」

 

「ん? なんだ?」

 

 

翼はベルトを出現させた。

 

 

「一度、手合わせを……お願いします。"先輩"」

 

「はは………っ」

 

 

男は困った顔をしながらも、翼の前に立つ。

 

 

「いいだろう、見せてみろッ!」

 

 

光りと共に男の腰にもベルトが出現した。

二人はそれぞれの構えをとり、対峙する。それがどう言う意味なのか。そして、何を告げるのか?

 

 

「貴方の名前を教えてはくれませんか?」

 

「ふっ、名前などもう忘れたさ!」

 

 

男は一体どれくらいの間この世界で人を見守り続けたのだろうか?

名前も忘れるくらいの時間。もはやそれは途方もない世界。

 

 

「だが――」

 

「「変身!」」

 

 

二人は変身する。アギトへと!

 

 

「俺も不完全だが、一応はアギトだ。そうだな、お前とは違うアギト」

 

 

男は笑う。名前を決めた事にか、それともこの世界から解放された事へなのだろうか?

どっちでもいい。男は自らの名前を大きく宣言して走り出した!!

赤いマフラーの様な物をなびかせて。

 

 

「俺の名はアギト! 仮面ライダーアナザーアギトだッ!

 行くぞ!! アギトォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

 

 

悲しき世界で、二人のライダーキックがぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり……彼は強いね。負けてしまったよ」

 

 

「兄貴……」

 

 

学校の入り口で待っていたユウスケに翼は苦笑交じりにつぶやいた。

結果は完敗、もう少し戦えるのではないかと期待していたんだがどうやらそう甘くも無かった様だ。

 

 

「次は拓真君が選ばれたんだって? 私も協力するよ。きっと彼も大丈夫さ、ちゃんとファイズになれるよ」

 

「……ああ。そうだな!」

 

 

そう言ってユウスケは皆の所へ走っていく。

それを微笑みながら翼は見つめ、そして同時に口を開いた。それはかなり小さい声だったが――

 

 

「一つ聞いてもいいかな……?」

 

 

しばしの沈黙。彼は独り言を言ったんじゃない、質問をしたのだ。

しばらくするとそれに気づいたのかゼノンとフルーラがオーロラを介してやってきた。

二人は翼がアギトになった事をほめると、急に真面目な顔になって翼の質問を待った。

どうやら彼らもアギトが真実に近づいた事を察知したらしい。何かな? そう言ってゼノンは笑う。翼は彼らに視線を移すことなく、たった一言だけ投げかけた。

 

 

「私達は、何番目なんだい?」

 

「……さあ? どうだろうね」

 

 

やはり、答えてはくれないか。

翼は二人にお礼を言って歩き出した、しばらくこの事は胸にしまっておこう。

まだそれを証明できるだけの物は無い。それにこれを言ったら司達を混乱させてしまいそうだから。

翼はその時、ふとメガネに触れる。度が入っていない彼女のメガネ。

 

 

「割り切れる訳……ないじゃないか――ッ!」

 

 

翼は優しく、悲しく微笑むと皆の所へ歩き出すのだった。

こうして、アギトの試練は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 




アギトのオリジナルフォームについて。


『トワイライトフォーム』

能力は状態異常無効化。
翼視点、アギトの行動を縛る概念を持った攻撃、または能力を無効化する。
ミラーワールドの中に入れる等、特定の制限も無効化する事ができる。
さらに高速移動の動きが手に取る様に分かる等の強力な効果を持っているが、デメリットとしてフォームの戦闘能力はかなり低い。

武器は弓、トワイライトアロー。
攻撃力は低く、連射もできないが、ありとあらゆる存在に命中させる事ができる。

必殺技は威力を上げた一撃を放つトワイライトプルーフ。
この技で相手にダメージを与えると、しばらくの間相手が使う変化に関する攻撃を封じる。


と、まあこんなもんかな?
あとまだ他にもオリジナルフォームは出てくる予定なので、苦手な方はごめんなさい!

ではでは
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