曇天の空、それは彼の迷いのようだった。
「ずっと封印していた感情が目覚めてしまったのかもしれない。真由香はもう戻ってこない、だから今まで耐えられた。純粋に真由を愛せたんだ」
その思いに、この世界にて亀裂が走る。
「だが今リコンファームがあれば、真由を真由香にさせる事ができる――ッ!」
俺は真由を、真由香に変えたかったのかもしれない。そして真由香をこの手で殺したかった。
双護はジッと空を見つめていた。真由は真由、真由香は真由香、それは分かっていたのに。
今、真由香に会えるかもしれない。ずっと彼女を恨んでいた。昔も、今もだ。
「俺は復讐を遂げたいと……願ったのかもしれない」
目を閉じればカブトの力を使って彼女を殺すヴィジョンがいくつも浮かんでくる。
クナイガンで目を抉りたい。ライダーキックで全身を粉々にしたい。
司があこがれていた正義の力を、自分は復讐の道具、殺人の凶器として使いたいと。
「……真由ちゃんは、お前を慕っている。お前の事が大好きなんだ!」
また、雨が少し降り始めた。
だが二人は気にする事なく立ちつくす。
少しでも雨粒が彼らの心を冷やしてくれるのだと信じて。
「頼むッ! お願いだ!」
鏡冶はぬかるむ地面の中、膝をついて頭を下げる。
額に泥をこすりつけるような愚行、情けない姿だと人は嘲笑するのだろうか?
双護は、そんな彼を無表情で見つめる。
「お前はッ! 真由ちゃんの味方であり続けてくれ! 真由ちゃんを愛し続けてくれよぉッ!!」
「………」
双護は目を閉じる。
思い出すのは今まで真由と過ごした楽しい日々、それは双護にとってとても大切な思い出だった。
『リコンファームを使えば、真由は真由香の記憶を取り戻す』
思い出すのは今まで樹里と、家族と過ごした楽しい日々。そして真由香に味あわされた苦痛と屈辱の日々。
それは双護にとって憎悪と憎しみの塊だった。真由香が、天王路が憎い。家族への想い――
「真由を愛した二年あまりと、真由香を恨み続けた十二年……」
双護は鏡冶と距離を取る。
雨は激しく、彼らを濡らしていた。
「明日、創英は赤い靴を発動するらしいな」
双護の声は随分と落ち着いていた。
「俺は真由を愛している。もしアイツがリコンファームによって真由香の記憶を取り戻したなら、彼女は彼女でなくなるだろう。それは真由を殺す事と一緒だ、ならばせめて真由は真由のまま死なせてあげたい」
そしてその時、俺の全ては終わりを告げる。
「まさか……ッ!」
「鏡冶、決めたよ。俺は……真由を殺す。真由を守る為に」
守る為に――ッ?
「なんで……なんだよっ!! 殺す必要なんてねぇじゃねぇか! ああそうさ! 皆に事情を話してリコンファームを使わないでくれって言えばいいじゃねぇか!!」
「………」
何も言わず、何も表情を変えず。
双護は素早く変身を済ませ、キャストオフで鏡冶を吹き飛ばす。
今までだって、本当は何度も夢のなかで彼女を殺したんだ。
首を締めて殺す。はじめは顔が見えない、でも命を奪う直前で彼女が『どちら』なのか分かるんだ。
真由だった場合自分は手を離して目が覚めるまで狂った様に彼女を抱きしめながら謝罪を続ける。
だが、もし見えたものが真由香だった場合自分は力を強めて彼女を殺しきる。
その時に自分はえみを浮かべているのだと自覚できた。
でもちょっと待ってほしい。
真由も真由香も同じ顔。もしかしたら自分は何の躊躇いもなく真由を殺して笑っていた時があったのかもしれないんだ。
「今日と明日が変わる境界線の時、俺はもう一度この場所を通って真由を殺しにくる。その時、お前がどうするかは……」
ダークカブトはその言葉を言いきる事なく、クロックアップで姿を消す。
鏡冶はしばらく立ちつくしたまま、ふいに倒れた。
「なんで……なんだよ……ッッ!! どうしてなんだよぉおおおおおッ!」
鏡冶の涙は、雨に溶けていったのだった。
「鏡冶君……」
「真由ちゃん――」
ずぶ濡れになった鏡冶。
その帰りを真由は玄関でずっと待っていた。真由はタオルを鏡冶に差し出すと、静かに微笑む。
「風邪…ひいちゃう……から」
「……ありがとう」
二人の雰囲気は重い、真由はどこかで悟っていたのだろう。
鏡冶が今兄に会ってきた事を。そして何より何故、兄がコチラへこないのかを。
「ねえ…鏡冶君……」
「………」
「おにいちゃんは……ボクの事が…嫌い……なんだよね」
ドキリとしてしまう。
違うと、ただ違う。そうじゃないと大声で言いたかった。だけどできない、できないのだ。
「知ってたんだ。ううん、詳しくは分からないけど……前に寝言でお兄ちゃんがボクの事…許さないって……」
真由は言葉を搾り出そうと必死だった。
だが一言一言発する度に目から大粒の涙が零れていく。
真由は双護が自分を愛してくれていると思っていた、だが不安もあった。何故兄が自分を恨んでいるのかは分からない。
だから怖い。
きっと勘違いなのだろう、夢でなにかやってしまったのだろうと今までは思っていた。
特に気にしてもいなかった、だが明らかに今回の世界での兄の態度……
「ボクおにいちゃんに何かしちゃったのかなぁ……! だったら許して欲しいよ……ぉ!」
真由はついに泣き出してしまう。
小さな肩を震わせて、必死に堪え様と歯を食いしばって。
だけど、兄の事を思うと涙が止まらなかった。母親はいなかった、母親と言うものがどういった存在なのかも実感がない。
優しい存在? 甘えたい存在? そんなの知らない、メイドがいる。
だけど、街で仲良く歩いている親子が羨ましかった。
父親には叩かれて、しきりに同じ事を言われた。
お前は誰だ? 娘を返してくれ! お願いだ! お前なんか知らない! その顔でこれ以上喋るな!
ああ、辛かった。悲しかった。確かに父親との思い出なんて思い出せないのも事実だ。
段々と彼は自分を無視するようになり関わりも無くなっていったが、酒に酔った父からはいつまでも罵声を浴びせられた。
違う、そうじゃない。こんなんじゃない! ドラマやアニメで見た『父親』はもっと優しかった。
こんなのあんまりだ。メイドさんや会社の人は自分に優しくしてくれたけど、やはりどこか壁があった。
多分、自分が社長の娘だと言うから遠慮しているんだ。傷つけたらどうなるか分からないから干渉は控える。
でも、だけど兄だけは違った。
一緒にいろんな事をして遊んでくれたし、男の子なのにおままごとにも付き合ってくれた。
一緒にいろいろな物も食べたし、好きな物は必ず分けてくれた。
一緒にテレビも満たし、一緒にお風呂にも入った。
一緒に眠ったし、一緒に泣いたりもした。
一緒に――……
大切な、大切な家族なんだ。でも不安になってきた。兄は自分のことが嫌いなんだろうか?
そんなのいやだ!
「おにいちゃんに会いたいよぉおおおぉおッッ!!」
「……っっ!」
会いたい、それだけ。それで鏡治は理解する。
こんなに、真由ちゃんは双護の事を慕っている。
ああそうだ、真由ちゃんにとって本当の家族は双護だけなのだから――
鏡冶の眼にも涙が浮かぶ。
真由は、彼女は――
『俺は真由を助けたいのか、真由香を殺したいのか……』
殺したい程憎んでいた人間と、全てを許してまで愛した人間が同じ体の中にいる。
鏡冶はそんな経験がない、だから分からない。
でもたった一つだけ――
「真由ちゃん、おにいちゃんが好き?」
「うんっ! 大好きだよ……だから、だから仲直りしたいよぉ!」
一つだけ分かることがあるのなら。
「じゃあ、仲直りできるように俺が言ってあげるよ」
「本当……?」
この娘には笑っていて欲しい。
「ああ! 約束だ!」
「うん!」
誓いの指を絡める。
双護、お前をぶん殴ってでも真由ちゃんへの愛情を呼び出してやる。
覚悟しろよ――ッ!
「真由ちゃん…その、えっと……」
「?」
「す、好きだ…よ」
「…うん! ボクも鏡冶くん好きだよ!」
鏡冶は手を差し出す。
真由はニッコリと笑ってその手を握るのだった。
まだ外は暗い。
それはそうだろう、もうすぐ時計の針は零を示そうとしているのだから。
まだ皆眠っている時だ、しかし赤い靴はもうすぐ発動される。
司達は今日、ブレインタワーに突撃をしかける作戦だった。
前回は失敗したらしいが、今回は内部に詳しい神也達がいる。創英の野望を絶対に打ち砕く為に戦うのだ。
そして、同時にリコンファームを発動するかもしれないと言う事がある。
リコンファームが発動すると言う事は、真由が実質死ぬと言う事だった。
「っしゃあああああッッ!!」
鏡冶は気合を入れる。
外は大雨だが彼の心は迷いなく晴れ渡っていた。
悩んで答えが出るか?
ああ、そうだ。でねぇよな鏡冶!
だったらもう真正面からぶつかっていくしかねぇだろ!
双護が迷ってんだったら強引に答えを決めさせるまでよ!!
「ガタックゼクター!」
『ん?』
「頼む! 俺に力を貸してくれッ!」
頭を下げる鏡冶を彼は笑う。
『今さらなんだよお前、本当不思議な奴だな』
「へっ、ほっとけよ」
笑い合う二人、だがそこにもう一つの声が混ざる。
「鏡冶……」
「!」
暗い玄関、それが誰か鏡冶は判断に遅れてしまう。
現に彼は姿を見せなかった、だが声だけはハッキリと聞こえる。
「今、鏡冶の世界では……仮面ライダーって存在は兵器なのかもしれない」
「……ッ?」
そうだ。マスクドライダーはワームを殲滅する為に作られた兵器。
それ以外の物ではない。
「だけど――」
男は言う。俺達の世界じゃ仮面ライダーは――
「ヒーローなんだっ!」
「!!」
「双護を……どうか、頼む」
「…ッ! ああ!」
鏡冶は頷くと玄関を飛び出す。
雨が彼を歓迎した、ああ上等だ。やってやるッッ!!
「そっちもよろしく頼むぜ! 司!」
走り去る鏡冶を物陰から司は見る。
驚いたな、まだ少ししか話してないのに。
「……ハッ、俺達も勝たないとな」
司は微笑むと、教室に戻っていくのだった。
「………」
雨は少し勢いが減り小雨になっている。双護はその小雨のなかをゆっくりと歩いていた。
傘はささない、何故かそう言う気分だった。雨が彼を冷やす、冷静にさせる。彼は何度も自分に問いかけた。
真由を愛している?
イエス。
真由を守りたい?
イエス。
真由とずっと一緒にいたい?
イエスだ。
じゃあ、真由香を恨んでいる?
イエス。
真由香を殺したい?
イエス。
真由香と永遠に別れたい?
イエスだ。
彼が全力でリコンファーム使用を阻止しなかったのも、迷いがあったからに他ならない。
ずっと抑えていた、それは苦痛じゃない。だってもう永遠にアイツは蘇らないのだから。
もちろん、これからもそうだと思っていたのに――
『おにいちゃん…!』
『おい双護ぉ! きゃははは!』
双護は迷っていた。
自分が今、どこを歩いているのか?
真由香を殺す道?
真由を守る道?
分からない。そう、分からない。
だけど真由を殺せば自分は後悔するのだろうか? それとも答えを見つけられるのだろうか?
これ以上真由香の幻影に囚われて、真由を愛せなくなるくらいならば――いっそ。
「………」
双護は、ふと足を止める。
向こうから誰かが歩いてくる。双護はそれが誰なのかを確かめるため、その場に止まった。
「………」
鏡冶は歩きながら何度も自分に問いかけた。
一歩一歩たしかに踏みしめる彼は、自問を繰り返す。
真由を救いたい?
イエス。
真由を守りたい?
イエス。
真由とずっと一緒にいたい?
それは…い、イエスなの…か? ああそうだ、イエスだろうな。
じゃあ、双護を救いたい?
イエス。
双護と真由を再び元の関係に戻したい?
イエス。
双護にまた真由を愛してほしい?
イエス。
創英を止めたい?
イエス。
この街に、世界に平和を取り戻したい?
イエス。
そう、何度やっても、何を問うてもイエス。
正義の味方に憧れ続けた人生。これからもそうだろう、ヒーローもんはハッピーエンドが似合う。
いや、そうだ。ハッピーエンドじゃなきゃいけねぇ! 鏡冶は切にそう思う。誰かが泣いて、誰かが悲しんで終わるなんて認められないな。
「………」
前で誰かが立ちつくしている。
鏡冶はそれが誰か確かめる事もせずにどんどん前に進んでいく。
止めれるか? 止めてみろよ。 ああ、そうだ。止めるぜ俺は。
「……真由は?」
「まだ寝てるよ、でも今日にはリコンファームの所へいく。いつでも発動できるようにな」
二人は一定の距離を保って立つ、二人の間には短いようでとても大きな距離がある。
友達と言う訳でもない。双護にとって鏡冶はただ少しの間、妹の面倒を見てくれた人、と言うだけ。
鏡冶にとって双護は少しの間だけ一緒に過ごした少女の兄、と言うだけ。
そう、その程度の関係なのだ。普通ならばもう関わる事のない関係なのかもしれない。
お別れを言えばもう二度と合う事のない関係なのかもしれない。だが、しかし――
『おにいちゃん!』
『鏡冶くん!』
この二人の間には確固たる橋がある、強靭な架け橋が存在しているのだ!
「………」
「………」
二人は分かっている、それを渡らなければどちらも進めはしないのだと。
二人が進む先には双方が立っている。前に進むには、どかさなければならないのだ。
「どけ」
「ああそうさ、どかしてみろよ」
一瞬だけ、双護が笑った気がした。
「鏡冶、お前……」
「?」
「真由が好きか?」
「……ああ、そうだな。多分、いや好きだ」
「ラブか?」
「どうだろう? でも、真由ちゃんといる時はスゲー楽しいんだ。できればずっと一緒にいたい」
鏡治は笑ってみせる。
双護はやはり少し、ほんの少しだけ微笑んだ。
「できれば、お前には真由を愛してほしい…今だけでも――」
「?」
双護の瞳には真由が映っていた。
もっとも、それが真由なのか? 真由香なのかは分からない。
もう一度言おう、いや何度でも言おう。双護は真由を愛している、だが迷っていた。
真由は愛せても、真由香だけは愛せない。だから――
「真由を愛してくれ、女として」
「………」
鏡冶は何も言わずに頷いた。双護はどちらが真由をより愛しているのか、確かめたいのだ。
そして同時にそれは決意。もし自分が勝てば――彼女を、真由香を殺す。
今回の事で自分の歩く道が分からない程に混乱した。真由香が蘇るかもしれないというだけで、彼女への憎悪でおかしくなりそうだった。
いやもう既におかしくなっているのかもしれない。このままリコンファームを発動せずに終わったとして、真由を愛せるのだろうか?
また似たような事が起こったら、真由を真由香としてみてしまうのではないだろうか?
真由に、真由香へのどす黒い思いをぶつけてしまうんじゃないだろうか?
それが怖かった、恐れていた。
真由には常に幸せでいてほしい、悲しい思いをしてほしくない。
だからせめてその前に――自分の手で終わりを、真由を真由のまま終わらせて……
「俺は真由を愛している」
家族として。それはLIKE
「俺も、真由ちゃんを愛しているさ」
一人の女として。それはLOVE
「来い」
「来てくれ――ッ!」
二つのゼクターが激しい火花を散らしながら飛翔してくる。
いつからか赤い靴、創英、世界は、二人の心から消えていた。
彼らの世界にいるのは双方の愛と――
たった一人の少女。
「俺は真由を守る。守るんだよ……ッ」
「守る? ああ、違うぜ双護。救わなきゃならないんだよッ!」
もちろん、お前も!
真由への愛に縛られ、真由香への憎悪に縛られたお前を――ッ!!
「もうこっから先は絶対に誰も悲しませないッ! 俺は……俺は――ッッ!」
今だけでいいっ!
ならせてくれよ、ヒーローにッ!!
「俺はッ、正義の味方! 悲しみを殺す――ッ! 仮面ライダーなんだからよぉおオオオオおおおおおオッッ!」『HENSHIN』
「来い、お前に勝てば……俺は彼女から解放されるんだからなッ!」『HENSHIN』
二人は同時に変身して走り出す。
愛と愛がぶつかり合う時、立っていられるのは――
「キャストッッ! オフッッッ!!」
「キャストオフ……ッッ!」
『『Cast Off』』
たった数日共に過ごした愚直な愛か?『Change・StagBeetle』
それとも数年間の、迷い始めた愛か?『Change・Beetle』
「ウオォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
「………ッ!」
カリバーとクナイがぶつかり合い、激しい火花を散らした!
二人の瞳には、愛する少女がいる。その少女を守る為に、救うために、彼らは戦うッッ!
「ウラァアアアアアッッ!!」
カリバーで舞うように斬りつけていくガタック、ダークカブトは最小限の動きでそれを防いでいく。
火花が視界を一瞬隠すが、それでもガタックの攻撃はダークカブトには届かない!
「がら空きだ」
「ッ!」
ダークカブトの足払いが決まり、ガタックはそのまま地面へと叩きつけられる。
そこに打ち込まれるだろう銃弾をかわすためにガタックは地面を転がる。
「フッ!」
だがダークカブトのクナイガンはしっかりとガタックを捉えていた。
ガタックは衝撃に耐えながらもカリバーを一つダークカブトに向けて投げる。
放物線を描きながらカリバーはダークカブトに向かった。
「………ッ」
だがそれも簡単に避けられてしまう、同時にガタックの装甲から火花が散る。
しかし――ッ!
「プットオン!」『Put On』
「何ッ?」
弾かれたカリバーと周りにあった装甲の破片がガタックに収束する。
その際に装甲の群がダークカブトにぶつかり、ダメージを与えた。
よろけるダークカブト、そこへガタックバルカンが向けられる
「チッ!」『Clock Up』
だがバルカンは着弾しない、ダークカブトはクロックアップを発動させて回避したのだ。
そのままガタックに連撃を仕掛けるダークカブト。尤もマスクドフォームのガタックは防御力が高く、大きなダメージは与えられないのだが。
「お前は俺が真由ちゃんを連れて行こうとした時全力で挑んできたなッ! 殺されるかもしれないのにッッ! 真由ちゃんのためにッ!」
ガタックはダークカブトの攻撃が当たる感覚から、タイミングを予想して反撃に出る。
しかし虚しくもそれは空振りに終わっていくのだが、何かがつかめそうでガタックの闘志は尚、膨れ上がる。
「あの時はまだ真由香への憎しみを抑えていたからなッ!」
足を中心にダメージを与えていくダークカブト。
ガタックがよろける瞬間を見て、自らもプットオンを発動させる。
「俺にはお前の気持ちはわからないッ! 殺したい程に憎い相手と――ッ!」
マスクドフォームの強力な蹴りを受けてガタックは倒れそうになる。
しかし気合で踏みとどまると、そのままバルカンを発射した!
物凄い衝撃でダークカブトの意識が一瞬とんだが、彼女の姿を思い浮かべ、歯を食いしばる。
「グッ!」
「殺したい程憎い相手と、愛した人が一緒の体! そんなの俺には一生わかんねぇよ!」
カブトはクナイガンをアックスモードに変えて振り下ろした。
両者倒れそうに、気を失いそうになる状況の中にらみ合う。仮面越しに見る互いの眼。うつる少女――ッ!
「真由は純粋だ。その純粋な心に俺は救われてきたっ!」
「俺もだよッ!! だったらそのままでいいじゃねぇか!」
「………ッ」
『お兄――』
『おい、双護ぉ!! お前――』
「チラつくんだよッ、真由香がなぁッ!!」
『『Cast Off』』
「「ぐああああッッ!!」」
吹き飛ぶ両者、着地を決めたのはダークカブト。
ガタックはそのまま倒れてしまう。そのガタックにダークカブトはクロックアップで一瞬にして距離を詰めた。
地に伏したガタック、隙だらけの体――ッ!! だがしかし、それこそガタックの狙い!
「ラァァァッ!!」
自らもクロックアップで同速になっていたガタックはカリバーを重ね合わせ、ハサミのようにカブトを拘束する!
「クッ!」
「お前はッ! 真由香さんを殺して満足するのかよッ!?」『Rider Cutting』
「…ッッ!」『Put On』
「満たされるのかって聞いてんだッッ!!」
そこでダークカブトの装甲がガタックを背後から襲う! その衝撃でガタックはカリバーから手を離してしまった。
ダークカブトは素早くカリバーを蹴り飛ばすと、アックスモードで斬りつける。
「ぐあああぁぁぁあああッッ!!」
「……後悔か、するだろうな。真由への罪悪感、感じない訳がない」
「だったら……グゥ…ッ! もういいだろ! 真由ちゃんだけを愛して――」
「俺が、俺と樹里が受けた屈辱! あの女への憎悪も確かなんだ!」
重い拳がガタックに打ち込まれる。
プットオンを発動する為にガタックは手をゼクターへ向けるが、ダークカブトはそれを許さない。
クナイガンでガタックの手を弾くと、全力を込めて蹴りを仕掛ける
「グッ!!」『Clock Up』
ダークカブトの拳が遅くなる。
ガタックはバックステップで距離を空けると、膝をついた。
「ゲホッ! ゲホッ…!」
腹部を押さえて、ガタックはダークカブトを見る。
愛と憎しみの狭間で彼は葛藤しているのか?
それとも憎しみの先にある後悔さえも受け入れる気でいるのか?
「何がお前をそこまでさせるんだよッ!!」
ガタックのドロップキックはダークカブトを大きく吹き飛ばす。
さらに追撃、地面へ着かせる事のない猛連撃。
「真由香さんへの想いがあっても、お前は真由ちゃんを愛してやってくれよッ! お願いだ双護! 真由ちゃんはお前しかいないんだよ!」
ダークカブトは瞬間的に手を伸ばす。
無意識の一撃が、一瞬だけガタックの動きを止めた。
その隙にキャストオフを発動させてガタックとの距離を空けた。
「真由香が邪魔するんだよッ! 真由への愛も、思い出も! 全部アイツが邪魔をするんだよ!」
クロックアップによって激しい高速戦が繰り広げられる。
閃光の様に二人はぶつかり合い、互いの装甲を削りあう。
クナイガンとカリバーでは、ガタックの方が接近戦においては有利だろう。
だがダークカブトはクナイガンを的確に操り、同等の戦いを見せた。いや同等なのだろうか?
「お前に、俺の気持ちが分かるか?」
「ッ!」
ダークカブトの蹴りがわき腹に叩き込まれる。
呼吸が止まる、ガタックの動きが鈍りその隙にクナイで連撃を決められた。
なんとかカリバーで弾くが、それでも大きいダメージを受けてしまう。
「真由ちゃんへの想い?」
ガタックの心が揺れる。
俺は真由ちゃんを守りたい、だから戦っている。双護ともまた仲良くしてほしい……
「……ッ」
確かに真由の事を少し女性として意識した時もあった。
だがそう言う事を抜きにしても守りたい、その想いに嘘はない。
だけど真由香を自分は知らない、真由香も天秤にかけて戦っている双護に想いの強さで勝てるのか?
「グッ!!」
腹部に衝撃が走る。
撃たれたのか? 鏡冶は辺りを駆け回りながらダークカブトに近づいていくが、ダークカブトに軌道を読まれ蹴り飛ばされる。
「鏡冶、お前は真由を救いたいと言ったな」
「くッ……」
「なら……お前は、その事だけを考えろ!」
ふと気がつけばダークカブトが目の前にいた。
踵落としで肩を抉られる、苦痛の声を上げてガタックは踏み込んだ。
そこへさらに襲い掛かるクナイガン、気が飛びそうになるが鏡冶はこらえる。その眼をダークカブトは見ていた。
「俺も救いたいと言ったな?」
「ガッ……ぐぁ!!」
ガタックはタックルでダークカブトを押し出すと、カリバーで思い切り突く。
ダークカブトは衝撃でよろけ、その隙に後ろへと跳ぶ。
「鏡冶、お前の瞳に俺を映すな」
「な……何ッ!?」
「お前は真由の事だけを考えろ、真由だけを守れ。でなければ俺には勝てない」
「ッッ!」
『『Clock Over』』
ダークカブトはゆっくりとクナイガンをガタックに向ける。
「俺は真由を殺す、お前からしてみれば……俺は悪だ」
「!」
「俺は真由を守る、守る為に殺す。それはお前にとって悪になる」
ダークカブトはクナイガンを発砲する事はなかった。
代わりにその瞳で、彼を……
いや真由を見ていた。ただ、ひたすらに
「お前は俺を倒すんだよ。じゃないと真由を守れない」
「………」
鏡冶は双護の事も救いたい、傷つけたくないと思っていた。
その甘さを捨てろといっているのだ、戦う中でダークカブトは気づいた。
ガタックは自分に攻撃をするものの、圧倒的に足りていないモノがある。
「俺は真由を殺す、その思いをこの戦いで変える気はないだろう。だったら、お前が俺を止めるには――」
「ッ!」
鏡冶はその言葉を理解した。
ガタックはダークカブトを見る、しかし彼の瞳に自分が映っていない事を悟った。
駄目なのか? やるしかないのか?
ガタックは迷う。救いたいと願う事は罪か? 分かり合えないというのか?
彼女を守りたい、救いたいという共通の願いは届かないのか?
ガタックは拳を握り締める。
「鏡冶、お前には――」
ダークカブトは引き金をひいた。
弾丸がガタックの体に直撃する、痛みと衝撃。なにより伝わるのは覚悟。
「お前には、殺意が、覚悟が足りない」
「覚悟が……殺意が足りないだとッ?」
ダークカブトはガタックを殺すつもりでいる。
だがガタックにはそれがない、足りないのだ。それを彼は覚悟と言う。
「鏡冶、本気で俺を殺しにこい。でなければ、お前は真由は守れない」
「真由ちゃんを……守れないッ!?」
「ああ、そうだ。俺を殺す気がないのなら――」
お前は、誰も護れない――ッ!
「!!」
「本気でこいッ! 新意鏡冶ィッッ!」
真由を守る事だけを考える……?
「お前を殺す?」
「ああ、そう――」
一瞬、まさに気配すら感じさせずにガタックはダークカブトの後ろへ回りこんでいた。
「何ッ!?」
反応する前にカリバーで無数の閃光を刻みつける、光の嵐はダークカブトを宙へと舞い上げた。
まだ辺りは暗い、そこへ咲く大きな華。そう、激しく火花を散らすダークカブトはまさに『華』と言うにふさわしいだろう。
ダークカブトが衝撃を感じたとき、もう彼は自分がどこにいるのかすら分からなかった。ただ、見えるのは青き閃光。
『Rider Cutting』
意識が戻った時、ダークカブトは高く持ち上げられていた。
持ち上げると言うよりは挟まれ、担ぎ上げられたといったほうがいいだろう。
もの凄い力と、電子音がしらせたとおり彼の必殺技が拘束力を強める。
抜け出せない。それを理解すると同時にだった。
激しい衝撃に苦痛の声をあげるとそのまま地面に叩き付けられる。
衝撃で足がふらつき、そこへ今度は拳が襲い掛かる。一撃を受けたと思えば、もう四発は叩き込まれていた。
「――ッ!」
耐えられずにダークカブトは倒れる。
いや違う、彼はダークカブトが地面へ背中をつける事を許さなかった。
後ろへ回られたのだ、倒れそうになるダークカブトを彼は蹴り上げると――
『Put On』
打ち上げられたダークカブトに次はバルカンの嵐がやってくる。
爆発が終わり、新たな爆発がダークカブトを包んだ。爆炎のゆりかごはダークカブトを決して逃がさない。
『Clock Up』
苦し紛れに発動させたクロックアップ。
バルカンの雨は回避できたが、ダメージがでかすぎてしばらくまともに立てなかった。
その後、ダークカブトはガタックにクナイガンで攻撃を与えようと接近する。
「ッ!」
だがクロックアップをしているというのにも関わらず、ガタックはその手でダークカブトの手を掴んだ。
混乱するダークカブトに浴びせられるバルカンの嵐、近接で連射される高威力の弾丸。
どんなにもがこうとも、衝撃がこようとも、ガタックがしっかりと手を掴んでいるため吹き飛ぶことが出来ない。
耐えられない、耐えられる訳が無い! 防御力に特化しているマスクドフォームにならなければ!
『Put On』
装甲がガタックにぶつかり動きを鈍らせる。
ダークカブトはその隙を狙って拳を振り上げるが――
「!!」
「クッ!」
ガタックはその拳を弾くと、さらにバルカンを発射する。
怯むダークカブトに蹴りや拳の猛連撃を加え、さらにバルカンで吹き飛ばす!
「ッッ!」
『Cast Off』
受身を取れずに叩きつけられるダークカブト。
ガタックは装甲を彼にぶつけながら一気に接近、そしてカリバーで何度も斬りつけた。
さらにハサミの様にしてダークカブトを拘束するとそのまま大きく振り回す。
ジャイアントスイングをしばらく続け、投げ飛ばすとそのまま自分もドロップキックで跳んで行く!
「ぐぁあああああああッッ!」
地面に手をつくダークカブト、それをガタックは何も言わずに見ていた。
先ほどとは動きがまるで違う。これが新意鏡治、本来の実力なのか?
「フッ……! まさか、ここまでとはな――ッ!」
「……ッ!」
ガタックは殺意を開放してダークカブトに襲い掛かった。『戦いの神』と称される程の力は圧倒的。
だがダークカブトはそれでいいと笑う、劣勢なのはどちらか?
「ウォオオオオオオオオオオッッ!!」
「ハァアアアアアアアアアアッッ!!」
真由と自分達の命を掛けて二人はぶつかり合う。
ガタックカリバーの激しさは先ほどの比ではなく、ダークカブトも防御が遅れてしまった。
「ウラァァァッッッ!」
「グゥゥウアァアアア!!」
巨大な十字架がダークカブトに刻まれる、絶大な衝撃でダークカブトは地面に倒れてしまった。
そこへ振り下ろされるカリバー! ダークカブトは蹴りでそれを弾くと、起き上がりながらの回し蹴りでガタックの顔面を叩く。
平衡感覚を失ったガタックにここぞと言わんばかりの連続蹴りをくらわせた。
「やっと殺す気になったか鏡冶ッ! そうだ、それでいいんだよッ!」
「違ぇええええええええええええええええッ!」
「ッ!?」
ガタックが投げたカリバーがダークカブトの眼前にせまる!
なんとか体をひねって避けるが、角の部分にヒットしてしまった。
よろけるダークカブトに掴みかかるガタック。その瞳には、何が映っているのだろうか?
「決めたんだよッ! 殺すとか殺さないとか甘えてんじゃねぇぞ!」
「何っ! グッ!!」
ダークカブトの頬に思い切り食い込むガタックの拳!
ゆれる脳と視界、しかし不思議にもダークカブトは鮮明にガタックを見ている。
「殺す気でこい? 真由だけを見ろ?」
ふらつくダークカブトにさらに拳が炸裂する。
「俺は誰も護れない?」
「ッ!!」
頭突きがダークカブトの脳を揺らす。
ダークカブトはガタックの瞳を見た、見てしまった。
仮面越しのそれはハッキリとダークカブトに向けられているのだ。
「何 俺に忠告してんだよッ、何俺に与えようとしてんだよッ!! 違うよな、違うだろうが!!」
「何だと……ッ?」
一歩、ガタックは足を踏み出す。
ダークカブトはその迫力に一歩後ろへと下がってしまった。
与える? 忠告? おいおい、ふざけんなよ――ッ!
「お前は俺に勝つんじゃねぇのかよ! 殺す気なんじゃねぇのかよッッ!」
「当然だ! 俺はお前を殺して真由香を殺すッ!」
「真由ちゃんはどうなんだよっ! 殺すのか!」
「俺は真由を守るんだよっ!」
何だよそれはぁあああああッ!
ガタックの両腕がダークカブトに打ち込まれるッ!
「殺意が足りない? 覚悟が足りない? ああそうだ、足りないだろうよ! 俺もッ! お前もォッ!」
「……ッ!!」
アームハンマーをガードしきれず、ダークカブトはそのまま地面へ倒れる。
地面を見るダークカブト、殺意が足りないと彼に言った。覚悟がないと彼に言った。
それは果たして……彼に言った言葉なのだろうか?
「守るために殺す? ふざけんなッ! そうやって逃げるつもりかよ! 真由ちゃんを殺す事からいい訳をつくって逃げるのか!?」
「なんだと!?」
「結局お前は真由香さんへの復讐の為に真由ちゃんを殺すんだろうがッ! その事実から逃げてんじゃねぇよ!!」
「くっ……!」
「お前は心の中で俺に殺されるシナリオすら正当化してるんじゃねぇのかッ? 真由ちゃんを殺す事をチラつかせて、俺を煽って! 殺意を呼び出させて殺される! その結果すらどこかで望んでるんじゃねぇのかッ!?」
「違う…ッ! 俺は真由を…」
「俺の目を見て言えッ! 天王路双護ォオオオオオオオッッ!!」
「くっ!」
クナイガンを正面から受けるガタック。だが先ほどまでの威力がない、弱々しい一撃ではガタックは怯まない!
彼らは覚悟を決めているのか? それとも、まだ迷っているとでも言うのか?
「お前はまだ迷ってるんじゃないのか? 口では何とでも言おうが結局は真由ちゃんと真由香さんの狭間でくすぶってる! それを無理やり終わらせたくて必死なだけだろッ!! お前は真由ちゃんを守るとかいいながら真由ちゃんと目すらあわせてないんだよッッ!」
「俺が真由から逃げてるだとッ!?」
「違うのかよッッ!? 真由ちゃんの目すら見ず、真由ちゃんと関わろうとせず何が守るだよッ! 笑わせんなぁあああッ!」
クナイガンを弾く!
思わずそれを目で追うダークカブトに、拳が打ち込まれる
「真由ちゃんがお前をどれだけ愛してるか分かってんのかよッ!」
「お前に……ッ!」
ダークカブトは全てを振り払うように首を振ると、自らも拳をガタックへぶつける。
だがガタックは怯まない、動じない。
「何が……分かるッッ!」
「分かるかよッ! 知るかよッ! ああ、そうだ。俺にはお前の気持ちは分からない、理解できない! でも人間なんてそう言う生き物だろうが! 誰も他人の気持ちなんてわかんねーんだよッ! 誰も理解してくれない、誰もわかってくれない。それが世界だろうがぁぁぁああッッ!!」
「グッ! ガァァ!!」
「お前の気持ちなんて俺に分かるかよッ! 殺したい人間と愛した人間、同じ人なんて辛いよな……とか言ってほしいのか? それこそ甘え以外の何物でもないだろうが!」
読み合いの攻防はもうそこにはない。
両者は吼えながら殴り合いを続けていた。
「いるわけねーんだよ他人の気持ちが完璧に分かる人間なんて。同じ境遇だろうが、同じ体験してようが! 共感できても完璧に理解できるとはかぎらねぇだろうが!! 第一それでお前は満足なのか? 分かってもらえたとして、今俺が理解したとして、この状況が何か変わるのかよ!?」
「ッッッゥ!!」
「真由香さんが憎い? 真由ちゃんを愛してる? だから殺す? ああ、そうだ! 結局それはお前が真由ちゃんを捨てて真由香さんへの復讐をとったにしかすぎねぇ! 簡単な話だよなッ! なのにお前は真由ちゃんを守るとか訳の分かんねぇ理由かざして! 自分の痛みを少なくしようとしてるだけだろうがぁぁぁぁッッ!!」
ガタックの拳はダークカブトを大きく怯ませる。
打ち込まれるたびに大きく仰け反るダークカブト!
「極論だろうッ? お前の真由ちゃんへの愛が恨みに飲み込まれていく、お前がどんなに苦しもうが真由ちゃんと真由香さんは同じ体! 同じ人間なんだよっ!! その事から逃げんじゃねぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
「お前はッ! 真由と出会って間もない! そんな分かったような口をきくなあああああああ!」
「理解したくもねぇよッ! いい加減理解しろよ!! お前は天王路真由って人間が憎くて殺したいってよぉおおッ! それ以外の答えはねぇんだよ!」
「違うッ!! 真由を愛しているのは偽りない真実だ!!」
「じゃあ愛しぬけよッッ! お前から差し出した手だろうが!! 繋いだ手を! 求めた絆をお前から放棄してんなよッ!」
水しぶきを上げてダークカブトは倒れる。
「真由ちゃんはお前に嫌われいないか怯えてた。お前に許して欲しいと泣いた!」
「ッ! 真由……ッ!」
「希望なんだよ、絆なんだよ真由ちゃんにとってお前はなによりのッ! 真由ちゃんの気持ちをわかってやれなんて言わないさ。だけど、これを知って尚、真由ちゃんを殺すかどうかだけは聞かせろッ!」
「………ッッ!!」
「命を奪うって事がどう言う事か、お前は分かってんのかよッ! その絆を、家族を殺すんだぞ!! もう会えないんだッ! 奇跡でも起こらないかぎりッ!!」
その奇跡を新意鏡治は何度祈った事だろう?
新意鏡治の両親は爆発事故で即死した、この世界の優れた医療技術を以ってしても即死と言う壁を越える事はできなかったのだ。
愛する家族は一瞬でいなくなった。その重さを、悲しみを双護だって理解している筈だ。
それを知っているのに、その選択を取る事を双護は本当に納得しているのか?
鏡治はもう一度問いかける。お前は真由ちゃんを本当に愛しているのかと。
彼は掠れた声で叫びを上げる。そして双護もまた――
「当たり前だぁあぁああああぁあああッッ!!」
ダークカブトの蹴りがガタックの頭部に向けて放たれる。
いきなりの攻撃にガタックは防御がおくれ、その角で受け止める事となった。
「ぐぅ!」
「もう御託はいい! うんざりだッ! お前と俺、勝つか負けるか。それだけだろう!」
その言葉にガタックは首をふる。
「そうやってまた目を背けるのかッ! ああ、ちがうぜ! お前は今俺に反論の蹴りをぶつけた、それは真由ちゃんを愛してる証拠じゃないのか?」
「何……ッ!」
「思い出してみろ、もっと根本的な……ああ、そうだ。お前が思い出すんだ。一から、真由ちゃんへの想いってヤツをッ!」
「……ッ!」
ダークカブトはガタックの攻撃をその身に受ける。
だが倒れなかった。そして思い出す、真由との日々を。
「憎いか、真由香さんがッ!? 愛しいか、真由ちゃんが! 怖いか? 真由ちゃんとこれから生きていくなかで今回みたいな事がいつ起きるか? 真由香さんの影に、存在に怯えて真由ちゃんを愛せなくなるのが怖いかッ!?」
拳と拳がぶつかり合い、激しいエネルギーを放出する。
「愛する事が怖いなら、愛さなければいいッ! そんな都合のいい、いい訳がきくかよッ!! 思い出してみろ、お前が愛した真由ちゃんは……お前が守ると決めた真由ちゃんとの思い出は、本当に恨みに飲み込まれるのかよ!!」
「ッ……!!」
真由…との……思い出?
『お兄ちゃんのお名前はなんて言うの?』
『ああ、双護って言うんだよ』
『そう…ご?』
『ああ、護りたいものが2つあった時、一つに迷う事無く2つ護れるようにって』
『すごいね…! かっこいいね…! すてきだね…!』
『フッ、なかなか分かってるな真由は。さすがは俺の……』
『?』
『俺の……』
なんで、何でコイツが死ななくて……俺の家族が死ぬんだよ。
代わりにお前が死ねば良かった。お前がいなくなれば良かったのに――ッッ!!
そんな感情がふと脳裏をよぎる。真由香を真由として接する様になったばかりの頃。
『おにい…ちゃん? どうして…泣いて…るの?』
『…何でもない』
『待っておにい…ちゃん』
『?』
「うぉおおおおおおッッ!!」
「グッッ!!! ――ッア……」
ガタックの拳が競り負け、ダークカブトの拳がガタックを吹き飛ばす。
どうしてだろう、一撃を打ち込む度になにか……
『おにいちゃん……かなしい事が…あったらボクが守ってあげるね…』
『え?』
バチンと、恨みの風船が弾けた気がした。
屈託のない笑顔。アイツとは違う、アイツには絶対にだせない笑顔――
『おにいちゃんが…2つ守るなら……真由はおにいちゃんを守るの!』
『真由……』
『だから真由と一緒に遊んでくれる?』
『あ、ああ…ああッ! 遊んでやるさ、いつだって……だって、お前は――』
俺の妹なんだから。
アイツはもう死んだ。もういない。
だったら、コイツは真由香じゃない。行き場をなくした俺と同じ存在だ。
寂しい思いなんてさせないさ。俺たちは家族になれる、強い絆できっと結ばれる筈だ!
俺は、真由を愛する! 愛しぬく!
俺は――
真由の兄貴になるんだ!!
「クッ! ぉおおおおお!!」
「ガァァァァッ!!」
無茶苦茶に我武者羅にガタックに拳を向ける、思い出す彼女の笑顔。
愛しぬくか……過去の自分を思い出して、少し笑ってしまった。
「ズァアアアアアアアアアアアアッッ!!」
ガタックの蹴りとダークカブトの蹴りが同時に炸裂するッ!
また、思い出がフラッシュバックしていく。
『樹里! 泣いてるのか!』
『お兄ちゃん……!』
『お前…泥だらけじゃないか! どうした!?』
『ううん! なんでもないのっ! 気にしないで……』
『ブスは泥でパックしないと駄目でしょ! キャハハハ!』
『えー、真由香ちゃん酷過ぎぃ! あははは!』
『いいの、いいの。どうせあいつ等の親はパパの犬なんだから! 何したっていいのー! きゃはは』
「ぐうぅぅううううッッ!!」
「うぉらぁァァアアアアアアアアアアアアア!!」
今度はガタックの蹴りが、ダークカブトの蹴りを打ち破り炸裂する。
よろけるダークカブトに発射されるバルカン砲!
ダークカブトは自らの眼前に迫ったバルカンに気づくが、反応が鈍りまともに受けてしまう。
その着弾の瞬間に……彼女が見えた。
『おにいちゃん……』
『ッ! どうした真由! 泥だらけじゃないか!』
『あのね……学校のおともだちが…お前は…ち――』
子供は残酷だ。差別と言うことを面白がるらしい。
真由は確かに、『普通』ではない。だからって……
『真由ッ! もういい! もう喋るな!』
『………』
『そんな事を言うヤツは俺がぶちのめしてやる! だからお前は心配するな、気にするな……』
『…うん』
涙を浮べて胸に顔を埋める彼女が、堪らなく愛しかった。
心が、冷たい心に光をくれる。彼女がいれば俺は生きていける。だから真由は、笑っていてくれ。
『お前は笑っていてくれ…お願いだ…お願いだから……』
『おにい……ちゃん?』
『お前は…俺の希望なんだ……全てを失って、得た……希望なんだよ』
「ッッ!」
彼女を想い、撃ったクナイガンの弾丸。
それはガタックバルカンの銃口に侵入し、そのまま爆発させる。
肩を押さえうずくまるガタックに、そのまま渾身の回し蹴りを決めた。
「ぅううううッッ!!」
どうして……
『真由香! お願いだ! もう樹里をいじめないでくれっ! 樹里を傷つけないでくれ!』
『きゃははは! じゃあもう一回土下座でもしてもらおっかなー!』
『土下座をすれば樹里には手を出さないって誓ってくれるのか!?』
『うーん、まあいいかな……って本当にやるんだ! きゃははは! だっさー!』
『これでいいだろッ! もう樹里には……手を出さないでくれッ!』
『んー…そんな約束したっけ? きゃはは!』
『ッッ!!』
「ラァアアアアアアアアアアアアアッッ!」
ガタックはよろけながらも、もう一方のバルカンでダークカブトを射撃する。両者は大きく吹き飛び、地面へと背をつけた。
ガタックもダークカブトも度重なる。キャストオフ、プットオン、クロックアップの使用で体力、精神力共に限界のはずだ。
だが彼らは戦う、その瞳の先にいる人間を直視するために。
「ぅぅぁあああああッッ!」
本当にどうして……
『真由、誕生日おめでとう』
『ありがとう…おにぃちゃん! ――わぁ! くまさんだぁ…!』
『おめでとうございます真由香さ……あのっ! 失礼しました! 真由さま!!』
『『『おめでとうございます!』』』
『ありがとう!』
『生まれてきてくれて……』
ありがとう
『おにいちゃん…いちご…あげるね』
『フッ、どうした? 真由はいちごが好きなんじゃないのか?』
『おにいちゃんは…もっとすきだから……』
『……そうか、ありがとう。じゃあメロンと俺はどっちが好きだ?』
『………考える』
『アハハハ! 勝てるといいんだが』
本当に、何で……どうして……
「「キャストオフッッ!!」」『『Cast Off』』
両者、おそらくコレが最後のキャストオフになるだろう。
ダークカブトとガタック、二人のライダーは限界を超えて走り出す。
ゴールの向こうで微笑む彼女。双護も、鏡治も。彼女にまた会う為に――
『双護、お前は私の人形なのよ。妹が大事なら私に服従しなさい!』
なあ、なんで……なんだよ。
「アアアアアアアアアッッ!!」
「クッ!」
ガタックカリバーが蒼き閃光を描きながらダークカブトの装甲に直撃する。
『おにいちゃん! ボク…おにいちゃんの事大好き!』
誰か教えてくれよ、なんで……
「ッ! はぁああッッ!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!」
しかしダークカブトはその攻撃を耐えていた。そして反撃の回し蹴りでカリバーをガタックの手から吹き飛ばす!
そしてさらにクナイガンでカウンターを決めた。紅き閃光がガタックの装甲を抉る!
『妹がゴミなら兄貴もゴミって事かな? きゃははは!』
なんで、なんで、なんで……
「ぬるいんだよぉおぉおおお!!」
「グッ…ぅぅ!」
ガタックは踏み込み、頭突きをダークカブトに決める。
ふらついたところを狙い、ガタックはクナイガンを弾いた。
両者の武器はおおきく離れ、地に落ちる。もう拾いにいく事はしない、必要もないッッ!!
『ボクね…ボク…おにいちゃんの妹で良かった…!』
なんで――ッッ!
「なんで、こんなに辛いんだよぉおぉおおおおぉッッ!!」
「!」
カブトの連撃がガタックを吹き飛ばす。
どうしようもなく、ただどうしようもなく――
悲しくて。
虚しくて。
辛かった。
とめどなく流れる涙はダークカブトの視界を奪う、しかし彼女の姿だけはハッキリと視えた。
笑っている彼女、怒っている彼女、泣いている彼女。今までいろんな彼女の表情を見てきた。
「双護……ォ!」
「……ッ」
少しでも気を抜けば両者はすぐに気を失うだろう。
だから、終わりにする。終わりにするのだ。
「俺は次の一撃を……真由ちゃんへの想いと共に放つ!」
「何……?」
「全てを……込めてッッ!!」
ガタックとダークカブトは互いに距離を空けて立ち止まる。
真由への想いを込める、つまり決着をつけると言う事だろう。
「……いいだろう! 俺も真由への想いを全て込めるッ!!」
そして、勝つ。
もう一度、二人は彼女を『み』た
「俺は真由ちゃんを――」『ONE』
「俺は真由を――」『ONE』
救う『TWO』
守る『TWO』
『『THREE』』
「ウォォオオオオォォォオォオオオオオッッ!!」
「ハァァァアアアアアアアッッ……―――ッ!!」
二人の瞳に映る少女は、微笑んでいた。
だって、二人が大好きだから。
「ライダァァァァアッッ! キィィィィクッッッ!!」
「ライダーキックッッ!!」
『『RIDER KICK』』
二人も、彼女が好きだから。
『鏡冶くん!』
『おにいちゃん!』
「「真由ゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!」」
激しい光が、彼らの瞳に映るのだった。
真由、彼女の為に全てを乗せた、全てを賭した一撃がぶつかり合う!!
そのエネルギーは、眩い光の奔流を放ちながら尚も拡大していった。
「ウオォオオォォォオォオオォォォオオッッ!!」
「ハァァアァァァァアアアアアァアァアッッ!!」
二人は更にエネルギーを込める。
この肉体が壊れようが構わないと言わんばかりにッッ!!
二人は全てを乗せていく! 二人は彼女の為に、全てをエネルギーに変えた。
勝利を、愛を望む彼らは互いに一歩も引かずぶつかり合うだけだ。
「―――ッ!」
ダークカブト、いや双護は泣いていた。何故なのかは彼にもわからない。
悲しいのか? 嬉しいのか? 自分ですら理解できない涙が溢れていた、彼女のへの想いは尚も力に変わり光となる。
「―――ッ!」
ガタック、いや鏡冶は笑っていた。何故なのかは彼にもわからない。
双護の真由への想い、その強大さがわかって嬉しいのか? 彼の真由を想う気持ちは力に変わり光となる。
「「ハァアアアアアアアァァアアアァアァアアアッッッ!!」」
真由の為に二人は全てをぶつける!
「ッ!」
「!!」
その時何か、大きな音が同時に聴こえて二人は見る。互いの角、そこに光の線が何本も現れたのを!
そう、ガタックが投げたカリバーが。ダークカブトのキックがそれぞれの角にヒビを入れていたのだ。
ライダーキックのエネルギーは角を経由して足へと送られる。つまりこのまま力を込めれば……
「ウォオオオオオオオッッ!」
「ハァァアアアアアアッッ!」
だが、二人はそんな事がなかったかのようにエネルギーの供給を続けた。
ただひたすらに、一心に真由への想いを込め続ける。ぶつかり合う脚と脚はまだ均衡を保っていた
だが――
終わりが訪れる。
「ッッ!!」
「………」
砕け散る音が聴こえた。
それが意味する事はたった一つ。戦いが、終わると言う事。
「俺の……勝ちだ」
「………」
ごめん。俺は、勝てなかったよ――
「俺の、負けだな」
先ほどの激闘が嘘の様に辺りは静まり返っていた。
今はもう辺りも明るく、雨の音だけが二人の耳に刺さっている。
「………」
倒れていたのは、ダークカブトだった。
角が砕け散っており、その横ではガタックが立っている。
「……どう言う事だ」
ダークカブトの変身が解かれ、双護は口を開く。
ガタックも変身を解除し、鏡冶へと姿を変えた。
そして、双護は納得がいかないと鏡冶を見る。自分が負けたからでない。鏡冶のキックが当たる瞬間、鏡冶は確かに呟いた。
『俺の、負けだな』
「ふざけるな、お前の勝ちだ。俺は負けたんだよ……」
「いや、違うぜそれは――」
「ッ?」
鏡冶は力なく座り込む。
まるで、何かに負けたように悔しそうにしながら。
「角が壊れたのはお前が真由ちゃんを想う力、エネルギーが強過ぎたからさ。だからダメージを受けていた角が耐えられなくなって壊れたんだよ……俺も、全力込めてたんだけどなぁ」
悔しいぜ……!
そう言って鏡冶はうつむいた、それを聞いて双護も腕で目を覆う。
「お前は、勝ったんだよ」
「………」
しばらく二人は無言でうつむいていた。
雨で良かった、おかげで涙が見えない。二人は切にそう思っただろう。
だが、鏡冶は意を決して立ち上がる。
「うし! じゃあ勝ったのは俺って事で……」
そして
「何ッ!?」
「勝ったのは俺だ、大人しく言う事聞けよ」
鏡冶は双護を担ぎ上げ、おんぶをするとそのまま歩き出した。
驚く双護だが、鏡冶は気にしない。
「どういう…つもりだ?」
「真由ちゃんに会ってもらう。お前の答えは、それから決めろ」
「っ…!」
双護はもう動けない、覚悟を決めるしかないのだった。
『ファイナルアタックライド』『ディディディディケイド!』
『Rider Jump』『RIDER KICK』
キックホッパーとディケイドの必殺技がぶつかり弾き合う、ディケイド達はブレインタワーに突撃をしかけていた。
前回は電磁バリアによって失敗に終わったが、今回は神也たちの強力もあってかバリアを突破し創英と赤い靴がいる最上階へと向かっていた。
無数のゼクトルーパー、実験によって生み出されたワームのサナギ体群と激しい戦闘を繰り広げながらディケイド達は最上階へと向かう。
途中ゼクトルーパー達を足止めし、ディケイドに道を譲る為に
仲間達は次々にディケイドと別れていった。そしてまた――
「兄さん!」
「どうしたっ!?」
「ここはボクが引き受ける」
ディケイドの前にキバが立つ。
もうキックホッパーの後ろにある階段から最上階に行けるのだ。
一刻一秒を争う状況、この提案は素直にのんでおくべきなのだろうが……
「ボクは大丈夫だから、さあ早く!」
「でも…!」
「ボクが兄さんに嘘ついた事あった?」
「それは……ッ!」
「でも兄さんはボクに嘘をついたよな、ウニは栗が進化した生き物だって。ボクがあれをドヤ顔でクラスメイトに披露した件でゆっくり話し合うか!?」
「あばよ! 気をつけてなッ!」『カメンライド・クウガ』『フォームライド・クウガ・ドラゴン!』
「………」
ドラゴンの跳躍力で一気にキックホッパーを飛び越え、階段を駆け上がっていくディケイド。
それを見てキバはやれやれと苦笑する。
「………」
反面、そんな彼を見向きもせずキックホッパーはディケイドを追う為、階段に向かう。
しかしそれを水流弾が邪魔する。無数のソレはキックホッパーを追尾し、衝撃を与えていった!
「お前はボクとダンスを踊るんだよ、キバット!」
『がってんッス! ウェイクアーップゥ!』
空間にヒビが入り音をたてて割れる。ウェイクアップ、キックホッパーの瞳に巨大な月が映った。
バッシャーフォームへと変わったキバは、そのままマグナムをキックホッパーに向けて発射した。
「………」『Clock Up』
クロックアップを発動するパンチホッパー。
だがウェイクアップによって強化された水流弾は確実にパンチホッパーを追尾し、どこまでも追いかける。
とはいえ、クロックアップにスピードで勝つことは絶対にできない。このままならキバはいずれ負けるだろう、だがそれはキバ自身が分かっている事。
「キバット、バッシャーくん! アレで行こう! 一気に決めるよ!」
『りょーかいッス!』『了解だよ!』
「いっけぇええええええええええ!!」
キバが思い切り地面を叩く!
すると、地面がまるで水面のように揺らめき、一気に大量の水が現れて辺りを湖に変えたではないか。
「!」
キバは水面に立っているがキックホッパーはそうではない、腰まで水に浸かってしまうのだ。
クロックアップも水の抵抗力で少し速度が落ち、水流弾を上手く防げない。
そして、月の色が美しい緑に染まる!
『ウェイクアップバッシャーっス!』
「ぐうううぅうううぅぅッッ!」
想像以上に力を消費する様だ。
キバは長時間の使用が無理と悟ると、決着をつける為バッシャーマグナムをキバットに噛ませる。
『バッシャーバイトっス!』
キバを中心に水の竜巻が巻き起こる。
そしてその上部では巨大な水流弾が形成されていった。キバはそれをキックホッパーに向けて――発射するッッ!!
水に拘束されているキックホッパーは、ライダージャンプを発動し回避を試みるが――
「!」
水流弾はその軌道を変えてキックホッパーに向かっていった。
皮肉にも空中では身動きがとれない、キックホッパーはそのまま水流弾を真正面から受けるのだった。
「よしっ!」
キバはウェイクアップを解除し膝をつく、同時にステンドグラスの様に変質したキックホッパーが落ちてきた。
キバはそれにデコピンと言うやる気のない一撃を加える。すると、キックホッパーの外装は粉々に砕けて――
ホッパーゼクターと洗脳されていたであろう人が地面へと倒れるのだった。
『やりましたね亘さんーッ!』
「ああ、そうだねサンキュー、キバット。バッシャーくんもありがとう、助かったよ」
『またいつでも呼んで下さいね!』
そう言ってバッシャーマグナムはホイッスルに戻ると、キバのベルトへ装填される。
キバは洗脳されていた人を安全な場所へ移動させ、ディケイドを追う為に階段に向かう。
『――ロン』
「……ん?」
『どうしたんスか?』
キバはそこで足を止めると、辺りを見回す。
別におかしいところはない。どうしたのだろうか? キバットは不思議そうに問いかけた。
「何か今、聞えなかった?」
『ほえ?』
「ッッッ!!!!」
その時だった。
突風、いや暴風と言ってもいいだろうか? 物凄い風がキバの体を吹き飛ばす!
一瞬の出来事にキバは何も対処できずに吹き飛ばされてしまった。そのまま風に呑まれてキバは一階下のホールまで移動してしまう。
「いっつッ!!」
「亘くん!?」
ゼクトルーパー達を倒し、合流しようとしたメンバー達がキバに気づく。
どうしたのか一同が不思議に思うと、階段の上からその音声が聞えてきた。
『ヒート・トリガー!』
「「「「!!」」」」
電子音と共に階段を下りてきたのはダブル、ゼノンとフルーラだ。ダブルはトリガーマグナムをクルクルと回しながら笑っている。
相変わらず何を考えているのか分からないが、変身して現れる時点で何か嫌な予感がする。と言うか、嫌な予感しかしない。
ダブルはそのまま一同を見回すともう一度、今度は鼻で笑った。
「やあ、久しぶりだね。皆ボクに会いたかったんじゃないかい?」
「ん? いや、別にそんな事は――」
『もう! 照れ屋さん! そんな貴方には銃弾をプレゼント!』
「…は?」
そう言ってダブルはブレイドに向けてトリガーマグナムを発射する。
「うっぉおおおッ!? あぶッ! あぶねーっ!!」
ブレイドの後ろで炎の弾丸が破裂する。避けなければ――
『テヘっ☆手が滑っちゃった!』
「嘘つけぇええッ! 弾丸プレゼントとかほざいてたろうがッ!」
『嘘じゃないもーん! ねぇゼノン?』
「ああ、そうともこの天使が嘘つくわけないだろう? ちょっと手が引き金に行っただけだもんねぇ?」
「いや、それを撃ったって言うんだよッッ!!」
何か、何か凄いうざいポーズをとりながらダブルはブレイドを嘲笑していた。
当然怒るブレイドなのだが、ふとカリスが声をあげる!
「お! おい椿!」
「あん? 何だよ咲夜!」
「お前…ッ!」
「あ? 用がねぇな…ら……」
ブレイドはふと、違和感に気づく。
何か熱い、下の方が凄く熱い。落ち着け椿、そう言うときは冷静に原因を調査するもんだろ?
じゃあ簡単だよ。何が起こっているのかその目で確かめればいいんじゃないかな?
と、言う事で。ブレイドはその方向を目で追ってみることにした。何か、こう――
「………」
「つ、椿…?」
「――てる」
「え?」
「おしりが燃えてるゥぅうぅうううううううううううッッ!!」
「ぎゃあああああああああああ!」
ブレイドのお尻が炎上していた!!
走りまわるブレイド! 逃げ惑うライダー達! 笑うダブル! 尚も燃えさかるブレイドのお尻ッッ!!
Let's、キャンプファイアー!!
「アーハハハハ! 見てごらんフルーラ、あれが尻火系男子だよ!」
『うーん、やっぱりファッションは奥が深いものね!』
そう言ってケラケラとダブルは笑う。
しかし、彼らが攻撃を仕掛けてきたと言う事は……
「そ、そこを…通してくれないか?」
「それは、できないねぇ?」
この人数を前にしてもダブルは余裕を崩さない。
正直、いくらダブルだろうとこの人数を相手にして全員を抑えられるとは思えない。と言う事は何か策があると言う事なんだろう。
ダブル、ゼノンとフルーラは自分達よりかなり上位にいる存在。
電王を気にかけていたところを見るにライダーとしては一般的だとして、どんな手を使ってくるか分からない。
結局クウガたちは結局動けない状況に陥ってしまった。
「聡明な判断ですね」
「!!」
クウガ達がダブルを突破する事を諦めた時、ゼノンとフルーラではない別の声が聞こえた。
それでクウガ達は確信する。ダブルにはまだ仲間がいるという事なんだと。
「どうしても、通してくれないのかッ?」
もちろん、黙っているだけなんてできるわけも無い。ディケイドが危ないのだから。
しかし相変わらずダブルは笑っていた。銃をクウガ達に向け、芝居がかった声のトーンで喋りだす。
「主役の登場を待たずして始めるクライマックスはないだろう!? フフッ!!」
『安心してくれないかしら? 危なくなったら通してあげるから……ね?』
悔しいが、従うしかないのかもしれない。
クウガ達は構えを保ったまま、その場に立ち尽くすのだった。
「真由ちゃん……大丈夫?」
「ぅ……!」
こくりと真由は頷く。
彼女は今、リコンファームのカプセルの中にいた。
もし創英が赤い靴を発動させれば、すぐにリコンファームを起動できるようにと……
「………」
真由の表情は暗い、結局兄もいないし鏡冶もどこかに行ってしまった。
やはり不安な気持ちが強いと言う事だろう、不安そうに有美子や他のメンバーを見やる。
「大丈夫よ真由ちゃん、そんなに固くならないで」
「うん! 安心してよ! 真由ちゃんはしっかり守っちゃいますから!」
有美子の言葉に真由は笑みを浮かべる。
護衛に来ていた友里も静かに微笑んで真由に微笑みかけた。
頷く真由。最後にもう一度だけ、不安を殺す為に家族の姿を思い浮かべる
「おにい――」
そして真由が口を開いたとき、その姿が見えた。
「………え?」
「お、遅くなってゴメンっ…!!」
「……っ!!」
真由の表情が変わる。そこには鏡冶と、兄がいるではないか!
「きょ、鏡治!? アンタ何やって――ッ!」
「ほれっ! 双護!」
「………ッ」
鏡冶は双護を降ろすと、地面へ倒れ込む。
激闘の後に双護を担いでしばらく歩いたのだ、もう立つことすらできないだろう。
有美子の問いかけにも、適当に相槌をうつだけの様だ。
「おにいちゃん……」
「………ッ」
「おにいちゃんっ!」
真由はカプセルから飛び出ると、そのまま双護に飛びついて泣いた。
彼女のぬくもりが双護の体に伝わる。小さい体だ、より儚げに見える。
あの時、何を命に代えても守ると誓った彼女の姿だ。
「あいだがっだよぉぉ!」
「真由……ッ」
真由は双護を強く抱きしめるが、双護は複雑そうな表情でそれを見ていた。
正直、今の自分に彼女を抱きしめる資格があるのだろうか?
彼女はずっと自分を信じてくれた。だが、自分はどうなんだ?
恨みの感情をあらわにして彼女を捨てようとした自分に、彼女を愛しぬけるかどうか迷ってしまった自分に――
「双護ォ!」
「!!」
鏡冶はもう一度、ハッキリと双護に問いかけた。
「お前の答えは……どっちなんだよッ!!」
「!!」
「ああそうさ、簡単な話だろうがッ!!」
俺の…答え……?
「真由ちゃんを抱きしめるか、そうじゃないか。それだけだろッッ!!」
「!」
『双護ッッ!』
鬼の様な形相で真由香が俺を睨みつけている。
俺もアイツには最高の憎悪をぶつけてやる、ああ最悪の気分だ……
『―――』
天使の様な形相で真由が俺に微笑みかけてくる。
俺も真由には最高の笑顔で微笑んで笑う。真由は……
『双護ッ!』
真由といた時間は…とても、楽しかった。
『――ちゃん!』
家族を失った俺と、全てを無くした真由。
手を差し伸べたとき、俺は後悔はしてなかった筈だ。
『双――!』
最初こそ真由香を重ねてしまう時はあったが、すぐに理解する。
真由香と真由は違うと、たとえ外見は同じでも違うと分かるんだ!
『――にいちゃん!』
真由がいれば、俺の世界は幸せだった!
『―――!』
どんなに誰かを恨んでも、どんなに誰かを憎んでも樹里は……父さんも母さんも帰って来ない。
でも俺はここにいる。真由はここにいるッ! 真由は……真由も俺も生きているんだ!!
『おにいちゃん!』
俺は多くの物を失った。だが、得たものもある。
ただ一緒にいるだけで良かった。
ただ一緒に笑ってくれる人がいるだけで幸せだった。
彼女は、俺の恨みを殺してくれた。
出会った瞬間に、奇跡は始まっていたのかもしれない。
「真由……ごめん」
「うぅぅ……!!」
どれだけ自分は迷ったんだろう。
だけど、たったこれだけ……この間だけ彼女に会っただけで――
心に光が灯った。
「ごめん、ごめんなぁ真由……ッ!」
「おにいぢゃぁぁぁあぁぁああんっ!」
二人は強く抱きしめあって泣いた。
後悔、懺悔、愛情、全てを抱いて、彼は泣いた。
「俺が……俺が悪かったんだ! 俺がつまらない事で迷ったからッ! お前を見てやれなかったから…ッ!!」
はじめから彼女の手だけを握っていれば良かった。
はじめから彼女だけを見ていたら良かった。
それだけだった。
「ボクおにいぢゃんに嫌われぢゃっだのかと思ったよぉぉおお!」
「そんな事ないっ……そんな事…あるもんか」
真由香のノイズが消えていく。
目の前にいるのは家族だ。大切な、大事な、たった一人の家族。
「俺がっ、悪かった…許してくれっ! 許してくれぇ……!!」
「………」
どんなに謝っても許すしてもらえるとは思えない。
自分のエゴで真由を殺そうとまで考えた自分が、今さらなにを――
「真由ちゃん……」
「!」
だが、鏡冶は真由と双護の肩を持って強く言う。
彼の瞳には、一片の迷いすらない。強く澄み渡っていた。
「双護は、真由ちゃんを大切に思うあまりちょっと真由ちゃんにとって酷い事をしようとしたんだ。だけど、お願いだ……どうか、許してやってほしい」
「…? うん、わかったぁ! もう酷い事しちゃ駄目だよぉ! おにいちゃん!!」
「ごめんッ、ごめんな真由……!」
二人は泣いた、全ての感情を込めて。
真由は、誰にも代われない唯一で特別な存在なのだから。
「叔母さん、リコンファーム使うの…少しだけ待ってくれない?」
おば……さん……だと?
有美子はゆっくりと口を動かす、言葉を出したわけではない。しかし鏡治はしっかりと頷いた。
「おおおおおおねえさん、リリリコココン――」
顔面を蒼白させた鏡治を見るに、いつもこんな感じなんだろう。
鏡治はふらふらと出口へ向かっていく。
「でも赤い靴が発動してしまえば、使わざるをえないわよ」
「それでも、待ってほしい。ああそうさ、赤い靴は俺が破壊する!」
そう言ってしっかりと笑う鏡治。有美子もまたそれを聞くと、ニヤリと笑って甥の背中を叩いた。
痛がる鏡冶を見てさらに笑うと今度は背中を優しく押す。
「行っておいで。んで、世界を守ってちょうだいね。正義の味方さん!」
「ははっ、俺なんかまだまだだよ」
そう言って、鏡治は走り出した。
有美子は微笑むと、リコンファームのスイッチを切ったのだった。
「ガタックゼクターッ!」
『お前、動けるのかよ』
アレほどの激闘があったにも関わらず、まだ鏡治は戦おうと言うのか? 思わずガタックゼクターも聞き返す。
彼の瞳に映る鏡治はしっかりと笑っていた。面白い、ガタックゼクターは思う。
瞳を見るだけで鏡治の答えが分かるようだ。
「キャストオフは最小で抑えて、残りを全部クロックアップにまわす。ああ、そうさ。この新意鏡冶、ここで止まる訳にはいかねぇんだよ!」
そう言って鏡冶はタワーを見る、頂上では司達が戦っているに違いない。
早く加勢しなければ。鏡治が決意した時――
「鏡冶!」
「!」
声がして振り向くと、そこには双護が立っていた。彼もまた曇りのない目で鏡冶をジッと見る。
ああ、そうだ。答えはもう分かっている。彼が何を言おうとしているのか鏡治は理解した。
「俺も行く。いや、いかなきゃならないんだ」
「…ッ、動けるのかよ?」
少し意地悪に笑ってみせる鏡治。
反面、双護はいつもの様に笑う。いつもの彼だ。『天王路』双護、彼は笑っているのだ。
「フッ、キャストオフを最小で抑えて残りをクロックアップにまわす。俺は、ここで止まる訳にはいかない」
その言葉に鏡冶は笑う。成る程、確かに止まれないな。
そこで気づいた、双護の頬がはれている。どうしたのか聞く鏡冶に、双護は笑みを浮かべて答えた。
「フッ、真由に思い切り殴ってもらった」
「えっ!?」
目を丸くする鏡冶に、双護は言った。
もう二度と見失わないように、もう二度と迷わない様に。もう二度と………道を間違えないように。
「なかなか強烈な一撃だったよ、流石は俺の妹だ。そう思わないか?」
「ははは! いいねぇ! 俺も欲しいよ妹が!」
二人は頷いて天に手をかざす、そこへ二体のゼクターが契約者の下へと飛翔する。
青き閃光を描くのはガタックゼクター! そして、まるで太陽と重なる様に飛翔するカブトゼクター!!
『お前、今恨みじゃなくて愛情でオレを呼んだな?』
「………」
カブトゼクターが初めて双護に向かって口を開いた。
それはつまり――
「合格か? カブトゼクター?」
『何があったか知らねぇけど、合格も合格よ。オレが家族愛に弱いの知ってた?』
「ふっ、それはよかった」
しかしカブトゼクターは不思議だと言う、分からないと双護の周りを飛び回る。
『今まで色んな人間をオレは見てきたつもりさ。でもその全てが何かを決めて、俺の力を欲した連中ばかりだった』
黒か白、はっきりと分かれてる連中ばかり。
『だけれど、正直お前はグレーに見えた。どれが正しくてどれが間違ってるのか分からない。ただ、何となくお前を始めてみたとき、人間ってヤツがどういった経緯で黒か白に染まるのか……見てみたくなったのよ』
カブトゼクターは双護の周りをちょろちょろと飛び回る。
彼を確かめる様に。
『お前は二転、三転と迷って白と黒の狭間を行った。今、お前の色は何色なんだ?』
真由を
そのとき、本当に彼は今の色を保ち続けるのか? それをカブトゼクターは知りたかった。
今の彼は、白色なのか?
それとも黒色で割り切っているのか? そして、双護は迷わず答えた。
「ゴールデンだ」
『……本当、お前は不思議な人間だよ』
『天王路双護だけじゃないさそれは』
『んー?』
ガタックゼクターは人間と言うモノを考えていた。
愚かで哀れな生き物かと思えば、そうでないと思ったり。やはりそうだと思ったり。
『人間は言葉じゃ表せない何かを持ってる。それが俺は興味深いと思った、もっと人間ってヤツを観察したいと思ったね』
『その何かってヤツ、なんとなーくだけどオレも分かる気がするよ』
ガタックゼクターは頷く様に体を動かすと、鏡冶の手に収まった。
『コイツは馬鹿だ、だけど愚かじゃない。創英は人間を見限った、それは俺達も。だが辛抱強くなってみたらなかなか面白い』
「どういう事だよッ! もういいや! いくぜ、相棒!」
『はいはい、しっかりやれよ』
「ったりめぇだ! 変身んんんんッ!」『HENSHIN』
ガタックに変わる鏡冶。
カブトゼクターはもう一度笑って、双護の方へと体を向けた。
『ふぅん、まあオレも創英の考えは分からなくはなかったけど。めんどくさいのよね、何かそう言うの』
「人間は愚かな生き物だと言う事は分かっているさ、俺もそうだ。だが愚かでも俺達は生きている。家族の為……だとかな」
『その家族をお前は殺そうと考えた。だけど今、お前はその家族を守る為に戦おうとしてる。ああ、不思議だねぇ』
「力を貸してくれカブトゼクター。俺にはお前の力が必要なんだ、真由を……皆を助けるためにッ!」
『別人みたい変わるな人間ってのは。まあ、成る程……確かに退屈しなさそうだ』
そう言ってカブトゼクターは双護の手に収まる。
「助かる…」
『いやいや、今度は間違えんなよ相棒! もっと気楽にいこうぜ?』
調子のいいヤツだ。双護は笑ってカブトゼクターを装填した。
「変身!」『HENSHIN』
双護は愛情の力を込めてカブトに変わる。恨みの力ではない、愛の為に。
カブトの目が黄色から青に変わっていた、それはまさしく変化の証明。
雨は不思議と止んでいる。相変わらず空はよどんでいる。しかし太陽は赤く輝いていた。まるで、彼の姿の様に――
「さあ、いくぜ!」
「フッ! ああ!!」
『『Cast Off』』
一方……
「ぐわぁああああああああああああッッ!!」
ディケイドの体にザビーの必殺技が炸裂する。
既にアクセルとマッハは消費していた為に、この戦いはディケイドが完全に不利なものだった。
ザビーの後ろには赤い靴が設置おり、既にチャージを始めている。
名前の割にはシンプルなデザインの機械。そこから、あと数分もしない内に洗脳電波が放たれるのだろう。
その前になんとしても破壊しなければならないが――
「クッ!」
カードに手を伸ばそうとするが、ザビーはそれを許さなかった。
クロックアップから何とか隙を見出そうとするも、猛攻がそれを阻止する。
『Rider Sting』
「ッ!! アアアアアアアアアアアア!」
またもザビーの必殺技。
ここまでの力を出せるのは創英とて負けられないと思っているからに他ならない。
だがそれを許す訳には――ッ!
「いかないんだよぉおッ!」
ライドブッカーソードを振り回す。
だがソレは虚しく空を斬るだけで、すぐにザビーの攻撃がディケイドを吹き飛ばした。
「終わりだ、ライダースティング!」『Rider Sting』
ザビーはディケイドに止めを刺すため、走り出す。
(そろそろヤバイかな…? いや、最悪もう死んでるかも……)
限界、タイムアップだ。ダブルはため息をついて銃を下ろす。
それに気づいたクウガ達が階段に向かって足を動かした時。
「!」
それよりも先に2つの影が階段を駆け上がっていった。
まさに一瞬。赤と青のソレを見て、ダブルは変身を解いて笑うのだった。
「ッ!!」
「!」
『『Clock Over』』
ザビーの攻撃はディケイドに届く事は無かった。
クナイとカリバーがそれを弾いたからだ。そう、つまり――
「貴様らぁッ!」
「鏡治!! それに…!!」
ガタックとそこにいたのは、紛れもないカブト。
愛の力で変身した彼のカラーリングは、本来の青い目に赤い体。
紛れも無い、仮面ライダーカブト!
「もう、決めたのかよ? 進む道は」
「司……気づいていたのか」
「いや、何となく」
「そうか……そうだな。安心してくれ、俺はもう道を間違えないッ! 絶対にだ」
ディケイドは頷く、そしてカブトが差し出した手をしっかりと握る。
「創英さん、悪いけどッアンタの野望もここまでだぁぁッ!」
「なにっ!」
ガタックの投げたカリバーが、赤い靴に向かって飛んで行く。
しかしバリアが張ってあるのか、カリバーは赤い靴には届かない!!
「しゃらくせぇぇぇぇぇええええッッ!」『ONE』『TWO』『THREE』
『RIDER KICK』
ガタックの光を纏った蹴りがカリバーに直撃し、そのままシールドをぶち破る!
カリバーは深く赤い靴に突き刺さり、そのまま赤い靴を破壊させた。
「ば、馬鹿なッ!」
こんなに簡単に破壊されるのかッ!?
あれだけ時間をかけ、あれだけ想いを込めたのに! こんな簡単にッッ!!
それはまるで感情の様。どれだけ恨んでいたと思っていても、たった一瞬笑顔を見るだけでそれは間違いだったと理解できる様に。
「許さんぞぉおおぉぉおッッ!!」
ザビーはクロックアップを発動してディケイド達を狙う!
ガタックもクロックアップを発動して対抗しようとするが、流石に連続しては無理がある。
すぐに解除され、ザビーの連撃を受ける事となる。
「双護――ッ! 人間は生きている内で必ず道に迷う生き物だと俺は思う!」
ガタックを助けるために動き出すカブト、そんな彼にディケイドは声をかけた。
「司……」
ディケイドはそのカードを手にする。そう、開放されたカブトのカードを!
「だがな、必ず人間は自分が進むべき道を見つける! でもそれは一人じゃ無理かもしれない。誰かに助けられたり、誰かに教えられたりしながら。でも必ず見つけるのさ」『ファイナルフォームライド』
仮面の下で、彼は笑っていた気がする。
「それが、天の道ってやつだろッ!」『カカカカブト!』
「天の道か、悪くないッ!」
ディケイドとカブトは笑い合い、拳を重ねあった。
瞬時、カブトの体が光り輝き、巨大なカブトゼクターに変わる。カブトデュアルゼクター!
「さあ、俺は破壊者だ。だから破壊するぜ。迷いをな!!」
ディケイドはデュアルゼクターに備えられている
三つのボタンの中から一番目を押した。すると角が光り輝き、電子音が響く。
『ONE』『ALL・Clock Up』
オールクロックアップ。
クロックアップを発動できない筈のディケイド、そして既に使い果たしてしまったガタック。
二人の速度がクロックアップ中のザビーと同速に変わる。
それがデュアルゼクター一番目の能力。仲間と認識した者に、クロックアップを発動させる力!
「なんだとっ!」
「ウラァッ!!」
向かってきたザビーをディケイドは殴り飛ばす、そして素早く金色のカードを発動させた。
「全てを、終わりにしようッ!」
『ファイナルアタックライド』『カカカカブト!』
猛スピードでデュアルゼクターは、上空へと飛んで行き見えなくなってしまった。
そして同時にディケイドの真下、地面にカブトの紋章が浮かび上がる。
「ハァァアア……ッ!!」
ディケイドはその中で、構えをとってゆっくりと息を吐く。
徐々に溢れていく光。相当の力を込めているのだろう、見ればすぐに分かる。
「ふざけるなぁぁあああッッ!」
ザビーは必殺技を発動させて、ディケイドに突っ込んでいく!
何か大技が発動する前に殺すため、ザビーは走り出した。
ガタックはそれを止めようと自らも走り出すが、どう考えても間に合わない!
ザビーはディケイドに触れ――
「『ヤァアアアアアアアアアアアアッッ!!』」
「があああああああああああああああ!!」
「!」
だが、ザビーが地面に浮かび上がったカブトの紋章に触れた瞬間、上空からデュアルゼクターが突進してきてザビーを弾き飛ばした!
大技なんて無い、向こうから仕掛けさせるのがこの技の特徴である。
「カウン……ターだった…の……ッか!」
ザビーの変身が解かれ、創英は気を失う。
赤い靴も完全に破壊されており、創英の野望は完全に終わりを迎えたのだった。
その後、創英自らの手によって監禁されていた有美子の夫や研究員達も無事に救出された。
そして創英は法によって公平に裁かれる事となったらしい。刑務所へ送られる際、彼は記者達に告げたと言う。
『私は人間であるがゆえに人間を見誤った。絶望と憎悪。後ろへ下がり続けていた私が、愛と希望を背負った人間。それが例え少年であったとしても、前へ進み続けた人間に勝てる訳などなかったのだ』
彼はこの戦いで何を思い、考えたのだろう。それは彼以外誰にも分からない。
その後、彼は何かを悟ったようになり落ち着きを取り戻したと言う。暴れることもなく、礼儀正しい態度を守っていたらしい。
未来の話だが、彼は出所の瞬間まで真面目に過ごしていたと言う。彼はその中で進むべき道を見つけられたのだろうか?
あっけない最後だろう、だがこれは終わりではない。始まりなのだ
「創英は裁判の後に、刑に処せられるらしいわよ」
「彼のやった事は間違っているが僕らに非がない訳ではない。今回の問題で、僕達自信が変わらなければならないのだろう」
有美子と夫の陸矢は連日報道されている創英のニュースを見て、切にそう思う。
さすがに今回の事で過ちに気づいた人間は、すこしでも環境や自分達の愚かさを正そうとしているようだった。
カプセルから降りる人達もちらほらと出てきている。
「案外皮肉なものね……」
有美子はため息をつく、創英が犠牲となったことで創英の野望は叶おうとしているとは。
だがまあこれから少しづつこの世界はよくなっていくのだろうと、二人は安心したように笑った。
しかし気になる事もある。
「ところで、鏡冶。あんた皆にお別れ言ったの?」
「え…あぁ…うーん」
「言ってないのかい?」
ソファに座っていた鏡冶は複雑そうに頷く。
そう、もう司達がこの世界にいる理由もない。
そして今日は学校が世界移動を行う日、簡単に言えばお別れの日なのだ。
「ああ、そうなんだ。どうにもそう言うのは苦手で……」
鏡冶はそう言って自分の部屋に戻ろうとする、いつもの彼より明らかにテンションが低い。
どうやら彼は今日、初めての失恋を味わうようだ。
「………」
「………」
有美子と陸矢は少し寂しげに頷きあい、鏡冶を呼び止めた。
不思議そうに目を丸くする鏡冶に二人は告げる。
「鏡冶、あんたはもう立派に一人で立ってんのよね。今回の事で本当に分かったわ」
「だから鏡冶くん、君には後悔しない生き方をしてほしい」
今、鏡治が本当にしたい事は何か? 二人は問いかける。
いつかこんな日がくるとどこかで思っていた。そして知っていた、もう彼は自分の手を離れ走り出している事も。
「え……?」
扉が勢い良く開く音が聞えて、鏡冶はそちらに視線を移す。
すると、そこにいたのは……
「きょうずぅいいい! サソードタクシー営業スタート!」
「……は?」
仮面ライダーサソード、つまり神也が変身した状態で立っていたのだ。
「ッ! 世界移動か」
学校の周りが光に包まれて景色が崩れていく。
世界が移動していくその様を、双護たちはクラスから見ていた。
「結局、鏡冶くんとはお別れをいえなかったね」
翼の言葉に皆はうつむく、今回は鏡冶や有美子にいろいろと助けられた。
できればちゃんとお別れを言いたかったが、どうやら向こうもいろいろと忙しいらしい。
国のお偉いさん達に質問やらなんだのと、とても抜け出せる状態ではないようだ。
「………」
「っ! 真由?」
ふいに、真由が双護の手を握る。
彼女にしてはそれなりに力強いものだった。そして、それより驚いたのは……
「真由……」
真由は泣いていた。
寂しそうなその顔、彼女の淡く、自覚すらなかったろう初恋は終わりを告げたのだ。
尤もそれは恋と言うほどのものではないかもしれない。それでも彼女にとって、鏡冶は少しだけ特別な存在だったのかもしれない
「………」
皆そんな真由につられて涙を浮かべる。
世界が変わればもう、鏡治とは――
「?」
そんな中、葵は翼が少し驚いた様に笑みを浮かべている事に気づいた。
翼も葵に気づくと後ろを指差す。
(後ろ?)
葵は不思議に思いながらも後ろを振り向いた。
何があると言うのだろう、この状況で驚くなんてよっぽどの事じゃないと……
「!」
そこにはイマジン達がいる訳だが、
なにやらプラカードを持ちながら複雑そうに話し合っていた、どうやら出るタイミングが分からないのだろう。
そこで葵もその事に気づいた。
『うそ!』
葵は小さく翼に向かって呟く。
翼は頷くとわざとらしく咳払いをした。翼の方を振り向く司達、そして見えた。
そいつが立っているのを。
「え?」
「あ…えと……」
完全に出すタイミングを迷走したイマジン特性プラカード。
そこには『どっきり』と書かれた一文が。そしてイマジン達の後ろで気まずそうに立っていたのは――
「お前ッ!!」
双護ですらつい大声で叫んでしまう。
それに気づいた真由は涙を拭いて、後ろを振り向く。
「あー…あのっ、そのなんて言うか…ああ、そうだ! お手伝いしたくてさ! た、大変ご迷惑をおかけするかもしれないのですが……よ、よろしく!」
「!!」
真由は気づいた時にはもう走り出していた。涙、笑顔、いろいろな物を混ぜて走る。
そして思い切り彼に抱きついた。いや、飛びついた。まさにタックルとも言えるだろう真由の突進に、彼はうめき声を上げて苦しそうに笑う。
「だはは、よろしくな真由ちゃん!」
「うん! うんっ! よろしくね! 鏡治くん!」
涙で顔をふやけさせながらも、真由は新メンバーを快く迎え入れたのだった。
こうして、新しい仲間がクラスに増えたのだった。
そして、物語は新たな文を刻み付ける。
どこともつかぬ書斎、いや図書館のような場所に男はやってきていた。
それなりに歳はいっているだろうか? 眼鏡にフェルト帽という身なり。男は椅子に座っている女を見つけると声をかける。
「新意鏡冶が新たに加わったか……」
「正義に燃える男か、そなたも昔はそうだったのではないか?」
皮肉めいた女の言葉に、男は少しだけ眉を動かす。
だがそれだけだった。男は女の言葉を受け流すと、また視線を『その本』に向ける。
「彼の影響力はどの程度だ?」
「あー、ガタックはですねぇ……」
女の代わりに、後ろのソファで座っていたゼノンが口をひらく。
隣では相変わらずフルーラが、彼の腕に自分の腕を絡ませて笑っていた。
よく飽きないな、男は切に思う。いやこれが愛なのか? 男は余計な考えを捨てると、ゼノンの話に集中する。
「ガタックは鮭弁当でいうならオマケのから揚げってところかな。別に問題ないですよ、世界が彼の埋め合わせをする程の重要人物じゃない」
増え続ければ鮭弁当なのにから揚げの方が多くなって、と言う矛盾が発生するが、一人くらいは問題ないと。
その言葉に男は頷き、同時に野上良太郎に視線を移す。
鏡冶を中心にじゃれ合っている司たち、その中で彼はとても楽しそうだった。
「だが、彼はそうではない。だろう?」
ゼノンはニヤリと笑って頷いた。
「野上良太郎は、鮭弁当で言う
「最悪ですね、鮭は神が生んだ食べ物ですから」
ゼノンの言葉に答えたのは、男でも女でもフルーラでもない。
大量の本に囲まれて姿は見えないがそれは会話に参加していた。今、この書斎には5の生ある者がいるのだ。
男と女、ゼノンとフルーラ。そして彼。
「次の世界で良太郎が変身すれば、主軸である電王の世界は彼を切り捨てます。関わりすぎたんですよ電王は。世界は彼の帰還をまってくれない、新たな『電王』を主役として追加するんです」
新しい鮭。
まさにNEWって所かな。ゼノンはそう言って笑う。
「ああ、でも勘違いしないでね。ボクらはちゃんと世界に戻る鍵を渡したんですけど」
「良太郎とハナはディケイド側につくのかしら?」
野上良太郎とハナ。男は複雑な表情を浮かべ、二人を見る。
いくら数々の激闘を繰り広げたとは言えまだ子供だ、若干の罪悪感を男は感じていた。
しかしそれは女達の嘲笑でかき消される。
「まあ尤も電王が消えればディケイド達も相当困る事になるんだけれどね」
クスクスと笑うゼノン達、男は少しため息をついて椅子に腰掛けた。
実に、正論だと。
「申し訳ないとは思うがコチラとしては電王の力を失うのは痛い。彼ら、そして司は稀に見る素材だからな」
「このディケイドとか言うヤツでしょうか? フフフ、成る程。確かに異様な力を持っている様だ」
女は手に持っていた紅茶を置いて、司をまじまじと見る。
ディケイド、それが彼らの切り札。そう、『ディケイド』が切り札なのであって……
聖司。選ばれたのは幸か、それとも? 想像しただけで笑えてくる。
「そなたも、確かコレには関わっているのではなかったか? ゼネ――」
「その名は捨てた。今の私に名前はない」
「これは失礼しました、ククク…」
女は少し小馬鹿にしたように笑い、男に謝罪した。
いや訂正しよう。女は謝罪の言葉を述べただけであって、誤る気などさらさら無かった。
むしろお礼を言ってほしいくらいだ、不快と言う感情を呼び出してあげたのだからと。
「名前などに意味はない。そう思わないか?」
「成る程、成る程。確かにそうだ」
だが名前が無いと言うのはいろいろと不便なモノ、女は男に新しい名前を求める。
尤も女にとってはどんな名前をつけるのかが少し気になるだけで、男に名前がないと言う事はどうでもいいのだが。
呼ぶだけなら、『おい』だの『そこの』だの種類には困らない。
「そうだな……」
そんな女の心情を悟ってかどうかは知らないが、男は適当に周りを見回す。
無数の本が存在している中で適当に一冊の本を手に取った。男はその本を適当にめくり、一人の登場人物を見つける。
これと同じでいい、男はそう言って女に新たなる名前を告げた。
「適当な男だ。では、聞こうか? そちらはどうなのだ、"ナルタキ"」
「やつ等は協定議会を予定より早く行うつもりだ。コチラとしても一秒でも多くの正義を生み出さなくては……」
「正義の定義とは個人によって異なるモノだが、まあいいだろう。そなたが私を召喚した時点で、私はそなたに協力しなければならない」
ナルタキが頷こうとした時、本の影から声が聞こえてくる。
「ナルタキさん気をつけたほうがいい。彼女は協力はすると言ってますが、邪魔しないとは言っていません」
その言葉にゼノンとフルーラは声を出して笑う。
確かにそうだ、そう言う人だと二人は自らの主人をあざ笑った。
ナルタキはため息をつく。女を見てみれば何食わぬ顔で紅茶を飲んでいるではないか。
「ふん、期待しているぞ魔女よ」
魔女と呼ばれた女はニヤリと笑って、クッキーに手を伸ばす。
「私は観劇の魔女、私は暇を潰すだけ。そなた達の存在が私にとって、少しでも退屈を紛らわせるものとなる様に期待しています」
そう言って魔女はもう一度、司達へ視線を移した。そして『その本』の題名をもう一度確認する。
十の存在が紡ぐ物語、あと一つの試練を成功させればそれは具現化される。
「さあ、残る試練はあと一つ。どうなるのか?」
ナルタキ、ゼノンとフルーラ、本の影に隠れていた者は、オーロラを出現させて書斎を離れる。
魔女はくすくすと笑うと、読んでいた本を閉じ目を瞑った。
次の試練まで少し休ませてもらおうか。
魔女が本を閉じた事で、彼女達が『ずっと読んできた』本の題名が大きく晒される。
その本の名前、題名は――
『Episode DECADE』
ガタックゼクター cvゆさ
カブトゼクター cvせきとも
とまあ、そんな感じでゼクターが喋るのはHBVから参考にしました。
デュアルゼクターは効果が原作とかなり違うので次にでも。
そう言えばバトライドウォーに半田さんが出るみたいですね。
555もいいですね。アクセルフォームは一番かっこ良いと思う
では今回はこれで。次番外編です。
ではでは