仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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バトライドウォー2のプレミアムサウンドの響鬼欄にフラッシュバックがあったけど、あれ響鬼の戦闘歌として機能できるよね。ライダーチップス版だと完全に処刑ソングとして使える気がする。

なんで、まあこの作品も響鬼の戦闘歌はフラッシュバックで想像してみてください。
やっぱ戦闘中に歌流れるって燃えるよね。あとクウガにも一応各フォームのテーマソングとかはあるんだよね。


第36話 1552

 

 

「よし、皆それぞれ門は突破したみたいだ」

 

 

話は現在に戻る。司達はそれぞれが門を突破した事を知ると、マシンのアクセルを加速させていく。

正直、計画には無かった南門からの侵入者が気になったが放送を聴く限り向こうにとってもイレギュラーな存在である事は間違いない。

それはこちらにとっては好都合だ。なんにせよ敵をかく乱できた事には変わりない。

 

 

「僕達の他にも侵入者がいた……」

 

「多分、同じ事考えた妖怪がいたとか?」

 

 

アキラを助けたいと思ってやってきたのか、それとも他に意図があって進入してきたのか。

どちらにせよ世界を敵にまわす行為をそう簡単にやる訳がない。この混乱に乗じてなんとか駒を上手く進めたいのだが――

 

 

「外から見ただけだが、最上階付近に小さな離れの様な部屋があった。多分あそこにアキラはいるんじゃないか?」

 

「そうかもしれません。だけど、とにかく今は目目連を封じないと」

 

 

既に壁には無数の目が出現しておりコチラを凝視していた。監視システム目目連。

壁に攻撃をしたとして、目目連はすぐに隠れてしまう。意味の無い行動をしている時間はない。悔しいがもう自分達の明確な位置が敵に知られてしまっている。

ならば早く、追っ手が来る前に早くッ!

 

 

「とは言っても、部屋の数が多いね……!」

 

 

拓真の言う通りだ。

妖怪城の中に入ってしばらく走っていたが、段々とバイクでは走行できない程の位置までは来た。

城と言うに相応しいのか、畳や襖、障子など和式作りの階層にやってくる。通路も狭くなってきたので一旦バイクを降りて進むことに一同は決めた。

 

 

(アキラさん……)

 

 

焦ってはいけないと思いつつも、そう簡単にはいかないのが人間だ。

障子を開ける手につい力が入る。ここに居る訳ない、そう分かっていてもつい期待してしまうのだ。

 

 

「百目がいる部屋はきっともう少し上だと思うわ。だけど、可能性も無くは無いから……」

 

 

寝子はそういいながら後ろを振り向く。

来た、もう少し余裕があると思っていたがそうでもないらしい。司達もベルトを構えてコチラにやってきたソレを確認する。

 

河童(かっぱ)兵、妖怪城を守護する一員である。

アクロバティックな跳躍を繰り返しながらコチラに向かってきた。

寝子が言うには今やってきたのは下級兵士。言語を理解する程の知識はなく、命令に忠実な妖怪だと言う。

それは話し合いの余地が無いと言う事だ。正直、戦いたくはない。しかしその甘さは捨てねば。

その弱さは仮面で隠す。でなければこの先に進めはしない!

 

 

「二体か、真志!」

 

「おお、分かってるぜ」

 

 

前に出たのは司と真志、拓真達に捜索を続ける様に言うと二人はベルトとバックルを出現させる。

二体の河童兵は二人に恐れる事なくむしろ加速して向かってきた。司はライドブッカーからディケイドのカードを取り出し、それをディケイドライバーへと装填する。

真志はデッキを構え手を斜めに突き出し構えをとる、そしてデッキをバックルに装填した。

 

 

「変身!」『カメンライド』『ディケイド!』

 

「変身!」

 

 

司の周りに各ライダーの紋章が出現してそれぞれが司に収束する。

その後カードプレート状の装甲が、まるで顔面に突き刺さるように装備されていき体にマゼンダの色彩が追加される。仮面ライダーディケイドへの変身。

真志の周りから鏡合わせの様に灰色の龍騎が出現し収束。二転程回転した後に龍騎へと変身を完了させた。

 

 

「……行くぞ!」

 

「ああ! ッシャア!」

 

 

鳴き声をあげて突進してきた河童兵をディケイドは受け流す。

妖怪城は不思議な事に外からの見た目と、内部の広さが違う場合があると言う。

事実今司達がいる場所はとても城の中とは思えない構造だった。

 

廊下、そして部屋。

それはいいとしても中庭がある。室内にしては異端過ぎるのだ。しかしそれに驚いていてはいけないのだろう。

ディケイドは中庭に河童兵をおびき寄せると、ライドブッカーを銃に変えて引き金を引いた。

 

 

「ッ!」

 

 

河童兵はせまる銃弾を跳躍一つでかわして見せた。

想像以上に素早い様で、一気にディケイドとの距離をつめると、河童兵は蹴りでディケイドに攻撃を仕掛けていく。

龍騎もまた同じく河童兵の素早い動きに惑わされてダメージを受けているではないか。

 

 

「やれやれ……ッ!」

 

「あー、くそっ!」

 

 

しかし、ディケイドも龍騎も焦る様子は無い。

二人は河童に弾き飛ばされながらも一枚のカードをそれぞれ構えて立ち上がった。

 

 

『カメンライド――』

 

「変身!」『カブト!』

 

 

立ち上がるディケイドの体に六角の波紋が広がっていき、姿がカブトに変わる。

そして間髪入れずにもう一枚カードをドライバーに装填した。

 

 

『アタックライド――』『クロックアップ!』

 

 

跳躍してきた河童がまるでスローモーションの様に遅くなる。

先ほどのお返しだ、ディケイドは河童兵のがら空きになった胴に蹴りを入れて吹き飛ばす。

ディケイド視点反対にゆっくりと飛んで行く河童兵。当然それを見ているだけとはいかない、それよりも速くディケイドは河童の背後へ移動して再び蹴り上げた。

軌道が上へ変わる。そんな無抵抗な河童兵を待っていたのは――

 

 

「ハアァッ!!」

 

 

河童兵にはまるで一瞬だっただろう。

蹴りでディケイドを追い詰めていたと思ったら腹部に衝撃が走り、さらに上空へ打ち上げられる。

わけが分からないまま落下していけば回し蹴りが自分に命中する。それを理解できただろうか? 河童兵は中庭に備えてあった大きな岩に叩きつけられて気絶した。

 

 

「!」

 

「余所見はいけないぜぇ!」

 

 

その様子に驚き、龍騎と対峙している河童兵の動きが鈍った。

だが隙を龍騎は見逃さない。彼もまた一枚のカードを発動させて河童兵を掴む。

 

 

『リミッツベント』

 

 

龍騎の鉄仮面の奥にある複眼が発光する。

一定時間身体能力が跳ね上がるリミット、龍騎はそれなりに重量がある筈の河童兵を簡単に持ち上げた。

 

 

「こんのおぉぉおおおおッッ!!」

 

 

龍騎はそのまま河童兵を上へと投げ飛ばした。

いくら室内に思えないとは言え、やはり室内は室内。つまり天井が存在しているのだ、河童兵は物凄い勢いで天井へ打ちつけられる。

それだけでも十分すぎる程の衝撃だがまだ終わらない、落下してきた河童兵の腹部にストライクベントのドラグクローが打ち付けられた。

 

 

「――――ッ」

 

 

リミット状態でのストライクベント。

その威力はすさまじいものだ、河童兵の意識が一瞬飛んだ。

 

 

「じゃあな!」

 

 

そして追撃、ドラグクローの口から放たれる炎弾。

ゼロ距離で受けた河童兵は真上に吹き飛んで再び天井に叩きつけられ、そこで完全に意識を失った。

 

 

「「うっし!」」

 

 

ハイタッチを決めるディケイドと龍騎。

しかし余韻に浸る時間はない、河童兵は無数に存在しているのだ。

もたもたしていると数十体近くの河童兵がやってきてしまう。多人数で攻められればディケイド達に勝機はない。

既に拓真達はこのフロア全ての部屋を確認してくれていた。やはりアキラも百目王もいなかったが、次へ進める。

多少強引だがバイクを発進させて再び奥へと進むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

封印石の間。そこでは鏑牙と瑠璃姫、そして気絶している鬼太郎がいた。正確に言えば岩亀も。

城内には相変わらず侵入者の進行状況を告げるアナウンスがうるさく流れている。瑠璃姫はそれをつまらなさそうに聞いていた。

 

 

「退屈ですね」

 

「………」

 

 

鏑牙は何も答えない。

瑠璃姫は少しムッとした表情をして鬼太郎に視線を移す、しかしどうやら彼は今完全に気絶している様だ。

いくら彼程の力を持った者であっても封印石の力にはかなわないらしい。それでも抗えているだけ十分凄いのだが。

瑠璃姫はため息をつくと岩亀に視線を移す。トコトコと歩く姿は可愛らしいが、やはりそれだけだった。

 

 

「無視はいけませんねぇ」

 

「………」

 

 

瑠璃姫のしつこさに鏑牙は諦めたのか、彼はゆっくりと目を開けた。そしてため息を一つ。

それは呆れからの物なのか、それとも同意の物なのかは分からない。しかし事実鏑牙も今の現状に若干の違和感を感じている様だった。

 

 

「お前の気持ちは分かる。傍観者として降り立ったが、これでは少し退屈だな」

 

「でしょう? ヒトツミさんも人が悪い。こんな退屈な世界――」

 

 

生きている価値なんてない、そうやって黒い笑みを彼女は浮かべた。

まして彼女達にとって侵入者の存在はどこか気に入らない点がある訳で。

愛の為に世界と命を賭ける。大変結構な事だが、少しそれは眩しすぎやしないだろうか? 光だけじゃ世界は構築されない。

 

 

「花嫁の想い人が侵入者の中にいるんですよね?」

 

「ああ、おそらくな」

 

 

じゃあと瑠璃姫は立ち上がり出口に足を進める。

素晴らしく簡単な理由だ、ココにずっといるのは退屈。

まして傍観者として立ち振る舞うのも疲れてしまうと言うもの、ならばそんな退屈な役割は捨ててしまおう。

 

 

「行くのか?」

 

「はい、大それた決断をした人を見に行ってきますね」

 

 

そう言って彼女は封印石の間を後にする。

残された鏑牙は針金の様な髪をかきあげると、面倒くさそうに封印石の前に移動した。

 

 

「いるか?」

 

『……はい』

 

 

水晶に移るのは老婆、鏑牙はその老婆に向かって瑠璃姫が動いた事を報告した。

彼女からはなるべく自分達は大人しくしていてとの事だったが――

 

 

『ええ、かまいません。瑠璃姫様がお好きなように動いていただければ』

 

「そうか、悪いな。アイツは自由が好きなんだ」

 

 

ところで、鏑牙は老婆に侵入者の事を聞いてみる。

仮にもこの国に逆らうのだからソレ相応の力を持っていなければならない筈だ。

しかしこの国、世界における実力者は多くが生贄賛成派の筈だ。事実鬼太郎と言う切り札も封じられている。

にも関わらずコチラに戦いを挑むとはよほどの馬鹿か強力な力を持ったものでしかありえないだろう。そこが鏑牙が気になるところだった。

 

老婆は彼の言いたい事を全て理解していた。

事実彼女もそれと全く同じ疑問を持っていたからだ。彼女とてその真意を知るわけではない。

現れた侵入者はなにやら不思議な力を持っているという事くらいしか分からないのだ。

 

 

『一応既に"狂人"は忍ばせておきました。連中も気がついていないようです』

 

 

その言葉に鏑牙は少しだけ笑みを浮かべる。

自分の為に分かりやすく言ってくれたのだろう、彼は老婆に礼を言う。

狂人か。成る程、ゲームをかき乱すには重要な役割だ。無害を装っても実は中身は闇で満たされている。結構な事じゃないか。

 

 

「しかし、そうなるとお前達も少しは危険視していると言う事か」

 

『異物は何をしてくるか分かりませぬから』

 

「まあいい、そこらへんは瑠璃姫が探ってきてくれるだろう。俺達は傍観者から舞台へ上がらせてもらうぞ」

 

 

老婆はその言葉に頷くと姿を消していく。

鏑牙はソレを確認すると、また適当な場所を見つけて座り目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不気味ですね」

 

「え?」

 

 

我夢は後ろでしがみついている寝子にその事を言う。どうも警備が甘いような気がするのだ。

目目連によって今自分達の位置は相手に晒されている。にも関わらず敵は下級河童兵しか差し向けてこない。

河童兵に数で来られればこちらも厄介だろう。向こうとて花嫁を、目目連を失うのは大きな痛手になる。ならもっと本気で潰しに掛かるのが普通ではないだろうか。

ましてそう、門番も一人だなんて警備が薄い気がする。石像は優秀な警備システムかもしれないが、本気は感じられない。

 

それにこのままならいけるのではないかと淡い期待がよぎってしまう。

それは逆に何か大きな罠があるのではないかと思考してしまうのだった。

寝子もその事については薄々感じていたようだ。確かに今こうやってバイクを走らせているのに向かってくるのは河童兵だけ。

道が全然違うのか? それとも何か意図したものがあるのか?

 

正直不安になる、こうしている間にもタイムリミットが迫っているのだから。

足掻けば足掻くほど、そのジレンマ。見つからないという恐怖が迫る。

 

 

「わからない。気をつけていきましょう」

 

「はい……」

 

 

真剣に考える寝子。

我夢は思う、もし誰も犠牲を出さずに終わったとして……寝子達は許されるのだろうか?

もう目目連を通して寝子や幽子の姿も敵にはバレている。国に、世界に歯向かった罰をとらされるのではないだろうか。我夢はそれが不安だった。

 

 

(いや、まずは全てが終わってからか……)

 

 

アキラから来たメール。その最後の文を思い出す。

死なせない、必ず助けてみせる――ッ! 我夢はもう一度決意を固めて、ハンドルを強く握るのだった。

 

 

 

 

しばらくそうやって道を進んでいると、広い場所にでた。

薄暗い空間のためか、余計そう感じる。

 

「―――ッッ!」

 

「おばばの予想では、この上に行けば百目王のいる部屋に近づけるかもしれないの」

 

 

彼らの前には無数の階段が存在していた。階段の間、砂かけ婆はそう言っていた。

文字通り階段が無数に存在して各々が別々の部屋に繋がっている。しかし司達が息をのんだのは、階段の間が大きな『穴』になっている事だった。

落ちれば奈落の底。つり橋が無数に存在していると言った方がいいか、階段から足を踏み外せばそのまま落下してしまう。

下にある階段に落ちればまだしも、最下層まで落下する可能性があるのだ。

 

 

「な、なんでこんなつくりにしたんだよ……」

 

 

無数の階段、しかし落ちれば……

真志はふと階段の下を見てみる。そこは闇、下の地面が全く見えない。

地下か、それとも気づかぬうちにそれなりに上がってきたのかは分からない。

まあ変身すれば落下しても死にはしないだろうが――

 

 

「し、下はトゲトゲだったりして……」

 

「「「―――」」」

 

 

拓真の一言で場が凍る。

言われてみればそうかもしれない。こんな足場が悪く、逃げ場が少ない場所なんて格好の的じゃないか!

もし下の方にトラップが仕掛けられていたら……

 

 

「へ、変な事言うなよ!」

 

「ご、ごめん」

 

「……行きましょう、最上階の階段はあそこです」

 

 

しかしそんな事を気にする事なく我夢は階段を駆け上がっていく。

その行動に少しだけ呆気にとられた司達だったが、彼らも意を決して階段に足をかけた。

下を見ないようにしてそれぞれは階段を上がっていく。

 

 

「我夢すげーな……これ――っ!」

 

 

 

無数に配置されている階段、手すりもなく柵も無い粗末な物を我夢はどんどん上っていく。

この先に彼女を助けられる可能性があるのなら彼は進む事をやめないだろう。

薄暗い室内、岩肌がむき出しになった壁、底が見えない闇、粗末な作りの階段。

どれもが恐怖を煽る。しかし彼女が今感じている恐怖、それに比べればこの程度の恐怖なんて――

 

 

「………」

 

 

真志は頷くと我夢の後を着いていく。

彼の味方をすると決めた、ならばどこまでも着いていくだけだ。

たとえそれがどんな危険の中だろうとも守ると決めたのだから。

真志に続く面々。しかしそんな時だ、ある程度皆が階段を進んだらふとそれが目についた。

 

 

「羽……?」

 

 

黒い羽、カラスだろうか? いやカラスにしては大きすぎるし形も不自然だ。

まるで刃物の様な形状の黒い羽。鳥類の物だろうが、大きさも通常のソレに比べるとあきらかにおかしい。不自然だ。

嫌な予感がする。無意識に足を速める我夢達、辺りを見回すが敵らしい影はない。だから油断していたのだが――

 

 

「フフフッ!」

 

「「「!!」」」

 

 

笑い声、それが聞こえたかと思うと――

 

 

「なッ!!」

 

 

悲鳴が聞こえる。一瞬何が起こったのか分からなかった我夢だったがはっきりと見た。

真志が何か黒い影に襲われ、バランスを崩す姿を!

 

 

「しん――ッ!」

 

 

名前を言い終わる前に真志ははるか下、奈落の底に消えていく。

落とされた!? 身構えるメンバーにさらに襲い掛かる影。次は美歩が、寝子が……次々に落とされていく仲間達。

一体何が起こっているのか? 司はディケイドに変身するとその影に向かって銃を発砲した!

 

 

「あらあら、レディに銃を向けるのは関心しませんね」

 

「!」

 

 

我夢達が進むべき階段の頂上、そこに一人の女性が舞い降りる。

黒を基準とした服に身を包んでおり、美しい女性だった。

 

しかし分かる。普通じゃない、何かがおかしいと。

この状況でニコやかに笑みを浮べている自体おかしな話だ。落下したメンバーが気になるが、異様なまでの緊張で下を向く事ができない。

我夢と司だけとなったこの空間、そして笑みを浮べている女性。

 

 

「安心してください。下にはトラップなんてありませんよ」

 

「何ッ!?」

 

 

階段は無数に存在している。

だから一人くらい下の階層にある階段に着地していないかと思ったがどうやら無駄な考えらしい。

女性は誰一人下の階層にある階段に着地させることなく、全員を最下層の地面まで叩き落したと言う事なのか……

 

 

「お前……ッ!」

 

「天美アキラ」

 

「!!」

 

 

その名前を聞いた瞬間、我夢の眼の色が変わった。

今ディケイドは我夢の前にいたため、後ろを振り返れば我夢の顔が見える。だが――

 

 

(我夢――ッ お前……)

 

 

怖い。何故かそう感じた。異常なまでの殺気、それがディケイドの背後から嫌でも感じ取れた。

感情が爆発する? 一瞬そう感じたが、我夢はあくまでも冷静に口を開く。

 

 

「アキラさんは……今どこに?」

 

「教えると思いますか?」

 

「………」

 

 

何故か嬉しそうに女性は話す。

自己紹介がまだでしたね、女性は笑みを消すと真顔で二人にお辞儀をした。

 

 

「私の名は瑠璃姫。申し訳ありませんが――」

 

 

また、黒い羽がディケイド達の周りに舞い落ちて……

そこでディケイドは悟る。この羽もまた普通ではない! すぐに我夢に変身する様、注意しようとしたのだが――

 

 

「貴方達の努力は、ここで潰えます」

 

「――ッ!」

 

 

我夢もまた音角に手を伸ばしたが間にあわなかった。

彼の周りに落ちた羽はまるで生きているかのように動き出し、一気に我夢を囲んで収束する。

無数の羽は我夢を拘束し、そのまま浮遊を始めた。

 

 

「クソッ!」『カメンライド――』

 

 

すぐに助けなければ――ッ!

ディケイドはブレイドのカードに手を伸ばすが……

 

 

『アーマー』

 

 

電子音。

ディケイドの背後で聞こえたそれ、すぐに何事かと振り向くディケイドに赤い刀が振り下ろされる。

 

 

「うぉおっ!?」

 

 

刀を紙一重でかわすとディケイドはすぐに後ろへと跳ぶ。

自分の背後にはいつの間にか甲冑を模した鎧を纏い、鬼の仮面を被った化け物が立っており先ほどまで自分がいた場所には刀が振り下ろされていた。

仲間か? それにしては気配が無かった。ディケイドの心から余裕が消える。

 

瑠璃姫の黒き羽によって掴まった我夢、そして背後には謎の化け物。

コイツも妖怪なのだろうか? しかし鬼甲冑が現れる直前に聞こえた電子音。

 

 

「まさか――」

 

 

瑠璃姫の口元がつり上がる。

まさか、コイツらが妖怪を騙っているという人間なのか!?

 

 

「鬼甲冑、あなたはあの少年を。私はこの男を」

 

 

瑠璃姫の言葉に無言で"鬼甲冑"は頷く。

ディケイドはブレイドにフォームチェンジすると、ブッカーをソードモードにして構えた。

今自分の背後には瑠璃姫が、そして前には鬼甲冑。そして瑠璃姫の隣に黒い羽の檻に閉じ込められた我夢がいる。

つまり鬼甲冑が我夢を相手にする為には自分が邪魔になっているのだ。何か仕掛けてくるに違いない、それとも実力行使で俺をどかせるつもりか? ディケイドの手に力がこもる。

 

 

「ふふふ……」

 

 

ガシャガシャとうるさい音を立てて鬼甲冑がコチラへやってくる。

もう迷う時間はないか、ディケイドはカードを取り出して発動させる!

 

 

『アタックライド』『マッハ!』

 

 

まずはお前からだ。

ディケイドは踵を返して瑠璃姫を狙うッ!

 

 

「うぐぅああああああああッ!!」

 

 

だが足に衝撃と痛みが走り、ディケイドは思わず膝をつく。そしてクスクスと笑う瑠璃姫。

どうやら完全に読まれていたようだ。しかしどんな手を? 辺りを見回すが何もおかしいところは無い。しいて言うなら階段に無数の羽が落ちているだけ。

 

 

「まさかっ!」

 

「うふふ、ご明察」

 

 

サディスティックな笑みを浮べて瑠璃姫は指を鳴らす。

すると彼女の背中から漆黒の翼が生えた。まさにそれは堕天使、美しくも禍々しい姿だ。

地面に落ちていた無数の羽。それはただの羽ではない、彼女の武器、彼女は羽を爆弾に変えていた。

いくら加速していようともそれを上回る爆発には勝てない。ダメージを負い、動きが鈍るディケイドに瑠璃姫は突進をしかける。

 

 

「ウグッ!」

 

 

よろけるディケイド。

この狭い階段でバランスを崩せば。

 

 

「さよならだな」

 

「!」

 

 

そして眼前に迫る刀、鬼甲冑の振り下ろした一閃。

なんとか紙一重でディケイドはそれを避けるが、彼に待っていたのは奈落の闇だった。

まだだ、ブッカーを開くディケイド。フォームチェンジがなんとかできればとカードに向かって手を伸ばす。

 

 

「残念、させません」

 

 

妖艶な声が耳元で囁かれる、ふと左を見れば笑顔の冷めた笑顔の瑠璃姫がこちらを見ていた。

抵抗を許さぬその追撃、ディケイドは瑠璃姫が巻き起こした黒い旋風に飲み込まれてしばらく動きが封じられてしまう。

 

 

「あぐぁッ!」

 

 

なんとか下の階段に落下して体制を立て直すディケイド。

しかし間髪入れずに無数のカラスが彼の周りを囲んだ。

 

 

『アタックライド』『メタル!』

 

 

鋼の体がカラスの攻撃を防ぐ。

なんとか今のうちに活路を見出したいとろろだが……?

 

 

「!」

 

 

カラスが突如自分の体に密着して動かなくなった。

どう言う事なんだ!? 焦るディケイド、そしてカラスが黒く光り輝く。

 

 

「ッ!」

 

 

先ほどまで動き回っていたカラスが、布の様な物に変化する。

それはまるでみの虫の「みの」の様にディケイドにまとわりつき、動きを封じた。

メタルの効果が解除されて動く事が許されたディケイドだが、カードに手を伸ばすことが出来ない!

 

 

「これで終わりですね」

 

「くっ!!」

 

 

強い! なんて多彩な攻撃方法なんだ。

見るからにまだ余裕そうな瑠璃姫、まさかこんなヤツがいるなんて。

ディケイドは状態異常を回復する術をまだ持ってはいない。瑠璃姫は勝利を確信した様に笑い、その翼で大きく羽ばたいた。

黒き旋風が巻き起こされる!

 

 

「ぐぅぅぅッッ!!」

 

 

踏み込むが手が使えない以上何かに掴まると言う選択ができない。

結局、少し足掻いたもののディケイドもまた奈落へと落下していくのだった。

 

 

「ふふふ。お姫様を助けるには、まだまだ実力が伴っていないのでは?」

 

 

瑠璃姫は再び上層へと移動すると、羽の檻を解除する。

 

 

「ぷはっ! ……ぐっ!」

 

 

呼吸が苦しかったのか我夢はその場に膝をついて咳き込む。

鬼甲冑も瑠璃姫もしばらくそれを眺めていたが、ふと瑠璃姫が我夢に問いかけた。

どうしても、それが聞きたかったのかもしれない。これは純粋な疑問、瑠璃姫の興味本意だ。

 

 

「我夢、といいましたか」

 

「………ッ」

 

 

花嫁の名前を出した時、一際目立つ殺気を放っていた人物が彼。つまり花嫁の大切な人か……もしくは片思い。

どちらにせよ花嫁の死を望んでいない、否定したがっている愚かな人間(ばか)。恐らく、男女間の関係なのだろうか?

 

 

「もし、今ここで天美アキラの救出を諦めると宣言するなら――」

 

「………」

 

「あなたの命だけは助けてあげますよ。誓います」

 

 

ですが、瑠璃姫は念押しの様に強く強調して言いはなつ。

 

 

「断るなら、今ここで殺します」

 

 

この提案を受け入れないと言う事は、つまり自分と鬼甲冑の二人を相手にしなければならないと言う事。

簡単な話じゃないか? 好きな人間だろうとも彼はまだ子供だ。命があればこの先どれだけの女性と出会えるだろうか?

ほんの短い淡い恋、それでいい。きっと我夢はこの提案を受け入れるだろう。瑠璃姫は半ば確信していた。

 

人生の中で何度かあるだろうひと時の淡い恋。それで命を捧げるなんて馬鹿げてる。

きっと最初は悲しくても、時間がたてばアキラのことなんてどうでもいいと感じる様になる。

瑠璃姫はそんな事を我夢に言い聞かせた。

 

 

「どうだっていいではありませんか。一番大切なのは、自分の命の筈」

 

 

地面に膝をついて、うつむいたままの我夢。

そんな彼の肩に瑠璃姫は手を乗せる、そして優しく微笑んだ。

 

 

「さあ、答えを聞かせてくれませんか?」

 

「………」

 

 

そう言いつつ、瑠璃姫は我夢の背後に自らのエネルギーで練成したカラスを出現させる。

もし我夢が尚アキラを助けるなどと馬鹿な事をぬかせば、一撃で心臓を刺し貫くように。

そしてもう一度彼女は優しく微笑んで我夢に答えを求めたのだった。

 

 

「―――な」

 

「?」

 

 

我夢が何かを呟く。しかし声が小さくてうまく聞き取れなかった。

 

 

「今、なんといった?」

 

 

鬼甲冑が刀を我夢に突きつける。

絶体絶命の状況、正直嘘でもここは瑠璃姫の提案に乗るのが普通だろう。

しかしそれでもいい、"その程度"だと分かればそれでいいのだ。瑠璃姫はもう一度我夢に問いかける。

 

 

「さあ、我夢。天美アキラを諦めると宣言しなさ――」

 

 

顔を上げる我夢。瞬間、凍る空気。瑠璃姫は自然と口を言葉を止めてしまう。

それほどまでに、それが自然に感じる程に世界全体の時間が止まったようだった。たった一つの感情、"恐怖"を除いては。

 

 

「ふざけるな」

 

 

簡単だった。ただ、ただカラスを突進させればいいだけ。

それで簡単にこの人間の胸を、心臓を貫ければいい。それだけなのに――

その行動を瑠璃姫はとらなかった。相変わらず笑みは崩しておらず、あくまでも余裕のままだったが彼女は後ろへと飛翔した。

つまり回避をとったのだ。直感的、本能が知らせる。目の前の男、相原我夢。この男は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな我夢の様子を観測する魔女とナルタキ。

ふと、黙っていた魔女が口を開いた。

 

 

「ナルタキ、この男……相原我夢。調べたか?」

 

「ああ、特に普通の人間だ。まあ、"再構築者"ではあるが……それは全員であって――」

 

 

魔女はいきなり拍手を始めた。

何の脈絡もない突然の行動にナルタキは思わず言葉を止めてしまう。魔女は笑い、そして説明する。

 

人間にはそれぞれ生まれ持った才能がある。

もっとも勉強ができる、運動ができる、音楽が得意、絶対音感、絵が上手い。その才能とは違う潜在能力、そう言った類の存在が世界にはある。

そしてふとした瞬間に、それは目覚め力となる。どういった経緯でその潜在されていた力が目覚めるのか? それは様々だ。

 

 

「そして、相原我夢にもそう言った存在がある」

 

 

要は才能があると言うこと。

だがしかしそれは決して目覚める事はなかっただろう、"普通"に暮らしていれば。

普通に生きること。毎日朝起きて、食事をして、学校に行って、勉強をして、友達と遊んで、恋をして、眠って、また起きて。

そのまま大人になって、その過程でどれだけの事を体験しようが彼のその才能、能力は目覚める事なく一生を終えていただろう。

 

だが――目覚めた。

そのスイッチは、その能力の開花は彼が『鬼』になった事で皮肉にも目覚めた。

目覚めなければよかったのか、それは分からない。少なくとも普通に生活しているだけならば使う事のない能力だろう。

 

 

鬼としての、才能は。

 

 

「相原我夢、もはや間違いない」

 

「………ッ」

 

「こいつは――」

 

 

この男は――

 

 

「化け物だ」

 

 

戦闘センスの特化。

 

 

 

 

 

 

 

後ろへ飛んだ瑠璃姫、しかし鬼甲冑はそうではない。

彼は瑠璃姫が後ろへ飛んだのは我夢の始末を自分に任せたのだと……そう思ってしまった。

だから鬼甲冑は刀を振り上げる。瑠璃姫の様に後ろへ引かず、前に出てしまった。それが何よりの間違いだとも知らず。

 

 

「グォアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

鬼甲冑の悲鳴が階段の間に響き渡る。

瑠璃姫は今度こそ確信する。ああそうか、そうだったのか。

間違っていたのは自分だ。侮っていた、馬鹿にしていたようだ。人間を、いや相原我夢を――ッッ!!

 

 

(なんと、愚かな!)

 

 

そして、何と強力な存在――ッ!

鬼甲冑が紫色の炎に包まれて階段から落下する、瑠璃姫はそれを見て瞬時に指を鳴らした。

すると黒い羽を媒体とした結界が生成され鬼甲冑の落下を防いだ。

 

 

(厄介なのは、向こうもか……)

 

 

瑠璃姫は鬼甲冑に我夢の始末を任せると、自らは飛翔して姿を消す。

何故自分はここで引くのだろう? 自分でも分からない状況に彼女はつ笑みを零す。

 

 

(なかなか、面白くなってきましたね)

 

 

彼女は鼻歌を歌いながら、一旦パートナーの元に帰ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうぅううあッッ!!」

 

 

鬼甲冑は何とか炎を振り払いもう一度刀を我夢に向ける。いや、我夢ではなく紫炎の塊へと。

轟々と燃える紫の炎。我夢に切りかかろうとした時、何か綺麗な音が聞こえて気がつけば自分と我夢は炎に包まれていた。

一つ明確な違いがあるとすれば自分はこの炎によってダメージを受けた。しかし我夢は違う、この炎を纏っているのだ。

 

 

「!」

 

 

炎をマントの様に翻して我夢は現れる。

いや違う、炎が弾けそこから現れたのは我夢では……人間ではない――ッ!

 

 

それは、響く鬼。

 

 

「さあ、そこをどいてもらおうか」

 

 

赤と紫。

マジョーラの輝き。鬼がそこには立っていた。

 

 

「く――ッッ!!」

 

「邪魔なんだよ、お前は」

 

 

仮面ライダー響鬼・覚醒。

 

 

「ぐぅぅッ! 貴様ァッッ!」

 

 

響鬼は激情する鬼甲冑に何の興味も示さず辺りを見る。

結界が張られていたのか、しかし気になるのはやはりあの電子音。

鬼甲冑が現れる前にアーマーと言う単語が聞こえたのを覚えている。

 

 

「ゼイッ!!

 

 

余所見をしていた響鬼に、鬼甲冑の一閃が襲い掛かる。

油断大敵、普通ならば響鬼の体は縦に裂かれ、絶命するのだろう。

 

 

「!」

 

 

しかし、響鬼は振り下ろされた刀を確かに掴んでいた。

どれだけ力を込めようともその刀はビクともしない、鬼甲冑は信じられないといわんばかりに必死にもがく。

それを響鬼は見下すように一瞥すると、掴んだ手に力を込める。

 

 

「なっ!」

 

 

手に炎がまとわりつき、瞬間――鬼甲冑の刀は粉々に砕け散った。武器を失った彼に続いて迫る響鬼の拳。

反応が遅れガードが間に合わなかった鬼甲冑、そこへ着弾する拳はまさに大砲。炎を纏いながら鬼甲冑は吹き飛んでいく。

 

 

「お前、妖怪じゃないな――ッ?」

 

 

響鬼はバックルに備えてある自らの武器、音撃棒(おんげきぼう)を構える。

鬼を模した太鼓のバチ、その先端に炎が灯り響鬼は火炎弾を自分の『真上』に向けて発射する。

一見すると全く意味の無い行動。鬼甲冑に向けて放てばいいのに、何故か響鬼は自分の真上に炎弾を発射するのだった。

 

 

「―――ッ! 妖怪さ、俺はな」

 

 

立ち上がる鬼甲冑、今度は拳を構えて突進してくる。

それを鼻で笑う響鬼、音撃棒をしまうと挑発する様に手招きをする。

ふざけるなッ! そう雄たけびを上げて鬼甲冑の右ストレートが響鬼を狙う。刀は無くともその重量のある体から繰り出される一撃は相当な威力があるだろう。

そう、別に刀が無くとも彼は十分に戦える力があった。拳や蹴りだけでも響鬼に対峙する資格を持っている。

だが一つ、彼には運が足りなかった。

 

 

「な――ッ!」

 

 

響鬼は片手で彼の拳を受け止めると、そのまま後ろへと流す。

よろけてがら空きになった背中に響鬼の炎を纏った連撃が叩き込まれた。

呼吸が止まり意識が跳ぶ、鬼甲冑・アーマードーパント。その名の通り甲冑を模した鎧に包まれているのにも関わらず、これほどのダメージを――?

 

響鬼の拳が命中するたび、何か鈴の様な音が聞こえる。

美しいリズムを刻みながら、そして激しいメロディを奏でながら響鬼は拳を撃ち込む。

アーマーも反撃を試みるが、まるで赤子の手をひねるようにあしらわれ踊らされるだけ。

何故だ! 何故勝てない!! 何故攻撃が当たらない!? 鬼甲冑は苛立ちを隠す事ができなかった。

未だに攻撃をかすらせる事すらできない状況、それが怒りとなり鬼甲冑の心を焦らせる。

それは攻撃の隙を増加させてしまう。またしてもわき腹に蹴りを決められて鬼甲冑はよろよろと後退していった。

 

 

「グッッ! オォォオオオオオオオオッ!」

 

 

鬼甲冑の怒りが頂点に達する。

冷静な判断を捨てて、ただ響鬼を殺す為に彼は走り出した。

絶対に拳を当てるとばかりの威圧に響鬼は何を思うのだろうか?

 

 

「終わりにしましょうか」

 

 

何故か響鬼は両手を広げてその場に立ち尽くす。

迫る鬼甲冑、しかし響鬼は防御をする姿勢すら見せない。ノーガードで受けきれる攻撃ではない筈だ、それは響鬼だって分かっている。

では何故、この様な行動をとるのか?

 

 

「死ねぇえええええええッッ!!」

 

 

鬼甲冑の拳が、響鬼に―――

 

 

「………」

 

「僕は言いましたよ、終わりだってね」

 

 

鬼甲冑の拳は響鬼に届く事は無かった。

代わりに今、彼の頭部は激しい炎に包まれている。

あの時音撃棒で響鬼が上空に放った炎弾、それが今落下して鬼甲冑の頭部に直撃したのだ!

つまり響鬼は炎弾が落下する場所に彼をおびき寄せたと言う事になる。

 

激しく燃える炎。

そのまま鬼甲冑は地面へと倒れて動かなくなった。響鬼は音撃棒を取り出し、もう一度炎弾を彼にぶつける。

爆発。鬼甲冑は大きく吹き飛ぶと、『人間の姿』をさらけ出す。隣には粉々に砕けたメモリが散らばっていた。

 

 

(やっぱり、人間……ッ!)

 

 

響鬼は変身を解除して我夢へと戻る。

目の前で気絶している人間、どうやら粉々になっているアイテムであの化け物へ変身したと考えるのが普通か。

しかしゼノンが盗聴した話を聞くに、こいつらが影で暗躍している連中なのだろう。

 

と言う事はあの瑠璃姫もコイツらの仲間、そしてこの城内は目目連の監視下にあるらしい。ならば自分が映っているだろう状況で変身するだろうか?

もし人間が妖怪を騙っている事がばれればコイツ等にとってもいい話ではない筈だ。じゃあ、答えは一つしかない。

 

今この部屋は目目連に監視されていない、そんな辺りだろう。

つまり新参で入った目目連の統率者、百目もまたコイツらの仲間。ふざけやがって、我夢は小さく舌打ちをすると結界を破壊して階段の間へと再び戻ってくる。

どうしようか、何とかして司達を助けたいが自分も落ちてみるか? 

 

 

(それしかないか……)

 

 

我夢は小さく深呼吸をすると、自ら階段を蹴る。

奈落の闇が、彼を出迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我夢くんとゼノンくんから連絡があったよ、人間がメモリで化け物に変身する。そんな連中がいるらしい」

 

「つまりその化け物が自分達は妖怪だと偽っていた訳か」

 

 

翼達もまた各々の目的の為に城内を駆け回っていた。

しかし既に居場所は割れている為、無数の河童兵が彼らの進行を拒む。

だがアギト、カブト、ガタック。三人はそれぞれの力を最大限発揮して河童兵たちをなぎ払っていった。その様子に先ほどからずっと幽子は口を開けてばかりだ。

ふと気がつけば河童兵が宙を舞い、風が吹いたと思えば河童兵が吹き飛んでいく。武器を持った上級河童兵も超高速には勝てず、猛威を振るうアギトにも手が出ない。

三人は我夢からの連絡を受け、鬼太郎の捜索を一旦止めて百目の討伐に目的を変える。我夢は司達と合流するらしく、ゼノン達もまだ司達のところにはつかないらしい。

 

 

「それにしてもメモリか。ゼノン達と何か関係があるのか?」

 

「さあ、そこまでは分からないみたいだね。尤もゼノン君達が使っているメモリと同質のものらしいけれど」

 

 

アギトとカブトの蹴りが河童兵を沈黙させる。

 

 

「二人共、一旦変身を解除しよう」

 

「オッケーせんせー」

 

「分かった」

 

 

なるべく戦闘以外では変身を解除して力を溜めておきたい。いつ、どこで強敵に出会うか分からない状況なのだ。

しかしコチラの場所が分かっている以上リスクもでかい。いつでも変身できるようにもしておかなければ。

 

 

「ん?」

 

 

そんな中ふと鏡治がある物をみつける。

何故かこれまた外見とは合わぬ洋風の通路、そこに鏡治たちはいたのだがその部屋の一つ。そこにお札が貼ってあった。

なにやら豪華な装飾が施されている扉から察するに……

 

 

「まさか――ッ!」

 

 

あの中にアキラが!? 鏡治は直ぐに扉を開く。

 

 

「?」

 

 

しかし部屋の中には何も無い。

今まで探ってきた部屋と同じ作り、テーブルとシャンデリア、ベッドが備えられているだけの客間だった。

特に人の様子も無く、辺りを見回しても何も目立つ物はない。

 

 

『おい、何をしてるんだ? 翼が呼んでるぞ』

 

「あ、ああ。わかった」

 

 

何で札なんて貼ってあるんだ?

気になるが何もないのならこれ以上ここにいる意味も無い。鏡治は大人しく翼達の所へ戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫か皆……!」

 

「お、おう……なんとかな……」

 

 

司、ディケイドは周りのメンバー達や寝子に声をかける。

あの時瑠璃姫に落とされて、ディケイド達は全員穴の底。つまり最下層まで落とされてしまったのだった。

なんとか変身して危機をしのいだが、上を見ればはるか向こうに階段の影が見える。

恐らくは地下まであるのだろう。それに我夢の事も気になる、今から飛んでいけばまだ間に合うかもしれない。

 

ディケイドのグループは龍騎、ファム、ファイズ。そして寝子だ。

なんとか寝子をキャッチしつつ自分達は変身し、今に至るわけだが……

 

 

「ちょっと、アレ……!」

 

 

皆が準備をしようとした時、ファムが声をあげた。

不安と恐怖、そして緊張が混ざった様子に一同は嫌な予感を覚える。

 

 

「――ッ!」

 

 

視線をファムに合わせる。その時、ファイズの脳裏によみがえる敗北の記憶。

歯を食いしばるファイズ。そして緊張の中、震える寝子。今彼らがいるのは最下層の巨大なホール。

何も無いただ薄暗いだけの巨大な円形状の地形。その岸壁、すこし突き出た場所に――

その妖怪は座っていた。

 

 

『愚かな侵入者共よ――』

 

 

数多の音が重なったような声、そして漆黒の衣から溢れる闇。

何より長い髪に、素顔を隠す不気味な仮面。ファイズとアギト、二人がかりでも一撃とてダメージを与える事ができなかった。

その妖怪サトリ。彼がディケイド達を見下している。

 

まずいな、ディケイド達に走る嫌な……何かこう肌がビリビリする感覚。

そう、目の前のサトリ。明らかに今までの妖怪とはレベルが違う。

河童兵やあの瑠璃姫ですら適わない何か威圧感の様なものがあった。

似ているならオーディンをあげようか、とにかく実力と言うものを感じる。

 

勝てない?

いや、勝たなければならない。ディケイドは素早くライドブッカーに手を――

 

 

「グ――ッッ!!」

 

 

手に衝撃と火花が走り、ディケイドは手にしたカードを地面へ落としてしまう。

サトリが素早く投げた闇の短剣。それがディケイドのカードを弾いたのだ。

 

 

(コイツ……っ、俺がカードに手をかけた瞬間に――ッッ)

 

 

なんて判断能力なんだ、カードに手をかけた時にはもう既に短剣が手にヒットしていた。

つまりカードに視線を移した時くらいにはもう短剣を投げていた!? なんて反射神経、まさに化け物。

 

 

「一気に決めようぜ! 美歩! 拓真!」『アクセルベント』

 

「うっし!」『アクセルベント』

 

「うん!」『Complete』『Start Up』

 

 

アクセルベント、アクセルフォームを三人は発動する。

あの時は発動を防がれたが、今はもうそうじゃない。効果が分からないサトリにとって超高速の攻撃はかわせる筈がないのだ。

三人はそれぞれ加速する為に足を踏み――

 

 

『刹那もまた、静止する時の中では零を刻む』

 

「「「!?」」」

 

 

意味が分からない。訳が分からない。理解できない! 何が起こったのか、三人は全く分からなかった。

ただ現実を受け止めるのであればファイズがフォームチェンジ、龍騎たちがカードを発動した後に、サトリが自らの髪を抜いてそれを投げたと言う事。

その結果サトリの髪はまるで生きているかの様にファイズ、龍騎、ファムの手足に絡まり硬化する。

 

それはまるで鋼のワイヤー。

三人の手足はサトリの髪によって封じられてしまい、その場に倒れる以外の選択を拒む。

 

 

「な、なんだよコレッ!!」

 

「動けないッッ!!」

 

「ちょ! 時間!!」

 

 

動けないのなら、高速移動など全く無意味になる。

自分達に目もくれる事無くディケイドと戦っているサトリを見て、三人もまた理解する。

ただ者じゃない、サトリは異常だ。結局何もできずに時間切れとなる三人。そして同じタイミングでサトリに吹き飛ばされるディケイド。

 

 

「な、なんだッ!」

 

 

何なんだこの強さは!? ありえない! ディケイドはどうしても認められなかった。

力は無いが、素早い攻撃で反撃の隙を与えないクウガドラゴンフォーム。カメンライドしたディケイドはロッドでサトリに素早い攻撃をしかけたのだ。

しかしその攻撃がサトリに当たる……いや、掠る事はなかった。全てを読まれ、全てをかわされ、全てに反撃を行われる。

 

反撃? 隙なんて一瞬だ。

それこそ隙と言う程のものですらない! なのにコイツは!!

 

 

「クソッ!!」『フォームライド』『クウガ・ペガサス!』

 

 

超感覚、これなら――

 

 

『………』

 

 

舞うサトリ、一瞬で隙をつめられた。

焦るな、ディケイドはまだ冷静だ。どこから攻撃がこようともかわす自信があった。

 

 

「――――」

 

 

だがサトリは攻撃をしない。

かわりに、ディケイドの耳元で奇声を発しただけ。大声で叫んだだけ――

普通なら別にそこまで怯む事はなかっただろう。しかしペガサスフォームとなれば話は変わってくる。

集中力がそがれるだけではない、大声が頭の中をグチャグチャにする。轟音、まさにそれはディケイドの脳を揺する一撃。

 

 

「うぁあぁあああ………ッッ!!」

 

 

ふらつくディケイド、視界が歪み意識が定まらない。武器を地に落として膝をつくまではいい。

しかしそのままにしてくれる訳もない、サトリは地に伏したディケイドを思い切り蹴り上げると空中にて無防備となった彼に無数のエネルギー弾を当てていく。

 

 

「ぐあぁああああああッッ!!」

 

 

そんな馬鹿な!? 闇の炎に身を焦がしながらも、ディケイドは必死に考える。

そもそも何故サトリはペガサスフォームの効果が分かった? それともあの奇声自体に攻撃力があるのか!?

 

 

『視界、それもまた愚者にとっては脅威か』

 

 

地面に落下していくディケイド。

だがサトリはまだ追撃を加えられたのにも関わらず、突如後ろを振り向き回し蹴りを決める。

もちろん後ろには誰も居ない、彼のキックは空しく空振りを――

 

 

「あぐッ!!」

 

 

普通何も無い空間に蹴りを放ったところで、それは意味の無い行為でしかない。

だがもしそこに何かがあったなら、蹴りを放つ意味もあろうと言うものだ。サトリは何も無い空間に蹴りを入れた、そう思っていた。

しかし違うのだ、サトリの蹴りは確かに命中していた。姿を見せたのはファム、クリアーベントによって姿を消していたのにも関わらずサトリは的確にファムを捉える。

 

 

「なん……でッ!」

 

『理由など求めるな、人間』

 

 

お前達はここで死ぬ、そう言ってサトリはファムのバイザーを弾く。

うかつだった、ファムは己の油断を嘆く。カードにかけた手には力を込めていたがバイザーを握っていた手には力を抜いていた。

バイザーにカードをセットできなければ意味は無い。追撃、ファムは闇の炎を全身に受けて壁へ叩きつけられる。

 

 

「いっでぇ……!」

 

「美歩――ッ!」

 

 

ファムがやられた事に激情する龍騎。

素早くストライクベントを発動させてサトリを狙う。

 

 

『………』

 

 

ドラグクローの口元が赤く光り輝き、直後龍騎は思い切りその手を突き出す。

龍の頭部から炎弾が放たれサトリに向かった。しかし、サトリに命中する筈の炎弾。

それはサトリの衣に弾かれて向きを変える、龍騎へと。

 

 

「グッ!!」

 

 

炎弾が龍騎に反射されて命中する。

龍騎は思う、何故サトリはストライクベントが飛び道具だと分かったのか?

確かにドラグクローの口元は光っていた。距離も開いていた為、飛び道具がくる事は予想できたか?

焦る龍騎、ファムとファイズもまた身構える。隅で震えている寝子を見るに、相当上級の妖怪なのだろう。

起き上がるディケイドを含め、四人対一人。にも関わらずサトリは全く動じる素振りを見せない。

 

 

「だったら、消し飛ばしてやるよッッ!」『ファイナルフォーム――』

 

 

また一瞬でサトリはファイズの目の前に移動、そして彼のベルトに手を伸ばした。

あまりにも自然な動きにファイズは全く反応できない。サトリはファイズギアに備えられているフォンを抜き取ると思い切りギアに掌底を決める。

 

 

「は?」

 

 

変身を強制的に解除させられる拓真。

当然ディケイドが発動したファイナルフォームライド、ファイズブラスターは無効化される事に。

 

 

「――ッ」

 

 

サトリはそのまま拓真を掴むと後ろへ向ける。

そこには同じくファイナルフォームライドによって姿を変えたリュウキレッダー。

しかし拓真を盾にされてはどうにもできない。結局、そのまま戸惑っている間にリュウキレッダーもとび蹴りで吹き飛ばされてしまった。

案外見た目は軽そうでも、エネルギーを纏ったサトリの攻撃は重々しい。

 

 

「つ、司! カブトでチャッチャとやってくれない!?」

 

「あ、ああ」

 

 

異様な恐怖、ディケイドは遂に切り札のカブトを――

 

 

『高速、それもまた夢』

 

 

何度、この感情を持ったのだろう。

短い時間なのにも関わらず彼らはその実力に脱帽していた。

クロックアップによって攻撃をしかけるディケイド。効果の継続時間も長め、それならば負ける訳はない。そう確信した部分もあったのに……

 

 

「嘘……だろ?」

 

『虚構、それが世界だ』

 

 

ディケイドの放つ攻撃が全てサトリにかわされていた。

忘れてはいけない、ディケイドはクロックアップを発動しているのだ。だが、当たらない!

ライドブッカーの多種にわたる攻撃のアドバンテージ。それを物ともしないサトリの力。一体彼にどんな攻撃が通用するのだろう?

全てをかわされ、反撃される。そもそもクロックアップの音声で効果が分かったのだろうか? それでも電子音が読み上げる数秒だ。

それで次にくる攻撃が高速移動だと彼は分かったのか!? 

 

 

「くっ、寝子!」

 

「!!」

 

 

そもそも、どうして急に寝子は震えだしたのだろう?

先ほどまで、あんな高いところから落ちたときも彼女はそこまで怯えていなかったのに。

司に声をかけられた事で、よりいっそう寝子は震え上がる。

 

サトリはそうしている間にディケイド達へ相手に突進をしかけた。

単調な動きかと彼らは思ったが、想像以上のスピードで彼らを弾き飛ばす。

回転しながら岩壁に打ち付けられていくディケイド達。拓真も変身が間に合わず、大きなダメージを受けてしまった。

 

 

「よ、妖怪の中でも……サトリ様は恐れられているわ……ッ!」

 

 

寝子は震えながらも、しっかりと答えた。妖怪の知識が豊富な砂かけ婆すらサトリの能力は分からない。

昔から妖怪城に住んでいる事は知っているがあまり普段の噂は聞かない。何を考えているか、全く理解できない存在なのだ。

 

 

「くっ、なんなんだよ!」『アタックライド』『スラッシュ!』

 

 

ライドブッカーを思い切り振り回すが全く当たらない。

何故こんなにもサトリに攻撃が当たらないのか? 防御ではなく回避、心が折れそうになる。こんなヤツ相手に本当に勝てるのだろうか?

何をしても、どんな攻撃をくりだしてもサトリはそれをかわしてみせる。そして逆にサトリの攻撃は全くガードできない!

 

 

「うわぁああああッ!!」

 

 

吹き飛ばされるディケイド達。

サトリの表情は仮面をつけていてよく分からないが、それが逆に不気味だった。

 

 

『愛、それは何と儚く脆い存在か』

 

「な……何ッ?」

 

『花嫁を助ける理由、貴様らは愛の為に花嫁を救うと言う』

 

 

そしてサトリは笑う。

乾いた笑いだ、まるで失笑。それは愛と言う理由を見下したかの様だった。

いや事実サトリは見下していたのだ。司達がアキラを助ける理由、それは彼女が大切だから。

そして我夢にとっては何よりもの人。それはサトリにとってはたまらなく愚かで醜いものだった。

 

 

『人は愛と言う陳腐な言葉をすぐに羅列したがる』

 

 

野生的な歩き方でサトリはジリジリとディケイド達に近づいていく。

よりいっそう怯える寝子。そして同じく、恐怖を浮べながらディケイド達は構えた。

 

 

「陳腐だとッ?」

 

『そうだ。愛と言う薄っぺらい戯言を貴様らは振りかざし、多くの命を傷つける。それはとても安いものなのに、お前らはそれを認めない』

 

 

ディケイド、龍騎、ファム、ファイズをそれぞれ一瞥する。

サトリは言った。愛とは幻想、たったひと時、僅かながらに舞い散る夢の様な物なのだと。

 

 

『人はすぐにまた愛を探したがる。我夢の愛なぞ、世界にとっては些細でちっぽけな幻。すぐに消えて無くなる』

 

 

切りかかる剣を交わし、襲い来る火球をよけて、迫るバイザーを弾く。

眼前に迫る拳を受け止めると、サトリはその身に似合わぬ蹴りを決めた。

 

 

『貴様らは無力だ。何も変えられない。何も救えない』

 

 

地面に倒れ、うめくディケイド達を見て思う。

サトリには勝てない、寝子は確信した。だが今更謝ったところでどうなるわけでもない。せめて彼らが死なないようにする為には……

 

 

「さ、サトリさん……ッ」

 

 

寝子は声を振り絞るようにしてサトリに声をかけた。

仮面で隠されたサトリの顔面。それがゆっくりと寝子の方に方向を変える。

しばらく嫌な無言が続いたが、寝子は勇気を出してその話を持ちかけた。

 

 

「い、いま……この妖怪城には妖怪と人間だけでない『何か』それも明確な悪意が存在していますッ! 妖怪を騙り、何か邪念に突き動かされた連中が――」

 

 

とにかく今の事態を分かってもらうことだ。

自分達が何故侵入したのかを知ってもらえればきっと彼だって――

 

 

『それが、どうした?』

 

「え……?」

 

『大切なのは花嫁を殺すかそうでないか、それだけだ。あの我夢と言う少年の虚しい愛がこの世界を危険に晒す。それが目障り、私にとってはね』

 

 

下らない物に命を、我らの世界を賭けた馬鹿(がむ)。その目障りな少年とその仲間。

それらを処刑する事こそがサトリの目的、それ以外は無い。

 

 

「たしかにッッ! オレたちがやろうとしている事は――ッ あんた等にとっちゃ悪だろうな! だけどよぉ!」

 

 

ソードベントを発動した龍騎はサトリに無我夢中で切りかかる。

全てをよけられるが尚、彼は剣をふるう。

 

 

「こっちだって大切な仲間の命を賭けてんだ! 足掻かせろよッ!」

 

『仲間? 下らんな』

 

 

サトリはふいに龍騎の頭を掴む。そして、黒い闇のオーラを流し込んだ。

 

 

「―――ッッ!!」

 

 

アキラを助ければ、オレの好感度が上がる? じゃあアキラを助けよう。危険だったら途中で逃げればいい。

誰も攻めないさ。そうだ、誰も攻めない。アキラでさえも!

オレの好感度が上がればそれでいいんだから。アキラ? どうだっていいよ。あんなヤツ――!

 

 

「!!」

 

『お前はアキラを助けたいんじゃない。そうだろ? お前は自分の高感度を上げてヒーローを気取りたいだけだ』

 

「違うッ! 違うッッ!! お、オレはぁッ!」

 

 

サトリの拳が龍騎の胴に突き刺さる。

苦痛の声を上げて龍騎は上空に舞い上がった、そこへ降り注ぐサトリの剣。

 

 

「ガアアアアアアア!!」

 

「真志!!」

 

 

ファムが龍騎に駆け寄り、すぐに治癒を始める。

 

 

「違う……ッ オレは、アキラを――」

 

「何言ってんだよ! 真志ぃ!」

 

 

頭を押さえて苦しそうにうめく龍騎。

心が抉られる感覚、彼は自問を繰り返す。あの時、一瞬もう一人の自分が見えた。その自分が言うには……

 

アキラなんてどうでもいいだろ?

 

そんなわけが無い、確かに前までは好感度を常に考えていた。

だけど、だけど真司や皆に出会って少しでも自分は変われた筈だ。真っ直ぐな正義を見て、自分だってああなりたいと――

 

 

『どうだっていい』

 

「!!」

 

 

サトリは首をかしげて不気味に言い放つ。

一体何の事なのか、ファムたちには全く分からないし理解できない。だが龍騎はその言葉が深く心に突き刺さっていた様だ。

そうなのか? 自分じゃそんな事はないと思っていた。いやむしろ考えていなかった。純粋にアキラを救いたいと願っていた。

だけど、本当は――

 

本当の自分はそんな事を考えてはいなかった?

結局、また自分の事しか――

 

 

「拓真ッッ!」

 

 

サトリはそうしている間にディケイドとファイズの攻撃をかわしつつ、次はファイズの頭を掴み先ほどの行動を繰り返す。

黒いオーラがファイズの脳を焼け焦がす。

 

 

「―――ッッ!」

 

 

どうせ助けられっこない。アキラちゃんはきっと死ぬ。

でも友里ちゃんじゃなくて良かった。邪神なんて怖い、本当は戦いたくないけど……

アキラちゃんはかわいそうだな、でも仕方ないよね

僕には関係ないよ。どうでもいい。

 

 

「―――!」

 

『お前も同じだ、全て上辺だけの虚しい友愛』

 

 

重い音と共にファイズのわき腹に蹴りが入る。

装甲を無視するかの様なその一撃に、ファイズの呼吸と思考は停止した。

今、自分がいた。そしてその自分は確かにそういった。自分の声で、顔で、そして意思で?

地面をスライドしながらファイズは考える。今、自分はなんと言った? なんて恐ろしい事を口にした?

 

どうでもいい? 誰が、何が? どうせ死ぬ? 戦いたくない? 仕方ない?

自分には関係ないから? 友里じゃなくてよかった? そんな馬鹿なッッ!?

違う、違うと必死にファイズは自らを否定する。ありえない、そんな馬鹿な事がある訳が無い。

アキラを、彼女を助けたいと切に願った。本当にこの世界を救いたいと思った。だけど今自分は確かにそういった。

 

もし仮に自分がそんな事を思っていたとしたらどうなんだろう?

もし、あれが自分の本音だったとしたら――

 

壁に打ち付けられたファイズ、攻撃を受け倒れた龍騎。

共に二人とも糸が切れた人形のように動かなくなってしまった。

ただ何かをブツブツと呟き、必死に見えない何かを否定しようとしている。

 

 

「何をしたッ!?」

 

「皆ッ!」

 

 

叫ぶファムの背後に迫る手、サトリの跳躍は全てを捉え逃がさない。

カードを探すファム、だがそんな彼女をあざ笑うようにサトリは彼女が選ぼうとしたカードだけを弾いてみせる。

ありえない、選択を悟られないようにしていたのに――

 

 

『お前にも、見えるだろう?』

 

「!」

 

 

その時、ディケイドがファムを突き飛ばし間に割って入る。

いやそれすらもサトリは予知していたかのように、ファムではなくディケイドに向けて言いはなつ。

 

 

『いくら足掻いても、破壊できない物がある』

 

「なん……だとッ!?」

 

『諦めろ破壊者よ。天美アキラを救う事はできないのだから』

 

 

ディケイドの頭部がサトリの手に覆われる。

黒い闇が、意思がディケイドの脳に注ぎ込まれたのだった。

 

 

『叶わない夢なんて、見なければ良いのに』

 

 





色々と説はあるみたいですが、昔の鬼とはイコールで異国の人だったのではないか、なんて言われたりしてますね。

昔は見るもの全てが今の認識とは異なるんでしょう。
あと一番最初に蟹だのタコだの食った人はチャレンジャーですね。
よくアレ行こうと思ったなってw


はい、まあじゃあ次は来週にでも。
ではでは
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