人はその日を、絶望の日と呼んだ。
「貴様! 服装の乱れは精神が乱れている証拠だ!」
その言葉と共に鞭を叩く音が響く。
見ればそこにはみるからに軍人の様な者が、部下と思わしき者は男に謝ると報告を続けた。
男はひとしきり情報を聞き終わると結構だと言って踵を返した。さあ、会議の始まりだ。しかし男の隣には不自然な空白が――
「博士は欠席か」
「はい、どうやら研究の方が大詰めらしく」
仕方あるまい。
そう思いながら男は、いや男達はその場に足を進めていった。
「皆さまッ!」
薄暗い室内。暗く、冷たく、どこか狂気すら感じられるその空間。
そこに今多くの意思ある存在が集まっていた。どうやら今から何かの会議が始まるらしい。
一言で言うなればソコは会議室。中央には円形の巨大なテーブルが配置されており、その中央には"黄金の大鷲"たる紋章が刻まれていた。
金色の大鷲はその巨大な翼を広げており、眼は赤く光っている。まるで血の様に禍々しくもそれは赤黒く輝いていた。
椅子には同じく多くの人間(?)が座っている。
どうやら何かしらの組織や、集団のトップだと言う事が最初に説明されていた。
トップ達の後ろでは部下や眷属が立っており、重々しい雰囲気をより強調させている。
「今宵はこの国連会議にお集まりいただき、本当にありがとうございます!」
座っていた重鎮であろう人物たちは一勢に視線を彼女へと向ける。
人の言葉を話しているが、その容姿は普通とは言いがたいものだった。
彼女は集まっていた者達へ感謝の意を述べると、深い礼を行なう。
「私は、進行を任されました
大鷲が刻まれたベルトをしていたのは蜂女、会議の進行役だと言ってみせる。
そしてもう一人、彼女とは対照的に気の抜けた声をあげる女性が。
「はぁーい! そ・し・て! アシスタントのお姉さんでーす!」
黒と白が目立つ奇抜な衣装に身を包むのは『
彼女は重要なゲスト達がいるだろう場でおいても間抜けに笑って見せ、おまけに両手を振って笑顔でアピール。
アシスタントと言え、それは完全に子供向けのヒーローショーに出てくるお姉さんだ。
「では、早速本題に移らせていただきます!!」
蜂女は笑みを浮かべたまま一歩後ろへと下がる。
彼女は自信に満ちた声を上げ、ゲストに怯む事無く言葉を並べていった。
「まずは既に協力の意思を示していただき、統合済みの組織を説明させて頂きます!」
その言葉と同時にホールに映像が出現。
計三つの巨大なモニターに映し出されたのは一見すれば人間にしか思えない人物達だが――
誰もが、人間ではないと言う事くらい理解していた。
「モニター越しになる事を申し訳なく感じる」
そう言うのはストリート系ファッションに身を包んだ若者。
椅子にどっかりと座っておりバックにはヒップホップ系の音楽が聞えてくる。
本来この様な場では慎むべき場所なのだろうが、それもまた態度のひとつなのか……?
「皆様には……我らの意思を感じていただけたかと――」
次のモニターには僧侶の様な黒服に赤い仮面をつけた老人が。
背後はただ闇が広がるのみ、彼の空間が闇その物と言ってもいいかもしれない。
「寛大なゲスト方たちには……寛大なお答えを期待したいものだわ」
三つ目のモニターにはチャイナドレスを着た、妖艶な美女。
立ち振る舞いがますます怪しげに見えるのは気のせいだろうか?
現れた三人、彼らは最後にゲスト達へ感謝の意を述べる。どうやらゲストたちに何か交渉を行なっていたらしい雰囲気である。
「こちらの方々は元"デストロン"幹部の皆様です。キバ男爵、ツバサ大僧正、ヨロイ元帥――」
敬称を略し説明を行なっていく蜂女。
そして最後にと、このホールにいる男を指し示した。一同の視線を感じて男は一歩前に出て礼を行なう。
古代の戦士が纏う様な甲冑と、蠍をイメージした兜、手には会議に必要ないであろう斧と盾で武装、見れば短剣も潜ませている様だ。
そんなグラディエーターの様な男、それこそが――
「元デストロン代表、ドクトル
ドクトルと言う部分に矛盾を感じざるを得ないその男、彼の後ろにもまた違和感を感じさせる程可憐な少女が立っていた。
おそらくデストロンの、いや今現在の組織の部下たる位置づけなのだろう。少女は、名をクルスは目を輝かせて会議の場を見ていた。
右隣にいる彼女の部下、チェーンソーリザード。左隣にいる彼女の部下、シザースジャガーも光栄だと胸を張って笑みを浮かべている。
「続きまして我々の組織に絶大な科学、資金を提供してくださった"財団"の皆様でございます!」
拍手がその"組織"に向けられる。
またも人間にしか見えない容姿、彼らは真っ白なスーツが特徴的だった。
いや彼らは正真正銘の人間なのかも……しれないが――。財団と呼ばれた組織の中で、椅子に座っている人物は目の前にあるマイクをとる。
「どうも、皆様。元財団代表のヒムロと申します」
仮面の様な笑みを浮かべて挨拶をおこなうヒムロ、彼の後ろでは側近の秘書である
この会議はどうやら組織同士が互いに協定を結び、かつ一つに統合される為のものらしい。
彼ら財団は、他の組織よりも早く蜂女達の組織と合体した経歴がある。
「我々財団はガイアメモリを始め、サイボーグソルジャーの研究を続けてきました」
その途中で大きな協力をしてもらったと彼は笑う。
おかげで研究は順調に進み、人の悪意を増大させる『ガイアメモリ』を本格的に精製できるレベルに達しようとしていた。
さらに元々あるサイボーグソルジャーと言う物も研究として行なっていると。
「では次に――」
そこで少し蜂女はタメる様にして、もったいぶる様に彼女へ視線を向ける。
釣られるようにして視線を移動させるゲスト達、そこにいたのは派手な格好の女性だった。
王冠の様なアクセサリーにジャラジャラと宝石をつけた服、生地もまた銀、赤、青、金、緑、茶色、紫などカラフルである。
「こちらは、伝説と言われた大錬金術師が一人、ゲレ様にございます!」
ゲレと呼ばれた女性はニヤリと笑い一同に礼を行なう。
紫色に染まった唇が怪しくつりあがり、彼女はゆっくりと口を開く。
「欲望に塗れた意思、我はその点に興味を抱いている。元"グリード"代表、ゲレだ」
彼女が手をかざすとそこからジャラジャラと音を立ててメダルが。
ゲレと呼ばれた者は錬金術師だと言った。彼女は欲望に興味を抱き、そこへ自らの存在を確立させた。
彼女の背後には鵺ヤミーと呼ばれる化け物が立っている。これがヤミーと呼ばれる存在。
「続いて、こちらのモニターをご覧ください!」
またも現れるのは巨大なモニター。
そこへ映ったのは眼帯をしている男だった、背後に見える景色から考えると牢屋に彼はいるのだろうか?
男はゲスト達に礼を示すと、同じくこの様な場所から申し訳ないと謝罪をおこなう。
さらに予想通りそこは牢屋、彼は今現在捕まっている姿を見せて情けないと。
しかし今現在彼は力を取り戻していない為、この様になっているらしいが――
「私は"シェード"創始者、
当然ホールにはシェードの顔ぶれも訪れており、彼らはどうやらナンバーを名前としているらしい。
今訪れているのはナンバー3、5、6の様だ。顔に傷を負っている青年ナンバー3、見るからに科学者と言うナンバー6。
そして気品と悲しみを見せている青年、ナンバー5。
「はぁーい! そしてぇ、お姉さん達"オルフェノク"でーす!」
そう元気に手をあげてニッコリと笑うスマートレディ、彼女は椅子の一つに座っている子供に近寄って行った。
そう、どこからどうみても普通の子供にしか見えない者が会議に参加している。おそらくこの子供も普通では無いのだろうが。
「はじめましてぇ、オルフェノクの神たる
スマートレディは何も喋らない彼の背後に隠れ、アフレコをおこなう。
さらに手を掴みブンブンと振るジェスチャーさえ加えてみせた。しかしそれでも子供達は無言、うつろな瞳で人形の様に座っていた。
そこでまた声をあげるのは蜂女、どうやら最後は彼女達の基盤となる組織の様だ。彼女が声を上げると5人の人影が現れる。
「地獄大使でございます!」
三葉虫のような模様が入った黒い甲冑に身を包んだのは
彼は集まってくれたゲストに礼を言うと後ろに下がる。さらにこの男、顔が髑髏の様になっているではないか。
それでも生命を持つと言う事は、それだけの技術があるのか、それとも――?
「続いて、ゾル大佐!」
眼帯をした軍人と言う風貌のゾル大佐。
軽い自己紹介をおこなった後にパフォーマンスとして彼は大きく鞭の音を響かせる。
「ブラック将軍!」
その名の通り黒と赤が目立つ兜や服装の、同じく軍人スタイルの男。
眼の周りにはクマが見え、同じくゲスト達に礼を言ったあと顔を少し痙攣させるように動かしていた。
「
巨大な二対の角が特徴的な兜、黄金の甲冑、血の様に赤いマント。
魔人提督はゲスト達に礼をおこなう。
「元BADAN代表、暗闇大使!」
地獄大使と似ている風貌の暗闇大使。
違う点があるとすれば甲冑が少し大きく、色は金である。補足の説明が入るが彼は地獄大使の従兄弟らしい。
そして一つだけ空席がある事を蜂女は補足する。
「そこは死神博士の席に。しかし訳あってこの場にこれない事を大変残念に思っているとの伝言です!」
これですべての幹部説明が終わった様だ。
『―――』と言う組織に財団だのオルフェノクだのシェードだのが融合して今に至ると言う事。
スマートレディはニコニコ笑いながらゲスト達に向かって手を振った。
「みんなの答えが聞きたいなー! 断られたらお姉さん悲しくて泣いちゃうかも! シクシク……」
手で眼を押さえて嘘泣きをおこなうスマートレディ。
そんな彼女を無視する様にして前に出るのは地獄大使だ、彼もまた鞭を振るい声高々に言葉を放つ。
黄金の大鷲がモニターに映し出され禍々しく光を放ち、その存在を知らしめる。
「我々の唱える未来とは、優れた者達を動植物の特性を持った怪人に改造し――」
世界を、物語を、そして全てを――
「神なる世界を支配する事であるッ!」
その瞬間ホールの後ろに控えていた多くの影が一勢に咆哮とも言える歓声を上げる!
世界を揺るがす程の声達はそれだけの戦力である事が伺えた、同時にゲストの中から聞こえる拍手。
それは彼らがこの組織の唱える未来に賛成の意を示したと言う事だ。
「"ゲドン"代表、十面鬼ユム・キミル。我らは『―――』に賛成です」
黄金の装飾品に身を包んだユム・キミル。
文字通り装飾品の中には仮面があり、体に顔がいくつも確認できた。
「世界を支配するという未来、素晴らしい」
彼の後ろには野獣の瞳をギラギラと輝かせた怪人が多く見える。
これが獣人と呼ばれる彼の戦力であった、そして次に別の所から声が――
「俺達――!」「アタシ達――!」
「「せーの……」」
「「"魔化魍"も賛成です!!」」
髪型がアシンメトリーの為、左目が隠れている青年、
同じく髪型は一緒だが分け目が逆の為に右目が隠れている女性、
「魔化魍、妖魔忍軍・
テーブルにどっかりと足を乗せて笑うヒトツミ。
これも彼女のスタイルか、誰も何も言わず次の人物へ視線を移動させた。
「"デルザー軍団"代表、ジェネラルシャドウ。我々も賛成しよう」
透明な球体のカバーに顔を隠し、宇宙服の様な白い風貌に身をつつむのはデルザー軍団代表であるジェネラルシャドウ。
彼の隣には側近であるヘビ女、同じく副隊長であるデッドライオンが控えていた。さらにその後ろには強力な覇気溢れる者達が。
鋼鉄参謀、荒ワシ師団長、ドクターケイト、ドクロ少佐、岩石男爵、狼長官、隊長ブランク、マシーン大元帥、磁石団長、ヨロイ騎士と言う面々が控えている。
「"
アウンノウンとグロンギの複合組織である神使。
代表のレギアの背後には四体のエルロードと呼ばれる天使が立っている。
彼らは神を尊び、故に愛す。当然の事でありその為には――
「神を冒涜する人を、すべて抹殺する」
神を愛するが故に、人を憎む彼女達の恐ろしさや量りきれるものではない。
愛を憎しみに変え、神が生み出した人を全て殺すと彼女達は宣言する。そもそも彼女達の言う神とは何なのか?
「アテンション! アテンション! ジェネラル・ジャーク! ジェネラル・ジャーク!!」
ホールを飛び回り声を上げるはチャックラムと呼ばれた小さなロボット。
そして彼が最終的にたどり着いた場所には――黄金の仮面にジャラリと音を立てる杖、彼の名はジャーク。
"クライシス帝国"代表、ジャーク将軍である。
「クライシスもまた、『―――』に協力しよう」
背後には幹部たちの姿もまた確認できる。
怪魔異生獣 牙隊長ゲドリアン。怪魔妖族 諜報参謀マリバロン。
「愚かな人間どもを全て駆逐する時がやってきたのだ!」
怪魔獣人 海兵隊長ボスガン。
そしてクライシス帝国軍大佐ダスマダー、彼は無言でホールに集まるゲストや幹部たちを観察していた。
そうしているとまた別の席から声が。
「面白い話だ、"カーシュ"も喜んで協力させてもらおうかね」
重い雰囲気が続いた中でその男、ゼイビアックスは軽い笑みを浮かべる。
しかし彼の後ろには大量の兵士達、レッドミニオンが控えている。彼も一つの組織であるカーシュ代表、それを考えるに彼もまた相当な存在なのだろう。
「我が"
銀河王と名乗る存在は勢い良く立ち上がる。
なびくマント、彼の背後には無数の光がまるで星の様に瞬いていた。
それは一つの銀河。彼の後ろでは組織名が示す通り赤と青、二体の機械兵が。さらに後ろでは星の民、"ゾディアーツ"の姿が見える。
赤いほうの機械兵は、どことなくフォーゼに雰囲気が似ている気がするのだが――。
「ええ、とても素晴らしいお考えです。私も神を名乗る神なる世界は気に入らない、喜んで協力します」
メガネをかけ、白いスーツを着ているのは"アルカナ"代表フォーティーン。
一見すれば口調や振る舞いから温厚な紳士に見えるが、彼もまたこの巨悪に統合を示す人物だ。
にも関わらす背後には彼を敬う従者達が見える。
「流石はフォーティーン様だ! なんと慈悲深い事か――ッ」
「フォーティーン様はまた新たなる意思をお示しになられた!」
「ああ、あの神々しいまでの決断力。この世に正義があるとすればソレはまさにフォーティーン様以外にはありえないだろう……ッ!」
異常なまでの信仰心、フォーティーンは従者達を落ち着けると意味深な笑みを浮かべて着席した。
続いて一同の耳に聞こえるのはカラスの鳴き声。視線の先にはモノクルをつけた老人が、そしてカラスはその肩に止まる。
「"ジンドグマ"代表テラーマクロ。意思は『―――』と共に」
帝王テラーマクロ。
どうやらジンドグマと呼ばれた組織は今までの組織より少し上位の存在らしい。
証拠に帝王と呼ばれたテラーマクロの立ち振る舞い、背後には無数の影が――つまり戦力が見える。
それだけでなくテラーマクロの他にも異様な威圧感を放つ者達が。それは格好の奇抜さもあるのだがソレに故に、見るからにして人を超越したと言う事が分かった。
メガール将軍、悪魔元帥、魔女参謀、幽霊博士、鬼火司令、妖怪王女。並び立つその姿はシルエットながらも存在感を否応に放っている。
「俺様達も入ってやるよ」
しかしそんな威圧感にも怯まぬ者が。
それは何とあのモモタロスではないか!! 司達の仲間である筈の彼が何故ココに!?
いや、違う――! それはモモタロスに酷似しているがモモタロスに在らず。
「時空盗賊団・
威圧的な態度のネガタロス、彼は協力こそすれど配下になるつもりはないと言った。
それに頷く蜂女、別にそれでも構わないと彼女は言う。その点については後ほどに説明が入るらしい。
ネガタロスはそれを聞くと頷き角を触る。彼のくせだろうか? 彼の隣には人間の容姿に見える青年や女性が。
尤も、服装は中々に奇抜なものだったが。
「偉大なる『―――』の意思に我々も賛成なのだ!」
立ち上がり白いマントをなびかせるのは仮面の男、アポロガイストだ。
さらに彼の背後では巨大な影が寝そべる様にして一同を見渡した。
名はキングダーク、王の名を持つ闇。
「我ら"GOD"は『―――』に協力しよう」
そして組織は神を称するものなり。
「"レジェンドルガ"代表アークドラゴンだ。下らない世界を滅ぼすと言う思想、気に入った。私達も力を貸そう」
達観した様な口調で話す男。
男に気がつくと一同は雰囲気を変えてざわつきが起こる。
それもその筈、男がいた場所を中心として景色がステンドグラス化していたのだ。美しくも怪しく光る景色に隣にいた者が楽しそうに笑う。
『あはは、とっても綺麗だね!』
そう無邪気に笑う少年……?
その言葉にスマートレディも同意の笑みを投げかけて手を振った。
だが他には誰も同意の笑みを向ける事は無い。それは少年の様な無邪気さ、それは少年の様な声、しかし姿は少年とは言いがたい。
「はぁい! "ネオ生命体"のドラスちゃんも綺麗だって言ってくれてまーす! 同じ気持ちの子がいてお姉さん嬉しい!」
ガッツポーズを取るスマートレディとケラケラ楽しそうに笑うドラス。
彼の容姿は一言で言うのならバッタの怪物だろう、そこに人間らしさは欠片とて感じられない。
異常が彼を現す一言だった。純粋で無垢な彼の雰囲気にグロテスクな容姿が狂気を演出している。
そんな彼を感動の眼で見ていた者が次に手を上げた。
「"ファントム"代表ナイトメア。『―――』に賛成です。世界に悪夢を、絶望を――」
文字通り悪夢の様にナイトメアの姿は隠されていた。
シルエットだけの彼を誰も視覚できない。そして、ついに最後の組織へと視線が移る。
「ガライだ。我らが母なるフォッグは『―――』に協力しろとの教え」
ならば我らは貴様達の剣となるだけ。
フォッグと名乗った組織は他の組織とは少し違い、『―――』に完全なる忠誠を誓った。
これで会議に参加した全ての組織が『―――』に統合された事になる。最後にと蜂女は一つの場所を指し示す。
そこはカーテンに隠れていた場所、だが会議参加者がそこから放たれる異様な気配には気がついていた。
まるであの場所だけ存在していないかの様な錯覚に陥る、それは無、それは零。
「皆さん! ご紹介します――」
蜂女は最大のタメを見せてカーテンを指し示す。
「あちらにいるお方こそ! 我らが大首領ッ!!」
その言葉と共にカーテンが勢い良く開く。
身構える参加者達、ココにいる全ての組織をまとめる人物がソコにいるのだから。
「!?」
だが一同に走る衝撃、カーテンが開くと見えたのは巨大な玉座。
そこには当然大首領が座っている筈だ、玉座は文字通り王が座るものなのだから。
そしてそこにはちゃんと座っている人物も見える。だが、それはどうみても普通の少女にしかみえなかった。
何か攻撃を放てば一撃で絶命しそうな程脆く、儚い存在、そんな少女が大首領?
何か正体があるのだろうか? だがそんな気配も感じられない程に彼女の姿は弱々しく見えた。
だがよく見れば彼女の両隣に男女が。執事のような服を着た男性、メイド服の赤髪の女性、二人はゲスト達に礼を行い自己紹介を行なってみせる。
「"ゴルゴム"・月影ノブヒコ」
「ゴルゴム・倉持カタナ」
執事風の男・月影。メイド風の女・カタナ。
二人は自らも一組織である事を告げる。ゴルゴムと名乗った、ならば『―――』の大首領とは?
「皆様、この方は大首領様ではございません」
「コチラは大神官ビシュム様です」
王座に座るのは可憐な少女ビシュム、儚げな視線でゲスト達を見ている。
月影は言う、現在大首領は力を失っている為に自分達が王座を守っているのだと。
しかしビシュムとて王の座に座るからには何かしらの能力があるのでは? そう問いかけるジェネラルシャドウ、蜂女はその通りと叫ぶ。
「ビシュム様こそ、我らが世界を移動する為に必要な力なのです!」
理解する面々、彼らもまた他世界を介して集められた存在。
その際に移動してきたオーロラ、それは彼女が発生させているものなのか。
そして大首領とは"今現在彼女が持っている何か"に眠っているのだと告げる。
誰もがその『何か』を確認しようと眼を見張るが、彼女が持っているソレが何かは誰も分からなかった。
その姿を見ることができるにも関わらず、何かを理解しようと思考が働かない。そんな様子――
そして話は先ほどネガタロスが言った事へと戻る。
ここに集まる多くの組織は『―――』に協力の意思こそ示せど配下につく。
つまり部下になる事を望んでいるものは少ないのではないだろうか? その為に蜂女はある提案を持ちかける。
「皆様には我が組織についてもらう事にはなりますが基本的に自由に活動していただいて構いません」
蜂女はゲスト達に行動の自由さを説いた。
基本的には各々の拠点にいてもらい、行動を共にするグループもそれぞれの許可さえあれば自由にしても構わないと。
それは活動を広げるため、彼らはより多くの世界に悪意や破壊の種をまくのが仕事なのだから。その提案にゲスト達は賛成の拍手を行なった。
「では皆様、グラスをおとりください!」
血の様に赤い酒が入ったグラスをそれぞれは手に取る。
今ココに本当の意味で各組織が統合されるのだ。
「乾杯ッッ!!」
その言葉と共にグラスを上げる一同。
巻き起こる恐怖の歓声、絶望の連鎖は破壊の物語を生み出すのだ!
破壊と恐怖、絶望の短編集が生まれる。
「今ココに新生――」
その組織の名はSacred Hegemony Of Cycle Kindred Evolutional Realm
直訳は"同種の血統による全体の、神聖なる支配権"。そしてそれぞれのアルファベットを抜き出すと――
Sacred Hegemony Of Cycle Kindred Evolutional Realm
S H O C K E R
SHOCKER
「ショッカーの誕生をッッ!!」
今ここに、全ての組織が"ショッカー"に統合されたのだった。
神なる世界を支配し、新たな神を目指す恐怖の軍団。怪人たちの歓声と共にショッカーは生まれ変わる!
怪人達の咆哮が金色の大鷲を美しく輝かせるのだった。
「さて、もう分かっているだろう?」
ここは書斎、そこには一人フェザリーヌが椅子に揺られている。
紅茶を手に本を読んでいる彼女は――
あなたを見る。
「改めて初めましてか、モニターの前にいる人の子よ」
今、そなたは何で私を観測しているのだろうか?
パソコン、ゲーム機、それとも携帯か? まあ何でもいい、もう一度言っておくが私はそなたに話しかけている。
「いや、こう呼んだ方がいいか――」
神なる世界の神よ。
「そなた等が今暮らしている世界こそ、神なる世界だと言う事だ」
そなた等は日々を暮らしていく中で様々な作品に出会ってきた筈だ。
ドラマ、アニメ、映画、小説、それらは脚本があって作られたものだとそなた等は錯覚しているだろう。
だが違う、それは世界を生み出す行為なのだ。チラシの裏に書いた稚拙な小説だろうとも人に見せればそれは世界となる。
共有する事で世界は生まれるのだ。例えばこの作品が今日で打ち切りだったとする、ならそなた等はもうこの作品がどうなるかは分からない。
しかし司達は自分の世界を守る為に戦い続ける。
「そうとも、12話で終わったドラマはもうそこで終わりか?」
違うだろう? そなたもそれは現実の世界で味わっている筈だ。
人間は老いて朽ち果てるまで人生がある、生活がある。ドラマはそこで終わるかもしれないが、ドラマの登場人物達の人生は続くのだ。
まさにそれは世界そのもの、観測される事は無いが世界は回り続ける。
「本は観測されてこそ価値のあるものだ」
同時に完結しなければ意味も無い。
そなたが今見ている物語は無事に終わるのだろうか?
申し訳ないが約束はできぬ、今日この話を最後に通信が途絶える可能性も。
ククク――ッ!
「しかし、そなた等らのおかげで世界は増え続ける一方だ」
おかげでショッカーに加入する組織が増えてしまった。
物語は平等を好む、悪が増えれば増えるほど正義もそれだけ用意しなければならない。
だから試練で増やしていかなければならないのだ。
「これは仮面ライダーだけではない」
今日もどこかでオリジナルと呼ばれる仮面ライダーが生まれ、悪と戦う。
今日もどこかの人間が死んで転生し、チート能力で悪と戦う。
今日もどこかで、どこぞの作品と作品がクロスオーバー。
「つまり、今日もどこかで、今この瞬間壮絶な戦いがいくつも繰り広げられている」
嘆かわしい事なのか、スリルに満ちた日々と喜ぶのか。
「世界は続々と誕生するものだ。そしてそなた等はそれを観測する神」
司達が死にそうになっているシーンであろうとも、そなた等は安全な場所でこの物語を観測できる。
だが本当にそうかな?
「見ていたと思うが、ショッカーの狙いはそなた等の世界だ」
今、ネットをしているそなたの前にいきなり化け物が現れる可能性が生まれた。
どうする? 怖いか? ありえない? 何故そういい切れる? 滅びを迎えた世界は皆そう言う、自分達の世界が滅びる訳は無いと。
「選択は尊い、そなたらの世界でノストラダムスの大予言と言うものがあったな」
美歩が読んでいた本だ。
そなた等を含め、滅びなかった世界はその予言を嘘と言い笑う。
だが中にはその予言どおり滅びた世界もあるのだ。
「それに世界を隔てる壁はある日簡単に壊れてしまう。お前達の世界とて、例外では無い」
考えたことは無いか?
そなたらの世界、その中の日本と言う国では年間約7~8万人が行方不明になっているそうだな。
それだけではない、たとえばフロリダ半島先端、大西洋プエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の海域であるバミューダトライアングルに消えた者達。
19世紀、ポルトガル沖で発見された幽霊船マリーセレスト号乗組員失踪事件。
1989年10月12日に飛行機の乗客全員が白骨化として発見されたサンチアゴ航空513便事件。
日本でも古来より神隠しと名づけられた失踪事件は数々報告されている。
「そして1284年、聖ヨハネとパウロの記念日。6月の26日!」
面白いものだ、コレは運命か?
「色彩が派手な衣装で着飾った笛吹き男に130人の"ハーメルン"生まれの子供らが誘い出されコッペン丘の近くの処刑場で忽然と姿を消した事件」
ハーメルンの笛吹き男。
今言った一部の事件や失踪事件、行方不明とされている中にはもちろん迷信、本当に事件に巻き込まれたケースは多いだろう。
しかし一部の中には、世界の乱れに巻き込まれ、他世界への扉を開いてしまったものが居ると私は確信している。
神なる世界であっても、他世界の扉は確かに開くのだ。それは今もなお様々行われる他世界を介した試練や事件に巻き込まれたのではないか?
見つからないのは当然だ、だってもう彼等はこの世界には居ない。
違う世界に移動を果たしたのだから。
それはどういう事か?
簡単だ、要はつまりそなた等も絶対安全ではない。
「ナルタキ達には神なる世界の居場所は知らないと言っているが、それは嘘である」
つまり。
「私はそなた等の世界が、神なる世界がどこにあるかを知っている」
これは内緒だぞ。
バレたら面倒だ、それに面白くも無い。
「今日この日より、そなたの世界にショッカーが迫る。地獄の軍団が迫るのだ」
せいぜい気をつけて毎日を過ごしてほしい。
やりたい事があるなら今すぐ始めた方がいいぞ、明日死ぬかもしれないのだから。
まあ、死なないかもしれないが。ククク!
「さて、お話は終わりだ。最後に希望の方を少し観測しようか」
また会おう。
尤も、そなたが神とは言え明日交通事故や通り魔に襲われると言った、ショッカーが何も関係していない事件で死ぬかもしれないがな。
人はその日を、希望の日と呼んだ。
シャルルはオーロラを越えてくるナルタキを迎え、先ほどの出来事を報告する。
ナルタキは表情を変える事無く報告を聞き終わると、彼に礼を言う。
本当はナルタキ自身が司達に説明するべきだったのだろうが、何せショッカーが統合する事態が予定よりも早くなってしまった。
今頃はもう――
「で、どうだったんですか? そちらは」
「ああ、犠牲は大きいが得た者も大きい。そちらはどうだ?」
「ええ、ゼノン達が皆様に説明を行いました」
シャルルは少し汗を浮かべて苦笑する。
「なん……ですが――」
それはまさにショッカーが会議を行なっている時と同時だった。
ゼノンとフルーラは彼らを引き連れて書斎を、もとい図書館を進んでいく。
メタ世界、そこにつれて来られたのは――
「はーい、ストップよー」
ピピー! フルーラは体育の時間に使う様なホイッスルを吹いて立ち止まる。
ゼノンとフルーラはそこで一同に振り返って笑みを浮かべた、どうやらこの先にある扉がゴールらしい。
しかしフルーラとゼノンは集団の中で一人を指差して声をあげる。
「「でも、君はダメー!」」
「なっ!?」
指を指されたのは城戸真司、そして彼らとは霧島美穂、佐野満、北岡秀一、秋山蓮だった。
理の欠片を通して司達に応援を送った後、なんと世界にシャルルがやってきて彼らをメタ世界に招いたのだった。
喋る猫を見せられ、ゼノン達の話しを出せば真司たちも納得するしかない。だから着いてきたのだが――
「な、なんで俺は駄目なんだよ!」
「君達は特別なのさ、中でも君が一番ね。と言う訳でばいばーい!」
ゼノンが手を叩くと真司が立っていた床が消えて――
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁ………―――」
「また後で迎えに行くわーっ!」
なんて恐ろしい奴ら……! 佐野達は汗を浮かべてゼノン達を見る。
二人を手を繋いだままニッコリと真司が落ちていった穴に向かって手を振っていた。
どうやら彼は何らかの理由で会議に参加する事ができないらしい。そう、ゼノン達が美穂達を呼んできた理由とは"ある会議"に参加してほしいからだと言う。
「はい、じゃあ君達は扉に一人ずつ入ってくれ」
「扉に入ったら椅子があるから、そこに座って待っててね」
二人の言葉に渋々頷く美穂たち、言われた通り一人ずつ入って椅子に座る。
部屋は暗く、周りの景色は全く分からない状況だった。
「………?」
佐野は眼を凝らして周りを見るが誰の姿も見えない。
先に入った蓮、後から入ってきただろう美穂の気配もまったく分からなかった。
ゼノン達はこの場所がホールだと最初に説明してくれたが部屋には誰もいないんじゃないかと言うくらい静かなもの。
「………」
その後もしばらく時間は流れる。だがついに――
「さあ! お待たせしたね皆っ!!」
「これより第一回チキチキ作戦会議を始めるわ!!」
バンッ! っとスポットライトが照らされて姿を現したのはゼノンとフルーラ。
まだ佐野視点では二人の姿しか確認できないが、とりあえず安心はできる。
ゼノンとフルーラは本日はお集まり頂き……など慣れない挨拶を適当に済ませていた。
だが疲れたのかいつも通りの雰囲気に戻り早速本題に入る事に。
「はい、じゃあライトアップ……どん!」
その言葉と共にホールに一気に明かりが。
本棚の壁で覆われたホール、佐野は急いで周りを確認すると自分達の他にも多くの人間がいる事を確認する。
そこには当然蓮や美穂もいるのだが……?
「「「「ッッ!?」」」」
表情を変える佐野達。
それはそう、だってそこにいたのは――
「おい……! コレは何の冗談だ?」
蓮の声が全てを告げる、そこで起こる感情の爆発。
佐野の北岡も言葉が口をつき破り、我に返った時には既にもう名前を口にし終わっていたところだった。
だって目の前にいるのは……
「浅倉――……ッ!?」
「東條! お前なんで――ッ!」
死人じゃないか。
「アァ? 北岡かお前ェ?」
「………」
席は遠いがそこに座っているのは確かに仮面ライダー王蛇・
そして仮面ライダータイガ・
二人ともライダーバトルで命を落とした筈なのに何故!? しかも浅倉に至っては北岡がこの手で止めを刺した筈だ!
「それだけじゃねぇ!」
美穂が叫ぶ。
周りを見れば他にも死んだ筈の参加者がいるじゃないか!
向こうも向こうで自分達に気がついたのかホールに戦慄が走った。簡単に言えば、殺し合いの参加者が今この場に全員集まっているのだから。
しかもそれだけじゃない。手に何かを掴む感覚を覚えて佐野達は何事かと手を見る、そして掴んでいた物を見て全身に寒気が走った。
それは"カードデッキ"だったからだ。しかも自分の紋章がしっかりと刻まれたカードデッキ、壊された筈なのにどうして――!?
「おもしれぇじゃねぇか、せっかく全員集まってんだ。ココで決着といこうや」
そう言って立ち上がるのは仮面ライダーベルデ・
デッキを構える彼に反応して他の者達もデッキを構える。
「ま、確かに面白そうじゃん、今度こそぶっ殺してあげるよ」
「仕方ありませんね……」
仮面ライダーガイ・
どうやら再びこの場で殺し合いを始めるつもりだ。生き残った者が願いを叶えるライダーバトル、戦わぬ理由などあろうか?
佐野も反射的にデッキを――
「ちょ、ちょっと待って! 皆さん落ち着いてください」
「そ、そうだそうだ! 落ち着けって!」
「「「!!」」」
だがそこで聞こえる声、どうやら他に座っていた人物が立ち上がって声をあげた様だ。
彼らだけでなく他の人物も立ち上がろうとしていた者も見える、さらに聞こえるのは笛の音。
「ピピー! こらぁっ! 喧嘩しない!」
「そうだそうだ! デカチョーやカガさんの言う通りにしないか! っていうか他の人ドン引きしてるけど大丈夫かなコレ!?」
その言葉を聞いて佐野は辺りを見回してみる。
確かにコッチを見てドン引きしてる様な人や固まっている人も。
それはそうだろう、会議だって言ってるのにいきなり殺し合いを始めようとするんだもの。
「アァァァ……あまりイライラさせるなよ――! 殺すぞ……!」
「せ、せっかく変身させてあげられる様にしたのにコレかい……!」
デカチョー何とかして!
そう言ってゼノンは先ほど彼らを止めに入った一人、仮面ライダーG3-X・
同時にフルーラはカガさんと言って仮面ライダーガタック・
「で、デカチョーじゃありません! とにかく皆さん落ち着いてください」
「そうそう。いやよく分からないけど!」
二人は困ったようにライダーバトル参加者を落ち着けようとする。
とは言え彼らはもちろんライダーバトルの事なんて知るよしもない、いきなり男達が立ち上がって言い争いを始めたくらいにしか見えないのだ。
「そうだ、落ち着けお前ら」
「それに……この場で戦う事はできない。そうだろ?」
蓮は椅子に座ったまま呆れたように参加者を見る。
そして他の椅子では仮面ライダーライア・
ここでは戦えない、その言葉にゼノンはニヤリとうなずく。
「そうさ、ここじゃ全ての攻撃は無効化――」
「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「……まじでか」
ゼノンの前に降りかかる溶解液。
浅倉はすばやくベノスネーカーを召喚して溶解液を二人に発射する。
しかし溶解液はゼノンにあたる事無く、結界の様な物に阻まれて消滅した。
(もうヤダなぁコイツら……)
流石のゼノンもげんなりしながら浅倉を席に着かせる。
だがその時ホールに響く美しい音色が聞こえてきた、魂にまで響いてくるこの音はバイオリン。
となれば演奏者はただ一人仮面ライダーダークキバ・
彼は他の参加者を落ち着けるようにしばらく演奏を続ける、そしてしばらくした後フィニッシュに弦を少しはじいて演奏を終了した。
「素晴らしい。これはまさに筆舌……」
「………」
「まさに筆舌、筆舌……――」
「筆舌に尽くしがたい」
「そうそう、それそれ」
フルーラの言葉に頷くのは仮面ライダードレイク・
彼はその美しさに関心している様子。
退屈したのか浅倉もとりあえずは大人しくする事にしたようだ。
「そろそろ本題に入らないか?」
「そうですね、どうしてココに来たのか」
仮面ライダーギャレン・
音也の次にやってきた二人は音也がアキラの件で世界移動を行って時間を潰している間もずっとココで待っていた。
一応コーヒーとパスタ、さらに『ワーチョマーチョ』と言う他世界で大変有名なブランドのお菓子も出してもらったが、流石にウンザリしている所。
まあ確かにコレ以上待たせたり、長引かせるのはよろしくないか。ゼノンとフルーラはうなずいて咳払いを一つ。二人は少し高いステージに立つと真面目な表情に変わる。
「最初に説明したと思うけど、世界を滅ぼそうとするショッカーって奴らが現れた」
「そいつ等は世界を移動しながらやってくるの。当然貴方達の世界も例外ではないわ!」
要するに、二人は声を合わせて言い放つ。
「「君達に、ショッカー、いや大ショッカー討伐を依頼したい」」
「い――」
「分かってる! 分かってる!! いや分かってるよ」
両手で押さえつけるようなジェスチャーをとってゼノンは龍騎組みの言葉をさえぎる。
確かに彼らに協力するメリットなど無い、殺し合いの邪魔でしかない事に拍車をかける様な事。
だが根本的な事を考えてほしいとゼノン達は言う。
「まずね、そもそもアイツ等は神になろうとしてるんだ」
「その過程で多くの血が流れるでしょうね。子供も女性も大勢殺されるわ」
「そ、そんなの駄目っすよ!」
「気持ちは分かるよ! でもちょっと座っててね!」
「……あ、すいません」
立ち上がり叫ぶのは仮面ライダー轟鬼・トドロキだ。
すぐにゼノンに諭されて席につくが、ゼノンの言葉は少なくとも他の参加者に影響は与えた。
「あのね、そもそもアイツ等が神になったらライダーバトルどころじゃなくなるよ?」
君たちは『仮面ライダー』である事を自覚してほしいとゼノンは強く言う。
もしも神なる世界にショッカーが到達した場合、確実に神なる世界はショッカーの手に渡ると言った。
そしてそこから彼らが神の力を手に入れた場合、まず始めに何をするのか? それも確実にわかる事。
「奴らは仮面ライダーの存在を無に返す。絶対にだ!」
たとえそれがどんな人間であろうともショッカーにとって仮面ライダーは目障りな存在だと言う事が確実に知れる。
ライダーとショッカーは因縁の関係にある。今は奴らは気づいていないかもしれないが、神なる世界に行けばそれは分かる事。
ならば向こうは神の力を使い、確実にライダーと言う存在を全て消しにくる筈だ。
「言っておくけど、神の力を手に入れられたら君達がどんなに強くてもショッカーには勝てなくなる」
「あいつ等にボロ雑巾の様に殺されるのよ。考えただけで虫唾が走るわ!」
事は思っている以上に深刻だとゼノンとフルーラは表情を歪ませる。
ショッカーは既に同盟を組んで動き出した、つまりそれはカウントダウンがスタートした事になる。
向こうが神なる世界にたどり着く事を全力で防がなければならないのだ、それに神の力があれば仮面ライダーだけの話ではなくなってくる。
文字通り全ての存在がショッカーに勝てなくなるのだ。神なる世界の住人、つまり神々は全知全能の神じゃない。
司たちの世界にいる一般人となんら変わりない存在だ。そんな彼らがショッカーの力に太刀打ちできるとは思えない。
「今ボク達がやることは、全員で協力してショッカーを倒す事だ」
「ゼノンの言う通りだわ、それに言ったでしょ! タダとは言わないって!!」
二人は会議参加者に会う時、既に報酬については軽く説明していた。
だからこそ高見沢や浅倉を連れてこられたのだろう。でなければ彼らが大人しくゼノン達についてくる訳が無い。
「君たちの望む物を与える!」
何でも好きな願いを一つ叶えるとゼノン達は言った。
だがその言葉には少し違和感が、それを口にしたのは仮面ライダー威吹鬼・イブキだ。
今、ゼノン達は何でも願いを叶えると言った。
「そんな力があるなら、今ショッカーを消し去る事もできるんじゃないですか?」
「そうだね、そう思うのは当然だ」
だが無理なのだとゼノンは言う。
願いを叶える力を行使するのはフェザリーヌ、彼女はゼノン達に戦いが終わるまでは絶対にその力を使うことはないと言う。
フェザリーヌはナルタキ側ではあるが、彼に絶対の協力を与える事は無い。気まぐれな性格、彼女は中立の立場にあるのだ。
魔女にとってショッカーが勝とうがライダー側が勝とうがどうでもいい事らしい。彼女は神なる世界さえも特別視していない様だ。
「でもショッカーを倒せばご主人は必ず君達の願いを叶える」
そこで手を上げるのは芝浦。
ニヤリと笑っている彼、嫌な予感がしつつもゼノンは彼の話を聞く事に。
「じゃあ、その願いでこいつ等ぶっ殺すってのもありなんだよね!」
「「「!!」」」
芝浦は他のライダーバトル参加者を見てニヤニヤと笑っている。
同時にそれは彼以外でもできると言う事、全員の願いを叶えると言う事はつまりこういう事にも繋がると芝浦は提示した。
「そんなんじゃ協力できないなぁ?」
「その件に関しても考えがあるよ。ま、今は言えないけどね!」
いやいや、そこは答えてもらわないと困るって。
そう言う芝浦だがその意見に関しては佐野や美穂も同意したい所ではある。
確かに芝浦の言う事は尤もだ、せっかくショッカーを倒したのに直後殺されたんじゃ意味は無い。
「後で君達に脳に情報を送っておくよ。あと特にデッキを持ってる連中は後で大切な情報を送っておくから」
「オレ達に?」
佐野が声をあげる。
思えば他の連中はゼノン達に直接連れてこられたと言う様子ではない。招待状を貰ったとかどうとか今も言っている。
だったら何故彼等は自分達にわざわざ会いに?
「まあすっごく簡単に言うと君達全員乙ってるから。あとちょっとでお陀仏だから」
「はぁ!?」
「まあまあ気にしない気にしない。だいたい君達って今すっごく面倒な事になってるんだよね。だからまずそっちをとにかくなんとかしてもらいたいんだよ!」
さっさとパートナーの娘と事態を。
ああいや、コレわかんないな誰にも! もうこの話し忘れて忘れて!
「ごめんごめん、ボクも混乱してるんだ。とにかく!」
もう一度ゼノンは声を張り上げる。
彼の後ろには黄金の大鷲が映しだされ、ゼノンはそこを指差した。
「あのマークを叩き潰す!」
「でなければワタシ達全員死ぬの!」
他の人も大勢死ぬ。
大切な人も、守るとしている人も。それは決して遠い日の事ではないとゼノンは言った。
近い内に一度デモンストレーションも始まるらしい、それを見れば協力する気にはなってくれるだろうか?
「ショッカーにはファンガイアがいると聞いたが――」
「そういえば、オルフェノクもいるって……」
仮面ライダーサガ・
二人はそれぞれの世界にいる筈のファンガイアやオルフェノクがショッカーに? オルフェノクはほぼ全て倒した筈だ。
もちろん、王を含めて。そして生き残った者は人としての人生を生きる筈。いや、中にはまだ悪意を持っている連中が居るのか――?
「いやいや。そうだね、その点を簡単に説明するにはショッカーにいる彼らは別物と考えていい」
「ファンガイアもオルフェノクも名前と姿は同じでも、貴方達の考えている物じゃない。今回は完全な敵! 全力で叩き潰して!」
何度も言うがショッカーはこの場にいる共通の敵なのだとゼノンは言う。
別に馴れ合いをしろと言っている訳じゃない、ただ力を貸せと言うシンプルな物だ。
人を助けたい人はそうすればいいし――
「浅倉、君のイライラをショッカーの連中にぶつけてやればいい」
「面白い奴はいるのか……ァ?」
「少なくとも弱い連中ではないよ。つーかクズばっかりだ! あいつ等なら文字通り全員殺ってくれても構わない!」
それを聞いて少しは浅倉も乗り気になってくれた様だ。
理由はどうであれ今はとにかく仮面ライダーの力を結集させなければならない。
今日のこの場に訳あってこれなかった人たちもいずれは協力させなければならない!
全てのライダーの力を集めてショッカーを倒す。それにコチラはEpisode DECADEもある。戦力は決して劣ってはいない筈だ。
「まかせなさい、俺が全て倒してやる」
「一度は勝った相手だからな」
仮面ライダーイクサ・
仮面ライダーギルス・
もう迷っている時間は無い、全仮面ライダーvsショッカーの戦いは今この瞬間から始まるのだから。
「さらに君達には新人の育成もお願いするかも」
「新人?」
「ああ、生まれたてのインスタントルーキーさ。優しくしてあげてくれ」
ニヤリと笑うゼノン。
とにかくと彼はもう一度大事な事を叫ぶ様に告げる。
ショッカーは敵、ショッカーは悪、ショッカー共はぶちのめせ!!
「よし! じゃあ皆! 力を合わせて頑張ろう!」
「えいえいおー!」
おー! と手をあげたのは加賀美とトドロキだけであるが、他のライダーも心内にそれぞれの想いを抱えていた。
それは話を聞いていた佐野も同じである。自分にデッキが再び巡ってきたのならばソレは他人を殺す力にではなく、百合絵を守る為に使おうじゃないか。
佐野は自分の心に生まれる明確な正義を感じて強くうなずく、そして両隣の人に笑顔を向けた。なんだかんだ言ってココにいる全員仮面ライダー。
頼れる仲間に――
「お前はいいよなぁ、そんなに輝いて」
「は?」
「一緒に地獄に落ちよう。一緒に、完璧な地獄に――」
「え?」
「一緒に……地獄へ――」
「うあああああああああああああああああああぁぁぁぁ………!!」
佐野の隣には仮面ライダーキックホッパー・
地獄につつまれて、ホールに佐野の悲鳴が響き渡るのだった。
「ってな訳です」
「………」
予想はしていたが、やはりライダー同士の結託はなかなかに難しいものがあった。
特に龍騎勢がまともに協力してくれる訳が無い。それは最初から分かっていた事ではあるが、ある意味ショッカーよりも団結力が低いと言うのが現状だ。
頭が痛くなる。果たしてこの調子で助っ人として機能してくれるのだろうか? 彼らはオリジナルの為にあまり長時間は関われない。
発言もなるべく抑えてもらわなければ、Episode DECADEが食われてしまう可能性も。
「まあ今回の会議に参加できなかった人もいますしね、これからですよ」
シャルルの言葉にナルタキはうなずく。
どんなに言葉を並べても彼らは仮面ライダーとして認められた一種の伝説達だ。
その強さを集めればショッカーを倒す事はできる、そしてEpisode DECADEによって生まれた彼らもまた切り札として機能してくれるだろう。
尤も助っ人くらいしか期待できないだろうが、そのうち彼らとの接触も考えておこうと。
「そちらはどうでした?」
「ああ、特定はできた」
ナルタキはうなずいて映像を出現させていく。
どうやらナルタキは世界を必死にめぐって"彼ら"の欠片とコンタクトをとっていた様だ。
ナルタキは映し出された男たちの名を順番にシャルルへ説明していく。
「風見志郎――」
順番にそうやって名前を呼んでいくナルタキだが、中には会えない人物もいたと言う。
さらに色々と問題がある様で――
「一度彼らに接触してもらう時がくるかもしれない。なんとしても取り戻して貰わなければ困る」
「なるほど。犠牲は大きいが、希望は死んでいないと言う事ですか……」
「その通りだ。彼等の活躍があったからこそ、最悪の事態は避けられた」
最後に映るモニター、ナルタキは彼らは希望だと言った。
ショッカーと戦う上でその力は計り知れないものとなる。
「さらにEpisode DECADEの能力」
「ええ。関わった味方に仮面ライダーとしての能力を与える事」
クロスオーバーの利点、それを活用してショッカーを倒す!
ナルタキは強い意志をシャルルに示した。それに頷きを返すシャルル。
見ればモニターの中にいた男の周りにショッカー戦闘員が、それはいつの映像なのか?
『ショッカーの敵、そして人類の味方――』
モニターの中にいる男はナルタキにそう告げて構えを取る。
手を横に構えた後に服を開きベルトを見せた。
『お見せしよう、仮面ライダー!』
その光景を見てシャルルは成る程と頷く。
始まるのだな、オールライダーvs大ショッカーが。
はい、と言う訳での一部ラストでした。
いやいや、ココまで読んで頂いて本当にありがとうございます。
前にも言ったとおりココからは少し作者の趣味が色濃くなる展開も多いかと思いますが、今後も暇つぶしのお供にでもしてもらえればなと。
一部が『試練編』なら二部は『vs大ショッカー編』ですかね。
大ショッカーの組織はリイマジと言うかパラレルなので一部組織が結合されてたり、幹部の性格が違ってたりします。
あと後半のオリジナル達はそこまで出番は無いので、期待しない様にお願いします。まあ助っ人程度に考えてもらえればなと。
それであと、二部がちょっと進むと、特別番外編と言うか。要するに劇場版的な物をやります。本編としっかりリンクしてるけど、一部パラレルも入るって感じですかね?
他作品とのクロスオーバーで、一応雰囲気出す為なのと、ちょっとこれまたクセが強いので個別に連載を分けようかなと。
まあまあ、そこら辺は近づいたらまたお知らせします。
あとはそうですね、この作品はちょっと加筆してるとは言え移転作品になので、今は一話の文字数が多かったり、更新頻度も多めですが、そのうち両方減ってくんでね、そこはどうかご了承ください。
はい、とまあ長々とすいません。
これからもキャラだの男女ペアだのはモリモリ増えるかもですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。
次はちょっと未定、なるべく早くしますが、ちょっと遅れるかも。
ではでは