仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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本当に申し訳ない、全然関係ないんですが。
最近朝起きる時は、くそっ! ねみぃ! なんで昨日もっと早く寝なかったんだ俺は!!

って感じになって、夜は――

おいおいまだ0時とか寝るのもったいないぜ! 俺の夜はここからだぜ!!
っていうループがやばい。



第16話 話61第

 

 

 

『ガッ! ……ゴフッ! ァァア――……ッ!』

 

 

目の前の鏡がクモの巣のように網目を張っている。

その中にいる自分はとても苦しそうで、何より信じられないと言う目をしていた。

 

 

『オマエッ! 何で……!?』

 

 

滴るのは赤い血液、握った拳から流れるそれを見てますます驚愕するアタシ。

いや、私の姿を借りた――

 

 

「消えろ、化け物」

 

『なっ!!』

 

 

美歩は目の前の鏡を思い切り殴っていた。

思い出したのだ、真志は自分の事を荷物とは思っていない!

 

 

『グググッ! ガガッ! アァアアッ!』

 

 

目の前の自分が、自分でなくなる。

やはりコイツは自分じゃなかった、今まで散々振り回されたがもう迷わない!

既に自分じゃなくなった、トカゲの様な化け物が吼える。

 

 

『ちくしょうッッ! もう少しでお前の体をのっとる事ができたのに!』

 

 

鏡の中の幻じゃなくなるのにぃいいいッ! 化け物は美歩を殺そうと手を伸ばす。

しかし化け物は弾かれる、舞い散るのは白き羽。

 

 

『お、おのれ! せっかくこの世界に――』

 

 

化け物は目の前に現れた白鳥に成すすべなく敗北した。

戦闘能力はかなり低いらしい、抵抗すらできなかったのではないかと言う程だ。

 

 

「!」

 

「頑張ったな、美歩ちゃん」

 

「霧島さん!」

 

 

そこに立っていたのは霧島美穂。

ブランウィングは既に化け物を絶命させており、優雅に飛び立っていった。

 

 

「噂には聞いたことがあったよ、心の隙間につけこんで体を乗っ取ろうとするミラーモンスターがいるって」

 

「……へぇ」

 

そうだったのか、美歩は誰にも相談しなかった事を強く後悔する。

しかし彼女が絶命間際に言いかけた言葉は少し引っ掛かるが、この世界に例があるならば気にする必要は無いかと割り切った。

だが結局信頼して欲しいと思っていながら、自分はこのざまか――

 

 

「ところで、美歩ちゃん。真志君が――」

 

「え?」

 

 

そして美穂は話す、真志の決意を。

 

 

「ハァッ!? ちょ! そんな!」

 

「ごめん……止められなかった」

 

 

美歩はその事を告げられる。

絶対に勝機など無い戦い、正直殺されにいっただけと言ってもいいだろう。

しかしそれでも真志は戦いに行った。真司の為、この世界の為、皆の為、それともう一つ。自分の為にだ。

 

 

「私はこれから真志くんを助け――」

 

「美穂さん!」

 

 

美穂は思わず言葉を止めてしまう。

当然だ、いきなり土下座なんてされたら誰でもそうなるものだろう。

美歩のいきなりの行動に美穂は戸惑う。

 

 

「マジで! 一生の……お願いがありますッ!!」

 

 

誰の為に戦うのか、生きるために戦うのか…そんなの分からない

だけど、たったひとつだけ理由を作るとするなら、あなたの為に戦いたい。

もっと、一緒にいたいから――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し前に戻る。

 

 

「行くのか……霧島」

 

 

美穂は頷き、デッキを取り出す。

正直勝てる可能性はゼロに近い。いや、ゼロと言ってもいいかもしれない。

だが行かなければならない、たとえ自分が死ぬことになったとしてもオーディンに会わなければいけないのだ。

 

 

「行ってくるよ、真司」

 

 

恐怖の感情を隠して美穂は真司の頬に触れる。もしかしたらこれが最期かもしれないのだ。

なるべくなら、後悔だけはしない様に。

 

 

「あ……ッ!」

 

 

美穂が真司の体に触れた事で、真司のポケットに入っていたデッキが滑り落ちてしまう。

音をたててデッキが床に落ちる。竜の紋章が輝くデッキ、美穂はソレを拾おうと手をのば――

 

 

「え……?」

 

 

しかしそれよりも早く、デッキを拾い上げた人物がいた。

 

 

「……オレ、真司さんに憧れてました」

 

 

そう言って、真志は龍騎のデッキを見詰める。

 

 

「もし、オレがライダーバトルに参加してたら絶対真司さんと同じ事考えてたと思う。でも、オレは絶対それを途中であきらめてた」

 

「え……」

 

「だって、なんつーか……それって本当にオレの考えじゃないつーか」

 

 

ぐっと、デッキを握りしめる。

正しく、正義に生きたいとずっと思っていた。両親が捕まったあの日からずっと善に生きる事を目標にしていた。

だってそうする事で自分と自分の周りを守れるのだから。偽善でもいい、とにかく世界の好感度を上げろ。

ずっとそう考えてきた。そう、逆に言えばそれしか考えてなかった。

 

 

「ありえねぇって思いません? 願い叶う状況なら、誰でも戦うでしょ?」

 

 

それがたとえ人の命を奪う事になったとしても、何となくで殺せる気がする。

実際には怯えて手が止まるかもしれないが、あまりにも美味しい餌に釣られてしまうのが人間ってものだろう。

当然、それは真志だって。

 

 

「なんつーか、今までの行動って軽かったっていうか」

 

 

真志の正義、行動はほぼ全てが計算されたモノだった。

善を都合よく操り、それから得られるメリットの事しか考えていなかった。

もちろん正義感が全くないと言う訳ではない。だが得られるメリットを考えて優先する善意があるのは確かだ。

八方美人と言えばいいか、良くすれば良くなると知っていた。

 

友里は自分に似ている、そう思った時期があった。彼女もまた自分を正義で保持していたのだろう。

だが彼女とは違う点が一つだけ、それは彼女は本当に正義の事を思っていると言う事だ。

彼女はそれがうまくできない事にジレンマを感じていただけ。

 

しかし自分はそうじゃない、正義をかざしているが他人の為になど考えた事がなかった。

正義、善意は自分をよく見せるだけの道具だとずっと思ってきた。そうすれば後ろ指をさされる事はないと。

それは拓真も同じだっただろう。だが自分は逃げていた、拓真の様に自分が傷つくのは嫌だった。

拓真は強い、自分が傷ついても他人の為に心から動ける事ができる男だ。

 

自分はどうか?

無理だ、上っ面だけ。もう自分ですら正義と善意、それの裏に秘めた黒い感情を理解できない。

 

 

『お前は結局自分の事しか考えてねぇんだよ』

 

 

鏡のようにもう一人の自分が語りかける。そうなのか? そうなのかもしれない

ああ言えばこう返ってくる、これを言ったら駄目だ、そんな事ばかり考えてた。

断言できる、オレの正義は偽りだ。打算的な利己主義を振りかざしてた。

 

でも、だからこそ城戸真司という存在が大きく見えた!

他人の為に命をはり、願いが叶うと言う条件を突きつけられてもその思いを曲げなかった!

本当の正義は真司の様な人間。たとえ元がフィクションの中の偶像だとしても。

だから、真司は――、彼の意思は死んではいけない。

 

 

「ッ!」

 

 

真志は見る。

鏡の奥、窓の向こうにドラグレッダーがその眼を光らせたのを。

そしてそれに呼応する様にして、自らの瞳の奥に龍騎の紋章が輝くのを!!

 

 

「オレ、ずっと逃げてました。正義気取りたいのに大事な事になれば逃げてばっかで――」

 

 

美穂達は真志が何を言いたいのかまだ分からない。

それに構わず真志は続ける。

 

 

「オレは真司さんみたいになりたかった。雑念にまみれた正義とかじゃなくて、本当の正義ってヤツを一度でいいから目指してぇ」

 

 

真志はゆっくりと備えてある鏡の前に向かう。

 

 

「お前、まさか……ッ!」

 

「自己犠牲なんてゴメンだと思ってた。だけど真司さんがオレを守ってくれて……少し考え変えてみたんすよ」

 

 

ごめんなさい。真志は真司に向かってそう告げる。

あなたに助けられたこの命、賭けに使わせてもらいます

 

 

「美穂さん。あなたは生きなくちゃいけない。

 真司さんには貴女が必要なんだ。もし、真司さんが目覚めた時に、貴女がいたほうがずっといい」

 

 

真志が何をやろうとしているのか蓮は理解する。

それがどういう事を意味するのか、蓮はおもわず声を荒げる。

俺が変わると。しかし真志は首を振る。

 

 

「すいません。やっぱりオレはこういうやり方しかできないみたいなんで」

 

「……真司くんにだって大事な人くらいいるだろう?」

 

 

佐野も意味が分かったのか、問いかけるようにつぶやく。

 

 

「オレのわがままっすよ。皆には申し訳ないと思うけど、コレは譲れない」

 

 

一度、もう何も考えないでありのままに――

我武者羅な正義を! でも――ッ!

 

 

「負ける気もねぇ……ッ!」

 

 

突き出す拳!

握られているのは深紅の竜が宿る魂!

 

 

「!」

 

 

それが合図だと、世界は認識する。

真志の腰にあらわれたのはVバックル、それを見てようやく美穂達も真志が何をしようとしたのか理解した。

 

 

「嘘でしょ! 本気なの!?」

 

 

真志は何も答えない、突き上げた手は真司のポーズとは逆のもの。

そしてその間から見える彼の眼に宿る赤き決意! 彼は今、初めて一切自分の事を考えずに他人の為に戦う!

 

 

「……変身ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーディンは朝焼けに包まれた街をゆっくりと歩いていた。もう、彼には時間がない。

本当は残り一人になったライダーを殺し今まで蓄積された命を彼女、優衣に与えるつもりだったが予想以上に城戸真司達が邪魔をしてくれた。

また、繰り返す事になるのか? いや、そうはさせない。もう今回で決着をつける。優衣を救う為なら他のなにを犠牲にしてもかまわない。

それこそ自らの世界であったとしてもだ。

 

 

『………』

 

 

オーディンは右手を横に構える。

その刹那、そこに紅蓮の火球が飛んできた。

オーディンはそれをなんなく握り潰すと、その火球が飛んできた方向に目を向ける。

 

 

『来たか』

 

「………」

 

 

オーディンの先には龍騎。

誰が告げる訳でもない開戦の合図、龍騎は素早くカードを発動させる!

 

 

「うぉぉォオォオオオオォォオッッ!」『ソードベント』

 

 

龍騎はドラグセイバーを構えて一直線に走り出す!

 

 

『ッ!』

 

「くっ!」

 

 

振り下ろしたソレを、オーディンは真正面で受け止めた。

掴まれたセイバーに力を込めるがピクリとも動かない! にらみ合う両者、独特のプレッシャーがその場に漂う。

 

 

「くっ! ぉオオオ!」

 

『……? お前は、誰だ?』

 

 

一瞬動きを止める龍騎。しかしすぐにその眼に光を宿し、彼は力の限り叫ぶ!

 

 

「オレはッ! 仮面ライダー龍騎だ!」

 

『!』

 

 

思い切り力を込めてオーディンの手からドラグセイバーを引き抜いた。

散る火花と共に龍騎はもう一度オーディンにドラグセイバーで切り掛かる。

 

しかし、オーディンは瞬間移動でソレをかわすと、背後から龍騎に殴りかかった。

一発、二発、振り返りながら切る龍騎、それを受け止めると次は蹴りで龍騎の腕を弾く。

龍騎はドラグセイバーを衝撃で振り落さないよう力を込めるが、逆にそれがボディのガードを緩めてしまう。

オーディンはそのがら空きになった体に黄金の羽をぶつけ、爆発させた。

 

 

「グッッ!!!」

 

 

よろける龍騎に瞬間移動で背後に回ると、ドラグセイバーを掴みそのまま龍騎ごと地面に叩きつける。

その際にドラグセイバーは叩き折り、自分は代わりにゴルトバイザーで龍騎を殴り付けた。

硬い鉄仮面を介しても感じる重さと痛み、ああ上等じゃねぇか! 龍騎は痛みと衝撃の中で反撃をしようとオーディンの足を掴むために手を伸ばす。

 

 

『無駄だ、お前では私には勝てない』

 

 

しかしオーディンは彼の手を踏みつけると、その想いを一瞥する。

 

 

「やっぱそうなのか…ッ!」

 

 

苦しそうに呻く龍騎を、どうでもいいといった様にオーディンは見下す。

彼は弱い、オリジナルよりも遥かに。そんな可能性の欠片もない彼がオーディンを超えるなど不可能な話だった。

分かっていた事だ、それは彼もどこかで感じていたのではないだろうか。

 

 

『もういい、死ね』

 

「くっそ……!」

 

 

オーディンはゴルトバイザーを龍騎に突き立てる。

そのまま力を籠めれば終わりだろう。オーディンは手に力を入れ―――

 

 

『シュートベント』

 

 

ビュン! と白い弓矢がオーディンの手をかすめる。

 

 

『………』

 

「!」

 

 

ボウガンを構えているのは、ファム!

 

 

『霧島美穂か……!』

 

 

ファムは何も答えない。

そしてブランバイザーを構えると、オーディンに向かって走り出した。

 

 

「ウオォオオオオオオオオオオォォオオオッッ!」

 

 

気がつけば彼女もブランバイザーを構えて走り出していた。アホみたいなお願い、ただの我がままだろうそれは。

でも、彼女は自分にこのデッキを託してくれた。私たちが負ければこの世界の運命は破滅にいっきに近づくというのに。

 

 

「ウラァアアアッ!」

 

『チッ! 霧島美穂ではないな』

 

「あ? 美歩ちゃんは美歩ちゃんだよ!」

 

「み、美歩!? お前ッ!」

 

 

受け流すオーディンの足元を狙って蹴りを繰り出す。

しかしオーディンは一気に後ろへ飛ぶと、黄金の羽をファムに向けて発射した。

 

 

「うあああああああ!」

 

 

羽の爆発に巻き込まれてファムは龍騎の元へ吹きとんでいく。

龍騎はファムに駆け寄ると、その手を強く握り締めた

 

 

「お前! どうして!?」

 

「は……ハハッ! 決まってんだろ? 私たちいつも助け合ってきたじゃんよ。だからさ」

 

 

一人じゃないから。彼女はそういって軽く龍騎の肩を殴る。

 

 

「………」

 

「どうした? 黙ってさ、感動で泣いてんのか? それとも惚れたか?」

 

 

龍騎は頷くと、ファムと一緒にオーディンと対峙する。

勝つ、いや勝たなければならない。世界の為とか、誰かの為とか――

全ての為に、オーディンに勝たなければならない。

 

 

「「………!」」

 

 

だが、勝てない。力の差がありすぎる。無理、無理だろう。

無理なのだ。勝てない、勝てるわけが無い。

 

 

『愚かなライダー達よ、協力? 団結? 戦いを止める? 愚かな』

 

「何ッ!」

 

『綺麗事を振りかざすな。人は自らの欲望の為に戦う。それが本質、あるべき姿なのだ』

 

 

無能なライダーをオーディンは愚かと切り捨てた。

人は愚かだ、だから戦いの輪廻を生み出し、無意識に巻き込まれる。

誰もが願いの為に殺しあう世界、それが今と言う現実ではないか。

もちろんそれは龍騎達だって同じだ、人は生きていく中で無限に湧き出る願いを叶えるためだけに行動をする。

その中で何人もの人を無意識に、意図的に傷つけているのか。この戦いに正義など存在しない、あるのは純粋な願いだけだ。

 

 

『人は一人で戦うのが定め、貴様らのような願いを否定した無能が私に勝つ事など不可能!』

 

『アタックライド』『ブラスト!』

 

『!』

 

 

まるで彼の言葉を否定するように無数の弾丸が変則的な起動を描いて、オーディンに向かっていく。

素早く瞬間移動で後ろへ下がるが逃がさない! 一発が着弾し、間髪をいれず次々とオーディンに弾丸が直撃していく。

 

 

『目障りな!』

 

 

どれもたいしたダメージではない、しかしその一撃が龍騎達を奮い立たせる!

 

 

「――俺達は欲望や願いの為に人を傷つける。その時、人間は一人だろう」

 

 

だが、一歩一歩足音を立てながら近づいてくるそのライダーにオーディンは強い不快感を覚える。

 

 

「だが、俺達は大切なモノの為にも戦う。その時は俺達は弱くても、愚かでも、一人じゃない!」

 

『何だと?』

 

「それに、俺達は願いを否定している訳じゃない。みんなでお前を倒すって言うちゃんとした願いがある!」

 

 

歩いてきたライダーは龍騎とファムの前に立ち、オーディンの放つ金色の光と対峙する。

その何モノも恐れないごとし姿は、龍騎とファムに強い勇気を与える。さらに彼の待とう陽炎が、金色の光をまるで覆い隠すように壊していった。

もちろんそれは視覚できるものではないが、彼の登場でずっと心にあった重いプレッシャーが消えた気がする。

 

 

『貴様、何者だ』

 

「俺か? そうだな――……俺は」

 

 

そこで彼は一旦言葉を止める。

 

 

「真志、美歩。よく聞け」

 

「「!!」」

 

「この戦い、俺達に勝機はないだろう。勝率は限りなくゼロに近い」

 

 

いや、もしかするとゼロなのかもしれないな。ライダーは笑う。

 

 

「俺達はアイツに絶対勝てない」

 

『分かっているのなら早く私に殺さ――』

 

「だが【絶対】は【絶対】にありえないッッ!

 何故なら、俺は破壊者ディケイド! 今からこの世界の【絶対】を――ッッ!!」

 

 

ディケイド達三人は一気にオーディンに向かって走り出す

 

 

「破壊するッッ!! うおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

『やはり破壊者か。いいだろう。来い、ライダー達よ。その命貰い受ける!』

 

 

こうして、この世界の運命を決める戦いの幕が切って落とされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」『カメンライド』『ファイズ!』

 

 

ディケイド達はオーディンを囲むようにして立つ。

しかし瞬間移動を使うオーディンを囲んで攻撃する事は不可能だろう。

おまけに強力な羽という飛び道具がある以上変に作戦を練っても無意味なのだ。

だからこそディケイド達は最低限の作戦でオーディンに立ち向かうしかない。

 

 

「うらッ!」

 

『ハッ!』

 

 

避けられる。ああ、分かってる!

ディケイドは手に持っていたカードを素早くライドさせた。

 

 

『アタックライド・オートバジン!』

 

『っ?』

 

 

ディケイドのバイクであるマシンディケイダーに、ファイズの紋章が通過する。

その効果によってマシンディケイダーはオートバジンに変形すると飛行してきた。

バジンはガトリングでオーディンの周りを射撃する。無数の弾丸の雨はオーディンがどこへ移動移動しようとも降りかかる攻撃のシャワーとなり動きを封じるはずだ。

 

 

『目障りな!』『シュートベント』

 

 

バジンを照らす様に空から光が漏れる。

バジンはその光から逃れようとするが、光はバジンを追うように出現していき、捉えて絶対に逃がさない。

 

 

「ハァッ!」

 

 

しかしそれは囮だった。

龍騎とディケイドは、バジンに気をとられているオーディンに攻撃をしかける。

しかし、瞬時に後ろへ回られ逆に激しいラッシュを仕掛けられてしまった。いつの間に発動させていたのかソードベントのゴルトセイバーによる二刀流がディケイド達に襲い掛かる。

 

 

「ウオォオオッ!」

 

 

まだだ、そこを突く様に後ろからファムの連撃がオーディンへと襲い掛かる。

瞬間移動が間に合わなかったのか、オーディンに数発ファムの攻撃がヒットするのを確認。

だが甘かった、初めての手ごたえに一瞬気を緩めてしまったのだ。

 

 

『ムンっ!』

 

「くっ!」

 

 

オーディンは、その一瞬の隙にファムのブランバイザーを掴み、そのまま彼女ごと投げ飛ばす。

さらに空中に放り出されたファムに追撃の羽を発射した。だが羽はバジンが発射したガトリングにかき消される。

と、同時にオーディンが発動したシュートベントがバジンに命中しバジンはマシンディケイダーへと戻ってしまった。

 

 

『ソードベント』

 

『ソードベント』

 

 

龍騎とファムはそれぞれの剣を構えオーディンに向かう。

息もつかせぬ連続攻撃を仕掛けなければオーディンに勝つ事など不可能だろう

オーディンもまた2つの剣を構えて、二人と対峙する。

 

 

「ッ!」

 

『遅いなッ』

 

 

またも、一瞬で後ろへ回られた為に二人の反応が遅れる。

そこに振り下ろされるゴルトセイバー。

 

 

「美歩!」

 

「きゃ!」

 

 

瞬間的に龍騎はファムを突き飛ばし、オーディンの攻撃を受け止める。

度重なる瞬間移動。そのうちになんとなくだが、どこに現れるかの予想はついていたのだ。

その読みが当たったという事だろう。

 

 

「ぐぅうううッッ! あぁああああああ!!」

 

 

しかし読みが当たったからといって力の差がありすぎては意味のないもの。

二本のゴルトセイバーを受けきれるわけも無く、龍騎はドラグセイバーごと切り裂かれた。

装甲も大きく削られ、あと一撃でも受ければ完全に削がれてしまうだろう。

 

 

「っせるかぁあああああ!」『フォームライド』『ファイズ・アクセル!』

 

 

ディケイドは瞬時に『Start Up』を発動させ、猛スピードでオーディンの懐へ潜り込む!

流石のオーディンもコレには対処できない。ほぼ唯一といっていい攻撃チャンス、本当はとって置きたかった気もするが迷っている暇はないだろう。

 

 

「ウラァアアアアアアアアアアアアアア!!」『ファイナルアタックライド』『ファファファファイズ!』

 

 

 

 

超高速連撃、アクセルグランインパクトを叩き込む!

一発、また一発とオーディンの厚い装甲に拳を叩き込んでいくディケイド。

龍騎と同じ場所に想いと力を込めて殴りつけていく。

 

 

『グォオオオォォォオォオッ!』

 

「ハァアアアアッッ!」

 

 

ファムもまた連続突きでラッシュに参加する。

二人の連撃はオーディンに初めてまともなダメージを与えただろう。彼の声から余裕が消えたかもしれない。

 

 

「くっ! 終わりか!」

 

 

しかしディケイドにタイムリミットが訪れる。

 

 

「まだだッッ!」『ファイナルアタックライド――』

 

 

ディケイドは変身を解除して、元の姿に戻る。

そして発動させるのは自らの必殺技。五枚のホログラムカードが、オーディンを押し出していく。

 

 

「ヤァアアアアアアアアっっ!」『ディディディディケイド!!』

 

 

ライドブッカーを剣にしてカードを通過していく、巨大化する剣とカードに怯むオーディン。

決まる! いけると確信するが。

 

 

『スチールベント』

 

「なっ!」

 

 

ディケイドの手からライドブッカーが消滅する。

違う。消滅したのではなく奪われたのだ、オーディンに。

 

 

『フンッ!』

 

「ガァアアアアアッッ!」

 

 

奪われたライドブッカーで逆にカウンターを決められてしまう。

あまりの衝撃に吹き飛ぶディケイド。その隙にオーディンは黄金の旋風でファムを吹き飛ばし、自らも一枚のカードを投入した。

 

 

『アドベント』

 

 

上空からゴルトフェニックスが飛翔し、現れる。

そのままフェニックスはよろよろと立ち上がろうとした龍騎に体当たりを決め、さらに旋廻しもう一度体当たりを決めた。

装甲がまだ直っていない龍騎は、その攻撃に耐えられる自信がなかった。

みしみしと嫌な音をたてて鎧が剥がれ落ちる。

 

 

「くっそ!」『アクセルベント』

 

 

龍騎は自らのスピードを上げるカードを発動して、攻撃を回避する。そしてそのままオーディンに向った。

アクセルの加速とほぼ同等のスピード。これならばまたオーディンにダメージを与えられるのではないか? 淡い期待が過ぎる。

それに乗じてファムもまた立ち上がりオーディンに切りかかった。

 

 

『同じ攻撃が私に通じるとでも?』

 

「何ッ!」

 

「くっ!」

 

 

オーディンは双方の手で龍騎とファムの攻撃を受け止めた。

いくら加速していようと、手を捕まれてしまっては身動きが取れない。

そのまま何もできずに時間切れがやって来る。

 

 

「くそっ!」

 

「はっ、前ががら空きだぜ! 変身!」『カメンライド』『キバ!』

 

 

ディケイドはキバにフォームチェンジすると、オーディンに蹴りを仕掛ける!

 

 

『無駄だ』

 

「何っ! グアッッ!」

 

 

上空からゴルトフェニックスが飛翔し、ディケイドを弾き飛ばす。まだアドベントは終了していなかったのだ。

ゴルトフェニックスはそのままディケイドに二度三度と突進を仕掛け、また上空へ舞い上がっていった。

 

 

「ちっ!」

 

 

ファムは剣から手を離し、とび蹴りを仕掛ける。

しかしオーディンは素早く龍騎を盾にし、それを防いだ。

 

 

「いっつ!」

 

「あ! 悪い、真志!」

 

 

オーディンはそのまま瞬間移動でファムの隣に移動する。

黄金の羽を撒き散らせ、二人を吹き飛ばすとファムにゴルトバイザーで追撃を行った。

 

 

「くっ! アッッ!」

 

 

激しい攻撃にファムはなす術もない。

バイザーも弾かれ、暫く攻撃を受け続けてしまった。

もちろんそれを黙ってみているわけがない。龍騎はガードベントを構えファムの前に立つ。

 

 

『その粗末な盾で私の攻撃が防げるとでも?』

 

「へっ、やってみろよ!」

 

 

オーディンはその言葉には従わす、龍騎の足を払う。

足は盾では防げない、龍騎はそのまま地面に倒れてしまう。

オーディンは倒れる龍騎に何度も蹴りをいれ、サッカーボールの様に転がしていく!

 

 

「グッ! ガッ!」

 

「真志!」『フォームライド』『キバ・ガルル!』

 

 

狼の雄たけびと共にディケイドの姿が変わる。

一気にオーディンの所まで跳躍すると、獣のように激しい斬撃でオーディンと龍騎の距離を離していった。

 

 

『そこだ!』

 

「グッ!」

 

 

その激しい攻撃から一瞬の隙を見出しゴルトバイザーで突きを放つ。

ふらつくディケイドに蹴りと拳を瞬時に打ち込んでいく。何と言う判断力、何と言う反射神経。

これが最強のライダーの力か、ディケイドは画面の中の強さを身を持って味わう事になるとは思わなかったろう。

 

 

「ガッ……フッ!」

 

『フン』

 

 

よろけるディケイドの後ろに瞬間移動し、さらに蹴りとバイザーで殴りつけるオーディン。

傍から見れば遊んでいる様にも見えるその一方的な攻撃。

途中龍騎の攻撃が入るが、それを受け流し弾き飛ばすとまたディケイドを殴り続けた。

 

 

「ウッ! ウォオオォオォオオ!!」『ファイナルアタックライド』『キキキキバ!』

 

 

このままでは危険と判断したのか、ディケイドは必殺技を発動させる。

夜に変わる景色、そして上空に現れるのは巨大な月!

 

 

「ヤァアアアアァァアアッッ!」

 

 

ディケイドは上空に飛翔し、月と重なり合う!

そのままガルルセイバーを振り下ろしオーディンを切り裂く……筈なのだが、そうもいかないのが現実である。

 

 

『ガードベント』

 

「なっ!」

 

 

ゴルトシールドにガルルセイバーは弾かれ、そのままディケイドは空に放り出されてしまった。

そこへ襲い掛かる黄金の羽、ディケイドは爆発に飲まれ地面へ叩き付けられた。

 

 

『その程度か?』

 

 

オーディンはディケイドの首を掴み強引に持ち上げる。

そしてそのままゼロ距離で黄金の羽を発射し、ディケイドを爆発の嵐に巻き込む!

 

 

「グゥウアァァアァ……ッ!!」

 

「キュイィイイイイイ!!」『アドベント』

 

 

間一髪と言った所か、ブランウイングがオーディンを弾き、ディケイドを救出する事に成功する。

ダメージは受けてしまったが、あのままよりはずっといい。

 

 

「グォオォォオオオオオオォッッ!」『アドベント』

 

『………』

 

 

さらに龍騎の発動させたアドベントでドラグレッダーもオーディンに攻撃を仕掛けた。

流石に大型モンスター二体が相手になればオーディンもそちらに気をとられる。

しかしオーディンの実力ならばドラグレッダーを殺す事などたやすいだろう。

龍騎は早めに発動を終了させ、オーディンとの距離をあける。

 

 

『ブラストベント』

 

 

入れ替わりでゴルトフェニックスが現れ、その羽を羽ばたかせる。

すると通常の倍ほどもある羽が龍騎達に襲い掛かった!

 

 

「くっそぉおおぉぉおおお!」『ファイナルアタックライド』『キキキキバ!』

 

 

ドッガハンマーに変わっていたディケイドが龍騎達の前に出る。

闇の雷で錬成させた拳を振り回し、羽を散らしていく。その隙にオーディンはファムの隣に移動すると、ゴルトバイザーを突き出した。

それに突き刺さるファムだが、彼女は一瞬で白い羽に変わる。

 

 

『何ッ!?』

 

「やあああッ!」

 

 

ファムのガードベントの効果でオーディンの狙いがずれていたのだ。

その隙にファムはオーディンに渾身の突きを当てる。

だがこれも決定打にはならない。オーディンは直ぐにファムを蹴り飛ばすと、瞬間移動で距離をとった。

 

 

『……しかし』

 

 

オーディンは辺りを見回す。苦しそうに立ち上がる三人。

 

 

『諦めた方がいいのではないか?』

 

「うる……せぇ」『クリアーベント』

 

 

ファムの姿が消える。

しかし、オーディンには関係がない。

羽を散らせば勝手にダメージを受けるだろうと、黄金の旋風を巻き起こす。

 

 

『フォームライド』『アギト・ストーム!』

 

 

しかしアギトに変わったディケイドが起こす小規模の竜巻が、黄金の羽をまとめて収束させる。

これでファムを見つける事は出来ない筈だ。

 

 

『足音』

 

「は?」

 

『足音は消せなかったようだな。ククク!』

 

 

オーディンはゴルトバイザーを構えその場所に振りかざす。

直後小さい悲鳴が聞こえ、ファムの体がさらけ出された。

 

 

「化けモンかよ!」

 

 

龍騎とディケイド、ファムの三人はオーディンに攻撃を仕掛けるが誰一人まともに命中させる事すらできず、受け流され、受け止められ、カウンターを決められてしまった。

まさに圧倒的な力の差。フラフラになりながらも戦う彼らと、余裕の笑みすらもこぼれるオーディン。

最強、化け物、これが現実か――!

 

 

『リミッツベント』

 

「うおぉおおおおおおおおおお!!」

 

 

龍騎の体が赤く発光する、十秒だけ身体能力が跳ね上がるリミッツベント。

彼はそのままオーディンに殴りかかる。

 

 

『……クッ!』

 

 

拳を受け止めたオーディンから苦痛の声が漏れる。

もう一発殴ろうと龍騎は拳を振り上げた。赤い複眼が光を放ち、オーディンを一点に見つめる。

 

 

『フンッ!』

 

 

オーディンは黄金の羽を発生させるが、龍騎は怯まない!

龍騎の意地だ、ここで倒れる前に終わらせる!

 

 

『あまり……』

 

 

オーディンは龍騎の攻撃を防御しながら、そう呟く

 

 

『調子に乗るなよ』

 

「がはぁぁっ!」

 

 

瞬間移動は攻撃を受けていたら発動できない。

オーディンはその両手で、龍騎の拳を受け止めると、渾身の蹴りで龍騎を空中へ押し上げた。

 

 

「リミットでも……! 駄目なのかッ!!」

 

 

強い、強すぎる! 今まで戦った誰よりも! なによりも!!

よろける龍騎をオーディンは殴りつけ、蹴り飛ばす。そして笑った。

 

 

『ライダーは欲望に溺れ、そして死ぬ。それだけでいい』

 

「何……ッ!」『ストライクベント』

 

 

龍騎はドラグクローを構えてフラフラと前に出る。

どう考えてもそこから重い一撃が放たれるとは思えないが、倒れる訳にもいかないのだ。

 

 

『巨大な欲望のその先には大きな力がある。それに人は飲まれる』

 

 

愚かだが、それが人に与えられた役割だ。

オーディンは止めをさそうと、一歩前に出た。

 

 

『お前らは無力、そのまま惨めに死を迎えるがいい』

 

「っ! 違う!」

 

『ククク!』

 

 

オーディンが消える。

奇襲、もう龍騎達にオーディンの攻撃を受けきれる体力と精神力は残っていないも同然だった。

この奇襲を許せば負ける――ッ!

 

 

「………ッ」

 

 

龍騎は大きく深呼吸をする。

どこだ? どこから来る? これは賭け、もう自分の勘を信じる他ない。

龍騎はドラグクローに全ての力を込める。真司から受け継いだこの力、生きる願いを、彼の想い――ッ!

 

 

「―――ッッァアアアアアアアアアア!!」

 

 

龍騎はその方向を思い切り殴った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………何ぃぃッ!』

 

「どうやら、当たり……みたいだなッ!」

 

 

龍騎の一撃をオーディンの装甲が受け止めていた。

真正面ど真ん中、龍騎の読みは的中していたのだ

 

 

『しかし――』

 

 

悲しいかな。

 

 

『力が足りん』

 

 

ゴルトバイザーが龍騎の腹部にめり込む。

 

 

「「真志!!」」

 

 

ディケイドとファムが苦しそうに龍騎のところへ向う。

 

 

「ぐぅぅううッ!」

 

 

膝をつく、龍騎。オーディンはまだ余裕の笑みを浮かべている。

 

 

『終わりだ』

 

 

これで終了。

オーディンはゴルトバイザーを天高く振り上げた。

これを振り下ろせば龍騎の装甲を破壊できるだろう。オーディンはそれを思い切り――

 

 

『………』

 

「………」

 

 

振り――……!

 

 

『――……ッッ!!』

 

「………ッ」

 

 

下ろす事が出来なかった。

ゴルトバイザーは力を失ったオーディンの手から滑り落ち、音をたてて地面に落ちる。

オーディンは自分の胸を苦しそうに押さえながら、訳が分からないと言わんばかりに龍騎と自分の胸を交互に見やる。

 

 

『オッ…お前! 何を…! 何をした!』

 

 

龍騎は呼吸を荒げ、苦しそうに立ち上がった。

そしてオーディンを指差し、大声をあげる!

 

 

「オレが何かをしたんじゃない!」

 

『何ッ!?』

 

 

ビシッ! っと何かにヒビが入る音が聞こえた。

そう、オーディンの装甲だ! 黄金の鎧に一筋のヒビが入っていた

 

 

『馬鹿な! お前の一撃にそんな威力が――ッ!?』

 

 

いや、違う! いくらなんでもそれはない!

サバイブ体である筈のオーディンがこんな何も強化されていない雑魚に装甲を砕かれる訳がない!

それこそ自らと同じであるサバイブ体の――

 

 

『お前を一発殴りたかった!』

 

 

!!

 

 

『まさかッッ! あの時の!!』

 

 

あの時の龍騎――

城戸真司の一撃なのか!!

 

 

「「「!!」」」

 

 

あの時の、龍騎の一撃なのかっ!? いや違う!

 

 

「それだけじゃねぇ!」

 

『何ぃぃいっっ!』

 

「ナイト! 蓮さんの一撃!」

 

『グッッ!』

 

 

ビシッ! っと、また一筋、黄金の鎧に亀裂が入る!

あの時、ナイトサバイブの必殺技をまともに受けていた事を思い出す。

まさか回復が追いつかないほどのダメージを受けていたの言うのか!?

 

 

「インペラー! 佐野さんの一撃!」

 

『ガァァッ!!』

 

 

また一筋! 亀裂! あの弱々しい一撃ですらッ!?

 

 

「一つ一つのダメージは小さいさ。けどなッ! お前の体に確かに蓄積されてたんだよ!!」

 

『先程の一撃でッ! 私の鎧が限界を迎えたとでも言うのかッッ!』

 

 

クモの巣のように亀裂が広がっていく!

回復が間に合っていなかった? 小さな亀裂は攻撃を受けて広がっていったとでも言うのか!?

 

 

「ファム! 美穂さんの一撃ッッ!」

 

『馬鹿なッ! そんな事が――ッ!』

 

 

あの突き、避ける意味すらないと慢心していたのかッッ!?

そして――ッッ!

 

 

「オレ達の一撃だぁああああああッ!」

 

『ガァアアアアアアアァアァアアァアアァ!!』

 

 

ドラグクローから炎の弾丸が放たれる!

それをスイッチに無数のヒビが入ったその鎧は遂に限界を向かえ、粉々に砕け散る!

あまりの衝撃に思わず倒れるオーディン!

 

 

『グゥウウゥ! そんな事がぁぁああ!』

 

 

直ぐに体制を立て直そうと、よろける体を直ぐに起こす。

だが、その眼に飛びこんできたものは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ」

 

 

病院。真司の手を握りながら美穂はため息をついた。

後悔しているのか? 蓮のその言葉に美穂は小さく頷く。やはり、美歩を行かせた事は間違いなんだろうか?

自分がファムとして、いや願いを叶える為戦うライダーとしてオーディンに挑まず、あろう事か自分の後輩になるかもしれない少女に任せるなんて……

 

佐野が空気を読んでフォローの言葉を言ってくれるが、どうしてもそれが引っ掛かってしまう。

正直、自分としても真司と離れたくなかった。

死にたくなかった――

 

 

「お願い…ッ!」

 

 

だから彼女は普段絶対にしないであろう、神に祈りをささげると言う行動をとる。

神様、お願いです。どうか、彼女達を死なせないで。生きて帰ってきて…と

 

 

「お願いだから死なないでくれよ……」

 

「………」

 

 

美穂の目から涙がこぼれる。

しかし、同時に感じたのは手を強く握られたと言う事だった。

 

 

「え…?」

 

 

美穂は驚きに満ちた目で自分の手を見る。強く握られている手と手…

 

 

「大……丈っ夫!」

 

「!!」

 

「しん…じ…っ!」

 

「真司!」

 

「センパイ!」

 

 

三人の驚く視線を受けながらも、城戸真司は目を覚まし、その体を起こす

 

 

「大丈夫…ッ! 真志君たちなら…きっと!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォオオオオォオオォオォォオオオ!!」『ファイナルベント』

 

 

龍の咆哮に龍騎の咆哮が重なり合う。

 

 

「ハァァアアアアア――……ッッッ!!」

 

 

龍騎は舞う様に手を旋回させていく。

それに呼応するかのごとく、ドラグレッダーは龍騎の周りを飛び回った。

そして龍騎と共に上空へ舞い上がり、最後に炎を纏ったとび蹴りが放たれる!

 

 

「ダァァアアアアアアアアアアッッ!!」

 

『ウォオオオッ!』

 

 

ドラゴンライダーキック。

オーディンが意識が鮮明になると同時に目の前には龍騎の蹴りが迫っていた。

オーディンは瞬間的に直撃を避けるため、両手でその蹴りを受け止める!!

 

 

『グォオォオオッ!!』

 

 

鎧が砕かれた事で少し力が落ちているのか、オーディンの手に力が入る。

全力を込めなければ押し負ける!!

 

 

「ウワアアアアァアアアアアアアア!」

 

「変身!」『カメンライド・クウガ!』『フォームライド・タイタン!』『ファイナルアタックライド・ククククウガ!』

 

 

ファムのバイザーとディケイドの剣がオーディンに迫る、もはや回避は不可能!

だが、オーディンは考える。いくら装甲が剥がれたとはいえ向こうとてボロボロの状態、まだコチラの方が有利ではないか?

耐えられる! そして耐えた後全力で潰せばいい!

 

 

「「ヤァアアアアアアアアアアッッ!!」」

 

 

二人の突きがオーディンに――

 

 

『っっ! しまった!』

 

 

いや、違う! 二人はオーディンを狙っていない!

 

 

「へっ! 今頃気づいても遅い!」

 

「例えどんなに装甲を厚くしても……ッッ!」

 

 

ここだけは私たちと同じ!!

 

 

『馬鹿な! 馬鹿なぁあああッッ!!』

 

 

二人が狙ったのはオーディンのカードデッキだった。

それに気づくが、今両手を離しては――!

 

 

「終わりだァアアアアアアッッ!」

 

『ッ!』

 

 

静寂が辺りを包む。

そこにいるのは地面に膝をついている龍騎達と、直立しているオーディンだった。

オーディンの足元にはバラバラに砕け散ったカードデッキとカードが散乱している。

そしてその体は粒子化が始まっており、それは彼が敗北したという何よりの証拠だった。

 

 

「勝った……のか」

 

「ああ…」

 

「や…やった!」

 

 

喜びにくれる三人。

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

『フ……フフフ!』

 

「!」

 

『フハハハハハ!!』

 

 

オーディンは笑い、地面に散らばった一枚のカードを拾い上げた。

 

 

『タイムベント』

 

「ッッ!! まずい、美穂! コンファインベントを使え!」

 

「え! あ、うん!」『コンファインベント』

 

 

オーディンのセットしたカードが白い羽に変わる。

しかし――

 

 

『リコールベント』『タイムベント』

 

「!」

 

 

オーディンが発動したカードの効果で再びそのカードが発動される。

 

 

『なかなか焦ったぞ、ライダー達よ』

 

 

オーディンの粒子化がピタリと止んだ。

それだけではない、デッキが破壊されているにも関わらず変身さえ解かれ無いオーディン。

そもそもデッキが破壊された時点で契約は破棄されるのではないのか!?

 

 

「なっ! 何で!」

 

『私は神崎士郎によって生み出された特別な存在だ。契約の破棄はない』

 

 

オーディンはタイムベントで自分の粒子化を遅らせたのだ。時を戻す必要はない。

 

 

『貴様らを殺せば…全てが終わる』

 

 

オーディンは最後のカードをバイザーにセットした

 

 

『ファイナルベント』

 

「くっ!」

 

 

身構える三人の前にゴルトフェニックスが出現する。

どちらにせよ、これが最終ラインである事には変わりない。

 

 

『私の、勝ちだな』

 

「くっそぉ……!」

 

「あき…らめてたまるかぁぁあ!!」『アタックライド・イリュージョン』『ファイナルアタックライド』『ディディディディケイド!』

 

 

ディケイドの両隣に分身が現れ、三人のディケイドはそれぞれライドブッカーガンをオーディンに向ける!

 

 

「早く! オーディンを倒せば!」『ファイナルベント!』

 

 

ブランウィングの羽ばたきでファム自らが加速しオーディンに向う。

エターナルカオスが発動する前に早くオーディンを倒さなければ――!

 

 

「「「間に合ええええええええええッッ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして光がはれる。倒れるファム、龍騎、ディケイド。

立っていたのは――

 

 

『………』

 

 

オーディンは確かに立っていた、しかもほぼ無傷でだ。

 

 

『―――……ッ』

 

 

しかし、何かおかしい。オーディンは思う。

衝撃がなかったのだ、あれだけ意気込んでいたファムたちの攻撃を全く感じなかった。

装甲が削られているのに全くダメージを受けなかったのはおかしな話だ。

 

 

「―――う」

 

『?』

 

 

ファムが何かを呟いた。

オーディンは聞き取れなかったため、耳をすませる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アタシらの勝ちだよ、クソ野郎……ッッ!」

 

『!』

 

 

そこで、気づく。そして見る!

自分の体から黄金が消えいく、金色の光が潰えるのを!

 

 

『まさかっ!』

 

 

振り返るオーディンの目に飛び込んできたのは、ファムのブランバイザーが頭部に突き刺さっている契約モンスター・ゴルトフェニックスの姿だった!

 

 

『貴様ら!』

 

 

そう、ファムたちはオーディンを狙ってなどいなかった。

最初から契約モンスターであるゴルトフェニックスのみを狙っていたと言う事だった。

 

 

「賭けだったけど、うまくいったみたいだな」

 

 

ディケイドはそう言って立ち上がる。

全力をかけた一撃はゴルトフェニックスを粉砕したのだ、そして訪れるのはオーディンのブランク化。

いくら絶大な力があろうともそれは契約モンスターありきでの事。契約モンスターを失ったオーディンの姿は粗末なモノへと変わっていく。

 

 

『おのれぇぇッ!』

 

「美歩!」

 

「はいよ」『フリーズベント』

 

 

ファムはゴルトフェニックスからバイザーを引き抜き、一枚のカードを発動させる。

それはモンスターの時を止めるフリーズベントのカード。

オーディンの契約モンスターは不死鳥、つまり一度殺しても灰になり直ぐに生まれ変わる。

そうすれば再び契約を結ばれてしまうだろう、だからこそココで時を止めて置く。

 

 

『馬鹿な! そんな! 私が…ッッ!』

 

 

負ける!?

 

 

「真志ぃッ! 決めるぞ!」『ファイナルフォームライド』

 

「ああ!」『リュリュリュリュウキ!』

 

 

龍騎の姿がドラグレッダーに似た龍へ姿を変える。

違う点があるとすれば顔が鉄火面に覆われているところだろうか。

龍騎をそのままドラゴンにした様な風貌だ。

 

 

「名前は……どうすっかな」

 

「ドラゴンしんちゃんとかは?」

 

「龍騎レッダーでいいか」

 

「きけよッ!」

 

 

ファムを軽くスルーして龍騎レッダーとディケイドは、ドラゴンライダーキックと同じ構えをとる。

 

 

『『ファイナルアタックライド――』』

 

 

重なる音声、飛び上がる二人

 

 

『馬鹿な! 馬鹿なぁぁああ!!』

 

 

ブランク体になったオーディンにもはや回避の術はない。

もう彼にはいつもの様な高貴なる余裕は欠片とてない。負けるかもしれないという事実を必死に否定するが、その時は確実にやってくる。

 

 

『リュリュリュリュウキ!』『ディディディディケイド!』

 

『「ヤァアアアアアアアアアアアッッ!」』

 

『グァアアアアアアアアアア!!』

 

 

炎を纏ったディメンションキック、ディケイドドラグーンがオーディンに炸裂する!

一応防御の構えを取ったオーディンであったが、その防御をいとも簡単に貫いたのが二人の必殺技だ。

 

 

『ゆ――…い…ッ!』

 

「……っ」

 

 

彼が戦う理由の言葉を呟き、オーディンは爆発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼ら激闘を繰り広げている頃、アギトはある場所に来ていた。

 

 

「………」

 

 

夏美が駆け回って情報を集めた結果、興味深い情報を見つけたのだ。

それは榊原耕一という男が残したとされるメモ書きだった。

そこには鏡の心臓と書かれた一文と、この街の地図に赤い丸が打ってあったモノ。

鏡の心臓、それはつまり――

 

 

「間違いないね……」

 

 

アギトはその赤い丸がうってあった場所にやって来る。

彼が仮面ライダーとして覚醒したからなのかは分からないが、明らかに異質な場所の様に感じたのだ。

うまく言葉には表せなかったが、たしかに何か不思議な感じがする場所だった。

 

 

「……ッ」

 

 

おそらくこの先にあるのだろう、心臓であり破壊すべきコアミラーが。

 

 

「よし!」

 

 

アギトはトワイライトフォームに変わる、このフォームでしかミラーワールドに入る事はできないからだ。

彼は深呼吸をしてミラーワールドに突入した。皆が今頑張っている。自分も彼らの力になれるようにせねば。

できれば一緒に戦いたかったが、トワイライトのステータスは限りなく低い。

これでは足手まといになってしまう可能性が高かった。だから翼はいざと言う時に強制的に戦いを終わらせる手段としてコアミラーの破壊を引き受けたのだった。

 

 

「………」

 

 

一見は普通の地下駐車場と言った場所だ。

しかし、異質な空気はますます濃くなるばかり。

さすがのアギトも緊張感を隠しきれない、少し足が震える。

自分の足音だけが響くその空間。しかし、アギトは見つける。それを!

 

 

「!」

 

 

巨大な鏡、まさにそれは心臓と言うに相応しいモノだろう。

圧倒的なオーラにアギトは思わず足を止める。

だが、それと同時に背中に強い痛みと衝撃を感じた!

 

 

「グゥぅッ!」

 

『ギギッ! ギギギ!』

 

『ギギギギギッ! ギギ!』

 

 

アギトの背後に現れていたのは二体のクモ型モンスター、ソロスパイダー。

そしてもう一体アギトに攻撃を仕掛けてきたのはジョロウグモ型モンスターのレスパイダー。

アギトは、レスパイダーの鋭いカギ爪を紙一重で交わすと転がるように三体との距離を空けた。

 

まずい、アギトのトワイライトフォームは戦闘向きではないのだ。

司から聞いていた為、ガーディアンがいる事は知っていたがなんとか切り抜けなければ。

 

 

「くそっ!」

 

 

コアミラーさえ破壊すれば良いのだが、なによりこの三体の強さは異常だった。

トワイライトアローは全て弾かれ、軽快な動きで辺りを跳躍し攻撃を仕掛けてくる。

一つの攻撃が終わればもう一体の攻撃が襲い掛かる、そんな激しい攻撃の渦にアギトは捕らえられていた。

なんとか回避しつづけるものの、いつまでも続く訳がない。

 

 

「ぐっ!!」

 

 

アギトの体から火花が散る。

よろけるアギトにもう二体の激しい攻撃が襲い掛かった。

 

 

「グッ!」

 

 

なんとかソレを回避するアギト。

しかしレスパイダーは自分の爪を地面に突き刺し、まるでコマの様に回転蹴りをアギトに浴びせる。

 

 

「ッ!」

 

 

トリッキーな動きにアギトは翻弄され同時に押されていく、さすがに三体一は無謀すぎるといってもいい。

一体に攻撃をしかけても、もう一体がすぐに助けにはいってくる。いや、二体ならまだいけたかも知れない。

だが、三体のスパイダーはアギトに反撃の隙を与える事無く何度も引き裂こうと襲ってきた。

 

 

「くそ!」

 

『ギギギッ!』

 

『ギギギギ!ギギギ!』

 

 

ソロスパイダーはアギトに掴みかかると、アギトの体をレスパイダーの方へ向ける。

レスパイダーはそれに感謝するかの様な仕草を見せると、なんどもその爪でアギトの鎧を切り裂いていった!

 

 

「ぐぁぁぁああぁあああぁ!」

 

 

苦痛にうめくアギトに気をくれず、スパイダーは狂ったように切り続けた。

だが、少しだけ時間がたつと、あきたと言わんばかりに玩具のようにアギトを蹴飛ばす。

直ぐに体勢を立て直すと、アギトは少しだけその場に立ち止まった。

 

 

(考えろ! 今のままじゃ勝てない……ッ!)

 

「!」

 

 

アギトは何かを決めたかのように頷くと、もう一度スパイダー達に向かって走り出す。

だが、彼の右ストレートもレスパイダーに受け流され、カウンターとして体を切りつけられた。

 

だが、アギトは諦めない。

蹴りでレスパイダーとの距離を離すと、横から来たソロスパイダー達に応戦した。

数発殴りつけ、数度切られる。その応戦が暫く続いた時、レスパイダーの強力な一撃がアギトに決まった。

 

 

「うわぁぁあああ!」

 

 

アギトはそのまま吹き飛び、車のサイドミラーを経由して現実世界に弾き出されてしまう。

 

 

『ギギギッ!』

 

『ギギギギギ!』

 

『ギィィィ!!』

 

 

二体のソロスパイダーとレスパイダーはアギトに止めを刺すべく、自分達もミラーワールドから現実世界へと移動する。

だが、それが間違いだった――

 

 

「ハァァアアアアっっ!」

 

『!』

 

 

アギトの色が変わる、グランドフォームへと!

そう、ここはミラーワールドではない。つまりトワイライトで戦わなくてもいいのだ。

 

 

『ギギギッ!』

 

『ギギッ!ギギギギ!』

 

 

その意味が分かっていないソロスパイダー達は、爪を構えて走り出す。

彼らはまだアギトの力がトワイライトの時と同じと思っているのだ。

だがそれもまた間違い。

 

 

「ハッ!」

 

『ギギッッ!?』

 

 

突進してきたソロスパイダーを受け流すと、裏拳と回し蹴りでカウンターを決める。

何かの間違いではないか? そうスパイダー達は思い、もう一度同じように切りかかった。

だが、またもアギトは攻撃をかわす。それだけでなくスパイダーの爪が振り下ろされる前にストレートで怯ませ、上段蹴りでスパイダーを大きく吹き飛ばした。

 

 

『ギィィィィイイ!』

 

 

レスパイダーもその危険性を感知し、加勢する。

しかし、レスパイダーの爪はアギトに触れる事すらなかった。

 

 

『!!』

 

「フッ! たぁあああッッ!!」

 

『ギィイイ!!』

 

 

アギトの片腕の装甲が青く変わり、その手にはハルバードが握られていた。

彼を中心に暴風が巻き起こりレスパイダーの攻撃を遮断する。吹き飛ぶレスパイダー、アギトはさらに自らのベルトに手をかざした。

 

 

「はぁあああッ!」

 

 

そこから現れたのは紅き刀『フレイムセイバー』セイバーは鞘に収まっていたが、鞘が光輝きその形状を変化させた。

鞘はクロスホーンの様な形に変わると、セイバーに装填される。本来のフレイムセイバーの形に変わったのだ。

 

それに反応してアギトのもう片方の腕の装甲が赤く染まった。

一方の手にはストームハルバード、もう一方の手にはフレイムセイバー。

クロスホーンが展開し、アギトの周りに光の衝撃波が発生する。スパイダー達はそれに触れると、さらに大きく吹き飛んだ。

 

 

「悪いけど……負けられないんだッ!」

 

 

アギト、トリニティフォーム。

そのオーラにスパイダー達は怯むが、それを振り切るかのように走り出した!

 

 

「はぁぁッッ!!」

 

『ギッ!』

 

『ギギッ!』

 

 

しかしアギトの圧倒的な連撃にねじ伏せられる!

うなる様にハルバードとセイバーがスパイダー達を切り裂いていく!

風と炎の演舞は、美しくも強大。

 

 

「ハアァァァァ――……ッ」

 

 

アギトの足元に紋章が現れ、アギトは構えをとる。

スパイダー達が何かくると思った時にはもう手遅れで――!

 

 

「タァアアアアアアっ!」

 

 

アギトはハルバードとセイバーを、投げた。

二本の武器は風を切り裂いてそれぞれソロスパイダーの眉間に突き刺さるッ!

 

 

『ギギギギイイイイィィイイイィ!』

 

『グギギイイィイイギイギイギィ!』

 

 

二体のスパイダーの頭上に天使の輪を連想させるモノが浮かび上がり、そして二体は爆発した。

 

 

『!』

 

 

いや、それだけではない。爆炎の中からアギトのドロップキックがレスパイダーに向けて放たれる!

ライダーシュート。

爆炎で隠れていたためにレスパイダーは防御が間に合わず、直撃を許してしまった。

 

 

『ギィイイイイイイッ!』

 

 

爆発、アギトは勝利の余韻に浸る間もなく再びミラーワールドへと向った

 

 

「あれを…っ! 壊せば!」

 

 

マシントルネイダーを走らせ、コアミラーに向う!

だが、頭上から大型モンスターディスパイダーが現れ糸を絡ませてきた。どうやら何がなんでもコアには近づかせたくないらしい。

その強靭なワイヤーの様な糸は、一度絡みついたら獲物を絶命させるまで離さないだろう。

 

 

「悪いけど!」

 

 

しかし、それを橙の光が吹き飛ばす。

トワイライトの特殊能力、拘束解除。アギトはマシントルネイダーのアクセルを最大にしてディスパイダーを振り切った!

 

 

「これで決めさせてもらうよ!」

 

 

そして、そのままコアミラーへと――

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、真志。私は美穂さんとの約束があるから」

 

「ああ、じゃあ後でな」

 

 

美歩はそう言って、司達に背を向ける。

約束だったのだ、もし戦いに勝てば――

 

 

 

 

 

 

 

それは少し前になる。

 

 

「え!そんな!別にいいですって!」

 

 

デッキを受け取った美歩はその条件を受け入れまいと、必死に首を振った。

しかし美穂はその条件を変えようとはしなかった

 

 

「もし、オーディンに勝ったら私のデッキを破壊してほしい」

 

「で、でもぉ!」

 

「それで……この学校で美穂ちゃんがブランウィングと契約してほしいんだ」

 

 

この学校はこの世界の干渉を受けない。

つまりコアミラーによるモンスター消滅を防げる。

 

 

「この子は、助けてあげたいから」

 

 

美穂はブランウィングのカードを寂しそうな眼で見つめる。

 

 

「私――」

 

「え?」

 

「私はお姉ちゃんを生き返らせる為にずっと戦ってきた。それが私の願いだし、ずっとそれでいいと思ってたんだ」

 

 

だけど、美穂はうつむく

 

 

「真司が……あいつが刺された時、私本当に怖かったんだよ。それで、悲しかった――」

 

 

もし、真司があのまま死んでたら――

 

 

「私はお姉ちゃんと真司、どっちを生き返らせたいと願うの?」

 

 

美穂の目から一筋、涙がこぼれた。

もう、分からないのかもしれない。彼女は自分の願いが――

 

 

「だから、いいんだ。もし美歩ちゃん達が勝ったら――」

 

 

貴女の願いを叶えて。

 

 

「だって私は……もう、ライダーじゃないから」

 

 

ライダーとして霧島美穂は、もう死んでしまったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。

 

 

「真司さんが目覚めた!」

 

「!!」

 

 

その言葉に三人の目が輝く。

 

 

「良かった…美穂さん……!」

 

 

美歩は嬉しそうに、でもどこか悲しそうに走り出した。

それから数分もしない内に電話で再契約の知らせがきたのだった

 

 

『見事だ』

 

「「!」」

 

 

驚く二人、それはそうだろう。

いきなり光が現れて、しかも言葉を発したのだから

 

 

「おっ、お前は!?」

 

『ライダーバトルの勝利者に与えられる願いを叶える。そのナビゲーターと思ってくれればいい』

 

「……は、はぁ」

 

 

何故だ? この声、どこかで?

 

 

『仮面ライダー龍騎。貴様が最後のライダーにしてこのライダーバトルの勝利者。さあ、願いを言え』

 

「え!? あ、ああ……」

 

「まさか、本当に願いが叶うなんて……う、嘘じゃないのかよ!」

 

 

やはりそう言う世界もあったって事か? 司は首を傾げる。

しかしあまりにも唐突な気もする。若干光の声や話し方にも違和感があるし、何よりも都合がいいと言うか――

 

 

「ね、願い…どうする?」

 

「俺が決めて良いのか? いや、違うよな。お前が決めた方がいい、勝利者はお前なんだ」

 

「………」

 

 

真志は少し考えた後、口を開いた。

 

 

「願い事の限度を無限にしてくれ」

 

「ブッ!!」

 

 

盲点だった、司は思う。

まさかこんな願いをするヤツがいるなんて――

ただまあ誰もが一度はこんな妄想をした事があるのではないだろうか? 尤もフィクションでそれをしたらとんでももいい所だからタブーとされているんだろうが。

 

 

『ならん』

 

「えー……なんだよ」

 

 

ま、そりゃそうだ。司は一瞬期待を持ってしまった事を悔やむ。

ただそれならなんでも叶えるってのはおかしいんじゃないかと思うが。

 

 

『だが、発想は評価しよう。よって限度を5にしようではないか』

 

「「おお!?」」

 

 

言ってみるもんだな。司と真志は互いにそう思う。

しかしこんな要求をのんでくるなんてますます怪しいと言うか胡散臭いというか。

とはいえ、不安要素が山のようにあるが逆に疑う事も虚しい様に思える。言ってみるだけならいいだろう。

 

 

「よし、決めた――ッ!」

 

『………』

 

「オレ達の世界を救ってくれ!」

 

 

この願いが通ればもうこの旅は終わる、そしてまた日常に戻れるのだ。

おおとうなる司、これは期待できるか――!?

 

 

『残念だが、それもできない』

 

「なっ、なんで!?」

 

『できないからだ』

 

「なんだよそれ!」

 

 

それから何度言っても無駄だった、二人は納得いかないようだが諦める事にする。

だが二人は気づいていなかったのだ。世界を救う? 世界はまだ滅んでいないのに。

司が見た光景は未来のモノなのだ、決して今ではない。それを二人は気づけなかった、だからおかしな言葉になり矛盾を生んでしまったのだ。

 

 

「でも5つある。まずは何より―――」

 

 

真志は少しだけ戸惑った後、最初の願いを言う。

 

 

『分かった。受理しよう』

 

「よし。それから――」

 

 

また一つ、願いが受け入れられる。

 

 

「それから―――と―――」

 

 

計四つの願いが受け入れられる。

 

 

「あとは……」

 

 

絶大な力でも貰おうか? いや、扱いきれる自信が無い。じゃあお金とか? ううん……

 

 

「―――!」

 

 

そしてふと、思いついてしまった。

 

 

「――ッッッ!!」

 

 

いや、これは――ッッ!

 

 

「ぁ……ぇと………その…」

 

「?」

 

 

どうしよう、もうそれしか思いつかない。

いや、これ以外を選択したらきっと――

 

 

「ッッ!!」

 

 

呼吸が荒くなる。どうしよう、どうしたらいい? いや、これは……

自分の心にふと浮かんだその願い。

 

それは――

 

だめだ、いいのか、悪いのか分からない。

それをしてはいけない? いや何故? してもいい? どうして?

込み上げてきたその願いは一体正しいのか正しくないのか、それすらでもないのか分からない! 分からなくなる!

 

 

「ッ! おい真志!」

 

「え?」

 

 

ミラーワールドの空間がゆがみ始める。どう言う事なのか?

 

 

『どうやら、誰かがコアミラーを破壊してくれたようだな』

 

「先生だ! やったんだ!」

 

『ならば、早くしろ。もう時間がない、ここが消えれば願いを叶えられなくなるぞ』

 

「!」

 

 

マジかよ……ッッ!!

 

 

「真志! 早く! 何してんだよ!」

 

「ッッ! ッ!!!」

 

 

くそっ! 駄目だ! もう限界だ!

これを言っちゃいけないような気がする! だけど駄目だ! オレはもうっ!

 

 

「う、うおぉぉおおおおおッ!! 最後の願いは――ッッッ!」

 

 

真志はその願いを口にする。

 

 

「うっ! お、お前ッ!」

 

 

司もその願いには眼を見開いた、真志はもう後悔などしていない。

その願いを切に叶えたいと願ったのだ。

 

 

『分かった。その5つの願い、叶えよう』

 

 

その言葉を最後に、ミラーワールドとモンスターは消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優衣…優衣ぃ!」

 

 

神埼士郎は泣いていた。

たった一人の妹だった、守りたかった。ずっと一緒に居たかった。

だけど――所詮、叶わぬ願いだったのか。

 

 

「優衣……」

 

 

眠るように息を引き取った妹を見て、もう一度彼は大声で泣いた。

全てを賭けた勝負も結局負けてしまった。

もうタイムベントのカードはない。あの時なぜ時を巻き戻さなかったのだろうか――

果てしない後悔が彼を苛む。

 

 

「優衣ぃぃいいいッッ!」

 

 

いつか、きっと笑い合えると信じていたのに。

運命は残酷だ。

 

 

「……どうしたの…お兄ちゃん」

 

「!」

 

 

そう、だが時に運命は思わぬ幸福をもたらしてくれる

彼は……いや、『彼ら』はきっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このアホ! 馬鹿! 間抜け真司ぃいい!」

 

「わわわ! 何すんだよ!」

 

「じんばいじだんだからなぁぁぁぁーっ!」

 

 

涙で顔をふやけさせている美穂を見てちょっと笑ってしまう。

 

 

「城戸、お前の生命力はゴキブリ並だな。見直したぞ」

 

「いやぁーさすがセンパイ!おつよいですねぇ!」

 

「……なんか、全然嬉しくないんだけど」

 

 

その言葉に二人は笑う。望みどおりの言葉が返ってきて満足そうだった。

 

 

「冗談だ、城戸。よく帰ってきたな」

 

「本当ですよ、本当どうなることかと…」

 

 

喜びにくれる真司達。そこに携帯の着信音が鳴り響く

 

 

「美穂、お前のだろ!」

 

「う…誰から……――っ!」

 

「ど、どうした?」

 

 

美穂は急いでその電話にでる。期待と疑問が混ざった表情だ。

 

 

「ハイ。はい!? ………え?」

 

 

その時、美穂の目から涙があふれて来る。

でも美穂は何故か少し笑っていた、真司達は不思議に思う。

美穂は電話の向こうの相手には伝わる訳もない、お辞儀を繰り返していた。

 

 

「…はい……はい! はいっ!」

 

 

電話を切った美穂は真司の胸に顔を埋める。

 

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「真志くん達だ――」

 

「へ?」

 

 

美穂は真司を強く抱きしめて呟いた。

震える声、だけどそれは悲しみじゃなくて――

 

 

「お姉ちゃんがね…」

 

 

喜びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いててて……っ」

 

 

翼は体中の痛みを覚えながら廊下を歩いていた。

トリニティの負担は想像以上で、もう筋肉痛が酷いのなんの。

鍛えないと、翼は思う。でも今ははやく座りたいものだ、そう思いながらため息をつく。

 

 

「――――ぃぃ」

 

「ん?」

 

 

何か聞こえ―――

 

 

「「せんせぇえええええええええええええええええええええええ!!」」

 

「ぎゃあああああああああああああああ!!!」

 

 

後ろから夏美とハナのタックルが炸裂する!

こちらの事情などおかまいなしの猛烈タックルだ。

 

 

「い…き…が……とまっ!」

 

「「早く! 翼先生! 早くッ!」」

 

「し! し! 死ぬ! イデデデデ!」

 

 

二人は翼の言い分を聞く事もなく彼を引きずっていく。翼の悲鳴が高い。

痛みで訳が分からなくなる翼だったが、すぐに気づく。二人が泣いている事に。

 

 

「!? ど、どうしたんだい?」

 

「ぜんぜいぃ! ずごいんでずううう!」

 

 

呂律が回っていない夏美達が気になったが、

彼女達は答える事なくどんどん翼を引きずって、その場所にやってきた。

 

 

「ほ、保健室かい?」

 

 

ここがどうかしたのか?

そう翼は二人に尋ねたが、二人はもう泣き崩れていてとても会話できる様子ではなかった。

翼はそれを不思議に思いながらも、とりあえず保健室のドアを開ける。

 

 

「うぉ!?」

 

 

そこには同じく泣きじゃくっている生徒がいた。

その異様過ぎる光景に驚きながらも、翼は前に進む。そこにいたのは――

 

 

「ははっ、ユウスケ。お前何やって………」

 

 

そこにはユウスケがいた。

また何かやったんだろうと翼は苦笑する。しかし、すぐに気づいた。

ユウスケは泣いている。そしてそこには薫もいて、これまた皆と同じ様に泣いていた。

でも薫は誰かにしがみついて泣いていたのだ。

 

 

「え?」

 

 

誰に? 薫は誰にしがみついて――

 

 

「嘘……だろ?」

 

 

また? またなのか!? いや、でもここは……もうあの世界じゃない

 

 

「あ! あの…さ」

 

 

その人が口を開く。薫を優しく撫でながら『いつもみたいに』

 

 

「コレってどう言う状況…なのかなぁって……あは、ははは」

 

 

そうだよ、どういう――

 

 

「あ……あれ!? 泣いてるの!? え、嘘!? ちょっと! え? 待って、わたし何かした?」

 

 

っていうかココどこなのーっ! 彼女は困ったように叫ぶ。

 

 

「ねぇ…」

 

「え!」

 

「今度は……今度はっ……本当に……本当にっ! 君…なのかい?」

 

「えぇ!? どういう事!? あと、本当にココどこなの!?」

 

 

驚く彼女。

 

 

「え…えええええ!? ちょちょ! ていうか今日って!? な、なんでこんな時間たって……って! あれーっ! そのメガネわたしのじゃ!?」

 

 

混乱しながらも、彼女は言葉を止めた。翼がいきなり抱きついた事に驚いたみたいだ。

 

 

「え…? ど、どうしたの? 恥ずかしいよ……皆いるんだよ?」

 

 

赤くなる彼女。

ああ、本当なのかい? 本当に…今度こそ……

 

 

「ね、ねぇ! 翼くんってば!」

 

「おかえり」

 

「えっ?」

 

「おかえり……おかえりっ!」

 

「えぇ!? あぁ…うぅん。ただいま? 翼きゅん……」

 

 

また噛んだ。彼女は顔を真っ赤にしてうつむく。

 

 

「ほんと……! 大事なところで噛むんだからね、葵さんは……!!」

 

 

そこには、もう二度と会えない筈だった。空野葵が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

真志は屋上でそのデッキを見つめていた。龍騎のデッキを――

ミラーワールドが破壊され、モンスター達も消えたわけだがドラグレッダーとこのデッキは消えなかった。

ゼノンとフルーラが言うには副賞らしいが? まあありがたく頂いておこうじゃないか。

 

 

「これで、オレも龍騎か……」

 

 

ホッとしたような、なんというか真志はため息をつく。

耳を澄ませてば聞こえてくるのは泣き声や歓喜の声。

彼はもう一度ため息をついた。

 

 

「……オレのした事って、正しかったのかな」

 

 

誰もいない屋上で彼は呟いた。

 

 

「今さら後悔ってタイプでもないだろうが」

 

「……ああ、そうだよな」

 

 

誰もいないと思っていたが、入り口の上からはしごで上れる所に司がいた。

寝そべっているせで真志からは見えないが――

 

 

「なんかさ、人の死って単純なモノじゃないだろう? 

 なんていうか乗り越えたり区切りつけたりしてさ……でも、そう言うのを台無しにしちまった気がして」

 

「まあ、だからこそ漫画とかやら何やらで言われてるのかもしれないな。だいたいの場合失敗したりして」

 

「だろ? それに、もしかしたらもっと辛い事になるのかもしれない」

 

 

でも、真志はグッと歯をかみ締める。

 

 

「だけどさ、オレはこの選択をしなかったら一生後悔してた。

 責任を取れる訳でもないのに! オレ、結局自分の為にこれを願ったのかも……しれない」

 

 

結局またオレは自分の事しか考えてない善意を。

それにその理論で行くのなら他の人を蘇らせた事についても言える。結局何も変わってはいないのか?

 

 

「それでもいいじゃん……!」

 

「!」

 

 

ジュースが飛んできてそれをギリギリで受け止める。

美歩だった。美歩は上にいる司にもジュースを投げると、自分の分をのみ始める。

 

 

「アタシらだって人間じゃん。

 それに命かけて、辛い思いして戦ってるんだからさ。こう言う奇跡くらい許してくれるって!」

 

「ああ、サンキュー…」

 

 

真志は美歩にお礼を述べる

 

 

「やめてよ、私もさ。真志が死んじゃったら同じ事してたから…」

 

「え?」

 

「まあ、そのなんつーかアタシ真志がいなきゃ…駄目っていうか……なんつうか」

 

 

美歩は赤くなってうつむく。

 

 

「オレも――」

 

「え?」

 

「オレもだ」

 

 

真志もすこし顔を赤らめる。

 

 

「あたっくらいど! オオオオレヲワスレルナ!」

 

「「ッ!」」

 

 

司が飛び降りて二人の前に移動する。

真志と美歩は焦りながらも、苦笑いを浮かべた。それをジットリと見つめる司。

 

 

「人間なんて少なからず善意の裏に何か期待する生き物だろ。でもそれで救われた人や喜ぶ人がいるならそれは偽善じゃない」

 

「司……」

 

 

考えすぎだと司は言う。別に善悪のメリットを考えた善行でもいいじゃないかと。

 

 

「やらない善より、やる偽善って言葉があるじゃないか」

 

「まあ、だな」

 

「それにそんなすぐに変われたら人生苦労しねぇよ、お前の目指す正義はこれから徐々に実行していけばいい」

 

「ああ……ありがとう」

 

「うんうん! その為には生きないと!」

 

 

三人は静かに笑う。

 

 

「で? 言うのか? 俺たちが葵さんを……」

 

「どうしようかな。まだ分からない」

 

「ああ、そうか。まあそれもアリかもな」

 

 

三人は空を見上げる。清清しい程青い空。

 

 

「死者を蘇らせる……か」

 

 

誰しもが求めて叶わぬ、そんな願い。

でも自分達はソレを成し得た。たった一言その願いを口にしただけで。

 

 

「そう言えば真司さん達にはお別れいつ言う? あっちも今頃大変だろうからな」

 

「ああ、大丈夫だよ」

 

 

真志は自分の手を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に…そのデッキが要るんだ…よな?」

 

「はい。だからお願いです。このデッキを…貸してもらえせんか?」

 

 

真司は困ったように笑い、鏡を見る。そこにいたのはドラグレッダー。

彼はドラグレッダーに向って笑いかける

 

 

「頼むぜ」

 

 

ドラグレッダーは鏡から飛び出し、真司の周りを一周するとまた鏡の中に消えていった。

 

 

「じゃあ、頑張って」

 

「はいっ!」

 

 

真司と真志は固い握手を交わす。

 

 

「じゃあな、お前も……」

 

 

真司は鏡の中にいるドラグレッダーに挨拶と礼を言う。

ドラグレッダーは小さく吼えると空に舞い上がっていってしまった

 

 

「ははは……」

 

「あはは――」

 

「君達なら絶対大丈夫だからさ、応援してる」

 

「ありがとうございます!」

 

 

そう言って二人はもう一度笑い合ったのだった。

 

 

「じゃあね、頑張って」

 

「うぃっす! 頑張っちゃいますよ!」

 

 

抱きしめあう美穂と美歩。二人もまた別れの言葉を言い合う

 

 

「きっと、またいつか…その時は皆でお好み焼きでも食いにいこうぜ!」

 

 

美穂は親指をぐっと立てて笑う。

 

 

「はい! 楽しみにしてます!」

 

 

そう言って、もう一度二人は強く抱きしめあう。

きっとどこかで共通する思いを抱えていたのかもしれない。

 

 

「う~ん!感動しますねーっ!」

 

「……全然そうは見えないが、まあいい」

 

 

佐野も蓮も、清清しい笑みを浮かべて二人を見送ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って事があってさ」

 

「ええええええ! おいおい、もう挨拶すませたのかよっ! サイン欲しかったのに!!」

 

「ハハ、悪りぃ」

 

 

今ならまだ間に合う――っ!

司はそう言って走り出そうとするが、眩い光が辺りを包み込んだ。

 

 

「ちっくしょぉおおおお! 世界移動かよぉおおおお!」

 

 

その場に崩れ落ちる司を見て二人は笑う。

 

 

「受け継いだこのデッキ。きっと皆の役に立ててみせるから」

 

「だな、オレも頑張るぜ」

 

「はぁ……。ああ、頑張ろうぜ、一緒にさ」

 

 

三人はそう言って皆のところへと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、どこともつかない喫茶室。

喫茶室とは言うが周りには数え切れない本で溢れており、どちらかと言うと書斎をイメージさせる場所だった。

と言うより、彼女がいる世界はどこを見ても本に満ち溢れている。鼻で息を吸えば必ず古本の古風な香りが鼻をくすぐる。

だが今はこの世のものとは思えないほどいい香りの紅茶があるから、全て上書きされるわけだが。

 

 

「く…くくっ…くくく!」

 

 

抱きしめあいながら泣いている翼たちを視て彼女は笑っていた。

 

 

「なかなか、私の予想通りといったところか?」

 

 

女は手に持った紅茶を置いてゼノン達に問いかける。

 

 

「まあそうなるのかな?」

 

 

帽子をクイっとあげて彼女をみるゼノン。

ニヤリと笑う彼は、ソファに座って同じく紅茶を片手にしている。

 

 

「でも大変でしたよ、願いを叶える『存在』を他の世界から持って来たのは。もうどの世界にもあんなモノは無いんじゃないかな」

 

「ええ、本当に! 何週間もかかったものね!」

 

 

そう言ってフルーラはマイクから手を離す。

 

 

「それにしてもどうかしらゼノン、ワタシの演技はなかなかじゃない?」

 

「ああッ! フっルぅぅラぁん! ナビ役本当最高だったよ! さすがはボクの愛するハニーだぁん!」

 

「ああん! 嬉しいわぜっのぉん!!」

 

「低い声も、ちょっと気取った演技も素敵だよ本当に。あのアホピンク達もフルーラの声には気づけなかったみたいだねぇ!」

 

「まあ! ゼノン……!!」

 

 

「「ガシンコ!」」

 

 

二人は熱い抱擁を交わす。

どうやら司達の前に現れた願いを叶える存在と言うのはゼノンたちが用意したものだった様だ。

女はと言うとそれを特に同ずる事もなく、相変わらず口元をつり上げたまま二人を見つめていた。

もう慣れているといった表情だ。そして暫くそちらの方に視線を移していたが、クスリと笑うと再び翼たちの方に視線を戻す。

 

 

「ククク、神崎士郎、霧島美穂、そして――」

 

 

空野薫!

 

 

「こいつ等の家族を蘇生させるとは、まさに神をも恐れぬその行為。条戸真志、なかなか気に入った」

 

「人間の分際で三人もの命を動かした、まさに神に等しき行為ですからね」

 

「やはり、いつの世も世界を動かすモノは"愛"と決まっているのかもしれない」

 

 

それは同時に狂気に変わる危険性も孕んでいるのだが。

まさに麻薬の様な恐ろしさよ、気づけばそこに依存して破滅する者も多い。

人はそれを何のためらいも無く受け入れ、さらに求め合う。

 

 

「愛は人を狂わせる元素、ですが人は愛がなければ生きてはいけない」

 

「愛は観測者しだいで悲劇にも喜劇にも変わる不思議な元素、少なくとも彼らは悲劇で終わることを拒んだみたいね」

 

 

フルーラは小さなテーブルにおいてあったマカロンをゼノンの口に持っていく。

 

 

「でも、ワタシ達の愛は永遠だから喜劇にも悲劇にも終わらないわねー!」

 

「当然だよフルーラ。ボクは君を永遠に愛するからね」

 

「まー! うれしー! ワタシも愛してるわゼノンー!!」

 

 

やれやれ、女は二人の様子に肩を持ち上げる。

 

 

「フッ、それにしてもつくづく人間とは不思議な生き物だ。ある意味最も恐ろしい」

 

「ボクとフルーラも一応人間なんですけどね、フフフ」

 

「おっと、これは失礼」

 

 

そう言って三人は笑い合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああ!」

 

 

椿が驚きに目を見開く。

しかし真志は気にする事なく鏡像の世界を叩き割り、ゴミ箱に捨てた。

 

 

「もう、いらないんだ。コレは……」

 

「どうしてですか?」

 

 

我夢の言葉に真志は少し沈黙した後、笑った。

 

 

「いつまでもコレに縛られるのはゴメンだからな。もう、いらない」

 

「はぁ……」

 

 

少し名残惜しそうにしながらも椿達はそれ以上何も言わなかった。

たとえ犯罪の道具だろうが両親の残したモノ。だから捨てられなかった、だけど――

 

 

「オレには……もう、これは必要ないんだ」

 

 

そう決心する真志、これから彼は彼の人生を生きるのだろう。

願いの為戦い続けるライダー。それは真志の心に人生の重さを教えてくれた。

正直なんの為に生きていたのか分からなかった。だから、彼は鏡像の世界を破壊した。

今までの彼の人生は親の印象を消すだけの作業的なモノでしかなかった。

でも、これからは自分の人生を生きてみようと思う

 

真実を惑わせようとする鏡なんて、割ってしまえばいい。

 

 

「さあ、次の世界にいこうか!」

 

 

真志は今までの自分に別れを告げると、笑顔で立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 





最近滅茶苦茶鎧武が面白い。
グリドンが一番好きなんですけど、覚醒回はよ。
まあ今も十分面白いからいいんだけどね。

はい、それで今回が龍騎編ラストでございます。
龍騎の紋章って見方によっては龍が泣いてる様にも見えて凄くカッコいいと思う。

はい、じゃあ次はまあ近いうちに。
ではでは
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