仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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第39話 RING SPEED LOVE

 

 

「よっしゃあああああああ!!」

 

 

両手を広げて勝利の雄たけびをあげる電王、それを合図にディケイド達の戦いにも決着がつく。

まず発動したのはファムのファイナルベント。ブランウイングの巻き起こした暴風が河童兵をまとめて吹き飛ばす。

そこへ猫娘とファムの追撃が次々に決まっていき河童兵は完全に防御を崩す。そのまま彼らの行く先に待っていたのは龍騎とファイズ。

ストライクベント、グランインパクトの一撃は河童兵を上空へとまとめて吹き飛ばしていった。

 

さあ、ラストだ。

アギトにフォームチェンジしていたディケイドは、そのまま必殺技を発動させる。

クロスホーンが展開してそのまま河童兵の群れにとび蹴りを決めた。

気絶し、次々に落下していく河童兵。そして倒れるサトリ。

 

 

「勝ったん……だな!」

 

「大丈夫!? 良太郎!」

 

「野上ぃ! 平気かぁ!?」

 

 

変身を解くメンバー達、ハナとデネブはその場に膝をつく良太郎に手を差し伸べた。

良太郎は酷く疲れた様に笑みを浮かべ、その手を握り締めた。

度重なるフォームチェンジに覚醒したばかりの能力の連続使用。表情を見るに相当疲労している様だ。

無理も無い、ハナは良太郎を心配そうに見つめると彼を支える為に肩に手を回す。

 

 

「とりあえずサトリは倒せたけど……」

 

 

デネブが持っていたロープでサトリを縛って取り合えず近くの部屋に放り込んでおく。

しかしサトリは七天夜。つまりその言葉が意味するのは――……

 

 

「あと六人もこんな奴がいるのか……」

 

「鬼太郎さんが言うには一人は放っておいても良いって」

 

「じゃああと五人……?」

 

 

もしかしたら七天夜の中にもコッチの味方になってくれる者もいるかもしれないが、それでも大半は敵となるだろう。

しかも、こういうのって一番最初に出てきた奴が一番弱いっていうパターンでは無いのか?

そんな事を考えてゾッとする。

 

 

「またどこかで少しだけ休憩しようか」

 

 

頷く一同、先ほど司達がいた部屋に戻る事を決めたのだった。

しかし目目連は今の出来事をすべて見ていた筈だ、すぐにまた敵妖怪がやってくるだろう。

時間は無い、早く目目連を止めなければ――ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 

学校の食堂。そこでは夏美達、変身が出来ず戦闘に参加できない生徒達が集まっていた。

食堂のテレビから司達の様子をカードを通して確認している。しかし、もう夏美は何度もため息をついていた。

いや無理もない。一緒にアキラを助けるなんて意気込んでおいて、結局自分はこの絶対安全である学校にいるだけ。

大切な仲間が傷つきながらもアキラを助ける為に奮闘している姿を見て何も感じないわけが無い。

正直、一緒に戦いたいというのが本音である。それは夏美だけはないようで……

 

 

「う~~ッッ!!」

 

「………」

 

 

真由は歯を食いしばって力んでいる。

聞けばアキラを無事に助けられるように、お願い電波を流しているらしい。

そして隣では同じく心配そうにうつむく里奈の姿がある。

彼女はアキラとは親友なのだ。その親友が危険な時に自分はただ祈るだけ、相当悔しい感情があるのだろう。

少し涙を浮べて、彼女の無事を祈っていた。

 

 

『落ち着きなさいな、あんた達が行っても邪魔になるだけだって』

 

「それは……そうですけど――」

 

 

キバーラの言葉に夏美は肩を落とす。

確かに今の自分達は無力だ、だけどだからと言ってただ座っているだけなんてできない。

何かしらの協力がしたい、だけど何も出来ない無力感。それが彼女達を包む。

 

特に里奈は誰よりもその事を感じていた。彼女といた時間がどれだけ自分にとって救いになったか。

昔は彼女しか味方がいないのではないかと、少し依存していた時期もあったかもしれない。

彼女には、ずっと助けられて生きていた。だからいつか恩返しがしたい、そう思って生きてきた。

 

なのに今、彼女は死を受け入れようとしている。そんな、そんな運命を容認しようとしているのだ。

いやだと、認めないと彼女は思った。当然だ、まだ自分は彼女に何もしてやれていない。我夢に、皆に負けないくらい彼女の事を慕っていた自分の姿が脳裏に映る。

だけど結局自分がした事はなんなんだろうか。泣いて彼女が死ぬことを認めたくないと駄々をこねるだけだったのではないか?

 

そんな事で……何が恩返した。

何が友達だ――

 

 

「………ッ」

 

 

抑えようとしても、涙が溢れてくる。

彼女を思い出すたびにこみ上げる悲しさ、悔しさ。

里奈は亘がキバに変わった世界を思い出す。あの時、自分は少し強くなれた筈だ。だけど彼女を救う力は無いのか?

里奈は教室からずっと大切に閉まっていたブローチを持ち出していた。大臣から貰った金色の龍を模したブローチ、彼女はそれを強く握り締める。

 

 

(アキラちゃん……ッッ)

 

 

力が欲しい、切に願う。

 

 

「やっぱり、悔しいですよね……」

 

 

夏美がふいに発した言葉が、真由と里奈の心に響く。

そう、どうしようもなく悔しい。でも、だからって自分に何ができる?

何度、私達は力が足りないと嘆くのか。果てしない後悔と悲しみの中で人間が成長していくと言うのなら、後どれだけ自分達は嘆けばいいのか?

 

 

「うぅ……ぐすっ!」

 

「真由……ちゃん」

 

「………」

 

 

落ち込む三人。せめて自分達も変身できたら。

 

 

「例えば寒い冬にさ、家に帰ってきて――」

 

 

そんな時、三人に向けて発せられる一言。

声のトーンはとても優しく慈愛に満ちていた。暖かなその光に、三人は同時にそちらへと視線を移した。

空野葵、彼女は三人の肩を抱き寄せて笑う。優しいシャンプーの香りが三人の緊張を少し和らげた。

 

ただ抱きしめる力は少し力が入っている。

それは彼女もまた無力感を感じているからなのか、それは夏美には分からない。

 

 

「家に帰ってきてさ、部屋が暖かくて明かりがついてるのって……凄く嬉しくて幸せだと思うの」

 

 

葵は抱きしめる手を離し、正面から彼女達と向き合った。

真由の涙と鼻水を拭ってあげると三人の瞳を交互に見る。そしてもう一度微笑みかけた。

その瞳は真っ直ぐだ。彼女も迷い、苦悩していると言うのに強さが感じられる。

 

 

「わたし達は、確かに戦う力はない」

 

 

だけど、それは決して自分達に存在価値がないと言う事では無いと……葵は言う。

やはりどこかで、そんな気持ちがあったのかもしれない。戦えない自分達は本当に必要なのか?

皆を、アキラを助けられない自分にここにいる必要性はあるのかと?

答えの無い苦悩は彼女達を蝕む毒。しかしそれを葵は否定する。

 

 

「ただいまって言って、おかえりって言ってくれる人がいるのは嬉しい事よ? 迎えてくれる人がいる事も大切だとは思わないかな?」

 

「そ、それ……は」

 

「でももちろん、ちゃんとできる事をやらないとね!」

 

「え?」

 

 

葵はそう言ってキッチンへ向かう。

それを不思議そうに見る夏美達、葵は調理場へつくと笑顔でおたまを握って見せた。

つまり、帰って来たときにアキラを最高の状態で迎えられるように。それは葵が選んだ『戦い』

彼女だけができる事ではない。だが、彼女はその選択をとることが出来る。彼女達は彼女の為に戦う事ができるのだ。

 

 

「さあ、アキラちゃんが帰って来たときに、おいしいご飯を出せるよう、手伝ってくれる?」

 

「!」

 

「アキラちゃんが帰ってきて、無事に世界が平和で終わったら。パーティでもしましょ?」

 

 

夏美は今まで、まともに戦えない自分が役に立つためには多少の無茶をしなければならないと考えていた。

それは我夢や双護達だってそうだったろう。戦えないながらも戦闘に参加する事が皆の支え、サポートになると思っていた。

だがしかし正直戦力にならない自分達ができる事といったら、それはたかが知れている事だ。

 

それに、場合によっては仲間のサポートどころか足を引っ張る事にもなりかねない。

自分を守るために仲間が傷つくかもしれない。それは非常に危険な賭け。葵はその事を夏美達に知ってもらいたかった。

確かに皆の役に立ちたいと思う気持ちは分かるし、それはとても大切な事だと言う事だって十分に理解できる。

自分だって家事以外は何もしていない。妹が、自分より年下の皆が必死に戦っている間、自分は安全な場所にいる。

それはとても悔しい事だ。それは葵だって感じていた。分かっている。

だから葵は皆の食事をつくる。皆の服を洗う。皆の住む学校を掃除する。それが彼女にできる戦いだからだ。

 

 

「だから、戦おう。アキラちゃんのために」

 

「葵さん……っ」

 

 

夏美達は顔を見合わせる。そして、笑顔で頷いた。

 

 

「「「えいえいおーッ!」」」

 

 

三人は手を突き上げると、葵の元へと続くのだった。

 

 

『まあ、よくやるわね。ホント』

 

 

キバーラは、葵を見て賞賛の笑みを捧ぐ。

一同はアキラの為に動き出した。できる事をまずはやればいい。彼女為に、できる事をだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、総大将は生贄の案を呑んだんだろうね」

 

 

椿達が待機している東門。

目目連の監視を避ける為に、彼等は仲間が百目を倒すまでは近くで待機していなければならない。

門番を破壊する事で少しは警備をコチラに誘導できただろうか?

 

そんな事を考えていてもしかたない。

とりあえず今は冷静に力を温存しつつ、仲間からの連絡を待つだけだ。

その間に少し話しでもしようと言う事になる。そこで、待機組みの陽はそんな事を言ってみた。

 

 

「あの男とて相当悩んだ筈じゃ。人間と妖怪を守ろうと苦悩の末の判断じゃろうて」

 

 

砂かけ婆はふとため息をついた。古くからの知り合い、いや知り合いではなく友人か。

権力の壁が彼らの絆を遠ざけたが、それでも彼らはずっと変わらない友人。

 

 

「しかし、邪神とは一体何者なんだろう?」

 

 

それはみぞれだけでなく皆の共通した疑問だった。

長い時を生きてきた砂かけ婆や子泣き爺ですら聞いた事の無い『邪神』と言う存在。

いきなり現れたそれが今回の事件を引き起こした原因、だがそれにしても自分達は邪神に対する知識が無い。

邪神、そして邪神の使い。二つの存在は一体どのようにしてこの地に降り立ったと言うのか?

 

 

「正直、そんなの噂にすら聞いた事がなかったよ」

 

 

そんな強力な存在なら伝承や言い伝えが必ずある筈だ。

だが実際に邪神に関する資料、またはそれに近いものは皆無だった。

 

 

「ありえないだよねぇ、そんな事は……」

 

 

陽は、体に寒いものを感じる。

資料すらない邪悪、そんな存在を自分達は相手にしようとしているのか。

だけど、戦わないでいれば――

 

 

(どっちにいっても地獄かよ)

 

 

さっさと終わらせたいものだが、どうやらそう言う訳にもいかないらしい。

アキラを救うと言うことがどれだけの事か、一刻堂としての本能が告げているようだった。

なんとかしてアキラだけは助けたいと彼は最初思っていた。アキラを助ける事がゴールだとどこかで考えていたのかもしれない。

だが違う。『邪神』 神を冠するその力。果たしてどれ程のものなのだろうか?

 

 

「はは……けっこう緊張するな」

 

 

陽はうつむいてため息をつく。初の実戦が神相手とは。

 

 

「まあ、気持ちは分かる。ワタシも未知の存在には恐怖を覚えている」

 

 

だが、それでも勝つがな。咲夜の強い瞳は語らずとも言葉を伝えていた。

恐怖を量がする愛。それが彼等にはある。陽は頷くと、もう一度息をはく。

それはため息とは違う。似てこそはいるが、覚悟を固める深呼吸。

 

 

「……大丈夫?」

 

「え? あ、あはは。大丈夫さぁ」

 

 

陽はみぞれの姿を見て、改めて彼女の事を尊敬したいと思う。

涼しい顔でガムを食べている彼女、それは学校で見かける姿と変わらない。緊張も、恐怖も感じていないのか?

それとも隠しているのか。どちらにせよ、自分とは違うのだろう。

 

 

「正直、どんな相手でも倒せばいいだけだろうよ。今更考えるまでもねぇよ」

 

 

ねずみ男はそう言って笑う。

簡単に言ってくれる、しかし現実はそう。簡単な話だ。

そこにどんな複雑な感情や思いが混じっていようが、非情にも世界が選ぶ答えは一つ。

滅びるか、救うかだ。

 

その時、妖怪城からサトリが敗北したと言う情報が放送で伝えられる。

それは椿達だけでなく、城内の妖怪達にもそれは伝えられた。どよめく城内、そして――

 

闇がうごめく。悪意が交差する。決して突破される事の無かった(サトリ)が突破された。

戦いは第二段階へと移行する。アキラを、世界を巡る戦いはまだ始まったばかりなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サトリが負けただとッ!?」

 

「はい、たった今目目連が観測したようです」

 

 

鏑牙の報告を総大将は信じられないと言った表情で聞いていた。

妖怪城を守護する妖怪の中でも、サトリの実力はトップクラス。

まして彼は七天夜、最強妖怪の中でも上位に位置する存在。だがその彼が負けた、侵入者にだ。

 

 

「ほう、実力は伴っていると言う事か……」

 

 

尤も、それはこちらにとっては不都合な訳だが。

総大将は少し沈黙を続ける。

 

 

(私とて、できる事ならば……)

 

 

いや妄言か。甘さも、弱さも、未練もあると?

総大将は首を振ると鏑牙に指示をだす。彼はそれを聞くと、無言で頷き踵を返した。

そのまま部屋を出て行く鏑牙、総大将はそれを合図に指を鳴らす。

 

 

夜叉(やしゃ)

 

「………」

 

 

現れるのは新たなる七天夜。

影と共に現れたのは長髪の青年。美しい顔立ちで弦楽器の胡弓(こきゅう)を抱えている。

胡弓は龍の姿を模しており、彼の服にも龍の刺繍が見える。彼は無言で総大将の前に膝をついた。

しかしこの夜叉という青年、驚くべきほど肌の色が白く、それを見れば彼が人間ではないと分かってしまう様だ。

 

 

「お前にも、動いてもらう時がくる」

 

「………」

 

 

総大将のその一言に夜叉は静かに頷いた。

サトリが敗北した今、進入者の実力は明確なものとして伝えられる。

このサトリの敗北は多くの妖怪へ影響を及ぼしただろう。だが、コチラもまだまだ戦力はある。

 

サトリと同等の実力を持った七天夜は夜叉を含めて残り5体。現在召集中であるが、侵入者に情を捨てて戦えるのは三体くらいだろう。

そして例外が一人。故にコチラ側とて余裕とは言っていられない。

 

邪神に勝つつもりで侵入者達は戦っている。しかし現実を見た者としては邪神と戦う選択をとるのは危険すぎる。

知らないと言う事は幸せか。それとも、知っていると言う事が枷となるのか? 総大将は拳を握り締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総大将に報告を終えた鏑牙は再び封印石の間へと戻った。

そこにはいつのまにか帰ってきていた瑠璃姫が座って微笑んでいた。彼女は自分が知っているだけの情報を彼に渡す。

 

 

「―――と言う訳です」

 

「成る程、やはりただの馬鹿ではないか」

 

 

笑う瑠璃姫につられ、鏑牙もまた笑みを浮かべた。

クソつまらない世界とばかり諦めていたがそれなりに実力を伴っている人間もいるという事。

 

 

「中でも相原我夢、彼の力は紛れもなく本物でしょう」

 

「子鬼と思っていたがな」

 

 

鏑牙は頷くと立ち上がる。

やる気の無い彼にしてはずいぶんと期待に満ちた目をしているじゃないか。

瑠璃姫は彼が何をしようとしているかを理解した。

 

 

「動くんですね」

 

「ああ、俺もそいつ等の光ってヤツを見てみたくなった」

 

「どうするんです? 貴方の力はいろいろ制約があるじゃない。そのまま行くんですか?」

 

 

問題ない、手は打ってあると彼は笑う。

そう言えば向こうには狂人を潜ませているとかなんとか言っていた気がする。

狂人は彼にとっての味方。つまり成る程、そういう事か。

 

 

「ゲームは勝ってこそ価値のあるものだ」

 

「当然ですね、お遊びであったとしても敗北は我らの歴史にはもういらないのです」

 

 

それが我ら――

 

 

「「魔化魍」」

 

 

鏑牙はすぐに準備を始める為、狂人に連絡を取る。

 

 

「悪いが、ゲームの準備を始めてくれ。参加者はお前が選べばいい、おそらく鬼天狗が詳しい話を教えてくれるだろう」

 

 

そこで鏑牙は通信を無理やり終わらせる。

一瞬彼の瞳が黄金に光った気がするが、それは何を意味するのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

おかしい、先ほどから常にその違和感がアギトの脳裏をよぎる。

迫り来る河童兵の攻撃を受け流すとアギトはクロスホーンを展開させた。

そのまま力を込めた拳で河童兵をまとめて吹き飛ばすと、さらにカブト達と共に城内を探索していく。

違和感、それはおそらく襲ってくる敵。そのものだろう。

 

先ほどから現れる敵と言えば河童兵ばかり。

放送ではサトリが敗北したという情報が鳴り響いている。

つまり、向こうにとってはよりアキラを失う可能性が増えたと言う事ではないのか?

にもかかわらず、相変わらず河童兵ばかりをよこすとは――

 

 

「センセー、さっきから同じヤツばっかだな」

 

「それは俺も気になっている。完全に馬鹿にされているのか……?」

 

「うん、私も気になっているんだ。強い敵と言っても上級河童兵だけだからね。向こうからはコチラが観察できる。にも関わらず強敵をよこさないなんて――」

 

 

例えば七天夜は各地に散らばっているらしいから、まだ本格的に集まっていないとすれば分かる。

しかし城を守る妖怪は少なくとも存在している筈、ならば何故そいつらを一勢に襲い掛からせてこないのか?

 

まさか向こうからコチラへ向かう必要がない?

ありえる。なら相当危険かもしれない。何せ向こうが用意した場所へ自分達がいかなければならないのだから。

それは罠に自分から引っかかっていくようなもの。なるべくなら避けたかったが。

 

 

「あ!」

 

 

その時、ナビとしてついてきていた幽子が声をあげる。

聞けばこの近くにサトリの部屋があるらしい。先ほど通信があったが、サトリの部屋には我夢が閉じ込められていると言うではないか。

四人は、早速サトリの部屋へと向かう事を決める。

 

 

「ここかい?」

 

「はい! あ……でも封印の印が――」

 

 

しばらく走った後、サトリの部屋についた四人。だが何やら札が掛かっていて中に入る事ができない。

幽子曰くこの札にはサトリの特殊な力が掛かっていて、開くのは相当時間が掛かるのだが――

 

その『束縛』は夕闇に溶けていくだけ。

トワイライトを発動させるアギト。札がかかっている部屋になんの躊躇いも無く手を伸ばすと、そのまま当たり前のように扉を開けた。

驚きに目を見開く幽子。カブト達も改めてこの能力の凄さを垣間見たようだ、束縛と言う理はアギトの前では無意味となる。彼の行動を妨げる物は許されないのだ。

 

 

「特殊な方法で助かったよ。まあ、普通の鍵ならそのまま打ち破るだけだけどね」

 

 

特殊能力無効、それは封印にも適応するのだ。

特殊な術で施錠を施したサトリ、しかしそれが仇となった。アギトの力によってサトリの部屋が解放される。

 

 

「ッ! 先生! 先輩方も!」

 

「良かった! 無事かい我夢くん!」

 

 

中にいたのは我夢、そして倒れている濡れ女だ。

黒に染まる部屋にはそれ以外のものはなく、ようやく開放された我夢は疲労しきった表情でアギト達の方へと歩み寄る。

鬼の力がまだ体に馴染んでいないのだろうか。アギト達は一旦我夢を休ませるために近くの空き部屋まで急ぐのだった。

 

 

「大丈夫か、我夢くん」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「ふっ、無理をするなよ。お前が倒れちゃ格好がつかないからな」

 

 

少しだけ我夢を休ませた後、彼等は一旦合流しようと言う考えにでた。

サトリとの激闘を終えた彼らもまた相当疲労しているだろう。

場合によっては一旦退却か、カードを使って回復をしようと考えていた。

 

 

「くそッ! アキラさんはこうしている間にも……ッ!」

 

 

やはり焦りが我夢を苛む。

心では割り切っていても刻々と過ぎる時間がアキラの死を具現させていく。

まして向こうがもし何か対策をとっているのなら簡単には彼女に会えない。

 

 

「落ち着け我夢」

 

「双護先輩……」

 

「メロンパンは、豆腐じゃない。焦っていても仕方ないぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な、何言ってんだこの人……?

た、例えが、前半部分が全く分からない。

ピンとも、まして掠りもしなかったぞ! あ、でも何か本人はすごく真面目そうだ。これそういう空気なんだろうか?

 

 

「そ、それにしても……本当にどうして向こうは河童兵しか襲わせてこないんだろうね幽子さん」

 

「わ、私もそれが不安です。何か考えがあるのでしょうか?」

 

 

耐え切れなくなったか、翼が幽子に話を振った。

河童兵も決して弱いと言う訳ではない、無数の兵士は体力と精神を奪うのには十分すぎる効果だった。

だが翼は心の中で一抹の不安を覚える。アキラも百目もどこにいるのか全く分からないこの状況でこれ以上時間を無駄にするのは危険すぎる。

 

 

「ここだな、階段の間は」

 

 

そうこう話している間に、一同は階段へとたどり着く。

最下層から司達も移動しているらしく、とりあえず底へ向かう事にした。

 

 

「そう言えば、妖怪を騙っているヤツに会いましたよ」

 

「ああ、貰ったメールにそんな事が軽く書いてあったね。人間だった……んだよね?」

 

 

我夢は頷いて、アーマードーパントとの戦いを翼達に報告した。

何か音声が聞こえたかと思えば、いきなり異形の者が現れ戦闘になったのだと。

気になるのは、アーマードーパントを倒したときに外装が剥がれ人間が倒れた。その隣で『何か』が破壊された事だった。

原型を留めていない為に、それが何かは全く分からなかったが、すこしUSBメモリの様な面影は残していたと言う。

 

 

「よく……分からないが、おそらくそのメモリか何かで人間が妖怪を騙していたと言う訳か」

 

「そ、そんなもの聞いた事もありません!」

 

 

驚く幽子を見るに、どうやらこの世界の歴史には登場していない何か……? と言う事なのだろうか。

我夢の話しによれば瑠璃姫とは仲間の様だったと言う。瑠璃姫、ヒトツミが率いていた新参の妖怪達の一人。

つまり――

 

 

「やっぱその新しく加わった妖怪達が何か企んでやがるんだな! ああ、そうだぜ! きっと邪神の使いだの、邪神もそいつらが!!」

 

「うん、そうだね。その可能性が高い気がするよ」

 

 

とは言えそれを聞いてくれる訳も無いだろうけどね、翼は頭を抱える。

百目が敵ならば目目連を操作できる筈だ、おそらくこの会話は目目連たちには捉えられていないだろう。

聞けば百目も新参の妖怪だと言う。おそらく、いや確実にヒトツミサイドなのだ。

 

 

「新参で入ってきた妖怪は一体どれくらいいるんだい?」

 

「……ご、ごめんなさい。そこまでは」

 

 

幽子はあくまでも一般妖怪のカテゴリを出ない。

彼女達には新しい仲間が増えたとしか連絡は来なかったようだ。

尤も、妖怪とて社会に生きるもの。妖怪同士でも面識の薄いものや全くかかわりが無いものもいる。新参で入ってきた者の名前すら分からぬ状況なのだ。

 

 

「なら、メモリを使う時まで区別はつかないと言う事ですか」

 

「妖怪の中には妖力を感じ取れる人もいるみたいだけど……」

 

 

だいたいの話、妖怪と人間しかいない世界で人間にできない事をやってみせたら、それは妖怪の力なのだと思うのが普通だ。

いちいち探りなど入れるはずも無い、それが常識なのだから。

 

 

(メモリ……いきなり現れた邪神)

 

「皆、もしかしてヒトツミ達は――」

 

 

その時、ふと黒い羽が見えて……

 

 

「みんなっ!!」

 

 

これは、攻撃。それを理解すると共に羽を突進で散らすカブトゼクターとガタックゼクター!

 

 

『構えろ鏡治ッ!』

 

『へいへい双護ぉ! レッツパーリィ! ヒャッホウ!!』

 

 

それぞれのゼクターを構えて男達は闇のその先を睨む。

 

 

「「「変身ッ!!」」」『『HENSHIN』』

 

 

目を丸くする幽子をかばうように閃光が羽を散らしていく。

素早くキャストオフとクロックアップを発動させ、ガタックはとりあえず幽子を安全そうな場所につれていく。

同じくクロックアップを発動させているカブトは、羽の主を見つける為に高速で階段の間を駆け抜ける。どこだ? どこから攻撃を――

 

 

「!」

 

 

後ろへ跳ぶカブト。

するとそこへ一閃! 見れば、自分が通ろうとしていた所に槍が突き刺さっていた。

 

 

「ほう、お前も高速の世界を見るか」

 

「………」

 

 

現れたのはトカゲが鎧を纏ったような風貌の者。

それはクロックアップ中である筈のカブトと対等の場で会話をしていた。

つまり、同じく高速移動(クロックアップ)を発動できる者と言う訳だ。

 

 

「お前は、どちらだ?」

 

「何のことだ?」

 

「邪神の破壊を望むのか、それを防ぐのか――」

 

 

カブトの問いにトカゲはニヤリと笑う。

さて、どうだろうな。これが彼の答え、名言はしない。あくまでもうやむやなグレーゾーン……か。

 

 

「我が名は韋駄天(いだてん)。命により、貴様ら侵入者を――」

 

 

韋駄天は突き刺さっていた槍を引き抜くと。

 

 

「殺すッッ!!」

 

 

カブトへと突進をしかけたのだった。

 

 

「!」

 

 

迫る槍、まさにそれは閃光に相応しい一撃だろう。

韋駄天、彼の名に相応しい瞬槍。それはカブトの喉を的確に捉え、貫かんと猛威を振るう。

狙い、速度、威力。ともに完璧。後は彼が血の飛沫と共に地面に倒れるだけ、韋駄天は力を込め――

 

 

「……ほう」

 

 

成る程、流石は進入してくるだけはある。韋駄天は敬意に似た感情をカブトに対して持つ事となった。

彼を貫く為に放った一撃は、確かに彼によって止められていた。あの素早さから反応できるとは――

しかも、カブトはしっかりと槍を掴んでいる為に韋駄天を逆に捉える形となっているではないか!

 

 

『ONE』『TWO』『THREE』

 

「さよならだな、韋駄天。貸した玩具は返さなくて良い」

 

「チッ――」

 

 

わけの分からん事を、韋駄天は思うがそれどころではない。

すぐに槍を離し、後ろへと飛んだ。だがカブトが言った言葉をよく考えるべきだったのだ、カブトは直接韋駄天を攻撃するつもりなどない!

 

 

「しまっ――!」

 

「ライダーキック」『RIDER KICK』

 

 

カブトはキャストオフで地面に落ちた装甲の破片を思い切り蹴りとばす!

破片は光を纏った弾丸に変わり韋駄天へと猛スピードで向かった。そうはさせるか、韋駄天にはその俊足がある。

確かにスピードは速いが避けられないと言う訳ではない。迫り来る弾丸を前にして、彼はまだ余裕だった。

ガタックは幽子を守護している為サポートはできない。ましてもう一人はこの高速の世界に反応すらできていない――

 

 

「!!」

 

 

突如、アギトに光が差しその姿が変わる。

橙の光と共にアギトはトワイライトフォームへと変身を完了させた。

トワイライトの能力が発動する。適応能力、それは高速の世界で動く彼らと自分の感覚を同調させる力。

アギトは高速で動く事はできない、だが相手の動きを明確に判断する事ができるのだ。

 

それはつまり高速移動の無力化、相手のフィールドと自分のフィールドを一体化させ常に「対等」の戦いにする事ができる。

アギトは瞬時に状況を判断すると、トワイライトアローをベルトから出現させる。素早く弓を振り絞ると、それを韋駄天に向けて放った!

 

 

「ぐぉッ!!」

 

 

どんなに高速だろうが、それは全てを対等に照らすトワイライトの前では無意味となる。

トワイライトアローは回避を行おうとした韋駄天の動きを止め。カブトの放つ装甲をまともに直撃させた!

 

 

「チッ!!」

 

 

何とか手を盾にして装甲を防いだ韋駄天だったが、それなりにダメージは受けたらしい。

クロックアップが解除されたカブトと再び対峙すると、彼はゆっくりと後ろへ下がっていった。

 

 

「………」

 

「ふふふっ」

 

 

追撃をする為に歩き出したカブトの足が止まる。韋駄天を庇う様に現れたのは黒い翼、瑠璃姫だ。

彼女は疲労で膝をついていた我夢を見ると冷めた笑みを浮べる。アギトとガタックも河童兵とは違う異質さを持った彼女に、少し緊張を覚えた。

 

 

「韋駄天、油断するなと言った筈です」

 

「申し訳ありません瑠璃姫様。少し、甘く見てしまいました」

 

 

瑠璃姫は苦笑すると、もう一度カブト達を見て笑う。

クロックアップ、どうやらその力は自分にとっても相当厄介なものの様だ。

ここは戦闘を避けておくべきだろう。瑠璃姫は少し考えたが、今の自分達ではカブト達と戦うのは好ましくないと悟る。

 

 

「もういいでしょう。時間は十分に稼ぎました」

 

「……何?」

 

 

くいついた。瑠璃姫は内心でより深い笑みを浮べていた。

とりあえず情報を与えるのはどうかとは思うが特にこの三人、そして響鬼は危険だ。

一旦引いてもらうのが得策だろう。

 

 

「あなた達のお仲間……今どう言う状況なんでしょうねぇ?」

 

「………ッ」

 

「サトリさんが倒された事で、私達は本格的にあなた達を潰す事にしました。今、サトリさんと戦った彼らは相当疲労しています」

 

 

そこを狙わない手がありますか?

あなた達の行動は全てこちらに筒抜けなんですよ? そう言って瑠璃姫はカブト達に微笑みかける。

その優しい笑顔で惑わされそうになるが、言っている事はつまり早く仲間を助けに行かないと手遅れになると言う状況なのだ。

カブト達としては目の前にいる瑠璃姫を今ココで倒しておきたかったが、彼女が言っている事はおそらくは真実だろう。

 

もし仮に自分達が敵だったとして、やはり狙うなら今しかない。

悔しさはあったが司達が危険なのは分かる、カブト達は瑠璃姫を牽制しつつ階段の間を飛び下りるのだった。

 

 

「……ふふふ」

 

「クッ、あの男。いずれまた決着を――」

 

 

瑠璃姫と韋駄天は特にカブト達を追うことも無く、闇に消えていく。

焦る事はしない、積み上げる時間が長ければ長いほど……楽しみは増えると言うものだ。

瑠璃姫はそのゲーム性に満ちた状況に悦楽の感情を抱き、そして思いを馳せる。

 

彼女はどこかで我夢達を応援している。そしてそれを全力で阻止する事を楽しみにしている。

人はそれをおかしいと言うだろうか? だが彼女にはそれが通常なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、結構危ないようだね」

 

「出て行かないんですの?」

 

「もうちょっと様子見さ、交渉は――」

 

 

優位に立たないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ! 想像以上にやばいみたいじゃねーか!」

 

「クロックアップ!」『Clock Up』

 

 

マシントルネイダーによって最下層まで降りる五人の前に飛び込んできた光景、それは戦闘中のディケイド達だった。

サトリ戦で消費した体力や精神力を癒す間もなく、彼らの前に新たな妖怪が立ちふさがった。

 

まず、とびこんできたのはなんと言ってもその巨大な百足(ムカデ)だ。

百足と言えどその外見は昆虫と言うよりは龍といえる程変化しており、まるで甲冑を纏った龍そのもの。

足はただの移動手段と言う訳ではなく、その鋭利な爪で獲物を切り裂くのだろう。なんと言っても巨大な姿で、ドラグレッダーより少し小さめと言う程だ。

大百足、それは今オートバジンやドラグレッダー、リュウキレッダーと激しい激闘を繰り広げている。

 

少しでも気を抜けばその力はディケイド達に及ぶだろう。なんとか動きを止めるのに必死の様だ。

既に限界を迎えたイマジンの為に、良太郎もライナーフォームとなって大百足と戦っている。とはいえ良太郎自身そうとうな負担があったはずだ。

動きも鈍く、大百足をサポートする為に攻撃をしかけてくる河童兵を弾くのに時間が掛かっている。

 

そして、さらに二体の妖怪が見えた。

ディケイドやファイズと戦っているのは一見普通の人間、しかし彼もまた戦闘に特化した妖怪である。

どこにでもいるような青年に見えるが、やはり普通の人間とは言いがたい。髪は白く、墨で書いた文字が羅列している巻物をマフラーの様にして口を隠している。

目も文字が羅列した紙で覆っており表情がまったく分からない。

 

そして、尤もたる特徴は"右手"だろう。普通の人間のものではない、その色は黒。深淵さえも塗り上げる漆黒だ。

妖怪、黒手(くろで)。彼は刀を手にし、ディケイド達と激しい火花を散らしていた。河童兵の放つボウガンが邪魔となりディケイド達はうまく黒手に攻撃できない。

まして先の戦いの疲労も相まって完全に劣勢状態だった。なんとか実体化できているデネブが河童兵を足止めしようと奮闘してくれているが、それでも厳しい戦いに変わりはない。

 

 

ファムや猫娘の方もまた妖怪と戦っていた。

茶色の長髪、美しい着物を着た男性。だがそれは上半身だけの話、下半身は巨大な蜘蛛となっている。

妖怪、土蜘蛛(つちぐも)。今は足を蜘蛛化させているがそれは彼のバトルスタイルの為に、ある時は足を人間体に戻し手を蜘蛛化させる事もしていた。

強靭なワイヤー状の糸を鞭の様に操り、ファムや猫娘を翻弄していく。

その姿はまるで舞っている様に見えた、美しさと覇気を織り交ぜた舞踏は、確実にファムたちを追い詰めていく。

 

見るからに相当危険な状況だと言う事が分かる。

カブトとガタックは着地と同時にクロックアップを発動して、妖怪達を弾き飛ばした。

アギトもまたフレイムフォームに変わると、セイバーの連続切りで河童兵を気絶させていくが……

 

 

『『Clock Over』』

 

「チッ!」

 

「しまったッ!」

 

 

彼らとて無数の河童兵、いや大群とも言える数を相手にしてきた。

そしてその度にクロックアップを発動してきたのだ、体にかかる負担も底知れぬものとなる。

自分では大丈夫だと思っていたが、どうやら体の方が先に悲鳴をあげたようだった。クロックアップの連続使用、ついに限界がやってきたのだ。

 

 

『ゼイッ!!』

 

「うおっッ!!!」

 

 

弾き飛ばされながらも、黒手はしっかりと受身をとっていた。

そのまま反撃の一閃でガタックカリバーを弾き飛ばす。しかもただ弾くだけではない、弾かれたカリバーは的確にディケイドへと向かいそのまま命中した。

 

 

「つ、司! ごめんっ!」

 

「いやいいッ! それよりくるぞ!」

 

「ッ!」

 

 

黒手の刀がガタックを切り裂こうと目の前まで迫っていた。防御は間に合わない!

ならば――ッ

 

 

「プットオン!」『Put On』

 

 

装甲が瞬時に復元し、刀は固い鎧によって防がれる。

チャンスだ、ガタックはそのままバルカンを黒手に向けて発射した!

 

 

『甘いッ! 甘いわぁぁッ!!』

 

「なにっ!」

 

 

黒手はその文字の通り、黒く染まった手を前へと突き出す。

目を疑うガタック。黒手はバルカンの弾丸をその手で掴みとると、そのまま握り潰したのだ!

爆発が彼を包むが、そんな事はおかまいなしと言わんばかりに黒手はその手を振り上げる。

 

 

『ゼイァッッ!!』

 

「クッ!!」

 

 

漆黒のアームハンマーがガタックを押しつぶし、そのまま地面へと叩きつける!

直ぐに立ち上がり反撃のバルカンを発射するガタックだが、既に黒手は後ろへと跳んでおり、バルカンは空しく不発に終わってしまった。

 

 

「くそっ!」

 

 

ディケイドは周りを見て焦りを覚える。

確かにカブト達が加勢してくれたおかげで、少しは楽になったものの、それでもまだ劣勢には変わりない。

大百足はまるで龍のような咆哮を上げながらドラグレッダー達に突進を仕掛けていく。

固い装甲がドラグレッダー達を弾き飛ばし、その衝撃が他のメンバー達の行動を制限していく。

 

黒手の素早い攻撃、立ち回り。土蜘蛛の強力な一撃、そして強靭な糸での拘束。

なんとか電王が抑えているが、サトリ戦から時間も経っていない状況だ。いずれ限界を迎えるだろう。

 

 

「クッ!」『フリーズベント』

 

 

ファムの放つ光に黒手が触れると、彼の動きが完全に停止する。

大きな隙、迫られるは二択だろう。この大きな隙をどうするか、今ココで一気にラッシュをしかけて戦況を変えるか……はたまたこの隙をついて一旦退却か。

 

アギトもまた冷静に状況を分析する。問題はやはり大百足だろう、リュウキレッダーは限界を向かえて地面へ伏している。

ドラグレッダー、ブランウイング、オートバジンの三体で突破できるか?

まして黒手や土蜘蛛もまだ体力は残っている筈だ、対して自分達はほぼ皆疲労が頂点に達していると言ってもいい。

 

 

「余所見はいけないな」

 

「!」

 

 

アギトの四肢に土蜘蛛の糸が絡みつく。

そこへ構えられる河童兵達のボウガン、土蜘蛛の巨大化した腕。

アギトは素早くトワイライトを発動して脱出するが、トワイライトがなければ今頃……

やはりここは一度引くしかない。

 

 

「皆! 一旦――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アタックライド』『ブラスト!』

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

鮮やかなシアン、無数の光が変則的な動きを成して飛来してくるのを一同は確認した。

光の群れはまるで一つ一つが意識を持っているかのように、土蜘蛛や黒手、河童兵の周りを蝶の様に舞った後――

 

 

着弾する!

 

 

「グッ!!」

 

「チッ!」

 

 

バランスを崩した妖怪達。

その隙、一瞬ではあったが彼らには十分だ!

 

 

「「クロックアップ!」」『Clock Up』

 

『Complete』『Start Up』

 

 

一、二、三。赤、青、黒。三つの閃光が音速の世界へ足を踏み入れた。

疲労しているカブトとガタック、限界は恐らく十秒あれば良い方だ。そしてそれはファイズアクセルも同じ。

 

いや、だがしかし十秒もあれば彼等にとっては十分すぎる程の時間である。

三人は刹那、アイコンタクトをとると河童兵を一気に弾き飛ばしていく。

ガタックの投げたカリバーは全ての河童兵を多きく仰け反らせ、防御を殺す!

 

 

『READY』

 

 

ファイズは、オートバジンから引き抜いたハンドルにメモリを装填する。

すると紅い光と共に、ファイズエッジが完成。ファイズはそのまま加速しながらファイズフォンのエンターボタンを押した。

 

 

『Exceed Charge』「たぁああああああああああああああッッ!!」

 

 

光と共にファイズは河童兵を次々に弾き飛ばしていく!

だが、ただ弾いている訳ではない。飛ばされた河童兵は綺麗な直線になっている。つまり一列に並んだと言う事だ。

 

 

「双護くん!」

 

「ああ!」

 

『ONE』『TWO』『THREE』

 

「ライダーキック!」『RIDER KICK』

 

 

その一番端の河童兵を、思い切りカブトは蹴り飛ばすッッ!!

ドミノの様に河童兵は衝撃を次の河童兵に伝えていき、全員を壁へと叩きつける!

 

訪れるタイムアップ。

黒手と土蜘蛛の意識が戻った時には、無数の河童兵は全て気絶していたところだった。

 

 

「何者だッ!」

 

 

黒手は弾丸が飛来してきたところへ視線を移す。

すると、上から無数の人影が。

 

 

 

 

 

 

 

いや、落ちてきた!?

 

 

「あーっはははははははは!」

 

 

一つ、また一つと人がホールへと着地していく。

いきなりの乱入者はディケイド達にとっても予想外だったのか、黒手やディケイド共々動きを止めてその乱入者が誰なのかを確認しているのだった。

 

 

「……ゲッ!」

 

 

はじめに声をあげたのはディケイド。

視線の先には見た事のある奴が立っていた、できれば二度と会いたくなかった奴が。

 

 

「ははは! 久しぶりだね、司」

 

「………」

 

 

ディケイドとよく似ている、まるでバーコードをモチーフにした様な容姿。

なによりも同じ電子音、鮮やかなシアンは彼のカラーなのだろう。現れたのは七人の少年少女。

 

燃える様な赤い髪の少女、朱雀(すざく)

美しい銀髪の少年、リラ。

海の様な青髪の少女、マリン。

黄色に近い金髪のスーツ姿の少年、タイガ。

やる気のなさそうな目をしている緑髪の少年、ディス。

鮮やかな黒髪と誰もが振り向くようなスタイルの少女、巳麗(みれい)

 

そして、シアンの装甲に身を包んだリーダー、海東(かいとう)大輝(だいき)。仮面ライダー・ディエンド!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギシャアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

突如現れた侵入者にいち早く反応したのは大百足だった。

ドラグレッダーの攻撃をまともに受けながらも、狙いをディエンド達へと変える。

 

 

「やれやれ」『アタックライド――』

 

 

ディエンドは、銃・ディエンドライバーにカードを装填してゆっくりと大百足の方向に銃口を移動させた。

そして、引き金を引く!

 

 

『バリア!』

 

 

ディエンドの紋章が出現し、大百足に直撃。

突如現れた壁に大百足は自ら猛スピードでぶつかってしまう。その衝撃は絶大だろう、大百足はその場に倒れてしまった。

 

 

「おのれっ! 侵入者か!」

 

 

黒手と土蜘蛛も標的をディエンド達に変えて武器を構える。

対して、先ほどと同じようにディエンドは特に焦る様子もなくカードを装填していく。

 

 

「君達はコレかな」『カメンライド――』

 

 

引き金を引くディエンド。

すると、ホログラムの人影がディエンドライバーから射出される!

 

 

『レンゲル!』『パンチホッパー!』

 

 

データで構成された二体のライダー、彼らはディエンドに危害を加えようとする黒手達を許さない。

恐怖を知らない兵士達は、ただディエンドの命令に従うだけだ。武器を構えそれぞれと対峙する。

 

 

「す、すまない、海東。助かった……」

 

「………」

 

 

ディケイドは少し不服ながらも、素直に助けてくれた事を感謝する。

だが、ディエンドは意外にもディエンドライバーをディケイドへと向けたではないか。

 

 

「!?」

 

「ふふっ、司。きみは何か勘違いをしているようだね」

 

 

ニヤリと笑う朱雀達。

瞬間理解する、こいつらは別に助けに来た訳ではないのだと!

 

 

「へへっ、わかってんじゃねーか。ディケイド……だったっけ?」

 

「どういう……事だ?」

 

「取引ですわ、ディケイドさま」

 

 

マリンもまたニヤリと笑って前へ出る。

ディケイド達を前にしても不適な笑みを浮べているのは、自分達が優位にいると言う事が分かっているからだろう。

この様子だと、どうやら今までの戦いを見られていたようだ。危険だったから助けに来たわけじゃない。この時が好都合と思い、交渉しにきたと言う事だ。

 

彼らが純粋な味方ではないと言う事にアギトは頭を抱える。

この状態でさらにややこしくなるのか。ますますアキラを助ける時間が延びそうだ。

 

 

「はじめまして。タイガと申します。皆様のこの状況を優位にする代わりに、司様のディケイドライバーをコチラへ………」

 

 

と、前へ出たタイガだったが彼は急に言葉を止める。

不思議そうにマリンが彼を呼ぶと、タイガは彼女に一言だけ謝罪をいれた。

 

 

「タイガ?」

 

「申し訳ございませんお嬢様。少しよろしいでしょうか」

 

 

タイガは、ディケイド達全員に変身を解除するように言う。

彼が見つけたのはディケイド達に隠れるようにして立っていた我夢、タイガはその我夢に確かに微笑みかけたのだ。

同時に我夢もまた、その行動に安心したように笑う。

 

 

「変身を?」

 

「はい、一瞬で構いませんので」

 

 

いくらデータライダーが妖怪を抑えているとはいえ、生身を晒すのは避けたい。尤も朱雀たちも生身な訳だが。

だが、このままではややこしくなるばかりか。アギトが筆頭に次々と変身を解除していくメンバー達。

 

 

「「「!!」」」

 

 

そして、マリンたちの表情が変わる。

 

 

「そ、双護様!」

 

「良太郎くん!」

 

「ゲッ! 真志ぃ!」

 

「あぁ、洋服の娘じゃない」

 

 

その言葉に、真志達名前を呼ばれた者達も大声をあげる。

完全に復元されていく記憶。本来ならこんな場所にいるわけはない、だから忘れていたのだが――

 

 

「おや、お茶をご馳走になった……」

 

「り、リラくん!?」

 

「あ! ファミレスの!!」

 

「む、無性にエロい人……」

 

 

再会するはずの無い出会いだった、しかし今彼らは再会したのだ。

瞬間、急激に加速していく条戸真志の脳。意味が分かっていないディケイドやディエンド達を置いていくかの様に、真志は朱雀に向かって絶対の一言を投げつける。

 

 

「あの時のお礼ッ!!」

 

「え!?」

 

「今、してくれよ!」

 

「―――」

 

 

朱雀は思い出す。

ああ、そうか。言ってしまった。約束してしまった――

 

 

「やぶらないよな! 七万もしたんだぞ! 絶対ってお前言ったよな!」

 

「あ……え……えっと――」

 

「お前は腹を空かせて倒れてた! それを助けた上に、七万も飯を奢ったのはだれだッ!!」

 

 

朱雀は苦笑して頷くとディエンドの前に立つ。

首を傾げる彼の肩を叩くと、朱雀はニッコリと微笑んだ。

 

 

「悪い海東。ってなわけで、オレ、あっちにつくわ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

 

「あ、海東。私もお友達の所にいってきますね。タイガ!」

 

「かしこまりましたお嬢様」

 

 

そう言って朱雀、マリンとタイガはごく自然になんともナチュラルな流れでディケイド達の方へと歩いていく。

 

 

 

 

え?

 

 

 

「良太郎くん! ぼく、ぼくも恩返しするよ!」

 

「リラくん……ありがとう!」

 

「ちょ、おまっ」

 

 

とてとてと走り去るリラ、巳麗も自分は恩があるからと普通にディケイドの方向へ歩いて行く。

まるでちょっと買い物しにいくような自然さだ。

 

 

「あ……あのー!」

 

「お、おい! リーダー! なんかやばくないか!?」

 

 

数秒である、数秒でディエンド達の勢力はわずか二人となった。

対して――

 

 

「さあ、海東、交渉といこうか! 今ココで妖怪と共に朽ち果てるか、それとも俺たちに協力してくれるのか……どっちだ!」

 

「なっ! なにを言うんだ! 君も何か言ってやりたまえディ……ス――」

 

 

横には、誰もいない。

さっきまで一緒にいた緑の少年は何かちゃっかりディケイドの隣に立って――

 

 

「さあ! どっちにするんだ海東ッ!!」

 

「僕を裏切るのかぁあああああああああ!!」

 

 

十六対一、今のディエンドは完全に劣勢ってなもんである。

と言うか劣勢と言える程ですらない。もはや話し合いの余地すらない状況、ディエンドは何故か完全に包囲される事となった。

そして、それだけでは終わらないのが嫌らしいところである。

 

 

「ギッ! ギギィィイイイイイィィィイッッ!!」

 

 

再び意識を取り戻した大百足がディエンド達を襲おうとした時、無数の光がどこからか現れて大百足に着弾する。

大百足はもう一度地面へと伏せる事となる、何事かと構える一同の前に響き渡る二つの笑い声。

 

 

「ディエンドぉ! 君はもう選択を選ぶ権利すらないようだねぇ」

 

『大人しく協力したほうがいいのではないかしら?』

 

 

着地したのは金色と青色が目に付くライダー、ダブル・ルナトリガー。

ダブルは遅くなってしまった事をディケイド達に謝罪すると、もう一度ディエンドに目を向けた。

ダブルが放つ圧倒的強者のオーラ、瞬時にディエンドはダブルがディケイド側についている事を理解する。

 

 

「チッ、仕方ない。だけど僕達が協力するにはディケイド、君のドライバーを全てが終わったら頂くけど……いいね?」

 

「なっ!!」

 

 

ふざけてはいない、真面目なトーンでディエンドはディケイドに銃を向けた。

そこに笑いはない。今までのディエンド、海東とは全く違うオーラ。本気なのだろう、彼が持ちかけたのは協力の代価。

その迫力と条件に思わずディケイドは沈黙してしまう。この戦いが終わった時、自分は仮面ライダーではなくなるのだ。

 

 

「………ッ!」

 

「まあいいや、詳しくはコイツらを葬った後にさせてもらおうかな。こんなに騒がしいんじゃ話しの一つもできやしない」

 

 

そう言ってディエンドはカードを素早くドライバーにセットして引き金を引く。

アタックライド・ブラストが発動して土蜘蛛と黒手に追撃を加えた。大きくよろける彼らを鼻で笑うと、ディエンドは顎で大百足を指し示す。

 

 

「タイガ、マリン、朱雀はあの百足を。残りは司達を安全な場所に」

 

 

そう言ってディエンドは素早く跳躍して、我夢の隣にやってくる。

 

 

「さあ、手をとりたまえ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

味方になってくれると言う事なのだろうか? 我夢はおずおずとディエンドに手を差し出す。

彼はそれをかろやかに受け取ると、またカードを発動させた。

 

 

『アタックライド』『インビジブル』

 

 

ディエンドと我夢の肉体が透明になり、姿が消失する。

この場から離れたのか、黒手や土蜘蛛と戦っていたデータライダー達も同時に消滅していった。

普段は言い合いや罵り合いをしているにも関わらず、いざと言う時には団結力が働くのかディエンドの命令どおり、あっと言う間にホールにはマリンと朱雀。

そしてタイガ以外は散り散りになっていくのだった。

 

 

「チッ、逃げられたか……」

 

『土蜘蛛、追ってくれ。ここは大百足と私だけで十分だ』

 

 

土蜘蛛は頷くと、自らの下半身を完全体(おおぐも)へと変化させてそのままホールから消えていく。

マリンと朱雀も逃がすまいと動いたが、黒手が刀からエネルギーを放出して二人の邪魔をした。

 

 

「お嬢様、朱雀。ここは諦めましょう」

 

「チッ、しゃーねーなッ!」

 

「追うのも面倒ですものね」

 

 

三人は黒手と大百足と対峙する。

いや正確には三人じゃない。二人の参加者が残っている。

タイガたちはその二人を見つけると、すぐに声をかけた。

 

 

「あら、お逃げになってくださいな」

 

「そうだぜ、ここはオレ達がなんとかするからよぉ」

 

 

しかしタイガは何も言わなかった。

その人から溢れるのは決意と闘志。成る程、どうやら彼女にとってはこれが何か大切な戦いなのだろう。

であれば、もう何を言っても無駄と言う事でもある。

 

タイガはその少女を逃がそうとする二人を制止すると、彼女に対して一礼を行い後ろへと下がっていった。

自分が出る幕はない、そう言う事である。少女はタイガから送られたメッセージと気遣いに感謝すると『相棒』と一緒に、タイガと入れ替わるようにして前へ出た。

 

 

「ゼノンくん達が言うにはカードの効果で記憶が消える事はないみたいだけど、本当にいいんだな。ハナちゃんッ」

 

「ええ、良太郎や皆だって戦ってるの。だったら――」

 

 

覚悟はもう終わった。

やはり少しの恐怖心と甘えがあったが、サトリと戦っている良太郎の姿を見て、アキラへの思いを確認した時――覚悟は完了した。

 

 

「あたしも、戦うッ! だから、お願い! デネブ!」

 

「わかったぁ! ハナちゃんは俺が守る!」

 

 

この場に残ったのはハナとデネブ。頷き合う二人を見て、朱雀とマリンは頷き微笑む。

 

 

「よく分かんねぇが、どうやら中々熱いハート持ってるみたいじゃねぇかよ! 気に入ったぜチーム・ディケイド!」

 

 

朱雀は豪快に笑いながらハナの左隣に移動する。

緊張しているだろうハナにウインクを送ると、自らは一枚のメダルを取り出した。

赤い色をしたメダルで、なにやら鳥の様な生き物が描かれている。

 

朱雀は、それを黒手達に見せ付けるようにして構えた。

そしてスライド! 一枚だけ持っていたように見えたメダルだったが、スライドさせた事で後ろから二枚のメダルが姿を見せる。

 

計三枚のメダルを朱雀はいつの間にか装着していたベルトへと装填していく。

指で弾きながらベルトに装填させていく様は、清清しささえ感じられる。

 

 

「うふふ、私達も負けてはいられませんわね」

 

 

そう言ってマリンが取り出したのは一つのドライバーと三つのメダル。

ベルト・オーズドライバーは朱雀のと同じデザインだ。メダルは青を基本カラーとして、なにやら海洋生物らしき絵柄が描かれていた。

マリンはハナの右隣へと移動しながら、優雅にメダルをドライバーに装填していく。そうやって三枚のメダルを装填した後に、彼女はドライバーを腰へと装着した。

 

 

「チッ、ややこしい力だ。いくぞ大百足!」

 

「ギシャァァアアァアアアァアッッッ!!」

 

 

黒手は大百足が意識を取り戻したのを確認すると、刀を構えてハナ達めがけて走り出した。

もう迷っている時間はない、いや……迷う理由も無い!

 

 

「あたしだって、戦えるのよ!」

 

 

凛とした瞳で黒手達を睨むハナ。そしてその手には――侑斗から受け取ったゼロノスベルト!

 

 

「うしっ! じゃあいっくぜぇマリン! あと……」

 

「ハナ!」

 

「ふふっ、では参りましょうかハナさん!」

 

 

三人は新たに三つのアイテムを取り出す。

朱雀とマリンは丸い形をしたスキャナー、そしてハナは一枚のカード。朱雀とマリンはドライバーを斜めへ倒し、ハナはベルトを軌道させる!

鳴り響く待機音。大百足はマリンに、黒手は朱雀に狙いを定め加速する。

 

だがもう間に合わない。

スキャナーはすでに三枚のメダルを読み込み、ハナは緑色のカードをベルトへと装填させた!!

 

 

キン! キン! キン! リズム良く鳴り響く電子音。

ニヤリと笑う朱雀とマリン、出現するはメダル状のオーラ。

それは攻撃をしかけてきた黒手と大百足を弾き飛ばすだけではない。罪の結晶が、彼女達を変身させるのだ。

 

 

『タカ!』『クジャク!』『コンドル!』

 

『シャチ!』『ウナギ!』『タコ!』

 

 

「「「変身!」」」

 

 

【タ~~ジャ~~ド~~ルーーッ!】

 

【シャシャシャウタァ~! シャシャシャウターッ!!】

 

 

三枚のメダルが一枚に変わり、朱雀とマリンへ収束する。

まさにそれは気高き不死鳥の様に、まさにそれは荘厳な海の女王の様に。彼女達の姿は変わる。

 

仮面ライダーオーズ・タジャドルコンボ! シャウタコンボ!

 

 

『ALTAIR・FORM』

 

 

同じく変身したハナ。

その周りに緑の装甲が付与されていき、牛の鳴き声を模した電子音と共に仮面が展開する!

仮面ライダーゼロノス・アルタイルフォーム。雷と共に、炎と共に、水と共に三人の仮面ライダーが現れた。

 

 

「クッ! 何者だ貴様ら!」

 

 

黒手は立ち上がり刀を構える。同時に、三人のライダーもまた、構え対峙する!

 

 

Time() Judged(ジャド) All()! さあ、暴食のままに食らい尽くすぜぇッ!」

 

Shout(シャ) Out(ウタ)! 怠惰なヤツは前にでなさいッ! お仕置きですわ!」

 

 

そして――

 

 

「最初に言っておく! わ、わたしはかーなーりっ! 強いわよッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラッ! いくぜぇええええええぇぇえッッ!!」

 

 

タジャドルは赤い羽を広げると、そのまま飛翔した。

手には盾型の銃・タジャスピナー、そこから炎弾を大百足に向けて乱射する。

とは言え、大百足は硬い装甲に被われていて炎弾はダメージを与える事なく弾かれていくのだが。

 

 

「朱雀、今のままではあの百足は止められませんわ。やわらかい部分を露出させましょう」

 

『くっ! させるか!』

 

 

黒手は素早く跳躍してシャウタの眼前へと着地する。

振り下ろされる刀、小さく悲鳴を上げるゼロノス。だってシャウタはどう考えても避ける気など無い、このままなら切り裂かれてしまう!

だがタジャドルは驚く事もなく大百足を引き付けていた。それに彼女を何よりも大切に思っているだろうタイガは、むしろ笑みを浮かべ拍手を送っているじゃないか。

その様子でゼロノスはシャウタが無事な事を理解する。そして――

 

 

「流石です。お嬢様」

 

『!』

 

「動いて避けるのは面倒ですもの」

 

 

そんなタイガの声が聞こえ、黒手自身も理解する。

切ったと思ったが、手ごたえは無かった。何故か? それは彼女が液体になったからに他ならない。

"液状化"、それがシャウタコンボが備えている固有能力。液体となった彼女に刀などと言う物理がきく訳も無い。

虚しく振り下ろされた刀、黒手が体制を立て直そうとしたときには既にゼロノスの蹴りが腹部に命中していたのだった。

舌打ちをして後ろへと跳ぶ黒手。ゼロノスは叫ぶ、アイツは任せろと。それにシャウタとタジャドルは了解し、自分達は大百足の討伐へと集中する事にした。

 

 

「おおっと! あぶねぇなクソッ!」

 

 

大百足はその巨体を存分に使い、タジャドルやシャウタに突進をしかけていく。

なんとかかわしていくタジャドルだが、コチラの攻撃がほぼ無意味なのは中々厳しいものがある。

シャウタにしてもそうだ、液状化で攻撃は回避できるがいつまでも液状化したままとは行かない。

制限時間があり、タイミングを逃してしまえば容易に反撃をくらってしまう。

 

 

「手伝いますか? お嬢様」

 

「構いませんわタイガ。もうすぐ決着はつきますもの」

 

 

シャウタは攻撃を回避しながら、冷静に大百足を観察していた。

最初は腹部がやわらかいのではないかと睨んだものの、どうやらそうでもなかったらしい。

装甲は大百足の全体を被っている為、ひっくり返したところでどうにかなるわけでもない。

弱点が無い? 一瞬それも考えたが、よく考えてみると大百足の装甲には一つ重大な欠点があった事に気づく。

 

 

「ッ!!」

 

 

弱点、それは鎧のつなぎ目、そして装甲と生身に隙間がある事だ。完全に装甲と一体化しているわけではない。

だったら話は早い、シャウタは自らの頭部から強力な水流を発射して大百足を怯ませていく。

しばらくは水流で大百足を押し出していったシャウタだが、ふとピタリと水流を止める。

攻撃をやめた訳ではない、もう十分と判断したから水流を停止したのだ。

 

既に大百足の全身は水で濡れている、それは装甲の中も。

どんなに固い殻だったとしても、液体までは防ぎきれない。隙間から進入した水は勝利への架け橋となる。

シャウタは自らの武器である鞭、ボルタームウィップを取り出すとそれを思い切り大百足にたたきつけた!

とは言え、それも装甲に防がれ大きな決定打にはならないと思われたが――

 

 

「さあ、痺れなさい」

 

「――ッ グォオオォオオォォオオオオオオォオッッ!!」

 

 

ボルタームウィップから放たれた電撃が、水を伝い大百足の全身に強力な電流を流していく!

装甲の隙間からも電流は進入して、大百足の動きを遂に止めた。とはいえこれも決定打にはならないが二人にはそれで十分だった。

シャウタは再びスキャナーを取り出すと、それをドライバーへとスライドさせる。

 

 

「終わりですわよ!」『スキャニングチャージ!』

 

 

シャウタは液状化し、そのまま上空へと舞い上がる!

そして再び具現化すると、両手に構えたボルタームウィップで大百足を拘束した。

 

 

「怠惰な貴方に――ッ」

 

 

そのままシャウタは思い切り両手を引き、捕らえた大百足を自分の方向へと引き寄せる!

 

 

「サービスですわッ!!」

 

 

その時シャウタの足であるタコレッグが光り輝き、文字通り蛸のごとく足が八本に変化した。

そしてそのまま足同士を収束させ水の力でコーティングしていく。ドリルの様に変化した脚で、シャウタは引き寄せた大百足にとび蹴りをくらわせる!

 

「セイヤー!!」

 

「グオオォォオォオオオオオオオォオッッッ!!!」

 

 

叫ぶのが面倒なのか、ややトーンを落とし気味に掛け声をあげるシャウタ。

電撃ダメージもあってか、満足な抵抗もできず大百足はシャウタの必殺技・オクトバニッシュを正面から受ける事となった。

貫通力のあるドリルキック、それが大百足の装甲にヒビを入れてそのまま弾き飛ばした。

 

攻撃はまだ終わらない、着地するシャウタの隣ではタジャドルが自らの武器であるタジャスピナーにベルトから抜き取った三枚のメダルを装填する。

メダルを三枚全て装填した後、タジャドルは飛翔して大百足の装甲にあるヒビに狙いを定めた。

スキャナーをタジャスピナーにかざすと、カララカララと少し音色が違う電子音が流れる。

 

 

『トリプル! スキャニングチャージ!!』

 

「ハァァアアアア―――ッッ!」

 

 

タジャスピナーから赤い炎があふれ出す! タジャドルはその力の塊をシャウタが入れたヒビに向かって解き放った!!

 

 

「ゼィッ! ヤァアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

タジャスピナーから放たれたのは、三枚のメダルを模した炎のエネルギー。

それらは回転しながら大百足に向かい、着弾する。大きく咆哮を上げながら大百足の装甲は粉々に破壊された。

 

 

「うしっ! やったなマリン!」

 

「いや……まだですわ」

 

 

そう、まだ終わってはいない。

装甲が破壊されただけで大百足本体は気絶まではしていなかった。

力を振り絞り、大百足はそのまま二人の方へ突進をしかける!

 

 

「ハァ、少し飽きてしまいました」

 

「くそッ! しつけぇな!!」

 

 

二人は再び武器を手にし、反撃の準備に備え――

 

 

【ラタラタァ~! ラトラーター!】

 

「「!」」

 

 

だが、そんな二人の間を猛スピードで駆け抜けていく者が一人。

金色の閃光・ラトラーターは二人が空けた装甲の穴に入ると、強力な熱線・ライオディアスを発動した。

光の線が幾重も大百足から溢れ、大百足に内部からダメージを与える。さすがに耐えられなかったのか大百足は倒れ完全に活動を停止するのだった。

 

 

「かぁぁあッ! おいおい! いいとこ取りかよタイガ!」

 

「もう! 手は出さなくていいといいましたのにッ!」

 

 

二人は完全に気絶した大百足を確認すると変身を解除する。

二人の刺々しい視線の先には、既に変身を解除しニッコリと笑ったタイガが立っていた。

彼は主人であるマリンに頭を下げると、あたかも上辺だけの謝罪を告げる。

 

 

「申し訳ございません。お嬢様が少し危険かと思いまして」

 

 

彼はマリンの安全を何よりも尊重する。

少し危険だと彼が思えば命令を無視してでも彼女を守護する、彼女の敵を排除するのだ。

それに長引けば怠惰な彼女はきっと飽きてしまう。主人の為にも早く、スマートに終わらせるのが最良との判断だ。

 

 

「仕方ありませんわね。ハナさんの方は?」

 

「問題ありません。私の相棒を既に向かわせていますので」

 

 

少しゼロノスとは距離が空いてしまった。

もうホールに彼女の姿はない、しかしタイガはしっかりと手回ししている様だ。

マリンと朱雀は頷くと彼女の元へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くっ!』

 

 

黒手の刀を防いだのは、大きな虎、ではなく虎を模したバイクだった。

トライドベンダー、タイガの相棒である彼はまだ戦闘慣れしていないゼロノスを守護しつつ黒手に攻撃をしかけていく。

ゼロノスもまた、大剣・ゼロガッシャーを構えて黒手と対等に戦っていた。戦闘慣れこそしていないだけで、彼女には力と才能がある。

生まれた隙はトライドベンダーとデネブがサポートし、善戦を繰り広げていた。

 

とは言え、三対一の状況であろうとも互角に渡り合う黒手の実力は本物であると言わざるを得ない。

ホールを移動し、部屋と廊下を行き来する中で黒手は的確に立ち回り、ゼロノスを押していく。

最初こそトライドベンダーとデネブの援護に苦戦していたようだが、今は見切ったのか、スムーズに動き的確に攻撃をしかける!

 

 

「クッ!」

 

『サトリ様を突破したくらいで調子に乗られても困るな。どの道、花嫁を救うにはお前達の戦力では足りぬ!』

 

 

黒い手の部分は以上に力が強く、重量のあるトライドベンダーを簡単に持ち上げて投げ飛ばす。

刀を構えてはいるが、本来の武器は黒手自身であると言う事なのだろう。彼自身の本体も黒い手の部分であり、体は力によって構築した人形でしかない。

黒い手は分離もできるらしく、ロケットパンチの要領で多彩な攻撃をしかけていった。

 

 

『大人しく帰れ人間。そうすれば命だけは助けてやろう』

 

「馬鹿言わないで。彼女が死ねば結果は同じよ!」

 

 

振りかざした大剣を黒手は受け止める。

少し苦痛の声を漏らすが、黒手はゼロガッシャーをしっかりと掴み、ゼロノスを引き寄せていた。

 

 

「アキラちゃんを返してっていっても返してくれないのよねッ!」

 

『当然だろう。もう理解しろ、お前達が花嫁を助けるには実力行使以外の方法はないと知れ』

 

 

それは完全な、絶対の宣言だった。

これから先、自分達の前に立ちはだかる妖怪に交渉の意味は無い。

全ての妖怪がアキラ殺そうと、いや世界を守ろうと戦うのだ。

だから理解する、純粋に妖怪達と戦って勝たなければならないのだ。別の意思が暗躍している事は妖怪達には言っても意味が無い。

今は純粋な意思と意思がぶつかりあうだけなのだから。

 

ゼロノスは大剣から手を離し、そのまま黒手に殴りかかった。

元々ハナが持っている力も相まってそれなりに強烈な拳となる。

それを黒手も理解していたのか、受け止める事はせずに自らも大剣を離し後ろへと跳んだ。

 

だが、後ろへと跳んでいる最中に手を分離させてカウンターを決めていた。

ゼロノスの装甲に黒い拳が抉りこむ!! 火花が散るッ!!

 

 

「うぅッ!!」

 

「大丈夫かハナちゃん!」

 

 

追撃を仕掛けようとした手をトライドベンダーとデネブが弾く!

黒手にはトライドベンダーが、ゼロノスにはデネブが向かっていく。

デネブは咳き込みながらも立ち上がろうとするゼロノス・ハナを制止させた。

いくら元の体ではないとはいえ、コハナになった事で体力も落ちてしまっているだろう。

 

ましてハナは女の子だ、今までこんな戦いなんてした事はないのではないか。

そんな彼女にこれ以上の無理はさせられない。そうデネブは考えて、ハナの代わりに自分が戦う事を提案する。

 

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「!」

 

 

だが、ハナはそれを拒んだ。

ゼロノスに、仮面ライダーになる事を決めた時から彼女は甘えられない事を知る。

子供の体だろうが、女だろうが敵には関係ない事。世界には関係ない事なのだから。

 

 

「お願いデネブ、続けさせて。これはあたしの戦いでもあるの」

 

「ハナちゃんの戦い?」

 

「うん、そう。あたしの戦い」

 

 

ゼロノスはそう言い放ち、地面へ落ちたゼロガッシャーにスライディングで近づいた。

そのまま大剣を拾うと、トライドベンダーに足止めを受けている黒手へと向かっていく。

 

 

「うぉぉおおおおおおおぉおッッ!!」

 

『チッ、ガキが!』

 

 

黒手はトライドベンダーを同じように投げ飛ばすと、刀でゼロノスの攻撃を受け止める。

確かに威力、スピードは申し分ない。だがやはり戦闘慣れしていないゼロノスの攻撃は単調なものだ。

予測を簡単にたてられてしまい、彼女の攻撃が黒手へ通る事は無い。

 

ゼロノスは悔しさのあまり歯を食いしばる。

ああ、どうして上手くいかないのだろう?

アキラを助けて、世界を救う事の難しさ。そしていろいろな思いがゼロノスを包む。

 

 

「あぐぁッッ!!」

 

 

ゼロノスの体が回転しながら地面を転がる。

痛い、苦しい。ああ、殴られて切られるってやっぱり相当キツイのね。

ハナは立ち上がりながらそんな事を考える。これからはもう少しモモタロス達に優しくしなくちゃ……!

 

 

『どうした? もう終わりか?』

 

「うる……さいッ!」

 

 

大剣を横に大きく振るが、それもジャンプでかわされてそのまま切りつけられる。

心配そうに大声を上げて近寄ってくるデネブ。だが、再びゼロノスは彼を止めて尚も黒手と対峙する。

ああ、そうだ。ずっと今までは背中を見ていたのかもしれない。良太郎の、仲間たちの――

 

アキラは……彼女はメールで自分にお礼を言ってくれた。相談に乗ってくれてありがとうと――

そして、書いた。ハナさん『は』後悔しないでと。

 

 

「ハナさんは? それはつまり、貴女は後悔してるって事よね……」

 

 

いや、後悔じゃない。そこにあったのは未練だ。

アキラには未練があったのだろう。だから、それが文に出てしまった。

ゼロノスは思う。アキラちゃん、貴女は本当に死ぬ事が正しいと思うの?

いや違う。正しい事とかじゃなくてそれしか方法がないから。だからアキラはこの世界を救う事を決断した。

大切な友達ができて……自分にできる事を見つけて、それで決断したのね……!

 

 

『ゼイッッ!!』

 

「ぐぅぅうッッ!!」

 

 

黒手の拳を何とか受け止めることが出来たゼロノス。

そのまま脚を狙って蹴りをくりだす。これは予想できなかったのか、黒手はバランスを崩し大きな隙を作ってしまった。

 

 

「うぉぉおおおおおおッッ!!」

 

『ハァアアアアアアアッッ!!』

 

 

黒手は回避できないと悟り、ゼロノスの攻撃を真正面から受ける。そしてそのまま自分も拳でカウンターパンチを決めた!

大きく吹き飛び合う両者。その中でハナの脳裏にフラッシュバックしていくアキラの笑顔。

 

 

「―――ッ」

 

 

自分のいた時間軸が破壊されて、一人ぼっちになってしまった自分。

だけどいつのまにか良太郎やモモタロス達、オーナーやナオミ。それから良太郎の時間軸でいろいろな人と出会い、絆を得た。

しかし、今思い返してみれば女の子の友達はいなかったかもしれない。そんな中でアキラ達と出会った。

 

そうだ、それは本当に簡単な話。

友達が死んで欲しくないと願う純粋な少女の願い。だけど、そんな簡単な話じゃすませてくれない。

 

 

「ッ!!」

 

 

目の前には黒い手が浮いていた。

ああそうか、吹き飛んだのは体だけ。

黒手は本体を分離させていたのか――

 

 

『人間、私には友人がいる。その友人の為に私はお前らを止めなければならない』

 

 

黒手はゼロノスの首を掴んで叫ぶ。

それはなんとも悲痛な叫びだった。絶望の中に可能性を見出すしかないと割り切って。

 

 

「なら落ち着いて聞いて! あなた達の仲に裏切り者がいるわ。妖怪のふりをして人間と妖怪の共存を脅かそうとする連中がいるの! きっと邪神もそいつらが!」

 

『すまないが、その言葉は信じる事はできない。それは私達全員に言える事だ』

 

「そ、そんなッ!」

 

『仮にそうだったとして、どちらにせよ花嫁を生贄にささげなけば邪神は怒り狂う』

 

 

そうなれば、結果はハナだってよく分かっている筈だろう。

 

 

『裏切られるとしても、花嫁を生贄にささげない事のメリットはない。花嫁を生贄にした後で我々は戦いの道を選ぶ方が賢明だとは思わないか?』

 

 

黒手はゼロノスを掴み上げ、そのまま壁へと叩きつける。

衝撃が彼女の脳を揺らし、チカチカと光が点滅する。

 

 

(本当……苦しいわね――ッ!)

 

 

戦いはただ武器を、拳を振るえばいいと思っていた。

でも違った。心と心、尊重されるべき正義。戦いの中にある思いが土石流の様に心を侵食していく。

アキラを助けたいと言う心、それと邪神を倒せるのかと言う不安。それがぶつかり合ってグルグル回って気持ち悪い。

 

黒手と戦う中で新たなる迷いが生まれてしまった。

邪神を倒す事、それが本当にできるのだろうか? アキラも世界も守る事なんて本当にできるのだろうか?

それは自分が弱いから。それは自分が怖気づいているから。だけど、その迷いと言う毒は自分の心をじわじわと苦しめていく。

 

アキラへの思いと、世界への責任。

それは小さな彼女が背負うにはあまりにも強大すぎるモノなのだ。

彼女を助けたいのに怖くて苦しくて、足が震えて心臓が張り裂けそうで動けない。

情けないのか悔しいのか苦しいのか辛いのか全然分からなくて、ただ涙だけは溢れてくる。

 

しかし、それは黒手には分からない事。関係ない事だ。

仮面の裏でどれだけ彼女が苦しんでいようが、自分は世界を守るためにゼロノスを倒すだけ。

それは彼だけでない、土蜘蛛や総大将達もそう。

 

純粋な正義、その思い全てを乗り越えなければアキラは救えない。

初めて彼女に降りかかる仮面ライダーの重さ、それを彼女は確かに感じていた。

 

 

「ハナちゃん、よぉく聞いてくれ」

 

「……え?」

 

 

そんな彼女の肩に触れる手、顔を上げればそこにはデネブがいた。

自分と同じ目線になってくれているのか、自分と同じように膝を着いて向き合っている。

再び起動したトライドベンダーが黒手を押さえてくれている間に、デネブは彼女にどうしても伝えたい事を言う。

 

 

「ハナちゃんが何を悩んでいるのか俺には分からない。だけど、俺や野上達がその悩みを一緒に背負ってやれる事はできる筈だぁ!」

 

「……ッ」

 

「戦うって事は辛い事なんだ。だけど俺たちは勝たなくちゃいけない、それが戦いを行う者の宿命なんだ」

 

 

(ゆうと)もそうだった、デネブは優しくゼロノスの頭を撫でる。

ゼロノスはデネブの言葉に少し安心したのか、胸の内を彼に打ち明ける事にした。

 

 

「デネブ、わたし……! アキラちゃんを助けたい。でも邪神に勝てなかった時の事を考えると――ッッ!」

 

 

責任と罪悪感、そしてアキラへの想い、その重さが彼女を苦しめる。

迷わないと覚悟した心が揺れるのだ。デネブはそれを理解すると、今度は優しく彼女の肩を叩いた。

 

 

「これは侑斗が言っていたんだが……人の記憶こそが時間なんだ」

 

「記憶?」

 

「ああ、アキラちゃんと過ごしたハナちゃんの記憶は、確かな時間となって刻まれている。それを守るのがゼロノスなんだ」

 

「――ッ!」

 

 

戦う理由。

それは時の運行を守るために。

 

 

「全てを背負う覚悟、それが戦いに必要なのかもしれない」

 

 

君にその覚悟があるか? 

ゼロノスは思う。邪神を倒す事、アキラを救う事、その二つから逃れられない。

その事実とまずは戦わなければならない。それをデネブはまずハナに伝えたかった。

 

勝ち、負け。ただ単純な戦いもあるだろう。

だが本当に戦うと言う上で思いと思いのぶつかり合いは絶対にやってくる。

ハナは強いが未熟だ、侑斗に密かに言われたのは彼女を一人前の仮面ライダーとする事。

 

現に彼女は今迷っている。

アキラを助けたいと言う一人の女の子として、世界を守る為の不安に押しつぶされそうになる人間として、彼女は大きく迷っている。

戦いの決断は終わっただろう。だが、戦士としての決断はまだだった様だ。

 

 

「優先させるべきものを、見つけなければならないのね……」

 

「………」

 

 

残酷な話だが、二つを完璧に救う事なんて――。

それはまるでルーレットの様。(ルージュ)(ノワール)、それは世界とアキラに置き換えられる。

二つの内、一つにしか球は落ちない。赤と黒の二つに賭ける事はできないのだ。

どちらかを選ばなければならない。

 

 

「じゃあ……あたしは――ッ」

 

 

世界か、アキラか。

まずは優先させるべきものを選ぶ。

 

 

「その強さが、これから必要になってくるんだ」

 

「そう……だよね。あたしは……」

 

 

辛い選択だ、しかしそれをまずは選ばなければならない。

デネブは少し心を鬼にしてその答えを待つことにした。

だが、いつまでも黒手が黙っているわけも無い。

 

 

『しつこいッッ!! 打ち砕けろッッ!!』

 

 

黒手の拳がトライドベンダーを大きく吹き飛ばした。

ダメージが大きいのか、トライドベンダーの活動は停止してしまいゼロノスへの道を邪魔するモノはいなくなる。

 

 

『長々と足掻いてくれた様だが、もうそろそろ終わりにしようか人間!』

 

 

黒手は刀を突き出すと、そのままゼロノスの方向へと歩き出す。

 

 

「………」

 

 

黒手が近づいてくるにも関わらず、ゼロノスはジッと自分の手を見ていた。

ジッと、ただひたすらにその手を見つめる。そして、それを通路の奥で見つめる者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいのか、助けなくて。相当危険な状態みたいだが……」

 

「うん、ハナさんも分かってると思うよ」

 

 

仲間の危機だろうに、ディスは横で涼しい顔をしている良太郎を見て少し驚いた表情を浮べている。

バラバラになったディケイド達だったが、偶然にも良太郎とディスはこの一角に着ていたのだ。

そこで一旦休憩していたらハナ、ゼロノスと黒手がやってきたと言う事だ。

最初は助けようとした良太郎だったが、ハナの変化に気づいたのか先ほどからずっとゼロノスの様子を隠れて観察していた。

 

 

「これはハナさんの戦いだから。邪魔しちゃだめだと思ったんだ」

 

「……ちなみに君ならどちらを選ぶ? 僕は当然メリットが高い方だと思う。まあ話がよくわからないから、この件に関してはノーコメントだが」

 

 

良太郎は少し微笑んだ後、自分ならハナと同じ答えにすると言った。

首を傾げるディス。まだハナは答えを言っていないのに、良太郎の答えは彼女と同じだと言う。

 

 

「まるで、彼女が何を言うか分かっている様な言いぐさだな」

 

「あはは、多分だけどね。ハナさんって――」

 

 

気が強いから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、そうか。簡単な話だったのね」

 

 

ゼロノスはポツリとそう呟き、拳を握り締める。

あの時、決めていたはずだ。いろいろ迷ってしまったが、やっと思い出せた。

ハナは夜の学校、その屋上でアキラの手を掴んだ事を思い出す。この手は離さない、そう心に決めていたじゃないか。

 

そしてその手で円陣を組んだ時、同じ手で寝子の手に重ね合わせた事も思い出す。

迷っていたのは自分だけで、ハナとしてだけで考えていたから。今の自分は正確には自分自身とは少し違うのに――

それは司が言っていた。仮面ライダーと言う存在。自分は今ただの人間として戦っているんじゃない。仮面ライダーとして戦っているのだと!

その事を彼女は完全に思い出し、そして理解した。

 

 

「ありがとうデネブ。大切な事を思い出せたわ、今のわたしが選ぶのは――」

 

『死ねッ! 人間ッッ!!』

 

 

驚く程、冷静なモノだった。

突き出される刀を何気なくかわすと、素早く変化させたゼロガッシャー・ボウガンモードを黒手へと突き出した。

 

 

「わたしの答えは―――」

 

「!」

 

 

赤か黒か?

いや、違う。それはハナ自身だったらの話だ。今は――

 

 

「両方よッッ!!」

 

『グガッッ!!』

 

 

引き金を引くゼロノス、そして大きく吹き飛ぶ黒手、唖然としているデネブとディス、そして微笑む良太郎。

ゼロノスが最後に思い出したのは司の言葉だった。彼らの世界では電王やゼロノスは仮面ライダーと言われる……子供達の憧れる存在らしい。

それは、平和と愛の為に戦う存在。そう平和(セカイ)(アキラ)の為にッッ!!

 

 

「ハナちゃ――」

 

「ねえデネブ、知ってる? 椿が言ってたんだけど……」

 

 

ルーレットには、赤の黒以外にもう一色。他の色が存在する。

もし、そこへ球が入ったなら結果は親の総取りである。親は全てを得る事ができるのだ。

 

 

「親はわたし、絶対に何も失わない。二つともわたしが守って見せる。その力が今、わたしにはあるから!」

 

 

ハナと言う一人の人間ではない!

今の自分は仮面ライダーなのだから!!

 

 

「わたしは仮面ライダー!」

 

「!」

 

 

赤と黒、そしてもう一つ。それは"緑"

今の自分と同じ色、そしてその緑が示す番号はゼロ。今の自分と同じ名前!

全てを守る、全てを得る者。それが今の姿。

 

ルージュとノワールしかなかった自分の運命、そしてせまられた選択。

だが侑斗にもらったこの力。良太郎に見せてもらったその力。司達に教えてもらったあの力!

 

それは、仮面ライダー!

そして、自分自身のルーレットにもう一つの色が、ゼロノスの緑が追加された。それは全てを守る力!

 

 

「私はルーレットのゼロ! 仮面ライダーゼロノス! もう一度言っておくわ、わたしはかなり強いわよッ!!」

 

『く――ッッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

退避した先の部屋で休んでいた司は、突然その情報が頭の中に入ってきた。

それを確かめる為にライドブッカーを出現させてみると、中から現れたのは空白になっていた電王のカード。

すると、それが光り輝き元の姿を取り戻したではないか!

 

 

「電王のカードが開放された!?」

 

 

驚く司。そしてすぐに理解する。今までの経緯からしてみて、良太郎が何かを思い精神的に成長したのだろう。

司は解放されたカードを見て、満足気に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くそッ! ふざけるなッ!!』

 

 

黒手は刀を構え直すと、そのままゼロノスへと切りかかる。

ゼロノスも最初は何とか受け止めていたが、黒手の激しい攻撃に隙を作ってしまう!

 

 

「そこだッ!!」

 

『くっ!』

 

 

黒手の一閃がゼロノスを捕らえる。だが、その時だった!!

 

 

「ぐぉぉおおおおおおッッ!!」

 

「ッ!!」

 

 

ゼロノスの体を切りつけた黒手、だが刀がゼロノスの体に触れたときに緑の電撃が刀を伝い黒手を攻撃する。

ダメージを受ける両者だったが、立ち直るのはゼロノスの方が早い。電撃によって麻痺している黒手へ、ゼロノスの大きな一撃が加えられる!

 

 

『がああああああッッ!!』

 

 

この時もまた、先ほどとは違う光景がみえた。

ゼロノスが振り下ろした大剣に、また緑色の電撃が付与されていたのだ。

その緑の雷はゼロガッシャーの威力を大きく上げるだけでなく、麻痺をさせる事によって硬直力も上げる!

 

 

「たぁああああッッ!!」

 

『ぐッッ!!』

 

 

蹴りを決める、そしてまたも雷が付与されていた。

今のゼロノスは攻撃の全てに雷の力が付与されているのだ。それは、まさに覚醒された『緑の力』

ゼロノスは電撃を発生させ、操る事ができる。全身に纏えば物理的攻撃を行なってきた者に対してカウンターになり、また自らも電撃を発生させられると言う点を活かせば――

 

 

「くらいなさい!」

 

 

ゼロノスは拳を握り締めて、全ての感情を込め地面を叩く。

すると、拳から放たれた電撃が地面を猛スピードで伝い、黒手へと着弾した。

 

 

『ぐぅぅうッ!! 何だコイツ! いきなりこんなッ!!』

 

「うおぉぉぉおおおおッッ!!」

 

 

振り下ろされる大剣、激しい連撃を繰り出しながらゼロノスはアキラを思っていた。

メールの中にあった彼女の未練。ゼロノスは歯を食いしばる、黒手の攻撃をその体で受け止めながらも、自らは手に力を込める。

 

 

『グぅぅううッッ!!』

 

 

黒手もまた電撃に耐えられると踏んだか、その手でハナの首を思い切りしめあげる。

怪力である為に、ゼロノスの意識が段々とぼやけ霞んでいく。

 

だが踏み込むゼロノス。そして強く力を込める!

薄れいく意識の中で彼女の声を思い出す。少し低いがとても美しいアキラの声、彼女は言った。

いや正確には文字を打っただけだが、確かに彼女はその思いを示した。

後悔しないでと。そして我夢には愛を示したのだろうッ!

 

 

『コ、コイツッッ!!』

 

 

ゼロノスから発生される雷が強くなり、たまらず黒手は手を離す。

ダメージが大きいのか、よろよろと煙を上げて後退していく黒手。そこへ打ち込まれていく拳の嵐ッ!

 

 

『ガガガガガガ!!』

 

 

なんて怪力! 黒手は焦りと衝撃で思考をグチャグチャにされる。

対してゼロノスの耳に、ふとアキラの声が聞こえた様な気がした。

彼女は今、何を思っているのだろう? 我夢への思いや、皆の事を考えているのだろうか?

 

それとも世界の事を思っているのだろうか?

どちらにせよ、それは彼女が存在しているから思える事。

彼女が、彼女の存在が邪神によって奪われれば全ては無に代わる。彼女の思いを悪用する奴らの思い通りになってしまうッ!

 

 

(そんなのッ! 認められないわよッッ!!)

 

 

ゼロガッシャーで無茶苦茶に切りつけていくゼロノス。

だが黒手には絶大なダメージが蓄積されていく。撃ち込む度に美しい緑の輝きが飛び回る。

 

 

「ぐあぁっ! このッッ!!」

 

 

黒手は僅かな隙を突いてゼロノスの脚を思い切り叩く。

ふらついた彼女に、今度は黒手の連撃が命中していった。

 

 

「グッ!!」

 

 

だが、しばらく殴られたもののゼロノスの電撃効果もあってか、黒手の拳を受け止める事ができた。

 

 

「悪いわね……ッ! 諦めは悪いわよ!!」

 

『ぐぅぅうぅうぅッ!』

 

「イライラするのよ。わたしに立ち向ってくるヤツは皆、後悔させてやるッ!!」

 

 

ゼロノスは蹴りで一旦黒手と距離をあけると、ゼロガッシャーをボウガンモードに変えて発射する。

弾丸が命中し、火花が散っていった。確実に与えていくダメージを感じ、ゼロノスの心に若干の余裕がでる。

だがダメージと覚醒した事で精神力が想像以上に削られていたらしい。ゼロノスは意図していないのに大きくよろけ、そのまま倒れてしまう。

 

 

(そんなッ! やばい!)

 

 

はやく立ち上がらないと!

ゼロノスが脚に力を入れ――

 

 

「え?」

 

 

体が以上に軽くなるのを感じて後ろを振り返ると、そこにはデネブがいた。

彼はゼロノスを優しく支え、起こすと。彼女にむかって頭を下げた。

 

 

「お願いだハナちゃん。俺も一緒に戦わせてくれ」

 

「デネブ……」

 

 

ハナとしては、デネブの力を借りずに戦いたかった。

だけどデネブも思うところがあるのだろう。ハナは少しだけ沈黙してしまったが、しっかりと頷いてカードを裏返した。

 

 

「そう……よね。わたしとデネブはこれからパートナーなんだもんね!」

 

 

昔はイマジン全てを嫌っていたとは思えない台詞である。

それは良太郎達と育んだ時間が生んだ言葉だろう。まあ尤も、デネブの人間性ならぬイマジン性もあるだろうが。

 

 

「侑斗じゃくてごめんね」

 

「そんな事は無いさ、俺は俺の意思で君についたんだから」

 

「じゃあアキラちゃんを助ける為に、一緒に戦ってくれる?」

 

「ああ! よろしくハナちゃん!」

 

 

強き願いと力が重なり合う。

デネブはもう一度ハナに向かって微笑むと、ゼロノスの後ろへと回り手を交差した。

そしてベルトが告げる、新たなる変身!

 

 

『VEGA・FORM』

 

 

デネブが装甲となり、ゼロノスへ装備されていく。

最後にドリルが仮面へと装着され、それが展開して新たなるゼロノスを具現させる!

 

 

「ムンッ!」

 

 

衝撃波の発生、地面にヒビが入りゼロノス・ベガフォームが完成した。

ゼロノスは黒手に向かって大声で言い放つ。

 

 

「最初に言っておく、胸の顔は飾りだぁ!」

 

『知るかあぁああッッ!!』

 

 

向かってくる黒手を簡単に受け流すと、ゼロノスはマントを翻す。

するとゼロノスの姿が消えたではないか。ベガフォームの特殊能力の一つであるステルス化、デネブの実力もあってか気配ごとゼロノスは消失してしまう。

 

 

『クッ、どこにいった!』

 

「後ろだ!」

 

 

黒手は素早く振り返りながら刀を振った。

それを受け止め、弾くゼロノス。電撃はもうない。黒手はチャンスとばかりに手を伸ばすが――先にゼロノスの肩部から光弾が発射されて黒手を弾き飛ばした。

ゼロノスノヴァ、ダメージを受けた黒手は遂に危険と知ったのか肉体構築を放棄して本体である手のみに変化する。

 

 

『デ、デネブ。出現場所言ったら意味無いんじゃ……?』

 

「だまし討ちはいけない! 正々堂々戦わないとな!」

 

『あぁ、そう……』(じゃあ何でそんな機能つけたのかしら……)

 

 

ゼロノスはボウガンモードに変えたゼロガッシャーを撃ち放つ! その弾丸は、ハナだった時とは違い、的確に黒手を捉えた。

体を放棄した事でスピードが上がったにも関わらず、的が小さくなったにも関わらず、それでもゼロノスが放つ弾丸は黒手に命中していく。

 

 

『おのれッッ! ぐぉぉぉッッ!!』

 

「誰しもが未来を望み、明日と言う希望を信じている。その希望を守るために俺たちゼロノスは戦うんだ!」

 

『ぐッ!』

 

 

ゼロノスはベルトからエネルギーが装填されたカードを抜き取り、そしてゼロガッシャーへと装填する。

鳴り響く『FULL CHARGE』の音声、それは決着を告げる合図。

 

 

『これは……最後の忠告だ。邪神には勝てない、これは真実――ッ!』

 

『真実が正しいとは限らないわよ』

 

『なにッ!!』

 

『その真実を壊すことも時には大切なんでしょ!』

 

 

黒手は沈黙する。

もし、自分が邪神討伐のメンバーに加われば――……どうなる?

 

 

「悲しい歴史はいらない。邪神は俺たちが必ず倒す」

 

『協力したくなったら、いつでも待ってるから』

 

『クッ!!』

 

 

ゼロガッシャーからVを模した弾丸が放たれる! 

黒手は避けない、避けられなかった。弾丸は黒手に命中し、そのまま彼の意識はブラックアウト。

 

 

「……フン。ま、こんな所ね」

 

「ああ、上出来だよハナちゃん」

 

 

ゼロノスは黒手が気絶した事を確認すると変身を解除する。

良太郎もそれを見ると、彼女の元へと駆け寄っていくのだった。

 

 

 




オーズについて。

スキャニングチャージは三種類。
バックルを通して行う通常タイプに加え、武器にメダルをセットして発動するトリプル。
全ての力を込めて発動するギガスキャン。


はい、じゃあ次はたぶん水曜か木曜あたりかな。
ではでは
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