仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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はい、遅くなって申し訳ない。
今回から龍騎編ですね。ただこの編は原作の龍騎のネタバレがあるんで、まだ見てない人はごめんなさい。


龍騎の試練
第14話 話41第


 

 

 

 

 

 

「つ、司! お前今何て言った……!?」

 

「だから――」

 

 

司は少し戸惑いながらも、真志に全てを伝える。

 

 

「っ!」

 

 

真志は何も言わない。

しかし見開かれた目が全てを語っていた、司はそれを感じつつもあえて続ける。

 

 

「しかも――」

 

 

真志は、それから司が喋る言葉を食い入る様に聞き入っていた。

質問をする訳でもない、反論する訳でもない。ただ一心に司の話を聞くだけだった。

 

 

「――って言う訳だ」

 

「………」

 

 

司が一通り喋り終わると、真志は何も言わずうつむく。

悲しむのではなく、余韻に浸る訳でもない。心に穴が開いた様な感じだろうか。

真志はただ何も言わずにうつむいたままだった。司は真志の心情を察して教室を後にする。

その後も、真志はしばらくそのまま動く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ、素晴らしい朝だな」

 

「おはようございます双護さん」

 

「おはおは!」

 

「ああ、おはよう」

 

「うぃーす」

 

 

朝になりそれぞれが起床してくる。

実はファイズの世界が終わってから、皆は翼と葵の事を知った。

何故自分が世界の幻想に飲み込まれたのか、ココで知っておいてほしいと翼は言ったのだ。

それは彼の弱さであり、彼を支える思いでもある。しかしやはり驚くメンバー達。それから少しは皆元気が無かったが、翼の願いもあってもうだいたい元通りの雰囲気に戻っている。

今は朝食。食事は当番製になっており毎回くじ引きで決めたペアがそれぞれを担当していた。

 

 

「今日は相原と白鳥が当番か。助かったな……」

 

「そうだな。この間のハナと真由ペアは料理じゃなくて毒物生成だったから」

 

 

司はこの前の夕食を思い出してしまい、テンションが下がってしまった。

とにかくそれほど酷いモノだったのだ。思い出すだけでも吐きそうになる。

ああ、それに洗濯物も当番によってはめちゃくちゃにたたんだり洗ったり――

誰もが口にする事は無いが、誰かお手伝いさんか、家事専門にやってくれる人が来てくれればと何度願った事か。

 

 

「ちゃんと分量を考えれば誰だってそれなりのモノを作れますよ。美歩先輩だって最初は無理とか言ってたけどちゃんと作れたじゃないですか」

 

「あはは、ぎゃむっちの教え方がうまかっただけっすよ!」

 

 

美歩は笑顔で我夢を突っつく。恥ずかしそうだったけど嬉しそうな表情だった。

そうしていると、また誰かが食堂にやってくる。

 

 

「はい到着ぅ。俺の方が先に到着ぅ! 咲夜さんよぉ、俺の方が早起きって事でおkですよねー!」

 

「馬鹿か貴様は、ただ単にお前の方が先に食堂に入っただけだろうが。ワタシの方が先に起きていた!」

 

「はい違いますぅ、椿くんの方が先に起きてましたー。お前、じゃあ今日何時に起きた? おら、言ってみろよ!」

 

「はっ、六時だ」

 

「はい俺の勝ちでしたぁ。椿くん五時に起きてましたー! 俺の勝ちー!」

 

「嘘をつけ、嘘を。昔から起きるのが苦手だったアホが何を言っているぅ? それにアレは嘘だ。ワタシは四時半に起きていた」

 

「………つ、椿くん――ッ よくよく考えたら四時に起きて――」

 

「うるせえええ! お前らさっさと席に着けよッ!」

 

 

相変わらずだな、司達はため息混じりに二人を見る。

椿と咲夜は既にどっちが朝食を早く食べられるかで戦いを始めていた。

よく飽きないモノだと皆は笑う。しかしそんな中、一人だけ浮かない顔をしている者がいた。そう、真志だ。

 

 

「………」

 

 

先程からずっと黙っている。

見れば食も進んでいない、それだけでなく先程から何度もため息をついては遠くを見つめていた。

何か考え事でもしているのだろうか、心ココにあらずと言った感じである。

 

 

「元気ないですね。真志君」

 

「まあ今回は真志君が選ばれたんだ。緊張するのも無理はないよ」

 

「うーん……正直、真志はこう言う事で緊張しないタイプだと思ってたんだけどなぁ」

 

 

美歩は先程から何ども真志の方をジロジロと見ているが、それすらも気づく様子は無かった。

普段なら、すぐに反応しそうなものだが――

 

 

「多分違うぞ、それ」

 

「え?」

 

 

複雑な表情で司が会話に参加してきた。

美歩は先ほどの言葉の意味を司に問う、司は言いにくそうにしながらも渋々と言った感じで口を開いた。

 

 

「いや、実は――」

 

 

 

 

 

 

「はいー完食―! 俺の勝ちー! ハイお前の負けー」

 

「はっ? お前は馬鹿か? トマトが残ってるぞぉ」

 

「あー、しょうがないしょうがないー! トマト食うと俺の中に眠っている堕天使が――」

 

「あああああ! うるせえええええな! 少し黙ってろ!」

 

「「チッ!」」

 

「じ、実はな――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 龍騎の結末?」

 

「ああ、それを話したらずっとあの調子って訳だ」

 

 

美歩達は首を傾げる。どうしてそんな事であんなに沈んでいるのだろうか?

だが、それも予想通りといった様子で司は続けた。

 

 

「いいか? 龍騎ってのは――」

 

 

司はそう言って龍騎の話を聞かせる。

 

 

「ゲッ! それマジ?」

 

「ああ、死ぬんだよ。城戸真司は」

 

「へえ、主人公なんだよね?」

 

 

翼と美歩もしばらく固まってしまった。

まさか子供向けの番組で主人公が途中交代なんて予想できるはずも無い。

まあ、途中といっても終盤の終盤ではあるが、少なくとも龍騎に選ばれている真志にとっては複雑な思いがあるのだろう。

 

司は当時を思い出しながらも、ため息をつく。

まあ分かっていたといえばそうなのだが、どうしてもいざ直面するとなんとも言えない気分だった。

真志は主人公、城戸真司の事をとても気に入っていた。だが真司の結果は死と言うもの。

俺だって伝えるかどうか迷ったんだ! 司はすこし口調を強めるが、意味は無いと悟ったのかすぐにやめた。

 

 

「つまり何だ。簡単に言えば条戸は好きなキャラクターが死んで落ち込んでいると言う訳か」

 

「ま、まあ簡単に言えば。でもちょっとソレとは違う様な――」

 

 

だが確かに真志は落ち込んでいたのだ。

司から龍騎の話を聞いて、何を重ねたのかは知らないがライダー同士の戦いを止めようと努力する城戸真司を彼は尊敬していた。

そんな彼に憧れていた。しかし城戸真司は死ぬのだ、モンスターから女の子を守って。

 

別にその行動も彼らしいと言えば彼らしいが、真志はそれを予想していなかった分大きなショックを受けてしまった。

結局ライダーバトルに参加した全員死亡という結果に、真志はやり切れない切なさを感じる。

最後まで戦いを止めようと戦った彼ですら、戦いの運命に飲み込まれる結末。

 

 

「………」

 

 

結局、真司のした事は正しかったのだろうか?

ライダーバトルに勝ち抜けば願いを叶えてもらえるという。だったらいっそ勝ち抜いて――

真志が龍騎だったとしたら、彼はいったいどんな願いを賭けて行動するのだろうか?

 

 

「真志ってば!」

 

「……!!」

 

 

ふと気がつけば目の間に美歩の顔があった。不機嫌そうにこちらを睨んでいる。

何かしたっけ? 真志は急いで思考を回転させるが、特に思い浮かぶ事もない。なんなんだろうか?

 

 

「さっきから呼んでるんだけど?」

 

「え? あ……ああ、悪い悪い! なんだっけ?」

 

「なーんか悩みがあるならこの美歩さんが聞いてあげるっつてんの!」

 

「ははは、別に大丈夫大丈夫。何にもねぇよ」

 

 

そう言って真志は笑う。

しかし美歩は相変わらず膨れっ面で真志を見ていた。

 

 

「な……なんだよ」

 

「べっつにぃ!」

 

 

美歩は不機嫌そうに答えると食堂を出て行った。

それを真志は眼を丸くしてみていた。

 

 

「何だよアイツ?」

 

「んー、頼ってほしかったんですよ」

 

「う、うーん……」

 

 

夏美の言葉に真志は頭を抱える。別に頼りにしてない訳じゃないが――

難しいな、真志は残りのパンを一気に口に入れる。

なんだか味なんて感じられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回はどんな世界なんでしょうね」

 

 

その後、屋上ではアキラ達中等部組が今回の世界を見渡しているところだった。

特に何の変哲も無い街、しいて言うならば都会といった所だ。

それだけ、クウガの試練同様に自分たちの世界に近いタイプ。

 

 

「結構風が強いですね」

 

「大丈夫? 里奈ちゃん」

 

「うん。ありがとう」

 

 

四人はその変哲の無い世界をしばらく眺める。

正直、ここが自分たちの世界だと言われても疑わないだろう。

ビルがあって、広告があって、人がいる。世界って一体どれくらいあるんだろうか?

ふと呟いた我夢の疑問に皆沈黙する。一体自分達はどれだけの世界を巡るのだろうか、そこが気になる所だ。

 

 

「少なくともボク達が一生かけても回りきれないくらいはあるんだろうね」

 

「なかには人間がいない世界とかもあるのかな?」

 

「建物が全部お菓子の世界もあったりして!」

 

 

まさに途方もないのだろう。

しかし不思議なものだ、そんな途方も無い話を彼らは全然知らなかったのだから。

当たり前の様に移動している世界、そんな事普通はありえなかった。

 

 

「本来は交わるものではないのかもしれませんね」

 

「ひょっとすると、別の僕らがいる世界もあるかもしれない」

 

 

四人は世界という無限の境地に想いを馳せる。

全ての事があり得ると言う意味、そして全てのことが不可能ではないという事。

まさにそれは巨大な可能性だといってもいい、しかし同時に今までソレが交わる事のないものと決まっていただけに今の状況にはやはり不気味な意思を感じるというものだ。

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

突如轟音、気がつくと街中のビルや車の窓、ガラスが割れていた。

次に聞こえてきたのは悲鳴。街中から助けを求める声や言葉にすらならない叫びが聞こえてくる。

なんだ? 一体何が――

 

 

「あれは!」

 

 

四人はさらに新しい音を確認した。

耳障りな羽音と何かの鳴き声、一つ一つの音量は小さくてもそれが山の様に重なれば大きな音量となって四人に届く。

亘達すぐにその音の正体が何かを確認する。

 

 

「ちっ、やっぱり平和にはいかせてくれないんだよね……ッ!」

 

『亘さーん!』

 

「ここだよ! キバット」

 

 

キバットは屋上の亘を確認すると、一気に手元まで飛翔する。

 

 

『なんか大変な事になってるみたいっすよー!!』

 

「見てたよ、すぐに街の人達を助けにいこうぜ!」

 

『了解っす! がぶーっ!』

 

「変身!」

 

 

現れた刻印と共に亘の姿はキバへ変身する。

ちなみに変身を行うと亘の身長がぐっと伸びて司達と変わらないくらいのサイズに変わる。

これは良太郎に関しても言える事だった。戦いに適したサイズなのだろうか?

 

 

「頑張ってください」

 

「気をつけて!」

 

「亘君、無理しないでね」

 

 

心配そうに見つめる三人に軽く合図を送ると、キバは屋上から飛び降りた。

その手にフエッスルを構えて!

 

 

『ブロン・ブースター!』

 

 

キバットの合図と共に、キバのバイク・マシンキバーに黄金の魔像ブロンが装備される。

ブロンブースター! 爆発的な加速で直ぐにキバは街中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ヴェ、ヴェヴェッ」」」

 

街では逃げ惑う人々をヤゴ型モンスター、シアゴーストの大群が追いかけていた。

不気味な鳴き声を上げてシアゴースト達は餌である人間を捕食する為に街中を破壊していくのだ。

巨大な化け物、しかも会話が成立しないとくれば恐怖もより膨れ上がるもの。

 

 

「ウワァアアアアアッッ!」

 

 

飛び散る鮮血が人々をパニックに落とし、悲鳴の嵐が街を包んだ。

あちこちで火が上がり、事態はより深刻さを増していく。

 

 

「ヴェ ヴェヴェ ヴェ」

 

 

シアゴースト達は口から糸を吐き、人間を絡めとる。

恐怖で泣き叫ぶ人達を気にする事もなく、シアゴースト達は食事を開始した

まさにここはゴースト達の餌場だろう。人間など所詮その程度でしかないと、不気味な鳴き声がそう告げていた。

 

 

「ヴェヴェ ヴェ?」

 

「ヴェヴェヴェ ヴェヴェ?」

 

 

しかしそれを否定するかの様にバイクのエンジン音が鳴き声をかき消していく。瞬間、風を切る音と共にシアゴースト達が宙に舞う。

いや、吹き飛ばされたと言った方が正しいだろう。ゴースト達を一撃で絶命させたのはブロンブースター!

キバはブースターから飛び降りると、人々を絡めていた糸を引き千切る。

 

だが周りを見渡すと、何人かは既に息絶えていた。

確かに、厳しい話全ての人を助けられるなどとは思っていない。しかし今この現状を目にして見れば、悔しさと怒りが込み上げてきた。

もっとも根本を考えればこのシアゴーストも生物。人間を食料にしているならば食物連鎖の結果論。だが――ッ!

 

 

「っくしょぉオオオオオオオオッッ!」

 

 

キバの蹴りがシアゴーストの首を本来なら曲がることのない方向へと持って行く。

大きな視点でみればシアゴーストのやっている事は生きる為の行動なのかもしれない。

だが人間のエゴを押し通してでもこいつ等を全員倒す! それが自分のやるべき事なのだろう。

 

 

「オォオオオオォオオっっ!」

 

 

雲ひとつない青空にヒビが入り、音をたてて割れる。

現れたのは漆黒の世界、美しい月が輝く夜だった。ウェイクアップによりキバの力が倍増する。

蹴りの威力も跳ね上がり先ほどは蹴り飛ばすのが精々だったが、今は蹴りの力で腹に風穴を開け瞬時に絶命させる程に強化されていた。

しかし、ウェイクアップは強力だが同時に精神力を大きく消費する。あまり長時間の使用はできない。

キバはある程度ゴーストを一掃したところでウェイクアップを解除した

 

 

「ヴェヴェヴェ!」

 

「うっ!」

 

 

しかしその僅かな隙を狙ったゴーストが、糸でキバの動きを封じる。

 

 

「くっ!」

 

 

引きちぎろうともがくが、さらにそこを狙って他のシアゴーストが糸を発射する。

一本の強度は低くてもそれが束になれば話しは別だ。キバ一人の力ではどうする事もできない。

むろん、それは一人でなら――

 

 

『ドッガ! 開放ォー!』

 

 

キバットはベルトから紫のホイッスルを取り外し、一瞬だけそれを鳴らした。

そして素早くホイッスルを放り投げる。するとドッガハンマーが空中から現れ、元の姿に戻ったではないか。

 

 

「大丈夫か! すぐ 助ける!」

 

 

ドッガはキバを捕らえていた糸を簡単に引きちぎると、シアゴースト達に攻撃をしかける。

豪腕がシアゴーストの身体にめり込み、2,3体まとめてぶっ飛ばしていく。

 

 

「ありがとうドッガさん!」

 

「気に するな お前 仲間」

 

 

その言葉にキバは力強く頷いた。

 

 

「ヴェヴェッ!」

 

「ヴェヴェヴェ!」

 

 

さらに、気がつけばシアゴーストの動きが止まっていた。

見ると赤いポインターが無数のシアゴースト達を拘束しているのだ。

 

 

『3』

 

「ヤアアアアアアアアアッッ!!」

 

『2』

 

 

赤いポインターに黒き閃光が突入していく、

あれだけいたシアゴーストもなすすべなくその体を爆散させていった。

 

 

『1』

 

『Time Out』

 

 

シアゴーストのいたところは既にΦのマークがあるだけ、

 

 

『Reformation』

 

 

アクセルフォームを解除するファイズ。

周りにシアゴーストが残っていないのを確認すると、軽くため息をついた。

 

 

「大丈夫? 亘君」

 

「はい、大丈夫っす。拓真さんも大丈夫ですか?」

 

「うん、ありがとう。とにかく他の場所も見て一回戻ろうか」

 

「そうですね―――って危ない!」

 

「え!?」

 

 

ファイズが上空を見上げるとシアゴーストの進化形態とさらにその進化形態、レイドラグーンとハイドラグーンがファイズに襲い掛かろうとしていた。

大きな羽音を立ててその爪をファイズに突き入れようと突進してくる。

 

 

「うわっ!」

 

 

ファイズは素早く防御の姿勢をとる。今から回避するのは時間が無い。

攻撃を受けてから反撃しても遅くはないだろう。ある程度のダメージは仕方ないと彼は割り切る事に。

 

 

「ブバァッ!」

 

「ヴェヴェヴェッ!」

 

 

だが突如突風が巻き起こり、ドラグーン達を吹き飛ばした。

 

 

「大丈夫かい!」

 

「「先生!」」

 

 

ファイズ達の視線にはストームフォームになっているアギトが見えた。

アギトはマシントルネイダーをスライダーモードに変化させると、クロスホーンを展開させエネルギーを溜める。

 

 

「はぁぁあああ――……ッッ!」

 

「ブブブブブブブブブッ!」

 

「ヴェヴェヴェ!」

 

「たああああああああッッ!!」

 

 

アギトはスライダーが与えた猛スピードを得てジャンプ切りを決める。

ハルバードブレイク。その強力な一撃はドラグーン達を全て切り刻み、爆発させた。

そのまま風に身を任せて着地するアギト、彼はハルバードを回転させると状況を確認していく。

 

 

「成程、こっちはだいたい片付いたみたいだね。とりあえず傷ついた人達を手当しようか」

 

 

ファイズとキバは頷くと、アギトに続いて歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ファイナルアタックライド』『ククククウガ!』『ディディディディケイド!』

 

「「おりゃあああああああああああ!」」

 

 

ディケイドアサルトがシアゴースト達をまとめて巻き込み爆発させる。

しかしやはり数が多い、できることなら長期戦は避けたいのだが。

 

 

「おーい! どいてどいてーっ!」

 

「え?」

 

 

ふと遠くを見るとデルタがジェットスライガーに乗ってなにやらモゾモゾと動いているじゃないか。

今までは女性陣にはバイクがないと思われていたのだが、友里がデルタになったや否やゼノン達がプレゼントだといってソレをくれた。

といっても、それはただ普通のバイクではない。とんでもない巨大な、それはもうバイクともいえぬジェットスライガーと呼ばれるマシンだった。

 

 

「成る程な、ユウスケ!」

 

『ああ!』

 

 

ディケイドはクウガゴウラムに掴まると上空に飛翔する。

 

 

「発射!」

 

 

それと同時にけたたましい音をたてて、ジェットスライガーから何十発ものミサイルが発射された。

シアゴーストの大群を吹き飛ばしていく爆発。圧倒的武力はシアゴーストやドラグーンを焼き払い、辺りをさら地にまで変える。

こんなバイクがあってたまるか! ディケイドはやや引き気味でその光景を確認する。

 

 

「凄いな……」

 

「当っ然!」

 

 

デルタは自慢げに胸をはって見せるのだった。

仮面の下にあるドヤ顔が容易に想像できるというもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだ街にはあいつ等が徘徊してるみたいだね」

 

 

あの後司達は一旦学校へ戻り、これからどうするかを決めていた。

シアゴースト達はまだ無数に散乱しており街のパニックは継続している。

 

 

「とりあえずもう一度シアゴースト達を倒しにいこうか、今はそれが一番だと思う」

 

「そう……だな。じゃあ行こう」

 

 

やはりそれくらいしか今は思いつかなかった。

この世界でいったい何が起こっているのかがわかれば対策も取れるのだが、どうやらそれは戦いの中で見つけなければならない様だ。

外には既にシアゴーストの群れが見えており、ユウスケ達は直ぐに戦えるように変身の構えをとった。

 

 

『アドベント』

 

「!」

 

 

しかし足を止める一同。そんな彼らの前に現れたのは――

 

 

「グオォオオオオオオオオオッッ!!」

 

 

その咆哮と共に真っ赤な龍が現れる。

自分の姿を見て怯むシアゴーストを、龍は容赦なく弾き飛ばしていった。

その気高い姿に一同もまた唖然として立ちすくむ。

 

 

「ブブブブブブブブブブブ!」

 

「ヴェヴェヴェ ヴェ ヴェヴェ ヴェ!」

 

 

シアゴーストやドラグーン達は龍にやられっぱなしと言う訳にもいかない。

反撃を試みるが、圧倒的な龍の力にねじ伏せられていく。

 

 

「あれは!」

 

 

その様子を見ていた司は思わず声をあげた。

 

 

「ど、どうしたんだよ司」

 

「あ、あのモンスターは……間違いない! あれは―――」

 

 

司がその言葉の続きを口にしようとした時、見つける。

その視線の先に真紅の騎士が立っていることに。

 

 

「おい、どうしたんだよ司!」

 

 

ユウスケは不思議に思い、司の視線の先を追う。

そしてユウスケも見つける。

 

 

「あ……」

 

 

真紅の騎士はシアゴースト達を前にゆっくりと深呼吸をする。

そして、覚悟を決めて気合をいれた!

 

 

「っしゃあ!!」

 

 

真紅の騎士とその周りを飛び交う龍をみて、司は震えていた。

 

 

「うおおおおおおおおっ!」

 

 

騎士はシアゴーストやドラグーンの攻撃をかわしながら同時にダメージを与えていく。

その様子を司は食い入る様に見つめていた。

 

 

「あの声――ッッ!」

 

 

間違いない。司は複雑な表情をうかべ、真志を、皆を見やる。

 

 

「あ……あれが、城戸(きど)真司(しんじ)。仮面ライダー龍騎だ――!!」

 

 

 

 

一同はしばらく沈黙する。

だがそうしている間にも龍騎はシアゴースト達を相手に戦っているのだ。

 

 

「つまりなんだ? 本人って事!?」

 

「あ……ああ! ここは多分龍騎そのものの世界なのかもしれない」

 

 

司は校庭から出ようか躊躇う。

できれば加勢したいところだが、ココに来て異質な緊張が司を蝕む。

なにが正しいのか全く分からない、自分がとるべき行動が決められなかった。戦いに加勢する? そうだ、それが一番いい。

 

その筈なのに身体が緊張して動かなかった。

良太郎と初めて会ったとき、その時も少しこの感情が湧き上がってきた。

ずっと見てたヒーローに会えた。だけど自分の心の中では分かってた、それは完成されたキャラクター。

本当にいる訳じゃないし、台本があって脚本があって――

 

だが今目の前にいる龍騎、そして電王を見て思う。

本当なら嬉しくて舞い上がってしまう程喜んで、サインだけじゃなくて写真とかいろいろ貰って――

その筈だった、でも違う。何故かうれしいと言う心の中で、若干の恐怖があった。

もちろん良太郎は今では大切な仲間だ。でも本来自分は野上良太郎と言うキャラクターには一生会うことなんて出来ない。

でも、現に自分は今こうやって良太郎とも会話しているし、本物の龍騎を目にしている。

 

それは本来ありえない事。ありえはしないのだ。

でも、今現実はこうなっている、自分もライダーになっている。

それはやはり今、自分が置かれている状況がただ事ではないのだと再確認される。

 

司は目の前の龍騎、城戸真司がどうなるのかを知っている。

それが余計な圧力となって司にのしかかった。ユウスケ達とは視点が違う、司は今ある意味において死者を見ているのだから。

ふと、司は真志を見る。彼は歯を食いしばって龍騎を見つめていた。

憧れの存在が目の前にいる。だがもしかしたら今、この戦いで命を落とすかもしれないのだ。

 

 

「司っ! 皆!」

 

「……! ああ!」

 

 

真志の眼を見て司は余計な考えを捨てる。

 

 

「ヴェヴェヴェヴェ!」

 

「ヴェヴェヴェヴェ!」

 

「のわっ!」

 

 

シアゴーストの糸が龍騎に絡みつく。それを見て司も覚悟を決める!

 

 

「助けよう!」『カメンライド』

 

 

司は変身しようとディケイドライバーに手をかけた。

 

 

『アドベント』

 

「!」

 

 

しかしまた電子音が聞こえた。

今度はシアゴーストとは違うモンスターの大群が押し寄せてくる。

敵か? 焦る一同だが、司の反応は違った。

 

 

「いやっ、ちょっと待て!」

 

 

友里はデルタフォンを構える、しかし司はそれを静止させた。

確かに新たに現れたモンスターは敵に見える。

しかしそのモンスター。ギガゼールを筆頭としたレイヨウ型モンスター軍団は、龍騎ではなくその周りのシアゴーストに狙いを定め攻撃していった。

 

 

「キキキキッ!」

 

「ヴェヴェヴェ!」

 

 

ガゼルモンスターはその手に構えた槍でシアゴースト達を貫いていく。

それを見ている龍騎、どうやら敵では無い様だ。

 

 

「セーンパーイ! 大丈夫ですかー?」

 

 

ガゼルモンスター達の後方で気の抜けた声が聞こえた。

龍騎は自分に絡まった糸を外しながら、手を上げる

 

 

「おお! 佐野!」

 

「いやーセンパイ危なかったなー。オレが来なかったらやられてましたねー」

 

 

そう言いながら仮面ライダーインペラー。佐野(さの)(みつる)は仮面越しにヘラヘラと笑っていた。

 

 

「お…おぉ……悪かったな、ありがとう。絶好のタイミングだったぜ」

 

「でしょぉ? だって見てましたから」

 

「……は?」

 

「センパイがピンチなるの待ってたんですよぉ! ピンチになるセンパイ、そこに颯爽と現れるオレ! どうです? かっこいいで―――ぐはっ!」

 

 

馬鹿野郎! 龍騎はインペラーの頭を軽く叩く。

頭を抑えて悶えるインペラー、どうやら本当に痛かったみたいだ。

 

 

「もっと早く助けに来てくれよ!」

 

「じゃあセンパイがオレにツケといた分。今ここで払ってくれるんならこれからはいつでも助けにいきますよ!」

 

 

インペラーの言葉に龍騎はピタリと止まる。

 

 

「あれぇ~? 昨日も確かオレセンパイに昼飯おごりましたよねぇ」

 

「いや…あの…ホラ、給料日前でさ……」

 

「いやね、オレはセンパイに命を救ってもらった身なんでね。そりゃセンパイには絶大な感謝をしてる訳ですよ? ね?」

 

「お、おう。まあ気にすんな」

 

 

軽い調子で言葉をまくし立てていくインペラー。

 

 

「だけどね、それとこれとは別じゃぁないかなぁってね。このままだったらセンパイのお給料オレに返済する分でなくなっちゃいますよ?」

 

「しっ…心配すんな! 必ず返すから!」

 

「ホントかなぁー?」

 

 

必死に手振り身振りで弁解する龍騎、それを怪しそうにインペラーは見つめる。

しかし二人は完全に忘れていた。今が戦闘中だと言う事を――

 

 

「ブブブブブブブブ!」

 

「「あいたぁ!」」

 

 

ハイドラグーンの攻撃で龍騎とインペラーは二人まとめて地面に伏せる。

 

 

「いたた……もう、センパイがしっかりしないから!」

 

「俺のせいかよ!」

 

 

また懲りずにわちゃわちゃと二人は言い争いを始める。

そうしてる間にもハイドラグーンはさらに旋廻し、また二人めがけて突進をしかけるが――

 

 

「ハッ!」

 

「ブブブブッ!」

 

 

槍を構えた漆黒の騎士が空中から現れ、そのままハイドラグーンを貫く。

 

 

「おぉ! 蓮!」

 

「蓮さぁーん」

 

 

黒騎士、仮面ライダーナイト、秋山(あきやま)(れん)

ナイトは地面にへたり込んでいる二人を見てため息をつく。

 

 

「相変わらず緊張感の無い奴らだな」

 

「だってコイツが!」「だってセンパイが!」

 

 

ギャーギャーと騒ぐ二人にますますナイトは呆れている様だ。

しかし後ろにせまるシアゴースト達を次々に、的確に葬っていくナイト。

 

 

「お前ら……そうだ、城戸」

 

「ん?」

 

 

そこでナイトは何かを思い出したのか、龍騎に話しかけた

 

 

「どうしたんだよ?」

 

「後ろに気をつけろ」

 

「は?」

 

 

後ろ? 龍騎は自分の後ろを見る。

そこにあったのは……

 

 

「え?」

 

 

足。

 

 

「おりゃあああッ!」

 

「おわあああっ!!」

 

 

龍騎めがけてドロップキックが飛んでくる。

当然避ける事も出来ずに龍騎はまた地面に叩きつけられるのだった。

 

 

「あーあ、いたそー!」

 

「全く、本当に緊張感の無い奴らばかりだな。今は戦闘中だぞ」

 

「いってぇ! 何するんだよ!」

 

 

起き上がろうとする龍騎に純白の騎士が馬乗りになる。

 

 

「おっそいんだよ真司! 私が何分待ったと思ってるんだ!」

 

「わ、悪かったって! だけどしょうがないだろ、お前の所にいく前にこいつ等が――!!」

 

「うるさい! パンチ!」

 

「ブッ! イデデッ! おい理不尽だろコレ!」

 

 

龍騎に馬乗りになっているのは仮面ライダーファム、霧島(きりしま)美穂(みほ)

ファムは待ち合わせに龍騎が遅れた事を怒り、バシバシと龍騎を叩く。

 

 

「罰として今日全部真司のおごりだからな!」

 

「はっ!? え!? ちょ、おま――」

 

「はい決まり!じゃ、さっさと片付けるからさ」『ファイナル・ベント』

 

「キュイイイイイイ!」

 

 

地面が水のように揺らめき、そこから白鳥型のモンスター・ブランウィングが出現した。

舞い散る羽と巻き起こる風は司達の目にもしっかりと映り、肌で風を感じたはずだ。

 

 

「わわっ!」

 

 

急いでアドベントを解除するインペラー、下手すればギガゼールまで巻き込まれかねない。

もし契約モンスターが死ねば一気に自分は弱体化してしまう。それは避けねば――

 

現れたブランウィングは一気にモンスター達の後方まで飛ぶと、強力な羽ばたきでドラグーン達を吹き飛ばす。

ファムは長刀を構えると、吹き飛んできたモンスター達を一刀両断にしていった。

こうしてモンスター達を全て倒し龍騎達は変身を解除する。

 

 

「最近ミラーワールドだけでなく現実世界にまでこいつ等が現れる様になったな」

 

「そーですねぇ、正直勘弁してほしいですよ。百合絵さんにもしもの事があったら……」

 

 

佐野は恋人の姿を思い浮かべ拳を握り締める。

蓮も深いため息をついた、たしかにこのままでは――

 

 

「ほら真司、行くぞ!」

 

「いや、何か……ちょっとお腹痛くなってき――」

 

「はいはい。じゃあ行こうぜ! 真司のおごりだからな!」

 

「いや、だから!! ……――佐野ぉ!」

 

 

美穂に羽交い絞めされている真司は、佐野に助けを求める。

 

 

「金なら貸しませんよ。っていうかデートの金を他人に借りるって最低っすよセンパイ……」

 

「お前にだけは言われたくない言葉だな」

 

 

蓮は彼らを馬鹿にしたように笑うと、バイクにまたがりエンジンを入れた。

佐野はいぶかしげな目で真司と蓮を交互に見やる。

 

 

「彼女の所に行くんですか?」

 

「……ああ」

 

「まだ目覚めて間もないですしねぇ。そりゃ心配だ」

 

「それに――」

 

 

ここにいると馬鹿がうつりそうで怖い。

そう言って蓮は走り去っていく。

 

 

「やれやれ、酷いなぁ。ねぇセンパイ?」

 

「真司ィィ……! 逃げんなぁぁぁ!!」

 

「金がないんだよぉぉぉぉ……っ!!」

 

「………」

 

 

ずるずると美穂を背負い込んだまま歩いていく真司を見て、佐野も蓮に同意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、間違いなく本人だな。龍騎、ナイト、インペラー、ファム」

 

 

司は静かな興奮を覚えながら皆に説明をする。

仮面ライダー龍騎の主軸、良太郎と同じく本物の変身者なのだ。

 

しかし少し疑問に思うところもある。

司の記憶ではこの四人が共闘している所なんて無かった。特にインペラー、むしろ彼は敵に近い位置だったか。

だが確かにあの状況で仲間にできる人間がいるのならそれはインペラーくらい。つまりコレは龍騎の物語で言う終盤に位置するはず。

 

 

「君なら理解できるんじゃないかい?」

 

「!」

 

 

そんな事を考えていると、頭上から声がして司達はその方向に振り向く。

見ると、学校の網目フェンスの上にゼノンとフルーラが座っていた。

 

 

「ここは龍騎の世界で間違いないのか?」

 

「ああ、まあそう思ってくれて構わないよ。

 だけど君は知っているだろう? ここは龍騎の世界だけど『今回』の城戸真司を君は見たことがない」

 

「ああ、なるほど……」

 

 

龍騎の世界がループ周期をたどっているならば、ここはその中の一つだと言う事なのだろう。

無限に繰り返される戦いと運命、それは龍騎のタイトルロゴが告げている。

ドラグレッダーが無限のマークを表していると言う事は、今回もまた――

 

 

「今回の城戸真司の努力は凄いものだったわ。

 戦いを止める為に動き回って、結果としてファム、ナイト、インペラーという仲間を作る事ができたと言う訳」

 

「世界転移は時間や、その概念を超越する。ここは一体どの時間軸なんだろうねぇ? フフフ」

 

「まあ貴方が知らないのも無理は無いわ、結局貴方が観測した龍騎の世界は四つがいい所なのだから」

 

 

四つ、自分が見たのはテレビ放送、映画、テレビスペシャルのエンディング2つ。

成る程、司は納得する。どうやらここはありえたかも知れない世界の一つというわけか、いや現にありえているのだ。

それは変わらない。

 

 

「まあ今日ボク達がここに来たのは、条戸真志! 白鳥美歩!」

 

 

ゼノンのいきなりの指名に、二人は肩を震わせる。

 

 

「貴方たちにチケットを!」

 

 

舞台に上がる資格を!

そう言ってフルーラとゼノンは四角い何かを二人に向けて投げつける。

 

 

「うわっ!」

 

「おぉ!?」

 

 

危うく落としそうになる二人を見てゼノン達はクスクスと笑った。

チケットとは言ったが紙の類ではなく、ちゃんとした重みのある何かだった。

 

 

「なんだ? コレ」

 

「お前っ! これは!」

 

 

司の驚く表情が滑稽なのか、ゼノン達はその口を吊り上げた。

 

 

「この世界のライダーにはそれが必要不可欠だろう? あげるよ、ボク達からのほんのささやかなプレゼントさ」

 

 

真志と美歩はもう一度渡されたモノを見る。

最初は分からなかったが、今はそれがハッキリと分かる。

これは――

 

 

「カードデッキ……」

 

 

何も紋章がない無地のデッキ。

二人はそれを恐怖でも歓喜でもない表情で見つめる、自分達が変身する為のキーアイテム。

 

 

「ちょっと待て! いくつか質問があるんだが」

 

「なにかなディケイド?」

 

 

ヤレヤレと言った表情で帽子を下げるゼノン。

しかし彼もこういった状況になる事は分かっていた筈だろう。

 

 

「まず一つ目、このデッキには何もかかれてない。つまり未契約って事だな?」

 

「そうね、そう言う事になるわ」

 

「真志は龍騎に選ばれた筈だ、だが既に城戸真司が龍騎になっている。この場合はどうなる?」

 

 

ゼノンは少し沈黙するが、すぐにまた笑い出す。

 

 

「それは君達自身が決めてくれ。勿論他のモンスターと契約してくれても構わないよ。フフッ!」

 

「仮にそうした場合、俺達の世界はどうなる?」

 

「さあね? フフフフ」

 

「おい……!」

 

 

絶対に知っているくせに、司は舌打ちをして笑い返す。

真志は自分のデッキを見つめた。そして自分の影に視線を移す。自分は龍騎になれるのだろうか?

だが浮かび上がった紋章と、今までの流れを考えるに美歩はともかく真志は確実に龍騎にしかなれない筈。

現に彼の影は今現在龍騎のソレだから。

 

 

「わかった、じゃあ次の質問だ。今この世界はどういう状況なんだよ!?」

 

「オーケー、教えてあげるよピンクバーコード!」

 

「……いや、だから、お前…な? いつも言ってるよな? な? な? マゼンダだよって、な?」

 

「まず現段階で残っているライダーは五人」

 

 

ガン無視である。

 

 

「ゾルダと王蛇は?」

 

「彼らは割と早い段階で互いの因縁に決着をつけたわ。

 でもゾルダ、北岡はリタイアしたの。理由は貴方なら分かるんじゃない?」

 

「………」

 

 

どんなに強くても、人は簡単に死んでしまうのかもしれない。

改めて司はそう思う。もちろんそれは自分達にも言える事だ。

たとえ人を超越した力を得ようとも、自分達が人間のカテゴリーである事には変わらない。

 

 

「他にはそうね、彼らには神埼優衣との関わりがないわ」

 

「成る程」

 

 

神埼優衣。彼女も悲しい運命に翻弄された身だ、この世界でもそうなのだろうか?

それに加え秋山蓮の恋人、小川恵理は既に目覚めていると言う事。

司はその話題がでた時、二人の笑みがより深くなったのを見逃さなかった。

 

 

「お前らなのか……?」

 

 

司の問いかけに二人はイエスの笑顔を見せる。

しかしその笑顔にはどこか影があり、ほんの少しの狂気を帯びているようにも見えた。

 

 

「ん、そうだよディケイド。小川恵理はボク達が目覚めさせたのさ」

 

「あまり干渉するのは怒られちゃうから嫌なのだけれど。

 あなた達の為なのよ? ナイトが戦う理由を失えばそうとう円滑になるもの!」

 

 

そう言って二人は笑う。

そんな事を簡単にしてのけるこいつ等は一体何者なんだ?

 

 

「お前らの目的に……俺達は本当に必要なのか?」

 

「………」

 

 

もちろん、そういってゼノン達は含みのある笑みを浮かべた。

ただの学生だった自分達を、彼らは一体何に使おうというのか。

少し薄ら寒いものを感じたが、今はもうゼノン達はいつもの笑顔に戻っていた。

その事に少しだけ安堵しつつ司は続ける。

 

 

「最後に一つ、いいか?」

 

「ええ、ワタシ達が答えられる範囲であればだけれどね」

 

「ライダーバトルの勝利者には、一体何が与えられるんだ?」

 

「―――願い」

 

 

司とフルーラ、双方の表情が少し変わる。

 

 

「どんな願いでも、一つ叶えてくれるのよ」

 

「………ッ」

 

 

正直、それは嘘の筈だ。

その表情に気がついたのかゼノンは一つ付け加える。

 

 

「願いが叶えられるのは本当だよ、そう言う世界もありえたという事さ」

 

「はっ、都合のいい話しだな」

 

「だろう? でも、案外世界なんて単純なモノなんだよ」

 

 

望む世界も、望まぬ世界も。全ては手の上に。

ありえたかもしれない可能性は全て何かしらの世界となりうる。

 

 

「ゼノン、話しすぎると叱られるわよ?」

 

「そうだね。ありがとうフルーラ、愛しているよ!」

 

「まあ、ゼノン!」

 

 

ま た そ れ か。

うんざりする司をみて二人は笑うと、フェンスの奥に飛び降りる。

 

 

「お、おい!」

 

「今回ボク達が教えられるのはここまでさ。じゃあ、皆頑張ってくれよ」

 

「では、ごきげんよう。心から応援しているわ!」

 

 

ゼノンはフルーラを抱きかかえて後ろへ飛んだ。

すると地面からビークルマシン、リボルギャリーが出現してゼノンの足場となる。

どうやら遠隔操作が可能らしい。それにしても地面の中にまで出現できるとは――

 

 

「フフッ、じゃあねディケイド」

 

 

二人はそう言うとあっという間に走り去ってしまった。

全く、情報といってもほとんどしっくり来るものは無かった。

 

 

「司ァ、アタシらどうすりゃいいと思う?」

 

 

美歩はデッキからカードを取り出してパラパラめくっていた。

契約をしろと言う事なのか、司は二人からデッキを受け取りどんなカードがあるか確認する。

だいたいの場合はモンスターと契約すればカードが増える様だが、あの二人が渡したのだからと予想付けた。

 

 

「やっぱりな、強力なカードから見た事ないヤツまである」

 

 

司は少しだけ興奮気味にカードの効果を二人に教える。

本来契約して初めて手に入るであろうカードまで出てくるとは思わなかった。

 

 

「あいつ等が用意したって時点で普通じゃないとは思ってたけどコレは助かる。お前らも慎重に契約したほうがいい」

 

「契約ねぇ。つってもあのヴェヴェヴェ言ってるヤツとはゴメンだわ。何か可愛いモンスターとかいねぇの?」

 

「………」

 

 

真志は何も喋らない。

さっきからずっと考えていた事があるのだ、確かに龍騎になりたくないと言ったらそれは嘘になる。

自らの影に映るその姿、しかし真志は歯をグッとかみ締めると司に向かってまっすぐな視線を送った。

 

 

「司」

 

「ん?」

 

「オレ――ッ! いや、司達の力があれば、真司さんを助けることができるんじゃないか!?」

 

「!」

 

 

そうだ、ここにはディケイドだけじゃなくクウガたちもいるのだ。

それならば城戸真司を守る事ができる。そう真志はずっと考えていた

どうしても真志は認められなかったのだ。城戸真司のやっていた事はとてもカッコよかった、戦いを止める為に戦う。

 

それはなかなか出来るものじゃない、しかし運命は彼を殺す。

真志はそれがどうあっても信じたくなかった。だけど今、自分には微々たる事しかできなくても――

 

 

「皆を守れるんじゃないのか?」

 

 

それは司にも大きく響く言葉だった。

自分達の力の使い方、それを運命を変えるために使えるのだろうか。

もしもまた今回の時間で彼が命を落とす様なことになれば、それを止めたいと思うのは普通の事だろう?

 

 

「そう、だな……!」

 

「だろ!」

 

 

司は決意する。そうだ! 守るんだ! そして、今回こそ――ッ!

 

 

「ライダーバトルを終わらせてやる!!」

 

 

真志は頷く。

ユウスケ達も司の意見に従うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ」

 

「え? 何? まさか久しぶりの二人きりに緊張してる訳ぇ?」

 

「馬鹿! してねぇよ!」

 

「きゃはは、だよねぇ!」

 

 

真志と美歩はふざけ合いながらも笑い合う。

 

 

「美歩――ッ」

 

「んあー?」

 

「ありがとう。助かるぜ」

 

「……おお」

 

 

美歩は嬉しそうに微笑む。

真志はもう一度深呼吸をして、その扉を開いた。

 

 

「あのー、すいません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「牛丼並盛りのお持ちしましたー」

 

「あ、はい! こっち! こっちです!」

 

 

やる気のなさそうな店員は牛丼を三つならべると、そそくさと戻っていく。

対照的に目の前にはニコニコと陽気に笑う青年が一人。

 

 

「どうぞ、食べて食べて!」

 

「あ、はい。 いただきます」

 

「うぃーす! ゴチでぇーす!」

 

 

遠慮する事無くガツガツと牛丼をかきこむ美歩に二人は笑う。

 

 

「それにしても驚いたよ、まさかまだ契約してないライダーが二人もいたなんて」

 

「ああ、そ……うなんですよ。オレ達戦いとか嫌で、ずっと逃げてたんです」

 

「いやぁー君達みたいな人間ばっかりだったら良かったのに。それにしても真志と美歩か……変な偶然もあるんだな」

 

 

とりあえず司が提案したのはまずは繋がりを持つ事だった。

真志と美歩は城戸真司の勤め先であるネットニュース配信会社OREジャーナルを訪ね、真司とのコンタクトを取った。

昨日の混乱から街はまだざわつきがある。真司もどこかで犠牲者が出たのを知り、その表情を曇らせていた。

それほど範囲は大きくなかったから犠牲者はいないと思っていたが、どうやらそう簡単な話でもないらしい。

今、テーブルの上には真志と美歩のデッキが置かれている。

真司は特にそれを疑う事無く受け入れた。

 

 

「とりあえず今は持っておいた方がいいよ。

 その中にあるコンタクトのカードがモンスターから守ってくれるから」

 

「あ、はい。その……一つ聞いてもいいですか?」

 

「え? 何?」

 

「真司さんは、ライダーバトルをどうするつもりなんですか?」

 

 

真司の表情が真面目なものに変わる。

その迫力におもわず息をのんだ。

 

 

「佐野の願いは戦いから開放される事、これは単にデッキを壊せばいい。蓮の願いも叶って、あとは美穂だけなんだ」

 

 

司から聞いている、亡くなった姉を蘇らせる事だ。

だから真司からその言葉が出てきても、特には動じなかった。

 

 

「だから、俺達は美穂を勝たせようとすればいいんだ。だけど――」

 

「?」

 

「ライダーがいなくなったらどうやってモンスターから皆を守ればいいのかって……」

 

 

真司はいつもの元気な様子じゃなく、その様子に二人も黙り込んでしまう。

確かにライダー同士の戦いが終わったとしても、モンスターが街から消える保証は無い。

 

 

「あっ、ゴメン、ゴメン!」

 

 

真司はそれに気づくとすぐに笑顔を浮かべる、そしてそこに振り下ろされる手。

 

 

「いてっ」

 

「ふふん!」

 

 

噂をすればか、霧島美穂が現れて真司の頭を軽く叩く。

何すんだよと真司が詰め寄ると、美穂は涼しい顔で受け流す。そして真司の隣に座ると――

 

 

「ああ、貴方たちが契約してないって言う」

 

「はい、条戸真司です」

 

「白鳥美歩っす!」

 

「へぇ、名前が……」

 

 

美穂はそういいかけて沈黙する、視線の先は真司の足元。

 

 

「あ! ちょっと真司! また靴の紐ほどけてるじゃない。ったくしょうがないなぁ」

 

「え?」

 

 

美穂はそう言って真司の靴紐を結びなおす。

 

 

「あ……ありがとうな」

 

「真司! 靴の紐くらいちゃんと結べよな!」

 

 

照れくさそうに笑う真司と、優しく笑う美穂。

それを見て美歩の目が輝き始めるのだった。

 

 

「でさぁ! そん時真司が――」

 

「あははは! マジですか!? こっちの真志も――」

 

 

美歩と美穂は席を移動してなにやら盛り上がっていた。

その様子をみて二人は苦笑いを浮かべる。

 

 

「あの……真司さん」

 

「?」

 

「真司さんはライダーバトルを止める為に戦ってたんですよね」

 

「ああ、それが俺の願いなんだ。俺にデッキを託してくれた人の夢でもあるから」

 

 

デッキを託す? 真志はよく分からないと首を傾げた。

 

 

「え?」

 

「その人、モンスターに教われた俺を助けてくれたんだ。でも結局その時にその人は――」

 

「あ――」

 

 

つまり今の龍騎のデッキは二代目と言う事らしい。

 

 

「だけど、その人が言ってたんだ。

 どうか戦いを止めてくれって。ライダー同士が戦うなんて馬鹿な事は止めれくれって」

 

「あ、オレ……! その考え凄いと思います! だから! その――」

 

 

真志はうまく自分の考えが言えずに黙ってしまう。

だが、真司は笑うとその手を差し出した。

 

 

「サンキュー、サンキュー! 君みたいな子がライダー候補の中にいたってだけでも嬉しいよ」

 

「は! はい!」

 

 

二人は握手を交わす。そうだ、死なせない。

死なせはしない。そう心に誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、羨ましいなー…」

 

 

一方、化粧室で美歩は小さく呟く。

美穂の話を聞く限り真司との仲は良好のようだ。そう言う話は大好きなのだがどうにも自分と重ねてしまう。

 

 

(真志はアタシの事どう思ってんのかな――)

 

 

鏡に映る自分の姿を見てみる。

女としてはまあまあだと自負しているが――

 

 

(………)

 

 

もしかしたら真面目な娘のほうがいいのだろうか?

 

 

(黒にしてみっか?)

 

 

すこしでも綺麗に見えるように髪を整える。

 

 

『ライダーバトルの賞品で真志を自分のモノにすればいいじゃん!』

 

「え?」

 

『今からでも、遅くねぇよ』

 

 

ふと、目の前の自分がそんな事を言った様な気がした。

もちろんそんな事ある訳ないと、直ぐに目を反らす。

 

 

「や…ヤベーっ、幻聴とかありえんし」

 

 

少し怖くなって美歩は足早に化粧室を後にした。

それに一瞬だけだが自分の額に鳥のマークがあった様な気がした。刺青? おいおい、冗談だろと美歩は乾いた笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え! モンスターを消し去る方法がある!?」

 

 

真司は驚きで目を見開く。

 

 

「ミラーワールドのどこかにコア・ミラーというミラーワールドの心臓があります。それを壊すことができたなら――」

 

「ミラーワールドは消滅し、モンスターも、ライダーもいなくなる。という事です」

 

 

あれから場所を移し、古びた教会にライダー達と、真志、美歩、司と翼が集まっていた。

ライダーが増えるとややこしい事になるので、ミラーワールドに入れる事が分かったディケイド。

トワイライトの力によって入れるアギト。つまり司と翼が新たに加わった。

 

 

「その情報は本当なのか?」

 

 

疑わしいと、蓮は目で語る。

司と翼は自らをミラーワールドの調査隊と名乗り、芝居をうった。

オルタナティブ同様、人工ライダーだと他のメンバーを偽っているのだ。正直無茶苦茶だと思ったが、何とかごまかせたので良しとしよう。

 

 

「そうですね。確かに百パーセントかと言われれば自信はありません。

 ですがコアミラーは確かに存在するんです。どうか信じてはもらえないでしょうか?」

 

「うーん、まあ別に信じないって訳じゃないっすよねぇ。

 でも、もしそれ壊しちゃったらライダーバトルも終了するって事ですよね?」

 

「願いが、叶えられない…」

 

 

美穂は唇を噛む。

そんな! せっかくここまできたのに……ッ!

 

 

「ではどうでしょうか、ライダーバトルに決着をつけた後、コアミラーを破壊するのは」

 

「そうだな、それがいい。だったらまずはコアミラーを見つけないと」

 

 

それぞれは頷く。

まずコアミラーを見つけ、その後で美穂を勝者にして願いを叶えさせる。

そしてコアミラーを破壊してモンスターを全て消し去る。

 

 

「よし、これなら!」

 

 

真志はうまくいくと心の中でガッツポーズをとる。

しかし対照的に美歩は複雑な表情でそれを見ていた。

 

 

「……どうした?」

 

「え! あ、いや! なんでもない!」

 

 

そう言って美歩は走り去っていく。

少し不思議に思ったが、特に気に留めることなく真志は会議の中に戻っていったのだった。

 

 

「でも……ちょっと、コイツらに申し訳ないですよねぇ」

 

 

佐野は少し悲しそうな目で契約モンスターギガゼールのカードを見る。

すぐにこいつ等のおかげで大変な目にあった訳ですが。と苦笑いを浮かべるがやはりどこか寂しそうだった。

殺されかけた関係とは言え、今まで戦ってきた仲間である事には変わりないのだから。

 

 

「なんだかんだ言ってついて来てくれるからな」

 

 

蓮も、ダークウィングのカードを取り出す。

美穂を勝たせると言う事は、自分の契約モンスターを裏切る事になる。

 

 

「……ごめん」

 

 

真司はドラグレッダーに謝る。

どこからか咆哮の様なモノが聞こえたが、気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ…ッ!」

 

 

美歩は地面に膝をつく、顔色は悪くて冷や汗も酷い。

ふと横を見ればガラスに映った自分の顔。辛そうじゃない、今の状況ではありえない"笑った顔"。

 

 

『だからさぁ! 言ってるじゃん。協力するふりしてさ、願い叶えちゃおうよ!』

 

 

鏡の中の自分が言う、その甘い誘惑に美歩はブンブンと頭を振る。

自分は何を考えているんだ? ガラスに映る自分は笑ってなんかない。

だったら――

 

 

(これは、アタシの……?)

 

 

身体が寒くなってくる。

何を考えているのか自分でも分からなくなってくる。

 

 

『お願い叶えてさぁ! 真志をアタシのモノにしちゃおうよ!』

 

 

また、鏡の中の自分が笑いかけてくる。

 

 

「ヒッ!」

 

 

だがそれも一瞬、すぐに自分と同じ顔になる。

 

 

「な、なんなんだよ……!」

 

 

化粧室で最初に聞いた幻聴。

その時は気のせいだと思っていたが、段々頻度が増えてもはや無視できないモノにまでなっていた。

襲い掛かる不安。自分はおかしくなってしまったのだろうか?

 

 

「真志……」

 

 

無性に怖くなってつい口にしてしまった名前。

それを待っていたかと言わんばかりに鏡の中の自分は怪しく笑いだす。

 

 

『ほら、困ったらいつも真志がなんとかしてくれると思ってる』

 

「――あ」

 

『依存してる。欲しがってる! 知ってるんだぜ? 真志が他の女と話すのも嫌なくせにッ!』

 

「ちっ! 違う!」

 

『違わないぃッッ! アンタはくそ汚ねぇ嫉妬をいつも抱いてんだろうが!』

 

 

もう一人の自分の額に、何か鳥のようなマークが浮かび上がった。

しかし美歩は気づかない、目の前にいる自分しか目に付かなかったのだ。

 

 

「そんな! 私は――!」

 

『ああ、そうだよ分かってる。お前は忘れてるだけだ!』

 

 

声が同じならば、見た目が同じならば、それは同じ人間なのか。

つまりこれは自分なのか。

 

 

『夏美達はそれぞれお相手がいるもんなぁ。だけどどうだ!?』

 

「……ッ」

 

『違うだろうが! いつものアタシはそうだろうが!

 いつも怯えてる。真志に、いや誰かに見捨てられないかビクビクしてる!』

 

「ッッ!」

 

『おいおいおい! 大丈夫かよ! もし夏美達の誰かが真志になびいたらどうすんだ!?』

 

 

若干目の形が変わった。

それはまるで、爬虫類の様に。

 

 

『テメェ納得できんのかよ!?』

 

「な、なっとくって……」

 

『ああでもそうだよな、私は告白できない! する勇気がないクズだ。どうしようもねぇ馬鹿野郎なんだよ!』

 

 

鏡の中の美歩は怯える彼女を刺し殺さんとばかりに睨みつける。

その恐怖の中で美歩は冷静な思考を失っていく、もう何故鏡の中の自分が自分と違う動きをしているのかすら考えられなかった。

鏡にいるのは自分、ならば自分の言っている事は――正しいのか?

 

 

「美歩!」

 

「!」

 

 

真志が向こうから走ってくる。

 

 

「大丈夫か? 具合悪いなら学校に――」

 

 

差し出される手。

 

 

「………」

 

 

初めて真志と出会った日のことを思い出す。

そうだ、助けてくれる。真志がいれば自分は頑張れる。

 

 

「ありが――」

 

 

笑顔で真志の手を握ろうとして、見てしまう。

 

 

「………」

 

「美歩?」

 

 

真志の向こうに映った自分の顔。汚い笑みを浮かべている自分の――

 

 

「だ、大丈夫――ッ!」

 

 

美歩は真志の手をとらず立ち上がる。

不思議そうにする真志にもう一度大丈夫と呟き、背を向けて歩き出した。

 

 

「………」

 

 

一人残された真志は何も言わずに美歩の背中を見つめていた。

確実に何もない訳が無い、しかし彼女は大丈夫と言う。

 

「美歩――?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェヴェヴェ!」

 

「ヴェヴェ! ヴェヴェヴェ!」

 

 

場面は変わり街中、真司達の前に無数のシアゴーストとドラグーンが出現する。

街中でも定期的に起こる様になっていたモンスターの大量発生。

もはやミラーワールドと現実世界の境界線はなくなろうとしていた。

一刻も早くコアミラーを破壊しなければ、その内にこの街はモンスターで埋め尽くされてしまうだろう。

 

 

「そんな事ッ、させるかよ!」

 

 

真司達はベルトを出現させ、それぞれの構えをとる!

 

 

「「「「変身!」」」」

 

 

鏡合わせの様に鎧が現れ、四人に装着される。

変身を終えた四人のライダーはシアゴースト達目掛けて駆け出していった。

インペラーがアドベントを発動させ、シアゴースト達の動きを鈍らせる。その隙に龍騎達が倒していくと言う作戦だった。

 

 

「司君。私たちも戦おうか」

 

「ああ、そうですね」

 

 

二人もそれぞれベルトを出現させる。

司はカードを、翼は構えをとって変身の準備を済ませた。

 

 

『カメンライド』『ディケイド!』

 

「「変身!」」

 

 

ディケイドとアギトもまた、シアゴースト達の群に突っ込んでいく。

いくつかの世界を巡った訳だが、どの世界でも差ほど敵との実力差が離れていない事に安心する。

しかし流石龍騎ど真ん中というべきなのか、若干シアゴースト達は今まで戦った敵よりも強く感じた。

 

 

「あれ?」

 

 

そんな中、龍騎は戦いの最中だと言うのに動きを止める。

何かを見つけた様だ。

 

 

「う、う~ん……」

 

「?」

 

 

その視線に気がついたのはアギトだった。

龍騎はジーっとアギトを見て何かを考えている様に見える。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

「いやぁ、どこかで会った事ありませんでしたっけ? なんかこう、ミラクル……みたいな所で」

 

「え?」

 

 

翼は記憶をたどるが全く覚えていない。

接点もあるとは思えないし、何より世界を移動できる様になったのはつい最近ではないか。

 

 

「ゴメンなさい、ちょっと分からないですね」

 

「あ、だったらいいんですけ―――ドッッ!!」

 

 

突っ立っている龍騎に吹き飛ばされたインペラーが激突する。

いくらなんでも戦闘中に棒立ちはまずいものだ。

 

 

「いてててっ! またですかぁセンパイ!」

 

「悪かった―――ヨッッ!」

 

 

話しこむ二人の上にファムが落下してきた、うまく支えられる訳も無く二人は再び地面に倒れこむ。

追撃を加えようとするシアゴースト達はゼール達が抑えているが、早く体制を立て直さなければ!

 

 

「み……美穂ぉ、お前重くなったな…」

 

「はっ!? 何言ってんだよ馬鹿ッッ!!」

 

「ウゴッ!」

 

 

重い音がして龍騎は動かなくなる。

 

 

「まあ今のはセンパイが悪いですよね…」

 

「だろ!?」

 

「まあ重いのは本当ですけ――ガフッッ!」

 

 

相変わらずの三人ほっといてナイトは次々にシアゴースト達をしとめていく。

何度も戦っている内に、行動パターンや攻撃の癖を見抜いているのだ。

流石はナイトと言ったところか、龍騎達とは違って目立った傷も無い。

 

 

『ファイナルアタックライド』『ディディディディケイド!』

 

 

一方のディケイド、ホログラムカードが出現し彼はライドブッカー・ソードモードを構え潜り抜けていく。

一枚通過する毎にソードは光をまとって長くなり、五枚全てを通過した時には倍以上の長さに変わっていた。

 

 

「ヤァアアアアアアアアっっ!」

 

 

ディケイドはそのソードでシアゴースト達を次々に切り裂いていく。

ディメンションスラッシュ。決まった、心の中でドヤ顔を決める司。

しかしそんなディケイドにふとナイトは問いかけた。

 

 

「お前、契約モンスターはいないのか?」

 

「えっ!?」(ヤベー!! 呼ぶの忘れてたッ!!)

 

 

モンスターがいないと言う事を知られるのはまずい。

だからそこはしっかりと用意してあるのだ。ぬかりはない、ディケイドは大声で叫び声をあげた。

 

 

「え! あ……い、いますよ! 出てこいYU☆U☆SU☆KE!!」

 

 

ディケイドがアドベント! と叫びながら手をパンパンと叩くと、物陰から謎のモンスターが現れる。

何なんだこのモンスターは? まるで怪獣の着ぐるみみたいだ……。

YU☆U☆SU☆KE? くっ、駄目だ。まるで見当もつかない! 一体何者なんだッ!?

 

 

「アオオオオオオオオオオオオオン!」

 

「お前……コレ――」

 

「お、俺! コイツと契約したんです! いいいい行け! ユウス…じゃなくてYU☆U☆SU☆KE!」

 

「アオオオオオオオオオン!!」

 

 

YU☆U☆SU☆KEはこくりと頷き、シアゴーストにパンチをしかける。

しかし当たらない! まるで視界が悪いとでも言わんばかりだ!? どうして? 一体何者なんだ……!

まるで見当がつかないッッ!!

 

 

「ヴェヴェヴェ!」

 

『うぉ! 危ない!』

 

「おい! 今アイツ喋らなかったか!?」

 

「き、気のせいです! ああ言う鳴き声なんですよ! な! そうだよな!? YU☆U☆SU☆KE!!」

 

『え? 何て!? 聞こえないぞ司!!』

 

「………」

 

 

あの野郎――ッ。

 

 

「あれも鳴き声なのか……?」

 

「そうじゃ、ないかなぁ?」『ファイナルフォームライド』『ククククウガ!』

 

「おい司――って、おわぁあああ!!」

 

 

YU☆U☆SU☆KEが変形し、クワガタの様な姿に変わる。

それに耐えられなかったのか外装(?)はビリビリと破れ、中からクウガゴウラムが出現する。

な、なんだって! YU☆U☆SU☆KEの正体はユウスケだったのか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「茶番乙」

 

「は? 椿、いきなりどうしたのだ?」

 

「いや、なんか言いたくなって」

 

「そう……か?」

 

 

満足そうな椿を見て、咲夜は首をかしげたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たああああああああああッッ!」

 

『はああああああああああッッ!』

 

 

ディケイドとクウガゴウラムの挟み撃ち、ディケイドアサルトがハイドラグーンに叩き込まれる。

その威力にハイドラグーンは断末魔をあげながら爆散し、あたりのモンスターは全て消えさった。

 

「ふぅ」

 

「よし!」

 

「やったな司!」

 

 

真志は司とユウスケにハイタッチを決める。

しかしまだ街中からは悲鳴が聞こえる、シアゴースト達はまだ群をなして街中を徘徊しているのだろう。

早くコアミラーを見つけなければ、龍騎達は焦った様子で走り出したのだった。

 

 

「拓真! そっち行ったよ! 気をつけて」

 

「ありがとう、でも大丈夫だよ」

 

 

別の場所では襲い掛かるシアゴースト達を逆に殴り飛ばしていくファイズ。

普段の拓真からは創造もつかないパワープレイに、デルタ達は目を丸くする。

ファイズとしても今まで殴るという行為を行った事が無かった故に全身を使っての不器用な形になっている。

しかし逆にそれがパワーを上乗せしているのだが。

 

 

「ハッ!」

 

「ヴェヴェ!」

 

 

背後から迫る敵をファイズフォオンを変形させて撃ち落とすファイズ。

加えて、何とか隙を見つけて攻撃を行うシアゴースト達であったが、そこへファイズを守るようにガトリングの銃弾が。

空から飛翔してくるのはオートバジン、彼はファイズを守るために彼の周りを飛び回る。

 

 

「フッ!!」

 

 

倒れたシアゴーストに追い討ちの蹴りを決める。

空中から襲い掛かるドラグーンも、デルタの銃で次々に撃ち落されていった。

ゲームセンターのシューティングで腕はついていたようだ。彼女は何故か変身時に戦い方が頭の中に入ってくると言う事は無かったが、ゼノン達の訓練等によって短時間で戦闘力は著しく上昇していた。

 

 

「いくぜいくぜ! いっくぜぇぇえええッ!!」『FULL CHARGE』

 

 

そして電王が赤いエネルギーを纏った剣で、複数のモンスターをまとめて切り裂ていく。

赤い閃光が軌跡を描き、シアゴースト達をねじ伏せていった。

 

 

「ブブブブ!」

 

 

後の一体になったハイドラグーンは逃げる訳でもなくファイズに特攻を仕掛けた。

だが特別複雑な動きといった訳でもなく楽にかわされてしまう。

 

 

『READY』

 

 

ファイズはメモリをポインターにセットすると、そのままソレをドラグーンに向けて投げつけた。

放物線を描きながら飛んでいくポインター。

 

 

「ブブッ!」

 

 

投げられたポインターはドラグーンに直撃するとそのまま跳ね返り、ファイズの所へ戻っていく。

それと同時にファイズはとび蹴りをドラグーンに。突き出した足にうまくポインターが重なり、ファイズはそれを素早く装着する!

 

 

『Exceed Charge』

 

 

ポインターをぶつけられ怯んだドラグーンにさらに赤い閃光が襲い掛かる。

紅のポインターによって動きを封じられたドラグーンは、もはやどうする事もできない。

 

 

「たぁああああああああああッッ!!」

 

 

赤い閃光がドリルの様にドラグーンを削る。

ファイズの必殺キックであるクリムゾンスマッシュ、ドラグーンはΦのマークが現れたかと思うと爆発し消滅した。

 

 

「やったね! かっこいいよ拓真!」

 

「あはは……ありがとう」

 

「おう、どうすんだ? このまま他のヤゴ野郎もぶっ倒してくか?」

 

 

ウキウキとした様子で電王が問いかける。

戦う事が楽しくて仕方ない様だ、今すぐにでも駆け出したいと雰囲気が語っていた。

確かに数を減らす事に越したことはないが――

 

 

「そうだね……ん?」

 

 

ファイズフォンが音をたてる。

 

 

「電話だ。もしもし?」

 

『俺だ』

 

「ああ、双護君。どうしたの?」

 

『そっちにライダーがやって来る。逃げた方がいい』

 

「うん、わかった。じゃあね」

 

『ああ、気をつけてな』

 

 

電話を切るとファイズは今の言葉を皆に伝える。

ライダーが増えると言う事は龍騎達に余計な誤解と混乱を招く可能性が高い。

 

 

「なあよぉ、俺達って逃げる必要あんのか? 事情を話して協力すればいいじゃねぇか」

 

 

電王の言う事は尤もだ。

別に自分達はライダーバトルの参加者ではない、龍騎達にその事を伝えればいいだけの話だ。

 

 

「うん、だけど信じてもらえるとは限らない」

 

 

ただでさえ世界が世界だ。ライダーと言う存在は疑心暗鬼を招きかねない。

 

 

「本当は司くんと先生の二人だけでもギリギリなんだ、僕達はこうして影ながら支えるのが一番だと思うよ」

 

「チッ! ま、いいけどよ。やりたりねぇぜコッチは」

 

 

少し不満げに電王達は各々のバイクに乗り込み、学校へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校のパソコン室。

 

 

「もう大丈夫か」

 

 

画面に映った彼らを見て、双護はため息をつく。

 

 

「おいおい何なんだよコレ、マジでさ!」

 

 

隣にいた椿が汗を浮かべながらメガネの位置を整える。

今パソコンの画面にはこの街にある監視カメラの映像全てが映りだされているじゃないか。

学校に新しく追加された機能か? いやいや、そうじゃないと椿は知っている。

これはクウガの世界から学校にあったもの、正確に言えばコレは真志が持っていたものではないか。

 

 

「さあな、俺は頼まれただけだ」

 

「クウガの時からおかしいとは思ってたんだよ。

 警察のパスワードが表示されたりさ、このパソコン管理してたの真志だろ? お前アイツに何て言われたんだよ」

 

「保健室の治療器具と同じでパソコンにこんな機能がついてた、らしいが?」

 

 

椿はそれを聞いて少し考える。

たしかにそう言われれば納得もいくが、どうにも引っ掛かる。

 

 

「……この音」

 

 

椿はそれに触れる。

すると一枚のディスクが出てきて、画面はエラーを表示した。

 

 

『ディスクを入れてください』

 

「ディスク? と言う事は――」

 

「ああ、コイツだよ……ッ!」

 

 

椿が持っている一枚のディスク。

無地で何もタイトルは書かれていないが、それが何を意味するのかは明白だ。

 

 

「このパソコンは別に特別でも何でもねぇ! このディスクが問題なんだ!!」

 

「そう言えば拓真のヤツはこれが罪だとか言っていた様だな」

 

 

二人は意味が分からず沈黙する。

その台詞から考えて拓真が真志から何か聞かされたのか?

そして、しばらくして噂をすればか。学校に戻ってきた拓真がやって来る。

彼は椿の持っているディスクをみると、何も言わずにうつむいた。

 

 

「拓真、コレが何か知っているんだな」

 

 

拓真は少し迷った様に目を反らすが、すぐに決心を決めてか二人の目を見つめた。

 

 

「うん、真志くんもバレたら教えろって言ってたし……分かったよ」

 

 

やはり何かあるのか、椿はごくりと喉を鳴らす。

一方で双護は興味が無いと言う訳ではないだろうが、驚く程に冷静で無表情だった。

髪をいじりながら無言で拓真の言葉を待つ。

 

 

「どうして、真志君が一人暮らししてるか知ってる?」

 

「いや、理由までは」

 

「お父さんと、お母さんが……その、いないんだ」

 

「あぁ……」

 

 

二人ともって事は事故か何かだろうか? 椿は予想を2、3考えてみる。

だが拓真の口から出てきたのは意外な言葉だった。

 

 

「捕まったんだよ、警察に」

 

「「!」」

 

 

これには椿はもちろん冷静な双護の表情を一変させた、拓真は気にせずに続ける。

 

 

「椿くんが持っているそれ、コンピューターのハッキングソフトなんだけど――」

 

「え? これが!?」

 

 

電波を介して対象のパソコンのデータを全てコピーしたり、相手が今使用しているのと同じ画面にしたりするモノに変える。果ては対象のパソコンを遠隔操作する事も可能のソフト。

 

 

「ま、マジか? 冗談だろ?」

 

 

椿はそのディスクを見る。

何気ない普通のディスクだが中に入っているソフトは化け物と来た。

明らかに現実離れしすぎている代物にも思えるが、それは確かにココに存在しているじゃないか。

 

 

「まさか……」

 

「うん。真志君の両親はそれを作ったんだ」

 

 

コピーをメインに置いたハッキングソフト。通称・鏡像の世界(ミラー・ワールド)

 

 

「ミラーワールドって……」

 

 

拓真は続ける、真志の両親はそれを使い大金を得ようとした。

しかし所詮は人の作りし虚像、うまくいくわけがない。鏡像の世界は不完全な失敗作であり、なんの意味も成さなかった。

それだけではない、ハッキングの件は警察にばれてしまい結局両親は真志を残して刑務所に行く羽目になったのだ。

真志は親戚の元に行き、無理をいって一人暮らしをさせてもらっている。という事なのだった。

 

 

「多分一人のほうがいろいろと楽なんだと思う。真志君にとっても、親戚の人にとっても」

 

 

犯罪者の息子。正直親戚は真志を預かる事を躊躇しただろう。

いや恐れていたのかもしれない。一人暮らしをしたいと言った時、親戚の目が安堵の光に輝いたのを真志は忘れないだろう。

尤もそれは少しだけ寂しい事だったが、逆に真志にとってもありがたい話なのかもしれない。

 

真志はそれから偽善だったとしても出来る限りの善を尽くす人になった。

それは脅迫概念からくるモノだったのかもしれない。自分が少しでも悪い事をすれば飛んでくる言葉は決まって――

 

 

『犯罪者の息子だから』

 

 

そうなれば自分を預かってくれた親戚にまで迷惑がかかる。

それは避けないといけない、だから彼は少しでも善人にならなければいけなかったのだ。

両親を憎む事はしなかった、憎んでどうなるわけでもない。

もう二度と関わらない奴らだ、どうなってもいい、どうでもいい。そう真志は心に刻む。

そして少しでも善に生きる、そうする事で救われる気がした。

 

まして自分は、そうする事でしか生きられないと彼は理解する。

何か評価を落とす様な事があれば、それは容赦無く自分の全てを脅かすのだ。

 

 

「「………」」

 

 

それを聞いて二人は沈黙する。確かに真志は良いヤツだ、人気も高かった。

募金があればクラスの半額以上は彼が払っていたし掃除やボランティアをサボった事もない。

髪の色以外は完璧で、先生からの人気もかなり高かった様に思える。でもそれが真志にとって自分を保つ事だったとは。

もちろんそれで真志の印象が下がる訳ではないが、なんとも言えない気分だ。

 

 

「真志君……それの試作品をずっと持ってたんだ。

 警察の人もそれには気づかなかったみたい、まあといっても使えないんだけど」

 

 

一応は親と自分を繋ぎとめるものだから――

何だかんだ言ってもどこか割り切れない部分があったのかもしれない。

どうでもいいと割り切る両親、しかし確実に割り切れていない部分があったのだろう。だから、捨てる事はできなかった。

 

 

「でもコレ、使えてるぞ?」

 

「一番最初の世界から使えるようになってたらしいよ」

 

「なるほど、ふざけたサプライズと言う訳か」

 

「うん、正直複雑だったみたい」

 

 

そう、結局迷いに迷った末彼が選んだ決断は世界を救うために鏡像の世界を使うと言う事。

それが確実に役に立った事に彼は疑問と何か複雑な感情を抱えていた。

だからこそ真志は本当の善が分からなくなっていた。しかし、そんな時に真司の話を聞いたのだ。

 

欲望の為殺しあうライダー達。

そんな中に戦いを止める事を願いとし、ライダー達を説得しつづけた真司を心の中から尊敬したのだ。

迷いながらも彼は答えを出した。しかしだからこそ許せなかった、彼が死ぬという事実が――

 

 

「………」

 

 

椿はそれからスゲーだのとしか言わなかったが、双護は再び無言でその事実を頭に繰り返す。

ミラーワールド、それは龍騎に関係する単語である。果たしてそれは偶然なのか?

それにもう一つ、ミラーワールドは現実では不完全なモノらしいが、それは本当に真志の両親につくれる可能性があったのだろうか?

発想はどこから? それに二人と言う人数……

 

 

(フッ、考えすぎか)

 

 

忘れよう。

双護は首を振って小さく笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレ! マジで真司さん尊敬してます!」

 

「えぇ、本当に? いやぁ、もっと食べて食べて!」

 

 

真志の言葉に気を良くしたのか、真司は追加注文をとる。

とりあえず今日は皆で居酒屋に来ていた。もっとも蓮はまだ病院にいる恋人、恵理のところに行っている為こきにはいないが。

 

 

「いやぁー! 真司さんは――! それから――んでもって――」

 

「お姉さーん! パフェも追加で!」

 

 

次々と誉め殺しの一手が真司を襲う。

だが、真志は本音を言っているだけなのだが。

 

 

「センパイのウィルスがまた感染していってる……」

 

 

少し離れた席で、佐野が呆れたように二人を見つめていた。

 

 

「でも、満さんだって真司さんにいろいろ助けられたんですよね?」

 

 

そういって佐野百合絵は微笑む。

司もまさか彼がもう結婚しているなんて思わなかった。

彼がライダーバトルを辞退しようと思った一番の要因が彼女らしい。

要はあの状況で龍騎は佐野を助けたのだろう。これは龍騎の物語を知っている司にしか分からない事ではあるが。

 

 

「やめてくださいよ百合絵さん!」

 

 

恥ずかしそうに佐野はソレを否定する。流石の彼も彼女には甘いようだった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、学校の食堂では同じように夕食が始まっていた。

材料には困らないものではあるが、いかんせん学生だけの料理なので出来の方が微妙ってなものである。

今まで料理なんてした事のないメンバーが多いので、それだけメニューが単調になってしまうと言うものだ。

 

 

「あーあ、今頃司くん達はおいしいもの食べてるんでしょうねー!」

 

「そうですね、だけど普段頑張ってくれてるんですから、ね?」

 

「アキラちゃんは良い子ですねぇ、私も見習わなくちゃです」

 

 

夏美がそう言うとアキラは少し照れたように笑う。

司たちが頑張ってくれているんだ、それだけ彼らにはいいものを食べてもらわなければ。

自分達は守ってもらっている立場だ。我慢、我慢、夏美はそう思い頷く。

 

 

「ところで、今日は空野が当番か。どんなメニューなんだ?」

 

「運がいいわよあんた等、今日は薫スペシャルだから」

 

 

薫は鼻歌交じりに丼にご飯をよそう。

そしてかまぼこを数切れのせて醤油をかけると、ホレと言って椿に渡した。

 

 

「キャーオイシソー! はい、つぎー!」

 

「………」

 

 

料理なめんなぁあああああ!

めんどくさかったんだから許しなさいよぉおお!

などと吼える彼女達を見て、二人はため息をついた。

 

 

「はぁ…でも、やっぱり食堂のお姉さんとかも欲しかったです……!」

 

「そうですね。あはは――……はぁ」

 

 

しかし雇える訳も、来てくれる訳も無い。

いろいろと設備が揃っている中で食事や洗濯等は自分達がしなければならない。

不器用な自分達ではその面だけが唯一不十分だったのだ。二人は諦めの決意を固めると、仲良く薫スペシャルをかきこむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの? さっきから変だぞ」

 

「え!? あ、あはは……なんでもないっす!」

 

 

美穂はずっとうつむいてる美歩にジュースを差し出す。

美歩はお礼を言って受け取るが、口を少しだけ付けただけで飲む事はなかった。

 

 

「なんかさ、悩んでるなら相談のるけど? おんなじ名前としてね」

 

「あ、いや……! 大丈夫! 大丈夫! なははは!!」

 

 

美歩は店のガラスに映る自分の姿を見てゾッとする。

笑っているのだ、自分と違う顔をしている自分は口パクで確かに言った。

 

 

『そいつを殺してデッキを奪えよ』

 

「ッッ!!」

 

『殺すのが嫌なら奪ってもいい、じゃねぇと勝ち残れないぜ』

 

 

これは幻聴? いや、確実に耳を貫く言葉。

美歩は得体も知らない恐怖に身を震わせながら何とか気丈に振舞ってみせる。

 

 

「み、美穂さんはなんか……こう、どうしようもなく怖い時ってありませんか?」

 

「え? うぅん…そうだな、あるよ」

 

 

でも、と美穂は真司を見る。

その目はとても優しくて、美歩は何故か泣きそうになる。

 

 

「だけどアイツ…真司がさ――」

 

 

馬鹿なヤツだよと美穂は笑う、しかし佐野同様に悪気は少しも感じられなかった。

どういう事があったのかはわからない。だがこの世界では美穂も佐野も真司に救われたのだろう、それがひしひしと伝わってきた。

 

 

「………」

 

 

美歩は真司の隣で熱く語っている真志を見る。

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、どうしたんだよお前」

 

「どうしたって……何が?」

 

 

真司達と食事を楽しんだ帰り、真志は美歩に声をかけた。

 

 

「お前、ずっと調子悪そうじゃねぇか。絶対なんかあるんだろ」

 

 

少し強めの口調で真志は美歩に詰め寄る。

しかし美歩は真志の目を見ることなく曖昧に返すだけだった。

別になんでもない、その一点張りだがどう考えても何かある。そのモヤモヤが真志を急き立ててしまった。

 

 

「どうしたんだよ! もっとオレを頼ってくれてもいいじゃねぇか!」

 

「いやだからっ! 何でもねぇって!」

 

 

美歩は真志の肩を掴んで引き寄せる。

近づく顔と顔、美歩も真志もつい赤くなってしまう。

 

 

「……ねぇ、真志」

 

「な、なんだよ」

 

 

美歩は目を閉じて顔を近づける。

 

 

「えっ! え?」

 

 

真志はいきなりの行動に戸惑い、パニックになった。

これはそう言う意味なのか!? そしてその視線の先には――

 

 

(せせせせっ、先生! どうなってんだコレ!!)

 

(ぼっ、僕にも全く分からないよ! え? ちょ、これってやっぱり担任として注意すべきなのかな!?)

 

 

後ろにいる二人はアワアワと震え始めてしまう。

いきなりすぎる気もするが、最近の女子は案外グイグイくるものなのだろうか?

 

 

(でもまだ僕臨時だし……! うん、いやでも高校生ならもうこう言う事してもいいんじゃないかな? いやいやいやいや! 何を言っているんだ僕は!)

 

(おおおお落ち着いて先生、まずは冷静に状況を把握しよう。美歩と真志は一緒に暮らしてるんだぜ!? そりゃそう言う関係になってもおかしくないんじゃねーかな!?)

 

(つつつ司君! 一緒にクラウチングスタートってどういう事なんだい!?)

 

(え? なに? どどどどどういう事なの……!?)

 

 

などと、パニックになっている司達が見える中で真志もだいたい同じ様な事になっていた。

 

 

「……ッ」

 

 

流石に恥ずかしい。

真志は少し申し訳ないと思いつつも、美歩から離れた。

 

 

「………」

 

「わ、わりぃ………」

 

 

恥ずかしくなって真志は走り去る。残される美歩。

 

 

『ぎゃははは! やっぱ私って真志に嫌われてんだよなぁ!』

 

 

やめてよ……

 

 

『でも大丈夫、ライダーバトルに勝ち残れば願いが叶うんだから!』

 

 

やめて……

 

 

『真志をモノにするには…分かるよなぁ? ぎゃははは!』

 

「やめてよぉ!」

 

 

水面に映る自分が下卑た笑みを浮かべる。

これは私の本心なのか? 美歩はどうしようもなく怖くなって、悲しくなって――

 

切なくなった。

 

 

 

 

 

 





まあ、何回か言ってるけど平成ライダーの中で一番何が好きかって言われたら龍騎なんですよね僕。だからなんだって訳でもないんですけどw

ではでは
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