仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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はい、まずはクウガ編からですね。
今回は初めと言う事でいっきに投稿していこうかなと思います。


クウガの試練
第2話 「開幕」


 

 

「何コレ?」

 

「実は――」

 

 

翌朝、司達は皆に昨日の事を詳しく話した。

このままだと自分達の世界が滅びると言う事、そしてそれを止められるチャンスを自分達は与えられたと言う事。

どちらも明確な確証は無いがゼノンとフルーラが言っていた事を信じるしかないだろう。

 

自分達のやるべき事はすぐに見つかるとは言っていたが、それでも現段階において情報源は彼らなのだから。

敵、と言う訳でもなさそうなので取りあえず今は信用しておく。ただ特にゼノンとフルーラがウザイって事は念入りに伝えておきましたとさ!

 

 

「で、なんで私なの? ってか何で私の事知ってたの?」

 

「知らん、俺はただ渡せって言われたんだ。とり合えずつけとけばいいだろ」

 

 

まあ、それもそうか。

薫は受け取ったリングをしばらく見つめた後、そそくさと適当な指にはめてみる。

特に何の変哲もない指輪に見えるが――

 

 

「しかし信じられないな。私たちの世界が滅びてしまうなんて……」

 

 

司達は黙り込んでしまう。おそらく本当に滅びてしまうのだろう。

ワームやオルフェノクが存在しているこの世界も、滅びの時を待つだけに思える。

しかしその沈黙が耐えられなかったのか、友里が申し訳なさそうに手を上げる。

 

 

「あの、何だっけ? グローイングフォーム? それってさ、どれくらい強いの?」

 

 

司には分かりやすい説明かもしれないが、何も知らない彼女たちからしてみれば何のこっちゃである。

 

 

「そうえいばオレ達それくらいの身体能力になってるんだっけ? どうなんだよ司」

 

「ああ、そうだったな。まあグローイングフォームってのは……」

 

 

何と言えばいいのか、確かに困ってしまう。

まあとにかくライダー通してみれば強くは無いが、人間と比べれば遥かに強力な存在だと告げておく。

 

 

「確かキック力は5tくらいあったはず……」

 

「え!? マジで!? すっげぇじゃねぇか!」

 

 

その言葉に椿が真っ先に反応する。

なら試してみよう、そう言って椿は窓から中庭に飛び移った。そしてそこにある石でできたブロックの前に立つ。

なんとなく理解する一同。t単位のキック力が手に入ったんだ、ある意味壊せないものなんて無い筈だ。

 

 

「5tもあればこんな石豆腐みたいに崩せるって事だろ!?」

 

「そりゃまあ」

 

「うっひょーっ! おいおいテンションあがって来たおおおおお!」

 

「またアイツは下らん事を……」

 

 

咲夜はため息をついて呆れるが本人は気にしていない。足を思い切り振り上げて――!!

 

 

「ウェーイッ!」

 

 

雄たけび上げてブロックを思い切り蹴るっ!

 

 

ゴッ!!

 

 

「お! ………おぉ?」

 

「―――――」

 

 

ブロックは少し移動しただけで砕けてもないし吹き飛んでもいない。

これではまるで普通の人間が蹴ったときと同じだ。おかしいな、tもあるのに壊すどころかこれじゃあ……

 

 

「なぁ…あいつなんか涙目になってないか?」

 

「あ、ホントだ…」

 

 

椿の表情は先程とは一転し、涙目になりながら小刻みにぷるぷる震えている。

あれ? 顔も青いぞ、これ……まさか――

 

 

プルルルルルルッ!

 

 

頭の中で答えがでた瞬間、ポケットの中に入れておいた電話が鳴る。

反射的に電話を取る司。そもそも世界が変わったなら電波届かないんじゃないのか?

 

 

「も、もしもし…」

 

『やあ! 久しぶりだねディケイド! ボクだよ!』

 

 

久しぶりもクソも無いが、ゼノンの声が聞こえてきた。彼はまず、クラス全員の携帯電話に細工をしたと言う。

それは、どんな場所であろうとも使えると言う物。だから世界が変わっても、どこにいても携帯はつながるのだ。

細工はそれだけじゃない、これから彼らは司達が円滑に事を運べる様に少しのサポートを行うと言っていた。

 

 

「お前! な、何の用だ!?」

 

『聞いてくれよ!

 フルーラの寝顔がとってもかわいかったんだ、この素晴らしさを是非君に伝えたくてねッ!

 え? 写真を見せろ? 駄目だよディケイドそれはボクの――』

 

 

プチン………

 

 

「だ、だれからでした?」

 

「いや、いたずら電話だったよ。それより――」

 

 

プルルルルルル!!

 

 

「………はい」

 

『アハハハハ、おかしいね電波が悪いのかな! 切れてしまったよ! それでねディケイド、昨日言い忘れていた事があるんだ』

 

「な、何?」

 

『君達には身体強化を与えたと言ったけれど、アレはあくまでも防御面だけの話さ。

 間違ってもキック力とかパンチ力とかが上がってると思って石とか砕こうとしないようにね! 痛い目を見るよ?

 まあでもそんな馬鹿、いや大馬鹿野郎なんて居るわけないよね。ゴメンよディケイド。うん、居るわけないよねそんなアホ! アホ野郎!

 

 じゃあね、ディケイド。また会える日を楽しみにしているよ!』

 

 

プツリ――……。

 

 

「………」

 

 

なぜかゼノンに申し訳なく感じる。

 

 

「いってぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」

 

 

大馬鹿野郎の悲鳴が空へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば双護、お前ってあんなに足が速かったっけ?」

 

 

ゼノン達が言っていた事が気になる。選ばれた者は力が目覚めると彼らは言ってた。

それを聞いて思い浮かぶのはやはり双護だ。あの時、オルフェノクから逃げていた時の双護は凄かった。

とてもあのスピードは何もしていない双護が出すには早すぎるスピードだ。

これがアスリートならまだしも、彼自身の限界を超えているとしか思えないスピードだったのだから疑問が湧く。

 

 

「ああ、そう言えばそうだな。俺自身あの時は気にしていなかったが……」

 

「つまり、いつもはあんなに早くないんだな?」

 

 

双護はこくりと頷く、時計を見ればまだ朝の八時半だ。

 

 

「よし、少し実験をしてみよう」

 

 

 

司達の学校は特別クラスの周りごと転送されたようなので校庭も完全ではないがちゃんと存在していた。

と言うわけで双護には手っ取り早く百メートルを走ってもらう事にした訳だが――

 

結果は明白。

双護は手の甲に現れた紋章・カブトのクロックアップを髣髴させるかのように走るスピードが速くなっていた。

さらにあれから教室に戻ってさらに色々調べると、いろいろな事が分かった。

どうやら小野寺兄弟は力が強くなったらしく、真志達は――

 

 

「のわああああ!」

 

「ちょ! 真志! って、えええええッ!?」

 

 

真志と美歩は鏡に触れて意識を集中すると、なんと鏡の中に入ることができたのだ。

まあ原作でも長くいると危ないので二人は早々に逃げ出したが。

拓真達は機械が強くなっており、椿は凄かったものだ。

 

 

「うおおおおおおお!」

 

 

椿は次々に飛んで来る石を木の棒で叩き落す。

 

 

「はぁ、はあ……ッ!」

 

 

さすがブレイドと言った所か、剣術が格段に上がっている。

咲夜も反射神経等が格段に上昇していた。次は響鬼組の二人。

 

 

「今のは、嘘ですね」

 

「おお、正解だ!」

 

「心音が少しおかしい動きを見せので」

 

 

アキラには音についての力が上がっていた。一方我夢には相手の怪我を治療できる光をだす、不思議な力が備わっていた。

亘たちも今は分からなかったが、いずれの能力も任意で発動できる事が分かった。

双護のように無意識に発動するパターンもある様だが、皆だいたいは使いたいと思った時に能力をコントロールできる。

都合のいい力、ゼノンたちは改造もどきと電話の向こうで告げていたのを覚えている。

あくまでも簡易的なものらしいが、ないより余程マシだろう。ありがたく受け取っておくに越した事はない。

 

 

「いろいろと凄くなってるみたいだな……」

 

 

そう言う司が一番すごい事になっているのだが。

あれから少しディケイドライバーを調べてみたが、何か分かったかと言われば微妙だった。

とりあえず分かったのは変身は司にしかできない、おそらく最初に変身した人物を認証するシステムがあるのだろう。

そしてディケイドライバーの他にカードを入れるライドブッカーと言う装備があった。

これがまた中々物騒と言うか、カードを入れるケースのくせに銃にも剣にもなる武器だったのだ。

 

 

「つか、なんかそのロリカップルさ、放送室の電子黒板見てみろとか言ってたんだろ? 見なくていいの?」

 

 

そうだった、司は椿の言葉でゼノンたちが言っていた言葉を思い出す。

なにやらヒントがあるだのと言っていたが――

まあ、とにかく見てみればいいだろう。司は頷くと放送室に向かうのだった。

 

 

「すごーい! ねぇねぇぼくが写ってるよー! ねぇねぇ! あははは!」

 

「どうなってんだコリャ! オイどう言うことなんだよ!」

 

「驚いたなぁ、本当に僕達がテレビになってたんだ」

 

「zzz…」

 

 

放送室では赤青黄紫とカラフルな、一見すれば敵と間違えなくも無い『イマジン』達がテレビを見ていた。

番組は仮面ライダー電王。司の携帯に数話入っているので、一瞬見せるかどうか迷ったが今は緊急事態だ。

自分達の世界における事情を知っておいてもらいたかった

 

 

「こうして見て見るとカメ! お前って出番すくねぇよなぁ、ハハハ!」

 

「僕はァ…最初こそ、そこそこ頑張ってたけど後々はかませ犬的扱いになったどこぞの誰かとは違 う ん で ねぇ!」

 

「なにぃ! 誰の事だ誰の!」

 

「さぁ? 誰だろうねぇ!」

 

 

桃太郎の鬼をモデルにしたモモタロス、浦島太郎のカメをモデルにしたウラタロス。

二人はケンカが絶えない。

 

 

「へっへー、その点ぼくは強いよね? 答えは聞いてない!」

 

「坊主! その割にはお前結構負けてんじゃねぇか?」

 

「うぅうううう!」

 

「zzzzz」

 

 

龍の小太郎をモデルにしたリュウタロス。寝てばっかりのキンタロス。モデルは金太郎の熊だ。

良太郎はまだ彼ら等とは正式に契約していない。だからデンライナーの外なら砂になる筈なのだが今はこうして実体化できている。

まあこいつ等は環境が変わってもこのままなんだな、司は若干の安心を抱く。

彼らは非常に心強い味方だ、訳のわからない敵ばかりではないと言う事なのだから。

 

 

 

……サイン欲しいな

 

 

 

「おう、どうしたんだよ?」

 

「え? ああ、電子黒板を下ろしてくれないか? そこに世界のヒントがあるらしい」

 

「別にいいけど」

 

 

そう言ってウラタロスは電子黒板を下ろす。

そして目を見開く。そこには映写機で映してもいないのに、はっきりと絵が映されていたからだ。

なにか崩れたビルの絵が描かれている。それが何なのかは分からないが、これがヒントと言う事なのだろうか?

 

 

「へー、誰が書いたのー? ぼくもお絵かきは好きなんだー!」

 

「いや、これは――」

 

「司!」

 

 

呆気にとられていると、ユウスケが慌てた様子で入ってきた。

 

 

「また光が……って」

 

 

ユウスケの視線を追う。電子黒板?

 

 

「え、絵柄が――ッッ 変わった?」

 

 

さっきは壊れたビルだったのに今は違う。パトカーが至る所に止めてあって街が混乱している。

そんな感じの絵だ。ユウスケの話しを聞くと、最初に光を感じたあの時と全く同じ事が起こったと言う。

光が教室を包み、そして景色が変わっていた。つまりは――

 

 

「世界が変わった!?」

 

「それだけじゃないんだ!」

 

「え?」

 

「おれの紋章が消えちゃったんだよ!」

 

 

ユウスケが手を差し出してくる。

本当だ、手の甲にあったクウガの紋章が消えている。だがそこで司は気がついた――

 

 

「お、おまえ……! 影、影見てみろ!」

 

「え? お、おわぁ!」

 

 

ユウスケの影はまさにクウガの姿そのものではないか。

手の甲にあった紋章が消えたかと思えば、次は影がクウガになった!?

混乱するユウスケ、一応鏡で自分の姿を確認してみるがクウガになっていると言う訳でもない。

司視点ユウスケはユウスケだ、なら影だけが変わったと言う事になる。そこでふいにゼノン達の声が再生される。

 

 

『歯車は回りだしたのさ!』

 

『もっと多くの戦士が生まれる』

 

 

その言葉をありのままに受け止めるなら――

 

 

「ゆ……ユウスケ気合、入れろよ」

 

「あ、ああ…!」

 

 

ベルトを、ディケイドライバーを出してみる。

ずっと憧れてたライダーに、しかも全員になれるのに手の震えが止まらない。

落ち着いてくればやっと高揚感や嬉しさがこみ上げてきたのは事実、だけどやはり背中には恐怖がピッタリと張り付いてくる。

 

 

「ディケイド……か」

 

 

カードに映るその姿を見て、司は笑みを浮かべる。

そこにあったのは喜びじゃなく恐怖でもない、そんな曖昧な感情を司は笑みで隠した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何コレ?」

 

「実は――」

 

 

翌朝、司達は皆に昨日の事を詳しく話した。

このままだと自分達の世界が滅びると言う事、そしてそれを止められるチャンスを自分達は与えられたと言う事。

どちらも明確な確証は無いがゼノンとフルーラが言っていた事を信じるしかないだろう。

 

自分達のやるべき事はすぐに見つかるとは言っていたが、それでも現段階において情報源は彼らなのだから。

敵、と言う訳でもなさそうなので取りあえず今は信用しておく。ただ特にゼノンとフルーラがウザイって事は念入りに伝えておきましたとさ!

 

 

「で、なんで私なの? ってか何で私の事知ってたの?」

 

「知らん、俺はただ渡せって言われたんだ。とり合えずつけとけばいいだろ」

 

 

まあ、それもそうか。

薫は受け取ったリングをしばらく見つめた後、そそくさと適当な指にはめてみる。

特に何の変哲もない指輪に見えるが――

 

 

「しかし信じられないな。私たちの世界が滅びてしまうなんて……」

 

 

司達は黙り込んでしまう。おそらく本当に滅びてしまうのだろう。

ワームやオルフェノクが存在しているこの世界も、滅びの時を待つだけに思える。

しかしその沈黙が耐えられなかったのか、友里が申し訳なさそうに手を上げる。

 

 

「あの、何だっけ? グローイングフォーム? それってさ、どれくらい強いの?」

 

 

司には分かりやすい説明かもしれないが、何も知らない彼女たちからしてみれば何のこっちゃである。

 

 

「そうえいばオレ達それくらいの身体能力になってるんだっけ? どうなんだよ司」

 

「ああ、そうだったな。まあグローイングフォームってのは……」

 

 

何と言えばいいのか、確かに困ってしまう。

まあとにかくライダー通してみれば強くは無いが、人間と比べれば遥かに強力な存在だと告げておく。

 

 

「確かキック力は5tくらいあったはず……」

 

「え!? マジで!? すっげぇじゃねぇか!」

 

 

その言葉に椿が真っ先に反応する。

なら試してみよう、そう言って椿は窓から中庭に飛び移った。そしてそこにある石でできたブロックの前に立つ。

なんとなく理解する一同。t単位のキック力が手に入ったんだ、ある意味壊せないものなんて無い筈だ。

 

 

「5tもあればこんな石豆腐みたいに崩せるって事だろ!?」

 

「そりゃまあ」

 

「うっひょーっ! おいおいテンションあがって来たおおおおお!」

 

「またアイツは下らん事を……」

 

 

咲夜はため息をついて呆れるが本人は気にしていない。足を思い切り振り上げて――!!

 

 

「ウェーイッ!」

 

 

雄たけび上げてブロックを思い切り蹴るっ!

 

 

ゴッ!!

 

 

「お! ………おぉ?」

 

「―――――」

 

 

ブロックは少し移動しただけで砕けてもないし吹き飛んでもいない。

これではまるで普通の人間が蹴ったときと同じだ。おかしいな、tもあるのに壊すどころかこれじゃあ……

 

 

「なぁ…あいつなんか涙目になってないか?」

 

「あ、ホントだ…」

 

 

椿の表情は先程とは一転し、涙目になりながら小刻みにぷるぷる震えている。

あれ? 顔も青いぞ、これ……まさか――

 

 

プルルルルルルッ!

 

 

頭の中で答えがでた瞬間、ポケットの中に入れておいた電話が鳴る。

反射的に電話を取る司。そもそも世界が変わったなら電波届かないんじゃないのか?

 

 

「も、もしもし…」

 

『やあ! 久しぶりだねディケイド! ボクだよ!』

 

 

久しぶりもクソも無いが、ゼノンの声が聞こえてきた。彼はまず、クラス全員の携帯電話に細工をしたと言う。

それは、どんな場所であろうとも使えると言う物。だから世界が変わっても、どこにいても携帯はつながるのだ。

細工はそれだけじゃない、これから彼らは司達が円滑に事を運べる様に少しのサポートを行うと言っていた。

 

 

「お前! な、何の用だ!?」

 

『聞いてくれよ!

 フルーラの寝顔がとってもかわいかったんだ、この素晴らしさを是非君に伝えたくてねッ!

 え? 写真を見せろ? 駄目だよディケイドそれはボクの――』

 

 

プチン………

 

 

「だ、だれからでした?」

 

「いや、いたずら電話だったよ。それより――」

 

 

プルルルルルル!!

 

 

「………はい」

 

『アハハハハ、おかしいね電波が悪いのかな! 切れてしまったよ! それでねディケイド、昨日言い忘れていた事があるんだ』

 

「な、何?」

 

『君達には身体強化を与えたと言ったけれど、アレはあくまでも防御面だけの話さ。

 間違ってもキック力とかパンチ力とかが上がってると思って石とか砕こうとしないようにね! 痛い目を見るよ?

 まあでもそんな馬鹿、いや大馬鹿野郎なんて居るわけないよね。ゴメンよディケイド。うん、居るわけないよねそんなアホ! アホ野郎!

 

 じゃあね、ディケイド。また会える日を楽しみにしているよ!』

 

 

プツリ――……。

 

 

「………」

 

 

なぜかゼノンに申し訳なく感じる。

 

 

「いってぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」

 

 

大馬鹿野郎の悲鳴が空へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば双護、お前ってあんなに足が速かったっけ?」

 

 

ゼノン達が言っていた事が気になる。選ばれた者は力が目覚めると彼らは言ってた。

それを聞いて思い浮かぶのはやはり双護だ。あの時、オルフェノクから逃げていた時の双護は凄かった。

とてもあのスピードは何もしていない双護が出すには早すぎるスピードだ。

これがアスリートならまだしも、彼自身の限界を超えているとしか思えないスピードだったのだから疑問が湧く。

 

 

「ああ、そう言えばそうだな。俺自身あの時は気にしていなかったが……」

 

「つまり、いつもはあんなに早くないんだな?」

 

 

双護はこくりと頷く、時計を見ればまだ朝の八時半だ。

 

 

「よし、少し実験をしてみよう」

 

 

 

司達の学校は特別クラスの周りごと転送されたようなので校庭も完全ではないがちゃんと存在していた。

と言うわけで双護には手っ取り早く百メートルを走ってもらう事にした訳だが――

 

結果は明白。

双護は手の甲に現れた紋章・カブトのクロックアップを髣髴させるかのように走るスピードが速くなっていた。

さらにあれから教室に戻ってさらに色々調べると、いろいろな事が分かった。

どうやら小野寺兄弟は力が強くなったらしく、真志達は――

 

 

「のわああああ!」

 

「ちょ! 真志! って、えええええッ!?」

 

 

真志と美歩は鏡に触れて意識を集中すると、なんと鏡の中に入ることができたのだ。

まあ原作でも長くいると危ないので二人は早々に逃げ出したが。

拓真達は機械が強くなっており、椿は凄かったものだ。

 

 

「うおおおおおおお!」

 

 

椿は次々に飛んで来る石を木の棒で叩き落す。

 

 

「はぁ、はあ……ッ!」

 

 

さすがブレイドと言った所か、剣術が格段に上がっている。

咲夜も反射神経等が格段に上昇していた。次は響鬼組の二人。

 

 

「今のは、嘘ですね」

 

「おお、正解だ!」

 

「心音が少しおかしい動きを見せので」

 

 

アキラには音についての力が上がっていた。一方我夢には相手の怪我を治療できる光をだす、不思議な力が備わっていた。

亘たちも今は分からなかったが、いずれの能力も任意で発動できる事が分かった。

双護のように無意識に発動するパターンもある様だが、皆だいたいは使いたいと思った時に能力をコントロールできる。

都合のいい力、ゼノンたちは改造もどきと電話の向こうで告げていたのを覚えている。

 

 

「どうやら、いろいろとマジで凄くなってるみたいだな」

 

「つか、なんかそのロリカップルさ、放送室の電子黒板見てみろとか言ってたんだろ? 見なくていいの?」

 

 

そうだった。なにやらヒントがあるだのと言っていたが――

まあ、とにかく見てみればいいだろう。司は頷くと放送室に向かうのだった。

 

 

「すごーい! ねぇねぇぼくが写ってるよー! ねぇねぇ! あははは!」

 

「どうなってんだコリャ! オイどう言うことなんだよ!」

 

「驚いたなぁ、本当に僕達がテレビになってたんだ」

 

「zzz…」

 

 

赤青黄紫とカラフルな、一見すれば敵と間違えなくも無い『イマジン』達がテレビを見ていた。

番組は仮面ライダー電王。司の携帯に数話入っているので、一瞬見せるかどうか迷ったが今は緊急事態だ。

自分達の世界における事情を知っておいてもらいたかった

 

 

「こうして見て見るとカメ! お前って出番すくねぇよなぁ、ハハハ!」

 

「僕はァ…最初こそ、そこそこ頑張ってたけど後々はかませ犬的扱いになったどこぞの誰かとは違 う ん で ねぇ!」

 

「なにぃ! 誰の事だ誰の!」

 

「さぁ? 誰だろうねぇ!」

 

 

桃太郎の鬼をモデルにしたモモタロス、浦島太郎のカメをモデルにしたウラタロス。

二人はケンカが絶えない。

 

 

「へっへー、その点ぼくは強いよね? 答えは聞いてない!」

 

「坊主! その割にはお前結構負けてんじゃねぇか?」

 

「うぅうううう!」

 

「zzzzz」

 

 

龍の小太郎をモデルにしたリュウタロス。寝てばっかりのキンタロス。モデルは金太郎の熊だ。

良太郎はまだ彼ら等とは正式に契約していない。だからデンライナーの外なら砂になる筈なのだが今はこうして実体化できている。

まあこいつ等は環境が変わってもこのままなんだな、司は若干の安心を抱く。

彼らは非常に心強い味方だ、訳のわからない敵ばかりではないと言う事なのだから。

 

 

 

……サイン欲しいな

 

 

 

「おう、どうしたんだよ?」

 

「え? ああ、電子黒板を下ろしてくれないか? そこに世界のヒントがあるらしい」

 

「別にいいけど」

 

 

そう言ってウラタロスは電子黒板を下ろす。

そして目を見開く。そこには映写機で映してもいないのに、はっきりと絵が映されていたからだ。

なにか崩れたビルの絵が描かれている。それが何なのかは分からないが、これがヒントと言う事なのだろうか?

 

 

「へー、誰が書いたのー? ぼくもお絵かきは好きなんだー!」

 

「いや、これは――」

 

「司!」

 

 

呆気にとられていると、ユウスケが慌てた様子で入ってきた。

 

 

「また光が……って」

 

 

ユウスケの視線を追う。電子黒板?

 

 

「え、絵柄が――ッッ 変わった?」

 

 

さっきは壊れたビルだったのに今は違う。パトカーが至る所に止めてあって街が混乱している。

そんな感じの絵だ。ユウスケの話しを聞くと、最初に光を感じたあの時と全く同じ事が起こったと言う。

光が教室を包み、そして景色が変わっていた。つまりは――

 

 

「世界が変わった!?」

 

「それだけじゃないんだ!」

 

「え?」

 

「おれの紋章が消えちゃったんだよ!」

 

 

ユウスケが手を差し出してくる。

本当だ、手の甲にあったクウガの紋章が消えている。だがそこで司は気がついた――

 

 

「お、おまえ……! 影、影見てみろ!」

 

「え? お、おわぁ!」

 

 

ユウスケの影はまさにクウガの姿そのものではないか。

手の甲にあった紋章が消えたかと思えば、次は影がクウガになった!?

混乱するユウスケ、一応鏡で自分の姿を確認してみるがクウガになっていると言う訳でもない。

司視点ユウスケはユウスケだ、なら影だけが変わったと言う事になる。そこでふいにゼノン達の声が再生される。

 

 

『歯車は回りだしたのさ!』

 

『もっと多くの戦士が生まれる』

 

 

その言葉をありのままに受け止めるなら――

 

 

「ゆ……ユウスケ気合、入れろよ」

 

「あ、ああ…!」

 

 

ベルトを、ディケイドライバーを出してみる。

ずっと憧れてたライダーに、しかも全員になれるのに手の震えが止まらない。

落ち着いてくればやっと高揚感や嬉しさがこみ上げてきたのは事実、だけどやはり背中には恐怖がピッタリと張り付いてくる。

 

 

「ディケイド……か」

 

 

カードに映るその姿を見て、司は笑みを浮かべる。

そこにあったのは喜びじゃなく恐怖でもない、そんな曖昧な感情を司は笑みで隠した。

 

 

 

 

 

世界が変わり重大な問題が発生した。

なんと良太郎達がデンライナーに帰れなくなってしまったのだ、勿論モモタロス達もである。

デンライナーは前の世界で別れてしまったままだ。世界が変わった事でオーナー達と離れ離れになってしまったと言う事だろう。

だが世界移動の瞬間ナオミとコンタクトを取ることができ、何とか互いの無事だけは告げて別れたのだった。

 

 

「と、言う訳でよろしくおねがいします……」

 

「良太郎さんがいれば百人力ですよ!!」

 

 

良太郎でいいよと彼は笑う。やはり司達の世界で英雄と語られる彼であっても、実感は湧かないようだ。

まして、今の良太郎は時間の影響によって体が縮んでしまっている。

実際は年上かもしれないが、どう見ても周りからしてみれば自分の方が年下なのに『さん』づけと言うのも違和感があるもの。

当然それはハナにも言える事だった、今の彼女は19~20くらいの年齢だが体は12歳前後である。

体が縮めば考え方もやや子供寄りになる。ハナも自分がさん付けで呼ばれる事はむず痒いと言う所なのだろう。

 

 

「そ、そうか。じゃあわかったよ良太郎」

 

「うん、よろしく」

 

「いや、でも本当にありがたいくらいね。戦力的に安心できるのは司君と良太郎君だけだから」

 

 

翼もそう言って苦笑する。

情けない話しだがこれからもし化け物に襲われた時は司と、特に戦いなれた彼の力が必要になる。

 

一方で窓の外には、昨日と全く違う景色が広がっていた。

絵の様に殺伐とした雰囲気ではなく、普通の景色に見えるが……?

 

 

「平和そうな所だね」

 

「……一見はね。で? どうするの?」

 

「ああそうだな。とり合えず外に出ない限り何も変わらないだろ」

 

 

そう言って司は何気なくテレビをつけてみる。

この世界でも繋がるんだろうかと言う疑問もあったが、案外何気なくテレビは鮮明な映像を映す。

もちろん電波なんて通っていない。ゼノン達が携帯に細工をした様にテレビ等の設備にも何らかの細工は施したのだろう。

 

 

『先日、死体で発見された――』

 

 

どうやらニュースがやっているようだ。

内容はどこの世界でもある事件の報道、殺人事件と言うのは嫌なものだが――

 

 

『死体で発見された○○さんは頭部を切り取られており――』

 

 

通り魔か、どうやらこの世界では今ある事件が頻繁に起こっているらしい。

それは無数の人が首を切られ殺されると言う事件、警察は一連の犯人は同一人物と考えており捜査を行っている。

 

 

「うえ……グロ」

 

 

首を切り取って殺す、想像しただけで寒気がしてくる。

だが今からやるべきなのはこの世界の捜索だろう。もしかしたらまた化け物がいるかもしれない。

とり合えず問題は誰が行くかだ。

 

 

「そりゃあまあ、俺と良太郎、ユウスケか……」

 

「私もいくよ、一応年長者なんだから君達だけに任せるなんてできない」

 

「わ、私も行くわ……」

 

 

そういって薫が手を上げる。危険だと告げる翼だが何も全ての世界がああとは限らない筈だ。

この世界の雰囲気からして早々戦闘にはならない筈、翼もそれを聞くと渋々納得する。

鬼が出るか? 蛇がでるか? やはり脳裏に焼きつくのはあのおぞましい光景。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

結果、何にもでませんでした。

 

 

「へ、平和と言うか、いつもどおりと言うか――」

 

 

いつ敵が出てもいいように神経を集中していたが、いつまで経っても怪しい奴一人でてきやしない。

逆に街は至って平和である。自分達の世界と何ら変わりないように見える今回の世界、見知ったコンビニまである。

さらに街の人に化け物を見た事があるか、なんて突拍子も無い質問をぶつけてみたが結局笑われるだけだった。

 

 

「あれぇ?」

 

 

一瞬今まで長い夢でも見ていたのかと思うほど。

しかし現に地名や駅名などは聞いた事も無い場所で、ココが絶対に自分たちがいた世界ではないことが分かる。

 

 

「うーん、とりあえず情報を集めるために解散しようか? 何かあったら携帯で連絡を」

 

 

そう言って皆はそれぞれ解散していく。

前回の世界があまりにも危険すぎただけの様で、今回はそうでもないらしい。

もしかしたら戦わなくてもいいかも。ユウスケは淡い期待を抱いて歩き出したのだった。

 

 

「………」

 

 

ユウスケは自分の足元に目を向ける。

太陽が生み出した影、それは自分の姿ではなく古代の戦士・仮面ライダークウガを映している。

しかしそれも何故か他の人には確認されず、司達学校のメンバーにしか見えないものだった。

まあそっちの方が都合いいんだが――

 

 

「気になるわよね……ソレ」

 

「え?」

 

「あ、えっとごめん」

 

 

薫はさっきからユウスケに話し掛けては自重する連続だった。

話し掛けては自ら話を終わらせる、それの連続。確かに気にはなるが気を使われる程ではない。

ユウスケは笑って彼女に問題ないと告げる。

 

 

「あはは、いいよ薫、気を使わなくても」

 

「そう? だったらいいわ。じゃあ何か食べに行かない?」

 

 

この変わり様である。確かに気を使うなとは言えど、もう少し切りかえって物が……。

まあいいか、ユウスケは苦笑しながらも頷く。

 

 

「ん?」

 

 

しかし彼は足を急に止めた。公園の方をたまたま見た時に女の子がうずくまっているのが見えたのだ。

気になったのでユウスケは薫と一緒に女の子の所まで行く事にする。

話に聴いたのと全く同じシチュエーションだったので、一応ワームが擬態しているかも知れないという考えを捨てずに。

 

 

「ねえ? どうしたの?」

 

 

薫が女の子の目線になって優しく問い掛ける。

緊張の一瞬である、薫はすぐに逃げられる様に構えて彼女の返事を待った。

だが幸いな事に女の子はすぐに涙で濡らした顔を上げてくれた。丸い可愛らしい目、普通の女の子。

彼女は薫を見ると小さな声で呟く。

 

 

「風船……」

 

「え?」

 

 

女の子が上を向く。薫も釣られるように上を見ると、赤い風船が木の枝に引っかかっていた。

それほど高い距離ではないが女の子にとっては手の届かない場所だろう。

ワームじゃない安心感、二人は苦笑し合う。

 

 

「ん、じゃあユウスケお願い」

 

「ああ! わかった。まかせ――ッッ」

 

 

ユウスケは木に飛びついてグイグイ登っていく!

 

 

 

 

 

 

 

筈だったが

 

 

「落ちちゃった……えへへ」

 

「……はぁ」

 

 

結局薫が木に登って風船を取る。

凄いぞ薫! おサルさんみたいだ!! モンキー! モンキー薫!!!

そんなユウスケのエールに怒号を飛ばしながら彼女は風船を女の子に返却する。

女の子は小さな手で薫から風船を受け取ると、花の様な笑顔を浮かべた。

 

 

「はい、どうぞ」

 

「わあ! ありがとうお姉ちゃん!」

 

 

女の子はよっぽど嬉しかったのか。笑顔で薫にお礼を言ってそのまま抱きついた。

かわいい奴め、薫もそう言いながら女の子の頭をなでる。

あれ? おれは? 取り残されたユウスケだが……

 

 

「ユウスケは何にもやってないでしょ!」

 

「うぅん、お兄ちゃんもありがとう! 私、桜! お姉ちゃん達お名前は?」

 

 

女の子はユウスケにも抱きついてきた。

桜と言う名前からなのか、さくらんぼの髪留めで二つくくりにしている少女。

二人は桜の自己紹介に答えるように、自分達も名前を言っていく。

 

 

「おれは小野寺ユウスケ」

 

「私は空野薫。よろしくね」

 

「うん!!」

 

 

女の子は風船が戻ってきた事が本当に嬉しいらしく、御礼をする為に二人を家に招待したいと言った。

今の時代珍しい娘である。いや、この世界は自分達の世界と違うんだから主観で考えるのは無意味か。

二人は顔を見合わせてアイコンタクトをとる。どうするか? 一応今は探索の時間だが――

 

 

「薫、どうする?」

 

「あー、別にいいんじゃない? 集合六時でしょ、まだまだあるし」

 

 

そう言う事なので、二人は翼にメールだけして桜の家に行く事にしたのだった。

それを伝えると嬉しそうに笑う彼女、それを見て二人は大きな安心感を覚える。

世界が違えど、同じものは全く同じだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方――

 

 

「ちょ、マジでやばいって真志ぃ!」

 

「だから帰ってろって言っただろ」

 

 

警視庁。正確に言えばこの世界のだが、そこに真志と美歩はやってきていた。

しかも二人がいるのは一般市民が入ることの許されていないフロアだ。真志は携帯をしきりに確認しながらズンズン前に進んでいく。

 

 

「拓真、警備の方はどうなってる?」

 

『そっちには誰もいないよ、今は捜査会議が開かれてる。でもあと二時間で終わるみたいだからそれまでに』

 

「わかった。資料室はどうだ?」

 

『誰もいないけど鍵がかかってるみたいだ。幸い電子ロックみたいだしパスワードを教えるよ――』

 

 

真志は頷き、なおも前に進んでいく。

彼の表情に焦りはない、それが美歩にはどういう事なのか理解できた。

 

 

「うげげ! 真志っ、まさか"アレ"使ったの!?」

 

 

美歩の言葉に真志は動きを止める。

携帯を握り締める手は、力を入れているのが分かる。彼は答える訳でもなく美歩に注意を促した。

 

 

「早く行くぞ、もうあんまり時間がないからな」

 

「え? あ、う……うん」

 

「大丈夫大丈夫、この世界はオレ達の世界じゃないから」

 

「そ、そうじゃなくて! もう使わないって言ったじゃん……!」

 

 

真志は美歩の言葉を待たずに歩き出す。

美歩も不満を顔に出していたが、これ以上いう事はないと悟ったのだろう。黙って真志の後をついていく事にした。

しばらくして二人は資料室と書かれた部屋についた。部屋には電子ロックがかかっていたが、真志は迷うことなく数字を打ち込みドアを開ける。

その後、真志は暫く中をうろついていたが、そこら辺にあったパソコンにUSBを差込みデータをコピーし始めた。

 

 

「ハハハ、コレって犯罪だよね? やばくね?」

 

「さっきも言ったろ? オレ達の世界じゃないんだから大丈夫さ。

 確かに気持ちのいい事じゃない、でも俺達の世界を救うのに必要な事なんだ。割り切ろうぜ」

 

「だ……だけどさ、犯罪は犯罪っしょ!?」

 

「オレ達の世界ならな」

 

 

真志は苦い顔をする。彼自身悪い事とは分かっているが情報は多い方がいい。

ただでさえ他の世界なんて得体の知れない場所なんだ、何をすればいいか分からない事も加えて焦りが善意の枷を破壊する。

 

 

「やばくなったら学校に隠れてればいい。あそこは多分他の人には見えない。っていうか干渉を受けないみたいだから」

 

「?」

 

「だって考えてもみろよ。この世界にいきなり学校が現れたってのに誰一人としてこの学校を不思議がろうとしない。

 それってつまりこの学校がこの世界にとってイレギュラー、もしくは観測できないって事だろ?」

 

 

現に、学校は街中に出現して誰からも確認される位置にある。なのに誰一人学校の存在に気がつかない。

人に聞いてもそこには何も無いと言うし、学校の敷地には絶対に自分から足を踏み入れる事はない。

最初のワームも同じ、つまり学校は他の世界の生物からしてみればソコにはありえない物として判断される。

などと話しているうちにコピー終わったみたいだ。帰ろうと美歩を促す真志、だがその時電話の向こうで拓真の焦った声が聞こえてくる。

 

 

『大変だ! そっちに一人来る!』

 

「うっ! マジかよ!」

 

「ええぇ! や、やばいんじゃ!」

 

「―――――ッ!」

 

 

ドアが開く。

婦人警官が緊張した様子で入ってきた。当然だ、ロックしている筈のドアが開いているのだから。

 

 

「?」

 

 

警官は暫く辺りを見て回ったが怪しい奴どころか人間の気配が感じられない。

ただの閉め忘れか、警官は安心した様子で部屋から出て行った。

 

 

「………危なかったな」

 

「どへぇあ! ちょー緊張した!!」

 

 

鏡が光り、二人が出てくる。

彼らがゼノンが言っていた"授かった能力"を使ったからだ。

龍騎をイメージさせる、短時間だけならば生身で鏡の中に入る事ができる力。

 

 

「マジで入れた……」

 

 

人を超越した力が確かに自分に宿る。

それは優越感と大きな恐怖を同時にもたらす。

 

 

「結構便利なんだなこれ、あははは!」

 

「笑い事じゃないっての!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、危なかったね」

 

二人が無事に脱出したのを監視カメラで確認すると、拓真はホッと息をついた。

彼は普通にしているが、たまたま隣にいた椿は唖然としている。

いや、尤もこれが普通のリアクションなのだが――

 

 

「た、拓真……コレって一体――ッッ」

 

 

椿は拓真が見ていたノートパソコンを指指す。

そこには警視庁の監視カメラ、図面表が全て乗っていた。

内部マップや、電子ロックの解除番号全てが検索できる様になっている。だからこそ真志達は警官の目を盗んで忍び込めたのだ。

 

 

「これもゼノンとか言うガキがくれたのか!?」

 

「僕もよく分からないんだけど……でっかい罪だって言ってたよ」

 

「?」

 

 

そう言って拓真はパソコンの電源を落とす。

 

 

「椿君、お昼にしない? お腹すいちゃったよ」

 

「ああ、いいけど?」

 

 

椿は不思議に思いながらも、これ以上の詮索は止めておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ユウスケ達は桜に連れられて彼女の自宅にいた。

幸い公園からそう遠くは無く、歩いて十五分程度の距離だったので二人は安心する。

これなら何かあってもすぐに助けを呼べそうだ。

 

 

「へぇ、いい家だね」

 

 

「ありがとう、えへへ!」

 

 

桜の家は、大きくこそはないが可愛らしい外見の家だった。

二人は桜に連れられて中に入る。やはり中も特には自分達の世界と変わらず、目だっておかしな点はない。

本当に異世界なのかと疑うほどこの世界は自分達の世界と酷似していた。

 

 

「ママー! ただいまー!」

 

「あら、おかえり桜」

 

 

リビングで桜の母親が桜の帰りを迎える、やさしそうな人だ。

桜はさっきあった事を話すと、母親は二人にお礼という事で晩御飯を勧めてきた。

あまり遅くなってはいけないと二人は思ったが、翼に電話してみると――

 

 

『いいんじゃないかな、せっかくだからご馳走してもらいなよ。帰りは司君を迎えに行かせるから』

 

 

そう言ったのでお邪魔する事にした。ただ電話の向こうで――

 

 

『幼女の家に行ってるだと!? おいふざけんな! 俺も呼――ぎゃああああぁぁぁ……』

 

 

椿の悲鳴が聞こえたが、まあ気にしないでおこう。

 

 

「じゃ、じゃあ桜ちゃん。ご飯まで私たちとあそぼっか?」

 

「うん!」

 

 

そう言って二人は笑いあう。それから三人はいろいろな事をして遊ぶことに。

まずはトランプだ。

 

 

「ババ抜きにしましょ。さあユウスケ、引いて」

 

「ああ」

 

 

そう言ってユウスケは薫の手札から一枚カードを抜く。

 

 

(あ、ババ……)

 

 

その後、ユウスケのババは彼から離れる事はなかった。

 

 

「あはは、ユウスケお兄ちゃんの負けだね」

 

「………」

 

「どうする? もう一回やりましょうか」

 

「あ、ああ……! 次は負けないぞ!」

 

 

そう言ってユウスケは薫の手札から一枚カードを抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ババ……)

 

 

その後、ユウスケのババは彼から離れる事はなかった

 

 

「やったー! 勝ったー!」

 

「ま、まぁたユウスケの負けね!」

 

「も……もう一回!」

 

 

そう言ってユウスケは薫の手札から一枚カードを抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ババ……)

 

その後、ユウスケのババは彼から(以下略

 

 

「つ、次は席替えしようか! 桜ちゃんから引きなさいユウスケは」

 

「そ、そうだねッ! お兄ちゃん頑張れ!」

 

「おう! 次こそ勝つッ!」

 

 

そう言ってユウスケは桜の手札から一枚カードを抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ババ………)

 

 

その後、ユウスケの(略

 

 

「ユウスケッ! んっ、ンンッ! 右ッ! んんっ! 右にババ! ンンッ!」

 

(喉の調子でも悪いのかな? くっ、しかし、右のカードだけ目立たせている!? 薫、おれに精神的な揺さぶりをかけるつもりなのかッ? でもな、甘いッ!)

 

 

そう言ってユウ(略

 

 

(ババ……)

 

 

そ(略

 

 

 

 

 

 

 

「………ぐすっ」

 

「とッ、トランプはやめて他のゲームにしよっか!」

 

「そうね! ほ、他に何があるの?」

 

 

そう言って桜は黒ひげ危機一髪を持ってくる。

決して気を使った訳じゃないんだ、本当なんだ。

 

 

「お、おもしろそーっ! さあ、遊ぼうか!」

 

「ゆ、ユウスケお兄ちゃん! 頑張ってね!」

 

「よっ、よし!」

 

 

ユウスケは剣を樽にむけて一つ刺す。その瞬間、黒ひげは空中に飛び出した!

 

 

ッポォォーンッ! 『ぎゃはは、ばーか!』

 

 

「………」

 

「さささ最近の黒ひげは当てちゃったら音声がなるんだぁ! も、もう一回!」(桜ちゃぁん、なんでこんな煽りまくる物を買っちゃったの……!!)

 

 

「………うん」

 

 

 

ユウスケは剣を(略

 

ッポォォーンッ! 『ぎゃはは、ばーか!』

 

 

「………」

 

「そ、そうだぁ! 順番を変えましょ! 桜ちゃん、私、ユウスケの順!」

 

「わ、わかったよ! じゃ、じゃあいくね!」(黒ひげさん! お願い飛んでッッ!)

 

 

さくっ

 

 

「わぁい…大丈夫だぁ…」

 

「つつつ次は私ね」(飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ飛べ飛べッッ!)

 

 

さくっ

 

 

「はは…セーフだ…うれしいなあ…」

 

「次、おれ……」

 

 

さくっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ッポォォーンッ!『ぎゃはは! ばーか!』

 

 

「ゆ、ユウスケ…あの…なんていうか…帰りにジュースでも買ってあげようか?」

 

「薫、今優しくされたら…おれ、駄目かも……ッッ!」

 

 

その後も三人は楽しく遊んで、笑いあう(?)

ユウスケの眼に涙が浮かんでいたのはきっと楽しかったからだよ!

 

 

「あーあ、薫お姉ちゃんが本当のお姉ちゃんなら良かったのにぃ」

 

 

何気なく言った言葉だろうが、対照的に薫の表情は硬くなる。

 

 

「……ッ」

 

「あれ、お姉ちゃん?」

 

 

その言葉をきっかけに、ふいに薫の目から一筋の涙がこぼれた。

桜は自分が何かしてしまったのかと黙り込んでしまう。そうじゃない、ユウスケはそう言おうとしたが……言えなかった。

 

 

「あ、ううん! 別に桜ちゃんが何かをしたとかっていうんじゃないの。ただ……ちょっと思い出しちゃって」

 

「?」

 

「私、お姉ちゃんがいたの。でもね、死んじゃったんだ……」

 

「あ……ご、ごめんなさい」

 

「あはは、いいよ別に。すこし思い出しただけだから」

 

「………」

 

 

ユウスケは思い出す。

薫の姉とは交流が深かったので、事故で亡くなった事を聞いた時の悲しみは深かった。

薫も自分も泣いていた、もちろん――

 

 

「ユウスケ!」

 

「え? あっ、何?」

 

「ご飯、できたって。さあ行こう桜ちゃん!」

 

「あ、ああ!」

 

 

あの時の薫は見ていられなかった。

だからできれば薫には、これから先ずっと笑っていてほしい。ユウスケの淡い願いは叶うのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいしかったわね」

 

「ああ。でも結構遅くなっちゃったぞ。はやく帰らないと……」

 

 

安全そうな世界なので、とりあえず二人は迎えを断って学校へ戻る事に。

しかしもう既に辺りは暗くなっている。いくら安全そうとはいえテレビでやっている様に嫌な事件も多いのも事実、二人は自然に走り出していた。

この世界が自分達の世界と似ているからと言って、所詮それは似ていると言う事にしかすぎない。

もしかしたら何かあるかもしれないのだ。急に不安になってきた、早く学校に――

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアァアアアァァァアァッッ!!」

 

「「!?」」

 

 

まるでタイミングを合わせるかのように男の悲鳴が聴こえて来た。

二人は思わず足を止める。まさか――

 

 

「な、なに?」

 

 

――逃げろ

 

 

「さあ……?」

 

 

早く!

 

 

「悲鳴、だよな」

 

「う、うん」

 

 

今なら間に合う――

 

 

「大丈夫……かな?」

 

 

何をしている! 逃げろ!

 

 

「助けないと……」

 

「そ、そう……だな」

 

 

やめろ! 逃げろ! 本能が叫ぶ。

だが心のどこかでは大した事はないと、そう思っていたのかもしれない。ある種怖いもの見たさと言う事なのか。

今すぐこの場から離れなければならない様な気がしているのに、どこかまだ余裕の様なものがったのも事実である。

それはこの世界があまりにも自分達の世界と似ていて、危険性を感じられなかったと言う事もあった。

 

 

「向こうから聞こえた、薫はココにいて――……くれないか」

 

「え……わ、私もいくわよ!」

 

 

夜の道、静けさが漂う中にたしかな緊張が感じられる。

茂みの向こうに行きたくないと言う感情と、悲鳴をあげた男を早く助けなければならないと言う感情。

混ざり合う二つの感情がより緊張を高める。

 

 

「大丈夫、何も無い、何も無い、何も……」

 

 

そして知る。

やはりここは、この世界は――

 

 

「!」

 

 

自分達の世界とは違うのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッッッ!!!」

 

「ひぃッ!!」

 

 

倒れているのは男の体、しかしある筈の物が無かった。

首が無い。その男の首は体から離れ、ある者の手に収まっている。それを、持っているのは――

 

 

「リント? ジョデギビザバギバ……!」

 

「ッ!?」

 

 

男の首をボールのように扱っているのはクモの顔をした"人間の様な者"だった。

何を喋っているのかは分からなかったが、男を殺し一連の殺人事件を起こしているのはコイツなのだろうと二人は確信する。

そしてコイツが人間じゃない事も一目で分かった。司に聞いていたから何となく記憶に名前があった、間違いなくコイツはクウガに倒される筈だった敵怪人、グロンギ。

 

 

「リラシデバギバダバギ、ボソギデジャス!」

 

 

一歩クモ男が二人に向かって近づいてくる。ユウスケは恐怖に駆られながらも、足元に目をやった。

そこには街灯に照らされた事で現れる自分の影、超戦士の影が見える。

やるしかないのか? これが自分達のやるべき事だと言うのか!?

 

 

「くそっ!」

 

「ゆ、ユウスケ!!」

 

 

ユウスケは素早く薫の前に立ち、適当に構える。

既に逃げ出したい感情と恐怖でおかしくなりそうだったが、後ろにいる薫だけは守らなければならない。

それがユウスケの理性を保つ要因になってくれた。大丈夫いける。勝てる、そう信じて念じる。

いつもは聞き流していた司のライダー話を思い出して彼は腰に手をかざした。

 

 

「っ出た!」

 

 

以外にあっさりとベルトが現れる。あとは――

 

 

「へ、変身……?」

 

 

弱々しい声で放つ言葉。

だがベルトはそれに応じるように光り、ユウスケの姿を変える。

もちろんそれは彼の影が示した姿へとだ。

 

 

「バビ? ビガラ! バビロボザ!」

 

「ゆ、ユウスケ……! 本当に、変わった!?」

 

 

仮面ライダークウガ。古代の超戦士――?

 

 

「ッ?」

 

 

無事に自分は変身できた筈だ。

だが、ユウスケの記憶にあったクウガとは姿と色が違った。

色は真っ白、なんだか角も小さく装飾も少ない。これがクウガなのか? ユウスケの心に不安が過ぎる。

自分は果たして本当に変われたのだろうか?

 

 

 

「うっ、あ……ッッ うおおおおおおおお!」

 

 

走り出す。姿なんて気にしてる場合じゃない、とにかくコイツを倒さなければ。

それだけを頭にクウガは拳を握る。司ができたんだ、きっと自分にだって同じ様にできる筈――!

 

 

「おらッ!」

 

 

殴る、蹴る、クウガは力任せにクモ男を殴り続けた。

いけるか!?

 

 

「ズブ、ボブバロンバ!」

 

 

だがクモ男は何のリアクションも起こさず、クウガの拳を簡単に掴むとそのまま投げ飛ばした。

全く効いていない、そんな様子で。そのまま地面に倒れるクウガ、衝撃と痛みがユウスケの心に突き刺さる。

 

 

「うぐ――ッ……がッッ!」

 

 

痛い、なんだよこれ! 防御力が上がったって言っていたけど結構痛いじゃないか!

あせりながら起き上がろうとしたクウガに、クモ男は激しい蹴りをあびせる。

一発を受け、怯んだところにもう一発。衝撃と痛みがクウガの思考を鈍らせる。

このままじゃヤバイ、殺される!? クウガは悲痛な雄たけびを上げてクモ男の足を掴み、そのまま無理やりに倒す。

半ばやけくそでそこへ馬乗りになり更に殴り続けた。正直、誰かを殴った事なんて無い。拳が痛いのはそのせいなのか?

 

 

「グッ! オオオ!」

 

「うああああああああああああっっ!!」

 

 

流石にコレは効いている様で、クモ男は苦痛に喘ぐ。

このままいけば勝てる! そうユウスケが確信した時――

 

 

「ぐっ! あああああああああッッ!」

 

 

背中に走る一瞬の激痛。声を上げずにはいられなかった。

やはり簡単には勝たせてくれない様だ。思わず薫もユウスケの名前を叫ぶ、それほどまでに痛々しいから。

そう、背中を見てみるとそこにはとても大きな針が刺さっている。普通の人間なら死んでいただろう大きさの。

 

 

「うぁ―――ッ アアアアアアアッッ!!」

 

 

力に任せて針を引き抜く。

しかし痛みではなく、代わりに異常な程の恐怖が襲ってきた。

戦うとはこう言う事なのか? こんなに痛い思いをして、こんなに怖い思いをして――

自分はただ強引に巻き込まれただけなのに、どうしてこんな思いをしなければならないんだ!!

 

 

「ゾビ! ジジャラザ!」

 

「ヒッ!」

 

 

針のおかげで大きな隙ができてしまった。

そこを狙ってクモ男が糸を吐く、糸はクウガの首に巻くと強靭な力で締め付ける。

苦痛に呻くクウガ、苦痛と恐怖がクウガの動きを封じていった。

 

 

苦しい。

 

怖い。

 

苦しい。

 

怖い。

 

苦しい

 

怖い

 

怖い

 

こわい

 

こわい

こわい

こわいこわいこわいこわいこわいこわい!!!

パニックになるクウガの頭、すくむ足。力が入らない!!

 

 

「バビゾギデギスンザ、ズ・グムン・バ」

 

 

また訳の分からない言葉が後ろから聞こえる。

声がしている方向になんとか頭を向けると、そこにはまた化け物。ハチのような外見の男が立っていた。

手にはボウガンの様な武器、先程の針を撃ったのはコイツと見て間違い無いだろう。

 

 

「ギラバゲゲルンガギヂジュグザスグ、ギギボバ? ククク!」

 

「フン! ババデデギス!」

 

 

何を言っているのかまるで意味が分からない、それがまた恐怖を加速させていく。

会話が通じないと言う事はコチラの命乞いが不可能と言う事、話し合いで分かり合うと言う事ができない事を意味している。

そしてクモ男はクウガを蹴り飛ばし立ち上がった。そこへさらに二人の怪人がやってくる。

 

 

「フハハハ! ゲゲルゾヅズビスンザバ!」

 

 

飛翔してくるコウモリ男。

 

 

「バセサンロブデビゾバギセスバ!」

 

 

今度はイカだろうか?

つまり、計四体の怪人がクウガを取り囲む様にして存在していた。

ユウスケはもはや喪失感とらわれていたと言ってもいい。今の自分では勝つ事はおろか、薫を助ける事も不可能と悟る。

薫を見れば真っ青になって震えているではないか。目の前で人が死んだリアル、怖い。逃げたい。

勝てない? クウガになれたのに誰も守れないのか!?

 

結局これが自分。何もできない、何も変えられない。

このまま惨めに死んでいくのか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとまてええええええええええッッッ!!!」

 

「ぐぅッ! ガアアアッッ!」

 

 

急にライトが怪人達を照らす。

眩しさで怯む彼らの所に、いきなりエンジン音をあげてバイクが走ってきた。

そして、バイクは怪人の群れに飛び込みコウモリ男に直撃する。

 

 

「つ、司っ!!」

 

「すまん、遅くなった! 大丈夫かユウスケ、薫ッッ!!」

 

 

やはり危険だと思い迎えに来たか、現れたのはディケイドを模したバイク・"マシンディケイダー"に乗っていた司。

コウモリ男を始め怪人達はいきなり現れた彼の登場に大きく怯んでしまった。

その隙に咆哮を上げながらバイクを旋回させる司、ライトが次々に怪人の目を眩まして擦れるタイアの音が響き渡っていく。

ここがチャンスと判断したかバイクから飛び降りる司、同時に立ち上がるコウモリ男――!!

 

 

「ザレザ!?」

 

「やっぱりグロンギか……ッ!」

 

 

司は素早くカードバインダーであるライドブッカーから一枚のカードを抜き取る。

既にディケイドライバーは装着されており、司はカードをそのままベルトに放り込んだ。

ある程度の自動アシスト機能がついているのか、乱暴に放られたカードもしっかりとバックルに装填されて発動の音声を告げる。

 

 

『カメンライド――』

 

「変身!」『ディケイド!』

 

 

展開させたドライバーを閉めると、変身を容認する音声と光が発生する。

同時に司の周りに出現していくクウガからキバ九つのエンブレム。それらは司の元に収束し、瞬間弾けた。

現れたのは司では無くなった司の姿。仮面を纏うバトルスーツ、そこへさらに無数のプレートが現れて仮面に突き刺さっていく。

すると最後に体にマゼンダの色彩が宿り、仮面ライダーディケイドへ変身を完了させた。

 

 

「ムゥ……ッッ!」

 

 

怪人たちは一斉に戦闘姿勢に入る。

鈍く陽炎を放つディケイドの姿は先ほどの弱弱しい白のクウガとは全く別物に見えているのだろう。

 

 

「今回は……コイツで――」

 

 

そう言ってディケイドはブッカーからカードを一枚抜き取る。

カメンライド、それこそがディケイドを象徴する特殊能力の一つ。

クウガからキバまでのライダーに自らが変身する事ができる力。しかし――

 

 

「!?」

 

 

司が取り出したのはアギトのカード、しかし肝心のアギトが写っていない。

アギトがいた場所が空欄に、つまり無地に変わって肝心のアギトが描かれていなかったのだ。

ディケイドはすぐにブッカーから他のライダーカードを抜き取る。しかしそれらもアギト同様、無地のカードになっていた。

おかしい! 前回の世界では使えたのに!?

 

 

「なんで――……っておわぁ!」

 

 

ハチ男が針を発射し、ディケイドは寸前の所で避ける。

自分で感じる戦闘能力の向上と言う違和感、敵の攻撃をしっかりと避ける事ができたのが自分自身の力と言えないだけに少し複雑な感情は宿る。

だが結果を見ればそれは最高に都合のいいサービスだった。戦い方がある程度頭の中に入った事でグロンギを前にしても彼の心は折れなかった。

 

 

「仕方ないな! ディケイドで行くか!!」

 

 

ディケイドは全てのカードを抜き出してみる。

すると、中には絵柄がある物がちゃんと存在していた。ディケイドは安心を覚えつつその中のカードを一枚放り込んだ。

そのカードを手にすればそれがどんな効果なのかもおおまかに把握できる。

 

 

「成程、だいたい分かった!」『アタックライド』『ブラスト!』

 

 

以前も説明したがライドブッカーの役割はカードを収納するだけではない。

刃が、銃口がちゃんと備わっており任意で剣と銃の役割を持たせる事ができるのだ。

アタックライドブラスト、その言葉が意味する通りガンモードに変形させたブッカーでコウモリ男を撃ちまくる。

ブラストの効果でエネルギーによって構成されたブッカーの分身が援護射撃を行い、無数の銃弾を浴びせる事が可能となるのだ。

 

 

「意外にディケイドだけでも戦えるな……!!」

 

 

次にディケイドは四人のグロンギ達を相手に肉弾戦を繰り広げる。

以前の司ならばユウスケ動揺に震えていたかもしれないが、変身した時に肉弾戦の情報も頭の中に入ってきた。

もちろんそれは教えられたと言うに近いものなので、司自身の実力にも限界がある。しかしなんとか戦えるレベルまではなっている様だ。

 

 

「くらえッッ!!」『アタックライド』『スラッシュ!』

 

 

続いてブッカーをソードモードに変えて、斬撃の力を増加させるスラッシュを発動した。

剣に淡い光が宿り、振るう軌跡に残像を残していく効果もあった。

この残像に触れただけでもダメージを与えられると言うのだから、なんとも不思議なものだ。

 

 

「終わらせる!!」

 

「グゥウウッ!!」

 

 

他の怪人・グロンギ達をいなしてコウモリ男のみに狙いを定める。

ディケイドは怯むコウモリ男を蹴り飛ばすと、ブッカーから金色のカードを抜き取った。

このカードだけ他のカードと放つ力が違う様に感じる。当然だ、それは終わりを告げる一枚なのだから。

 

 

「じゃあな――ッッ!!」『ファイナル・アタックライド――』

 

「っ! ビゲソ!」

 

 

危険を察知したのだろう。

ハチ男は素早く飛翔し、クモ男は糸を吐きイカ男を連れて逃げていった。

だがダメージでよろけているコウモリ男はそうはいかない、危険とは分かっているが体が動かなかった。

何とか立ち上がろうとするが――

 

 

『ディディディディケイド!!』

 

 

ディケイドの前方に彼の紋章が刻まれた五数のホログラムカードが現れる。

それらは直線に並んでいき、幅を広げる。途中に軌道上に存在し邪魔になっているコウモリ男をさらに押し出す様に弾き飛ばしていった。

 

 

「バンザ? ボセザァ!」

 

「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」

 

 

ホログラムカードと共にディケイドは地面を強く蹴って飛び上がると、とび蹴りでその中へ飛び込んだ。

ディケイドはホログラムカードを通過していき、エネルギーを足に集中させていく。

これが夢にまで見た本物のライダーキックなのだろうが、今のディケイドにそれを楽しむ余裕など微塵もない。

ただ仲間を守るために目の前にいる化け物を倒す事だけしか考えていない。

いや、言い方を変えれば化け物を殺す事だけを考えていた。

 

 

「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「ズウウアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

五枚のホログラムカードを通過する事で威力あげるとび蹴り。

その名はディメンションキック、それを受け爆発するコウモリ男。少しの間沈黙が辺りを包んだ。

 

 

「………」

 

 

ディケイドは敵がいなくなった事を確認して変身を解いた。

自分の力が敵に十分通用する安心感に、彼は大きな安堵のため息をもらす。

 

 

「そう言えば、ユウスケお前変身できたんだな!」

 

「あ、ああ――……」

 

 

同じく変身が解除されていたユウスケ、彼の表情は険しいがその理由を司が知る由もない。

 

 

「大丈夫か? とにかく帰ろう。おい! 出てきていいぞ夏ミカン!」

 

 

司が合図をすると、茂みの向こうから夏美がでてくる。

 

 

「私は夏美です! 大丈夫ですか!? 薫ちゃん、ユウスケ君!」

 

 

夏美の隣りにはもう一台のバイクが停めてあった。

薫は恐怖で腰を抜かしていた為、夏美が担ぎかげて乗せる。

そこでユウスケ達は疑問を抱く。そういえばさっきも司がバイクで走ってきたが――

 

 

「あれ!? 夏美、あなたバイクの免許なんて持って…た?」

 

「あはは……! それがあったんです、ポッケの中に。

 私免許持ってないのに、ついでに言うとバイクも乗れるようになってました」

 

「「は!?」」

 

「お前等もあるはずだ。ポケット見てみろ」

 

 

そんなまさか。疑いの中、薫とユウスケはポケットの中を調べる。

すると確かに感じる感触が。

 

 

「!」

 

 

あった。

司の言う通り二人のポケットの中には見覚えの無い免許。

 

 

「ついでに言えばバイクも校庭に停めてあった。用意がいいというか、とんだご都合主義だぜ。

 ああと、ちなみにお前のバイクはトライチェイサー2000。コレはクウガの――」

 

 

夏美が乗ってきたバイクはユウスケの為に用意されていたものらしい。

慣れておいたほうがいい、驚く程すんなり乗れる様になっているからと司はユウスケに乗る事を勧める。

 

 

「司君、早く帰りましょう!」

 

「ちっ、ああそうだな」

 

 

そう言って司達は学校へと戻るのであった。

すると近くにあった木の枝がザワザワと音を立てて揺れる。

 

 

「行ったわよーん、ゼノン!」

 

「うーん、やっぱり今回はイレギュラーが満載だねぇ」

 

 

先ほどの光景をずっと木の上で観察していたのはゼノンとフルーラ。

犠牲者の声を聞いてやってくればちょうどユウスケが変身していたじゃないか。

フルーラはすぐに特殊なゴーグル、デンデンセンサーでユウスケが襲われてからの光景を記録している。

 

 

「にしてもディケイド、やはり彼の力は大きいね」

 

「今回はうまくいくかしら?」

 

「邪魔にもなりそうだし、いい結果を運ぶ気もするねぇ」

 

 

まあ最悪殺して回収パターンもあるし、そう言ってゼノン達は黒い笑みを浮かべて姿を消すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」

 

 

夜の校庭、ユウスケは白いクウガに変わる。

 

 

「っ!」

 

 

変身を解く。

 

 

「変身っ!」

 

 

また白に。

 

 

「ッッ!!」

 

 

変身を解いてまた変身する。だが色は白のまま――

 

 

「くそッッ! どうして……ッッ!!」

 

 

地面を殴りつける。何度も、何度も。

思い出すのは無力感、恐怖心、底知れぬ悔しさ。虚しさ。

 

 

「何も……何もできないのか! おれは!!」

 

 

あの時と同じなのか? 薫の姉が死んだ時と――

 

 

 

 

 

 

翌日、ユウスケは昨日何度も司から聞いたクウガの話を思い出していた。

 

 

「………」

 

 

主人公の五代雄介は自分とは大きく違う。人々の笑顔を守る為に戦い、傷ついても立ち上がる。

ユウスケはそれを素直にカッコいいと思う事が出来た。だがそれと同時により自分の滑稽さが焼きついてくる。

その後も暫くはクウガの話を頭の中で繰り返す、そして自分と比べてしまっていた。

そんな事をしても意味はないのに、意味がないと知っているのに。

 

 

「おれは……そんなカッコよくは、なれない――……!!」

 

 

もう一度変身をしてみる、だが相変わらず色は白。

分かっていたのかもしれない、そして決め付ける。もう何度繰り返そうが自分はこの色から抜け出す事はできないと。

 

 

「何が……足りないって言うんだよ……クソっ!」

 

 

ギリリと歯軋りをするユウスケ。だが何をしても、何を祈っても色は変わらなかった。

司から聴いたクウガ本来の色は赤。なのに自分は赤くなれない。それが焦りと悔しさ、悲しみを蓄積させていく。

変身する度に感じる無力感。こんな事では――変身する意味なんて……無い。

 

 

「少し……外にでようかな」

 

 

ユウスケは気分転換に近くの川まで歩く。

あれから何度変身を繰り返しただろう? だが変わるのはいつも白色のグローイングフォーム。

これではグロンギ達とはまともに戦えない、勝てない。

 

 

「はぁ、五代さんみたいになるにはどうすれば……」

 

 

川原に座ってため息をつく。

目を閉じてため息をつくユウスケ、そして再び目を開けた時――

 

 

「うっ!」

 

 

ぐいっと目の前に飴玉が迫ってきた。

思わず仰け反って倒れてしまう。

 

 

「えへへへへ! ごめんねぇ!」

 

「あ……桜ちゃん! もがっ!」

 

 

目の前で笑っているのは桜。

彼女は驚くユウスケの口に半ば強引に飴玉を突っ込む。目を丸くするユウスケと元気に笑う桜。

どうやら彼女はたまたまユウスケを見かけたらしい。だが元気の無い彼が気になってやってきたのだ。

 

 

「元気ないよぉお兄ちゃん、コレ食べて元気出してねー」

 

「はは……ありがとう。桜ちゃんはどうしてココに?」

 

「えへへへ、これからお父さんとお母さんと一緒にお買い物に行くの!」

 

 

グロンギがいるかもしれないから行かないほうがいい、そう言いたかったがユウスケは言葉を詰まらせてしまう。

彼女を守れるだけの力はない、責任は背負えない。無力はネガティブな思考を加速させユウスケを弱くさせていく。

 

 

「……そうだったんだ。気をつけてね」

 

「うん! お兄ちゃんにも何か買ってきてあげるね!」

 

 

そう言って桜はパタパタと駆け出して行った。

少し離れた所では彼女の両親が自分に向かって頭を下げている。

ユウスケも立ち上がって礼を返し、逃げる様にして走り出した。

 

 

「切羽つまってもしかたないか……ははは。おれも笑顔を守る為に戦おうかな」

 

 

同じ理由でもいいだろう。

そう言ってユウスケは学校に帰って行く、ほんの少しだけ気が楽になった。

そうだ、焦る必要は無い。いずれ赤色になれば……それでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方学校の会議室では、真志が取ってきたデータを元に会議が開かれていた。

警察は既にグロンギの存在を認識していたが警察の面子を保つ為に公表はしていなかったのだ。

未確認生命体グロンギ、その実体はこの世界でも謎に包まれている。

 

 

「グロンギが首を切り取る殺人を繰り返しているのは何故だ?」

 

「多分そういうゲームなんだろうな。アイツ等は人間を使った殺人ゲームをする種族だ。

 ただ今回のゲームは複数のグロンギが関わっている。まるでこのゲームを成功させなければならないと言わんばかりに」

 

「一刻も早く成功させなければいけないゲーム? それはどちらかと言うと儀式に近いかもしれないね」

 

「そう…か、グロンギだからってクウガ本編と同じとは限らないな」

 

 

そもそも一番最初の世界だってオルフェノクとワームが同時に登場していた。

敵と言うカテゴリに縛られすぎるのも問題だな。司は今回の世界におけるグロンギがどう言った役割を持つのか、まるで分からない。

自分は無知と紙一重なのだ。通常は一人で殺人を遂行させていくグロンギも、今回は何故か複数で行動を起こしている。

ゲームに対して意味があるのか、無いのか、それはまだ何とも言えない。

 

 

「もしゲームが終わったらどうなる……の?」

 

 

真由の言葉に全員が沈黙する。

 

 

「それは、わからないけど……とにかく殺人を止める事が優先されるんじゃないかな?」

 

「そうは言っても次に、どこで、いつ殺人が行なわれるのかが全く把握できない。これじゃあ止めようがない」

 

 

双護はテレビのチャンネルをこまめに変えていく。

すると――

 

 

「ッ!」

 

 

目に留まったのは一つのニュース。

テレビの中でリポーターが必死に何かを伝えている。

その鬼気迫る表情はただ事ではないのを視聴者によく伝えていた。

リポーターの背後には山があるのだが――

 

 

『ご覧下さい皆様! 松葉山から黒い霧がものすごい勢いで発生しています! 近隣住民の皆様は今すぐに避難を――きゃああああああああああ!』

 

 

リポーターは物凄い勢いで迫ってきた黒い霧にどうする事もできずに呑まれてしまった。

松葉山と言う場所から突然黒い霧が発生して、噴火の様に牙を向いたと言うのだ。

その様子を映していたカメラもブラックアウトし、砂嵐の音しか聞こえなくなる。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「まさかッ、すでに――ッッ」

 

 

もし、この世界におけるゲゲルと言う言葉が儀式を表しているのだとしたら。

そしてこの黒い霧の発生。それを考えると、答えは一つ――!

 

 

「既にゲームは既に終了していたのか!!」

 

 

その言葉に皆固まってしまった。

何が起きるというのだ……夏美が急いで外の様子を確認する。

すると――

 

 

「き、霧が! 霧が来ます!」

 

 

まるで激流のように山から霧が押し寄せてくる。

気がついた時にはもう街は黒で染まっていた。霧はあっという間に学校を飲み込み、校庭の外は真っ黒に染まる。

青い空さえもブラックアウトさせる霧。これは……一体――

 

 

「しかし……やはりこの学校は安全のようだな」

 

 

まるで見えない壁に覆われている様だ。

霧は学校の敷地ないには進入する事はなく、校庭でさえ霧の進入を許す事は無かった。

その後もしばらく霧、もはや煙と言うにふさわしい黒は街を覆っていくだけだった。

 

 

「まだ霧は街を襲っているんですかね…?」

 

「司! 何だよコレ!」

 

 

間一髪、校庭にいたユウスケはいきなりの光景に目を疑った。

 

 

「おいおい! どうなってんだよコリャ!」

 

 

モモタロス達も異常に気がついたのか、特別クラスに集まってくる。

 

 

「今はなんとも言えないね。とにかく霧が晴れるのを待とう」

 

 

翼は窓の外を見る。相変わらずの黒――

そして、時間が経ちじょじょに霧が晴れていく。しかしそこにあった景色は想像を絶するものだった。

ビルは崩れ、まるで竜巻があったかの様。しかし本当に恐ろしいのは何十人ものグロンギが徘徊している事だった。

逃げ惑う人々。そして上空には異常なまでの、目にしっかりと見える闇のオーラを纏ったグロンギがいる。

人目で分かった、あいつがグロンギの頂点に立つボスなのだと。

 

 

『聞け! 人間共よ! 我は大いなる闇! 貴様等に裁きを下す絶対の存在!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだよアイツは!」

 

 

司はクウガを全て視聴している。

だから分かる、あんな奴はいなかった。まるで狼の様な外見のグロンギ、果たして何者なのか――!?

 

 

「あれがゲーム成功の結果じゃないかな」

 

 

良太郎が汗を浮かべながらつぶやいた。

なるほど、生贄をささげる行為こそが今回のゲゲル――つまり殺人の目的だったと言う事なのだろう。

過去、なんらかの理由によって封印されていた大いなる闇は、今この瞬間に復活を果たしたと。

 

 

「早く皆を助けにいかないと! キンタロス、行くよ!」

 

「おっしゃ、まかせとき!」

 

 

良太郎はベルトを出現させ黄色のボタンをタッチした。

鳴り響く変身音、そして装甲が付与されていく。

 

 

「変身!」『AX・FORM』

 

 

電王は窓から身を投げると、校庭に着地する。

懐紙の紙ふぶきが舞う中で、電王はゴキっと首を鳴らした。

 

 

「俺の強さはなけるでぇえええッッ!!」

 

 

電王はいつもの台詞と共に学校の外へと飛び出していく。

襲いかかるグロンギを力でねじ伏せながら、そのまま人々の救出に向かって行った。

司もディケイドライバーを構えると、ブッカーからディケイドのカードを抜き取る。

 

 

「とにかくあの大いなる闇とか言う奴がボスだろ!?」『カメンライド――』

 

 

アレを倒したからと言ってグロンギが消えるとはかぎらない。

それが心に引っかかるが、だからと言って戦わなければ街に大きな被害が出てしまう。

そんな事を許すわけにはいかない! 何としても大いなる闇を倒さなければ――

 

 

「変身!」『ディケイド!』

 

 

ディケイドも電王に続いて学校を飛び出していく。

幸いどのグロンギも原作に比べて強すぎると言う訳ではなく、ディケイドと電王でぎりぎり止められるかと言った希望も出てくる。

しかし、気になるのはやはり大いなる闇。あのグロンギだけ別格の存在を放っている。倒せるかどうか……

それに街を見る限りけが人も多そうだ。苦しそうにうめき声を上げる人たちが見て取れる。

 

 

「我夢君、私たちも行きませんか?」

 

「そうですね。僕達の力があれば少しは救援の助けになるかも知れません」

 

 

アキラの力があれば助けを求める人を簡単に探すことができ、我夢の力で治療できる。

しかし、悩む翼。いくら助けを求める人が多いからと言ってもグロンギが徘徊している中では自分達もすぐに怪我人になる可能性が高い。

苦悩を重ね、翼は何とか自分もついていくと言う事で我夢達を行かせるのだった。

他世界に移動した時から行動の裏には常に死がとりまく様になった。まだ目の前で死を確認していない者達の意識は薄いかもしれないが。

 

 

「お、おいおい……皆、まじかよ――……」

 

 

椿は力なく座り込む。本当に現実離れした毎日に足を踏み入れてしまった。

もう、戻れないのか?

 

 

「か、仮面ライダーなんて所詮子供向けの作り話の筈なのに……! なんでこんな――」

 

「椿お前、まだそんな事を言っているのか?」

 

「っ! わかってるよ! 現実だろクソッ!」

 

 

一同はそんな椿達に気を取られてしまっていた。

だから、彼を見過ごしてしまう。

 

 

「……? ね、ねぇ!」

 

「?」

 

「ユウスケと薫がいないんだけど……」

 

 

沈黙。

 

 

「く、クウガになれたんだから、戦いにいったんじゃ?」

 

「そう言えば…この世界で…お友達がいるって…言ってた…よ?」

 

「!」

 

 

まさか――ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ちゃん! 桜ちゃんッッ!」

 

 

「お願い! 返事をして! 桜ちゃん!」

 

 

トライチェイサーを走らせるユウスケと薫、途中何度グロンギをあしらったかわからない。

二人は必死に桜の無事を祈り名前を叫び続ける。最悪のイメージだけは浮かべない様にしながら、彼らは必死に彼女を探した。

 

 

「桜ちゃん、両親と一緒に買い物に行くって言ってたんだ。たぶん家族でいくんだからスーパーとかじゃなくてデパートだと思う」

 

 

そう言ってユウスケは一番近いデパートにやってくる。そこは既にデパートと呼ぶには余りにも酷く崩壊していた。

だがおかげでグロンギ達は全くいない様で、ユウスケはトライチェイサーごとデパート内を探索する。

外装は剥がされており、青い空が見えていた。普通に生きていれば絶対に見ない景色だったろうに。

 

 

「っ! 今……泣き声が聞こえた!」

 

 

トライチェイサーを乗り捨てて、声がした方向に二人は走っていく。

 

 

「うえぇぇぇぇぇぇん!!」

 

「桜ちゃん!」

 

「桜ッッ!」

 

 

天井が無い一角、そこに桜はいた。

その姿を確認すると薫が桜に飛びつく、桜も薫に気付くとしがみついて大声で泣きじゃくった。

無事で良かった、一瞬はそう思うが――

 

 

「!」

 

 

ユウスケは気付く、桜の両親が瓦礫に埋もれていた!

優しそうな母親、初めてみるが寛大そうな父親。二人は崩れた瓦礫に埋もれている。

顔色は悪いが死んではいないようだ、しかしこのままにしておけば確実に死ぬだろう。助けるなら今しかない。

 

 

「へ、変身!」

 

 

白いクウガになるユウスケ、必死に瓦礫を退かそうとするが――

やはりうまくはいかなかった。どれだけ力を入れようとも無力さが引き立って力が抜けていく。

瓦礫を破壊しようとしても、グロンギ達に負けた時のイメージが浮かび上がって力を入れられなかった。

 

 

「ダメなのか……ダメなのかよッ! くそおおおおおおおおッッ!!」

 

 

変身を解きユウスケはうずくまる。

すでに虚しさと悔しさで頭がおかしくなりそうだった。

瓦礫さえ退かせない自分がとてもちっぽけに思えてしかたなかったのだ。

 

 

 




一部レンストやら原作から台詞を引用させてもらってます。
タイタンフォームがかっこいいよね、クウガはw
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