仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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第44話 脱出と銀と青いヤツ

 

 

 

一方、時間は少し遡る。

資料室の外では、朱雀とリラが双護に言われて待機していた。

いずれここに妖怪たちがくるかもしれないから、そうしたら足止めを頼みたいと言う事だ。

二人は了解して、少しだけ離れた場所で資料室の様子を見ていた。

 

 

「よ、妖怪……くるかな?」

 

「そりゃまあ来るだろうな」

 

「うぅぅ、怖いよぉ」

 

「はぁ……つかよぉ、リラ。悪いんだけど何か食えるもん持ってねぇかな? オレ腹減っちまって」

 

 

その言葉に苦笑すると、リラはポーチからお菓子を取り出して朱雀に渡す。

タイガが、きっとそう言われるから持っておけと渡されたものだ。

朱雀は軽くお礼を言うとむしゃむしゃとお菓子をむさぼり始める。

 

よくこんな緊張した状況の中で食べ物が喉を通るものだ。

いや、緊張しているのは自分だけなのか? リラは少し情けなくなって頭を下げる。

 

 

「……朱雀ちゃん」

 

「あん?」

 

「死んじゃうって、どう言う事なのかな?」

 

 

リラは、アキラの事を考えての発言だった。正直会った事は無いが仲間の椿達には助けられた身だ。

だからリラは切にアキラを助けたいと思う。しかしそれよりも気になる事があったのも事実だ。

 

それは死。

アキラがこのまま邪神の生贄となれば、彼女に待っているのは死だ。

リラはそれがもの凄く怖い反面、全く分からない未知のものであった。

一方の朱雀はその質問をどこか遠い目で聞いていた。彼女も興味が無い訳ではないらしい。

 

 

「まあ、いろいろ旅してきたせいでオレ達が死について麻痺してんのは事実だしな。オレとリラがいきなり会えなくなるって感じだろ」

 

「それは嫌だなぁ」

 

「ああ、オレも御免だね。しかも我夢はアキラが好き……ってやつなんだろ? そりゃ耐えられねぇわな」

 

「好きな人か――」

 

 

いろいろあってリラにはそう言う感情をまだ完璧に理解できない。

自分も誰かを心から愛せば、きっと我夢の様になれるのだろうか?

 

 

「朱雀ちゃんは……その――す、好きな人とかいるの?」

 

「まあオレも"一応"性別は女だからな、"アイツ"の事を考えると……眠れないってのはある」

 

「へえ……! じゃあ、我夢くんの気持ちを理解できるんだね!」

 

 

頷く朱雀。

できる事ならば今すぐにでも"アイツ"に会いたいと、"アイツ"と一緒にいたいと彼女は言った。

申し訳ないがリラにはそれが意外な事だった、いつも食べ物の事ばかり言っている彼女がこんな悩みを抱えていたなん――

 

 

「早く会いてぇよ……! "アイツ"に……ホカホカの肉まんに――ッッ!」

 

「………」

 

 

いや、なんでもない。やっぱり彼女は彼女だった。

リラはため息をついてそうじゃないでしょと彼女を諭す。

 

 

「分かってるって、オレにとって肉まんよか価値のある物と離れ離れになるって事だろ。辛いね、耐えられないわオレ!」

 

 

だから助けないといけない、そう言って朱雀とリラは頷き合う。

彼らから受けた恩は微々たるものだが、何よりも自分たちの為に、彼らの為に戦うのもいいだろう。

それに何と言っても――

 

 

「「欲望の為に――」」

 

 

二人の声が無意識に重なり合った。

その時――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ならば」「『我々が死を」』『教えてさしあげましょうか?』

 

「「!!」」

 

 

振り返った二人に振り下ろされる手刀。すぐに朱雀が反応し、リラを担いで後ろへ跳ぶ。

砕ける地面、飛び散る破片。そこにいたのは鬼の形相をした……ではなく文字通り鬼だった。

和装に身を包んだ鬼、驚くべきはその鬼の背後に美しい女性が存在している。彼らには前と後ろの概念が存在しない。

妖怪、両面宿儺(りょうめんすくな)。パワー特化の鬼と特殊能力特化の女性で構成される上級妖怪だ。鬼の面は回避に成功した朱雀を見てニヤリと笑う。

 

 

「ひ……ひぃッ!!」

 

 

もし回避していなかったら今頃自分たちは……! リラはそれを想像してしまい腰を抜かす。

ぶるぶると恐怖に震える彼は、完全に戦える状態じゃない。朱雀は状況を確認すると、メダルとベルトを取り出して吼える。

若干空腹がチラついてうまく集中できないが、言ってる場合じゃない。

 

 

「ちッ! 現れなすったって事かよ。リラ、隠れてろ!!」

 

「で、でも……ッ!!」

 

「オレは大丈夫だ!」

 

 

再び鬼が襲い掛かり、朱雀は地面を転がって回避を行う。

しかし後ろには女の面が存在しているのだ。女はその口から衝撃波を発生させると、朱雀を狙う!

普通ならばそこで朱雀はダメージを受けるだろう、リラもそれを思い声を上げる。

しかし朱雀は素早くメダルをスキャンしており、変身の際に発生するバリアオーラで衝撃波を無効化した。

 

 

『タカ!』『クジャク!』『コンドル!』 

 

「うらァッッ!!」【タ~~ジャ~~ド~~ルーーッ!】

 

 

炎と共に現れるタジャドル。

素早くタジャスピナーから炎を発射して両面宿儺を攻撃する。

しかし女の面が発生させる結界が炎をことごとく弾き飛ばした。

もちろん攻撃をしつづければ破壊できるレベルの結界だ。

しかし問題なのは鬼の面、定期的にチェンジしながら距離をつめてくる両面宿儺に、また舌打ちを一つ。

それに何と言っても今の朱雀は――

 

 

「あああああウゼェ!! つか腹減ってるんだよコッチはッッ!!」

 

 

タジャドルは翼を広げて飛翔する。

天井がある為、そこまで高くは飛べないがその隙にメダルをタジャスピナーへとセットする。

これで大技を放てば、邪魔な結界ごと吹き飛ばせ――

 

 

「ハッ! 見えるぞ女。お前には花嫁に対する想いが足りぬ。それでよく世界を危険に晒す気になったな」

 

「あ゛ぁ?」

 

 

鬼は朱雀に。

 

 

『見えるぞ男、女子(おなご)に戦闘を任せ、自らは震えるだけの何と情けない姿か』

 

「ッッ!!」

 

 

女はリラにそれぞれ言葉を投げつける。

確かに朱雀にはアキラへの想いは他のメンバーよりはずっと少ない。

せいぜい我夢との話を聴いて衝動的に同情し、助けたいと思っただけだ。

だがそれでも助けたいと思ったのだ。それなのに両面宿儺の言葉はまるで覚悟が足りないから黙ってろと言わんばかりのもの。

 

そしてリラは心に突き刺される一言を言われて表情を変える。

相変わらず足は振るえ腰に力は入らない。心臓の鼓動は恐怖で波うっており、正直逃げ出したい気持ちも少しばかりあったのは事実だ。

何より女である朱雀を戦闘に出し自分は隠れているだけの始末、情けないと言う事は自分もヒシヒシと感じていた事。

 

 

「おいテメェ! リラを馬鹿にすんじゃねぇ!! 戦うだけが強さじゃねーだろうが!」

 

 

朱雀もリラも、両面宿儺の言葉に動きを止める。

どこか心に引っかかるところがあったのだろう。

そして、それこそが彼の狙い。

 

 

「ほら」「『隙が」』『できた』

 

「!!」

 

 

女の目が光り、同時に鬼がタジャドルに向かって拳を突き出す。

すると衝撃波が拳の形となって発射された。呆気に取られていたタジャドルにそれを回避する術は無く、気がついた時には景色が反転していた。

全身に受けた衝撃でタジャドルは自分が攻撃されたのだと言う事に気が付く。

 

 

「いって! くそが!」

 

「『オホホホホホホホ!! ここまで愚かだとは!!』」

 

「ッ!?」

 

 

両面宿儺は地面へと伏せたタジャドルに近づくと、思い切り蹴り飛ばした。さらにそこへ衝撃波。

ダメージがベルトに収束してしまったのか、タジャドルは変身が解除されてしまった。

転がる朱雀に浴びせられる両面宿儺の嘲笑。

 

 

「人はつまらん感情に支配され」『そしていずれ破滅する』

 

 

軽い挑発で隙をつくるなんて何て愚かなことか、両面宿儺はそんな滑稽な朱雀を見下す。

両面宿儺はプライドが高い妖怪である、そしてどこかで人間を見下していたのかもしれない。

少なくとも両面宿儺は妖怪やこの世界を守ろうとする意思はあれど、アキラに対する想いは欠片とて存在していなかった。

ましてそれを助けようとする侵入者など忌むべき存在。そして人と言う存在もだ。

 

 

「仲間の事……ッ! 言われちゃよぉ、反応するのは当たり前だろうが……ッ!」

 

 

ふらつきながらも立ち上がる朱雀。駄目だ、空腹が酷すぎて目が霞む。

実を言うと変身が解除されたのも空腹が原因だったのだ。

それに今は怒りの感情もあった。が、それをつまらなさそうな表情で両面宿儺は見ている。

 

 

「友情」『愛情』『「そんなまやかしに支配されるのは愚かな人間の最もたる特徴』」

 

「何……ッ?」

 

 

だからアキラを助けようとするその行動が苛立たしい。

両面宿儺は次にその場にへたり込んでいるリラに視線を向ける。

人は愛が全てだの友情の為ならなんでもできるだのと詠っているが――

 

 

『仲間?』「人間お得意の感情論か」『偉そうに語っているヤツほど』「そこのガキの様な情けない末路を辿るのだ」

 

「………!」

 

 

両面宿儺は拳をリラへと向ける。

青ざめるリラ、あれがくる!?

 

 

「テメェ……ッ!!」

 

 

朱雀はふらつく足を叱咤して駆け出す。

同時に放たれる衝撃波! 彼女はリラの飛びつくと、かろうじて衝撃波から彼を守ることに成功する。

しかし、自分はよけきれなかったのか肩部分にかすってしまった。襲い掛かる痛みに彼女は表情をゆがませる。

 

 

「ぐ……ッッ!!」

 

「す、朱雀ちゃん――……ッッ!」

 

「『ホホホホ!』」「人間は本当に哀れだな」『人間は本当に愚かだな』

 

 

リラを攻撃すれば朱雀にも攻撃が当たる。

これは愉快だと両面宿儺は笑った、それは花嫁にも該当する話だ。

花嫁を餌にすれば、多くの侵入者を攻撃する事ができる。

たった一人の人間のために、馬鹿な人間を減らせるのかと思うと両面宿儺は笑わずにはいられなかったのだ。

 

 

「さあ」『もう終わりだ!』

 

「………ッ」

 

 

朱雀は肩と腹を押さえて苦しそうに呼吸を荒げている。

どうやら再びタジャドルに変身される危険性は無い様だ。

ならば、決着を。両面宿儺は彼女に向けて衝撃波を――

 

 

「……おい」

 

「あ、やべ――ッ!」

 

「?」

 

 

その時、声が聞こえて両面宿儺はその方向を見る。

朱雀の方はやっちまったと言う表情。

次の瞬間――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の仲間に何してくれんだゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

 

「『!?』」

 

「あ、あーあ……! オレしーらね!!」

 

 

朱雀をかばう様に立ち、両面宿儺の前に立ちふさがったのはリラ!

だが何か様子がおかしい、明らかに先ほどとは別人の様だ。恐怖に震えていた情けない少年ではなく、今は闘気に満ちたオーラを開放中である。

真っ直ぐに両面宿儺を睨みつけるその様は、とても先ほどのリラと同一人物とは思えなかった。

 

 

「き、貴様ッ!」『何者!?』

 

「俺を貶すのならまだしも、俺の仲間を馬鹿にするのはイライラすんだよ!!」

 

 

完全にブチ切れたぜ。

そう言ったリラの腰にいつの間にか装備されていたベルト、彼はそのベルトへ豪快にメダルをぶち込んでいった。

ジャキン! ジャキン! ジャキンッ! 大きく荒々しい音が響き、彼はスキャナーを手にする。

そして、両面宿儺を見て確かに宣言した。

 

 

「ぶっ殺すッ!! 変身!!」『サイ!』『ゴリラ!』『ゾウ!』

 

【サゴォゾ……サゴーゾッッ!!】

 

 

銀色の光がリラを包み、その姿を出現させる。

そう、彼は激怒したのだ。そしてその力が彼を戦士に変える!

 

 

Sun() Goes(ゴー) Up()! 俺様を"憤怒"させた罪、テメェの全てで償ってもらおうか!」

 

 

オーズ・サゴーゾコンボ。完成!

 

 

「は……はは」『み、見た目が変わっただけで何を』「『偉そうに!』」

 

 

所詮震えていただけの人間がいくら意気込もうと何も変わりはしない。

それが人間と言うものだ、両面宿儺は多少の怯みこそ見せたが迷わずに衝撃波をサゴーゾに発射した。

鬼の強力から繰り出される一撃はまともに受ければただではすまない。それは誰が見てもそう思うだろう。

もちろんサゴーゾとてそれは同じだ。迫る衝撃波を見て彼は――笑った。

 

 

『「!」』

 

「おいおい」

 

 

サゴーゾは拳を構える。そして――

 

 

「なめてんじゃねぇえええええええええええッッ!!」

 

 

両面宿儺懇親の一撃がサゴーゾのパンチによって打ち消される。

それだけじゃない、サゴーゾの腕に装備されているガントレット・ゴリバゴーンが突き出された拳から発射されたのだ。

 

 

「な!」『ヒッ!』

 

 

つまりロケットパンチ。

予想外の飛び道具に両面宿儺はどうする事もできず、真正面からそれを受けてしまう。

当然命中すれば倒れるわけだが――

 

 

「『!?」』

 

 

おかしい事が起こった、両面宿儺は倒れる事を既に割り切って受身の準備を始めていた。

そこで問題が起こる。いつまで経っても地面に付く感覚がない、どうなっているんだ!? 両面宿儺は冷静に自分の状況を確認して見る。

そして、気がついた。

 

 

「これは!!」『一体……ッ!』

 

 

両面宿儺の身体が浮いているのだ。

地面に付くのではなく攻撃を受けた体制のまま空中に浮遊している。

どうなっているのか、両面宿儺は身体を動かそうとするがうまくいかない。足が地面に付かない状態だと身動きする事も難しかった。

そんな彼らの耳に届くはサゴーゾの笑い声。

 

 

「ハハハハハハッッ! んなもんかよクソがッ!!」

 

 

サゴーゾが大きく地面を踏みつける。一見なんの意味もない行動に見えるがそれは間違いだ。

彼の動きにシンクロする様にして両面宿儺は地面へと叩きつけられる。絶大な衝撃、まるで何かに踏み潰されたかの様だった。

しかしおかしいのだ、サゴーゾはただ踏みつける動作をとっただけ。実際に踏みつけてはいない。だが現に両面宿儺の回りには大きな足跡が残っている。

よく分からないがこのままではまずい。両面宿儺はすばやく後ろへ跳ぼうと力を込めるが――

 

 

「なにッ!」『馬鹿な!』

 

 

跳べなかった。

どんなに力を込めようが、どんなに大地を蹴ろうとしてもまったく身体は宙に浮くことはなかった。

何故か? 考える両面宿儺。

 

 

「おいおいおいおい!! えらそうにしてたのにそれかァッ!? あんまりイライラさせんじゃねぇぞッ!!」

 

 

サゴーゾは自分の拳を叩き合わせる。

すると両面宿儺は地面に膝を着く、どうして? 今のサゴーゾの行為はとても攻撃には見えない。ならば何故!?

 

 

「ぐぅぉおおおおおおおッッ!!」『ぬぅぅうううううう!!』

 

 

苦痛の声をあげる両面宿儺。何故か身体が異常に重くなって立つことすらできなくなったのだ。

一体何が起こっている!? 彼はついに前を向く事も苦痛になり顔を下に向ける。そこで気がついた、自らを中心として魔方陣が形成されているのを!

瞬間悟る。このおかしな技はこの魔方陣が関係しているに違いない、すぐにでも抜け出さなければ――ッ!

 

 

「おいおい、やっと気がついたか? おせぇ、遅すぎるぜ」

 

 

そう、サゴーゾの特殊能力。それは――

 

 

「貴様……ッ!!」『重力を操るのか!!』

 

 

一見はパワータイプのサゴーゾ。だが彼には戦闘を操るスキルが存在する、それが『重力操作』なのだ。

サゴーゾの中心部分にあるオーラングサークル。それと同デザインの魔方陣を彼は生成する事ができる。

その中はまさにサゴーゾの空間といってもいい。全ての重力を操り、意のままに相手を動かせるのだ。

 

 

「重力逆転」

 

「『!』」

 

 

両面宿儺はその言葉と共に天井へと叩きつけられる。

いや、叩きつけられたと言う表現は違う。彼は『落とされた』のだ。

重力を操作した結果、両面宿儺の地面はサゴーゾにとっての天井に変わる。

ゴツゴツとした天井の岩肌が両面宿儺を傷つける。それだけじゃない、サゴーゾは重力を付与して見えないプレスを仕掛けている。

 

苦痛に声をあげる両面宿儺。なんて恐ろしい能力なのか、重力を滅茶苦茶にされては反撃などできる訳もない。

おまけに自由に動けるサゴーゾは先ほどからしきりにロケットパンチ・"バゴーンプレッシャー"を仕掛けている。

 

 

「さてと」

 

「あぐ……ぁ」『あ、アレは!!』

 

 

ダメージを受けすぎたか、再びサゴーゾの目の前に落とされる……ではなく強制的に移動させられる両面宿儺。

そこに待っていたのは、サゴーゾのダブルパンチ。

 

 

「『ぐおおおおおおおおおおッッ!!』」

 

 

重力を付与され、大きく吹き飛ぶ両面宿儺。その隙にサゴーゾはスキャナーに手をかける。

 

 

「おい、覚えとけ」

 

「『―――ッ!?』」

 

 

サゴーゾはそのスキャナーをベルトへと掲げ、スライドさせた。

 

 

「人ってのはお前らから見れば馬鹿な生き物なのかも知れねぇ」『スキャニングチャージ!』

 

 

だけどよ。

サゴーゾはその言葉と共に思い切り地面を蹴って飛び上がる。

 

 

「だけど、俺達から見ればお前らもたいがいだぜ?」

 

 

足をそろえて着地するサゴーゾ。

絶大な重力が付与されたおかげで衝撃波が発生、まわりの地面を全て滅茶苦茶に破壊する!

その衝撃とダメージで、身動きが封じられる両面宿儺。まだ終わらない、サゴーゾの身体から放たれる白いリングが瞬時に周りの景色を元に戻していく。

そしてリングは両面宿儺を囲み収束。全てが元の景色に戻る中、両面宿儺の身体のみが重力の力を受けて地面に沈んでいく。

 

 

『「ぐぉぉおおおおおお――……ッッ」』

 

 

足が完全に地面にめり込み、身動きが完全に封じられた。

かと思えばサゴーゾによって両面宿儺はそのままサゴーゾの元へと引き寄せられていく。

サゴーゾはそれと同時に大きく振りかぶって両面宿儺の到着を待った。両手と角の三つが光り輝き、その威力の強さをうかがわせる。

 

 

「や、やめろぉぉおおッッ!!」『ひ、ひぃいぃいいぃぃッッ!!』

 

 

必死に逃げようとするが全く抜け出せない! そうこうしているうちに迫るサゴーゾ。

 

 

「死ねよゴミ共がぁああああああッッ!!」

 

「『――――ッッ!!』」

 

 

もう悲鳴にすらならない声をあげて両面宿儺は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

静寂が辺りを包んでいた。

サゴーゾの必殺技、サゴーゾ・インパクトの威力は手加減をしていようが両面宿儺を確実に戦闘不能に追い込んだだろう。

いや、それだけでは済まないと言ってもいい。文字通り粉砕が与えられる――筈だった。

 

 

「『―――』」

 

 

倒れる両面宿儺。

彼らは完全に気絶していた、しかし外傷はどこにも見られない。あまりのショックで意識を失っているだけなのだ。

それと入れ替わるようにして変身を解除するリラ。

 

彼は必殺技を寸止めしたのだ。

確実なハッタリ、そして恐怖を与えて勝利した。

本当の事を言えば当ててもよかったのだが、生憎手加減は苦手だ。

今回、自分達はあくまでも世界とアキラ。二つの救済を成し遂げなければならない、ならばできるだけ血は流したくないと言うものだろう。

本音を言うと殺したくて堪らなかったが、自分の中にある良心が叫びをあげて自分を止めたのだ。

 

 

「大丈夫か朱雀?」

 

「ああ、助かったぜリラ」

 

 

リラは肩を押さえている朱雀に肩を貸すと、そのまま近くの岩場まで歩いていく。

しかし――と、朱雀は彼に介抱されながら思っていた。彼は一度キレると驚くほど人が変わる。

いつのまにか一人称も『ぼく』から『俺』になってるし、あきらかに口調そのものが変わっている。

さすが、"憤怒"と言うべきか。怒りは時として人そのものすら変えてしまうのかもしれない。

 

 

「グッ!!」

 

「!!」

 

 

一見は無傷に見えるリラ、しかし彼は急に胸を押さえてうずくまった。その様子に朱雀の様子も急変する。

まだダメージが残る身体を強引に起こすと朱雀はリラに駆け寄っていく。苦痛に顔を歪めながらも朱雀は必死に彼の名前を呼んだ。

 

 

「おいリラ! 大丈夫かよ!!」

 

「くぉ……! "強欲"が――ッ!!」

 

 

目を開けるリラ、しかし人目で分かる変化が一つ。

彼の瞳の色が変わっていたのだ。鮮やかな翠から、濁りきった紫へと。

 

 

「呑まれんなリラ!! オレを見ろ! オレを見てくれッ!!」

 

「ッッ!!」

 

 

ノイズが酷い。脳内がテレビの砂嵐に変わっている様だ。

リラは今すぐ開放されてくて全身を掻き毟りたくなる衝動に駆られた。視覚も、聴覚も、五感も全てがおかしくなりそうだ。

しかしその中で確かに聞こえる彼女の声。リラはぐちゃぐちゃの世界で闇雲に手を伸ばす。

そして、しっかりと掴まれた感覚があった。そのまま引き戻されて――

 

 

「ぅッ!!」

 

「!」

 

 

リラの瞳の色が戻り、呼吸も落ち着いたものへと戻る。

それを見て朱雀は脱力した様にその場に座り込んだ。

 

 

「……わりぃ、リラ。オレのミスで――」

 

「いいんだよ……ぼくらは――ッ」

 

 

どうやら元に戻ったリラ。弱弱しくもその手を朱雀の肩に置いて、彼は微笑んだ。

 

 

「仲間じゃないか……」

 

「リラ……。ああ、悪かったな」

 

 

 

「大丈夫か? なにか騒がしい様だったが」

 

 

その時、少し離れた所から双護がやってくる。

どうやら双護の方も決着をつけたようだ。その手には場内のマップが握られているじゃないか!

 

 

「へぇ! やったじゃねぇか!」

 

「ああ、これで……アキラに一歩近づけた」

 

 

そう言った双護の目、それが朱雀には少し引っかかるものがあった。

覚悟を超えた覚悟。それが感じ取れたのだ、朱雀はつい双護にその質問を投げかける。

双護からは誰よりも強い何かを感じたから。いや、もちろんアキラへの思いと言う点ならば我夢には劣るだろう。だが何かが我夢よりも勝っている様に見えた。

 

 

「なあ、アンタ……」

 

「なんだ?」

 

「花嫁の何なんだ?」

 

 

別に特別じゃ事じゃない、ただの大切な友達さ。

双護はそう言ってリラに手を貸す、そうなのか? 朱雀は勘違いだったのかと首を振る。

朱雀はダメージから少し回復したので、自分で立つことが出来たがリラはどうやらまだ身体が動かないようだ。

だから三人はしばらくゆっくりと歩いていたが――……

 

 

「――いけないと知りつつも」

 

「?」

 

 

ふと、双護は口を開く。朱雀からは背中しか見えなかったがが――

 

 

「アキラの話を……盗み聞いてしまった」

 

「え?」

 

 

あの時、アキラと我夢がそれぞれ出会いの話をしていた時にいたのは良太郎と亘達だけじゃない。

双護達もそこにいたのだ。だけど出るタイミングが分からずに、結局アキラの話を盗み聞く形になってしまった。

それは申し訳ないと思い、今まで言い出せずにいた。

 

 

「アキラは……両親とまた一緒に暮らせるように願っている」

 

 

それは希望、彼女の夢。

家族と一緒に暮らしたいと言う当たり前に思える願いなのだ。それを叶える為、それを再び具現させるために彼女は生きていた。

その希望――……双護には心に突き刺さった。

 

 

「俺はもう、両親と暮らす事は叶わない」

 

「え?」

 

 

たとえどんなに願っても、たとえどんなに希望を託してもその願いは形にはならないだろう。

なぜなら、もう自分には何よりも大切な家族がいるから。それでも家族、彼女の気持ちが……双護には理解できる。

重ねていたと言えばそうなのかもしれない。ある種同情していたと言えばそうなのだろうか。

それでも、しかしそれでも双護はアキラの願いを叶えたかった。アキラの夢を形にしたかった。

彼女が再び両親と暮らせるまで、彼女は死ぬべきではないと思った。

 

願ったのだ。

 

 

「俺は、アキラを必ず助け出す」

 

 

たとえ世界を――

 

 

「天王路双護……お前ッ、もしアキラか世界どちらか一つだけしか救えないとしたら――」

 

 

朱雀の言葉に、双護は声色一つ変えることなく呟いた。

 

 

「アキラだ、彼女を助ける。たとえこの世界を滅ぼしたとしても」

 

「………」

 

 

これが、我夢とは違う覚悟なの――

 

 

「なんてな」

 

「!」

 

 

双護はフッと小さく笑うと自分の名前を指でなぞる。

リラも朱雀も漢字は理解できる、双と護。

 

 

「俺の名は双護、一つだけじゃなくて双方しっかり守ってやるさ」

 

(コイツ……)

 

 

助けたいと願う事も、また一つの欲望だろう。

なかなかいい欲望じゃねぇか天王路双護。朱雀は未知の畏怖と、そこしれぬ期待を感じながら笑みを浮かべた。

 

 

「ところで――」

 

「は?」

 

 

双護はおもむろに自分のシャツ、その胸部分に手を入れてモゾモゾと手を動かす。

なんだ? 変態だったのか? 思わず身構える朱雀とリラ。そんな中双護が取り出したのは――

 

 

「妹がお腹がすくといけないからと言って肉まんを持たせてくれた。お前らもどうだ?」

 

「うわすげぇえええええええええええええ! 肉まんが三つ出てきやがった!!」

 

「ど、どこから出してるんですか!! ってか今までずっと胸部分に閉ってたんですか!?」

 

「だって……ポケットには大きすぎて入らないじゃないか――……ッ!」

 

「な、なんでそんなに深刻な表情で言うんですか!!」

 

 

そう言いながらも既にムシャムシャと双護は肉まんを口に含んでいた。

しかも一口で、おかげで口が肉まんの形になっている。おもわず力なくふらつくリラと、双護から受け取った肉まんを美味そうに食べる朱雀。

本当に不思議な人だな。リラは双護そ不思議なオーラに怯みつつ、自らも肉まんを口にするのだった。

 

 

(………おいしい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カブト達がマップを全員に配布している頃、妖怪城の外に三つの小さな影が見えた。

もちろん司達ではない、彼らはもう全員城内にいるからだ。では誰が? その三つの影は木の陰に隠れながら門の様子を伺う。

そこには気絶している門番と、既に解放されていた門が見える。

 

 

「チャンスじゃないのコレ!」

 

「た、確かに……」

 

「で、でも本当に行くの? 陽は危ないから僕たちには来るなって――」

 

 

その陽が危ないかもしれないんじゃない! それに花嫁を助けたいと思う気持ちは一緒なんだから!

そう言って声を上げたのは人魚の様な女の子、妖怪・あまびえ。そんな彼女の後を着いていく様にして同じく妖怪・かわうそ、傘化けが歩いていく。

陽の足を引っ張らない為に待機する事を決めていた三人。しかし、彼らの心はそれを認める事はできなかった。

 

皆が世界の為に戦う中で自分達は何もせずに指をくわえて見ているだけ。

そんな事が認められなかった、許せなかった。だから足手まといにならない程度に手伝いたい、それが三人の結論だったのだ。

 

 

「危なくなったらすぐ逃げるのよ、いいわね!!」

 

「う、うん……」

 

 

緊張の念に包まれながらも、三人は妖怪城へと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目目連が潰えた今、彼らの侵入を察知できる物はいなかった。それよりも他の侵入者たちで手一杯だったからだ。

河童兵達もディケイド殲滅の為に城門付近には存在せず、三人はなんなく城内へと入る事ができた。

そんな中、他の場所でも変化が起きる。

 

 

「………」

 

 

心が壊れる寸前にアキラはいた。もう鏡からは謎の自分は見えず、少しは安定した精神状態に立つ事はできた。

しかしそれまでに削られた心は大きく、アキラは空ろな目で座り込むだけ。そんな彼女を麓子は直視できなかった。

何をしているんだろう自分は、何をただ見ているんだろう自分は。麓子は何度も自分に向かって問いかける。

もし、自分に子供が生まれて今と同じ状況になったら――

 

きっと自分は、世界を敵に回してでも子供を守るだろう。

なのに自分は今アキラを見捨てようとしている。もし、このままアキラが犠牲になったとて自分の子供に胸を張って麓子は生きられるのだろうか?

お母さんは、女の子を見捨ててまで世界を守ったのよ。なんて子供に言えと? それに、自分は本当に邪神が世界を見逃すとでも思っているのか?

妄言だと、都合のいい嘘だと知っている筈なのに――ッッ!

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

こうやって彼女にさえ聞こえない声で謝って……少しでも自分の痛みを和らげようと逃げている。

そんな自分に問う、本当にこのままでいいのか?

 

 

「そんな訳ない……ッ」

 

 

分かっているのに、分からない。麓子が迷いに縛られる中、客室の扉がノックされた。

誰だろう? 麓子は不思議に思いながら扉の前に立った。

 

 

「花嫁の様子はどうだ?」

 

「……ッ、順調です」

 

 

どうやら警備妖怪の一人。麓子は複雑な思いに駆られながらも花嫁の様子を説明した。

そして報告が終わった後、麓子はその情報を得る。

 

 

「この城に侵入者が現れた」

 

「!!」

 

「数は多い。くれぐれも侵入者には気をつけろ、状況によっては戦う事も頭に入れておけよ」

 

 

そう言って兵は部屋を後にする。残された麓子なのだが――

 

 

「……ッッ!」

 

 

迷いがゆれる、自分の中で何かが弾けそうだった。

 

『侵入者』

 

自分はどれだけその言葉を待っていたんだろう?

アキラを助けたいと思う人間が、アキラを助けようとこの城に来た。この世界に戦いを挑んだ。

その賭けともいえる行動が失敗すれば自分は……いや、自分の夫も生まれて来るだろう子供も、他人の未来も全て消えてしまう。

それでも希望があれば、助けたいと願う心があれば、きっと世界はその行動を無駄にはしないだろう。

 

このまま迷いに縛られて全てを失うまで動けない自分。

何が正しいかこれからも分からずに過ごすのはもう辛いんだ。もう嫌なんだ。

だったらアキラを助けて世界を救うという嘘みたいな可能性に賭ける彼ら。その勝率を上げることができたなら――

 

 

「……ねぇ、アキラちゃん」

 

「……はい?」

 

 

麓子は彼女の目線に立って、優しく微笑んだ。

 

 

「ここから……逃げよっか」

 

「え?」

 

 

アキラの目が光を灯す。

それは期待なのか、それとも――

 

それでも麓子は話を続けた。

アキラが何を思っているのか、どう感じているのかはもう関係ない。

麓子は答えを見つけたのだ、答えを出したのだ。彼女のここで死ぬことは間違っている。

たとえ彼女が死ぬ事で確実に世界が助かるのだろうとも。それは違う、それは正しくないと麓子は信じた。

だから、戦う。アキラの為と自分の世界の為に

 

 

「逃げよう。逃げよう!」

 

 

麓子はアキラの返答を待たずして続ける。

クローゼットから適当な服を選んでアキラへと投げていく。

当然アキラはそれを戸惑いの目で見ていた。自分は死ななければならない、自分が役に立つ為には犠牲にならなければならないのだ。

なのに揺れる心。逃げたい? その質問が来たとき、自分にまっさきに『いいえ』と答えなければならないのに――

 

それでも言えなかった。

目の前に詰まれていく服を、ジッと見るだけで。

 

 

「アキラちゃん。貴女は、死んじゃ駄目」

 

 

貴女は、生きないといけない。

 

 

「人の犠牲で成り立つ未来を……」

 

 

否定しないと。

麓子は悩みに悩んだ末、アキラの服を決定する。

一応ここから抜け出すのだからまるまんまと言う訳にもいくまい。

と言う訳で変装しなければ、麓子はアキラにスウェット着せて帽子を渡した。一応髪をポニーテールにして……完成だ。

 

 

「うん、これで良し。どこからどう見ても男の子よ!」

 

「………」

 

 

喜んでいいのか、悪いのか。アキラは曖昧な笑みを浮かべてそれを受け取った。

そしてふと気づく。無意識に受け取ったものの、これを着ると言う事はここから抜け出すと言う事。

それは麓子を危険に晒す事だ。アキラは急いで断ろうと口を――

 

 

「侵入者がきたそうよ」

 

「え?」

 

 

侵入者――……

その言葉にアキラの心臓がドクンと大きな音を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ、見えるか?」

 

「いや……駄目っすねやっぱり」

 

 

ため息をついて変身を解除する亘。

ドッガハンマーのウェイクアップであるトゥルーアイをもってしてもアキラを見つける事はできなかった。

以前ファイズの試練の時にトゥルーアイを使って隠れているクラウンを見つけた経験があるので、もしかしたらと期待したが。

 

 

「しかし前回と今で明確に違う点が分からない。何故見つけられないんだ?」

 

「なんか見えないっていう感じですね、城全体にフィルター掛かってるていうか――なんつうか……」

 

 

その言葉を聞いて反応したのは砂かけ婆だ。

 

 

「恐らく七天夜の存在じゃ」

 

「どういう事ですか?」

 

「七天夜の中に強力な幻術を操る者がいる。恐らくソイツを倒せば見えるとは思うが……」

 

 

なるほど、亘は唸る。

敵もコチラに透視能力者がいるとは思っていない筈だ、だからその七天夜が戦場に出てくる可能性は高い。

というよりコチラが進撃していけば必然的に出てこざるを得ない。だからずっと隠れられるとは思えないが――

 

 

「………ッ」

 

 

七天夜か、亘は夜叉戦を思い出して舌打ちを行う。

正直完璧に負けたイメージしかない。あんな連中がまだいると思うだけで不安になると言うものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方のアキラ、彼女の心は今大きく揺らいでいた。

 

 

「あなたの、仲間が来てくれたのよ!!」

 

「ッッ!!」

 

 

仲間と言う事は、間違いない。

皆が着てくれた――?

 

 

「ちょっと待っててねぇ」

 

「あ……っ」

 

 

そう言って麓子は小さなまどから顔を出す。

顔くらいしか出せない程の大きさだが、彼女にとってはそれで十分なのだ。

客間は外から鍵がかかるタイプのものなので、麓子達は普通に考えて客間から抜け出す事はできない。

だがもちろん彼女もただの人間と言う訳ではない。

 

 

「よっと」

 

「え……ええええ!!」

 

 

ずっとふさぎ込んでいたアキラが、初めて声を張り上げる。

麓子の首が――

 

 

「長くなった――」

 

 

麓子、"ろくろ首"はその首を思い切り伸ばす。

普通の時の何倍、まるで蛇の様に麓子は窓から首を伸ばしていく。

その先には廊下の窓が見えた。この部屋の鍵を持っているのはおそらく警備妖怪である"化け猫"だ。

 

ここまでたどり着く事を想定していない為、扉の前には強力な妖怪は用意されていない。

それがせめてもの救いだろう、麓子は窓の外から化け猫の姿を確認する。彼は動かずにジッと目を閉じて座っているだけだ。

麓子は頷くと一度首を戻してアキラの元へと戻る。

 

 

「ねぇ、アキラちゃん。私の服から赤色のお守りとってくれない?」

 

「え? 赤ですか?」

 

「うん。赤色」

 

 

アキラは言われたとおり、麓子の服を探ってみる。

するとやはりあった、赤はもちろん青や緑、黄色の子袋が見える。

 

アキラはそこから赤色の袋を抜き取り、麓子へと手渡す。

麓子はアキラにお礼を言うとその袋を破り、中身が出ないようにしながら口にくわえる。

そしてまた首を窓から伸ばすと再び廊下へと向かった。麓子はしばらく様子を伺った後、赤色の袋をいったん壁の外に置く。

上には青い空、下にははるか遠くに地面。自分たちがすくなくとも"上層の階"にいる事は明白だ。

 

風で袋が飛ばされないように気をつけながら、麓子は思い切り息を吸う。

そして――

 

 

「侵入者が出たぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「!!」

 

 

少し声を低くして叫んだ言葉。

しかし麓子の正体を知らない化け猫には本当に侵入者が現れたと勘違いをしてしまう。

彼は立ち上がり構えた、そして声がした方向へと走り出す。麓子にはその瞬間、彼の首輪に鍵がかかっているのが見えた。

しめたと、麓子はそのままさらに首を伸ばして化け猫の到着地点に先回りしておく。

 

そのまま少し時間がたたない内に、化け猫が目標地点にやってきた。

麓子は緊張した面持ちながらも、窓に頭をぶつける。

 

 

「ッ! そこか!」

 

 

化け猫は音がした窓へと跳躍しそのまま窓をブチ破る。

窓ガラスが飛散し、化け猫は大きく身を乗り出して侵入者の姿を探った。

だがどこにも侵入者の姿は見えない。化け猫は空を飛ぶ能力を持ち合わせていなかった、それもあってか化け猫はしばらくウロウロと周りを見るだけ。

そこが、大きな隙――ッ!

 

 

「もし」

 

「ッ!」

 

 

声がして、その方向・上を化け猫は振り向く。

そこには麓子の顔。

 

 

「なッッ!!」

 

「ごめんなさいッ!!」

 

 

麓子はくわえていた袋を落として化け猫の顔にぶつける。

すると中に入っていた粉が舞い、化け猫はそれを吸い込んでしまう。それが、麓子の狙い!

 

 

「くらって、おばばの特性催涙砂!」

 

「―――ッッ!!」

 

 

突如咳き込み、その場に倒れる化け猫。

涙があふれ視界が防がれる、それが麓子の持っていたお守りの中身だった。

砂かけ婆の知り合いである彼女は、特殊な砂を様々な場面に備えて持っていたのだ。

その一つ護身用である催涙機能を持った砂。それを化け猫に使用したと言う事。

 

こうなればもう占めたものだ。

麓子は破壊された窓からさらに首を伸ばすと、もがいている化け猫の首から鍵を抜き取り、一気にアキラのところへと戻る。

 

 

「さぁ、いきましょ!」

 

「あ……」

 

 

鍵を咥えた麓子は、アキラに向かって手を差し伸べる。

アキラの答えは――

 

 

「は、はい……」

 

 

"既に着替え終わっていたアキラ"は、麓子の手を握る。

自分が犠牲になってもかまわないと思っていた。だけど、せめてもう一度だけ彼に会いたかった。皆に会いたかった。

 

そうすれば、自分は素直に生贄になれる気がする。

もしも自分が生贄になる事がなんの意味も成さなかったとしても、その後できっと司達は邪神を倒してくれるだろう。

そうすれば世界は、救われるんだから。これは言い訳じゃない、そう心に決めてアキラは麓子と共に客間を抜け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」『Standing by』

 

「変身!」『HENSHIN』

 

 

双護からの経由によって、城内マップを手に入れたガタックとデルタ。

彼らは上層にある一部屋に狙いを定めた。そこは隔離される様に備えられえている部屋であるため、何かを閉じ込めておくのに特化している風に感じる。

もしかしたらそこがアキラのいる場所なのかもしれない。

 

 

「牢屋にアキラちゃんを閉じ込めてたら許さないんだから!!」

 

 

ガタック、デルタ、陽、みぞれは隔離されていた部屋にむかって足を進めていた。

誰かを隔離すると言う点を考えれば、やはり最上階か最下層が候補としては上がりやすいだろう。

妖怪城の構造が特殊である以上中間地点と言う事も十分に考えられるが、それでも一部分に隔離された目的地には違和感を感じざるを得ない。

アキラじゃなくとも、何かはあるだろう。それがアキラを助ける事に繋がるならば構わない。

 

 

「ねぇ、陽。君さ……世界が平和になったら何したい?」

 

「寝たいねぇ」

 

 

襲い掛かる河童兵をみぞれが凍らせて、陽がソレを式神で砕く。

陽の気の抜けた答えにクスクスと笑うみぞれだが、やはりまだ彼の調子が戻らない事が気になっていた。

いや、これが本来の実力なのだろう。陽は確かに実力があるが本番では発揮できないタイプらしい。

 

それはやはり戦闘を恐れる心。

やさしいと言えば聞こえはいいが、ここ一番では決定力に欠けるのも事実だった。

それならば自分がサポートしてあげればいい。みぞれは彼の式神構築にかかる時間を補う為に次々に相手を凍らせていった。

エンゼル使用や連戦ともあってか、疲労が見えるデルタとガタック。しかしそれでも河童兵程度ならば余裕で相手をできるレベルだ。

 

 

「まあ、そのままって訳にもいかないんだろうけどね!!」

 

 

デルタの視線が捉えたのは妖怪煙々羅。幼い少女に見えるものの、彼女も立派な戦闘特化妖怪である。

しかも、カテゴリを分けるのであれば間違いなく上級クラスだろう。

 

 

「お姉ちゃん達ッッ! いい加減にしてよね!!」

 

 

煙々羅は怒りの形相でデルタたちの前に立ちはだかった。幼い少女の風貌ながらも、その殺気は相当な物だ。

だがしかし、それは同時に彼女達も相当焦りを抱えていると言う事ではないのか。それはつまり自分たちのルートが正解だと言う事では?

アキラは、この先に? いやそうでなくても確実に近づいている!!

 

 

「アキラちゃんは助ける! 必ず!!」

 

「もうやめてよ! これ以上邪神様を怒らせないで!!」

 

 

煙々羅は切にそう叫ぶ。

その悲痛な声がデルタたちの胸を揺らしたが、それでもわずかな希望がある限り、立ち止まる事はできない。

ガタックはキャストオフで装甲を落とした。直接ぶつける手もあったが、やはり煙々羅の容姿がその判断を鈍らせるのだ。

 

 

「悪いけど、気絶してもらうよ!!」『Clock Up』

 

 

世界はスローに姿を変える。

ガタックは周りの河童兵を蹴散らしながら煙々羅に狙いを定めた。

一撃で気絶させる。ガタックは心の中で煙々羅に謝罪すると、首を狙って衝撃を――

 

 

「!!」

 

 

しかし、ガタックの攻撃はまるで意味を成さないものとなる。煙々羅に触れた瞬間、彼の手は空を切ったのだ。

実体の無い身体、それはたとえクロックアップを発動させていたとしても全ての攻撃を無意味と化す力だろう。

ガタックの攻撃も例外ではなく煙々羅にダメージを与える事はできなかった。

 

 

「ッ!」『Clock Over』

 

 

そうこうしている内に時間切れ。

息を切らしながらガタックは後ろへと跳ぶ、これは案外まずい展開かもしれない。

デルタ達もそれを理解して、容赦なく煙々羅に攻撃を仕掛けていった。だがそれも彼女に全て無効化されてしまう。

 

 

「クッ!!」

 

「みぞれお姉ちゃんも、陽お兄ちゃんも、本当は私達の仲間の筈なのに……ッ!」

 

 

煙々羅は二人の方を睨む。

どうやら裏切り者として彼らを認識したらしい、その迫力に二人も思わず後ずさる。

ガタックとデルタは二人を守る様に立つが――

 

 

「これまずいんじゃないかな……?」

 

「ああ、そうだな。俺たちがあの娘に勝てる可能性は……」

 

 

全ての攻撃がすり抜けてしまう。

そんな能力を突破できる方法が二人には思いつかなかった。

正直、そんな状況で陽たちを狙われても守れる自信はない。

アイコンタクトを取る二人、ここは多少賭け要素が強くなるがこの方法しかないだろう。

 

 

「いける?」

 

「ああ、そうだな。すぐに戻ってくる!」

 

 

頷くデルタ。

デルタリングはまだしばらく使えない、ガタック無しではすぐに負けてしまうだろう。

それを承知しながらも、ガタックは陽とみぞれを抱きかかえる。

 

 

「「え!?」」

 

 

いきなりの行動に声を上げる二人。

しかし既にガタックはクロックアップを発動していた為、瞬間的に二人を連れて煙々羅から離れる。

抱えると言う性質状、デルタをおいていく形になるが……

 

 

「さぁて、君の相手はあたしが受け持っちゃうからねぇ!!」

 

 

デルタはそう言いながら光弾を発射する。しかし、それらは煙々羅の身体をすり抜けていくだけ。

煙々羅はその行動にご立腹の様だ。身体を煙状に変えると、デルタに突進をしかっけていく。

煙ながらも攻撃はちゃんとデルタに命中してくれると言う仕様らしい。

やっかいなものだ、デルタは回避を中心にしてしばらく時間を稼ぐしかない。

しかし、時間は進む訳であって――

 

 

「クッ!!」

 

 

暗闇から白い糸が伸びてきてデルタの腕に絡みつく。そして瞬間物凄い力を感じてデルタの身体は宙を舞った。

地面に叩きつけられる衝撃と、攻撃を受ける衝撃を同時に感じてデルタはそれを理解した。

美しい茶色の髪、整った顔立ちの青年が見えたのだ。妖怪・土蜘蛛だ。

 

デルタはすぐに光弾を彼に向けて発射する。

しかし土蜘蛛は既に蜘蛛状態となっている右腕で、光弾を弾き飛ばしデルタに向かって足を進めていく。

素早く起き上がろうと力を込めるデルタ。しかしそこへ煙々羅の突進がヒットしてまた彼女は地面に手をついてしまった。

 

 

「くっ!」

 

「邪神の使いさえ余計な事を言わなければ――ッ!」

 

 

土蜘蛛は巨大化した腕でデルタを掴み上げる。

苦しみに声を漏らすデルタだが、一つ気になる事が耳に入ってきた。

 

 

『余計な事を言わなければ』

 

 

どういう事なのだろう?

思考を働かせるデルタ、しかしどうやらそんな事を悠長に考えている暇はなさそうだ。

土蜘蛛の攻撃は中々強力で、デルタの意識は徐々にもうろうとしてくる。

 

 

「プットオン!!」『Put On』

 

「!」

 

 

電子音が聞こえて土蜘蛛はデルタを音がした方向に向ける。

踏みとどまる音が聞こえて、煙々羅はその方向へ視線を向ける。

そこにいたのはマスクドフォームへと変わっていたガタックだった。

 

 

「戻ってこれたのはいいけど……ッッ!」

 

 

バルカンの照準を土蜘蛛へと向けているが、生憎デルタを盾にされてしまった事もあって動けないでいた。

音声認識でのフォームチェンジが仇となったか。ガタックはどうする事もできずに立ちすくむ。

もう一度クロックアップを発動したほうがいいか? ガタックは何とかそれを悟られない為にあえて土蜘蛛の攻撃を待った。

 

 

『アイスレディ!』

 

「!」

 

 

一瞬の冷気。そしてガタックバルカンの砲口が完全に氷凍りつく!

それだけではない、ガタックゼクターも氷付けにされてしまった。

 

何だこれは!?

 

焦りの中、さらに二人はそれを発見する。

氷付けにされたのはそれだけじゃない。クロックアップのボタンも、デルタはデルタムーバーが氷に閉じ込められたので発動できなくなっているじゃないか!

 

 

「ッ!」

 

「ここはお任せください。土蜘蛛様、煙々羅様」

 

 

おびただしい程の冷気を纏いながら現れたのは、雪女である雹。

お得意の冷気でガタックのクロックアップを封じただけでなく、攻撃の手段さえも封じてきたか。

これではガタック達は何もできない。攻撃が通用しない煙々羅、実力で上にいっているだろう土蜘蛛、そして雹。

完全に詰み状態、デルタもガタックも最悪の結末しか思い浮かばない。

 

 

「安心しろ。命までは奪わない」

 

「え?」

 

「だが、お前たちはもう終わりだ。永遠にさまよい続けろ」

 

 

その言葉と共に雹はニヤリと笑う。

そこで、デルタ達の意識はブラックアウトしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼吸が荒い、こんなに真剣に走ったのは久しぶりだ。

妖怪と言えども自分の体力は人間のソレとは変わらない。

だから少し走っただけでもう限界が見えてきた、しかし止まれないのだ。この繋いだ手がある限り――

 

 

「大丈夫アキラちゃん、疲れてない?」

 

「……はい」

 

 

部屋と言う名の牢獄を抜け出したアキラと麓子。二人は化け猫を突破してからただひたすらに走っていた。

河童兵は基本的に知識は低いのだが、攻撃対象とそうでないものの区別はしっかりとつく。

麓子は当然対象外なので問題はない。もちろんそうなると隣にいる人間が気になるところだが、麓子はそれを知り合いの少年だと偽った。

 

確かに帽子を深く被り男もののスウェットに身を包むアキラは少年に見えるだろう。

花嫁は女だ。その当たり前の思考回路が河童兵の脳に、アキラは攻撃対象にするべきではないと言う結果を出させたのだ。

と言う事もあり、二人はそれから少しずつではあるが元いた部屋から離れて行く事ができた。

 

 

「……麓子さん、やっぱり今からでも戻れば――」

 

 

ふと、麓子の手を握る力が弱くなる。

あの時は彼女の迫力に負けてつい部屋を抜け出す選択をとったのだが、やはりよく考えて見るとこの行動はかなり危険だ。

自分達が侵入者の誰かに会えるのと、戦闘特化妖怪に出会う確立を考えて――

 

もし戦闘になれば自分たちが勝つ可能性は限りなく低い。

仮に自分がもう一度捕まる様な事があれば、その時麓子は間違いなく部屋を連れ出した罰で殺されてしまうだろう。

それはアキラとしては最も避けたいものであった。そもそも侵入者は司達なのだろうか?

アキラは自分が犠牲になって全てを救えると言う答えがあったから、今ここにいるのだ。

それなのに今現在こんな事になっているじゃないか……自分を置いて、次の世界に行ってほしかったのに――

 

 

「アキラちゃんは……生きたいんだよ」

 

「え……」

 

 

私には分かる、麓子はそう言って微笑んだ。

もしアキラがまだ自分を犠牲にして世界を守りたいと思っていたとしても、心の中ではそれを無意識に拒絶している。

しっかりとアキラは自分は生きたいと願っている、そう麓子は言った。だがそれは間違っている事じゃない、普通の自然で当然の事なのだ。

だからアキラが気負う事は無い。しっかりと、生きて、世界を救ってほしい。それが麓子の言葉だった。

 

 

「犠牲になれば世界が救われるなんて考えちゃ駄目、もっといい方法が必ずあるから!」

 

「………」

 

 

複雑そうな表情だったが、アキラはそれ以上何も言わなかった。言えなかった。

だって、確かに思ってしまったから。『彼』が自分の所にやってきてくれる事を、考えてしまったのだ。

何でそんな事を今更? それは自分がそれを望んでいるから?

 

 

「私は……」

 

 

アキラが何かを言おうとした時、何か背後から物音がして二人は振り返る。そこにいたのは――

 

 

「げっ!」

 

「よくもやってくれたな! 覚悟しろ、ろくろ首ッ!!」

 

 

少し離れているものの、そこにいたのは門番だった化け猫。

催涙の効果も切れてしまったのだろう、怒りの形相で此方をみている。

これはマズイ! 自分達では化け猫に勝つ事も難しいだろう、麓子は舌打ちをすると裾にある袋を確認する。

 

残りは緑、黄色、青の三つ。どれを使おうか? できれば青はとっておきたいが……!

 

 

「考えている時間ないわね、とにかく走れるだけ走ろ!」

 

「は……はい!」

 

 

追いかけてくる化け猫を見て、ますますアキラの心は複雑に痛むのだった。ここで立ち止まればまだ間に合うのか?

なんて考え、甘いと分かっているのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花嫁が逃げ出した……!?」

 

 

珍しく総大将が焦りを含んだ声をあげる。どうやら彼とてこの行動は予想外だったようだ。

 

 

「は、ははははいぃ! 申し訳ありません! まさかあの麓子が裏切るなんて――ッ」

 

 

相変わらずパニックになっている妖怪・朱の盆。放送の時といいパニックになりやすい性格らしい。

それにしても麓子は信用のあった使用人だ。確かに今回の事を考えるとアキラ側につくと言う選択を取るかもしれない確立はある事にはあった。

しかし彼女には夫も、いずれ生まれてくるだろう子供の事もある。そんな麓子がまさか世界を敵にまわすとは――

 

 

「………」

 

 

いや、もしかしたらそれは当然の事なのか?

総大将はもう一度よく考えてみる、アキラ一人死ねばいいと彼も思っていた。

だがその考えは普通の人間ならば絶対に至らぬものなのだろうか? 長き年月は自分の中で正しさと甘さの区別を鈍らせてしまったのだろうか?

総大将ははたしてアキラを生贄に捧げる事が本当に正しいことなのだろうかと迷ってしまう。

 

もちろん彼とてアキラを捧げただけで全てが丸くいくとは考えていない。きっと邪神の使いは何かを考えているんだろうと、彼は予測を立てていた。

しかし、今の現状でどうする事もできないのも事実だ。ならばわずかでも可能性がある生贄と言う選択を取る事は決して間違ってはいない筈。

総大将は決意を固めると、改めて状況の整理を行う。

 

 

「微妙な所だな、対策はいくらでもとれるが合流されるのも厄介だ」

 

 

なるべくなら花嫁はゲストとして丁重に、快適な生活を送れる場に置いておきたかったが、こうなっては仕方ない。

多少荒いかもしれないが次は牢獄に閉じ込めるしかないのかもしれない。総大将は尚も燻る甘さを押し殺すようにして一人の妖怪を呼んだ。

それは、サトリと同じクラスの七天夜。花嫁を取り戻すには彼の力を借りなければならない。

 

 

「もし花嫁を連れ戻す事を邪魔しようとしたものがいたのなら……」

 

 

最悪は始末すると言う考えも仕方あるまい。

 

 

「……はい、わかりました」

 

 

そう言ってその妖怪は消える。念のために煙々羅ともう一体、妖怪"(ぬえ)"をつかせて最善の準備を整える。

命の価値は、当然多いほうが尊重されるべきではないか?

たとえそこにどんな思いがあったとしても、たとえそこにどんな裏があるとしても、最善の方法がそこにあったのなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てッ!」

 

「待てと言われて待つヤツなんていないわよ!」

 

 

木造で長い廊下、それは昔の学校を連想させる。

妖怪城の一角で麓子達は化け猫の追跡から必死に逃げているところだった。

とは言え今までは入り組んだ構造の場所だったからまだいいものの、今は完全な一本道である。

これはまずい、麓子は確かな焦りを感じた。単純なスピード勝負ならば化け猫に勝てる訳が無い。

袋を使うしかないか、麓子は砂かけ婆からもらった小袋を適当にあさる。そしてそこから黄色の袋を取り上げた。

そして、中にある砂を少しだけとって麓子は思い切りそれを放り投げる。

 

 

「くらえッ!!」

 

「!」

 

 

黄色の砂、それはフラッシュの役割を持つものだった。

砂は爆発する様に眩い光を放ち化け猫の目をくらませる。

 

 

「ささ、今のうちに!」

 

「あ、あの麓子さん……」

 

 

直線で眼くらましなんて意味無いんじゃ……

 

 

「あ」

 

 

確かにそうだ、障害物なんて何も無いんだから意味なんて――

 

 

「小賢しい真似をッッ!!」

 

「しまったぁッ! 選択ミスっちゃった!!」

 

 

構わずに直進してくる化け猫。

麓子は急いでアキラの手を引いて走り出す。

ここで無駄に砂を使いたくはなかったが、最悪切り札の青を使うしかないか!?

 

 

「逃がさんッ!!」

 

「………ッ」

 

 

まずい、追いつかれる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バン

 

 

「「「!?」」」

 

 

文字通りバンと一つ、銃の様なものの発砲音と共に廊下の壁に一つの穴があいた。

それはあまりに突然の事だったので、三人ともただ唖然と立ち尽くしてしまう。

 

バン、バン、バン

 

また次はリズム良く三連発、アキラ達と化け猫のちょうど間にある壁に穴があいた。

そして間髪入れずに――

 

 

バババババババババ!!

 

 

「「!」」

 

 

楕円を描くように穴が開いたかと思えば、そこが吹き飛んだではないか。

何が起こった!? 混乱する一同だが、化け猫はしっかりとソレを確認する。

簡単な話、壁に穴を開けた人間がそのまま蹴破ってココに侵入してきたと言うこと。

この状況でこんな荒い進入をしてくるとすればそれは――

 

 

「貴様ッッ! 花嫁を取り戻しにきたのか!!」

 

「「!!」」

 

 

アキラと麓子は顔を見合わせて笑みを浮かべる。侵入者という事は味方ではないのだろうか?

ならこのまま一緒に――ッ!

 

 

「?」

 

 

しかしアキラは複雑な表情を浮かべる。現れた侵入者なのだが、見覚えが無い人物だった。

正直、我夢を期待していたと言えばそうかもしれない。だが現れた人物はクラスの誰でもない男だった。

 

 

「やれやれ、相変わらず無駄に広いねココは。見た目と中身が釣り合ってない」

 

 

でも、こういう場所にお宝が眠っているのはお決まりの事なんだけど。少年はそう言って笑った。

その男、海東大輝はアキラ達と化け猫を交互に見て首をかしげる。これはどう言う状況なんだ?

人間の女と"少年"が一人ずつ、そして対極側に猫の化け物が一体。どちらも花嫁とは関係なさそうだが、何やらおかしな状況である事には変わりないだろう。

アキラともお宝とも関係ない事ならば、なるべくなら関わらずに終わりたいところだが――

 

さてどうするか? 海東は考える。そしてその間に麓子は小声でアキラに彼の事を尋ねた。

アキラは知らないと言う。当然だ、彼女は海東の話こそ司から聞いていたが容姿までは聞いていない。

だからアキラは麓子に彼は味方じゃないかもしれないと告げる。

 

麓子とアキラにちょっとした不安がよぎる。

もしかして彼は敵である可能性も出て来たからだ。今、海東は化け猫にお宝は無いかなんて聞いている。

侵入者とはこの少年の様な盗賊かもしれない。ならココにいる意味もないか、麓子は頷くとアキラの手を引いて走り出した。

 

 

「あ……」

 

 

海東は二人を行かせていいものかどうか迷う。

しかしそれよりも先に化け猫が声を荒げて突進してきたではないか。

 

 

「くっ! 邪魔だどけ!!」

 

「?」

 

 

化け猫はあの二人を追っているのだろうか?

今、侵入者がいる状況で自分よりも優先して狙う程の価値があの二人にはあるとでも?

こんな"入り口付近"の場所だ、花嫁に関する事だとは考えにくい。

 

なら他に考えられる事があるとすれば、話に聞いた幽子が追われていた理由に合致するのではないか!?

彼女は音角を盗んでいたから追われていた。この城には他にも二つの鬼に関するアイテムが存在している。

つまり、あの人間と少年はそのアイテムを盗んだ事で追われていたのでは無いだろうか!!

 

 

「繋がった……ッ!」※違います

 

「シャアアアアアアアッッ!!」

 

 

化け猫が爪が海東を捉え――

 

 

「グギャ!!」

 

 

それよりも先に、海東はディエンドライバーを化け猫に向けて一発銃弾を発砲する。

弾を受けて怯む化け猫を蹴り飛ばすと、彼は一枚のカードを取り出した。

 

 

「安心したまえ、彼女たちは――」『カメンライド』

 

「!?」

 

 

海東はドライバーを回しながらカードを装填。

同時に待機音が流れ、彼はドライバーの引き金を引いた。

 

 

「僕が追う」『ディエンド!!』

 

 

海東の姿が変わり、ドライバーからシアンのプレートが発射。それらは海東に装填されると発砲音と共に色彩を全身にめぐらせる。

変身を完了させたディエンド。化け猫もいったん後ろに下がり、彼の様子を伺った。

やはりココに進入してくる時点でただの人間ではないと思っていたが、まさかこんな面妖な姿を持っているとは。

 

 

「さあ、ココは僕の兵隊さん達にお任せしようかな」『カメンライド』『ライオトルーパーズ!』

 

 

ホログラムと共に銃から放たれたのは、三体の仮面ライダー。

ファイズに似たすがたを持つ三体のライトルーパーだった。ライオ達は武器であるアクセレイガンを構えて化け猫へと突進していく。

この狭い廊下だ、化け猫も三体のライオ達に押されていった。

 

 

「ぐうううう……ッッ!!」

 

「はいはい、さっさと負けを認めたらどうかな」

 

 

ディエンドは壁にもたれ掛かって余裕の雰囲気を出している。

せいぜいライオが攻撃されそうになったら援護射撃を行うだけ。

なんとも簡単な仕事だ、兵隊に仕事を任せてリーダーは気ままに見物である。

だが実際飛び道具を所持しているディエンド、ライオ達にどうする事もできずに化け猫は地面に倒れた。厄介な相手だ、彼はすぐに立ち上がろうと身を起こすが――

 

 

『ファイナルアタックライド』『ディディディディエンド!』

 

「しま――ッッ!」

 

 

既に遅かった様だ。ディエンドライバーから大きな青い光弾が放たれ、化け猫に命中する。

 

 

「残念、楽しめるレベルですらないね。出直してきなよ」

 

「ぐぐッ!!」

 

 

光弾は命中したままその場に留まり続ける。

傍から見れば化け猫は青いボールを担いでいる様に見えるだろう。

だがもちろんこれは攻撃。ディエンドは小さく笑うと、その光弾めがけて飛び上がった。

 

 

「ハァッ!」

 

 

そして光弾ごと化け猫にとび蹴りを命中させる!

 

 

「グアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

光弾と共に化け猫は後方に吹き飛び、そのまま壁に叩きつけられて気絶した。

ディエンドの必殺技の一つ"ブルーストライク"が見事に勝利をもたらしたのだ。

さて、邪魔者もいなくなった事だ。お宝の鍵であろう彼女達を追う事に――

 

 

「?」

 

 

その時、理の欠片を経由して朱雀から連絡が入る。

 

 

『おい海東、お前まさかとは思うけど、今お宝探してるんじゃないだろうな』

 

「………ソンナ、マサカ」

 

『はい嘘ーっ! 忘れんなよ! 第一優先はアキラだからな!! いいか? 絶対忘れんなよ!!』

 

 

そういって通信は強制的に解除される。

するとすぐにまた別の通信が――

 

 

『いいですことリーダーさん。アキラさんを一刻も早く助けるのです、それまではお宝お宝言わない事! いいですわね!』

 

「チャント……サガシテルヨ」

 

『お黙りさない! 嘘がにじみ出ていますわ!!』

 

 

そういって通信が――

するとまたすぐに別のメンバーから通信が入る。

 

 

『海東ぅうううううッッ! 助けろォォオオオオッッ!! このクソビッ●を何とか――おいふざけんな! 近づくな!! 聞いてるのか!!』

 

『えー、なんでよー! 疲れてるって言うからマッサージしてあげようとしてるんじゃない。お姉さんに任せなって』

 

『だったら何故服を脱がせようと――っておい止めろ! パンツに手をかけるな変態女! ちょ、おま――ッ アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

「………」(食われたな)

 

 

最後は海東自ら通信を切る。

明らかに一人だけ別件で通信してきた人間がいたようだが気のせいだと言う事にしておこう。

 

 

 

 

 

しておこう。

 

 

「やれやれ……」『アタックライド』『コール』

 

 

ため息をつく海東、どれだけ信用が無いんだ(いや、実際お宝の方を優先させてたが)。

うるさいのは嫌いだ、ならば早くアキラを探した方がマシか。さっきの二人組みは関係なさそうだしスルーしておこう。

 

ディエンドはお宝の事を今は諦める事を決意する。

さて、そうなるとアキラの居場所が問題だ。当然人質なのだから最上階か最下層あたりが狙い目だろう。

邪神と位置が近い場所と言うのがお決まりと言った所。つまり最下層に捉えられている可能性が高い筈だ。

 

それも自分が今いる入り口付近ではなく、もっと奥の地下か?

とはいえ裏をついて最上階や全然違う場所と言う事も考えられる。

もっと言えば、この城にいる可能性は?

 

 

「さて、こっちもまだ時間は掛かるか……」『アタックライド』『コール』

 

 

また何かのカードをしきりに発動している。

ディエンドはそのまま頷くと、妖怪城の地下を目指す事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観測者は気がついただろうか? 彼は……いや、彼らは大きなミスを犯していた事に。

まず海東と麓子達のミス。それはアキラが目の前にいたと言うのに逃がしてしまった事だ。

 

しかしアキラは変装していた為、確かに少年にしか見えなかった。

花嫁=アキラ=女であると言うのは当然の事。変装させた事も見間違えた事も仕方ないと言えばそう、だがそれが麓子達の招いた事実だ。

そしてもうひとつ、これは全員のミス。それはアキラが捕らえられていた場所だ。

 

総大将の意図的な狙いの一つでもあったが、実は今海東がいた場所は妖怪城北門の入り口からそう遠くない場所だった。

入り口からホールに抜けるまでの廊下の一つにあった隠し扉。海東はソコをたまたま発見し、そこから進んでいくとアキラがいた場所についたのである。

敵側としても一度ゼノン達がアキラのところまでやってきた時から、侵入者がこないとも限らない事は分かっていた。だからこそ、盲点をつく。

アキラ達もアキラ達で、窓のから見える幻想の景色を信じ込み自分たちがさも上層にいたと錯覚していた。

麓子とアキラはそれに気がつかずに進んでいたのだ。

 

麓子は確かに長年この城に勤めてきた。

しかし彼女とて一般の妖怪、そう簡単にこの城の秘密を教えられる訳がない。

七天夜の中には強力な幻をつくりだせる妖怪が存在する、彼女がつくりだした幻の光景に誰もがミスを誘発されたと言う事。

 

以上二つが彼女達、彼らが犯したミスである。

もう今更何を言っても仕方ないが、この失敗は大きく響いただろう。

しかし、そもそもの話。アキラが仮に取り戻されたとして総大将達はさして問題ではなかった。

それも簡単な話だ。また取り戻せばいいだけの話なのだから。

 

 

「全ての妖怪に告ぐ。至急花嫁を取り戻せ――!」

 

 

総大将の渇が入る。

同時に、彼の背後に黒い影が現れた。

全身を包む不快感を覚えながら総大将は振り返る。

 

 

「………何だ?」

 

「いいえ、状況が気になりまして――」

 

 

真っ白のスーツに身を包み、顔は禍々しい竜の仮面で隠している。

その仮面の置くにある『無』のオーラは総大将でさえ身構えてしまう程だ。

この白いスーツこそ『邪神の使い』である。邪神が暴れまわった後、邪神がいた場所から現れた人物……?

 

分かっていた、総大将には邪神の使いがただの人間ではないと言う事に。

総大将とて過去に相当凶悪な妖怪と対峙し、それらを封印。または打ち勝ってきた。

それらと同質の気を邪神の使いからは感じる。一見ひ弱な人間に見えるが、邪神関係者である事も踏まえるとうかつに攻撃はできない。

 

 

「なんでも、花嫁が逃げたそうではありませんか。花嫁は邪神に捧げる大切な生贄です。くれぐれもその時までは丁重に扱っていただかなければ」

 

 

腕を後ろに組んで邪神の使いはピクリとも動かない。顔が隠れている以上表情を伺うこともできない。

まるでロボットか人形を相手にしているかの様だ。心がある人とも、妖怪とも思えない。

本人は妖怪を呼称している様だが、おそらくそれは――

 

 

「花嫁はすぐに取り戻す。それで問題は無い筈だ」

 

「ならば構いません。ですが……やはり、貴方はまだどこか甘い」

 

「なんだとッ?」

 

 

邪神の使いは一歩、総大将に歩み寄る。

 

 

「私は申し上げた筈です。花嫁差し出す事ができたのなら……"この世界"の安全は約束すると。それを信用していただけないと言うのは実に悲しい事だ」

 

 

そう言って邪神の使いは首を振る。

たしかにコチラ側が一方的すぎる事くらい彼も重々理解していた。

いきなり世界を壊滅しようとする者が現れ、一人の人間をよこせば立ち去ってやるなんて都合が良すぎる。裏に何かあると思うのが普通だろう。

 

 

「それでも、信じていただきたいものですね」

 

「……花嫁は必ずあの少女でなければならないのか?」

 

 

総大将の言葉に少しだけ使いは首を動かす。

それが肯定なのか否定なのかは分からなかったが、しばらくした後に彼は淡々と呟いた。

 

 

「そうですね、必ず天美アキラと言う人間が花嫁にならねばならない……と言う訳ではありません。汚れを知らぬ乙女の血が邪神の欲しているものであり、それさえ手に入れば――」

 

 

ですが、と邪神の使いは指を立ててさらに歩み寄る。

 

 

「あの少女を邪神が選んだ事にはちゃんとした理由があります」

 

「?」

 

「あの少女……名前をアキラと言いましたか? おそらく邪神の存在(なまえ)は過去に彼女の前世(なまえ)、またはそれに近い存在、あるいは同一体の他存在(パラレル)を捕食しているのでしょう」

 

 

饒舌にややこしい話を展開させていく。

前世に近いもの? 総大将でさえその言葉の意味が全く分からなかった。

前世ならまだしも近いものとは? そしてパラレルとは一体何のことを言っているのだろうか?

尤も、その疑問は言葉にせずとも邪神の使いに届いていた。彼はさらにもう一歩総大将に向かって足を進める。

 

 

「何を言っているのか分からないとは思いますが、彼女(アキラ)とは全く違うベクトルに存在する『彼女(アキラ)』が存在すると、私は確信しています」

 

「ベクトルが違う同一人物?」

 

「これは失礼、ややこしい言い方でした。簡単に言えば同じカテゴリの人間とでもいいましょうか。邪神の好物だった人間の種類に彼女はかなり近い位置に合致している」

 

 

邪神の使いはさらに身近な存在でそれを説明してみせた。例えるならば邪神が欲している好物は『●』と言うメーカーが作った肉団子。

そしてアキラは『○』と言うメーカーが作った肉団子。邪神が求めている肉団子とはメーカーが違うものの肉団子である事には変わりない。そんな例えを彼は持ち出す。

だがあくまでもコレは個人の予想でしかないのだが、そう言って邪神の使いは後ろに下がって行く。

 

総大将はわずかな情報ながらも何故邪神がアキラを選択したのかを考えた。

ややこしく話していたが、つまり邪神の好物にアキラは限りなく近いと言う訳だろう。

 

 

「まあいろいろと話ましたが、天美アキラを生贄として捧げればいいだけなのです」

 

「………」

 

「そうすれば、私たちはこの地を去る。もし生贄を捧げなければ――……」

 

 

全員、必ず殺す。

 

 

「……分かっている。もうしばらく待っていろ」

 

「ええ、お願いしますよ。あと侵入者をなるべく殺さないと言う事もお忘れなく」

 

 

その言葉に眉をひそめる総大将、その意味深な制約が総大将には心に違和感を残す。

邪心の使いにとっても侵入者は一番目障りの筈だ。確かに総大将としてもなるべくなら命を奪うことはしたくはない。

だが、それが邪神の使いから聞けるとは思っていなかった。その意味ありげな言葉にはどこか裏がある様に感じる。

 

 

「何故、侵入者を――」

 

「詮索は結構。貴方たちは一刻も早く花嫁を」

 

「………」

 

 

これで裏がないわけが無い。しかし、侵入者を死なせない事から得られるだろう何かを予想できる訳もない。

結果として総大将は言いなりになるしかないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





フォーゼの小説を読んだけど、ライダー小説としては一番良かったんじゃないかな。
なんか本当にいろいろバランスが良くて面白かった。

ただ弦ちゃん恋愛面ではコロコロ翻弄されるというか混乱してたね。
あれは意外だったな、まあユウキかわいいから仕方ねぇな、あれはw

あと普通にキモオタと言う単語出てきたのは笑った。


はい、では次は来週のどっか。
ではでは
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