仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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ライダーのOPに映画の映像流すのちょっと止めて欲しいよね。
気になるっていうか結構ネタバレされるって言うか。

まあじゃあOP見るなっつう話だけど……
見ちゃうのよコレがw!


第26話 番外編 出会いは突然

 

 

 

「――っておわぁ!!」

 

「わあああああああああ!」

 

 

ブルースペイダーとオートバジンがすれすれで通り過ぎる。

校庭には、いたる所にカラーコーンが置かれていた。青い空、白い雲、響く悲鳴。校庭では砂煙が何度も巻き上がっている。

普段聴こえていた先生の声や、音楽の授業から聞こえてくる楽器の音は全く無い。

代わりに、バイクのエンジン音が耳に入ってくる。

 

 

「お、おまん! おまんもう少しで我に当たっとったでな! 気をつけてぬ!」

 

「ごめん椿くん! あと喋り方なんかおかしいよ!」

 

 

そう、定期的に彼らはバイクの練習をしているのだ。

仮にも彼らは仮面ライダー、ライダーなのである。

バイクを操ってこそその称号を名乗るに値するだろう。

 

ゼノン達が言うには、記憶がどうのこうのと……

ややこしい話の様だが、つまり司達はバイクには乗れる様になっている。だが、技術面までは磨かなければ上達する事はない。

そして、それは戦闘にも同じ事が言える。最低限戦えるようにはしてくれるがそこからは自分達で特訓しないと駄目と言う訳だ。

だからこうやって頻繁にバイク練習。また、模擬戦闘で鍛えなければならない。

 

 

「はんッ、こんなもんかな」

 

「流石ですね……負けましたよ」

 

 

そう言ってニヤリと笑うのは薫だ。

彼女はクラスメンバーの中でもバイクの運転技術がトップクラスってなものである。

最初はユウスケの後ろにしがみ付いていただけだったが、いつのまにかトライチェイサーは彼女の物と言ってもいい程に定着していたのだった。

 

ユウスケも、久しぶりに乗ったときはゴミ箱の中につっこむと言う失態を晒してしまい。

以後は彼女にトライチェイサーの運転を任せていた(洗車は熱心にしているが……何故か着ぐるみを着て)

そんな彼女の後を追うのはいつも決まってアキラだ。彼女もまたバイクの技術が高く、薫には勝てないものの大体はいつも二人がトップにきていた。

アキラにはバイクは用意されていない。我夢の凱火を借りているが、中学生の女の子が乗るには凱火は少しごつ過ぎるイメージはある。

しかし彼女はなんのその、すぐに乗りこなすと今に至るわけだった。

 

 

「またやろ、アキラ。今日はもうこの辺にしとかない?」

 

「はい、そうですね」

 

 

そう言って二人は楽しげに会話しながらバイクを駐車しに向かう。

それを地面に伏したまま椿と拓真は見ていた。

 

 

「無様だな」

 

「お前もな」

 

「グッ……」

 

 

同じく、バイクから転げ落ちた咲夜は唇を噛むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「葵さーん! これどこ持ってけばいいですか!」

 

「あぁ、うん。それは皆のお皿に二つずつお願いね」

 

「わっかりましたァァァ!」

 

 

そう言って鏡冶は猛スピードで配膳を行っていく。

これには葵も大助かりだ、帰ってきた鏡冶にお礼を言うと紅茶を差し出す。

 

 

「ごめんね、手伝ってもらっちゃって」

 

「いんやぁいいんすよ、俺もこれくらいやらないと!」

 

「そんな気負いしなくていいのよ? わたしは戦えないから、せめてこれくらいはしないとだから……」

 

 

鏡冶が加わってから一週間がたった、鏡冶は葵と違ってみんなとの接点がそれ程ない。

やはりなれるのに時間がかかるかもしれないとの配慮なのか、ゼノンとフルーラは十日間の時間を彼らに与えた。

転送された世界は自分達の世界と同じような現代風の街並、ゼノンとフルーラが言うにはこの世界に化け物はいないらしい。

 

つまり、よほどの事がないかぎりは戦闘になる事はないと言う事。

鏡治の事もあるが我夢をリラックスされる事も大切だろう。ライダーになれていないのは彼だけなのだから。

まあしかし、我夢はそれ程緊張していない様にも見える。少なくとも与えられた休暇はそれなりに楽しんでいるようだ。

 

 

「うぃーす鏡冶、早いなお前」

 

「おお! まあな!」

 

 

起きてきた真志に挨拶をかわす。

流石に一週間が立てばぎこちなさは消えて、鏡治もクラスに溶け込む事ができたようだ。

真志は鏡治と葵に挨拶を交わすと、椅子に座ってパンをほお張りはじめた。

 

 

 

「おはよう鏡冶くん」

 

「ああ! おはよう!」

 

 

 

拓真とも挨拶をかわす鏡冶。

 

 

「おはよぉ…!」

 

「おはよう! 真由ちゃん」

 

 

真由が笑顔で鏡冶に駆け寄ってきた。

満面の笑みの真由を見て、真志と拓真は小声で話し始める。

 

 

「ん、やっぱ鏡冶と話す時の真由ちゃんはいつもと少し雰囲気が違うな」

 

「あはは、やっぱり初恋ってヤツなのかな?」

 

「真由ちゃん本人も気づいてない程度だろうが、いやいや」

 

 

ニヤリと笑いながら二人はコーヒーに手を伸ばす。

その時だった――

 

 

「鏡冶、おはよう」

 

「おう、おは――」

 

『RIDER KICK』

 

「え………っておわぁあああああああああああああ!!」

 

「「ブゥゥゥゥゥゥゥッ!!」」

 

 

コーヒーを吹き出す拓真と真志。

いや、無理も無いのかもしれない。光を纏った回し蹴りが、鏡冶と真由を引き剥がすように襲い掛かかったのだ!

なんとか回避した鏡冶! そしてそこにいたのは――

 

 

「鏡冶、言い忘れてた事があるんだ。このクラスにはおはようのライダーキックと言う習慣が――」

 

「あるわけねぇだろぉぉぉおおお!! 朝に必殺技ぶっぱなすってどういう事だよ!!」

 

 

カブトはやれやれと手を上げて変身を解除する。

 

 

「安心しろ、あてるつもりはなかったぞ……多分」

 

「当たり前だ!」

 

 

双護はヤレヤレと笑って席につく。

何故か残念そうなのは……まあ、気のせいだろうね。多分。

 

 

「ってか今多分って言わなかったか…?」

 

 

冷や汗を浮かべながら鏡冶と真志は席に戻った。

拓真はニッコリと笑いながら言う、きっと双護は真由と鏡冶にやきもちをやいているのだと。

なんだ、そう言うことだったのか。鏡治は胸を撫で下ろし、双護に笑いかけた。

 

 

「安心してくれお義兄さん! 真由ちゃんとはまだそんな仲じゃ――」

 

「お義兄さんと呼ぶなぁぁぁぁぁああ」『HENSHIN』

 

「くっ! しかたないのか!」『HENSHIN

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せんせー、また鏡冶達が校庭の真ん中で遊〇王やってますー! あれ変身する意味あるんですかー? 校庭まで出て行く意味あるんですかー?」

 

「ないと思う」

 

 

シスコンに覚醒した双護とのバトルもあるが、鏡冶はもうしっかりクラスになれているようだ。翼は安心したように笑う。

とうの真由も少し雰囲気が変わるものの、鏡冶と皆との接し方はそれほど変わらない。双護も一安心だろう。

 

 

 

……多分

 

 

 

 

 

「それにしても、本当についてきて大丈夫なのか?」

 

「ん?」

 

 

帰って来た鏡治を司が出迎えた。

確かに鏡治が仲間になってくれた事はありがたい。

強力なクロックアップを持っているわけだし、何より鏡治の性格には突貫力もある。

なにより皆も喜んでいるわけだし、司も嬉しいのだがまあやはり、そこは気になるわけで――

 

 

「ああ、協力させてくれッ! 司達の世界が危ないなんて知っちまったらほっとけないっての!」

 

 

確かに有美子達と別れるのは少し辛い。

だが永遠の別れではない、鏡治の前に一度ゼノン達が現れたのだが、その時に彼は言った。

全てが終われば、また鏡治は元の世界に帰れる。必ず。

 

それに、ゼノン達にとっても鏡治加入は嬉しい誤算だったらしい。

だから鏡治は後悔していない、との事だった。

 

 

「わかった。とまあ、改めてよろしく」

 

「ああ!」

 

 

司と鏡治は、固い握手をかわすのだった。

 

そんなこんなで時間が経ち、残る休みはあと一日と。

それぞれは最後の休暇を満喫するために遊びにでかける者。寝る者、学校で過ごす者と別れていった。

しかし、そんな彼らの心の中にある違和感。そう、まだあの問題が解決していなかったのだ。

それで少し皆、もどかしい感じになっている。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

目を合わせない、話さない。そんな日が続く我夢とアキラの喧嘩。

ブレイドの世界から二人の口数は減り、カブトの世界では結局数回、しかも少ししか喋らなかった。

時間が経てば経つほど気まずさは増していき、遂に我夢とアキラは話さなくなってしまったのだ。

二人の表情は暗い、司達が話しかければ笑顔をうかべるが、一人でいる時は必ず複雑な表情をしているのだ。

 

 

「何とかしてやりたいが……」

 

 

あれからどんな手をつくしても上手くいかない。

遠慮みたいなものがあったのだろう。なにせ一度は盛大に失敗してしまった身、今さら何ができようか?

 

 

「もう一度、着ぐるみ大作戦でいくのはどうだ?」

 

「絶対に止めてください」

 

 

こんな感じである(尤も、着ぐるみ作戦で二人の仲がよくなる事は絶対に無いのだが)

なんとなく壁が大きくなっていって、二人の距離は大分遠くなってしまった。

なんとかしてやりたいと思うが、もっと事態を深刻にしてしまうのではないかと怖いのも事実だ。

咲夜が言うには我夢の話をアキラは聞いてくれないらしい

 

 

「うぅぅ、どうしたらいいんでしょうか……」

 

 

我夢の周りの空気がどんどん黒くなっていく。

このままじゃ安心して休暇を過ごせない、もう一度なんとかしよう!

司達が心に決めた時、その男が真っ先に我夢の肩に手をおいた。

 

 

「どうしたんだ我夢くん?」

 

「ッ! 鏡冶さん!」

 

「なんかあったのか? 俺でいいなら相談にのるぜ!」

 

「………じ、実は――ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、咲夜はアキラに直接話していたのだが……

 

 

「アキラ、なんとか我夢を許してはくれないか?」

 

「咲夜先輩…ッ、許すもなにも、私は――」

 

「おじゃましまあああああああああああす!!」

 

「「ひっ!」」

 

 

ぶち破る、まさにその言葉が妥当だろう。

女性陣がおもに使っている教室に鏡冶が入って来た、目を丸くする二人をよそに鏡冶は歩いてくる。我夢をつれて。

 

 

「きょ、鏡冶!?」

 

「………ッ!」

 

 

アキラは我夢の姿を見ると、目を反らしてしまう。

それは我夢も同じで、また二人の間に見えないが大きな壁が現れる。

 

 

「アキラちゃん! 手ぇ出してくれ!」

 

「え!?」

 

「ささッ!」

 

「あぁぅう…は、はい」

 

 

おずおずとアキラは自分の手を鏡冶に向かって差し出す。

何をどうするのか? アキラは不思議そうに自分の手を見る。鏡冶は頷き、お礼を言うと――

 

 

「え!?」

 

「なっ!!」

 

『やれやれ……』

 

 

強引なヤツだ。ガタックゼクターは呆れた様子でそれを見る。

鏡治は、物凄いスピードで我夢の手をとりアキラの手と重なり合わせた。

つまり強制的に握手をさせたのだった。驚く二人、もちろんすぐに手を離そうとするが鏡冶がガッチリと掴んでいる為に手を離すのは無理だった。

 

 

「きょ! 鏡冶さんっ!」

 

「……ッ!!」

 

 

慌てる二人を見て鏡冶は口を開く。

鏡冶はまず、アキラに視線を移した

 

 

「アキラちゃんはどうして怒ってるんだ?」

 

「べっ! 別に怒ってなんか……」

 

 

鏡冶は頷いて次は我夢を見る。

 

 

「じゃあ、我夢くんが怒ってるんだな」

 

「いや! 僕は全然……ッ」

 

 

また頷いて鏡冶は目を閉じる、二人は二人とも怒ってないという

 

 

「じゃあもういいな」

 

「「え?」」

 

「最近二人は何かぎこちなかったからさ。でも、もういつも通り過ごせるんだよな?」

 

 

鏡治は、すこし笑みを浮べて二人に問いかけた。いつも通り?

 

 

「「………」」

 

 

我夢とアキラは一瞬互いに目を合わせるが……どうもまだダメの様で、直ぐにまた目を反らしてしまった。

鏡冶は言う、普通の二人ならそんな事はない筈だと。尤も、鏡冶は普段の二人の様子を知らないわけだが。

しかし、その鏡冶でさえ今の二人の様子がおかしいと言う事が分かるのだ。

 

 

「―――す」

 

「え?」

 

「私が悪いんです」

 

 

遂に、耐えられなくなったのかアキラが声を震わせながら我夢を見た。

戸惑う我夢、アキラは目に涙を溜めて言う。

 

 

「私が変な意地を張ってしまったせいで……我夢くんは何度も謝ってくれたのに……ッ」

 

「アキラさん……」

 

 

鏡治は真顔に戻ると、ゆっくりと頷く。

 

 

「大丈夫さ、アキラちゃんだって悪くねぇ。ああ、そうさ誰も悪くないんだ」

 

「でも、私……どうしても我夢くんの考えてることが納得できなくて!」

 

「ッ!」

 

 

我夢が言った言葉。自分の役割は盾、それが納得できなかったのだ。

自己犠牲が最良の選択だと彼は言う。ならば、その彼を想う人たちはどうなる?

まるで自分には何の価値もないみたいな言い方。そんなのはおかしい筈だ。

 

 

「だけど……私は――ッッただ素直に我夢くんが心配だから、そんな事言ってほしくなかったって言えばよかったのに……私は……」

 

「そっ! そんな事ッ!!」

 

 

正直に話したアキラ。

ならば自分も素直になるべきだろう、我夢はアキラの瞳を直視する。

普段の彼ならできない行動だが、今はただ素直に彼女を見ていた。

 

 

「すいません……本当に軽率で馬鹿な発言でした。僕達は皆で一緒に帰るんです、平和になった元の世界に――」

 

「は、はい!」

 

「ごめんなさいアキラさん。僕を許してくれますか?」

 

「も、もちろんです! 私も……許してくれますか?」

 

「はい!」

 

 

笑顔になる二人を見て、鏡冶も安心したように笑う。

 

 

「ああそうだ。じゃあ、仲直りの握手な!」

 

 

そして鏡冶は自分の手を二人から離す。

我夢とアキラは少し戸惑いこそしたが、しっかりと握手を交わして笑い合った。

 

 

「強引な男だなお前は」

 

 

そう言いながらも咲夜は鏡冶に向かって拍手を送らんとばかりだ。

自分じゃそんな行動思いもつかなかった。なかば無理やりだろうとも、二人は仲直りして笑い合っている。

 

 

『今頃気づいたのか? コイツは強引だぞ』

 

「へっ! ああそうさ。多少の強引さが壁をぶち破るってもんよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!」

 

 

教室から出てくる鏡冶を見て司達の表情が強張る。

二人はどうなった!? 目で語りかける司達に、鏡冶は爽やかに笑って返す。

 

 

「!!」

 

 

そして次に出てくるのは笑顔の我夢とアキラ。

楽しそうに談笑している二人を見て、司達は歓喜と尊敬の声をあげる。

 

 

「うおぉおおおおお! 鏡冶さんかっけぇええええええ!!」

 

「マジ鏡冶△鏡冶△! 惚れた! イケメンすぎる!!」

 

「くっ、流石だな鏡冶……!」

 

「いやぁ、俺はなんにもしてないぜぇ。ああそうさ」

 

 

満足そうに笑う鏡冶、さて何か食べに行こうか?

鏡冶は爽やかに歩き出す。

 

 

「鏡冶さん! 何か奢ります! いや奢らせてください! 回るおすし行きましょう!」

 

「馬鹿野郎! 鏡冶さんがそんなモノで満たされる訳ないだろ! 回らない方行くぞ!」

 

「回らない!? 回転しない!? ノーローリング!?!?」

 

 

がやがやと騒ぎながらも、我夢とアキラの仲が戻ってよかったと皆は喜び合う。

すこし後ろにいる当の本人達も、少し前までのが嘘の様に楽しそうだった。

 

 

「我夢くん……」

 

「はい?」

 

「これからも、ずっと『お友達』でいましょうね!」

 

「………」

 

「「「「………」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

我夢が真っ白になって倒れたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっとお友達。

 

一生お友達?

 

永遠オトモダチ……

 

友達って、友達か。じゃあそれ以上にはなれないんですよね。

 

 

「いやいやね、あれは別に深く考える必要ないって!」

 

「そうだぜ我夢! きっとアキラも純粋な気持ちでだな」

 

「だと……いいんですけど」

 

 

大きな公園、その脇道でげんなりした様に我夢はため息をついた。

それを励ますようにユウスケと真志はにこやかな笑顔を浮かべている。我夢は二人の言葉に笑みを浮かべると、お礼を言った。

とはいえ、テンションは心配する様に低い訳だが……

 

 

「よしよし、じゃあまあどっか遊びに……い――」

 

「ん? どうしたんだ?」

 

 

真志がいきなり立ち止まって、なにやら深刻な表情を浮かべていた。

ユウスケと我夢は不思議に思って真志の視線を追う。

なにやら何か遠くの方で赤い何かが……

 

 

「って! あれ人じゃないか!」

 

「え!?」

 

 

赤い髪の少女が倒れている。

血が出ていない事から、外傷はない様だが……いや、倒れているなんて普通じゃない。

 

 

「た、助けにいくぞ!」

 

 

三人は急いで倒れている人のところへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁーワリーね! 飯奢ってもらっちゃって! たははは!」

 

「「「………」」」

 

「おなか空いてやばかったんだよぉ! アハハハ!」

 

 

目の前でもりもり食料を摂取している少女を、三人はただただ口を開けて見ているだけだった。

どうやら空腹で倒れていたらしく、ファミレスで少女にご馳走してあげる事になった訳だが――

 

 

「すんませーん! 追加でハンバーグランチ七つお願いしまーす!」

 

「なっ! 七ちゅ!?」

 

 

思わずユウスケも噛むほどの数。先ほどから少女は追加注文を取りまくっている。

いや、既にテーブルには何枚、何十枚もの空き皿が重なって……奢ってやるとは言ったがまさかココまでとは。

 

 

「クソッ、こんなことなら食べ放題にしとくんだった……」

 

「おれ、もうお金ないんだけど……」

 

 

顔が青くなっていく真志達。

だが少女は気にする事なくパカパカと食料を口に運んでいく。

というか既に少女の体に入る限界を超えている様な気がしてならないのだが。

 

 

「あ、つうか……あんた等名前は?」

 

 

少女はユウスケのエビフライを摘み取ると、口へ運んだ。

え? それ…ッ え? あれ? それおれのエビフライだよね? え? え? なんで? なんで普通に食べちゃうの? え?

なんて視線を送るユウスケのスープを少女は飲み干し、もう一度彼らの名前を聞いた。

 

 

「じょ、条戸真志……」

 

 

少女は真志のハンバーグを一口で頂くと、わかったと笑った。

 

 

「オデのエビフライ……じゃなくて、小野寺ユウスケ」

 

「あ、相原我夢です」

 

「うっし! 覚えたぜぇ。いやぁ助かったよ本当に。マジでやばかった、オレは朱雀。よろしくな!」

 

 

豪快に笑って少女は尚も食料を取り込んでいく。

というか、いろいろ凄い。なんかハンバーグなんて二口で消えてるし、から揚げなんて飲み物みたいに取り込んでいく。

 

――の、割には太っていないときた。

露出が多めの踊り子風というか民族衣装の様な服なので、腰はさらけ出されている訳だがくびれがしっかりと確認できる。

だったら一体これだけの食料はどこへ行くのか?

 

 

「あのっ、朱雀さん……」

 

「朱雀でいいぜ、どうした?」

 

「そろそろ、僕らのお金が………」

 

「え?」

 

 

朱雀は我に返った様に手を止める。

そしてその髪と同じ赤色に顔を染めた、ブンブンと手を振りながら謝り始める朱雀。

 

 

「や、やべーっ! まーた加減しないで食っちまった! たはは、ワリーワリー! いっつも言われてるんだけど……」

 

 

そう言って朱雀は伝票を申し訳なさそうに真志達に差し出した。

 

 

「は?」

 

「あー…その、なんて言うか……オレ、金持ってないのよ」

 

「えッ!?」

 

「今度、会ったらさ。ぜってーお礼すっから……あとよろしくッッ!!」

 

「え!? ちょ!」

 

「ごちそーさんッッ!!」

 

 

朱雀は軽やかな動きで椅子から飛び降りると、そのまま走り去っていく。

残される三人と伝票――

 

 

「ゆ、ユウスケさん、真志さん!!」

 

 

我夢の声が裏返り完全な高音に変わる。嫌な予感しかしない、真志とユウスケの足がガタガタと振るえはじめた。

朱雀はドリンクバーの様に料理を食べていた、もちろんハンバーグはドリンクじゃない。

 

 

「何…? どうしたのッ?」

 

「これ、見てください」

 

 

我夢は顔を真っ青にして、ユウスケと真志に伝票を見せる

 

 

「「!?」」

 

 

三人の色素がもうどこかへ消えてしまったのではないかと思うくらい。彼らは真っ白になるのだった。

 

 

「んんんんんんんんんんんんんん!?!?!?!?」

 

 

ビターンッ!

三人は糸の切れた人形の様に地に伏せる。

 

 

「きゃ! ってお客様? ちょ! お客さまぁあああああああ!!」

 

 

ウエイトレスの悲鳴が店内に響き渡る。

ユウスケの手元には赤い血文字……もといケチャップ文字がダイイングメッセージの様につづられていた。

 

 

『七万円……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

等と、ユウスケ達が七万もの大金を支払っている頃――

 

 

「バーゲンもう始まってるみたいだよ!」

 

「ふぅん、まあでも焦らない、優雅にいきましょ」

 

「そうですわよ友里さん。焦りは禁物なのです」

 

 

そう言って友里、薫、美歩の三人はデパートの洋服売り場に到着した。

中々小さなコーナーと言えど良質でおしゃれなモノがあるかもしれない。

三人は人々が群がる売り場へとやってくる。

 

 

「では皆さん、用意はいいかしら?」

 

「もちろんですわよ、まいりましょうか?」

 

「ええ――ッ」

 

 

 

 

 

「「「しゃぁぁぁあアアアアァァァァァアアアアアァァアアア!!!」」」

 

 

先ほどの優雅さ()が嘘の様に三人は咆哮をあげて人の群に突っ込んでいく。

 

 

「どけやぁああああああああああああ!!」

 

「うらぁあああああああああああ!!」

 

「これはあたしがとったんだよおぉぉおおおおぉおお!!」

 

 

鬼の様な形相で服を奪い合う女達、尤も薫たちも同じな訳だが……

まるでそれはピラニアの群れに落とされた肉の様、群がる女性達はあっという間に服を買い占めていくのだ。

バイバイ優雅さ、おはよう貪欲、三人はまさに獣の様にライバルを蹴散らしていく。

 

 

「よっしゃぁぁああ! とったぁあああ! うえぇええあああああ!!」

 

「チッ、何もとれなかったわ……!」

 

「結構かわいいじゃん、はやくお金払ってきなよ」

 

 

結局服を買えたのは美歩だけのようだ。と言う訳で美歩は、はやく清算を済ませようと歩き出す。

だがその時だった。その泣き声が聞えてきたのは………

 

 

「うぅぅううぇぇっぇええ! もう何にも残ってないじゃない!」

 

 

美歩達はその悲痛な声がした方向を振り向いた。

そこにいたのは、随分と残念そうにしている女性。自分達より少し上程度だろうか? だけど雰囲気が大人の女性だ。思わず息をのむ三人。

どうやら服を見に着たらしいのだが、もう売り切れと言う訳らしい。

しかし驚くべきは――

 

 

(け、けっこう……いやかなり綺麗ね……)

 

(胸でかっ! 腰ほそっ! うらやましぃぃッ!!)

 

(……なんか、エロい)

 

 

要はとんでもない美人なのである。

非常に整った容姿は美しさを具現化させたと言ってもいい。しかしその中に感じる幼さと言うか可愛らしさ。

まぶしい程に美しくまっさらな肌と、艶やかに光る健康的な色の唇。少し紫がかったサラサラの黒髪。

 

さらに三人の目は彼女の肉体へと移動する。

これまた大きすぎず小さくも無い胸、シルエットは非常に整っていてバランスがいい。

服装も露出が多いわけではなく、それが逆に想像を引き立たせるというか何と言うか。

とまあ色々言ったがとにかく彼女は美人、ただこの一言に尽きる。

 

なんだか本能に直接くる美しさだ。

三人はその女性のなめ回す様に見ていた。

はたから見ればかなり怪しいヤツだったろうに。

だが悲しそうにうつむいてる女性を見て、美歩達は申し訳ない気分になってしまう。

 

 

「あ、あのぉ……」

 

「うん?」

 

「これ、よかったら……余り物なんですけど……あははは」

 

「え!」

 

 

美歩は自分の持っていた服を女性に渡す。

 

 

「でも……悪いわ」

 

「いやいやいいんすよ。アタシら別に買う気はなかったんですから」

 

「あら、そうなの?」

 

 

ブンブンと首を振る三人、それを見て女性の表情が輝く!

 

 

「ありがとぉ! けっこうかわいい服じゃない!」

 

 

女は美歩から服を受け取ると、三人にもう一度お礼とウインクをしてレジへと向かうのだった。

残された三人は、尚も女性をジッと見つめる。

 

 

「服は買えなかったけど――」

 

「いいもの見たね」

 

 

ニタァァァ……!

三人はいやらしく笑うと、学校へと帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ薫達が妖艶な少女に見とれていた頃――

人気のない地下道で女の子の様な少年が男たちに囲まれていた。

薄暗い地下道、通る人もいない。少年を助ける人もいないと言う事だ、まさに絶望的状況だろう。

 

 

「おい、お前どこみて歩いてんだ?」

 

「あの……ッ! ――ぃ!」

 

「あ? 聞えないんだけど?」

 

 

そう言って男は少年の胸ぐらを掴む。

少年は怯えているようで、足をガタガタと震わせて目に涙を浮かべる。

それを滑稽だと男たちは笑った。

 

 

「ハハ! だせーなコイツ」

 

「ねえ君? 俺達お金持ってないんだよね、ぶつかったのは仕方ないからさ、せめて慰謝料払ってよ」

 

「ぇぇえ……」

 

 

そんな無茶苦茶な、当然嫌がる少年。

しかし、そんな彼の頬を軽く男は叩く。痛みと恐怖が少年の心に襲い掛かる!

 

 

「それで許してやるっつってんだ。さっさと金だせよ、ぶん殴るぞ」

 

「ぁぅ……」

 

 

少年はブルブルと震えて固まってしまう。

怖い、怖い! そしてその時だった。

 

 

「あ?」

 

 

一人の男に誰かがぶつかる。誰が? 男は舌打ちをしながら振り返った。振り返ってしまった。

 

 

「づぅああああああああああああああああ!」

 

「!!」

 

 

男にぶつかった少年は、突如腕を押さえて地面へと倒れこんだ。

悲痛な叫びに男たちも思わず目を見開く。

 

 

「ウッ! あああああああ! 出てくるなぁぁぁ! お前は血を求めるなァァアアアア!」

 

「な、何だコイツ!? きもちわりぃい!」

 

 

少年は腕を押さえて白目をむいている。

体を大きく震わせている少年に、男たちは寒気を覚えた。

 

 

「お前ら逃げろっぉおお! 早くぅうぅ! じゃないと俺ももう抑えられないぃいいいいい!」

 

「はぁっ?」

 

「あああああああああああああああああああああああ!!」

 

「何だこいつマジできもちわりぃい!」

 

 

男はとっさ的に蹴りで少年の腹を抉った。

苦痛の声を漏らしながらも、少年はなおも叫び続ける。

 

 

「くそっ! くそッ!!」

 

 

男たちは少年を囲んで蹴りの嵐を浴びせる。

 

 

「いでででっ! ちょ! おまっ! ざけんなぶっ殺すぞDQN共が!! ……じゃなかった。やめろぉおおおおおおおおお! アイツが目覚めるうぅぅうぅうう!!」

 

 

何か、素が出た様な気がした。

それを男達も感じ取ったようで、ニヤリと笑いながらもう一度少年の腹部を抉る。

 

 

「うるせぇよっ!」

 

「あ…ぁ……」

 

 

どうしてこんな事をするんだ!?

少年、リラは理解できない。人が人を傷つけるなんてあっていい訳が無いんだ、でもとにかくあの人を助けなければ……!

 

 

「君達! 何をやってるんだ!」

 

「ッ!! やばいッ警察だ! 逃げるぞ!!」

 

「!」

 

 

突如現れた警官に男たちは驚き、そのまま走り去る。

何故こんな人気の無い場所に? リラは混乱するが、助かったことは幸いだった。

 

 

「君達大丈夫か!?」

 

「え、ええまあ」

 

「?」

 

 

リラは疑問に思う。さっきからアレだけ苦しんでいた少年が冷静に警官と話し合っているのだ。

警官をうまく言いくるめて、少年はリラの手を取って走り去った。

 

 

「いててっ! あんのくされ野郎共……ッ!! あああイラつくッ!! 全員将来禿げろよクソが! 死ね! ファッ●ン!!」

 

「だ、大丈夫ですか! あのッ! 腕は!?」

 

「え? ああ、大丈夫大丈夫。腕は……あれ演技ね」

 

「えぇ!?」

 

 

少年は涼しい顔でメガネの位置を直す。

しかし大きくため息、蹴られた事は多少なりとも痛みがある様だった。

 

 

「いたいた! おーい、良太郎!」

 

 

少年、椿は向こうの方で手を振っている良太郎と合流する。

警察を呼んでくれたのは良太郎だった。椿は良太郎に愚痴をこぼすと、もう何事も無かったかのように歩き出す。

 

 

「あなた、大丈夫?」

 

「あ、はい……あの、本当にありがとうございました。ぶつかった人が怖くて……」

 

「気持ちはすごくわかるよぉ」

 

 

良太郎の隣を歩いていたハナにリラはお礼を言う。

正直この人も怖いと思った事は内緒にしようと彼は心に決める。なんだかすっごく目つきが悪い――

いかんいかん、リラは良太郎の話に集中する事に。どうやら良太郎も幾度となく体験した話らしい、そう言った点でリラに共感できるのだろう。

 

 

「ここでいいの?」

 

「あ、はい! もう大丈夫です。ありがとうございまし――」

 

 

そこでリラは気づく。

道路を挟んで向かいの歩道に男の子が歩いていた。

問題はその上だ、マンションのベランダにあった植木鉢が強風によってバランスを崩したのだ!

 

 

「危ない!!」

 

「!」

 

 

リラの言葉に椿達もソレを理解する。植木鉢はもう落下する寸前!!

 

 

「うぉ、マジか……ッ! エース、頼む!」『ターン・アップ』

 

 

椿はすばやくエレメントを発射し、植木鉢を弾いた。

一瞬で他の人には見えなかっただろうが、リラはしっかりと見てしまう。

 

 

「そ、その力……ッ!」

 

「な、なんの事ですかなリラ氏! んんーっ! コポォww!」

 

 

そう言って椿達は焦った様に走り去ろうとする。

だが、リラはどうしても一言聞きたかった。

 

 

「ま、待ってください! どうしてあの時、その力を使わなかったんですか!?」

 

「こ……この力は、そう言う事の為に使うもんじゃないからだな(キリッ」

 

 

嘘、本当はブチ殺してあげたかったけどクセになりそうだからと。

だいたい漫画ではこういうケースで闇堕ちルートに入ってしまう。力は使い方で強大な悪にもなってしまうのだから。

そう言って椿達は走り去っていった。その背中をリラは目を見開きながら見ているだけ。

 

 

「力の……使い方……?」

 

 

リラは小さくなっていく椿たちを見て、グッと自分の胸を掴む。

発作を抑えるようにしながら、彼は少し微笑んで踵を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、椿達が銀髪の少年と知り合っている頃――

 

 

「どう…? 里奈ちゃん、楽し…い?」

 

「はい! ありがとうございます真由先輩!」

 

「よかった……」

 

 

真由は里奈の車椅子を押しながらいろいろな店をまわって行く。

後ろから見守る双護の目も温かい。普段はあまり外に出られない里奈、そんな彼女に少しでも楽しんでもらおうと真由は張り切っていた。

もちろん亘はどうしてもついていきたいと言っていたが、たまにはこう言うのも悪くないだろう。

 

 

「!!」

 

 

立ち止まる三人。

しばらく歩き回っていると豪邸を見つけたのだ。

周りの景色に不釣合いな程の凄さの為、三人は思わず足を止めてしまう。まるで漫画やアニメにでもでてきそうな程の家だ。

 

 

「すごいね……」

 

「うわぁ、一度こんな家に住んでみたいなぁ!」

 

「……フッ」

 

 

そこで里奈は気づく、そういえば双護達は――

 

 

「もしかしてっ! 双護さんもこんなお家なんですかぁ!?」

 

「まあ、もう少し小さいさ」

 

「へー! すごいですねー!」

 

「今度遊びにきてね……」

 

 

三人は笑顔でその場所を去ろうとする。

その時だった、急に強い風が吹いたのは。

 

 

「あ!」

 

「ッ!」

 

 

屋敷から帽子が飛んできた。

風のせいで飛んできたのだろう、双護はカブトゼクターに合図を送って帽子をキャッチさせる。

 

 

『どうだぁ双護、今の俺のキャッチは何点だったよ?』

 

「フッ、確かに卵焼きはおいしいな」

 

『洗濯機でプリンは作れないに決まってるだろッ!』

 

「『……ナイス!」』

 

「………」

 

 

ど、どういう事なの…? 会話の意味が全く分からない。って言うか今の会話繋がってたか!?

里奈はハイタッチ(?)を決める二人(?)の謎会話を理解するのを諦めると、帽子を屋敷の人に返すよう提案する。

二人もそれに賛成し、恐る恐る屋敷の門を潜った。

 

 

「すいませーん、誰か……」

 

 

誰かを呼ぼうと思った時だった、庭の方で一人の少女が紅茶を飲んでいたのだ。

その儚げで優雅さが溢れる空気、そして美しい深い――まるで海の様な色をした髪が風になびいている。

少女は双護達に気がついたのか、のんでいた紅茶を置いて立ち上がる。

 

 

「……あら、この場所が分かるという事は――」

 

 

いえ、何でもありませんわ。

そう少女は言って視線を帽子へと移した

 

 

「まあ! その帽子、拾ってくださったのですね!」

 

「あ…うん! どうぞ!」

 

 

真由はパタパタと走って行き、少女へ帽子を渡す。

少女はお礼を言うと、そのまま三人を手招きする。

 

 

「私はマリン、さあどうぞお座りください。お礼に紅茶とケーキをご馳走しますわ」

 

 

ケーキと言う言葉に三人は目を輝かせる。

マリンも笑って、小さなティーパーティは始まるのだった。

 

 

「本当にありがとうございます。お気に入りの帽子なんですの」

 

 

マリンは言う。

飛んでいってしまった時はどうしようかと思ったらしい。

とりあえず執事が帰ってきてから探しに行こうと思っていたようだ。

 

 

「し、執事ですかぁ」

 

 

やっぱりお嬢様って本当にいるんだなぁ、里奈は目の前にあるケーキや紅茶を見てしみじみ思う。

どれこれも自分が今まで食べたことのない様な……何かこうキラキラしている気がする。

今まで至高の一品だと信じて疑わなかったコンビニのスペシャルショートケーキ、それを幸せそうに食べていた自分を考えて何か寂しくなってしまった。

だが同時にお姫様の様なマリンに出会えて、こみあげる嬉しさと言うものもある。

尤も、双護や真由はこのケーキと同レベルの物を頻繁に食べているため、特に何も思っていなかった様だったが……

 

 

「でも、かわいい帽子ですね」

 

「………」

 

 

沈黙。

 

 

「………え?」

 

 

どうして沈黙するのか、里奈は焦る。

まさか、実は自分だけ美的センスがおかしいのだろうか?

プルプルと震えるマリン、里奈は体から嫌な汗が噴き出るのを感じた。やばい、もしかしてNGワードだったのか?

素直にかわいいとは思う、しかしもしかしたらマリンは気に入っていなかったとかそう言うオチか!?

 

双護さん助けて……ッ! あ、駄目だわ。寝ちゃってるわ!

ごめんなさい! 覚悟して里奈がそう言おうとし――

 

 

「わかりますのッッッ!?!?」

 

「!?」

 

 

マリンは里奈の手を掴んで顔を思い切り近づける。

驚く里奈と、目を輝かせているマリン。

 

 

「こ、ここここの帽子、かわいいですわよねッッ!!??」

 

「え!? えと……! う、うん!」

 

 

コクコクと首を振る里奈に、マリンはとびっきりの笑顔を浮べた。

 

 

「そうですか、そうですか! なんてすばらしいセンスをお持ちなのかしら!」

 

 

満足そうに笑ってマリンはしばらく里奈を褒めまくっていた。

まあ褒められて悪い気などしない、里奈は照れくさそうに笑う。

 

 

「このイチゴおい……しいね」

 

 

真由は真由でケーキに夢中の様だ。

だがしかしこれも――

 

 

「す、すばらしいッッ! ですわッッ!!」

 

「ふぃ……?」

 

「そうですの! そうなんですのよ!! そのケーキはイチゴに特別なこだわりがあるんですの」

 

 

確かに、里奈もイチゴが特別おいしいと感じていた。

 

 

「なのに……ッ なのにアイツらはぁぁ……何を食べても上手いしか……ぁぁ」

 

 

どうやら、彼女の知り合いは彼女の趣向を理解できない連中らしい。

食材と言うのは肩書きや生産地、そこにまつわるエピソードもまた重要なのに味しか見ないバカばっかりで。

そんな事を連呼する彼女、なかなか苦労しているのだろう。

 

 

「………」

 

 

真由はそんなマリンを見て手をスッと差し出した。

 

 

「?」

 

「お友達……なろ?」

 

「え?」

 

 

今度は、ボクがケーキをご馳走するから。

そういって真由は微笑む。

 

 

「い……いいんですの?」

 

「うん! お友達!」

 

 

マリンは笑顔で頷く、もちろん里奈も双護もだ。

しばらく四人はそうやって楽しく談笑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、そんな彼らが優雅に過ごしている頃。

 

 

「すみません、ご迷惑を……おかけして」

 

「いや、別にいいんです。 ねぇ? 亘くん」

 

「はい、気にしないでください」

 

 

拓真と亘は偶然出会った少年、タイガの荷物を持っていた。

どうやら食材や生活用品を揃えていたようだが、一人で運ぶにはいくらなんでも無理がある。

すぐに手伝おうという事になったのだった。

 

 

「でも凄いですね、この量……」

 

「はい、お嬢様や他の皆さんのお食事の為に……」

 

「へー、大変ですね」

 

 

『お嬢様』、『皆さん』、そしてタイガの身なりから察するに、どこかに仕えているのだろうか? それともそう言うバイトなんだろうか?

拓真たちはいろいろと考えてみるが、直接聞くのもどうだろう。そんなこんなで聞けないでいた。

それに彼は美しい金髪、この世界の人間としては珍しい。

 

 

「本当にありがとうございます。今度お礼をさせてください」

 

「え! あ……! いやいやいいですよお礼なんて」

 

「でも……」

 

「いやいや!」

 

「だけど――」

 

「いやいやいや!」

 

 

※その後三十分この下りが続きました。

 

 

その内、亘と拓真が妥協してお礼の約束を取り付ける。

少しタイガの話を聞いていたが、どうやらお互い苦労しているらしい。

 

 

「頑張りましょうね」

 

「お互いにね」

 

「踏ん張ろうね」

 

 

そう言って三人は笑う。

彼らは美しい夕日をバックに歩いていくのだった。

 

 

 

しかし、平和な事だけでは世界は回らないのかもしれない。

悲しいが、戦いの輪廻は繰り返されるのだ。彼らの様に――ッッ!

 

 

「くっ!」

 

「ふふっ………」

 

 

頬を伝う汗を感じる。人気のない広場で、二人の少年が対峙している。

分かっている、相容れぬ存在だと。認め合えないのだとッ!

分かり合う事は……無いのだとッッッ!!

 

 

「また会ったね、司」

 

「ああ、そうみたいだな。海東!」

 

 

司と海東、二人の男はにらみ合い。相手の出方を伺う。

一歩間違えれば、それが即敗北に繋がる極限の状態。彼らの実力は均衡している。

勝敗を決する一番の要因。それは、どちらが先に仕掛けるかなのではないか?

 

 

「「――ッッ!!」」

 

 

そして、両者は動き出す!

 

 

「「うおぉぉぉおおぉぉおおおおッッ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ジャンケンポン!」」

 

 

司はグー、海東はチョキ――ッッ!

大いなる巨岩は、切り裂く洗礼をただ沈黙させるのみ。

 

 

「っしゃあああぁぁあああああ!!」

 

 

そう、彼は勝ったのだ。

運命、それは世界を揺るがす要因の一つでしかない。

彼は勝ったのだ。何度でも言おう、司は勝ったのだ。

 

 

「ちょ! なん……でッ」

 

 

崩れ落ちる敗北者。

愚かな負け犬に何を吼える資格があると言うのか、凡夫に哀れな祝福など似合わない。

無慈悲な末路しか許さぬ決意。それすらも、破壊者はあざ笑うのか?

 

 

「じゃあな海東! 何でこの世界にいるのかはわかんないけど、どうせ教えてくれないんだろ? じゃあめんどくさそうだからいいや! ばいばーい、お宝……アレ? ……あ、まあいいや」

 

「ま、待ちたまえ司! もう一度だ!」

 

「えー、何でだよ。俺、勝ったじゃん」

 

「だれが一回勝負って言ったの! ほら、いくよ」

 

 

仕方ない。司は手を差し出す。

それはまさに神でさえも運にゆだねし悪戯がごとく勝敗を決する。

 

通称・じゃんけん。

 

彼らの戦いは、既に握りこぶしと言う巨岩……いや意思を構えた時点で始まっている。

示すのは答え。

 

全てを切り裂く刃。それはまさに閃光(チョキ)

 

あるいは、大いなる宇宙でさえ包み込む有限にして無限の抱擁(パー)

 

はたまた、恐れを知らぬ唯一の真実、抗う事すら認めぬ彗星(グー)

 

 

果たして、結果と言う舞台に立つのはどの役者か?

それは時間の追従を許した神のみぞが知る。しかし神よ、何故あなたはこんな戯曲を記したのだろうか。

何故、彼らは戦っているのだろう? 誰も分からない。いや本人達ですら分からない。

 

運命とは残酷だ。

ただ司はコンビニへ漫画を買いに行っただけ。

 

ただ海東は裂けるチーズを買いに来ただけ。

できればおでんも買っちゃおうかな、ちょっと贅沢かな。いやでも玉子が食べたいな。なんて事も彼は考えていただろう。

 

されど、出会ってしまった。

しかし、出会ってしまったのだ。

 

交わる事のなかっただろう二人、しかし出会った。

ならば、戦わなければならない。それが彼らの答え。それが彼らの真実。

てか私は何でこんなどうでもいい事をダラダラと長文で書き綴っているのか。

ううん、そんな事はどうでもいい。私はただ、ただ彼らの戦いをここに記すまで。

 

 

ジャンケンポン!

 

 

放たれた言葉に意味はない。

それはただ理由と言ういい訳を世界に容認させるだけのつまらないノイズ。

司はパー、海東はチョキ…それだけが欲しい。それだけを迷える子羊に与えてやってくれ。

 

 

「まあこれが当然の結果なのかな」

 

 

海東は感じていた。我こそが勝者なのだと。

我こそが舞台で踊る事を許された英雄なのだと確信していたのかもしれない。

 

 

「………一回目で止めとけばよかった」

 

 

後悔と言う檻に縛られし愚者、彼もまた舞台に立つべき一人なのだろう。

ならば彼は知っているはずだ。次に自分が紡ぐべき言葉を。

 

 

「海東、もう一回だ」

 

「えー、今ぼくが勝ったのに………」

 

「ふーん、にげるんだー?」

 

「あ、そう言う事言うんだ。あ、そう言う事言っちゃうんだ」

 

 

再び構える二人。

それでいい、それがいい。

こうして二人は意味のない戦いを、一時間繰り返したのだった。

 

 

「ふっ、次に会うときはぼくの仲間と共に総攻撃をしかけてあげるよ。覚悟したまえよ」

 

「んー。あ、十円たりないなぁ。夏美に両替してもらお」

 

「きいてよッ!」

 

「え? ああ、うん。俺も負けないぜ!」

 

 

こうして二人は別れたのだった。

本当に何で彼らは戦っていたのだろうか?

そうやって、彼らの休暇は終わっていくのだった。

 

帰って来た彼らは皆、口を揃えて言う。

 

 

『今日、凄い人に会ったんだ』

 

 

 

 




※カブトチーム変更点まとめ (追記あり)

ゼクターは変身後にはほぼ完全に意識が失われる。つまりキバットと違い戦闘中に相棒をサポートする事はできない。

クロックアップはディケイド版。

キャストオフ&プットオン&クロックアップは使用者の精神力、及び体力が持つまで使用できる。
連続で使用した場合、より消費が激しくなる。


キャストオフは鎧がパージする勢い、方向を全て選択でき、部分指定や時間差も可能である。
ただしキャストオフ使用してから5秒後には全ての装甲がパージされる。

さらにキャストオフによって弾けた装甲はその場に留めるか、消失させるかを任意で選択できる。

クナイガンは原作と構造が違い、切りながら撃てる様に引き金と砲口の位置が調節されている。
マスクドフォーム時は威力の高い単発式のプラズマ弾となり、ライダーフォーム時は連射が可能な威力が低めの実弾となる。


カブトデュアルゼクターはクウガゴウラムとは違い直接的な攻撃力は非常に低い。
しかし三つのボタンを押すことによってそれぞれの能力を発動できる。



今はこんな感じですかね?
では次もよろしく。ではでは
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