「すいません」
「ん?」
妖怪城、北門。
その番を任されていた妖怪、一角大王は目の前に現れた三人組みを不思議そうな目で見ていた。突然バイクでこんな山の中まで現れた男達。
妖怪城の巨大な門の周りには、女性の形をし、弓を構えた石像が無数に男達を見ていた。警備システムとしては殺傷能力が高すぎるソレは、侵入者を蜂の巣にする心持たぬ仕掛けだろう。
だが男達に怯む様子はない。この石造の意味を分かっていないのか?
「なにか用か? 今は忙しい、総大将の謁見は控えろ」
この場所を知っていると言う事は妖怪か、もしくは上位の人間だろう。
しかしどうやら違うみたいだ。二人の少年にはさまれていた青年は、笑みを浮かべながら一角大王の前にやってくる。
「いや、あのですね。実は私、教育実習生をやっていまして……」
「は?」
「私が受け持つ生徒が、この妖怪城に間違って入っちゃったみたいなんですよ」
だから、返してもらえませんか?
「何を言っている、そんな馬鹿な事があるか!」
怪しいヤツめ! 一角大王は男を締め上げようと手を伸ばす。
しかし以外にも、その手を逆に男に掴まれた。人間の力にしては強すぎる!?
一角大王は思わず声をあげてしまった。コイツは一体なんなんだと。
「貴様ッ!」
「返してもらいますよ。うちの大切な生徒――」
男はもう一度ニヤリと……強き決意の笑みを浮かべる!
「天美アキラさんをね!」
「なッ! お前らッ! 花嫁の――ッ!!」
男の腰が光輝きベルトが出現。瞬間、一角大王の視界が反転した。
背負い投げ、投げ飛ばされたと理解する。同時に彼は声を大きく上げて叫ぶ!
「侵入者だ! 殺せぇぇえぇええええぇえっぇえッ!!」
石造達の目に光が灯り、一斉に弓を構えた。
ギリギリと石でできた矢を振り絞る石造達、ざっと百体はいるだろうか?
一斉に放たれるであろうその矢は、男達に断末魔さえあげさせることなく死を与える無慈悲な洗礼。
だが、やはり男達に焦りの表情はない。むしろ笑みすら浮べている者もいる。
どう言うことなのか? 死が怖くないと? 死を恐れていないとでも言うのか!?
「やれぇええええええッ!」
一角大王が後ろへ跳ぶと同時に、石造は手を離す!
無数の弓矢が男達を貫かんと風を切り裂いて――
「………」
だがしかしその矢を何かが弾く。
飛翔してきた二つの『何か』は、弓を弾き! 吹き飛ばし! 美しい赤と青の軌跡をなぞる。
一角大王は何が起こったのか理解できない。貫く事を目的とした弓矢は粉々にされており、目の前の三人は今こうして尚自分と対峙しているではないか。
只者ではない、人間ではないのか!?
「ッ!! オォォオオオオ!!」
衝撃、独特な羽音が聞こえたかと思うと、目の前に赤と青の光が交差した。
二つの光は一角大王に突進を決めると、投げ飛ばした男の左右にいる少年二人の手に収まっていく。
そうやって三人は同時に構えた。各々何やらポーズをとると、男はベルトの左右に備えられたスイッチを、少年二人は掴んだ光、ではなく虫をベルトへとスライドさせる。
最後に、その言葉を世界に容認させた。
「「「変身!」」」『『HENSHIN』』
「なっ!?」
三人の男。
新意鏡治の姿はガタックへ。
小野寺翼の姿はアギトへ。
天王路双護の姿はカブトへとそれぞれ変化する。
それだけではない、アギトの左腕を暴風が包む。
右腕を紅蓮の炎が包む。肩、そして腕を包む激しい炎と風。
その異常なまでのエネルギーに一角大王はおもわず後ずさった。
この自然の力がアギトに共鳴しているかの様だ。風が激しい咆哮を上げ、炎が同じくして叫びをあげる。
そして対照的に、機械に身を包んだかのようなマスクドフォームのカブトとガタック。
懲りずに侵入者を排除する為、次の矢を装填している石造を確認すると二人はベルトにセットされたゼクターの角を弾いた。
「キャストオフ」
「キャストッ! オフッッ!」
『『Cast Off』』
電子音と共に二人の装甲が吹き飛ぶ!
装甲の破片は一角大王を、石造を攻撃し破壊する。
もう後には戻れない、今から始まるのは世界の命運をかけた戦いだ。
いや、今までもそうだった。そして今回も。
狙うのは初めからただ一点の勝利のみ。そうだ、必ず勝たせてもらう!
「ッ!?」
アギトのクロスホーンが展開し、同時に炎と風が弾ける。
展開時に発生した金色の衝撃波は一角大王を大きく吹き飛ばして地面へと倒させた。
見ろ。美しく、そして神々しい光に照らされて姿を現したのはアギトトリニティフォーム。
そして装甲が青く染まった左腕、その隣には同じく青、ガタックライダーフォームが。
赤く染まった装甲、右腕の隣には同じく赤、カブトライダーフォームが立っていた。
「フッ」『Change・Beetle』
「うらっしゃぁッッ!」『Change・StagBeetle』
「はぁぁぁァァ――……ッッ!」
左には拳を握り締めて構えるガタック。
右には人差し指を立てて天に掲げる様にとカブト。
そして中心には片方の手を伸ばして息を吐くアギト。
三人の仮面ライダーはそれぞれ気合を入れると、同時にポーズを取って構えた。
「さあ行こうか! 鏡治君、双護君!」
「オッケー、センセー! ああ、そうさ。やってやるぜッッ!」
「フッ、力の違いを教えてやるか」
『『Clock Up』』
砂煙をあげて消える二人、同時にもう一度石造たちは弓矢を発射する。
だが、弓矢はまたも届かない。赤と青の影が弓矢を次々に弾いていくのだ。
そして同時に破壊されていく石造達、たしかに弓矢は早い。だが超高速の前では、ただただひれ伏すしかないのだ。
瞬きをする度に破壊されていく石造。本気だ、本気なのだ! 一角大王は自らに挑まんとしている者達の信念と決意を読み取ると、自らの武器である斧を出現させる。
「貴様ら……自分達が何をしているのか、分かっているのだろうな?」
戦うと言う事は簡単だ。勝つか負けるか、それとも引き分けか。
どうあってもその三種類の結果になる単純な物。だが、その背景にある
今、一角大王は最後の警告を投げかける。自分と戦う事になる訳だが、なによりも自分だけと戦うのではない。
仮に目の前にいるライダー達が一角大王を倒したとして、それで終わりではないのだ。
それを、その重さを理解しているのか? その無茶な行動を理解しているのか? 一角大王は彼らに問うた。
彼もまた純粋な妖怪の一人だ。確かに彼とてアキラを生贄として捧げるのには抵抗がある。
だがどう考えてもそれが一番いい選択だと言う事も分かっていた。
たとえアキラを大切に思う。つまりアギト達のような人間がいると分かっていても。
それでも、一角大王はアキラを生贄とする選択を曲げることはないだろう。
「心は、とても複雑なものですッ!」
理解していたつもりでも、理解できていなかった。
受け入れたと思っていても、いざ直視すると簡単に揺らいでしまう心と言う存在。
「彼女には好きな男の子がいる――ッッ!」
「何ッ?」
ふと脳裏に葵の姿が浮かぶ。
彼女が死んだ時、自分は心と言う物を恨んだ。
あんなに悲しくて、あんなに辛いのなら、いっそ心なんていらないと思った。
だけど、いつまでも悲しんではいられない。だから受け入れた……と、思っていた。
でも決してそんな事はなかったのだ。あの幻想に満ちた世界で、葵を見たときに自分は簡単に堕ちてしまった。
割り切れない、それが愛だとしたらなおさらだ。人は誰もが強くあろうとする。しかし皮肉にもその心が更なる弱さを生み出すのだと。
「そして、その男の子も彼女の事が好きなんですよッッ!」
アキラは翼にも我夢の夢のくだりを話していた。
そして安心できた、アキラと我夢は幸せになれる。そう思っていた。
「それだけの理由でッ! 我らに敵対すると言うのか!!」
「確かに、あなたにも大切な人はいるでしょう――!」
だから、これは醜いエゴなのかもしれない。
これは我夢も言っていた事だ。アキラを助けると言う事は、この世界の全てに危険を与えると言う事。
ならば世界にとって自分達は平和を脅かす『悪』。しかし自分達は正義と言う。善悪の彼岸、そして不可思議な心と言う人間の証拠。
「だけど、私達はこの世界もアキラちゃんも救ってみせるッ!」
でなければ、ここで自分達の旅は終わってしまう気がするから。
アキラは死ぬべきではない。そして、今この世界には隠された悪意がうごめいている。
それをみすみす逃がすのはありえない事なのだ。
「そんな戯言がぁぁッッ!」
一角大王は斧を振り上げる。ああ、そうだ戯言だろう。
仮面ライダーの名に甘えた、その称号をいい訳にしたエゴ。
それでも、たとえそうだったとしても――ッッ!
「そんなふざけたシナリオを認める訳には――ッ!」
アギトは斧が振り下ろされた瞬間、側面を裏拳で思い切り叩く!
軌道がそれた斧は、アギトを紙一重で捕らえられず、そのまま空を切った。
「いかないんですッ!」
「ぐっ!」
そのまま暴風を纏った回し蹴りで一角大王にダメージを与える。
しかし踏みとどまった一角大王は、自らの角でアギトを突き上げた。
アギトはその瞬間に突風を発生させて、空中へと飛び上がる。おかげでダメージは軽減されるが油断はできない。
「花嫁は死ぬ。これは絶対だ!!」
「……ッ」
先ほどの話にはまだ続きがある。
心なんていらないと思ったが、
彼女と今、会話ができる。それだけでたまらなく幸せだ。戦いの日々に巻き込まれて、それが嫌だと思った事もある。
だけど彼女がいる。そして何より弟や薫、皆がいる事が幸せだった!
本当に滑稽な話だ。
彼女が帰ってきた途端手のひらを返すようにして、心があってよかったなんて思っている。
だがそれが人。不幸は嫌で幸運だけが欲しい、誰しもがそうだろう。でもそうじゃない! 不幸があるから幸運が嬉しく思えるのかもしれない。
答えは無い。分からない、難しい話だ。
「ウオォォオオォォオオオオオオオッッ!!!!」
「ハァァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
アギトの炎を纏った拳と一角大王の巨大な拳がぶつかり合う!
衝撃が発生してよろける両者。しかし暴風のおかげで無理矢理体勢を整える事ができたアギトは、そのまま渾身の一撃を一角大王におみまいした!
「――ッ!」
炎を纏った拳が一角大王の胴に命中する。
赤い炎を受けながらも踏み込みアギトを睨む彼、それを見てアギトも彼の覚悟の程を知った。
アキラや我夢、皆には幸せになってほしい。
翼の願い、あんな辛い思いはしてほしくないと切に願った。
皆にはこれからどんな幸福が待っているのだろう。それを考えるのは楽しい事だ。
アキラと我夢が上手くいってくれそうだと知ったときも嬉しかった。二人にはどんな事が待っているんだろう?
「オオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」
だが、一つだけ分かることがある。
それは命あっての事だという事だ。難しい心も、幸福も生きていなければ得る事はできない。
「今からでも遅くは無い! 引き返せッッ!」
一角大王の斧が眼前に迫るッ!
「それはできないッッ!!」
「なっ!?」
アギトはベルトからフレイムセイバーを出現させるとで斧を受け流す。
刃と刃が擦れ、激しい火花が散る。そしてそのままセイバーを返して一角大王を切りつけた。
「アキラちゃんには、これからいろんな事が待っているでしょう!」
辛い事もあるだろう。
だけど楽しい事だってそれに負けないくらい、いや勝るくらいあると彼は思う。そう願う。
「生きててよかったと、彼女には、皆には思って欲しい!!」
だから邪神の都合で彼女の心が、幸福が! 世界中の人間の『これから』が奪われるのは納得できない!
そんな事が許されていいのか!? いいはずが無いだろッッ!!
「花嫁の死は
一角大王の一撃を受け止める!
しかし、その力の前にアギトは膝をついてしまった。
その豪腕から繰り出される一撃は、フレイムセイバーだけでは受けきれない!
ならば――ッ!
「そうであったとしても――ッ! たとえそうだったとしてもッッ!」
答えてくれアギト。
もし自分に……その力を振るう資格が、権利があると言うのなら――ッ!
「ッ!」
ベルトが光り、ストームハルバードが姿を見せた。
アギトは素早くそれを掴むと、暴風と炎を合体させる。すさまじい熱風が一角大王の肌を焦がすのだ!
一角大王の力が弱まっていく、それを確かに感じながらアギトは全身の力を全て腕へと収束させた。
ここで立ち上がらなければならない! その気力と迫力は一角大王の心に恐怖を与えるッ!
(そうだ! 僕は……仮面ライダーアギトッッ!)
付き合ってくれアギト、僕の我侭に。
「たとえそうだったとしてもォオオオオッッ!」
「ァァアアァァアアァッ!」
「誰もッ! 誰も人の未来を奪うことはできないッッ!!」
一瞬、一角大王の目に映ったのは……まるで――
「グオォオオオオオォオオオッッ!!」
フレイムセイバーとストームハルバードが描く、魂の十字架が一角大王の斧を吹き飛ばす!
粉々に砕かれた自らの獲物を瞳に映しながら、一角大王は宙へと放られた。全てを呑み込む紅き暴風は重量ある一角大王の体を簡単に巻き上げる。
スローモーションになる一角大王の世界、首を動かせば赤と青のライダーが石像を順々に破壊していくのが見えた。
「ウォォオオオオオオッッ!!」
「ハァアッ!!」
この二人からも感じられる絶大な闘志。引けない戦いなのか――
そうだな、それはそうだ。大切な友人の為だ、たとえ世界が相手でも戦う事を躊躇しない。
それは当然なのだろう。そこでふと思ってしまう、決意の量が違う?
「ッ!」
一角大王はふと、太陽の光を背中に感じた。
「グァアアアアアアッッ!」
そして同時に走る絶大な衝撃。
二つの武器から放たれた熱風の衝撃波が一角大王を貫いた!
そのまま、きりもみ状に回転しながら二転三転と後ろへ転がっていく。ある程度地面をスライドした後、一角大王の体はやっと動きを止めた。
「彼女の未来を、この世界の未来を守るためにッ 僕達は戦うッ!」
地面へと伏した一角大王はゆっくりと顔を上げる。
そして理解した。
「終わったぜセンセー!」
「フッ、全て破壊した」
勝てない。こいつ等には……ッ! 自分は世界を背負っているつもりだった。
しかし覚悟が足りなかったとでも言うのか? 全ての石像が破壊され、自分は今こうして地面に伏している。
「いやッ! 認めんぞ!」
「!」
一角大王は自らの名を司るであろうその大きな角を、文字通り弾丸にして発射する。
角は猛スピードでアギトへと向かい、そのまま彼の肩に突き刺さった。
「……ッ!」
「悪いな、これだけは使いたくはなかったが――ッ!」
一角大王の角には特殊な力が掛かっている。
それは呪いの様なモノ。一度刺さった角はどんな事をしても抜ける事はない。
唯一、一角大王が抜けろと言うまで角が抜ける事はないのだ。そしてその角は対象者の力を奪っていく。まさに最後の手段、それを一角大王は行使したのだった。
「………」
しかし、その時だった。
太陽が美しい橙に輝き、アギトを照らしたのは!
「そ、そんな……馬鹿な……!」
アギトは両手の武器を空中に放り投げる、そして手を天へとかざした。
その時、アギトの姿がまた変化を遂げた。展開されたクロスホーンが光りに照らされて夕日と同じ橙に染まる。
そして体はまるで夜を迎える様に黒と灰に染まり、目も黄色に変わった。
アギト・トワイライト。
呪いの力を殺す夕焼けのフォームである。
アギトは『絶対』に抜けないであろう角に手を伸ばすと、そのまま何の迷い無く角を引き抜いた!
まるで刺さってすらいなかったのではないかと錯覚してしまう程に、角は簡単にアギトの体から離れる。
そしてアギトはそのまま角を握り潰すと、そのままトリニティフォームへ再度チェンジを行う。
空中を旋回しながら落下してきた武器を掴むと、それを一角大王に向けた。
「ぐ……ッッ!」
一角大王を囲むようにしてアギト、カブト、ガタックが立つ。もはや勝敗は明確だろう。
応援を呼ばれる前に気絶させる、アギトは決心して双方の武器を一角大王の足元めがけて投げつけた。
だが一角大王とて負けられないのだ! 武器を拳で弾くと、アギトに向かって殴りかかる。
カウンターをしかける為にアギトもまた拳を振り上げた!
「ゴォォォオオッ!」
「ハァァァッッ!!」
激しい光を放ちながら一角大王の拳とアギトの拳が再びぶつかり合う。
互いに均衡する両者の力。しかしクロスホーンを経由して金色の光がアギトの拳を包み込んでいった。
紅、蒼、金の力が拳に収束される。徐々にアギトの力が増していき、ついに一角大王はアギトの拳に吹き飛ばされる事に。
「グォォオオオ!」
アギトは風を発生させて、離れた武器を手元に引き寄せる。
そのまま赤と青の演舞で一角大王に激しい攻撃をしかけていくアギト。
瞬間、空に放られる一角大王。アギトはカブトとガタックの方を見て頷くと、武器をその場で投げ捨てた。
「終わりにさせていただきます!」
アギトが構えをとると、足元に彼の紋章が現れる。
紋章は溶けるようにしてアギトの足から力を注入していくのだ。
何か大技がくる? 一角大王がそれを認識したときには既にアギトは飛び上がっている所だった。
「ゥオォォオオオオォオッ!」
「ッ!?」
しかし一角大王はサイドステップでアギトから大きく距離を離した!
その巨体からあそこまでの跳躍力を出せるとは。
(クッ!)
これは予想外だった。
このままでは蹴りが外れる可能性が高い。不発か? アギトの脳裏にその言葉が浮か――
「任せてくれ」『Clock Up』
赤い閃光がアギトの脇を駆け抜ける。
カブトは、高速の世界を移動して自分の装甲の破片。
キャストオフで吹き飛ばした際に転がっていた破片の前に移動した。
「フッ!!」
カブトはそれをサッカーボールの様に蹴った。
破片はクロックアップの影響を受け、高速の弾丸へと姿を変える。
そしてそのまま一角大王に命中すると、大きな衝撃を与えた。
「ッッ!」
一角大王の体が、装甲の破片によって元いた場所に引きずり出される。
そこに待っていたのはアギトの必殺技、ライダーシュート!!
「タアアアアアアアアアアアアッ!!」
「グワァアアアアアアアアアアア!!」
一角大王はライダーシュートをまともに受け、そのまま大きく吹き飛ぶ!
「ッッ!!」
しかし、まだ終わらない!!
吹き飛んだところには、ガタックがカリバーをジョグレスさせて立っているではないか!
「――ォォォオオッッッ!!」
吹き飛ぶ一角大王の体を、カリバーが挟み込む!
反動でガタックも倒れるわけだが、ただ普通に倒れるのではない!
「ウォォオォオオオオッッ!!」
「ッ!」
一角大王は理解する。これは間違いなく――
「ライダアァァアァ―――ッ!!」
これは――ッッ!
「バックドロォォォオオオオオオオプッッ!!」
一角大王の意識はそこで完全に途切れたのだった。
「す、すごい……! 本当にこの門を突破するなんて!!」
完全に気絶している門番。
幽子は目を丸くして、口を開けたまましばらく三人を見ていた。
『あわわ! 侵入者です! 繰り返します――』
一斉に騒がしくなる城内。
絶対に現れないと思っていた存在が名乗りを上げた。妖怪達は戦闘準備を行う者や、慌てふためく者と様々である。
少し落ち着きを取り戻したかと思うと、新たな燃料が投下される。
『たたた大変です!! 次は東門から侵入者ぁぁぁ!』
パニックになっているのか、放送を行っている妖怪は呂律すらまともにまわっていない。
それが逆に他の妖怪に落ち着きを取り戻させた。あの警備を突破するのだから、やはり多人数で攻めてきたのだろう。
十数名……いや、最悪五十を超える戦力の可能性もある。皆それぞれ花嫁の関係者が手を組んだのだと想像。
だが、放送がさらに続けた言葉――
『あの門をッッ! たった一人の人間によって突破されてしまいましたぁぁぁ!』
再び城の中に戦慄が走った。
パニックは終わらない、迫る侵入者におびえる者も出始める。
『………』
サトリは首を振ると、衣を翻して飛翔するのだった。
無数の石像は一斉に弓矢を発射した、それはもちろん侵入者を拒絶する為だ。
命を奪ったとして、それは仕方の無い事。それすらを許してしまう程に石像の警備は恐れられていた。
石でできた弓矢の雨は、侵入者に後悔の時間すら与えずに絶命させる絶対の檻。
しかし、その弓矢の前でも屈しない存在が現れるなど誰が想像するのだろうか?
前からゆっくりと近づいてくる侵入者、それを迎撃する為の弓矢。何も間違ってはいない、なのに何故侵入者は倒れない? 何故進行を止めないのか。
一歩、また一歩と歩いてくる侵入者。
弓矢も、もう数えきれない程彼に命中している。
だが矢は侵入者に当たった途端使い物にならなくなる。粉々に砕けてしまうのだ!
石でできた貫通力のある武器。それを通さないのは――
紫の処刑人・クウガタイタンフォーム
「間合いに入った。いこうか、薫」
『オッケー、しっかりやんなさいよ』
ベルトの中心部が青に変わる、そして激しい青の旋風が巻き起こった。
思考を持たない石像達はその事を危機するわけもない。新たな矢を弓に当てると、同じようにクウガを狙う。
「『超変身!』」
無数の弓矢がクウガを狙う。
先ほどまでならばその弓矢はクウガに命中するが何の意味も成さない。と言う結果に終わっただろう。
しかし今回は違う。弓は一本もクウガに当たる事は無かった。クウガ一点を狙った矢の群れはたった一回の跳躍で全てかわされる。
「ハァァァアアアアッ!」
十体ずつ横並びにならんでいた石像、その二番目の眉間にドラゴンロッドが突き刺さる。
いや、突き刺さると言うよりは粉砕に近いだろう。ドラゴンの紋章が石像を完全に活動停止に追い込んだと言う事を証明していた。
『次の矢がくる! ユウスケ!』
「ああ!」
石像は機械的に次の矢を装填して弓をクウガに向ける。
そのまま石像達は手を離し、矢を放った。クウガは壁に突き刺さったドラゴンロッドを足場にして高く跳躍、矢を再びかわす。
だが矢が何かに命中する音もまた聞こえた。クウガの立ち位置が原因で向かい石像同士が合う形になっていた為、一番目の石像と三番目の石像が同士討ちと言う形になったのだ。
互いの矢が首元に突き刺さっている石像。尤も、粉砕されていないために活動を止める事はなかった。
空中にいるクウガを打ち落とすため次の矢に手をかけ――
「薫!」
「分かってる! させないっての!」
薫はロッドから人間の姿に戻ると、軽やかな身のこなしで一番目の石像に向かっていく。
石像は少し高い位置に備わっている為、落下する可能性もあったがまるで薫は猿のように岩の突起を足場にして素早く石像の前にやってきた。
そのまま突き刺さった矢に腰掛ける、矢にはギリギリ人一人が座れる程の長さがあった。
もちろん石像も黙ってはいない、一番目の石像は矢の照準を薫に変える。
これもかわされれば自分を射抜く事となるが、そこまでの思考は無い様だ。それに、薫は避けるつもりもない。
「はい、さ よ な らッ!」
薫の体が光り輝き、剣に変わる。
「フッ――ッ!」
ドラゴンの特殊能力。二段ジャンプによって、クウガは弓に引っかかった剣の前まで飛翔する。
そして素早く剣を掴むと、タイタンフォームへ再度チェンジした。
「超変身!」
タイタンの力で薫の姿がタイタンソードへと変化する。
同時に放たれる弓矢、しかし何の意味も無い。代わりにタイタンソードの重力で、てこの原理が石像に働く。
石の矢は、石像ののど元から大きく上に移動して石像の顔面を引き裂いた。それが石像の頭部にある自律ユニットを破壊し、一番目の石像は動きを止めるのだった。
「同じ様に三番目もいける!」
『そうね、弓矢に気をつけて!』
クウガは頷くと、ドラゴンフォームに姿を変えて一気に三番目の石像に突き刺さった弓矢まで跳んだ。
そして弓矢にぶら下がるように掴まるとタイタンフォームに変わる。
再びてこの原理で三番目の石像を引き裂くと、地面に落下していく。
「最初は上の段から潰そう」
『あと七体って訳ね。いけそう?』
「ああ、もちろん! 超変身!」
クウガは弓矢を防ぐためにタイタンに変わる。
そして弓矢を全て受けきると、今度はペガサスへと色を変えた。
「『ブラスト――ッッ』」
ペガサスボウガンを四番目の石像に向け――
「『ペガサスッ!!』」
風の矢は一撃で石像の頭部を破壊し、活動を停止させた。
頭を潰せば石像は止まる。核心した二人は次の石像に狙いを定めた。
『ちょッ! やばい、多分もうすぐ時間くる!』
「くっ!」
ペガサスの限界時間は三十秒、それを超えれば変身は解除されてしまう。
どうやら一発矢を放つのが限界か、クウガは銃になった薫を腰に備えるとペガサスからドラゴンに姿を変える。
襲い掛かる矢を跳躍でかわすと、そのままマイティフォームへとフォームチェンジ。
「ウォラァァアアアアアア!!」
クウガの全力を込めたとび蹴りが五番目の石像を破壊した。
「おまけっ!」
薫が剣に姿を変え、クウガはその剣を六番目の石像に投げつけた。
剣は石像の頭部を抉り沈黙させる。
「ッ!」
瞬間タイタンに変わるクウガ。
直後に命中していく矢、一瞬でも判断を誤れば串刺しにされるだろう。
度重なるフォームチェンジもクウガの疲労を増加させていく。だがマイティやドラゴンであの矢を受けれるのだろうか? そう思えばやはりタイタンの防御に頼るしかないのも事実。
『大丈夫ッ? ユウスケ!』
「ああ、とにかく上の段だけ破壊できれば――ッ」
ドラゴンで跳躍した後、再度マイティキックで七番目の石像を破壊する。
その際に薫を回収して同じ要領で投げた。八番目の石像が沈黙し上段、つまり跳ばなければ破壊できない石像は残り二体となる。
幸い矢の軌道は直線で読みやすい。門番の妖怪も姿を見せず、石像のみを破壊するのはまだ容易な方だ。
『そろそろね!』
「ああ、超変身!」
薫は人間体に戻ると、地面に着地してそのままクウガを置いて走り去ってしまった。
一人になったクウガだが緊張感がより意識を集中させる。油断はできない、タイタンフォームにタイタンフォームに変わるとその場に立ち尽くす。
「………」
放たれる弓矢、その中で二本の矢を掴みとる。手の平は装甲が薄い為に焼ける様な痛みが走ったが、耐える。
クウガはその弓矢をタイタンソードに練成させた。二対のタイタンソードを振りかざし思い切り投げる。粉塵と共に粉々になる石像。
「ゆーすけーッッ!」
一旦離脱した薫が再び戻ってくる、トライチェイサーに乗り込んで。
「決めよう、薫!」
「よし!」
クウガはドラゴンフォームに変わり、トライチェイサーに飛び乗る。
薫をドラゴンロッドに変えてアクセルを最大にした、弓矢が装填される前に下段の石像達を次々にスプラッシュドラゴンで頭部を粉砕していく!
「『ウラァアアアアアアアアアアッッ』」
タイヤが地面を擦る音、砂煙をあげてトライチェイサーは停止する。
後ろには粉々に砕け散った石像達の残骸、力をなくし手から離れた弓矢が転がっていた。
「………」
クウガはトライチェイサーから降りると、タイタンフォームに変わる。
そして扉の装飾に隠れていた陰を指名した。加勢されなかったのは幸いだが、気配自体はずっと感じていた。
「でてこいよ」
「おのれ……っ」
誰もが昔絵本で呼んだ事のある昔話、そこに出てきそうな容姿。
赤い体に二本の角、番人"赤鬼"はクウガに向かってとび蹴りをしかけた。
避けるそぶりすら見せないタイタンフォーム。鈍い音と共に、赤鬼の足が装甲に命中するが、逆に弾き飛ばしてみせる。
「何者だ、貴様! 花嫁の関係者か?」
「友達さ。大切な……大切なッ!」
クウガが構えをとると、ベルトの中心部が紫から赤に変わる。
赤い旋風を巻き起こしながらベルトからフォームを容認する音声が流れる。
「超変身!」
クウガの体が紫から赤鬼と同じ色に変わった。
マイティフォーム、クウガは再び構え直すと赤鬼と正面から対峙する。
「「………」」
風が吹く、クウガと赤鬼は互いに一定の距離を保ちつつ円を描くように歩き始めた。
どちらが先に仕掛けるか、緊張が場を包む。
「友人と言うだけで、命を……この世の全てを賭けるのかッ!」
先に動いたのは赤鬼だった、拳を振りかざしクウガに向ける。
二度三度と打ち込まれる拳を何とか受け流すとクウガは蹴りで赤鬼の腹部を突いた。
よろける赤鬼、その隙にクウガも二つの拳を同時に打ち込み、彼の胸を突く。
「おれ達はこの世界も守って見せる! 必ずッ!」
「そんな言葉が信じられるか!」
赤鬼が構えをとると、皮膚の色が変わっていく。鮮やかな赤が美しい青に染まったのだ。
青鬼となった彼は、先ほどまでとは比べ物にならないスピードに変わる。
「花嫁が死ねばいい! それで納得しろッ!」
まるで槍の様な棍棒を出現させ、青鬼はクウガの装甲を抉っていく。
火花が散りクウガも苦痛の声を上げる。
「たった一人、人間を犠牲にすればいい話なのに何故貴様は抗う。認めればいい! 納得すればいい!」
この世界に生きる者にとっては、アキラが死ねばいいだけだ。
アキラとは何の関わりもないし身内を危険にさらす事もない。
彼等にとって、今のクウガは何よりも平和を乱そうとする悪なのだ。
「それでもッ! それでもおれ達にとっては大切な仲間なんだよ!!」
超変身、棍棒をドラゴンロッドが弾く。
対峙する青と青、舞うが如く突き出される棍棒をロッドで受け流していくと胴に向けてスプラッシュドラゴンを放つ!
「ムンッ!」
「!」
青鬼の皮膚がまた変わる、今度は紫に。胴に向けて放った必殺技は確かに紫鬼を捉えた。
だが、その硬質化された皮膚はロッドの封印の力を通すことはなかった。
紫鬼はロッドを強引に掴むと思い切り引き寄せる。
「うぉっ!」
「ハァッッ!!」
重々しい一撃がクウガを吹き飛ばした。
豪腕から放たれた拳は、ドラゴンの装甲では受けきれない。
通常の倍以上のダメージを腹部に貰ってしまいクウガは地面へと伏せる。
『ユウスケ!』
「ガァァ……っ!」
力を込めるが立ち上がれない。
肺に空気が送られていないのではないかと思うくらい苦しい。
どうやら向こうも同じようなフォームを持っているのか、紫鬼は巨大な金棒を持ってコチラに歩いてくる。
「超……変身ッッ!」
金棒が振り下ろされ、火花が舞う。
かろうじてタイタンの装甲がダメージを軽減してくれた。
「どうしたッ! こんなものか? こんな弱い力で邪神に挑むつもりだったのかッ!」
「グゥウウ……!」
金棒に力を込める紫鬼、このまま押しつぶそうとする勢いにクウガも苦戦する。
力を込めるがより大きな力が自分に掛かろうと襲い掛かってきた。そして、こんな状況の中クウガの脳裏に浮かぶアキラの姿。
「―――ッ」
小野寺ユウスケ、彼と天美アキラの交流は我夢や亘、里奈に比べればとても小さな物なのだろう。
だが食事当番になった時は一緒に料理を作った。一緒に掃除をした、一緒に食事をした。一緒にテレビを見て笑った事もあった。
我夢と彼女がうまくいくように双護達と奮闘した事もある。確かに、それだけと言われればそうなのかもしれない。世界を敵に回す程の事なのかと言われてしまうかもしれない。
だけど、それでも一緒に過ごした時間は確かなものだったんだ。
「―――」
そんな彼女を助けたい、彼女の決断を利用して悪用しようとするヤツを許さない!
「ッ!」
紫鬼は自分を見上げるクウガの複眼に空が映っているのを確認した。
快晴、目にしみる青空がそこには広がっている。
「おれは――」
「!!」
違和感を感じる。
力を込めるが、金棒がビクリとも動かなくなったのだ。
そして青空がまるで自分の下にも広がっている様な気分になった。空が、溶けている。誰に? それは――
「おれは――ッッ」
「!」
我は、空――ッ!
「おれは、これ以上――ッ! 涙で終わる結末は見たくないんだッ!!」
皆アキラが死ぬと知って泣ていた。誰だってそうだ、涙は流す。
どんなにそれを、その悲しみを望んでいなくとも生きている限り人は涙を流す。
どうにもならない、そうなのか? それじゃあ悲しすぎるだろ!
「所詮子供の甘い感情が生んだ妄想にしか過ぎない。何を根拠に全てを救うと言っているのかは知らんが、そんな綺麗事がまかり通る程この世は甘くは無いッ!」
覚えておけ、そう言って紫鬼はありったけの力を込める。
クウガを押しつぶす勢いでその手に力を乗せた。
「―――あ?」
乗せた、つもりなのに……
「ッ!?」
何故か金棒が浮く。
どうして!? 何故――!
「ああ、そうッ! 甘い、偽善の綺麗事だって笑われてもしかたないッ!」
守ると言う事を掲げておいて、もし失敗すれば全てを失う。
まさに偽善、愚かな言い分だろう。
「だけどッッ! だからこそ現実にしたいんだろッ!」
「何ッ!」
「どんなに馬鹿に見えたとしても、綺麗事が一番なんだよ!!」
徐々に持ち上げられていく金棒。
どんなに力を込めてもクウガに力負けしてしまう、紫鬼の視界に広がる空。大きい、大きすぎる!
「もう、嫌なんだッ! 悲しい涙が流れるのはッ!」
「グァアアアアアッ!」
クウガは金棒を弾くと、タックルを仕掛け紫鬼を吹き飛ばした。だが紫鬼も吹き飛びながらも、金棒を投げてクウガにぶつける!
タイタンの装甲から火花が飛び散り、仰向けに倒れる。衝撃が大きかったのか変身が解除されてユウスケは地面を生身で転がっていった。
ふと空を見上げる形で倒れた。大きな空だ。青い、美しい空――
「………ぅう」
このままアキラが死ねば、彼女はもうこの綺麗な空を見れなくなってしまう。死ぬと言う事はそう言う事だ。
笑う事も、怒ることも、照れる事も、そして泣くこともできなくなる。何より、その感情を他人と共有する事すらできなくなるのだ。
「おれは、弱いかもしれない」
「何……ッ」
「だけど、それが理由でアキラちゃんを見捨てるなんて事はできない!」
ユウスケはよろよろと立ち上がりながらもしっかりと腰に手をかざす。
ベルトが、アークルが出現して彼はその構えをとった。
「花嫁を助け、かつ我らを救うと言うのなら。邪神を倒すほか方法はない」
邪神は、ユウスケたちが想像している以上に凶悪だ。
念を押すように紫鬼は語る。その邪神を倒すなどと軽く言われれば、それは怒りの感情が湧き上がるのもしかたない。
「我一人に苦戦する貴様に――ッ! 邪神を倒すと喚く資格などないッ!」
「おりゃぁあああああああああああッッ!」
「なっ! ぐあッ!」
エンジン音と共にトライチェイサーが紫鬼にぶち当たる!
吹き飛ぶ紫鬼を睨むのは、空野薫。
「そうね、アンタは正しいわ。間違っているのは私達よ」
たった一人の人間救う為に世界の人間すべてを危険さらす、まさに世界にとっては有害な存在。
「でも、あなたに分かる? 友達が、大切な後輩が死ぬって言う事の悲しさが!」
「………」
一瞬、紫鬼は沈黙してしまう。
彼にも大切な人はいる、もしその人がアキラと同じ様な立場になったら――
自分は素直にそれを受け入れられるのだろうか?
「いや違う! そんな事は我には関係ない!」
そんな事を考える意味もない。
アキラには気の毒だが彼女が選ばれた以上、情を移してはならないのだ。目の前のユウスケ達にも!
「たとえ、我の大切な人が選ばれたとて……我はそれを認めるだろう!」
紫鬼は金棒を構える。
「我は門番、ここを通すわけにはいかない! 天美アキラには、死んでもらう!」
「そう……よね。でも――」
ユウスケと薫は頷きあう。
命の重さは人によって価値が異なるものだ、大切な人間の命ならその重さは何倍もの大きさになる。
もう彼らにとってアキラの大きさはこの世界中の人間と同等。いやもしかしたら――
「私は納得できないのよ、どうしても……どうしてもアキラを助けたい」
「おれはこれ以上、悲しみを増やしたくない。その為に、どっちも犠牲にはしないッ!」
「どちらも守る事は不可能だ!」
走り出す紫鬼、ユウスケのベルトが紫の旋風を巻き起こし重々しい音声を発する。体が、足が、手が、クウガに変わっていく。
そして最後に顔が仮面で覆われた。泣けてくる、こんな試練は初めてだ。今までとは違う、だが今までと同じ様にクリアしなければならない。
涙がこぼれた。辛い戦いだ、負けられない。
そしてとても大きな物を敵にしなければいけない。もう一つの愛、正義と。
しかし涙は見えない、仮面がそれを隠すから。それでもいい、再びこの世界に真の笑顔が訪れるならば――
「おれも、守って見せる――ッ、必ず!」
『ユウスケ、まずは目の前の彼を、倒すのよ』
でなければ、覚悟は決められない。背負う重さ、覚悟、そして決断。
クウガ・タイタンフォームは薫をタイタンソードに練成させて、再び紫鬼と向き合った。全てを賭けた
だが超える。恐怖を、痛みを! 世界を!!
全てを受け止めろ! 我夢とアキラ。二人の為に!
彼らの愛の――
「『ウオォオオオオオオっっ!』」
「―――ッ」
愛の前へ立つ限りッッ!! その愛を、笑顔を――
「守るんだあぁぁああ!」
タイタンソードが金棒を弾き飛ばす。がら空きになったボディにカラミティタイタンを放った!
大きな青い空がクウガに重なる。
空我――ッ!
「ぬぅぅうううあああッッ!!」
紫鬼の皮膚は固いが、カラミティタイタンのダメージは大きい。
ダウンこそしないがきりもみ状にスピンして平衡感覚を失う紫鬼。そこへ振り下ろされるタイタンソード!
「ごわぁああああッ!」
地面が割れる程の衝撃と共に紫鬼は地面へ叩きつけられる。
だが、その衝撃で平衡感覚が元に戻った様だ。紫鬼は素早く体を回転させると、今度は皮膚を緑色に変えた。
「この世にはどうしようもない事がある! それを受け入れろッッ!」
緑鬼は金棒をボウガンに変えて鋼の矢を発射した。
タイタンの装甲も鋼の矢にはそれなりにダメージを受けてしまう。
「どうしようもない事だからこそ――ッ!」
超変身、ペガサスへと変わったクウガは地面を転がり素早く狙いを定める。
時間限界も多少は回復したようだが、それでも限界に近いのは変わりない。
持って十秒。途中飛んで来る鋼の矢を最低必要減の動きでかわすと、矢を解き放つ!
「『ブラスト・ペガサスッ!』」
「チィィッ!!」
矢は緑鬼のボウガンを打ち抜く!
手に衝撃が走っているのか、片手を押さえながら緑鬼は膝を着いた。
「どうしようもない事だから、おれ達は抗うんだ!」
昔、彼も少しばかりは憧れていたヒーローに。今、自分は姿を、力を借りる事ができた。
なら悲しいことや辛い事、助けを求めていたあの時――どうしようもできなくて諦めた過去を、繰り返したくは無い!
「この力に選ばれた時から、おれは皆を守りたいと思った――ッ!」
どうして自分がクウガになれたのかは今でも分からない。
だけど、少なくとも『力』と言う何よりの武器を手に入れた事は確かだ。
だったら今まで自分が救えなかった毎日に終わりを。少しでも多くの、身近にいる大切な人を守りたい! 笑顔にしたい!
「薫ッ! 超変身!!」
『うんっ!』
ドラゴンロッドが緑鬼を穿つ!
何故か、涙が止まらない。きっと自分でも分からない程に悔しいんだろう。
アキラが死ぬと言う世界の選択、どうしようもない事。過去いろんな事で見えない何かに何度すがったんだろう自分は?
葵が死んだ時、年甲斐もなく泣いた。どうしようもない世界の選択を恨んだ。
そして願った、正義の味方なんかが葵を生き返らせてくれくれる事を――叶うわけないのに、願った。
そして仮面ライダーと言う正義の味方が自分の前に明確なイメージとなって現れた。
記憶は薄けれど、昔自分もテレビの前ではしゃいでいたんだろう。こんな風になりたいと、願っていた。
そして葵が今、兄の側にいる。過去に祈った願いが具現した。それはまさに希望。
「ッッらあああああああああああ!!」
「うぉおおぉぉぉぉぉぉおおおッッ!」
クウガと青鬼の息も尽かさぬ攻防が繰り広げられる。
嵐のような連撃が二人の肉体と精神にダメージを蓄積させる。
倒れそうになる心、くじけそうになる足、しかし思い浮かぶのはアキラの笑顔。溢れる涙がクウガの――
ユウスケの心を倒す事を許さなかった。
また今回もすがるのか? また今回も祈るのか――ッ!?
自分には力があるのに、また途方も無い奇跡に賭けるだけなのか? 黙って見てるだけなのかよッ!
クウガに、仮面ライダーになれても自分は友達一人救えない。世界も友達も笑顔にはできないのかッ!?
そんなのは嫌だ! 嫌なんだ!
五代雄介にはなれない、そんなのは分かってる。
でもだけどせめて、せめてヒーローに、誰かを守れる。皆を守れる存在に一度くらいならせてくれよッ!
アキラを、我夢を、寝子達を――この世界にいる皆が笑顔で終われる結末を導く力が欲しい!!
「涙を流してもいいッッ!」
ドラゴンロッドのスピードが上がる、加速していく魂!!
「だけどッ! きっとその涙が笑顔に変わる様に――ッッ」
右に、左に、上に、下に、中央にッッ!
激しいドラゴンロッドの連打。押されていく青鬼、武器が追いつかない!
ふと気がつけば武器が手を離れ空中を旋回していた。
「戦うッッ!!」
「ごがぁぁぁ! がフッ!!」
叩き込まれるドラゴンロッドの連打。
「おれは――」
いや、誰だって一度は思うだろう。
「なりたいんだよヒーローにッッ!!」
英雄にッ!
「だけどなれないッ!」
皆知っている。
「うぉぉぉ!」
「ぐっ!」
それでも――
赤鬼に変わり、ドラゴンロッドに拳をぶつけてくる。
大きくのけぞるクウガ、そこへ今度は赤鬼のラッシュが仕掛けられる。
普通なら自分がヒーロー、英雄なんかになれる訳はない。知ってるんだよ、そんな事。
それでも、今その力があるのなら諦めたくない。
希望を抱かせてくれ! 『仮面ライダー』その名を背負う限り、足掻かせてくれ。
頼む、お願いだ。溢れる涙をかみ締めながらクウガは手をかざした。自分の涙は仮面の裏側に隠す。それでいい、全ては――彼女を笑顔にする為だ。
「友達を一人守れないで何が仮面ライダーだよッッ!!」
お願いだ五代さん、クウガ!
無力なおれに力をくれ! 全てを、笑顔に変えたいんだッッ!
「――ッ」
薫を見る、人間体に戻っていた彼女はクウガにたった一つの動作を送る。
サムズアップ。古代ローマで満足できる、納得できる行動をしたものにだけ与えられる仕草。
それに似合う男に……おれはなれるのか?『彼』はどうなんだろう。どんな気持ちだったんだろうか? 笑顔の為に戦う。なら、決めた。
「おれは、勝つ。勝って全てを笑顔に変える――ッ!」
涙を流したとしても、その悲しい顔を必ず笑顔で終わらせる。
小野寺ユウスケは薫にサムズアップをしっかりと返す。
「おれは――ッッ!」
襲い掛かる赤鬼を受け流し、巴投げを決める。
衝撃に悶える赤鬼の隙をついてマイティフォームへと姿を変えた。超変身!
「おれは仮面ライダー!!」
全て守る、全て救う!
足に炎の力が宿る。一歩踏み出す毎に熱い力が燃えたぎる!
NEW HERO, NEW LEGEND
「おれは仮面ライダークウガッッ!」
飛び上がり一回転、そしてそのまま狙いを定めた。
「正義をッッ!!」
「ッ!!」
炎の一撃が赤鬼の体を捉える!
回転しながら後ろへ吹き飛んでいく赤鬼、蹴られた部分にクウガの紋章が浮かび上がり――
「我の……負け――なのか…無力なのは……ど…ち――ら」
その場に倒れる赤鬼。
完全に気絶しており、もう覇気は感じない。
「くッ……ぅぅ――ッッ!」
クウガはその場に膝をつく。
ああ、きっと正しいのは赤鬼。でも、それでも――アキラを助ける、寝子達の世界を守りたい。
仮面ライダー、その文字通り仮面が全てを隠す。怒りも悲しみも、涙も笑顔も。
「ほい」
「ッ!」
ユウスケの前に差し出される手。
顔を上げると薫がニッコリと笑っていた。
「なーんかさ、いろいろ思いつめてるみたいだけど」
「――ッ」
「何か黒い意思がこの世界には渦巻いている。妖怪にとっても、私達にとっても害をなすもんがね」
だから、きっと――
「この世界は、アキラを犠牲にすればいいってもんじゃない……と、思う」
「……え?」
「あー、だからー……んー、なんていうかさ……」
薫は少し恥ずかしそうに頬をかく。もごもごと何が言っているが聞き取れない?
「大豆王国?」
「言ってないわ! んな事ッ!」
だから! 薫はクウガの背中を叩く!
「だからあんまり落ち込むなって! アキラも助けるし世界も助ける! アンタは一人じゃない、皆いる! あこがれてたライダー様が十名以上いるんだからきっと上手くいきます! 以上!」
薫はトライチェイサーにまたがると、座席後ろの部分をポンポンと叩く。
乗れ、そう言う意味だろう。クウガは変身を解きユウスケに戻ると薫の後ろに座った。
「やっぱり泣いてた」
「あ……」
仮面で見えないと思ってたんだけど、ユウスケは苦笑する。
「分かるっての、昔からの付き合いじゃない」
「あはは、そうだな」
「男は涙を見せないもんよ、もっと気張りな」
薫はアクセルを入れる。
いつの間にか薫の運転の方が上手くなっていた、校庭でよく誰かと一緒に練習していたっけ?
「じゃあまずはこんなモンかしらね、司達が上手くやってくれればいいんだけど」
「信じよう。司達なら絶対に大丈夫さ」
二人は頷くと、一旦門を離れる。
『なれるよ、君なら』
「え?」
「ん? どうした?」
「いや、今なんか言った?」
薫は首をふる。
ユウスケは少し首をかしげるが、薫の腰に腕を回す。力を込めないと振り下ろされるから。
西門
『ファイナルフォームライド』『リュリュリュリュウキ!』
龍騎レッダーは空に舞い上がるとその存在を門番に知らしめた。
巨大な体から放たれる龍の咆哮、その圧倒的な迫力に門番の妖怪は完全に怯んでしまった。
そしてさらに追い討ちをかけるようにファイナルアタックライドが発動。ドラゴンブレス、巨大な火炎球が門番を掠める様にして近くの岩場に命中した。
「―――ッ」
門番は完全に気絶してしまう。
あまりレベルの高い妖怪と言う訳でもなかったらしい。
いや当然か、前から巨大な要塞みたいな物と巨大な龍が現れたら勝てないと悟るだろう。
「拓真!」
「うん!」
巨大ビークルマシン、リボルギャリー。
その頂上部のハッチからディケイド達は身を乗り出す。
『ファイナルフォームライド』『ファイナルアタックライド』『ファファファファイズ!』
巨大なレーザーが門の周りにいる石像を破壊していく。
門番もその衝撃で完全に吹き飛ばされてしまった。
「加勢を」『トリガァ!』『マキシマムドライブ!』
「『トリガー・エクスプロージョン!』」
ダブルの構えた銃から巨大な火炎放射が放たれる。レーザーと合わさり、それは門を急激に熱していく。
そのまま轟音がなり響く。リボルギャリーごと扉に突っ込み、無理矢理に進入したのだ。城内は暗く先に何があるか全く分からない。
ディケイドは、リボルギャリーの中につれてきた寝子に案内を求める。
「私もあやふやだけど、なんとなくなら城内の構造が分かるわ」
「ああ、頼む!」
ディケイド達は一旦変身を解除して、各々のバイクに乗り込んだ。ライトをつけて闇の中に飛びこむ準備を行う。
しかしふとゼノンとフルーラがその場に立ち止まる。メモリガジェット、カタツムリを模したゴーグル。デンデンセンサーで闇の中を凝視するフルーラ。
少しシュールな光景だがいきなりの行動だ、何か考えがあっての事だろう。クスリと笑うフルーラ、ゼノンとフルーラはディケイド達に先に行くように指示する。
「安心しておくれ、すぐに追いつくさ」
「ええ、ちょっとゴミ掃除をしてから行くわ」
怪しく笑う二人。しかし今は味方だ、信頼できる仲間である。
疑う事は空しい、ディケイド達は頷きバイクを発進させる。
それを見送るとゼノンとフルーラは背中合わせで互いにもたれ掛かった。そして暗闇の中をにらみつけ、見下すように嘲笑しながら彼らはクスクスと笑い出す。
「隠れてないで出ておいでよ」
「妖力……って言うのかしら? それを偽るのは正解だったけど――」
気配を消さなきゃ意味ないもの。
フルーラはデンデンセンサーをしまうと、代わりにヒートのメモリを取り出す。
まるで見せびらかすようにメモリをちらつかせるフルーラ。ゼノンもトリガーのメモリを取り出して構える。
「へぇ、お前らも力を手に入れたクチか!」
「「………」」
暗闇の中から少年が現れる。
ジャケットやネックレスを見る限り妖怪ではなく、人間だろう。
ニヤニヤと笑いながらゼノン達のメモリを見ていた。
「外見は、まあ人間には見えないさ。だけど、『君達』には隠せない証拠がある」
「声、それは偽れないわ。あなた達、使用者はエコーがかかった様な声になるもの」
「使用者を隠す意味もあるその機能が、ボク達にとっては都合のいい判断材料になってくれる」
同じく、いやそれ以上に黒い笑みを浮べるゼノン達。
ふいにその言葉が出たのか、無意識なのかは分からないが少しメモリを握る力を強めて口にする。
「やはり、ガイアメモリ……財団の駒か」
「くはははっ! んだよ、お前らのメモリ見た事ねぇな!」
よこせよガキ、男は品の無い笑いを浮べてゼノン達に近づいてくる。
「はぁ? よこせだぁ? 馬鹿かよお前」
ゼノンの言葉に男はカチンときたのか、表情を強張らせる。
だがフルーラもゼノンもおびえる事はない、むしろ馬鹿にしたように笑っていた。
「あ? んだよ、ぶっ殺すぞ」
男はポケットからゼノン達が使うメモリを取り出した。
少しデザインが違い、ゼノンたちのそれよりサイズが大きめだが同様のものだろう。
『ウインドサイス!』
電子音が鳴り響き、男はメモリを注射のように腕に突き刺した。
すると男の体が全く別の物に変化していく。先ほどまで男は人間の容姿をしていた。
しかし、今男が人間だと信じる者が一体どのくらいいるのだろうか?
まさにそれは風を纏った
手はカマキリのように大きな鎌を備えており、それはアキラに会う為に訪れた妖怪城で二人を襲った妖怪、
「ヒトツミって奴が連れてきた連中は人間って訳だね。そうだろ? ドーパント」
「くはあははッ!!」
風と共に鎌鼬は二人に襲い掛かる。
サイドステップでかわす二人の間を駆け抜けると、鎌鼬はそのまま場外へ……門の外へと飛び出していく。
「やれやれ、どこまでも品の無い
AtoZでもなければ、T2でもねぇ糞メモリだとゼノンは吐き捨てる。
「あれはガラクタの量産型だろうね、目障りだ」
「これは退場していただくしかないわね! ウフフッ!!」
二人には全く焦る素振りがない。
まるで子供の遊びに付き合ってあげている保護者の様な振る舞いで外に出た鎌鼬を追いかける。しかも歩いて。
流石にこれにはイラついたのか、鎌鼬は風の刃を無数に発射。触れれば岩でさえ簡単に真っ二つにしてしまうだろう風力の刃。
だがこれも二人にとっては何の恐怖もわかない、ちゃちな微風。簡単に刃をかわしていくと、軽くいちゃつき始める始末だ。
「ああ! 風になびく君の髪は美しいね、素敵だよフルーラ」
「ワタシはゼノンに愛される為に生まれてきたの、嬉しいわダーリン!」
全く相手にされていない鎌鼬。イライラのメーターは限界を向かえ爆発する。
うぜぇぇんだよぉぉぉおッッ! そう叫びながら自分の周りに先ほどの倍以上はある風の刃を具現させた。
これを一気にぶつければ、眼下にいる二人は細切れになるだろう。
だが、それは二人が生身なら、でのことだ。いつまでもそんなチャンスを与え続ける程ゼノン達もお人よしじゃない、
彼らは互いのイメージカラーと言ってもいいメモリを発動させた。腰には既にダブルドライバーがセットされており、二人はニヤリと笑う。
『ヒィト!』『トリガァ!』
「「変身!」」
ベルトに装填される赤と青、二人はそれを左右に倒した。
光の軌跡がVの字を描き、それがゼノンとフルーラ。二人つながり、Wの文字に変わる。
『ヒート・トリガー!』
二人の体が弾け、青と赤の光りの球体に変わった。
無数の刃も、球体を空しくすり抜けるだけで全く無意味なものとなる。
「くそがッッ!!」
クスクスと二人の笑い声が聞こえてくる。
鎌鼬を馬鹿にして様に笑う二人にどんどん怒りの感情がこみ上げる。
そして、それだけでは終わらない。
「ぐあぁぁッ!」
二つの球体は鎌鼬めがけ飛翔。それぞれは突進をしかけ、鎌鼬にダメージを与えていった。
反撃しようにも刃が球体をすり抜けるのだから意味が無い。
二つの球体は鎌鼬をこけにした後、彼の頭上で一つになる。
耳に入ってくる電子音。瞬間何か頭に当たる固い物、そして走る衝撃、鎌鼬は猛スピードで地面へ叩きつけられる。
「ぐあぁぁ――ッ!」
痛みと共にすさまじい熱を感じた。
上を見ればトリガーマグナムを構えるダブルが見えるではないか。
ダブルはゼロ距離で鎌鼬の頭部を射撃すると、そのまま地面へと着地する。
痛みに悶え頭を抱える鎌鼬を鼻で笑うと、ダブルは大きくポーズを決めた。大げさで意味のないポーズ。
「『妖怪を偽り、人間を騙し、心さえ踏みにじらんとする君の罪は許されない!』」
許されない。作ったような声、まさに演劇だろう。
ダブルはトリガーマグナムをくるくると回しながら地面に転がっている鎌鼬を指差す。
「さあ! 君の罪に清算を!」
ゼノンの声が。
『さあ! 貴方の世界に終焉を!』
フルーラの声が。
「『悲しみの舞台よ! その幕は、このダブルが降ろす!』」
二人の声が重なり合う。
仮面ライダーダブル、これで決まりだ!
「汝が罪を穿つは、蒼き銃弾」
『疾走するは、裁きを下す紅の猛火』
ダブルは起き上がろうとする鎌鼬に赤き弾丸を撃ち込んでいく。
鎌鼬もまた風を発生させて防ごうとするが、威力の差がそれを許さない。
突風の壁を貫いて炎の塊が鎌鼬を捉え、焦がす。
「ガァァッ!」
「ハッ、ボクの天使を馬鹿にした罰さ」
『ゼノンを馬鹿にするのは許さないわ!』
鎌鼬は舌打ちをして飛翔。
慣性の法則を無視したトリッキーな動きで飛び回り、ダブルを翻弄する。
ヒートトリガーの弾速では動き回る鎌鼬には中々当たらない。軌道を予測しようにも、一貫性のない動きだ。予測しきるのは不可能に近いだろう。
『むきーっ! イライラよ! フルーラちゃんは激おこなのよー!!』
「おーけー! じゃあ幻想で!」
『了解よゼノン! あははっ!』
ダブルは襲い掛かる刃をステップでかわしていく。
遠くからみればダンスを踊っている様に写るだろう、そして左手には黄色のメモリが握られていた。
フルーラは鼻を鳴らしてヒートのメモリをベルトから抜き取る。
『ルナァ!』
「罪を照らすは黄金の幻想」
『ルナ・トリガー!』
音声と共にダブルのソウルサイドが黄色に変化する。
ダブルはメモリによってフォームチェンジを行うのだ。
幻想銃士ルナトリガー、ダブルは同じようにトリガーマグナムの引き金を引いた。
「当たるかよッッ! ヒャハハハ!!」
鎌鼬は空を小刻みに移動する。
どんな弾丸も避けられる絶対の自信がある様だ、事実ルナトリガーの放つ黄色の光弾も簡単に避けられてしまう。
笑う鎌鼬、狙いを外したダブルは無言だった。避けられた事が悔しいのだろうか?
「オラァッ! こうなったら直接切り刻んで――」
「……フッ!」
「あん? ――――ゴフッ!!」
背中に走る衝撃、鎌鼬は急いで後ろを振り向く。
何だ? 何がおこった? 不意打ちか、鎌鼬の目に映るのは……
「なっ!?」
『んふっ、避けられるかしら?』
自分の目の前に黄色の光弾が迫っているのが見えた。
そして命中、鎌鼬は衝撃で地面へと落ちる。何故!? 避けた筈なのに――ッッ
「!」
いや、違う! 避けてなかったのだ。
ルナトリガーの放った光弾は、まるで生きているかのように『動いて』いた。
迫る光弾を再びかわる鎌鼬、すぐに光弾の行方を確認する。
「くそがッ!」
銃弾は外れたと思いきや向きを変えて再び鎌鼬を追いかけてくる。
追尾弾、どんなに逃げようとも自動で追いかけてくる弾丸!
なんてやっかいな。鎌鼬は風の刃を発射させ相殺を狙う。しかし追尾弾は風の刃をもかわし、標的である鎌鼬を狙っていく。
「ば、馬鹿なッ! ガアアアアッ!!」
「あーあ、駄目だよもっと早く動かないとぉ」
着弾、動きが鈍る鎌鼬にさらに着弾していく光弾の群れ。
引き金を引く毎に追加されていく弾丸は鎌鼬の体を戦慄させる。
もう弾丸の方をどうにかするのは不可能と知り、鎌鼬はダブルに向かっていく。本体止めなければ――
「踊れ、黒き道化よ」
ゼノンは向かってくる鎌鼬を確認するとトリガーのメモリを抜き取り、代わりに黒いメモリを装填した。
『ルナ・ジョーカー!』
青が黒に染まり半身が黄色、もう半身が黒に変わる。
幻想の切り札、ルナジョーカーは向かってくる鎌鼬に向かって手を突き出した。
「あぁ!?」
理解するのに鎌鼬は時間が掛かりすぎた。
突き出した右腕はまるで鞭の様にしなり、まるでゴムのように伸びる!
腕と言う名の触手と言った方がいいだろうか、ダブルの右腕は鞭となり鎌鼬の体に絡みつく。
巻きつく力もなかなかに強くジタバタともがく鎌鼬がより滑稽に見えた。クスクスと馬鹿にした様な笑い声が鎌鼬の耳を貫く。
煽るような攻撃の数々に、怒りが膨れ上がるが、同時にそれは冷静ささえ失わせる。
「クフフフ、君は力を手に入れて舞い上がる子供のようだね」
『哀れだわ、ウインドサイス。人間である筈の貴方がドーパントとして何を望むのかしら』
二人はメモリを抜き取り、今度は緑と銀のメモリをベルトに装填した。
音声が鳴り二人の体の色が変化する。ダブルは声高らかに叫び、ポーズを決める。
「闘志よ集え! 幕を下ろすは白銀の力」
「風よ舞え、翠眼に映る我が決意よ」
『サイクロン・メタル!』
火花が散り、鎌鼬の手にある鎌がダブルに命中する。
ダブルは腕を前に出して鎌を防ぐがそれも鎌鼬の狙いだった。
鎌は手に引っかかっている、そのまま引けばダブルの手は切断されるだろう。
笑う鎌鼬、何の迷いも無く腕に力を込めて手前に引いた。
どんな悲鳴を聞かせてくれるのだろうか?
クソ生意気なガキが泣き叫ぶ姿を想像するだけで笑えてくる。
「……あ?」
「ハハハッ! どうしたんだい?」
だがおかしい! どんなに力を込めてもダブルの腕が体から離れる事はなかった。
これだけの力を込めているのだ、普通なら今頃左腕が空に舞っている筈なのに! いやそれどころかダブルの腕には傷一つ無いではないか。
「――ァ」
いや違う。こみ上げてきた『痛み』に鎌鼬は全てを理解した。
自分はダブルの腕を切断するつもりで腕を引いた。だがそれが間違いだったのだ、苦痛の声を上げて鎌鼬は後ろへ下がる。
自分の手、鎌が大きく刃こぼれをおこしていた。ありえない、いや違うのだ。
今のダブル、ボディサイドは銀色。メタルと言ったか、あの状態ではまさに鋼の防御力なのだろう。
「あぐぉ……テメェら! そのメモリは――」
「君が知る必要はないよ、さあどうしたんだい? もう終わりなのかな?」
『これ以上は無駄と知りなさい。どうかしら? ゼノンに謝罪すると言うのなら許してあげても――』
「黙れくそガキがぁあああああッ! ゴミはゴミ同士仲良くしてろよッ!」
鎌鼬は風の力を鎌に付加し、直接切りかかってきた。
ため息をつくダブル、どうやら今の劣勢が認められないらしい。
愚かな、笑うダブル。力に溺れ自らの力を見誤った愚者。裁きを下す時は来たようだ。
「ゴフゥゥッ!」
「馬鹿な男だ。力を過信したな」
『謝る気がないなら許してあーげない!』
ダブルは棒状の武器、メタルシャフトを鎌鼬に打ち付ける。
サイクロンのメモリは風の力、スピードをメタルシャフトに付加させ力を与える。
激しいラッシュに鎌鼬は太刀打ちできず、風の刃もだダブルが巻き起こした突風でかき消されてしまった。
「そろそろ終幕、フィナーレといこうかッ!」
『ヒート・ジョーカー!』
赤と黒。怯んでいた鎌鼬の体に赤い拳が叩き込まれる。苦痛の声を上げ大きく吹き飛ぶ鎌鼬。
ダブルはジョーカーのメモリをベルトに備えられているマキシマムスロットに装填する。そして挿入されたメモリを弾いた!
『ジョーカァ! マキシマムドライブ!』
「くぅッ――ァァァア!」
ようやく自分の状況が分かったのか、鎌鼬…ではなくウインドサイスドーパントは恐怖におののく。
懇願するウインドサイス、何でもするから助けてくれ――ありがちな言葉を羅列させて助けを求めた。
だがダブルはそれを却下した。命こそ奪う事はないが、このまま見逃すなどできる訳もない。
「わ、わかった謝る! 謝れば――」
『身の程を知れ! 自らを鎌鼬と称し、妖怪を語った愚か者め!』
「ヒッ!」
鎌鼬の名を汚した哀れな子よ、ダブルの芝居がかった口調が逆に恐怖を煽る。
それになにより、ダブルは声を合わせる。
「『愛を見下した罪を、償うがいい!』」
ダブルの両手が激しく燃える! 赤い炎と黒い炎。ダブルは笑い飛び上がる。
二つの炎はジェット噴射の要領でダブルの上昇を加速、増加させる!
「『焼け死ねよ、ゴミが――!』」
「ぐっ! アアアアアア―――………!!」
ウインドサイスは顔を覆う。そして――
「なーんてなッ!! 馬鹿がッ! 空中じゃ身動きもとれねーよなぁ!」
ウインドサイスは尻尾についている鎌を大きく振る。巨大な風の刃が発生してダブルを狙った!
奥の手、ずっと隠し持っていた切り札と言うことなのだろう。成る程、今のダブルは確かに避ける手段がない。
空中にいるだけでなく鎌鼬に向かって加速しているため、余計に刃の威力があがる。このまま行けばダブルの体は縦に裂かれてしまう!
「真っ二つにしてやるよぉおお! 半分こ野郎がぁぁッッ!!」
「――ッ」
刃がダブルを――
「望みどおり」 『これでいいのかしら』
「!?」
引き裂く事はない。なぜなら、もう既に彼……彼らは真っ二つになっていたからだ。
ソウルサイド、ヒートのフルーラ。ボディサイド、ジョーカーのゼノン。彼らはそれぞれ繋がっていたのに刃へ触れる前に分離する。
それぞれ半分に裂けたままダブルはウインドサイスに突撃していく!
「覚えとけよカス野郎。お前とボクらじゃ――」
メモリの数、メモリの質、そしてその力を使う役者の質の――
「レベルが違う」
「う、うわぁああああああああああッッ!」
「『ジョーカーグレネード!』」
分裂したダブルのフックが炸裂。
赤と黒の炎を纏ったラッシュはウインドサイスを逃がさない!
「……罪に溺れて消えろ」
「アァアアアアアアアア!!」
ダブルの体がまた一つに重なった時、大爆発が起きる。
そして投げ出されたのはメモリの力で変身した人間、そして粉々に砕けたウインドサイスのメモリだった。
そして、ある所では――
「では私達はこれで。後は任せましたよ」
黄金の大鷲、その刺繍が入った黒いドレスに身を包む少女。
まだ幼さの残る顔立ちに可愛らしい髪飾りがよく似合っていた。少女の名はクルス。
彼女は深い闇の中に溶けるかの様に立っている。彼女が話しかけた人物は二人だ。
その者達は、彼女に頭を下げると一歩後ろへと下がっていった。
「うふふ、くれぐれもゲストの方達に気を使わせる様な事はしないでねぇ?」
彼女の右隣では妖艶な女性が微笑んでいる。
怪しげな笑みを常に浮かべており、とても余裕と怪しさに満ち満ちていた。
名を、チェーンソーリザードと。
「では、神聖な支配をッッ!!」
クルスの左隣にいた男性が声を上げる。
一見してみればメガネをかけていると言うだけ、どこにでもいる様な男性だが――
同じく、彼も狂気と気品にあふれていた。鋭利な狂気、ジャガーの様な瞳。
三人はその言葉と共にオーロラを出現させると、そこを経由して消えていく。
残された者達は深く頭を下げると、踵を返して歩き出した。
そしてその背後には巨大な眼が。なんて恐ろしい眼だ、まるでそれは邪悪の塊。
「うまくいけば……邪神は完全体となります」
「ああ、もちろんそのつもりさ」
では、始めよう。
時は来た、今こそこの世界に神聖な支配を!
そう言えば前の鎧武とトッキュウジャーでカチドキのテーマ流れたけどコウタの人歌うまいね。
あと和ロックっていうの? ああいうの結構好きなんで本編でもちょくちょく流れてほしいもんですね。
最近あんまり流れないからね、まあ鎧武はサウンドがいいから別にいいんだけどウィザードはちょっと気になったな。
はい、でですね、次はちょっと遅れるかも。未定でございます。
なるべく早くしますが、まあ気長に待っててください。ではでは