仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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ほんのちょっと前と話し変わってる部分があります。


第55話 シンフォニー・響かせる鬼

 

「「「「イーッ!!」」」」

 

『マスカレイド』

 

「――ッ!!」

 

 

順調に邪神の間に向かっていた一同だったが、最後の最後と言う所で再び戦闘員やスーツを着た新たな戦闘員が無数に現れる。

戦闘員の奥には不適な笑みを浮かべている我夢、そして隠れている朱の盆がいた。

 

 

「我夢……ッ!」

 

「アキラさんの願いを叶える為に、僕は戦いますよ」

 

 

邪神の間に何とかして入りたいところだが、既に通路を塞ぐ壁が上から降りてきていた。

しかもとびきり分厚い壁だ、アレ打ち破るにはそれだけ時間が掛かる。おまけに壁は一枚だけではないと来た。壁の向こうにもう一枚さらなる壁が降りてきている。

もたもたしている間に全ては終わってしまうだろう。何とかして滑りこみたい、カブト組みはアスムに道をつくるためクロックアップを発動するが――

 

 

「数が多いな……!」

 

「ああ、戦闘員が壁みたいに――ッッ」

 

 

文字通り戦闘員達が壁の様に立っている為削りながらの移動となる。

その隙に我夢は音角を取り出して発動させた。

それは相原我夢に許された変身なのだから。

 

 

「変身」

 

 

紫炎が身体を包み、弾けると響鬼が姿を見せる。

我夢を盗んだ事で邪神の使いは完全に我夢と同一的存在になった。記憶も我夢そのものとなり、響鬼への変身も可能となる。

そして我夢は今までの記憶を盗み見て彼らの異質さを知る。世界を移動する連中、我夢の中で膨れ上がる期待。

こいつ等を全員盗むことができたなら最強になれると――! そうすれば、自らがトップになる事も可能ではないか?

 

 

「高速移動する連中は邪魔ですね」

 

 

響鬼は腰から音撃と炎を凝縮させた爆弾、爆裂鼓を取り出す。そしてそれをカブト達に向かって投げた。

どれだけ早かろうが広範囲攻撃には足を止めざるを得ないだろう。怯むカブト達、その隙に響鬼は壁の向こう側に渡る。

優先せざるは花嫁が生贄となる事、こいつ等の力はその後頂けばいい。

火炎鼓の効果でカブト達の足はとまり、戦闘員達の数で他の連中も停止している。

 

 

「地獄の鍵よ、地獄の業火よ――ッ!」

 

「!」

 

 

しかしその時戦闘員達の向こうで強い光が巻き起こる。

 

 

獄炎(ごくえん)乱舞(らんぶ)!!」

 

 

鬼太郎のフォームチェンジ、彼の髪が地獄の炎に変わった。

そのまま頭を思い切り振るう鬼太郎、すると炎は鞭の様に伸長して戦闘員たちをなぎ払う!

 

 

「いまだ! 地獄童子!!」

 

「任せろッッ!」

 

 

地獄童子はアスムを掴み上げるとそもまま思い切り地面を踏みしめる。

へ? 目を点にして彼を見るアスム、まさか――

 

 

「ぶっとべぇええええええええ!!」

 

「う、うそおおおおおおおおお!!」

 

「ッ!!」

 

 

彼は思い切りアスムを投げた!

確かにあのスピードならば閉まる壁を通り抜ける事ができるかもしれない。

しかし、甘いんだよ。響鬼は音撃棒を構えて先端に火を灯す。あんなの狙ってくださいと言わんばかりではないか、すぐに撃墜してやると。

 

 

『ファイナルアタックライド』

 

「!!」

 

『カカカカブト!』

 

 

音声で響鬼は反射的に手をクロスさせる。

直後、そこへ絶大な衝撃が走り響鬼は大きく後方へと押し出された。

両手に大きな痺れを残しながら響鬼は目の前にいる者達を見る。油断した、まさか高速移動できる存在が他にもいたとは。

そうしている間にアスムは壁を通り越してしまう。そして壁は完全に閉じきった。

 

 

「だが、壁を超えられたのは貴方達だけの様ですね」

 

「それで十分だ」

 

 

響鬼の前に現れたカブト、ではなくディケイドとアスム。

音撃鼓を受けてからカメンライドしたディケイド、おかげでクロックアップを邪魔される事なく発動でき、アスムを抱えて何とかココまではこれた様だ。

しかしそこで第一の壁が降りきってしまった、あれだけいた仲間も戦闘員達を止める役割に変わってしまう。

そうこうしている間にも響鬼の後ろでは第二の壁が既に半分も降りているではないか、あの先が邪神の間に繋がっているのだろう。

ならば何とかしてアスムだけでも邪神の間へ――

 

 

「行かせると思いますか? 司先輩ッ!」

 

 

そして響鬼はそう言えばとディケイドの後ろにいるアスムを確認する。

思わず声を漏らす響鬼、まさか……? そんな事がと。

 

 

「行かせるさ、必ずな!!」『アタックライド・スラッシュ!』

 

 

響鬼の音撃棒とディケイドのライドブッカーがぶつかり合う。

二対の音撃棒が出す力は大きいが、ディケイドはスラッシュを発動している分均衡を保つ事ができた。

ぶつかり合い、にらみ合うディケイドと響鬼。始めて味方だったライダーと本気で戦う事になるとは。

だが甘さはいらない、ディケイドは競り合いに打ち勝ち斬撃を響鬼に刻み込む。

 

 

「クッ……! しかし驚きました、まさか盗んだヤツがまだ生きていたなんて――ね!」

 

「うあぁあッッ!!」

 

「アスム!!」

 

 

ディケイド達が戦っている間に壁を超えようとしたアスム、しかし急に彼は苦痛の声をあげて倒れる。

何故? それは背景に擬態していた瑠璃狼が原因だった、ディスクアニマルは揃ってアスムを攻撃する。

おかげで中々うまく移動できない。そうこうしている内に時間は進んでしまうのだ。

 

 

「アスム、待ってろ!」

 

「くッ!」

 

 

ディケイドは響鬼の腹に蹴りを入れると、ライドブッカーで三回程度斬撃を刻んでいく。

怯む響鬼、その隙にディケイドはブッカーをガンモードに変えてディスクアニマルを射撃した。

おかげで体勢を立て直せたアスム、だが同時に響鬼は顔をディケイドに向けて鬼火を発射。

 

 

「ぐぁぁぁ……ッッ!!」

 

「余裕ですね、そのまま焼け死んでください!」

 

「いやだね、断るわ……ッ!」『カメンライド』『フォームライド』『デンオウ・アックス!』

 

 

装甲がディケイドに付与、現れたのは電王アックスフォーム。

固い装甲は鬼火のダメージを軽減させ、ディケイドはそのままブッカーを構えて全身していく。

なるほど、そう言って後ろに跳ぶ響鬼。そして彼はディケイドに向かって攻撃ではなく手をかざすと言う行動に出た。

何を? 隙だらけの響鬼にディケイドは距離を詰めていく。しかしアスムにとっては見覚えのある光景、思わず彼はディケイドに回避をとるように叫ぶが――

 

 

「遅い! 頂きますよ!!」

 

「!!」

 

 

その瞬間、確かに電王にカメンライドしていたにも関わらずディケイドは再び基本形態となる。

何が起こった? 再びディケイドは電王のカードを取り出そうとするが――

 

 

「無い!?」

 

「フフフ……ッ!」

 

 

電王のカードが文字通り消えた。

驚くディケイドに再び襲い掛かる鬼火、仕方なくディケイドは次にアギトへとカメンライドを行う。

身体が軽くなり、ディケイドは一気に跳躍して響鬼の鬼火を交わす。そして拳を握り締めて響鬼に殴りかかった。

だがその時、響鬼が指を鳴らすと金色のオーラが彼の体に纏わりつく。そのまま拳を受ける響鬼だが、オーラがアギトの拳を受け止めた!

 

 

「お前……ッ! まさか――」

 

「そうです、頂きましたよ。電王の力をね!!」

 

 

響鬼は何とデンガッシャーを取り出すとそれをロッドモードへと変える。

そしてデンリールで扉を超えようとしていたアスムを引き戻し、ディケイドへとぶつけた。

怯む二人に響鬼は鬼火を発射、ディケイドは当然生身のアスムを庇う様に立つしかない。

それは分かっている、響鬼はそんな隙だらけのディケイドに音撃鼓を叩きつけた。

 

 

「グッ!」

 

「司先輩!!」

 

「あはは! 音撃打、火炎連打の型ァ!!」

 

 

展開する音撃鼓、そこへ打ち付ける無数の音撃。

内部まで響き渡る音撃にディケイドのダメージは大きく蓄積されていく。

同時に緑大猿に投げ飛ばされるアスム、より大きく吹き飛ばされてしまった。

響鬼の方もフィニッシュ、最後にディケイドライバーに音撃棒を叩きつけてディケイドを吹き飛していく。

ドライバーにダメージが入ったのか叩きつけられたディケイドは変身が解除、地面をスライドする様にして司から離れるディケイドライバー。

それは偶然か、それとも必然か、アスムの前に停止する。

 

 

「―――ッ!」

 

「ググぅ……ッ!」

 

 

立ち上がろうと司は力を込めるが、音撃が残っているのかうまく立ち上がる事ができない。

アスムもドライバーを司に渡そうと考えていたが、若干司との距離がある為うまくいくかどうかが微妙なラインだった。

投げようにもディスクアニマルに邪魔される可能性が高く、前からは響鬼や瑠璃狼、緑大猿が迫ってくる状況である。

まして向こうは盗むと言う能力を持っている筈、もしもディケイドライバーが盗まれようものなら終わりだ。

 

 

「………ッ」

 

 

その時、ふとアスムによぎる考え。

一か八かの大勝負だが賭けない手はないか? そう考えて彼はその行動に出る事を決めた。

きっかけは自分の存在が盗まれた事、つまりは相手の力を使うと言う事にもなる。他者の力を使う。それはまさに今の状況ならば――ッ!

 

 

「司先輩! 少し借ります!!」

 

「あ、アスムッ!?」

 

 

アスムはディケイドライバーを腰にかざす。

すると何とディケイドライバーはしっかりとアスムの腰に装着された。

驚きの声をあげる司、盲点と言えばそう。イケるのか!? 彼のやろうとしている行動を理解して響鬼も思わず足を止める。

ならばと司は声を振り絞り情報をアスムに伝えるだけだ。

 

 

「アスムッ! ライドブッカーは念じれば狙ったカードが引ける!」

 

「は、はい!」

 

 

アスムは言われたとおりライドブッカーからディケイドのカードを抜き取る。

そしてドライバーを展開させ――

 

 

「変身!」『カメンライド――』

 

「!」

 

『エラー』

 

「え? ―――グァアッッ!!」

 

 

何もおかしい事は無かった。

しかしディケイドライバーはアスムを拒絶、エラーの音声と共にドライバーはアスムを弾き飛ばした。

何故だ!? 司もアスムも理由が分からずに困惑してしまう。どうやらディケイドは司以外には拒絶反応を示すらしい。

その理由は一体なんだと?

 

 

「しぶとく生き残った割りに、何もできないとは……馬鹿な人だ!」

 

 

響鬼は音撃棒を回してアスムに近づく。

既にもう壁は大部分の姿を見せている、いよいよ時間が無い。ここでチャンスを逃せばアキラは死ぬ。

クソッ! アスムは悔しさからか拳を地面に叩きつける。何度も手を伸ばし、彼女に届きそうになるのに――!

 

 

「司先輩が欲しいんですが、先に貴方をもう一度盗ませてもらいます」

 

「……っ」

 

「何故貴方はここにいるのか、気になりますからね」

 

 

響鬼にもディケイドにもなれない自分はもう何もできないのか?

彼女を助けるだけじゃない、仲間や世界を守る事もできないと?

 

 

「君はディケイドには選ばれなかった」

 

「え?」

 

「は?」

 

 

その時、何か別の声が聞こえた。

 

 

「グッ!!」

 

 

響鬼とディスクアニマルが後退していく、その身に銃弾を受けて。

火花を散らして後退していく響鬼とディスクアニマル。何も無い場所から攻撃が? どういう事なのか。

 

 

「「!!」」

 

 

乱れる背景、そしてホログラムの人影が複数出現。

それが重なり合い現れたのはシアンのライダー、仮面ライダーディエンド。

 

 

「海東! お前どうして――!?」

 

「ずっと見てたよ。君たちの戦いはね」

 

 

アタックライド、インビジブル。

あの時第一の壁を超えたのはディケイドとアスムだけではなかった。

ディエンドもまた戦闘員の間をかいくぐり壁を超えていたのだ、かつ透明になっていた彼は抜群の登場タイミングを探っていたと言う事。

 

 

「さ、最初から助けろよ!」

 

「それは僕の勝手だ。僕は誰にも縛られない、自由が好きなのさ」

 

 

ディエンドはアスムの前に立つともう一度先ほどの言葉を言った。

君はディケイドにはなれないと言う事を、それを痛感しているアスム。だが次の言葉は予想外だった。

 

 

「だけど君は、響鬼には選ばれた」

 

「――ッ?」

 

 

………。

 

 

「!!」

 

 

その時、アスムの表情が変わった。

彼は地面に転がっているディケイドライバーに再び手を伸ばす、だが先ほどエラーと出たように変身はできない筈だ。

司は何とか立ち上がるとアスムにその事を伝える。もちろんアスムとてそれは了解していた、原理は分からないが自分は司と違ってディケイドにはなれない。

だけど――、アスムはドライバーを装着するとライドブッカーから一枚のカードを抜き出していた。始めからそれを狙って。

 

 

「!!」

 

 

司もまた意味を理解して表情を変える。

だがソレは、そのカードは――

 

 

「力を……」

 

 

だから司は叫ぶ、選ばれた主人として。

今は――

 

 

我夢(アスム)に力を貸せッッ!! ディケイドライバァアアアアアアアッッッ!!」

 

「変身――ッッ!!」『カメンライド――』

 

 

ディケイドにはなれない。

知っている、分かっている、ならば自分が選ぶカードはディケイドではない。ただ、一つ!

 

 

『ヒビキ!』

 

「!」

 

 

ディケイドライバーが光り輝くと、アスムの身体が紫の炎に包まれていく。

アスムはディケイドにはなれなかった。しかし、ディケイドライバーの中には彼が変身する力が存在していたのだ。

仮面ライダー響鬼の力が。しかしソレは無地だった筈、司の叫びがこの土壇場で絵柄を刻ませたとでも言うのか?

そんな馬鹿な、響鬼は音撃棒を構えて走りだした。同時に炎が弾け――

 

 

「ッ!!」

 

「……ッッ!!」

 

 

ディケイド響鬼。

彼は音撃棒を出現させ、響鬼の音撃棒を確かに受け止めた!

 

 

「な……ッ! 馬鹿な――!」

 

「いけた……! いけたぞアスム!!」

 

 

直接響鬼へのカメンライド、アスムはしっかりと響鬼への変身を完了させた。

そしてそれは同時に全てのカードが揃った瞬間であった。二人の響鬼は互いに音撃棒を打ち付け合っていく。

均衡する実力、それは二人が同一人物といえるから仕方ない事なのか。しかし時間は無い、壁が既にもう降りきろうとしているではないか。

ディケイド響鬼は焦りから響鬼に攻撃をはじかれてしまう。

 

 

「もらった!」

 

 

響鬼は音撃鼓をディケイド響鬼へと――

 

 

『アタックライド』『ブラスト!!』

 

「何ッ! ぐあああッ!!」

 

 

しかし今はディエンドがいる。

彼は響鬼の手に弾丸を命中させ、必殺技をキャンセルさせた。

逆転する構図、まさかと響鬼は目の前にいる響鬼を見る。彼はカードを抜き取り、それをドライバーに装填している所!

 

 

「しま――ッ!」

 

「今度はコッチの番ですよッ!」『ファイナルアタックライド』『ヒヒヒヒビキ!』

 

 

ディケイドが音撃棒を同時に打ち付けると、太鼓状のエネルギーが展開する。

それに拘束される響鬼、まさか自分の技に動きを封じられる事になるなんて。

必死にもがく響鬼だが既にディケイド響鬼は技名を呼称していた。振り上げる音撃棒、目を見開く響鬼!

 

 

「爆裂強打の型ッッ!!」

 

「ウグゥァアアッッ!!」

 

 

響鬼の紋章が響鬼に刻まれていく。

同時に変身を解除して走りだすアスム、全ての力を足にこめ、肺がぶち破れる程強く息を吸った。

こんなに真剣に走る事は始めてかもしれない、アスムは間一髪壁の向こう側に移動すると司の名を叫んでドライバーをスライドさせる。

 

 

「行けッ! アスム!!」

 

「はい!」

 

 

笑いあう二人、同時に閉りきる壁。

司はふらつく足ながらドライバーを掴む為に走りだした。当然邪魔する為に攻撃をしかけるディスクアニマル。

だがそこへシアンの弾丸が着弾、ディエンドのアタックライド・ブラストが司のルートを的確に確保する。

やはりディエンドの腕は本物らしい、司はスムーズな流れでドライバーを掴み取ると地面を転がって素早くドライバーを装着した。

ニヤリと笑う司、響鬼は舌打ちをして彼を睨む。

 

 

「く……ッ! 中々やりますね、まさか壁を超えられるとは思いませんでした――よッッ!!」

 

 

響鬼は立ち上がると、瞬時音撃棒に炎を宿しソレを発射する。

司の方向を向いていたが狙ったのはディエンド。彼はしっかりと防御には成功、しかしその次にやってきた音撃鼓には反応できなかった様だ。

先ほどの司同じく音撃打で吹き飛ばされるディエンド。どうやら音撃には変身を解除させる力が強いらしく、ディエンドも海東に姿を戻してしまう。

だが海東もまたニヤリと笑い、華麗に着地を決めた。壁を守る様にして並び立つ司と海東、そして前には音撃棒を構える響鬼。

彼は壁の向こうにアスムを一人にしたのは馬鹿な行動だと言う。

 

 

「元の僕は邪神の間に行けた様ですが……今の彼ではぬらりひょんに殺されるのがオチですよ?」

 

 

響鬼に変身できない彼は弱い人間以下だ。

存在もあやふや、そんな人間もどきになにができると言うのか? だが尚も笑みを浮かべる司と海東。

 

 

「アイツならやってくれるさ」

 

「何を根拠の無い事を――!」

 

 

司はライドブッカーから一枚のカードを抜き出す。やはり自分はコレからじゃないと駄目らしい。

そして海東もまたクルクルとドライバーを回し、一枚のカードを取り出した。

本来は戦いと言う物に興味を示さない海東、だが今回は少し違った。彼がわざわざインビジブルのカードを使ってまでココにいる理由、それは――

 

 

「君の力は盗む事らしいね」

 

「ええ、貴方のソレも奪って見せますよ」

 

「………」

 

 

それは、プライドの問題。

 

 

「気に入らない、実に」

 

 

トレジャーハンターの前に盗賊は存在してはいけない、絶対にだ。

同じお宝を狙う存在は海東にとって邪魔以外の何者でもない。まして同等の存在である以上、自分の方が優れていると言う証明をしなければならない。

教えてあげなければならないのだ、力の差と言う物を。だからこそ海東は邪神の使いが気に入らなかった。

奪う者を呼称するのは世界にただ一人、自分だけが存在していればいいのだから。

 

そして司にとっても、目の前にいる響鬼は絶対に倒さなければならない相手。仕組みはわからないがコイツを倒さなければアスムは響鬼の力を取り戻す事はできない。

彼には響鬼のカードを覚醒してもらった恩もある、だからこそ目の前にいる響鬼は邪魔なのだ。

 

 

「「と言う訳で、お前は――」」『『カメンライド――』』

 

 

並び立つ二人、重なる声、重なる音声。

司が手にするはディケイドのカード、海東が手にするはディエンドのカード。

 

 

「俺が壊す」

 

「僕が奪う」

 

 

二人はそれぞれの存在(カード)を己がドライバーに装填する。

そして司はバックルを戻し、海東は引き金を引いた。

 

 

「「変身!」」『ディケイド!』『ディエンド!』

 

 

プレートの群れが放たれ収束。最後に二人に色彩が宿り、ディケイドとディエンドがその姿を見せた。

共に『D』の名を持つライダー、二人は武器を構えて響鬼と対峙する。

 

 

「お前を倒して、さっさとアスムを取り戻させてもらう」

 

「いいですよ。やれるものなら……やってみろ――!」

 

 

ディケイドとディエンド、響鬼はそれぞれの意思を抱えて走りだした。

目の前にいる障害を消す為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ――ッ!」

 

 

呼吸が荒い、ゴツゴツした岩の地面。

道ともいえない道は大きく体力を削られる仕様となっている。

一応階段状になってくれていて助かった、アスムは段を飛び越えながら下の方へ足を進めていく。

 

とにかくアスムは走った。

あれから少し時間がかかったが、もうすぐ最下層となる事は嫌でも分かる。

巨大な穴が姿を見せたのだ、全てを飲み込む闇、その中に感じる最悪の象徴。

分かる、あそこに邪神が眠っていると言う事が。そしてその穴の淵に備えられている台座、今まさにそこへアキラが立たせられようとしている。

 

 

「アキラさんッッ!!」

 

「!」

 

 

アキラの近くにりた総大将が驚きの表情を浮かべた。

流石にココまで来られるとは思っていなかったのだろう、まして総大将は我夢が自分達についたと思っている。

そこへ敵対するアスムが登場、もう軽いパニック状態だ。

 

 

「………」

 

 

しかしアキラは虚ろな瞳でアスムを見るだけ。

どうやら彼女の心は壊れる寸前まで来てしまったらしい、今のアキラは目の前にいるアスムを見ても幻想だろうと割り切るだけだ。

何のリアクションも示さず、何も言葉を発せず、ただ全てを終わらせる為に台座へと向かおうとする。

 

 

「僕はここにいますッ! アキラさん!!」

 

「………」

 

「くッ! 大人しくしてもらおうか!」

 

 

杖を構えて総大将、ぬらりひょんはアスムに向かっていく。

どうやら彼は全てを理解した様だ、目の前にいるのは本当の我夢なのだと。

アスムは叫び走りながらもぬらりひょんの攻撃を見て冷静な回避を行っていった。

しかし、どんなに努力したところでアスムは人間の枠を出ない。すぐに回避は見切られ、ぬらりひょんに重い杖の一撃を打ち込まれる。

 

 

「グハ……ッッ!!」

 

 

アキラの目にその瞬間光が灯る。

しかしまだ心が回復していないのか、複雑な表情で彼女は涙を流すだけ。

果たして今自分が見ている光景は夢なのか、それとも現実なのか。しかし彼女が思い出すのは彼の最期の姿。

首だけになった彼があそこから回復するとは思えない。ならばやはりコレは夢――?

 

 

「ここまでこれた事は褒めてやろう。だがその姿では誰も、そして何も守れはしない!」

 

 

杖をアスムに向けぬらりひょん、変身するならばしてみろと言う合図だった。

敵ながらアスムの意地には関心を示すものだ、全力で来たければ来るがいいとぬらりひょんは指し示す。

 

 

「そうですね……ッッ!」

 

 

アスムは彼の意思を読み取り、ふと笑みを浮かべる。

そして助手から貰ったボールを取り出す。掌に収まるサイズのソレをアスムは腰部分にかざした。

 

 

「!」

 

 

すると、ボールは変形してベルトに変わる。

始めて見る形状にぬらりひょんも深刻な表情を浮かべた。

戦いにおいて最も危険視する事は初めてみる相手の力なのだから。

アスムはぼんやりと自分を見つめるアキラに視線を移すと優しい笑みを浮かべた。

彼女がまた笑える様に。

 

 

「アキラさん……ごめんなさい、せっかく貰ったのに――!」

 

 

アスムは懐から過去アキラに貰った綺麗なコインを取り出す。

それは本来我夢の物であり、当然今は敵である彼が持っていた筈だ。

しかし、実は始めに我夢がコインを出した時に目をつけた人物がいた。

 

そう、ディエンド・海東である。

既にインビジブルを発動していた彼は、その綺麗なコインを見て思わず奪っておいたのだ。

そして先ほどアスムの元へ現れた時にこっそりとソレを返していたと言う訳。

 

アスムはそれを見て、もう一度強くぬらりひょんを睨む。

正直勝てるかどうかで言えば微妙な所だ、前回の様に何もできず敗北する可能性は非常に高い。

だが、それでも戦わなければならない。彼女を守る為に、世界を救う為に。

 

 

「―――ッ」

 

 

アスムはその思い出のコインを思い切り弾く。

ピンッ! と音を立ててコインは激しく旋回しながら宙に舞い上がった。

ああ、思い出す。いろいろな事をこのコインで決めてきた、優柔不断な自分を何度も助けてくれたコイン。

アキラに貰った時は嬉しくて踊りだしそうになったっけ、それからずっと大切に持ち歩いていたな――

 

 

「………」

 

 

コインは頂点に達して軌道を重力にまかせる。

最後に弾いたのはあのコイントス、表も裏も駄目だった選択は自らの手で側面を示した。

 

ならば、今回はどうだ? 勝てる? 負ける? その二つだろうな。

だがそれは負けると言う確かな選択を示す可能性もある。

じゃあ、決まりだ。やはり今回もまた自分が選ぶのは――

 

 

「変身!!」

 

 

我夢(アスム)はコインを掴み取ると、それを再び側面に変えた。

何度も自分を助けてくれたコイン。お願いだ、今もう一度僕を、彼女を助ける力になってくれ。

その為の、力を貸してくれ! アスムは強い想いと共にコインを側面で叩きつける。どこへ? それは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャリン!

 

そんな音を立てて、コインはベルトの中へと送り込まれた。

側面にしたのはベルトにあった投入口にコインを入れる為、アスムはそのままベルトにあったハンドルレバーに手をかける。

ガリッと一つまわし、ガリリッと二つまわし。そして――

 

 

カポーンッッ!!

 

 

気持ちのいい音を立ててベルトから球体状のエネルギーが放出される。

同時に機械音と共にアスムに装着されていく装甲、その中でアスムは助手と博士の会話を思い出す。

フォーゼプロトタイプ、それがこの名だが――

 

 

『せっかくだから名前をつけましょう!』

 

 

そんな事を言った助手。

彼女は今日新しくフォーゼプロトタイプが生まれ変わると言い、それを誕生日と称した。

ならば名づける名は一つ、助手は声を大きく上げて叫ぶ。

 

 

『ハッピーちゃん!』

 

 

ずり落ちるアスムと博士。

 

 

『なんでソッチなんだ! 馬鹿か! 後半使え後半を!!』

 

 

という訳で、博士はフォーゼプロトタイプに新たな名を与える。

今日と言う誕生日を祝って、博士はおなじみの言葉を投げかけた。ハッピーバースデイと。

 

 

「その姿は……ッ!」

 

 

ぬらりひょんは目の前に現れた新たなるアスムへ声をかけた。

フォーゼのプロトタイプとは言えどデザインはフォーゼとは全く違う機械的な物となっている。

しかしデザインは子供がよく好んで行うガチャポンの機械を模しており、変身までのプロセスも根強いイメージを感じさせる。

 

 

「仮面ライダー」

 

 

そしてアスムは宣言する。この名はフォーゼプロトタイプではない。

 

 

「仮面ライダーバース! 行きますッ!!」

 

 

バースはもう一度アキラを見て走りだした。

決着をつける為に。

 

 

「よかろう。もはや言葉は不要だ、花嫁を取り戻したければ私を倒すがいいッ!」

 

 

同時に走りだすぬらりひょん、変わった変身に驚かされたが所詮それまで。

バースは拳を構えてぬらりひょんに殴りかかるが、軌道は簡単に読めた。ぬらりひょんは攻撃をかわすと杖で思い切りバースを突く。

火花を散らして後退していくバース、しかし見た目どおり防御力はそこそこあるらしい。一瞬だけ怯んだだけで再び彼は構えなおした。

 

 

「こんの――ッ!!」

 

「甘いな、隙が大きすぎるッ!!」

 

 

バースの拳を杖で受け止めるぬらりひょん。

そのまま杖を回しバースの体勢を崩し、がら空きになった胴体へ突きを連続でヒットさせていく。

防御が凄かろうが、やられっぱなしではすぐに負けてしまう。バースは何とかぬらりひょんの杖を掴む事に成功するが――

 

 

「いかなる状況にも対応する事が強さと知れ!」

 

「アグァ……ッッ! ガハッッ!」

 

 

ぬらりひょんの杖は仕込み刀の役割を持っている。

バースが掴んだのは杖、あくまでも鞘の部分でしかない。ぬらりひょんは杖から刀を引き抜くと、無数の斬撃をバースに刻み付けていった。

 

 

「く―――……ッッ!」

 

 

やはりバースになろうが響鬼になろうが根本的な実力に差など無い。

それはぬらりひょんとバース自身分かっていた事だ。ならばできる事はただ一つ、彼は博士から聞いたバースの使い方を思い出して行動に移す。

 

 

「―――ッ!」

 

「クッ!!」

 

 

バースが手をかざすと、そこへ助手が使っていた特殊な弾を打ち出す銃が出現した。

バースバスターと呼ばれる銃だ、彼はそれを掴むと引き金を引く。

 

銃口の下にあるポッドにはメダルが積まれており、特殊な射撃音と共にメダル状のエネルギーが発射された。

だがそれに反応するぬらりひょん、刀で確実にメダルを弾き飛ばしていく。しかしバースバスターがさほど大きく無いにも関わらず、両手撃ちである事から威力はそれなりに高い事が分かる。

 

事実ぬらりひょんも弾き飛ばした時に手に衝撃がくるのを感じていた。

どうやら油断すれば一瞬で大ダメージと言う事もある、双方まだ勝敗は完璧に決まったわけではない?

 

 

「だがその形状、弾は無限ではないな」

 

「………ッ」

 

 

図星、バースの力にはエネルギーを供給する物体が必要なのだ。

それはちょうどアスムがアキラから受け取ったコインと同じ形状……つまりはメダル状の物でなければならないと言う事。

アスム達が使う硬貨では少し大きさが足りず、結局は博士が元々持っていた分しか燃料(メダル)は無かった。

その数は現在で約15、計画的に使わなければ敗北は必須となる。だが出し惜しみもまた敗北に繋がる要因、そのバランスが難しい。

 

 

「お前たちの選択がココまで来る事になるとはな……!」

 

 

七天夜を全て倒し、現にバースはココにいる。

ぬらりひょんはソレを奇跡と称した。愛が生んだ奇跡、言葉にすると安っぽいと笑われるかもしれないが。

 

 

「だが、奇跡は奇跡だ!」

 

 

起こらないからこそ奇跡と言うべきなのか。

ぬらりひょんは刀でバースの装甲に大きな傷を作った。バースは倒れそうになるのを堪えてバスターを構える。

狙いを定めて発射、弾数は限られるので無駄うちはできない。

 

 

「奇跡でも偶然でも何だっていい。アキラさんを守れるのなら!!」

 

 

メダルが弾かれるのを確認するとバースは素早くコインホルダーからメダルを一枚取り出す。

そしてそれをベルトに装填して再びレバーハンドルを回す。

 

 

『DRILL ARM』

 

 

パカーン! と言う音と共にカプセル状のエネルギーボールが開放。

するとバースの手に文字通りドリルが装備された。激しく回転しながらドリルはぬらりひょんの刀へと打ち込まれる!

火花が飛び散り、総大将はガード中だった事もあってか反撃には出ない様。バースは蹴りでぬらりひょんを刺激すると一気にドリルの回転を上げた。

 

はっきり言って勝ち目は無い戦いだ。

だがそれは真っ向から行けばの話、バースも前回の戦いでぬらりひょんの実力は把握している。

それならばコチラにもそれ相応の戦い方があると言うものだった。バースはドリルで強引にぬらりひょんを押していくと、さらにメダルを装填する。

 

 

『CUTTER WING』

 

 

カポーンと音が聞こえ、バースの背中に飛行ユニットが装備される。

ドリルを回転させたまま加速するバース、その勢いにぬらりひょんもついに両手を構えて刀を握る。

 

 

「クォオオオオ……ッッ!」

 

「ハァアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

そしてついにぬらりひょんのガードをバースが強引に突破する。

ウイングの羽は文字通り鋭利なカッターとなっており、通り抜け際にぬらりひょんにダメージを与える事ができた。

 

 

「―――ッ!」

 

 

だが、ぬらりひょんはバースが通りぬけた瞬間をしっかりと見ている。

刀を構えなおすとカッターウイングの羽部分に向かって刀を投げた。一閃の勢いで刀はウイングを貫く。

飛行しながら攻撃する予定だったが、すぐにそれは潰える目論見。バースは若干の焦りを覚えたがこの結末は予想の範囲内。

バースは墜落しながらもカッターウイングを自ら分離させる。そしてドリルアームを構えて――

 

 

「!」

 

 

カッターウイングには飛行能力を得ると言う事以外に、ブーメランとしての遠距離攻撃の役割を持つ。

分離したカッターウイングはドリルアームから発生する磁力に操られ、ぬらりひょんの周りを飛び回った。

 

 

「クッ!」

 

「……ッ!! ハァッッ!!」

 

 

カッターウイングを切り払おうとするぬらりひょん、そこをバースは見逃さない。

素早くドリルアームを解除するとバースバスターを出現させて引き金を引く。

メダル状のエネルギーはぬらりひょんの刀を弾くと、次の弾丸を彼の身体に命中させていった。

 

 

「ヌゥゥアアッッ!」

 

「………ッ!」

 

 

そのまま数発はまともに受けてくれた。

しかし再びぬらりひょんは刀を投擲、これにバースは反応できずバスターを弾き飛ばされてしまう。

すぐに拾いに走るバースだが、それよりも先にぬらりひょんが別の刀を出現させて投擲、足に一閃を受けてバースは倒れてしまう。

そうなれば隙だらけ。ぬらりひょんは跳躍で一気にバースとの距離を詰めると何度となく斬撃を刻み付けていった。

抵抗しようとメダルに手をかけるバース、しかしぬらりひょんはバースの手を踏みつけてメダルに手を伸ばす事を封殺した。

 

 

「クッ!」

 

「悪いが終わりにしようか!」

 

 

ぬらりひょんは刀をもう一つ出現させて二刀流の構えをとる。

斬撃はさらに増えてバースはいよいよ無抵抗となる。負けるのか!? このまま救えずに――!!

 

 

(いや――ッ! 諦めるなッッ!!)

 

 

活路を見出す事、バースは揺れる視界の中で必死に思考を働かせる。

既にダメージが限界を迎えようとしているのか警告音が響いているが、それでもバースは尚冷静を保とうとする。

思い出すのは博士から聞いたバースの能力。カッターウイングやドリルアームなどのツールで他に何か……

 

 

何か――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アタックライド』『アタックライド』

 

『『ブラスト!!』』

 

「クッ!」

 

 

無数の弾幕が響鬼に降り注いでいく。

流石に防御するしか選択は無い、だがその間にもディケイドはライドブッカーを構えて走り出していた。

振り上げるブッカー、響鬼も何とかそれを確認するが気がつけばもうブッカーが自分の身体に刻まれている所だった。

 

 

「もう一回くらっとけ!」

 

「嫌ですよ先輩ッ!」

 

 

ディケイドの攻撃を次は確かにかわす響鬼、そして次の瞬間――

 

 

「お返しです!」

 

「ッ!?」

 

 

響鬼の手からシアンとマゼンダの弾丸が無数に発射される。

それは先ほど二人が撃った弾丸と同一の物。つまり――

 

 

「盗んだのか!」

 

「………」

 

 

ディケイドは弾丸を見ると響鬼に追撃を与える事を諦め、後ろに跳んだ。

敵の能力は盗む事だと言う事は分かっているが、問題はただ一つ。どうやって、いつ、どのタイミングで盗んでいるのかだ。

 

 

「厄介な力には変わりない。司、少し時間を稼ぎたまえ」『アタックライド』『サーチ!』

 

 

ディエンドライバーの銃口に彼の紋章が出現する。

そのまま銃をかざすディエンド、どうやら敵の力を調べているらしい。

ならば時間を稼ぐのはディケイドの役目、なるべく盗まれない様に動きながら彼は再び響鬼に向かって走りだす。

 

 

「変身!」『カメンライド――リュウキ!』

 

 

やはり一番最初に思いつくのは範囲指定で盗んでいると言う可能性。

響鬼の張っている範囲か何かに触れれば、ソレを盗めるのではないか?

つまり接近していけば盗まれる確立も上がると言う事。それを確かめるためにディケイドは龍騎に変身を完了させた。

 

 

『アタックライド』『ソードベント!』

 

 

ディケイドの手にドラグセイバーが出現、ライドブッカーとの二刀流で響鬼に切りかかっていく。

音撃棒よりも若干リーチがあるおかげで何とか優勢を保つディケイド、しかしドラグセイバーを振り下ろした時、やはりソレが起きる。

 

 

「頂きます!」

 

「な――ッ!」

 

 

ディケイドの手からドラグセイバーが消え、代わりに響鬼の手にドラグセイバーが握られる。

すかさずソレを振るう響鬼、ディケイドもライドブッカーで受け止める事には成功したがすぐに後ろへと下がっていった。

やはり範囲で指定か? ディケイドはまた後ろへ跳ぶと響鬼との距離を大幅に空ける。

 

 

『アタックライド』『ストライクベント!』

 

 

炎と共に出現するドラグクロー、ディケイドはすぐに構えをとって攻撃の姿勢に入った。

だが同時に手を伸ばす響鬼、かなり距離はあるが……?

 

 

「タアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

ドラグクローから炎が発射。響鬼にまっすぐ向かっていくが――

 

 

「チッ……!」

 

 

やはりと言うべきか、炎は響鬼を前にして消滅。同時に手にあったドラグクローも消滅してしまう。

おそらく響鬼の手に渡ったのだろう、あれだけ距離があっても盗まれるのなら範囲と言う事ではないのかもしれない。

 

 

「……! なるほど、分かったよ司」

 

 

だがここでディエンドがその正体に気づいた様だ、彼はディケイドに今サーチで調べた事を報告する。

相手がどうやって自分たちの攻撃を、技を盗んでいるのか。それは実に簡単な事だった。

 

 

「響鬼が手をかざす時があるだろう? あれは実は見えない光線を発射している」

 

「見えない光線?」

 

 

そうだとディエンドは頷く。

響鬼、ではなくその正体をシーフドーパントは手から肉眼では見えない光線を発射、それに命中した対象物を盗むと言う力があった。

光線のスピードはかなり速く、直線に立っている時点で彼に盗んでくださいと言っている様な物だとディエンドは言う。

 

 

「なるほど、つまり前には立つな……か」

 

「へぇ、気づいたんですね」

 

 

だけどだからどうだと言うのか、意識しようとすれば動きが鈍くなると響鬼は笑う。

確かに盗まれない様に立ち回るのはそれなりに大変かもしれない。

だが幸いコチラは一人じゃない、ディエンドはすぐにカードを発動、ライオ達を召喚して響鬼へ向かわせる。

 

 

「真っ向から突撃。馬鹿ですか? 何を聞いていたのやら」

 

 

響鬼は正面から来るライオ達に光線を射出、三体全員を盗んでみせる。

 

 

「フフ……!」

 

「!」

 

 

だが笑うディエンド、嫌な予感がする。

響鬼はライオ達の力を発動させてみるが、やはりと言うべきか何も力は発揮されなかった。

どうやらディエンドが召喚したライダー達は文字通り空っぽの存在、偽りの身体など実体が無いのと同じだ。

 

 

「厄介な――!」

 

 

ならばと響鬼は音撃棒を構えて走り出す。

直接殴るまで、ディエンドの射撃を弾きながら足を進めていく。

そこで視界に移るマゼンダ、響鬼は舌打ちをして音撃剣を発動させた。

 

 

「変身ッ!」『カメンライド』『クウガ!!』

 

 

変身を重ねるディケイド、そして幻を打ち出していくディエンド。

どうやら響鬼は対象を一つずつしか盗む事ができない様で、二人とは相性があまり良くない様だ。

しかしソレはディケイド達にとっては好都合、クウガとなったディケイドは拳に力を込めて響鬼を殴りつける。

 

 

「焼けろッ!」

 

 

ふいに鬼火を発射。

だが――

 

 

「フッ!」

 

 

地面を転がって鬼火を交わすディケイド、同時にディエンドはブラストのカードを発動させて響鬼を狙った!

だがブラストならば響鬼は既に持っている。彼もまた無数の銃弾を発射して応戦、さらにディスクアニマルをディエンドに向かわせて妨害を試みる。

 

 

「おっと、兵隊ならぼくの方が優秀かもね」『カメンライド』『ガタック!』『サソード!』

 

 

召喚される二体のライダー。

どうやらクロックアップを発動する事ができるらしく、サソードは剣で、ガタックはカリバーでディスクアニマル達に激しい攻撃をしかけていく。

 

 

「忌々しい物です――ッ!」

 

 

響鬼はディケイドに向かってドラグセイバーを投げ、同時にディエンドに向かって爆裂鼓を投げる。

音撃の爆弾は広範囲に渡り、ガタックとサソードを眼前で停止させた。もう少しで響鬼に攻撃できたもののあと一歩が足りなかった様だ。

響鬼は鬼火でガタック達を焼き尽くすと、次にディケイドへと視線を移す。

 

 

『ファイナルアタックライド』『ククククウガ!』

 

「おっと」

 

 

いつの間にかタイタンフォームに変わっていたディケイド、ドラグセイバーを受け止めておりタイタンソードに練成。

そして必殺技であるカラミティタイタンで響鬼を狙う。しかしその瞬間に響鬼は手をかざしてクウガを盗んだ。

 

 

「うっ!」

 

「言ったでしょう? 無駄だってね!」

 

 

同時にカラミティタイタンを発動する響鬼、ディケイドは何とか身体を反らす事には成功したが装甲をかすってしまう。

飛び散る火花、怯むディケイドに響鬼は蹴りを入れるとその勢いでディエンドへと視線を向ける。

 

 

「は?」『カメン――』

 

「そちらも、頂きます」

 

「ッ!」

 

 

ディエンドが何かを発動した瞬間にそれが消える。

厄介な、ディエンドは地面を転がり再びカードを構えなおすが――

 

 

「無駄ですよ!」

 

「ちッ!!」『カメンラ――』

 

 

響鬼はただディエンドの動きに手を合わせればいいだけだ。

連続で光線を発射する事によって実質的に彼の動きを拘束する。

ディエンドがカードを入れるタイミングが遅れればディエンド自体を盗む事も可能である。

 

 

「させるかよッ!」『カメンライド』『ブレイド!』

 

 

だがもちろんそんな事をさせる訳には行かない。

回復したディケイドはブレイドに変わるとブッカーを構えて切りかかる。

気づいていないのかノーリアクションの響鬼。だが手加減する意味もない、ディケイドは思い切りブッカーを響鬼に――

 

 

「分かっていると思いますが、盗んだ物は使い捨てじゃないんですよ」

 

「しま――ッ!」

 

 

金色のオーラが発生、それは電王のアックスフォームの力だ。

ブッカーは直撃してくれたがダメージは少ない。それだけでなく響鬼は身体と右手こそディエンドの方へ向けていたが、左手はディケイドの方へ構えている。

 

 

「まさか――ッ!」

 

「フフフ、腕は一つだけじゃない。当たり前ですよね?」

 

 

ブレイドの身体が消える。

やられた! 光線は両手から発射できるのか。ディケイドはすぐにキバへフォームチェンジすると響鬼から距離をとる。

速度は一瞬。そして手と言う動きやすい場所から放たれ、かつその数は二。さらに響鬼自体の動きにも注意しなければならないと言う状況。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

ディケイド、ディエンド、共に理解する。

正攻法では響鬼には、シーフドーパントには勝てないと。

どれだけ抵抗しても盗む事から逃げるのは難しい、その状態でダラダラと戦闘を長引かせればいずれコチラが破綻する。

しかも響鬼に近づけば近づく程盗まれやすくなるのは必須、かと言って近づかなければ大きなダメージを与える事も難しい。

 

 

「何か手はないか――ッ」

 

「………」

 

 

ディケイドとディエンドは自然と攻撃を止めて回避行動を主体にする。

その中で抵抗するディケイドとジッと響鬼を見るディエンド、何度かカメンライドを発動しようとしたが直ぐに盗まれてしまった。

それを繰り返した所で、ふとディケイドが口を開いた。

 

 

「海東、気づいたか?」

 

「ああ……アイツ、とりあえず反射的に盗んでるね」

 

 

ディエンドがカードを構えた瞬間に響鬼はソレを盗む。

ディケイドも攻撃の瞬間に盗む。それを繰り返す響鬼、彼は回避できそうな攻撃も盗もうと動いている。

 

ディエンドはいい考えを思いついたとディケイドに持ちかけた。

自分の手の内を晒すのはディエンドにとってあまりいい事ではないが、このまま負けるよりはマシだろう。

ディエンドは響鬼の光線をかわしながらディケイドに作戦を伝えた。

 

 

「なるほどな、でもいけるのか? 結構シビアだぞ」

 

「いける」

 

「根拠は?」

 

「僕は世界一のトレジャーハンターだから」

 

 

なんという暴論、だがそれでもディエンドには絶対の自信が満ちている。

これほどまで適当に、かつ確実に自分の実力を信じている者をディケイドは見た事が無かった。

しかしその彼がいけると言うのならイケるのだろう。尤も、だからといえ問題はそれだけではない。

 

 

「あとはアイツにうまくダメージを与えられるのかだけどね……」

 

「いける」

 

「根拠は?」

 

「俺は破壊者だ」

 

 

答えになっていない答え。

だがそれでもディケイドには絶対の自信があった。

これほどまで非論理的に、かつ信頼をのせる力をディエンドは見た事がなかった。

 

 

「「………」」

 

 

たがいに鼻で笑うディケイドとディエンド。

どうやら何気ない部分が一致してしまったらしい、ならば――決めるしかない。

 

 

「いくぞッ! 海東ッ!!」『カメンライド』『ファイズ!』

 

 

紅い閃光に包まれるディケイド、同時に手を伸ばした響鬼。

その瞬間を見てディエンドはベルトに備えられているボタンをタッチする。

 

 

『Clock Up』

 

 

聞き覚えのある音声、同時にディエンドは超高速の世界に足を踏み入れる。

その技は紛れも無いクロックアップ、カブト系のライダーが使うものと同一だ。

何もソレを使えるのは彼らだけではないとディエンドは笑ってみせる。尤も、響鬼はソレを見る事すら叶わないが――

 

 

「くがぁああああッッ!!」

 

「フフ――ッ!」

 

 

ディエンドは以前訪れた世界でクロックアップシステムを盗んでいた。

ソレをベルトに組み込み、結果彼はクロックアップを使える様になったのだ。

だがカブト系ライダーと違って制限時間は短いもの、ダメージは与えられたが決定打が無いまま時間切れとなる。

 

 

「やってくれましたねッ!!」

 

 

音撃棒から火炎弾を放つ響鬼。

防御しようとディエンドが構えると響鬼は同時にとび蹴りで飛んでいき、強引にディエンドの体勢を崩す。

 

 

「俺を忘れるなよッ!」『アタックライド』『オートバジン!』

 

「無駄な事を! すぐに盗って終わりですよ先輩!」

 

 

腕を構える響鬼、ご丁寧にまっすぐ飛んでくるオートバジンとディケイドに呆れさえ覚える。

自分の力を把握しておきながらソレか? そう響鬼は嘲笑するがディケイドは止まらない、軌道を変えない。

 

 

「やれるなら、やってみろ――ッ!」

 

 

ライドブッカーに手をかけるディケイド、だがそれよりも早く響鬼は光線を発射してディケイドが手にかけたカードを奪う。

それはアクセルのカード、超加速で攻撃するつもりだったか。響鬼は鼻で小さく笑うとアクセルのカードを投げ捨てる。

これでディケイドは策も尽きたと言う所――

 

 

『ファイナルアタックライド』『ファファファファイズ!』

 

 

同時に聞こえる必殺技を発動する音声、見ればディケイドはファイズエッジを構えているところだ。

カードを奪われゴリ押しに切り替えたか、だが甘いと響鬼は笑う。あの距離では遅すぎるからだ。

 

 

「もらいま――」

 

 

その瞬間、響鬼の視界に入る影。

 

 

「!」

 

 

鬼が奪ったのはファイズエッジではなくオートバジンだった。

バジンは響鬼とディケイドの間に入り、必殺技が奪われる事を避けたのだ。

やられた! 響鬼は手元にやってきたオートバジンを蹴り飛ばして前を見る。すると眼前に迫る紅い閃光が見えたではないか。

 

 

「くそッ!」

 

 

すぐに手を伸ばしてそれを奪い取る。

危なかった、もう少しで――

 

 

「うぉりゃああああああああああああああッッ!!」

 

「ッ!」

 

 

ディケイドが次にとった行動はファイズエッジを投げる事だった。

回転しながら自分に向かってくるエッジ、響鬼はもう一つの手でエッジを盗む。

二段に渡っての攻撃だったと言う訳か、なんとか防げたが――

 

 

『ファイナルアタックライド』『ファファファファイズ!』

 

「ッ!?」

 

 

まさか三段!? 響鬼は自らの身体に命中するポインターを見て悟る。

ロックを多用するファイズの必殺技は一つずつしか盗めない自分にとっては鬱陶しい事他ない。

飛び上がるディケイド、だが焦ることは無かった。確かにポインターのロックは厳しいが手の平をディケイドに向ける事くらいはできると。

 

 

『アタックライド』『ブラスト!』

 

「グッッ!!」

 

 

しかしそこへ降り注ぐシアンの銃弾達。

まただ、響鬼は怒りで歯を食いしばる。このままでは確実に当たる!

だが一発相手の必殺技を受けてもまだ平気のはずだ、攻撃の後に態勢を立て直せば――

 

 

『ファイナルアタックライド』『ディディディディエンド!!』

 

「どこまでも邪魔なぁぁ……ッ!」

 

「フフフ、褒め言葉としていただくよ」

 

 

青い光弾を放ち飛び上がるディエンド、ブルーストライクの準備動作である。

 

 

「タァアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「ハァァアアアアアアアアアッッ!!」

 

「―――ッッ!!」

 

 

青と赤、クリムゾンスマッシュとブルーストライクが同時に決まり響鬼は大きく吹き飛ばされる。

これはまずい、予想以上に大きなダメージを受けてしまい響鬼は明確な焦りを覚えた。

なんとかアックスフォームの防御を重ねる事で防いだがそれでもクリムゾンスマッシュの追加ダメージが大きい。

 

 

(油断をすればやられる! 私の能力は彼らにとって不利か――ッッ)

 

 

Φの紋章を叩き割りながら彼は焦りに体を震わせる。

次にもし必殺技を受ければ確実に負ける。響鬼はなんとしてもココから全ての攻撃を封殺しなければならない。

おそらく向こうは追撃をしかけてくる筈だと、響鬼はディケイド達を見た。

するとやはりディエンドが何かを仕掛けようと動いている所ではないか。

 

 

(させるか――ッ!)

 

 

響鬼は倒れながらも両手をディエンドに向ける。

そして確かに二つ何かを盗んだ、これでヤツの攻撃は封じられると響鬼は思ったのだが。

 

 

「――どうやら、ゲームセットの様だね」

 

「……ッ?」

 

 

バキンと音がして反射的に響鬼は手を見た。

ディエンド達はカードを使って攻撃していた、だから盗んだ物は先ほどのディケイド同じくカードだとばかり思っていたのだが。

 

 

「―――」

 

 

あったのは紅い玉、そして青い小さな包み。

青いのは全く分からないが、紅い玉は響鬼が良く知っているもの。

そう、それは――

 

 

「グッッ!!」

 

 

炎と衝撃に包まれる響鬼、間違いなくそれは爆裂火炎鼓。

何故これをディエンドが? これは紛れも無い自分の力、本物の相原我夢から盗んだ力なのにッッ!

 

 

「!!」

 

 

盗む、そして響鬼に走る衝撃!

そうだ、盗む。そのタイミングが一度だけあったと響鬼は理解する。

クロックアップ、あの時ディエンドが加速したのは攻撃の為なんかじゃない。自分の腰にあった爆裂火炎鼓を奪う為だったと。

 

 

「ッ!?」

 

 

そしてこの爆発もまた攻撃の為ではない。

響鬼が盗んだのは二つ、それは先ほどの二段階攻撃を危惧しての行動だった。それが、こんな結果を招くとは――

爆裂火炎鼓が破裂した事で、隣にあった青い小包が破けた。そして中にあった砂が舞い散った。

 

 

「!!」

 

 

それは、ディエンドが"麓子から盗んだ青い小包"。

アキラを連れた麓子と鉢合わせになったあの時に、海東は事情が分からずともしっかりと麓子が持っていた青い袋を盗んでいた。

何か綺麗なものだと興味が湧いたのだ、それを今まで持っていたのだがディエンドのカードの一つアタックライド・サーチでそれが――

 

 

「睡眠砂だと気づいた訳さ!」

 

「なっ!?」

 

「本当にお前は手癖が悪いな」

 

 

響鬼はすぐに呼吸を止めるがもう遅い、仮面を超えて砂が体内に吸収されるのを響鬼は悟った。

これは普通の砂ではない、砂のエキスパートである砂かけ婆が作り上げた代物だ。

多少の毒ならば効かない彼であっても、コレはそうもいかない。

 

 

「うぐ……ッ!」

 

 

強烈な眠気が響鬼を襲う。

彼はドーパント。ガイアメモリの副作用で既に睡眠欲は失われているが、ソレはイコール眠らないと言う事ではない。

全身を襲う強烈なだるさ、やられた。してやれられた! この邪神の使いが一端の盗賊風情に遅れを!?

 

 

「そんな事が――……ッッ!!」

 

 

瞬間肩に走る衝撃、ディエンドはふらつく響鬼に連続で銃弾を打ち込んでいく。

よろける響鬼にもう一発、さらに後退していく響鬼にもう一発。

前進するディエンド、火花を散らしながら後退していく響鬼、抵抗しようにも既に響鬼にはそこまでの気力は存在していなかった。

彼は、どれだけ強者を偽ろうが所詮ただの人間なのだから。

 

 

「そんな……ッ! 僕は邪神を使って――! も、もっとメモリ――ッ!!」

 

 

そこで響鬼の眉間にディエンドライバーが突きつけられる。

手を伸ばそうとする響鬼、しかしディエンドはその手を蹴り飛ばして軌道をずらした。

そして打ち込む銃弾、彼は小さく響鬼の耳元でつぶやく。

 

 

「言ったはずだよ、トレジャーハンターは一人でいいとね」

 

「―――ッ」

 

「もういいよ、君。さっさと消えたまえ」

 

 

ふざけるな! そう叫びながら響鬼は音撃棒を振り回す。

しかしディエンドはクロックアップを発動しており、既にディケイドの隣まで戻ってきていた。

むなしく音撃棒を振り回す響鬼にディケイドとディエンドは銃弾をプレゼントする。倒れる響鬼、邪神の使いとしてこの地に降り立った自分が――

強力なメモリを与えられた自分が、まさかこんな所で負ける!?

 

 

「は……はは――ぼ、僕を倒しても邪神は死なない……!」

 

「?」

 

「お、お前達は……邪神の指揮官である僕を――僕を倒そうと……それはどんなに罪深い事なのか――……」

 

 

響鬼はついに力なく膝を着く。音撃棒も手から零れ落ちる様に、そして彼は途切れ途切れに言葉を紡いでいった。

どうやら自らがここまでという事は理解できるらしい、納得はいかないが現実だ。

 

 

「先輩も……海東さんも――死ぬ。アキラさんも……皆、皆邪神に殺される――」

 

 

だから、と響鬼は顔を上げて言った。

 

 

「後悔しながら、絶望しながら、悲しみ、苦しみなが――」

 

 

だが、最後の言葉を紡ぐ事は許されない。

なぜならば破壊者がソレを破壊したからだ、二人は同時に金色のカードを構えて一言。

 

 

「うるせぇ」『ファイナルアタックライド――』

 

「うるさい」『ファイナルアタックライド――』

 

「!」

 

「「黙ってろ」」『ディディディディケイド!』『ディディディディエンド!』

 

 

ディエンドが銃を向けるとその軌道をカバーするごとく、円形状にホログラムカードが無数に並んでいく。

そしてディケイドの前には五枚のホログラムカードが並び、ルートを確保した。

飛び上がるディケイド、狙いを定めるディエンド。

 

 

「タァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「消えたまえ!!」

 

 

ディケイドのとび蹴り、ディメンションキック。

そしてディエンドの巨大なレーザー、ディメンションシュートが響鬼に炸裂する。

防御はしない、できない、まさに直撃だろう。響鬼は大きく吹き飛び我夢に姿を戻す!

 

 

「ぁ――ッ! ガハ……ッッ!」

 

 

そして――

 

 

「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

爆発、排出される人間と砕け散ったシーフのメモリ。

それだけではない、シーフが砕けた事でディケイドのカードが再び元に戻る。

それはつまり、"盗まれた物が元に戻った"という事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音がする。

何かがぶつかりあって、誰かが叫ぶ。

 

はじめは何ともない、ただのクラスメイトだった。

大人しそうで特に仲良くも無かった。それに、これから先彼と仲良くなる事なんてないと思っていた。

なのに気がつけばいつも彼が隣にいた。私も笑って、彼も笑って――……

一緒にいると落ち着く。そして、徐々に意識して――

 

 

「………ぁ」

 

 

私は、彼の事が――

 

 

「――――」

 

 

今、目の前で戦っている彼が――

 

 

「アスムくんッ!!」

 

「「!!」」

 

 

アキラは意識を取り戻し、同時に何が起こっているのかを把握した。

諦めてしまった自分、絶望してしまった自分、その深い闇をいつだって彼は払おうとしてくれる。

だからアキラは彼の名を叫んだ。彼に向かって、手を伸ばした。

 

 

「これは……!」

 

 

ぬらりひょんは思わずアキラに視線を移す。

つまりそれは攻撃の手を止めてしまった事と同じ、それは今のバースにはあまりにも大きなチャンス。

それを理解して再び攻撃を行おうとぬらりひょんは構える。しかし、やはりもう遅い。今のバースには先ほどと違う装備が増えているではないか!

 

 

「クッ!」

 

 

しかも一つの刀をバースはしっかりと掴んでいた。

力が強い、これは明らかに感情が左右する事で出せるもの。

アキラの一言がバースにこれほどの力を与えると言うのか!?

 

 

「アキラさん! 僕は――ッッ!」『BLEST CANNON』

 

 

胸に装備されるのは巨大なキャノン砲、バースは残りのメダルを全てブレストキャノンにつぎ込んでいく!

それは最後にして最大の攻撃を放つと言う事、ぬらりひょんは片方の刀を諦めてもう一方でバースの首を狙う。

しかしバースも既に準備は終わった様で――

 

 

「ブレストキャノンッ! シュートッッ!!」

 

「ぬぉオッッ!!」

 

 

キャノンから巨大なレーザーが発射される。

防御をとったものの、ぬらりひょんは大きく押し出されていく!

想像以上にダメージが大きかった、ぬらりひょんはすぐに体勢を立て直すため一度バースから距離をとる。

同時に立ち上がるバース、そのまま彼は踵を返してアキラの所へと向かった。

 

 

「あ……アスムくん――ッ! よかった無事で……ッッ」

 

「あはは、何とか――」

 

 

バースのエネルギーを全て注いだ為か、変身は解除されてアスムの姿が現れる。

無事とは言えど全身から出血が見られ、その姿にアキラは涙を浮かべた。

救う筈だったのにいろいろな人を傷つけて、自分も迷って――

 

 

「アキラさん……」

 

「え?」

 

 

アスムはアキラの手を握るとまっすぐにその瞳を見る。

そしてアキラが気づく感触、アスムはアキラに何かを握らせたのだ。

何を? そう聞くアキラだが、アスムはその言葉に関係なに事を言ってみせる。

 

 

「アキラさん……一つだけ、聞かせてください」

 

「え……?」

 

「生きたいですか?」

 

「―――ッ」

 

 

突き刺さる言葉だった。

彼に本当の事を言うべきなのだろうか? それとも別の答えを言うべきなのだろうか?

アキラはそれが決めきれずに沈黙してしまう。生きたいかどうか、その質問はあまりにも複雑で難解だ。

死んだ方がいいと言う事と、死にたいは違うのだから――……

 

 

「僕は、貴女が好きです」

 

「……!」

 

「だから、アキラさんと別れたくない。君ともっと一緒に……いたい」

 

 

それに……とアスムはこの世界にいるドーパントの事をアキラに告げる。

恐らくアキラが生贄として役割を果たしてもこの世界は――

 

 

「―――ッ」

 

 

変な事を言ってごめんなさいとアスムは頭を下げた。

複雑な表情を浮かべるアキラに、最後の言葉をかける。

 

 

「今、アキラさんが持っているのは生きる事を勝ち取る為の力」

 

「生を……勝ち取る?」

 

「はい。それを使うかどうかは――アキラさんが決めてください」

 

 

そう言うとアスムは振り返りぬらりひょんを睨む。

向こうは先ほど全力を受けたと言うにも関わらず涼しい顔をして刀を構えていた。

どうやら空気を読んでもらっていたらしい、すぐに攻撃すればよかったものを――

 

 

「話は終わったか」

 

「はい、申し訳ないです」

 

 

一応礼を言ってアスムは頭を下げた。

様子を伺うぬらりひょん、もしこれ以上変身できないのであればもう戦う必要は無い。

悪いが眠ってもらおうと、ぬらりひょんは考える。

 

 

「さて――続きを始めましょうか」

 

「………ッ」

 

 

そう言って少しだけアスムは笑う。

まだ戦うつもりなのか、ならば変身ができるのか、はたまたただのハッタリなのか――?

それはアキラも同じ、心配そうにアスムに声をかける。しかし彼はしっかり大丈夫と断言した。

確かにバースにはもう変身できないのは事実、しかし――

 

 

「頼れる先輩が、いるもので」

 

「ッ?」

 

 

アスムはそう言うと自分の服を見た。赤と紫の胴着だったものが、以前の服装に変わっている。

そして聞こえる何かの鳴き声、突如として茜鷹、瑠璃狼、緑大猿が現れてアスムの周りを動き回る。まるで主人の帰還を喜ぶ様に。

アス――夢はポケットから変身音叉、音角を取り出してぬらりひょんに見せた。成る程と刀を構えるぬらりひょん、どうやら彼の闘志は死んでいないらしい。

ならばコチラも答えるだけだと、ぬらりひょんは走りだした。刀を投げてもよかったのだが、あえて。

 

 

「変な事聞いてごめんなさい。僕は大丈夫、だから……君の答えをしっかりと聴かせてほしいんだ」

 

 

考える時間は――

そう言うと少年は音角を弾いて音を発生させる。

 

 

「僕が稼ぐから」

 

「我夢くん……ッ!」

 

「変身――!」

 

 

相原我夢は音角を額にかざした。

身を包む紫炎、そしてその炎が弾かれた時にはすでに音撃棒を構えて走りだしている所だった。

 

 

仮面ライダー響鬼として。

 

 

 

 




ディエンドの高速移動は、この作品ではクロックアップって事に。

若干謎だよねアレw


はい、じゃあ次は土日のどっちか予定。
もしくは来週。

ではでは
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