だいたいこっから一つの編が三、四くらいになる感じかな。
次の日、また街中にシアゴースト達が現れて人々はパニックに陥る。
あきらかに間隔が短くなっている、このままではいずれミラーワールド関係なくモンスターが街を覆ってしまうだろう。
ニュース等にもその話題で持ち切りとなり、町は混沌に包まれているといっても過言ではない。
「とにかく、殲滅が先だよ! 変身!」
「先生、あっちに自衛隊もちらほら見えますね」『カメンライド』『ディケイド!』
アギトとディケイドはシアゴーストに向かって走り出す。
しばらくして真司達も集まってきた。シアゴーストは一定の時間をおいて一点に集中して現れる様だ。
おかげで戦いやすいと言えばそうだが、倒しても倒しても次の期間には一定の量まで増えている始末である。
「変――ッ!」
変身しようとデッキを鏡にかざす真司、しかし鏡に映ったモノを見て変身をやめる。
「うぇええん!!」
道の隅っこで女の子が泣いていたのだ。
母親とはぐれてしまったのだろうか? とにかくあのままでは危険だ。
既に女の子を捕食しようと、レイドラグーンは空中を旋廻している。
「くっ!」
間に合うか? 正直、微妙だった。
しかも変身していない今、攻撃を受ければ致命傷になるだろう。だが変身している時間もない。
それでも真司は女の子を助けることを迷わなかった。彼の正義、信念は動きを止める事はない。女の子の所まで全速力で駆けて行く!
「ッ!!」
それを見て真志は息をのむ。まさか――
『城戸真司は女の子を守って死んだんだ』
真志の頭に蘇るその言葉。
間違いない! 今がその時になってしまうのか!?
「やべぇ! 司ぁあああああッッ!」
「ッ!」
真志の叫びの意味ををディケイドは直ぐに理解する。
そう、真司が今助けようとしている女の子。間違いない、あの子を守って真司は死ぬのだ。
「さ、させるかよッ!!」『カメンライド』『ファイズ!』
赤い光と共にディケイドはファイズに変身する。
司は恐れていたのかもしれない。自分が本軸に関わる事で、おおきく歴史が変わってしまい何かよくない事が起きるのではないかと。
良太郎達は本人であるが、結局は自分達の世界に来ているいわばゲストの様なものだろう。
しかしココは違う、龍騎の主軸の世界であるのだ。そこに異物の自分達が加わる事に司は若干の恐れをいだいていた。
言いようのない緊張感、だからこそミラーワールドに入れる自分と、アギト以外は待機させる選択をとっていたのだ。
「うおおおおおおおおおおッッ!」
だが今、龍騎・真司の死を直前にして司の心から迷いが吹き飛ぶ。
果たしてこの選択は正しいのだろうか? いや、どっちでもいい。
目の前の彼をみすみす見殺しにする? そんなのはふざけた選択だと! 許されざる答えだとディケイドは判断した。
「ま、間に合えッ!!」『フォームライド――ファイズ・アクセル!』『Start Up』
とにかく真司を助けたい。
たとえそれが間違った選択だったとしても後悔はしない。いや、したくない!
「大丈夫? お母さんは?」
「う……うん。―――ッ! 危ない!」
少女が叫ぶ。
真司の後ろには鋭い爪を構えたドラグーンが!
「――っ!」
真司は覚悟を決める!
だが、ドラグーンはすぐに吹き飛び爆散したではないか。
「!?」
呆気にとられる真司と、現れるΦのマーク。
「え?」
「だ、大丈夫ですかッッ!?」
真司の前にはディケイドが立っていた。
真司は状況を素早く理解すると、助けてくれたディケイドにお礼を言う。
どうやら彼がいなければ自分はとんでもない事になっていたようだ。いくら龍騎の力があったとしても、変身をしなければ自分は弱い人間なのだから。
「あ……ああ! ありがとう!」
「いや、俺より真志のヤツに言ってやってください」
「っ! ああ! 変身!」
ディケイドは真司の無事を確認すると、再びドラグーン達の群に走っていった。
それを確認して彼も龍騎へと変身を行う。
『ファイナルベント』
真志の前でガゼル軍団が嵐の様に連続攻撃をしかけていった。
インペラーの必殺技、ドライブディバイダーが炸裂しモンスター達を一掃した様だ。
「はいはい、終わりですねぇー」
手を叩きながら上機嫌に笑うインペラー。
そう、終わりなのだ。
"いつもなら"
「!?」
キィィンと嫌な音がしてライダー達はその場に立ち尽くす。
すると、空中から金色の羽が舞い降りてきた。一つ、二つ、三つ――
「なんだ?」
「羽?」
意味が分からないといった感じでライダー達はその羽を見つめる。
しかし二人、二人だけ皆とは違う表情を浮かべていた者がいる。
「ッ! や、やばいぞ!!」
甘かったッ! 嫌な汗がにじみ出てくるのがわかる。
なぜ自分はこの可能性を考えてなかったのか!? すぐに後悔と自己嫌悪の念が襲い掛かる。
安易な決め付け、ファムがいたから劇場版基準だと考えていた自分を殴りたかった。
そう、司。ディケイドはその羽がなんなのかを知っている。
今さらになってあの時ゼノンが残りライダー数をあやふやにしたのか。それをなぜ深く考えなかったのか!?
「……ッ!」
そしてもう一人、そう龍騎はその羽を見つめ拳を握りしめたのだ!
そして何も言わずに一枚のカードを取り出し、バイザーにセットした。
【サバイブ】
「!?」
通常よりもエコーがかかったその音声。
それと共に龍騎の姿は強化体、龍騎サバイブへと進化する。
しかし一同は龍騎のいきなりの行動に驚くだけだった。何故今になって?
「城戸?」
「………ッ」
覚悟、焦り、緊張、そして恐怖。
それらを感じつつある龍騎とディケイド。そしてまだ意味が分かっていないナイト達。
「来る!」
「え?」
黄金の羽が舞い上がり、一つの場所に収縮していく。
龍騎もディケイドも注意をはらう。間違いない、ヤツだ! ディケイドは思わずその気迫に怯み後ずさってしまった。
『………』
羽が一体のシルエットを形作る。
そして黄金の羽が弾け、最後のライダーがその姿を現す。
「「「「!」」」」
「お、お前は……」
羽が弾け、現れたのは黄金のライダー。
その圧倒的な雰囲気は凄まじく、直視するだけで体が焼き尽くされそうな程熱くなる。
呼吸すら苦しい、心が焼き尽くされそうになる。
『城戸真司、仮面ライダー龍騎――』
腕を上下に置く様に組みながら、黄金のライダーはポツリと呟く。
そして一歩龍騎達に向かって前進した、同時に龍騎達は一歩後ろへ下がる。
エコーのかかった声は男だと言う事は分かるが、どこか人間離れしている様にも感じられた。
『秋山蓮、仮面ライダーナイト』
また一歩、そのライダーが歩くたびに龍騎達は後ろへと下がっていく。
『霧島美穂、仮面ライダーファム。佐野満、仮面ライダーインペラー……』
黄金のライダーは龍騎達を一人一人見やると、その場に立ち止まった。
しかし何故だろう、嫌な予感がする。プレッシャーがより強くなってのしかかってくる。
ディケイドは思わず膝を地面につきそうになって、何とか立ち止まった。それほどまでにこのプレッシャーと緊張感が凄まじい。
『お前達には――』
黄金の仮面ライダー、"オーディン"がその手を上げる。
瞬間、彼の姿が消えインペラーの背後に瞬間移動した!
「ッ!!」
『失望した』
黄金の羽が発射され、インペラーを包み込む。
すると羽の一つ一つが爆発を始め、インペラーを衝撃の檻へと閉じ込めた!
「がああああああああッッ!」
「佐野!」
ナイトは事態の危険性を察知するやいなや、自らもサバイブのカードを発動させる。
そして、ブラストベントを発動して羽を吹き飛ばした。
「ぁぁあ……ッ! グアァア――……ッ!」
「大丈夫か!? 佐野!」
「は…い……ッ!! つか、コイツやば過ぎだろ…ッッ 訳わかんねぇぇ……!」
インペラーは苦しそうに立ち上がるとアドベントのカードを発動した。
レイヨウ型のモンスター達が駆けつけ、インペラーをかばう様に立つ。
『………』
しかし、オーディンは自らもまたアドベントを発動させる。
現れるのは最強のミラーモンスター、ゴルトフェニックス。
「攻撃を止めて逃げろ! 早く!」
龍騎はインペラーに向かって叫ぶ。
しかしインペラーにその言葉が届くより先に、ゴルトフェニックスの巻き起こす黄金の疾風がガゼル軍団に襲い掛かった。
「うっ! わあああああ!」
「佐野ッッ!」
インペラーを守るようにガゼル達はゴルトフェニックスに向かっていくが、その黄金の羽がガゼル達に着弾していく。
次々に爆散するガゼル達、そして遂にその羽が契約モンスターギガゼールに命中する。
「ギィイイイイ!!」
「ッ!」
あれだけいたレイヨウモンスター達もたった数十秒で無に帰ってしまった。
もちろんそれだけではない、契約モンスターがいなくなったと言う事は――
「グッ!! あああああああああああ!」
インペラーの体から色が失われていく。
そして装飾も次第に消え去り、貧相な姿に変わってしまった。
「がぁぁぁ―――……ッッ!」
ブランク体である。
全身の力が抜け足がすくむ、だがインペラーは倒れなかった。
別に愛着があったわけでも友情があったわけでもない、主従関係ですらなかったのかもしれない。
むしろ維持コストがあったせいで迷惑と言ってもいい存在だったかもしれない。
だがしかし。それでも、むざむざ殺された自分の契約モンスターを思うとココで倒れる事はできなかったのだ。
「ハァッ…ハァ! う……ッッ! ウォオオオオオオオっっ!!」
龍騎達が止めるのを振り切り、インペラーは全ての気力を振り絞りオーディンに向かう。
敵討ち? いや違う、自らのプライドの奪回? それでもない。
ただ自分とこれまで共に戦ったギガゼール達の為に一発だけ、一発だけでもなにか仕返しをしたかったのかもしれない。
インペラーは渾身の蹴りをオーディンに食らわせる。
『………』
だがオーディンはその蹴りを受けるも、ノーリアクション。そして直ぐにインペラーを弾き飛ばした。
そして、おまけと言わんばかりに金色の羽をインペラーに発射する。
モンスターを失い防御力も低下したインペラーにもはやなす術はない。
龍騎やナイトが彼を庇うが、それでも受けきれる限界を超えてしまったのだ。
「ああああああァッッ」
弾けるような音と共に、インペラーのデッキが破壊される。
変身は解除され、佐野はその場に倒れてしまった。それは彼がライダーとしての資格を剥奪された事を意味する。
「あぐぅうああ……ッッ!!」
「佐野! 佐野ッッ!!」
佐野はかなりボロボロだったモノの、命までは失ってはいないようだ。
その様子に龍騎はホッと胸をなでおろす。しかしこの状況――ッ!
『戦いを放棄した貴様らにもはや願いを叶える資格などない。残された時間も少ない、貴様らにはここで消えてもらう』
「どうして……どうしてなんだよっ!」『ストライクベント』
龍騎の手にドラグランザーの頭部が装着される。
しかしオーディンは何も焦る事なく淡々と言葉を紡ぐだけ。
『お前達は戦えばいい、そうやって世界は巡ってきたのだから』
オーディンが羽に紛れて消える。
ファムやナイトはオーディンが撤退したのかと油断した。
しかし龍騎は大きく深呼吸をすると、急に後ろに振り返り思い切り空を殴る。
『ウッ…!!』
しかしそこは空ではなかった。
瞬間移動したオーディンが立っているではないか!
これには少し驚いたのか、オーディンですらしばらく固まってしまう。
『ほう……! 何故私が現れる場所が分かった? 記憶が消えなかったのか?』
記憶が消えなかったのか?
ナイトとファムはこの言葉に違和感を感じる。まるで以前にもこのような事があったかのように。
そう言えば龍騎はこのオーディンの存在に気づいているような様子だった。
それもあってか、よりいっそうこの言葉が引っかかるのだ。
「城戸、お前、何か知っているのか?」
「……さあねッ!」
「……あ」
ファムは思い出す。
以前真司の住んでいる所にいった事がある(といってもそこは会社の一端だったが…)
特に普通といった所だったが、一つだけ異質なモノがあったのだ。
それが大量のメモ書きだった。何かを記憶しておくにはあまりにも多いそのメモ書きにはたった一行
『金色の羽のヤツが消えたらとにかく後ろを殴れ! 絶対に!』
「お前を一発殴りたかった! それだけだ!」
『フッ、殴ったうちには――』
入らないがなッ!
そう言ってオーディンは逆に龍騎を殴り飛ばす。
サバイブ体であるにも関わらず、その攻撃は龍騎の装甲に大きな傷を残した。
しかし龍騎は力強く立ち上がりオーディンに指を刺す。
「どうだ! 少しは足掻いたぞ!」
『愚かな。何も変わっていない……いや、何も変わらないのだ』
オーディンは笑う。めぐり続ける運命はそう簡単にその軌道を変えるものではない。
歯車は常に回り続ける。それが愚かな輪廻を生み出そうとも、歯車は愚かな役者達を乗せて回り続けなければならないのだ。
「違う!」
『何……?』
しかし龍騎の瞳は未だに強い光を纏っていた。
「絶対に一つだけ変わったッ!!」
『ほう、ならば問おう。一体何が変わったというのだ?』
両手を広げて挑発するように龍騎を刺激するオーディン。
一方で龍騎もまた思い切り手を振り払い、彼を睨みつける。
「重さが……! 消えていったライダー達の重さが倍になったッ!」
『………』
「これ以上は増やさない! 俺は人を守る為にライダーになったけど、ライダーを守ったっていい!」
「――ッ!」
ディケイドは震える瞳で龍騎を見つめる。
このプレッシャーの中でも、たとえどんな状況でも己を貫く事が、ライダーたる存在なのだろうか?
『悪いがそれはできない話だ、もはや貴様らを生かしておく事も不要だろう。私には時間がない、もっと命を蓄積させたい所ではあったが――』
仕方ない、オーディンはそう言って一枚のカードを装填する。
『シュートベント』
オーディンがゴルトバイザーを天高く掲げると、雲が割れそこから一筋の光が現れる。
光は佐野を照らすと、その輝きを増していく。
「まずい!」
それが何を意味するのか察知したアギトが、佐野を庇うように立つ。
「!」
「グッ!! ゥウウウウウっ!」
まさに一瞬。
空から光の通りにレーザが発射され、アギトに降りかかった。
ソーラーレイ、まさにそれは天を貫く神の裁きか。神々しくも圧倒的な力が彼らに襲い掛かる。
「くっ!」
「うおおおおおおッッ!」
龍騎とナイトはオーディンに攻撃をしかけるが、瞬間移動とその強大な力で翻弄される。
それだけでなく、一瞬でアギトの目の前まで移動するとゴルトバイザーで激しい攻撃をしかけていく。
「グッ!! ガアアアア!!」
アギトも限界を向かえ変身が解除されてしまう。
すこし回復した佐野が翼を抱えてオーディンから離れようとするが、オーディンは一瞬で佐野達の前まで移動した。
見上げるボロボロの二人と、見下す黄金の鎧。
『命を貰うぞ、ライダー!』
「くっ!」
『ファイナルアタックライド』『キキキキバ!』
割り込むようにディケイドキバ・バッシャーフォームの必殺技が放たれる。
圧縮された水流弾はオーディン目掛け、凄まじいスピードで襲い掛かった。
もちろんオーディンは瞬間移動で回避するが、水流弾もその動きをサーチして追尾行動をとる。
「に、逃がすか!」
オーディンは何も言わずに一枚のカードを発動させる。
『ガードベント』
オーディンは出現したゴルトシールドで水流弾を弾き飛ばした。
それに驚くディケイド。当然だ、コチラは必殺技を彼へ向けて放った。しかし彼はさも当然の様に盾一つでそれを弾いたではないか。
おまけにもゴルトシールドにヒビが入っている様子は無い。つまり何度次を放った所で簡単に防がれてしまうと言う事だ。
(おいおい、コッチは必殺技なんだぞッ!?)
オーディンはディケイドの背後に移動する。
ディケイドは素早くドッガにフォームチェンジするが、オーディンの攻撃によって大ダメージを受けてしまう
「グッ! ガァアアアアッッ!」
『何者かは知らないが、異端は消えてもらおうか』
金色の羽がディケイドを包み込む。
インペラー同様、爆発の嵐がディケイドの体力を物凄い勢いで奪っていった。
この防御力を突破する威力、彼としても規格外の強さである。
「ぅぁぁああ!!」
ディケイドの変身が解かれ司はその場に倒れる。
ファムは真志と美歩を守っている為動く事ができない。
佐野も翼を抱えてるだけでなく、すでに体中のあちらこちらに出血がみられた。
もはや立つことすら厳しく、這うようにオーディンから距離をとっている状況だ。
「くっ!!」
ナイトはこの状況に焦りを感じる。
このままでは全滅してしまうのが明らかだった。だからこそナイトは苦渋の決断を取る。
「城戸……ッ!」
「ッ?」
「お前はこいつ等を連れて逃げろ」
「はぁっ!?」
らしくないと言えばそうだろう。
しかしナイトとて、こうするしかないと分かったのだ。
このまま全滅するのと、自分が少しでも足掻く事ができれば――!
「蓮! それじゃ――!」
「いいから早くしろッ! お前の願いは守る事だろう!」
「――ッ!」
龍騎は拳を強く握り締める。
もはや考える時間もない、龍騎は迷いを振り払うかのように大声を上げるとドラグランザーを召喚した。
『させんッ!』
オーディンは無数の羽を発射するが、それを白い羽が受け止める。
だが、それも一瞬程度。だがさらに新しい白い羽が金色の羽にぶつかっていく。
「美穂!」
ファムは頷くと真志と美歩をドラグランザーに乗せた。
龍騎はドラグランザーをバイクモードに変えると、さらに佐野と翼、司を乗せる。
「行け真司! 私も残る!」
「ッッ!! 分かった! 蓮、美穂。絶対助けに戻ってくるからな!」
龍騎がそう言うとナイトとファムは鼻を鳴らして笑う。
「お前には何も期待してないが?」
「靴紐も結べない男に助けられてもねぇ」
龍騎はヒデーなと少しだけ笑うと、ドラグランザーを発進させた。
「真司さん……オレ!!」
「大丈夫大丈夫! 君達は俺がゼッテー守るから」
自らの無力さに歯がゆい思いをしながら、真志は助けを求めるために携帯を鳴らすのだった。
「うおおおおおおッ!!」
『………』
ファムの素早い攻撃をかわす訳でもなく、オーディンは二本の剣で弾き返していく。
ナイトの攻撃も瞬間移動を駆使してオーディンは二人にカウンターを決めていく。
人の反射神経では瞬時に現れるオーディンには対抗できない。
「くっ!」『トリックベント』
対してナイトは分身してオーディンに攻撃をしかける。
ファムのガードベントが見せる幻影も合わさり回避は不可能だと思われたが――?
『リターンベント』
オーディンが発動したカードの絵柄が変わり、もう一度認識音声が鳴り響く。
『アドベント』
上空から飛来するのはゴルトフェニックス。
その羽ばたきがナイトの分身も、ファムの羽も全て消滅させた。
不死鳥の羽ばたきは全てを無に返す。黄金の旋風は全ての力を上回る。
『ムンッッ!』
「うぅぅぅうッッ!」
「グッ!」
金色の羽が発射され、二人の装甲を乱暴に削りとっていく。
ナイトはファムを庇い前へ立つが、オーディンは瞬間移動でファムの後ろへワープすると背後からファムを金色の羽に包み込んだ。
視界が金に染まり、二人の体から激しい火花が四散する。
「きゃあああ!」
「くっ! 霧島!」
このままではマズイ。ナイトは飛翔し、そのままオーディンに切りかかる!
当然瞬間移動でかわされるが、それこそが狙い。
『ファイナルベント』
出現したばかりのオーディンを青き閃光が捕らえた。
バイクモードへ変形したダークレイダーが少し離れた位置から走ってくる。
ナイトはそれに飛び乗り、自らのマントで車体を包み込んだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」
『ぐッッッ!!』
風を切り裂くその一撃がオーディンに直撃する!
しかしオーディンはその一撃を確かに受け止めていた。
そしてその僅かな一瞬の間に、一枚のカードを発動させる。
『ファイナルベント』
ゴルトフェニックスが金色の翼を広げ、雄たけびをあげながらオーディンに重なる。
するとフェニックスの体が光となりオーディンと融合、一見すればオーディンに巨大な翼が生えた様な状態に。
同時にオーディンの体を中心として光の奔流が巻き起こっていくではないか。
なんて神々しい光景なのだろうか。光たちがオーディンを祝福するかのように集まり、輝きを増していくのだ。
「な、なんだよコレ!!」
加勢しようとしたファムは思わず動きを止める。
それほどまでに眩い光がナイト達を包み込んだのだ。
エターナルカオス、オーディンの必殺技である。
「え?」
光が晴れたとき、そこに見た光景はまさに絶望と言っていいかもしれない。
倒れるナイト、そしてそのデッキを握り潰すオーディンが見えたのだ。
まさか、あのナイトが――!
ナイトの変身が解かれる。
無防備な蓮にオーディンは止めを刺そうと手を伸ばした。
だがダークレイダーが蓮を庇うように、オーディンに攻撃をしかける。
既に契約は破棄されているのだが、ダークレイダーはあくまでもオーディンだけに狙いを定めていた。
ミラーモンスターの本能がオーディンを危険視しているのだろうか? 当然か、彼が逃げてもゴルトフェニックスの餌にされる。
ならば今ココでオーディンを殺さなければ彼にも、ブランウイングにも未来は無い。
「キィイイイイイ!!」
『愚かなッ!』
オーディンが手をかざすのを黙ってみているファムではない。
素早くオーディンを邪魔するために剣を突き出すが――
『………』
オーディンはファムの攻撃をそのまま受けると、なにくわぬ様子でダークレイダーに攻撃をしかけた。
無数の羽がダークレイダーに着弾していく。
「ちっくしょおッ! ナメやがって!!」
ファムはまるで自分を相手とすら見ていないオーディンに怒りを感じる。
確かにオーディンにとって脅威なのはサバイブ体であるダークレイダーの攻撃だろう。
だが、攻撃を避けすらしない事に無性に腹がたった。
『ムンッ!』
「うあああああ!」
金色の羽がファムの身体に着弾していく。
くじけそうになる心を奮い立たせ、ファムはカードを装填していく。
「くたばれッ!!」『ファイナルベント』
ブランウィングの突風がオーディンを襲う。
しかしオーディンはそれすらも避ける事なく、ミスティースラッシュを身体で受け止めた。
多少は苦痛の声をあげるも、その装甲に特に目立ったダメージを与える事はできない。
「なっ!!」
『これで理解したか? お前達はもう――』
オーディンはゴルトバイザーを二人に向ける。勝ち目はないのか? 二人は死を覚悟した。
しかしその時だ、紅蓮の炎がオーディンに向かってくる。
『……意外と早かったな』
オーディンは淡々とした様子でワープ。それを回避する。
しかしこの炎は――
「蓮! 美穂!」
ドラグランザーが咆哮をあげて変形、龍騎は空中を回転して着地する。
何とか間にあったと言う所だろうか。彼はドラグバイザーツバイをオーディンに向けて対峙する。
首だけを龍騎に向けるオーディン、その姿には完全なる余裕が見えた。
「ッ! 遅せーぞ馬鹿ッ!!」
「城戸……ッ!」
ナイトとファムは歓喜の声をあげる。
それを不愉快とオーディンは鼻をならし一瞥した。
『今さら戻ってきた所で――』
そして、オーディンはそこで足を止める。
その直後、オーディンの目の前に一閃が巻き起こった。
目の間に突き刺さったのは槍、だろうか? オーディンがそのまま歩いていたら間違いなく直撃していただろう。
見たことも無い武器、これは明らかに自分達運営側が用意した武器ではない。
『………』
「フフフ、惜しいね」
オーディンの後ろから青いメッシュ、メガネをかけた良太郎が歩いてくる。
腰には既にデンオウベルトが巻かれていて、その手にはパスも見える。
良太郎は圧倒的なオーラを放つオーディンを前にしても、平然と笑みを浮かべていた。
彼の表情にもまた絶対の余裕が見える。どちらも自分が負ける可能性を考えていない様だ、それほどまでに己に自信があるのだろう。
『貴様も異分子か。全く、次から次へと面倒な事だ』
「正解。とりあえず君には――」
ニヤリと。やはり浮かべるのは最後まで余裕の笑み。
良太郎は青いボタンを押すと気だるそうに手に持ったパスをぶらつかせる。
「消えてもらおうかな、変身」『ROD・FORM』
ベルトの中心が青く輝くと、良太郎の姿の周りに彼のオーラで形成された鎧が出現した。
電王は変身者のオーラによって鎧が決定するシステムである。
今回の鎧は、どうやら嘘が好きな青の様だ。
「お前、僕に釣られてみる?」
『………』
変身と共に電王はデンガッシャーを組み立てながら走り出す。
オーディンはゴルトバイザーを構えカウンターをしかける為にあえて動かなかった。
このまま突っ込んできた電王に俊足の突きを与え、一撃で沈めようとオーディンは神経を集中させる。
そして、作戦通り電王がその射程に入った瞬間ゴルトバイザーを素早く突き出す。
が、しかしそれが当たる事はない。
『!』
電王が消えたのだ!
いや違う。電王は闇雲に突っ込んだわけではない。
ウラタロスはオーディンがカウンターを仕掛ける様に誘導し、文字通りミスを釣り上げた。
電王はスライディングで突き出されたバイザーの下を潜り抜け、突き刺さっているデンガッシャーの下までやってくる。
そしてソレを素早く引き抜くと、オーディンに向かって思い切り振り回した。
「はぁあああああッ!」
『フン!』
オーディンは瞬間移動で電王との距離をとる。
そして黄金の羽を電王に向けて発射した。強力な飛び道具にロッドフォームは対抗する明確な手段をもたない。
「フフッ!」
だが、電王はあくまでも余裕を浮かべている。迫り来る羽を見ても迷わず突っ込んでいく。
そしてそのままロッドを地面に突き立てると、棒高跳びの要領で自らを空に放り投げた。
無数の羽のはるか頭上を飛び越えて、電王はオーディンに狙いを定める!
『………』
「さあ、終わりだ!」『FULL CHARGE』
電王の足が光り輝く。
デンライダーキック、電王はそのままオーディンに向かってとび蹴りを仕掛けたのだ。
しかしオーディンがそれを受けるとは思えない。それが逆に裏があるのかと警戒を呼ぶ。
そして、オーディンが出した答えは真っ向から潰すと言う簡単なモノだった。
無数の羽の狙いを空中にいる電王にかえると、羽の量を増やし黄金の嵐を巻き起こす。
『散れ』
「ふふっ! 足元注意ってね!」
『何ッ?』
オーディンはその言葉を信じ、足元を見る。
しかし特に何も無く、電王も羽に巻き込まれて普通にダメージを受けていたようだった。
「……フッ!!」
『!』
だがしかし、電王・ウラタロスはまだ笑っていた。足元には何も無いのに?
「嘘だよ。フフフ……! 足元じゃなくて――」
やられた!!
オーディンは瞬間移動をするために意識を高める。おそらく下ではなく――ッ!
直後、赤い閃光の雨がオーディンをとり囲む!
『上かッ!』
逃げようとしても体が動かず、何故か瞬間移動もできない。
完全な固定、つまりは自分は相手の力によってロックされている。
このポインターによって、自分は――
「やああああああああああ!」
直後、その赤い閃光。続けてポインターに黒い影が突入する。
アクセルクリムゾンスマッシュ、次々に襲い掛かる衝撃にオーディンでさえ苦痛の声を漏らしていた。
『……フン!』
しかしすぐに冷静さを取り戻し、現れるΦのマークを弾き飛ばすとオーディンはその影に金色の羽をぶつける。
高速で動いているにもかかわらず、羽を命中させられるその腕前は最強のライダーを名乗るのにふさわしいだろう。
「くっ!」
倒れるのはファイズアクセル、拓真だ。
奇襲の為に遠くでアクセルを発動させた為、その時点でタイムリミットがやって来る。
「うぅ……ッ!」『3』『2』『1』『Time Out』
「お前はッ?」
蓮は新たに現れたそのライダーに疑問を持ち問いかける。
こんなライダーがいたなんて聞いていない。それにディケイド達もそうだったが、オルタナティブと同一と言うにはあまりにも設定がおかしい。
ディケイドはまだしも、アギトや今になって現れた彼らはカードすら使わないじゃないか。
「僕はあなたの味方です。安心してください」
そう言ってファイズはオーディンと対峙。
オーディンは少しファイズと距離をとるため、後ろへ下がっていく。
だがそれはフェイク、オーディンは下がっていくと見せかけて瞬間移動でファイズの後ろへ移動する。
『死――』
「チェック!」『Exceed Charge』
『何!?』
今度は青い閃光がオーディンを捕らえる。
既に瞬間移動の事を知らされていた拓真達は、囮の作戦をとったのだ。
物陰から隠れていたデルタが現れ、ポインターに向かって飛び蹴りを放つ。
「てゃあああああああッッ!」
『ぐおぉおおおおお!』
ルシファーズハンマーがオーディンにヒットする。
流石のオーディンも度重なる連撃に参っているようだ。苦しそうにうめきながら黄金の羽を散らして牽制を行う。
そしてさらに現れたデルタの紋章に体力を削られていくようだ。彼は紋章を破壊すると、ややふらつきながら言葉を龍騎達にぶつけていく。
『……クッ! 今から十時間後、ミラーワールドのこの場所においてライダーバトルに決着をつける』
「!」
ミラーワールドのこの場所。電王たちを警戒するための行動だろう。
『もし、ここになければこの街を破壊してでもおびき出してやろう』
「なっ! 待て!」
オーディンは金色の羽と共に消える。
しばらくは警戒したままだったが、何も起こらない事を考えると完全に退避した様だ。
「蓮! 美穂! 大丈夫か!?」
「あ…ああ……ッ!」
蓮はフラフラと立ち上がると上空に留まっているダークレイダーを見る。
「お前――」
ダークレイダーは何も答えない。
まるで、蓮の無事を確かめたからといわんばかりに、上空へ飛び立つとそのまま見えなくなってしまった。
「………」
蓮は言葉にこそしなかったが今までずっと一緒に戦ってきたパートナーに礼を示すと、その場に座り込む。
さらに龍騎達は変身を解くと、同じく変身を解いた拓真達に頭を下げた。
「ありがとう、助かったよ」
「真志君から連絡があって……」
拓真の後ろで真志が照れくさそうに笑う。真司は先程と同じように笑って真志に駆け寄った
「サンキュー! 真志君!」
「い、いや! あははは!」
憧れの人にお礼を言われて真志も嬉しいようだった。
取りあえず今は何とかなったのだろうか? 笑いあう真志と真司、だがそんな二人に一つの影が襲い掛かった。
ハイドラグーンだ! 運よく生き残った一体が、その爪を突き立てて真志に狙いを定める!
「え?」
真志が気づいたときにはもう遅い。
いまから逃げようにも確実に射程範囲にはいっている。
「うっ! うわぁッ!」
思わず腰を抜かしてしまい両手で顔を覆う。
襲ってくる激痛に耐えようと、歯を食いしばった――
「……ッ!??」
しかし痛みは襲ってこない。真志は助かったのかと安心する。
だが目を開けた時、彼の視界に広がっている光景は意外なものだった。
「えッッ!!?? し、真司さんッ!!!」
「大……丈夫…ッ?」
そう言って真司は笑う。
しかしその口からは鮮血が見え、顔色も悪く、足が震えていた。
「真司ッッ!!」
美穂の叫び、それで彼らは事態を理解する。
庇っていたのだ、真司はその体を盾にして真志を守った。
「真司さん…! なんで……!!」
「言った…だ…ろ? 君達…は…俺が…守…るっ…て――」
目の光が消えていく。
おそらく真志が与えられた補正を考えれば、一撃くらい攻撃を受けても耐えられたはずではあるが――
「そ、そんなッッ!」
真司は力を失ったかのようにその場に倒れた。美穂が何か叫んでいるが真志の耳には届かない。
『城戸真司は死ぬ』
その結末を変えたかった、自分には力がないがそう思った。
龍騎になれなくてもいい、そう思ったのに!
オレのせいだ、真志は青ざめて肩を大きく震わせた。
「くっ!」
拓真の合図と共にオートバジンがドラグーンを吹き飛ばす。
そのままゼロ距離でドラグーンを蜂の巣にすると、すぐに爆散させる。
しかし――
「真司ッ!」
「城戸! 城戸ッッ!」
美穂と蓮は真司に駆け寄るが、拓真は二人を制した。
今ならまだ学校の治療器具で助けられるかもしれない!
「バジン! お願い!」
オートバジンは頷くと、真司を抱きかかえ学校へと飛んでいく。
間に合うといいが――。拓真は真志に視線を移す。へたり込んで震える彼に手を差し伸べると、真志は弱々しくその手を握り返したのだった。
「……とりあえず落ち着いた様だね」
ベットに眠る真司を見て美穂達は胸をなでおろす。
しかしあくまでも危機的状況を避けただけでまだ安心はできない。
だがやはりと言うか、この治療器具の効果は凄まじい。この短時間で破壊された内臓は著しい回復を遂げていた。
「助かったね」
「いや、そうとも限らないぜ先生」
「?」
司が指し示すのは時計だ。
「あのオーディンとか言うヤツ。指定された時間まであと二時間しかない!」
佐野の言う通りだ。真司は助かったものの、まだオーディンが残っている。
奴を倒さなければこの街が破壊されてしまうかもしれない。
しかも場所はミラーワールド、入れるライダーは限られる。
「私が行くよ」
「ッ! 本気か霧島?」
「強化体だった蓮さんですら勝てなかったのに……」
でも、私が行かなくちゃならないんだ! 美穂は震える手を握り締めて言い放つ。
誰も否定はできない、残ったライダーは美穂と真司だけ。真司が戦えない今、美穂がオーディンと戦うしかない。
一応ディケイドとアギトがいるとは言え、果たして戦いになるのかどうか。
「ごめんなさい……! オレのせいでッ!」
真志は何度目か分からない謝罪をする。
別に誰も真志を攻めなどしない、それはもう彼自身分かっているのに。
だがそれでも真志の心が救われる訳ではないのだ、自分を庇って刺された真司。
真志は自分のデッキを見る。
もし自分が素早く契約していればだとか、もしああしていればということは思わない。
彼はそう言う男だ。だが、やってしまった事の大きさは真志に重い枷の如くふりかかる。
「私たちも……まだ完全とはいえないのが悔やまれるね」
「ああ、そうですね」
大分回復したとは言え少し顔色が悪い翼と司。
それに加えてアギトはミラーワールドに入るためには戦闘能力の低いトワイライトで向かわなければならない。
これは大きなハンデになる筈、翼としても自分の存在は逆に足手まといになるかもしれないと悩む。
「大変です! 司くん!」
そこへ夏美が走ってきた。何だ? 一同は一勢に彼女の方へ。
ただその表情は少しばかりの希望が混じっていた為に、それがいい知らせである事が分かる。
「実はですね――!」
時は少し遡り――。
『アンタも無茶するわねぇ…』
「いいんですよっ! 司君達が頑張ってるんですから、私も頑張らないとです!」
キバーラの呆れ顔を夏美は頬を膨らませてくすぐる。今、夏美と我夢、アキラは街を駆け回っていた。
少しでもコアミラーの情報を手に入れる為、何か手がかりがないかと探していたのだ。
だが結果はイマイチ。はやり一般人では知りえない情報を得るのはとても難しいモノだ、三人はそれを痛感させられる。
一応モンスターが出たときの為にキバーラに付いてきてもらったが、杞憂であってほしい。
「アキラさん、夏美先輩、大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫ですよ? 夏美先輩はどうですか?」
「うぇ!? あ、あははは! も、もちろん! 元気いっぱいです!」
ああ違う。疲れてるんだな、我夢は夏美の様子からソレを読み取る。
正直、いつシアゴーストの大量発生が起こるかどうかわからない所だったが
このまま無理をして探すのもどうかと思う。それこそ大事な時に力が出せないのは危険だ、我夢は夏美とアキラに休憩を申し出た。
「あははは、二人とも凄いですね。
僕はもう疲れちゃって……本当にごめんなさい、ちょっと休憩していいですか?」
我夢のその発言にアキラはしょうがないですねと笑う。
夏美もホッとした様子でその案に賛成した。そうやって3人は街にある適当なベンチに腰掛けて一息をつく。
「私、ジュースでも買ってきます。先輩と我夢君はそこにいてくださいね」
『あ、アタシも欲しぃー!』
「大丈夫ですよ、分かってます」
そう言って微笑むと、アキラはパタパタとジュースを買いに走っていく。
「我夢君、お願いがあるんですけど……いいですか?」
「え? はい、何ですか?」
「アキラちゃん、きっとジュースを四本も持つの大変だと思うんですよ。だから手伝ってあげてくれませんか?」
「あ……ああ! そうか、そうですね。はい、分かりました!」
そう言って我夢は少し嬉しそうにアキラを追いかけて走っていく。
残された夏美は満足気に微笑んで彼の背中を見ていた。
『アンタが手伝ってあげればよかったんじゃないの? 我夢くん疲れてるんだからぁ』
「チッ、チッ、チッ! わーってないっすねーキバーラは」
フフンと笑い指を振る夏美。彼女の黒髪が風にゆれてサラサラと。
「気遣いには気遣いで返すのが流儀ですよ!」
『?』
「いやぁ、我夢君には悪い事をしました。きっと私の為に休憩してくれたに違いありません」
『あ! そうか、アンタっ……成る程ねぇ!』
やるじゃないのとキバーラは楽しそうに夏美の周りを飛び回った。
どうやら意味を理解したようだ、少しでも二人きりの状況をつくってあげるべきだろう。
「フフフ、策士夏美をもっと誉めてくれてもいいんです……よ?」
夏美の視線の先には一人の男がいた。
買い物袋を持っているところを見るにスーパーから帰るところだろう。
しかし、夏美にはどこかその男に見覚えがあったのだ。
「んー……」
誰だったか?
確か彼を見たのは、ドラマだったような……それとも雑誌だったような――?
「お!」
男の買い物袋からりんごが一つ落ちてしまった。
コロコロと転がるそれは、夏美の足元で停止する。
「あ……すみません」
「あ! いえ! そんな――」
少し無愛想。というか、表情が硬い感じの男が夏美のところへやってくる。
夏美はりんごを男に返そうとその顔を見た。
「あ、ああああああああッッ!」
「!?」
思い出した! そうか、ココ龍騎の世界だった!!
夏美は司から無理やり龍騎の鑑賞会に付き合わされたのを思い出す。そうだ、そうだ!
この時ばかりは強制的に詰め込まれた知識に感謝するしかない。
「お話! 聞かせてください!」
「えっ…?」
「ごろーちゃん!」
「………」
男、北岡秀一は戸惑っていた。
友人であり秘書であり、ボディーガードである
まあ彼にも友人くらいいるのか? だが、おかしいのは明らかに接点がないと言う事。
目の前の客人は3人、いずれも自分達よりかなり年下だろう。高校生と中学生か?
しかし、高校生の女の子は必死にシャリシャリ音を立ててりんごを貪り食っているのが何ともまあ――
「なっ、夏美先輩!」
「ふぇ?(シャリシャリシャリ)」
「北岡さんが見えましたよッ!」
「(シャリシャリシャリシャリ)………」
ブッ!!
「あ! ご、ごめんなさい!」
「あぁいや、いいんだけど……」
北岡は吾郎に軽く合図を送ると椅子に腰掛けた。
吾郎から少し話は聞いていたため、スーパー弁護士ではなく――
「で? 俺に何か用? と、言ってももうライダーじゃないんだけどね」
仮面ライダーゾルダとして夏美達に話しかけたのだった。
「――と、言う訳なんです!」
ふぅん、世界ねぇ。
ま、信じられなくもないけど。夏美から全ての話を聞いた北岡は意外と反応が薄い。
他の世界や、ミラーワールドの事もそれほど興味が無いといった様子だった。
「信じてもいいけどさ、君は俺に何を聞きたい訳?」
「あ、あのですねっ! コアミラーって知ってますか?」
「コアミラー?」
なーんかどっかで、彼はそう言ってしばらく沈黙を。
「あ」
思い出した。
「何か知ってるんですか!? よければ教えてください!」
「そう言えばさ――」
時間はさらに過去へ戻る。
「北岡アァァアアァァアアっ!」
「ハァ……やれやれ、いい加減お前ともサヨナラしたいね。俺は」
荒れた廃工場で二人の男が対峙していた。
北岡と、仮面ライダー王蛇・浅倉だ。
「どいつもコイツも…ハハァッ! イライラさせやがってぇぇぇッッ!」
「ハッ、いつも何に切れてるんだよお前は……」
適当に置いてあったドラム缶を浅倉は乱暴に蹴り飛ばす。
もちろん、そんな事で彼のイライラが晴れる訳ではない。そう、もっと大きなものを壊せば彼の心は晴れるだろうか?
「三人だ……」
「は?」
「三人、このゲームに乗ったヤツを殺した。ハハッ、ハハハハ!」
上機嫌に、まるで子供のように彼は笑い転げた。
だが笑う浅倉の顔が急に真面目なものになる。
「どいつもコイツも、生きる気が無いのか? 戦う気が無いのか? 弱すぎるぜ」
怒りの咆哮をあげる浅倉。
そしてその時、そんな彼の頬を掠める弾丸。
「………」
「お前はやっぱ危険だよ。悪いけど、ここでサヨナラだな」
ゾルダに変身した北岡は、銃で浅倉に威嚇射撃を放つ。
しかし浅倉は、逆に何故か楽しそうだった。ニヤリと笑って、自らもカードデッキを構える。
「クク…! 変身!」
王蛇に変身を完了させ、二人はミラーワールドへと戦いの舞台を移す。
誰が告げるとも言わぬゴングと共に、二人の戦い――いや、殺し合いは始まったのだった。
『ソードベント』
『ストライクベント』
剣を構えた王蛇の攻撃を、契約モンスター・マグナギガの頭部で弾き返す。
しかし王蛇は笑い続け、ゾルダに攻撃をしかけていく。
彼には恐怖と言う感情が存在しないのか。
「本当ッお前はイかれてるよ!」
「クハハハッ! ハハハハァァアハハハ!!」
それは誉め言葉、王蛇は狂ったようにではなく、『正常』にゾルダに連撃を浴びせていく。
暴力は彼にとって呼吸と大差ない行動だった。
「あーあ、やっぱお前は普通じゃないわ」
「普通とは何だ? ハハッ、戦う事かァ!」
そんな訳ないでしょ……!
ゾルダは接近戦をあきらめ、銃で王蛇を牽制し距離をとる。
やはりアイツに近距離は無理。なるべく遠、近距離での戦闘を心がけなければ。
「フン…」『アドベント』
「!?」
後ろから衝撃が走り、王蛇の所まで吹き飛ばされる。
ふと後ろを見れば、サイの様なモンスターが立っているではないか。
コイツが契約したのはどう考えても蛇、つまり――
「はいはい、殺したヤツの奪ったってわけねッ!」
振り下ろされる剣をかわし、銃で殴るように撃つ。
ゼロ距離での発砲は流石に堪えたのか、王蛇は笑いではなく苦痛の声をあげた。
「フッ、ハハハ!」
しかしすぐに王蛇は笑い出した。
「コレだ…この感覚、この感覚をオレは待ってたんだよ。北岡ァァアアアアアアアアッッ!!」
戦いは最高だ。この命のやり取りが最高の興奮を与えてくれる。
王蛇は楽しそうにゾルダに向っていく。銃を放つが最小限の防御しかしない、銃弾がその体に当たろうとも構わず走り続けた。
「アイツ、人間じゃないんじゃない!?」『シュートベント』
巨大なキャノン砲を両肩に背負って発射する。
たとえどんなに人間離れしているヤツだろうが、コレは受けきれない。
流石にソレを理解したのか、王蛇はその弾丸を交わしていく。
だが、少しずつ、確実に距離を詰められていっているのは事実だ。
ゾルダに焦りが生じる、解除すべきか? いや、もしかしたら隙が生まれるかもしれない……。
その迷いは一瞬。だが、その一瞬が王蛇にとっては絶大な隙となるのだ。
『ファイナルベント』
急に王蛇は加速を始める。
その後ろには契約モンスターのベノスネーカー!
「あれ?」
俺、やばいんじゃない?
「クッ!」『ガードベント』
ギガキャノンを解除して、シールドを構える。
そのまま走るが、逃げられるか!? すでに王蛇は空中に舞い上がっている。
「クソッ!」
せめてもの抵抗に銃で勢いを殺せないかと撃ってみるが、無駄のようだ。
酸を纏った連続蹴りが放たれる!
「ハァァアアアアッッ!!」
「ッッ!!」
回避するために物陰に飛び込むが、直ぐに蹴りの嵐が襲い掛かってきた。
数発は重機によって防がれたがすぐに自らのシールドに蹴りが命中する。
もの凄い衝撃、そして破壊されるシールド。最後の一発はガードできずにまともにくらってしまった。
「ウッ! ガァッ!!」
ゾルダはきりもみ状に吹き飛び、地面に叩きつけられる。
視界がぐるぐると回って気分が悪い。ああ、なんて最悪な日だ。
「ハハッ……」
しかしまた王蛇は笑っていた。何故?
そう、それは自分の体に感じる痛みが原因だった。
「ハハハハハハハハ! 北岡、やはりお前はただの雑魚じゃないようだな……ァ!」
あの瞬間、蹴りがシールドに触れた時ゾルダは銃で王蛇の足を撃っていたのだ。
それが原因で少し蹴りの威力が弱まったと言う事だった。
「くぉ……!」
ゾルダはふらふらと立ち上がる。そして一枚のカードを発動させた。
『アドベント』
契約モンスターマグナギガが現れ、立ちふさがる。
ゾルダは周りを確認すると、すこしマグナギガから少しずれた位置に立った。
「何の真似だ?」
「さぁね」『シュートベント』
巨大なバズーカ砲を出現させ、ゾルダはソレを王蛇へと向けた。
双方がかもしだす決着の空気、どうやらその時が来てしまったと言う事なのか。
「ハハハハ、もっと楽しみたかったが……」『ユナイトベント』
「!?」
「消えろ」
エビルダイバー、ベノスネーカー、メタルゲラス。三体のモンスターがゾルダの背後に現れる。
そしてそのまま三体は合体すると、獣帝・ジェノサイダーへと姿を変えた!
「おーお、合体か。昔は憧れたもんだよ」
「アァァアア…終わりだ、北岡」『ファイナルベント』
王蛇はゾルダの息の根を止めるべく走り出す。
巨大なギガランチャーを構えているゾルダはまともに動く事が出来ない。
しかしゾルダは冷静だった。少しだけ笑うと、そのままギガランチャーを――
横に向ける。
「!?」
「悪かったな、こんな主人で。ま、あの世では幸せにやってよ」
ゾルダが照準に合わせたのは王蛇でもジェノサイダーでもない、マグナギガだった。
そしてそのままゾルダは引き金を引いた。物凄い衝撃と反動で、ゾルダの体が後方へと移動する。
その後方にあったもの――
それはガラスだ。
そう、ミラーワールドと現実世界を移動する媒体。
「知ってるか浅倉――ッ」
「ウオオオオオオオォォオォオオォ!!」
王蛇はその意味を理解し攻撃を中断する。
しかしもう遅い、発射された弾丸はマグナギガに着弾する。
同時にガラスから現実世界へと戻るゾルダ。
「そいつ、体中にヤバイ物積んでるんだ」
超爆発。まさにその言葉が似合うだろう。
マグナギガの体中にあるミサイルや燃料に着弾からの爆発が引火し、廃工場を大爆発が包み込む。
ゾルダはそれを現実世界から確認すると、すこしため息をついた。
「本当、お前は人間じゃないよ」
ブランク体となったゾルダは再び廃工場。だった所に訪れていた。
もう何も無い、工場の周りすらさら地になっていた。しかし、その中にたった一人。
人間がいた。
「ハハハ………アーッハハハ!」
全身に大やけどを負った浅倉は、死が近づいているというのに笑っていた。
「これが……戦いか……心地いい………!」
もう目すら見えていないだろうに、浅倉は笑う。
ゾルダは銃を、そんな彼に。
「………」
何も言わず、ゾルダは浅倉の眉間を撃ち抜いたのだった。
そしてその後、戦いを終えた彼の前に一人の男が現れた。
男は、北岡がライダーだと知ると目の色を変える。
「何? おたくもライダー?」
「ああ、できれば協力してもらいたい…」
そして男は話し始める。
だが、その男の言葉がゾルダの耳にはあまり入る事はなかった。
当然だ。今終わった戦いが北岡という人間の心になにか虚しさのような物を生んだのだ。
「悪いけど、俺は協力できないわ」
なーんか、虚しくなっちゃったんだよね。
「命とか、人生とかさ……だらだらやってても意味あんのかなって」
欲望のままに暴れる浅倉は北岡にとって理解できない存在ではあったが、唯一分かった事。
それは確実に浅倉は死の瞬間は幸福だった事だ。あの傷であんな笑みを浮かべる事が普通はできないだろう。
負けた浅倉は楽しそうで、勝った自分には何も無い。それが北岡にはどうしようもなく虚しい事だった。
「……そうか、なら俺の連絡先を教えておく。気が向いたら連絡してくれ」
「はいはい。いただいときますよ」
多分、もう一生会わないだろうけどね。そう言って二人は別れる。
「さてと――」
今日は玲子さんとディナーか。遅れないようにしなければ。
「………はぁ」
永遠の命か。何かもうどうでもよくなっちゃったな。
ライダーの戦いも、虚しいだけでしょ。
「――って感じでさ」
それを北岡は夏美達に伝える。
「で、その時の男がコアミラーがどうのこうの言ってたような気がするんだよねぇ」
「連絡先はまだ?」
アキラの言葉に北岡はハッとする。
「あー…ゴローちゃん、あれどこやったっけ?」
「あ、はい。今持ってきます」
そして戻ってきた吾郎の手には一枚の紙切れが。
「ふぅん。俺も全然興味なかったけど――……」
その紙を祈るように見ている夏美達に少し興味を示したのか、北岡もその紙を除いてみた。
「住所が書いてありますね。行ってみますか?」
「ちょっと!いいんでしょうか!? 勝手に入って!」
我夢は冷や汗を浮かべて夏美達を追いかける。
確かに行ってみようと言ったのは自分だが、不法侵入をするなんて言ってない!
「大丈夫大丈夫、もし訴えられたら俺が白にしてあげるから」
「そういうもんだいじゃないでしょ!」
我夢の心配をよそに夏美達はそのアパートの部屋に来ていた。
住民の名は榊原耕一。だが部屋にその姿はなく、部屋は不気味なほど静かだった。
北岡はそんな事を気にする事無く、適当にデスクをあさる。もう我夢も止める事は無駄だと判断しそれを静かに見ていた。暫く適当に探していたが、一枚の地図を見つけ表情が変わった。
「赤い点が打ってありますね」
アキラはさらにメモ書きをみつけた。
そこに記載されていたのは――
『鏡の心臓』
「あー……」
これは、ビンゴじゃないか? 皆は顔を見合わせる。
「これで司君の役に立てたんですね!?」
嬉しそうに微笑む夏美を見て、北岡は何故かおかしくなる。
単純な事で喜べるのはいい事だ、屈折して淀んでいる自分達よりは余程。
「そう言えば……北岡さんのデッキはどうしたんですか?」
我夢の問いに北岡は何かを思い出した様に笑って答えた。
「なんかさ、ライダー同士の戦いとめようとしてる馬鹿がやって来てね。ソイツ見てたら、なんかもう本当どうでもよくなってさ」
壊してもらったよ。デッキはね。
「そう……ですか」
きっとその人は城戸真司なのだろう。
「さあ、誰かに見つかる前に行こうか」
そう言って北岡は立ち上がった。ぼやける視界、だが北岡は笑う。
たまには人助けも悪くない。何故か、とてもおかしかった
「………」
夏美達と別れた北岡は事務所に帰るために歩いていた、さっきよりはだいぶマシになったが――
ふと鏡を見てみる。そこには、赤い髪と青い髪の二人。
「?」
北岡が振り返ると、そこには二人の少年と少女が立っていた。
くすくすと笑う二人は北岡に小ビンを投げつける
「うぉと……?」
「ゾルダ。参加賞だよ、受け取ってほしい」
「ソレを飲めば貴方を苛む呪縛は消え去るわ。ウフフ!」
「は?」
北岡が間抜けな声をだすと、また二人はくすくすと笑う。
誰だ? こんなコスプレちっくな子供は北岡の知り合いには確実にいない。
「ボクらは君達を気の毒に思っているんだよ」
ココで生きながらえても、愚かなゲームに勝たない限り君達に希望は無い。
しかし自分達はアソコに介入する事はできない。文字通りアレは彼らの戦いなのだから。
「何言って……」
「今のアナタが分かる事ではないわ! ではごきげんよう!!」
そしてそのまま砂のオーロラの様なモノが現れたかと思うと、あっという間にいなくなってしまった。
「なんなのよ……」
最近どうも調子が狂うね。
「でもまあ――」
受け取っておきましょうか。
どうせ死ぬんだ、成るようになれ。北岡はソレを飲み干すとあまりの不味さに笑ってしまうのだった。
『余計な事はするなと…言った筈だが?』
クワガタの様な携帯電話から女の声が聞こえる。
ゼノンはそれを聞くと、苦い顔を浮かべて笑った。
「あら? 今さら一人の命を救ったところでどうにかなる訳じゃないでしょう?」
フルーラはしかめっ面でその声にこたえる。
『確かにあの程度の事では世界に影響はきたさない。
だが、私は死に逝く人間を見るのも好きなのだ。それを忘れないでもらいたい』
「でも、こう言う展開だって好きでしょう? 人を殺めながらも幸せに向かい続ける人間の姿」
『フッ、成程。確かに嫌いではないな』
イエスと言う事か? 二人は笑い合う。
しかし電話の向こうの相手はあくまでも不機嫌そうだ。ゼノン達はお仕置きを言い渡される。
「えぇッッ!! 金のエンジェル五枚当てるまで帰ってくるな!? 冗談で――」
切られた……。
「えっと……ゼノン?」
「フルーラ。長い戦いになりそうだよ……コレは」
「お小遣い…足りるかしら……」
可愛いクマの財布を覗き込みながら、フルーラはため息をついたのだった。
「あ、ちなみに何味がいい?」
「キャラメル」
「うっ…うぅっ! うぅうう…!」
女子トイレではすすり泣く声が響いていた、美歩だ。
真司に助けられた後彼女はずっとここで泣いていた。相変わらず鏡の中の自分は親しげに話しかけてくる。
『おいおい、泣いてんじゃねーよ。コレってマジでチャンスじゃん!
テメェもデッキ持ってんだろ? うまくいけばあいつ等出し抜いて勝ち残れるんじゃね? キャハ!』
「うぅ……ううう」
自分はおかしくなってしまったんだろう。
こんな事思ってない、だがこれを言っているのは自分だ。
心の中でこんな事を思っていたのだろうか? 美歩は自分が分からなくなる。
同時に怖くもなった、自分はこんな人間だったのか?きっと真志に嫌われる。ずっと好きだったのに――
『ああ、そうだよ! 真志はお前の事なんて何とも思ってねぇ! むしろ縁切りたいんじゃねーかな? ぎゃははは!』
そうかもしれない。
もともと真志は真面目な男なんだ、頭も悪くないし運動だってできる。
でも自分は駄目だ、勉強は全然だし運動が得意という訳でもない。自分といれば真志の評価まで落ちてしまう……
『でも、大丈夫! 大丈夫だよ私』
急に優しく話しかけてくる自分に、少しだけ心が揺らいでしまう。
『願いを叶えれば真志とずっと一緒にいられるから……』
美歩の心が揺らぐ。
そうか? そうなのか? いたい。離れたくない!
『私は私の味方だから。さ、手を出して』
「あ――……」
しかし、そんな彼女を抱きしめたのは鏡の中の自分ではなかった。
「え?」
いきなりの衝撃に美歩はバランスを崩す。
だが、それでも彼女が倒れる事はなかった。彼女はしっかりと支えられているから。
「……何しに来たの」
美歩は支えている手を掴む。
引き剥がしたかったができなかった、思わず泣きそうになる
「美歩――ッ」
「真志……ここ、女子トイレなんだけど」
「あ、ああ――ッ!」
悪い、そういって謝るものの真志は美歩から手を離すことは無かった。むしろ強く抱きしめる。
後ろから抱きしめられ顔もうつむいている為、美歩から真志の表情は読み取れなかったが震える手と足をみて普通ではない事を悟る。
「あの……どうした?」
真志は弱々しい声で小さく呟く。
「オレ、決めたことがあるんだ……」
「……うん」
「だけど、怖いんだよ。一度決めたら迷わないって生き方してきたけど、怖いんだ」
でも――
「生きてるうちにそんな事何回もあった。どうしていいか分からなくて、迷う事すらできなかったり、逃げたり――」
怯えているのだ。そう、誰だって。
「真志は……」
美歩は少し迷ったが、口を開いた。
鏡の中の自分が鬼の様な形相でなにか言っている様な気がしたが無視することにした。
だって、いつもそうしてきたから。
「真志は大丈夫っしょ? いつもいつも乗り切ってきたじゃねーのさ」
「………」
真志は美歩から手を離す。そして振り返る美歩に向かって笑いかける
「ぁ……」
「おう! そうだな、助かったぜ」
真志は美歩の方をポンポンと叩くと、いつもの様に笑って走り出した。
とてもさっきまで落ち込んでいた人間には見えない。その変わりように美歩は思わず吹きだしてしまった。
「なんだよ…それ」
「あー……美歩!」
「ん?」
「やっぱ、お前に励ましてもらうのが一番しっくりくるわ」
「え!?」
真志は頭をかきながら顔をこちらには向けずにハッキリと彼女に言った。
しかしすぐに走って行ってしまうのだが――
「……ぷっ!」
だが、美歩の心のなかで何かが楽になった様な気がした。
それはとても暖かいもの、ずっと忘れてたような思い。
『おい! ざけんなッ! 思い出せ! テメェがアイツにどれだけ迷惑かけたとおもってんだよ!』
「………」
『アイツはてめぇの事なんてどうでもいい! 迷惑だと思ってる! おい! 聞いてんのか! おいッッ!』
「……ッ!」
思い出す? 今までの事を?
雨、曇天。ああ、どうでもいい。どうでもよかった。
靴を履いてなかった事を後悔する。それより傘をもってこなかった事を悔やむべきだろうか?
「………」
もういい、そう彼女は思う。彼女の家族は皆頭が良かった。よく言えば博識、悪く言えば厳しいという所か。
学者の父や、会社でプロジェクトのリーダーを任されている母。そしてなによりその二人から絶大な信頼、期待、そして愛情を注がれている姉。
裕福な家庭、家には豪華なピアノがあったり、無駄に広かったり。自分が着る服だって、やけに綺麗で。
でも、三人の家族だった。
そう三人だけなのだ。ではアタシは? 彼女は思う。
極論で言ってしまえばそう、自分が悪いだけなのだろう。彼女の成績はあまり、いやとても良いとは言える物ではなかった。
ピアノもバイオリンも英語も習わされたっけ、だがどれも結局やめさせられた。
何故?
彼女は続けたいと言った。
たしかに自分が集中していなかったり、遊びに呆けていたというのもあるが。
と言うのも、自分の性には合っていなかったと言えばそうなのだ。しかしそれを聞いても親が納得するわけが無い。
『恥ずかしいでしょ、そんなんじゃ』
それが親からかけられた言葉だった。
ああそう、いつもそうだった。授業参観にきてくれた事なんてなかった。来てくれたのは最初だけ。
しかも教師から当てられた時、緊張して答えられなかったのを見て途中で帰られた。
その後家に帰れば怒られ、二度と行かないとまで言われた。でも姉の授業参観にだけは欠かさず行っていたみたい。
体育祭だってそう、応援はいつもお姉ちゃん。お弁当だってお姉ちゃんの方がよっぽど豪華だった。
それは、『見られる事を知っていたから』。
お姉ちゃんと喧嘩をすれば絶対私が怒られる。
どんなに言っても、何を言っても信じてもらえないッ!
でも、だけど信じてた。私の事も絶対愛してくれてるからって信じてた。
だけど私が熱をだしても迎えにすら来てくれなかった。
お姉ちゃんが熱を出した時は仕事中だってのに抜けてきやがって――……!
怒られればそう、あの言葉をいつも言われてた。
『お前なんか生まなければよかった』
「………」
もしかしたら、そんなに酷い事は言われていなかったのかもしれない。
それに酷い事も言われたが優しい言葉だって少しはかけられた。
だけど昔から子供心に自分だけ酷く怒られていたと言う印象が残っていた。
傷つくに決まっている。何も思わない訳が無い。
自分だけ……自分だけ――ッッ!
いつからか思っていた。もういいと、私は親になんの期待もしないと。
お姉ちゃんは嫌いじゃないけど好きにはなれない。
くだらない嫉妬だと知っている。姉は努力したから愛されている。
いや、褒められているとも知っていたのに。だけど思ってしまうのだ。家族ってこんなモン?
別に頭が特別悪いってモンでも、運動神経が極端に悪い訳じゃない。
なのになんでこんなに――……責められて、怒られて、悲しい思いしなくちゃいけないんだよッッ!!
そんな反抗である時、髪を染めた。自分でもよく分からない反抗だった。
なんでそんな事したんだろう? 頬に走る痛みを感じて私は強く思った。叩かれ、そして言われた。
『お前はもうこの家の人間じゃない! 今すぐ出て行け!』
『あなたは恥しか晒さないの! あなたのせいでお姉ちゃんの評価まで下がるのよ!』
子供ながらの反抗なのかは知らないが、私は気づくと裸足で家を飛び出していた。
もう嫌だ、苦しい、辛い、悲しい、悔しい、怖い。まだそんなに暖かくない季節、雨に打たれ続けて体が震えてくる。
どこかで雨宿りしないと。いっそこのまま雨に打たれ続けてたら倒れて、病院に運ばれたら両親が駆けつけてくれるのかな?
そんな淡い期待を抱く。
いや、そんな訳ないか。結局私は本当に要らない子なんだ。
いっそこのまま本当にいなくなったほうが両親達も姉も喜ぶのかもしれない。
「それも……いいかもな」
適当に見つけたアパート、そこで雨宿りをすることにした。
これからどうしようか? ああ、もう分からないし泣きたくなる
「……ッッ、うぅぅううっ、ぅううう!」
もっと、普通の家庭に生まれたかった。毎日が楽しいと思いたかった。
適当に座る。顔をうずめて、体育座り。情けない、でもそれ以上に悲しい。
寂しかった。
「………」
あれからどれだけ泣いただろうか?
寒い、本当に寒い。体もだるいし、頭もクラクラして気分が悪い。
もしかしたら熱がでたのかもしれないな。雨も激しさを増して横から体に当たってくる。
外も暗くなってきたし、ますます不安になってくる。
だが、もう彼女に帰れる場所はない。帰ってもまた結局同じ事なのだ、自分のやった事を後悔しても何にもならない。
それは分かっているのだ。だけど後悔が悲しさに変わってまた涙が込み上げる。
「誰か……助けてよぉ」
彼女は切にそう思う。
その時だった、彼女に降りかかる雨がピタリと止んだのは。
「え?」
不思議に思って顔を上げる。
「!」
そこには自分と同じくらいの男の子が立っていた。
男の子は複雑な表情でこちらを見つめている。
「あの……」
「え?」
「すいません。そこ、オレの部屋なんですけど」
「あ!」
そこで初めて自分が背もたれにしていた壁が、扉だったことに気づく。
「……えと、すいません。オレ何かしましたか?」
「あ! いや、ごめんなさい。なんでもないです!」
恥ずかしい、早くどこかへ行こう。そう思って手に力を込める。
だがうまくいかない、フラフラして尻もちを着いてしまった。
「ハァ……ハァっ! ご、ごめんなさい…ッ!」
呼吸が荒くなる、体の節々に痛みを覚える。ああちくちょう、熱かよ……!
「……っ」
意識がもうろうとしてくる。彼女は遂に耐え切れずその場に倒れた。
その様子をみて、少年はイライラしたような目でため息をつく。
「くそっ、何なんだよコイツ……!」
なるべく他人とは関わりたくなかったのに、こんな状況になるなんて――。
もしココでコイツを見捨てれば、きっと周りの人間はまた下らない事を吼えるんだろう。
なら取れる選択肢は一つしかない。
「……あ」
彼女が目を覚ましたとき、見知らぬ天井がまず目に飛び込んできた。
ここはどこだろう? 病院ではなさそうだ。体はまだだるく、重い体を起こして周りを見てみる。
暗い、何も見えないってのが正直な感想だった。
「?」
救急車の音が近づいてくる。そのまま暫くして、救急隊員が目の前にやってきた。
理解する、自分はあの少年の家で寝ていたのだ。きっと少年が救急車を呼んだのだろう。
彼女は少し抵抗するも、そのまま病院に連れて行かれるのだった。
「あの……」
ドアの前には少年が立っていた。顔は、まあまあ。
髪は黒くていじっていないところを見るに、自分と違って真面目なんだろう。
一人暮らしだろうか? そんな事を思う内に少年が喋りだす。
「本当にごめんなさい。オレの事、殴ってもらってもいいです。
とにかく病院から帰ったらオレ、何でも言う事ききますんで」
「え?」
少年は目を反らしてそう言う。
最初は意味が分からなかったが、今自分が着ている服を見て理解する。
「あ!」
「………」
自分は制服を着て飛び出してきた。でもその制服は今干されている。
そして自分が着ているのは見た事ない服、男物のソレはきっとこの少年の物だろう。
と、言う事はだ。
「ごめんなさい。濡れたままじゃ……と、思って。
でも、最低ですね。本当に殴ってくれてもいいです。お金も、あるだけなら……」
「え!? あ!!」
恥ずかしい。
顔が赤くなる、でもしょうがないと言えばしょうがない。
この少年だって仕方なくしてくれたんだろうから――
「いや…その、悪いのアタシだから……」
そう言って彼女は病院に向かうのだった。
「……めんどくせぇ」
残された少年は小さく呟いた。
今、自分のやってる事は正しいのか? それとも――
「……あの、本当にすいませんでした」
「あ、えと――」
特に普通の熱だったので、薬を貰って彼女はまたこのアパートに戻ってきていた。
少年はもういいと言っているにも関わらずに謝り続けている。
「もうホントにいいから! 全然気にしてねぇし! だはは!」
「本当にごめんなさい。あの……だけど、どうしてあそこに?」
少年の問いに彼女は黙り込む。
言いたくない、それを瞬時に見抜いたのか少年は追及を止めて彼女に温かいミルクティーを差し出した。
「……あの」
「え?」
少年は立ち上がると、出かける用意をする。
彼は美穂が家に帰れない状況にあると一発で見抜いた様だ。
「もしよかったら、今日はこの家つかってもらってもいいです。オレ漫画喫茶に泊まるんで」
「え!?」
少年の言葉に彼女は目を丸くする。たしかに、泊まる所はないが――
その時、少女の心になにかが芽生える。
もしかしたら少しは気が紛れるのではないだろうか?
とかそう言う考えが大きく膨らんできて、もう制御できなかった
「あの! さっき言った事マジ?」
「え……?」
彼女は少年の目を見つめる。
そこに何か迫力の様なモノを感じ、少年はすこし表情を引きつらせた
「あの…何でも言う事聞いてくれんの?」
「ッ! あの、できる範囲であればっつう事で」
「じゃあ――」
もうどうにでもなれ! ヤケになった彼女は迷わずそれを口にする
「ここに置いてくれない?」
「……は?」
まあ、それが当然のリアクションだろう。しかし彼女は迷わずに全てを話した。
もうこの少年がどんな人でもいい、ありのままを受け止めようと彼女は決める。
「だ、駄目?」
「いや……駄目って言うか――」
この女、狂ってんのか? 何言ってるんだ、意味分かってるのかよ。
少年は心の中で彼女の行動に薄ら寒いものを感じる。
見ず知らずの異性の家に居候したいなんて普通の人間が至る結論ではない。
だがそんな事を気にする事も無く、美歩は彼に詰め寄っていく。
それに、もしも危険な目にあったとしたら、少しは心配してくれるんだろうか? そんな程度しか美歩は考えていなかった。
「じゃ! はい決まり! 安心してよ、私もバイトでちゃんと家賃はらうからさ!」
「でも、普通に考えてまずいっつうか……オレ達全然知り合いでもなんでも――」
「私の裸見たんでしょ? もうそんな仲じゃない」
「は、裸じゃない! へへ変な言い方すんなよッッ!」
「だははは! おっけおっけ!」
これで、確信した。
この人は安全、彼女はその手を差し出す。
「私、白鳥美歩ってんだ」
「―――ッ!」
ここで断ればオレの印象が悪くなる。
制服からしてこの女はオレと同じ学校、変な噂を流されるのは避けたい。
コイツいかにもな情報通っぽいからな。最悪オレの素性が知られる可能性は高いか――?
だとしたら最悪だ。どうせまたコイツも親のネタを使ってくるに違い無い。少年は複雑そうな顔をしながらも、その手を掴もうと手をのばす。
「あ! あと、敬語はぜってーやめてよ? 美歩って呼ぶこと」
「………」
少年はため息をついて苦笑する。
仕方ない、コレも乗りかかった船だと思うか。
それになんとなく、コイツはオレと同じ匂いがする。少年は彼女の目にある疲れた闇を見出した。
「分かったよ美歩。オレは条戸真志、よろしくな」
二人は曖昧な笑顔を浮かべて、その手を強く握りしめた。
正直出会いの印象は最悪だったろう、それからも本当に大変だった。
まず彼女の姉と祖母に連絡をとってなんとか説得した。
そして両親には祖母の家で暮らすと言う事にして、なんとか真志の家に転がりこんだのだった。
もちろん普段あまりやらない洗濯や料理もしなければならなかったし、最初の方は二人の関係もあまり良いとはいえず沈黙の時間が続いたりもした。
だけど、しばらくすれば二人の間からぎこちなさが消えていた。
たしかに毎日は大変だったが美穂の様子を見ている内に真志にある思いが湧き上がってくる。
実際今まで人との係わり合いを極力避けてきた真志にとって、人と訳隔てなく接する美歩はどこか特殊な存在だったのだ。
「うぅ……疲れた」
「おう、また居残りかよ。ははっ!」
「あーあ、アンタとは頭のデキが違うんでね!」
そう言って二人はゲラゲラと下品に笑いあう。
とてもじゃないが学校でそんな姿は見せられないだろう。
それは真志にとっても、美歩にとってもかもしれない。二人だけだからこそ見せる表情なのだ。
「あの……さ」
「ん?」
「ただいま……真志」
今まで誰も返事なんてしてくれなかった。
「おう、おかえり美歩」
だけど、今は違う。今は彼が答えてくれる!
それは同時に真志も同じ、本当の意味で気を使わない相手に出会えた。
ずっと人前で走るなと言われたが、本当は美歩は野原を駆け回りたいと思う正確だったのだ。
ピアノよりもギターが良かった。変な話だが下ネタでも笑いたかった。漫画だって寝転んで読みたかった。
とてもじゃないが家族の前ではできない事だ。
そして美歩の境遇を聞いている内に、彼にも彼女の気持ちが僅かながらに理解ができた。
全く違うベクトルなのかもしれないが、両親や劣等感に包まれているのは同じだ。
最初は互いの傷をなめ合う形になったとして、そこから育まれる想いも確かにあったのだ。
ある日、美歩は髪が茶色いと怒られた。一応髪の色についての指定は無い為、だいたいの教師は見て見ぬふりをするが
たまにそういうのにとても厳しいヤツがいる。名前もしらない教師、しかし悪いのは自分だろう。
美歩は悔しくなる。いや別に染めてもいい、だが何故かできなかった。
親への反抗心で染めてみたが、もし戻してしまったら本当に親から見離される様な気がしていた。
もはや彼女にとっては怒られる事すら会話として成り立つ分、若干の嬉しさがあったくらいである。
だから、美歩は戻せずにいる。
「……はぁ」
「………」
そんな彼女をちゃんと真志は見ていた。
翌日、彼女は目を疑った。あのクソ真面目だった真志の髪の色が変わっていたのだ。
それは自分と同じ茶色。
「アンタっ、何で……」
「あー、ほら新聞部ってなめられたら終わりだからな。外見で威嚇できる様にしとかねぇと」
嘘、そう彼なりの優しさの様なものなのだろう。
すごく偏屈な優しさだったが、美歩はとても嬉しかった。
真志と関われた事で、友達もたくさん出来た。友里達に司達とも最近は話す。毎日が楽しかった。暖かかった。幸せだった――
だが同時に申し訳なくなる。真志はきっと迷惑してるんじゃないか? やっぱり出て行った方がいいんだろうか?
ずっと、助けてもらってばかりで自分はなにもしていない。
それじゃ真志に嫌われないだろうかと、さまざまな事を思うようになった。
そんな事を布団の中で考えていた夜の事。
「なあ……美歩、起きてるか?」
「………」
すこし眠くて返事が遅れてしまった。
しかしそれを寝ているととったのか、真志は一人話し出す。
「寝てるんだな……じゃあ、言うぞ」
「?」
寝ているのに?
美歩は疑問に思いながらも、何を話すのかが気になって寝たふりをつづけた。
「オレの親、お前には海外に行ってるって言ったけどアレ嘘な。逮捕されたんだよ、二人とも」
「っ!」
「ハッキングソフト作ってそれ使ってハック失敗。ははっ、笑えるだろ? マジ、そんなモン作るくらいなら真面目に働けってな」
「………」
「それからオレが何か悪い事でもすれば決まって周りのやつ等は同じ事言いやがる。犯罪者の息子なんてそんなモンかとか……ああ、クソッ! 思い出すだけでイラつくわ」
だから、真面目に生きてきた。善意で生きてきた。
そうしなければ生きられないと彼は知っていたからだ。
「でもよ、正直疲れる時もあるし、結構ストレスもたまったり? あ、別に真っ当に生きるのが嫌って訳じゃないぜ? でも、なんか重かったんだよな……」
真志はそこで少し口を止める。
「でもお前といるとそれが無くなる、楽しくなるんだよ世界が。正直最初はめんどくさいとか思っちまったけど……ごめん!」
「!?」
「何か…だから……その、変な負い目感じてるみたいだけど、気にするなよ。オレだってお前に助けられてるんだ。互いに助けあってる、それでいいだろ?」
「………」
「――って、面と向かって言えないのがオレの悪いところなんだよ」
あーあ、寝てる相手に何やってんだか。起きてる時じゃないと意味ないのに。
そう言って真志は美歩の部屋を後にする。
「………ッッッ!!」
真志は美歩がいたからその重圧に耐えられた。
美歩は真志がいたからその重圧に耐えられた。
偽善で救った者と偽善に救われた者。
結果、本当に救われた者と本当に救ったもの。
二人の不思議で確かな関係、絆がそこにはあったのだ。
バトライドウォーの2が発表されましたね。
公式サイトのイラストかっこよすぎんよ~。
でもクウガどうするんだろうね、ガミオでも出すのかな?
まあいいや、楽しみに待ちましょうか。
ではでは