次終わったらキャラ紹介投稿するかも。
第5話 フォルティッシモ・せめてその宿命だけでも
おかしな事が起こった。司の記憶にあったライダーの記憶がぼんやりと濁っている所がある。
最終回やなにやら一部のフォームが思い出せなくなってしまったのだ。
携帯やパソコンはネットに繋がるものの、その世界と言うだけなので調べる事もできない始末。
仕方ない、司は少しばかりのモヤモヤを感じつつもそこはあきらめる事に。大方ゼノン達が何らかの仕掛けをしてきたのかもしれないからだ。
それにしても世界移動と言うものは随分とアッサリしたものだった。再び激しい光と耳鳴りの後にはもう新世界だ。
とり合えず司達はまず行動を起こさずに、この学校について調べる事に。
亘と里奈にはキバの話を思い出す限り伝えておいたし、とにかく学校が気になるところだったのだ。
すでに真由と友里がある程度調べておいてくれたので、細かいところは探さずにすんだが。
まず、この学校は特別クラスを中心にした部分で構成されていた。
中心に中庭があり、保健室、放送室、食堂の一角、和室、シャワー室、トイレ。そして理科室、図書室等々。
つまり大体の教室はある。おそらくはゼノン達が狙ったのだろう。
学校は四階建てで、校庭は切り離された半分分ちゃんと備わっている。しかもプールまであり、若干意図的なものを感じた。
それだけではない。どう言う原理か電気、水道、ガス等はちゃんと通っているし食堂の巨大冷蔵庫、キッチンも使えるようになっていた。
おまけにネットや携帯の電波まで用意されている。さらに驚く事は何故か掃除用具入れには札束が数え切れない程おいてあった事だ。
しかもこのお金は各世界共通で使えるらしい。はっきり言って生活には困らないレベルの設備が備わっていと言う訳だ。
だがなによりも一番驚いたのはなんと言っても保健室に無造作に置いてあった治療器具だった。
あきらかに自分達の世界じゃない道具。まるでマンガにでも出てきそうな装置で、その効果も凄まじいもの。
桜の両親もまたこの器具によって救われたと言ってもいい、ゼノンたちも生きていればココに入れておけばいずれ治ると言う程に。
「いったい誰がこんな事を――」
やはり、一番知っていそうなのはゼノン達だろう。
素直に教えてくれるとは思えないが一番真実に近い位置にいる。
彼らも全てを知っている訳では無いらしいが、それでも自分達よりかははるかに上を行く存在だろう。
少なくともこの世界移動を行っている人物とはつながりがあるに違いない。
「あいつ等は治療器具を『プレゼント』したって言ってた」
「つまり、彼らは――」
「真由ちゃん、プールあるんだって!今度泳ごうね!」
「うん…!楽しみ…」
「あ、じゃあ今度水着買いにいかない?」
「いいねー! そうしよ、そうしよ!」
「でもマジ凄げぇお金! こ、これだけあればちょっと使っても……」
「駄目だ美歩!お金は大切に使わなければならないんだぞ。ちゃんと小遣い制でいくべきだ」
「わ、わかってるって咲夜! げへへへ……ゴクリっ!」
「ならよだれをふけ! よだれを! き、汚い!汚い! ちょ、馬鹿者! ワタシで拭くなッッ!」
「あのーっ! ちょっとシリアスな雰囲気だしてもらっていいっすかねーっ!」
ある程度調べた所でいよいよ本題、街探索に入る。
しかし前回ユウスケはなんだかんだと変身できた訳だが、ゼノン達が望んでいたのはそう言う事だったのだろうか?
いや、彼らが考える課題をクリアできたから世界移動が行われたと思うのだが。
つまり今のところ対象者が変身できる様になればクリア扱いはされると言う事だと彼らは結論を出した。
そして窓から見るこの景色。今回の世界は少し今までと町並みが違っていた。
大きなビルは特に見当たらず西洋風の建物が多く見える。とはいえ現代風の建物も存在しており、混ぜこぜな印象を受けた。
だがまあ心配も多い。
クウガはまあ良かったが、キバはキバットがいないと変身できない筈だ。
この世界にキバットがいればいいが、いなかったらどうなるのだろう?
もしかしたらキバット無しでも変身できるのだろうか? ためしに亘は踏ん張ってみるが何もおきない。
「気をつけてね……」
里奈が心配そうに亘を見詰める。
流石に連れて行く事は厳しかったので校庭で待機、という事になった。
幸い里奈は手当てがうまいので、救急箱を持って待っててもらう。
「うん……いってくるよ」
一見すれば冷静そうな亘だが、彼も内心は不安でいっぱいだった。
彼はまだ明確に死も化け物も直視してはいない。そして司とユウスケ&薫、良太郎にメンバーを決めた。
今回は前回の事もあるので戦える少人数で行く事が望ましい。困った時は電話で助けを呼ぶ、そう言う事に決めて。
「じゃあ、行くか!」
そう言って新世界に一同は足を踏み入れる。
しばらく辺りを警戒しながら歩いていると、誰もがこの街の違和感に気づいた。
不気味な街だ、さっきからしばらく歩いてるが人一人いない。
商店街もそう、公園も、公民館と書かれた建物にすら人はいなかった。
それどころか生活の気配すらしない。まるでこの街の人間が滅んでしまったのかと錯覚する程に。
音も無い街、無音の世界だった。
「一体どうなってんの……誰もいないわね」
「怪人に襲われたとか?」
「でも、怪人すらいない」
そんな事を言いつつ歩いていると、道が二つに分かれていた。
片方は赤く、片方は青い旗が刺さっている。放送室の電子黒板にあった絵はこれを模していたのだろうか?
だがこれだけの情報ではなんとも言えない所ではある。
「ん……ど、どうする?」
「別れよう。とり合えず……この中で一番強いのは良太郎だから、悪いが弟を頼めるか?」
「兄さん!? ちょ、恥ずかしいから! 止めてくれよ!」
「うん、わかったよ! いこう亘君」
「え!? あ、ああ!」
良太郎はぽんっと胸を叩き、亘を引っ張っていく。
取りあえず電王と一緒ならば大丈夫だろう。さて、良太郎達が青い旗の道を選んだと言う事は――
「さてと、じゃあ俺達は赤い旗の方だな」
ユウスケ達は頷く。
司達はそのまま赤い旗が刺してある道に足を踏み入れたのだった。
とまあ道を変えてみたものの、相変わらず人の気配はなく不気味な時間が続いていく。
「そうえばさ」
それに耐えられなくなったのだろうか、ユウスケは苦笑いを浮かべて話し出す。
「司のライダー……ディケイドだっけ?
あれって全てのライダーになれるんだろ? よくよく考えたらかなり凄くないか?」
たしかに、すこし前の司なら泣いて喜んだかも知れない。
と言うか実際時間が経った今は嬉しいと言う感情が芽生えてきている。
「まあな。でもなんかあの警官が殺されたのを見て、やっぱり遊びじゃないんだなって思ってさ」
言い方は悪いがもう今はだいぶ慣れた。
助けられなかった事も、何もできなかった事も心には引っかかるがいつまでも引きずって入られないだろう?
彼やグロンギに殺された人達には本当に申し訳ないが、割り切る事も必要なのではないだろうか。
案外司はヒーロー好きとは言え、そこ等辺はドライな考え方の持ち主である。
もちろん目の前に助けを求める人がいれば全力で手を差し伸べる人物である事も忘れないでほしい。
「あと、変身したら知識が頭に流れ込んできたろ? なんか変身できるのが当たり前みたいに感じてさ――」
「ああ、あれは凄いよな」
ユウスケも今となってはクウガの力が手に取る様に分かる。
もちろん全てではないが、クウガに変身する事に強烈なデジャヴを感じるのも分かる話だった。
当たり前、そうだろう。変身した後に長い時間が流れた様に感じる。
「流れ込んできたってより、教えられたって感じだよな」
「ああ、確かに」
「へー、すごいのね」
そういう薫だが彼女だって三種類の武器になれるじゃないか。
本人曰く武器になっている時は痛み等の感覚は感じないらしい。
なんだか不思議な感じだとか。
「でもまあ、やっぱカッコいいよなぁ……」
司はディケイドのカードをくるくる回す。
ちょっとデザインは奇抜だがなかなかカッコいいじゃないかディケイド。
そういって彼は笑った。
「マゼンダが特に良いよな、マゼンダがな。いやマゼンダ的な配色の中に光るマゼンダの輝きと言うか
マゼンダな感じがマゼンダをよりマゼンダにマゼンダがマゼンダで…結局マゼンダを――」
「ピンクに見えるけどね」
「………」
「止まれ!」
「「「!!」」」
会話に集中して全く気がつかなかった。
今まで誰もいなかったと言う事もあったのだろう、道の向こうから男が近づいて来る。
ちゃんと人がいた安心はあるが、なにやらあまりいい雰囲気とは言えない様だ。
険しい剣幕でコチラを睨んでくる。
「民間人だな? なぜこんな所にいる! ここは立ち入り禁止だぞ!」
ギョッと司達は息を呑んだ。なんと男の手には銃らしき物がが握られているじゃないか!
なんなんだ!? 人がいたと思ったらコレかよ!
「い、いやぁ……私らここが立ち入り禁止だなんて知らなくて! あははは!」
「そそそそうなんですよ、おれ達偶然この町を通りかかって……」
ナイスだユウスケ、薫! これならなんの不自然も無い!
ほらみろ男も銃をしまって――
……しまって
……ない。
「ふざけるな! 立ち入り禁止区域は外部からの侵入は不可能だ! さては貴様等、人間だなッ?」
「え? ま、まあそうだけど………」
「やかり人間か! 貴様等ぁぁああッッ!!」
男は銃を捨ててステンドグラスと鳥を模した怪人、ファンガイアに変身する。おいおい、マジかよ!
どうやら相手は相当怒っているみたいだ、話をしようにも難しいか――ッ!?
「わわわわ! お、落ち着いて!」
「ふざけるなァアアア!!」
やはり無駄だった様だ。
ユウスケの話を聴こうともせず、ファンガイアは司達に殴りかかってくる!
待て待て! マジで何なんだよ! きれすぎだろ! なんとか攻撃を受け流す司。
しかしやばい、本気で殺す気かもしれない。一応最初は注意を促した点を見るに完全な危険人物でもなさそうだが。
「どどどどうする司!」
「仕方ない! このままじゃ本当に殺される!」
多少強引ではあるが、とりあえず落ち着かせなければ。
司はディケイドに変身しようとカードに手を伸ば――した時、どこからか悲鳴のような声がきこえてきた。
なんだ? 三人はその声のする方向を見る。
「待て! 怪しい奴めぇええッッ!」
「「うわぁぁあああああああああああああああッッ!!!」」
「げっ!」
向こうから司達とまったく同じ状況であろう亘達が走ってきた。
むこうも、向こうで変な銃をもった女に追われている。ファンガイアに変身していないところを見ると……まさか、むこうは人間なのか!?
「!」
「!」
どうやら、その予想は的中したらしい。
女とファンガイアは互いの姿を見た途端、標的を司達から双方の追っ手に変える。
もう訳が分からん! 司は必死に情報を整理しようと考える。とりあえずファンガイアと人間の間には溝ができている様だ。
「人間め! こんな姑息な手を使ってまで我等を滅ぼしたいか!」
「黙れファンガイア! コレは貴様等の作戦だろ!」
女はためらうことなく銃でファンガイアを撃ちまくる。
ファンガイアもまた、女を本気で殺そうとしているようにも見えた。
いきなりの戦闘に司達はただ怯むしかない。お互いがお互いを憎みあい殺しあう、穏やかな展開では到底ない状況。
「な……なんか凄い事に――」
どっちの味方をすればいいのか、ユウスケはおろおろと動き回る。
だがいつまでも迷っていたら本当に死人が出てしまうかもしれない。
理由はわからないが無駄に傷つけあう事はない、司と良太郎は頷くとそれぞれ変身のアイテムを起動させる!
「どっちが悪かは分からんが……ケンカ両成敗だろ!」『カメンライド』『ディケイド!』
「け、ケンカってレベルじゃない気がするけどね」『ROD・FORM』
司と良太郎の姿がそれぞれライダーへと変わる。
その様子もファンガイア達には気づいていないようで、それだけ真剣さが伝わってくる。
どうなっているんだ本当にこの世界は――……
「俺はファンガイアを」
「ふふっ、オーケー」
ディケイドと電王頷くと、もみ合っている二人の中に飛び込んでいく。
とり合えず丈夫そうなファンガイアを投げ飛ばし、女との距離を離す事にした。
「くっ! 何だ貴様! どっちの味方だ!」
「知るかよ……! さて、試してみるか!」『カメンライド・クウガ!』
前回の世界で開放されたクウガのカード、ディケイドはそれを発動させた。
四肢、胴体、仮面が順にクウガに変わる。おお! やっぱりちょっとテンション上がるかも!
ディケイドは自分の体を確認して少し跳ねてみる。ややディケイドよりも軽い感じがした。
「てやアアアッッ!」
クウガの体は動きやすく、やはりオールラウンダーとしては屈指の力がある様に感じる。多分。
まあ武器がないとフォームの力が活かせないってのは考え物ではあるが。
「よっと!」
「ああ……ッ!」
一方の電王は相手の銃を釣り上げた、武器を奪えば人間は戦う術を失う。
女は悔しそうにしながらも勝ち目なしと踏んだのか踵を返して走り去って行ったのだった。
「はい司、プレゼントだよ」
「ああ、悪いな」『フォームライド』『クウガ・ペガサス!』
電王から銃を受け取ってフォームチェンジを行うディケイド。
やはりクウガにとって薫の力は最高に相性がいいって事だな。
こっちは武器がなけりゃ大変だ、ディケイドは今はそう言うが―ー
しかしこれは後に椿とのこんな会話で解消されるのだった。
「ライドブッカーたんが泣いとるぞ」
「あ……」
「ぬおぉッ!!」
場面は戦いに戻る。とり合えず倒してはマズイだろうから足元に一発決めてやる。威嚇射撃と言うやつだ。
とは言えペガサスは精神力がみるみる削られていくから一発撃つだけが精一杯だが、充分だろう。
ファンガイアは小さく舌打ちをしてディケイド達の前から姿を消す事に。むこうも自分達相手では一人では部が悪いと悟ったか。
「全く、どうなってるんだよこの世界は!」
「争ってたみたいだったね、あの二人」
そう言いながら電王はベルトを外し、変身を解く。
争う? そう言えば原作でも大体似た感じの構図だったか。
「お!」
ポケットから音が鳴る、電話だ。
相手は夏美、司は不思議に思って電話に出る。
「どうした夏美?」
『夏ミカンです! ……間違えた! 夏美ですよ!! えっとですね、真志君が調べてくれたんですけど――』
夏美の話によれば、この世界は現在ファンガイアと人間の種族間抗争が続いているらしい。
詳しくは分からなかったがどうやら司達の学校はファンガイアと人間の街、陣地の間。
つまり国境付近に転送されてしまったと言う事だ。現在ここは戦場と化しているらしく、さっきのやつ等は偵察の為に徘徊していたということ。
成程、だから自分達は教われてのか。そりゃピリピリしている所にほかの種族が進行してきたら戦闘態勢にもなる。
しかしだからと言っていきなり襲うのはどうかと思うが。
『おまけにですね! 人間側のリーダーであるイクサと、ファンガイア側のリーダーのサガは今にも全面戦争をしかけようとしているとか!』
イクサとサガ、共に強力なライダーであるが司にはそれよりも引っかかる事が。
彼としてはまさかココでその名を聞くとは思わなかったと言う表情だ。
「夏美、リーダーの評判とか聞いているか?」
『え?』
「ああいや、例えば人間側のリーダーはボタンをやたらと毟りたがるとか――」
車を足で止められるとか、315だか753とか書いてあるTシャツ着てたり。
あとサガだってイケメンだけど実はラブプラ――いや、なんでもない。
『ど、どうでしょう? でもイクサさんは女性らしいですよ』
「女性!?」
そうか、電王が良太郎だから勘違いをしていたが別に全てのライダーが別世界のその人とは限らないのか。
要するにライダーだけは知っているが、変身者はこの世界に存在している見知らぬ人と言う事になる。
それがライダーの最もたる特徴なのかもしれない、外は同じでも変身者によって行動や戦闘力は大きく変化する。
「言ってしまえばオリジナルキャラって訳な。ありがとう夏ミカン、助かったよ」
『はい! ………あ、違う! だから、私は夏――』
全部聞き終わる前に電話をきる。
さて、どうするか――
「とり合えず一度学校に帰ろうか、これからの事を考えよう」
「そうね、ここって結構ヤバイ位置だし」
「兄さん、ボクは――ッ!」
「大丈夫だ、きっと上手くいく」
そういって司達は歩き出した。
学校まではそんなに遠くない、今から戻れば――
クソッ! 甘かった! ここまで情報網が早いとは!
司とユウスケ達は呼吸を荒げて全速力で街を走っていた。
「いたぞ! レジスタンスだ!」
「やっかいな芽は早めにつませてもらいますよ」
ファンガイア共はもう司達を第三の敵勢勢力とみなしたのか、
組織の中でも上級の『ソーン』と『ライオン』を送り込んできた。
しかもあちらこちらで爆発がおきてる辺りを考えると人間とファンガイアの戦いも起こってるんだろう。
とにかく良太郎に亘をまかせ、司達は別ルートで学校に向かう。しかし向こうも上級ファンガイア、すぐに追いつかれてしまった。
「仕方ないなクソっ! 変身!」『カメンライド』『ディケイド!』
「変身っ!」
しばらく肉弾戦が続き互角かと油断してたが、司達には圧倒的に戦闘経験が足りない。
どんなにスペック的にはこちらが上回っていても、戦闘センスが勝てないのだ。
「ぐわあっ!」
「うおっ!」
なんとか互角に戦っていたがついに押され始める。
「――そうだッ!! うおおおおお!」
何か閃いたのか、クウガが二体に掴みかかる。
正直すぐに引き剥がされてしまうだろう行動、何の意味も無いんじゃないかと一瞬思うが――
「司ぁあッ! おれを変えてくれッッ!!」
そうか、そう言う事か!
ディケイドはうなずくとブッカーからそのカードを抜き取った。
「ナイスだユウスケ!」『ファイナル・フォームライド――ククククウガ!』
「何!?」
「なんですか!」
「一気に決めろ!」『ファイナル・アタックライド』『ククククウガ!』
クウガはクウガゴウラムに変身し、二体をガッチリとその角で掴む。
そして必殺技の発動、彼は猛スピードでファンガイアを上空に運んでいく。
『実力じゃ勝てなくてもなぁッ! 根性じゃ負けない!!』
「くっ! 離れません!」
「なんというパワー!」
ファイナルアタックライドのカードも発動している為、クウガゴウラムの角を引き剥がす事は二体には叶わなかった。
そのままゴウラムは二体を思い切り投げ飛ばす! 角の力を強化する単体必殺技、アサルトゴウラムの応用と言った所か。
どこに行ったかは知らないが、死んではない筈。それにこれでしばらくは時間が稼げるだろう。
「あいつらが原作通りじゃなくて助かったぜ……」
「そんなにやばいのか?」
「知らない方がいい。ははは……!」
だが逆に今後も知っているが知らないと言うシチュエーションができると言う事だ。
あまり知識を過信しない方がいい、ディケイドは少しの不安を覚えながらもゴウラムに掴まり学校へと急ぐのだった。
一方で亘は走っていた。
先程ファンガイアの集団に運悪く出くわし良太郎は変身、そして亘を逃がしたのだ。
幸い学校までは一本道、ここを真っ直ぐ走ればすぐに着く。良太郎が心配ではあるが、彼ならばきっと無事のはず。それを信じるしかない。
「……っ?」
ふと空を見ると何かが見えた。
小さい鳥? 虫? それはヒョロヒョロと川原の方へと飛んでいく。
少し気になるが今はそれどころじゃない。とにかく亘は学校へ着く事だけを考え、走る。
「!?」
そうして学校へは無事着いたが、校庭に里奈の姿が無い。
教室にいるのかと我夢に連絡をとったが教室にもいないらしい。
校庭にいるんじゃないの? 我夢に言われた一言。どうやら夏美も付き添っていたらしいが――
やはり、どこを見ても二人の姿はない。
「里奈ちゃん? 夏美姉さん?」
完全に気配が無かった。心配になって携帯に電話をかけてみる。
すると――
「なっ!」
里奈の着信音、可愛らしいメロディが聞こえた。
しかしそれは学校の外、亘は急いで音がする方向へ向かう。
「携帯が……!」
携帯は道の隅に落ちていた。つまり里奈は学校の外に出たという事だ!
「おいおい、マジっすか……!」
亘は我夢にメールだけして学校の外へと飛び出した。
自分は無力だが何もしないで待っているなんて無理だ!
亘はとり合えず川原に行く事を決める。ここから川原までの道は、他のみちに比べて段差が少ない。
それにさっきの虫の様な物の事もあってか亘の頭には真っ先に川原へ行くという結論がでたのだ。
「……っ! 里奈ちゃん! 夏美姉さん!」
とり合えず誰にも見つからず川原に着いた亘、名前を呼んではみたものの返事はない。
だが橋の近くに来た時、何か音が聞こえた。呻き声の様なそれを辿って亘は川原を降りていき、橋の下へ向かう。
そしてしばらく音を探していた時、ついにソレを見つける。
「き、キバット!?」
草むらの影でキバットらしき生き物がぐったりとしていた。
ちなみに亘としてはキバットを知らなかったので兄に絵を描いてもらった程度だからコレがそうだとは自身がない。
一応カラーリングが原作のキバットと違うが、姿はキバットそのものに見える。兄が言う変身に絶対に必要とされるアイテムなのか?
「だ、大丈夫か……?」
里奈の事は気になるが、キバットを放って置くこともできない。
なにせキバットは自分が変身できるかもしれない重要なキーキャラクター。
それに亘には弱っているキバットを見捨てて里奈を探す気にはなれなかった。半ば命と意思を持っているだけに見逃せないのだ。
『――た』
「え? な……なんて?」
キバットは何かを呟く。
『腹減ったっス……』
「は? あ、ああお腹ね! すこし待ってくれよ……たしか――」
亘は今日の朝、美歩にもらったチョコバーを取り出してキバットに差し出す。
キバットはスンスンと臭いを嗅いだかと思うと、勢い良くかぶりついた。
亘の手ごと……
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
『亘さんってイイ人っスねー! オイラの恩人っすよー。しかもほかの世界から来たなんてオイラびっくりっす!』
「そう……良かったよ……」
『オイラ、キバットバット四十五世って言うんです! よろしくっす!』
キバットは亘の事をすっかり気に入ったらしく、さっきから周りをパタパタと飛びまわっている。
食べ物をあげただけでそんなに懐かなくてもと思うが、まあ慕われるのは悪い気分じゃない。
亘は先ほどの無礼を笑って許す事に。
「四十五世? そんなに続いているんだね、ちなみに三世ってのは?」
『三世さんすか? たしか女性で賢かったらしいっす』
(となるとココはやっぱりキバ原作の世界じゃないのか……)
世界が違ってもキバは確かに存在していた。
なら本当のキバって何なんだ? 一瞬亘はその考えを持ってしまう。
もし兄が毎週楽しみにしていたキバと言う存在が本物ならば彼らは偽者?
いやいや、偽と言うには彼らはココにしっかり存在しているじゃないか。
自分達が知らない所で確かにキバと形態が同じ世界が存在していると言う事なんだろうか? それがパラレルワールドの最も謎な部分である。
『でもね亘さん、オイラの悩みきいてもらえないっすか?』
「え!? あ……ああ、ごめんボクこれから人を」
『実はっすね――』
(……真由さんと同じにおいがするな)
仕方ない。
まあキバットをこのままにしておく事もできないし、亘は彼の話しを歩きながら聴く事にした。
肩に彼を乗せて亘は里奈達を探しに出発する。
「オイラ達キバット族は代々この国の王に仕えるのが使命だったっす」
「王?」
『そうっす、この国は王のおかげでそれはもう平和に保たれてきたんすよ。
ファンガイアと人間は種族こそ違えども互いを尊重しあい、今まで均衡をたもってたんす』
その話を聴いて当然違和感を感じる亘。
互いに尊重し合い? 冗談だろ、助け合うどころか殺し合おうとしてるじゃないか。
そんな亘の表情を読み取ったか、キバットは力なく着地する。その目には涙が浮かんでいた。
『そうなんす。実は……最近王が殺されたんすよ』
「!」
『しかも大臣は……犯人は人間である可能性が高いって発表したんすよ!』
「大臣?」
亘は若干怪しさを覚える。
だいたいこう言うのってそのへんのポジションが犯人ってのがお約束なんだけど。
まあそれはあくまでフィクションのお話の中で、当然この世界の真実はもっと複雑なんだろうけど。
『大臣は王の昔からのお友達です。だから皆その言葉を信じたんす』
「ふぅん……」
『勿論可能性ってだけっすから、大臣も気にすることなく毎日を送れっていってたんすけど――』
「一度先入観が入ってしまえば、なかなかソレを拭う事は難しいってヤツか」
キバットは頷く。亘も昔ソレと似たよな事を里奈に相談された事がある。
だからこそキバットの言っている事が素直に理解できたのだ。
人の記憶に植え付けられた印象は、真偽は別として残り続けるもの。
この世界の人々も人間が犯人と言う噂を常に頭の中に持っていたのかもしれない。
『その日から少しずつ互いの仲が悪くなってきたんす……』
「ああ……そりゃ心に疑いがあればね」
『種族間抗争は前々からもちょっとはあったんすけど、あくまでソレは少数派でした。
だけど今回は違ったんすよ、その象徴に差別が強くなりました』
差別、亘は脳裏に強く里奈の姿が浮かんでしまった事を強く後悔する。
違う、ボクは彼女を普通の女の子として接すると決めただろうが! 違う、違う違うッッ!
亘は少し後ろめたい気持ちを抱いて唇をかむ。
『亘さん? どうしたんすか?』
「あ! いや何でもないよ、続けてくれ」
『例えばっすね、子供同士のケンカの時にファンガイアの子がやっぱり勝つんすよ。
そしたら今までだったらどっちが悪いかーとか、ケンカするほど仲が良いとか大人たちやらも対処してたんすけど……あの日から――』
うちの子に触らないでよ化け物!
人間は本当に悪知恵がよく働くな!
「成程、たがいに不信感が爆発したんだね」
『特に大人っすね。子供たちは互いに遊ぼうとしても大人がソレを許さない。そういう険悪なムードが続いて……ついに事件がおこったんす』
「事件?」
『結婚を約束した一組のカップルがいたんす。でも男の方がファンガイア、女の方が人間だったんす。
結婚を認めてくれていた互いの両親も急に反対して二人を引き裂こうとしてました』
まさか、亘は息を呑む。
キバットは察したのか、こくりと頷いた。
『心中したんすよカップルは。普通はソレで目が覚めてくれると思ってたんすけど……
二人の両親の怒りは互いの種族に向けられて、ついに全面的対立が始まりました。秩序を守るはずの二本のベルトまで戦いの道具にされて……』
イクサとサガの事を言っているんだろう。
秩序を称する二対は戦いの象徴として君臨してしまった。
『もう昔の様な平和は消え去ったんすよ! 大臣は必死に互いの種族間抗争を止め様としているみたいっすけどダメダメっす!』
争いは日々酷くなる一方じゃないか、それは亘だって知っているはず。
もうお互いはお互いの話すらまともに聞こうとしない、まともに向き合おうともしない。
『大臣は人間だからファンガイアに敵視されてますし、大臣が王を殺したって噂まであるんすよ!』
「まあ、あらぬ噂が立つのは仕方ないけど――」
『もうオイラどうしていいかわかんなくて! う、うっ……! うえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええん!!!』
ついにキバットは泣き出してしまう。
やはり大臣が怪しいと思っている連中がいるのか、亘も想像してしまった事を申し訳なく思った。
でも確かに、そんな事を思ってしまうのだから。互いの関係が日々崩れていくのは想像に難しくない。
『昔はもっと楽しかったのにぃ……うええええん!』
「お、落ち着いて。他にさ、味方とかはいないの?」
『え? あ、一応妹とアームドウエポンズ達ならオイラと同じ気持ちッすけど……』
「いるんだな、じゃあそいつ等と早く合流して策を練るんだ。ボクも微力だけど協力するからさ、頑張って元の平和を取り戻そうぜ!」
『亘さん!』
とにかくココまで聞いてしまったら協力しない訳にもいかないだろ。
変身してハイ終わりってのも心残りがある。亘は彼の頭を軽く撫でると協力の意をしっかりと示した。
「だけどまずボクは人を探さなくちゃいけない。里奈って名前の女の子、車椅子で……見なかった?」
キバットは少し考えたが体を横に振った。
「そう。どこにいるんだ……」
『心配っスね、今ココは戦場と化してます。アームド達も両方の種族から狙われてますから……早く見つけないと!』
亘は頷きキバットをポケットの中にねじ込む。
里奈を探す、争いを止める。亘の心に不安と重圧が一気に押し寄せた。
果たして自分にそんな事ができるのだろうか、争いを止めるなんてそんな事が――
「と、とにかく今は里奈ちゃんとそのアームドなんとかを探そう」
いやいや大丈夫だ、ユウスケさんだって最初はつまずいたらしいし。
亘は楽に考えようと少しため息をつく。これは試練だ、変わる為に行われる試練なんだから。
さて、時間は少し戻る。
里奈は校庭で亘たちの帰りを待っていた。夏美も一緒にいてくれたのでリラックスしていけたが――
「わっ!」
「きゃ!」
いきなり目の前を傷だらけの怪人達が通りかかった。
向こうからはこちらを確認する事はできないが、コッチとしてはいきなりだったので思わず声をあげてしまう。
三体の怪人達は青、緑、紫と鮮やかな色彩だったが、いずれもその色は赤黒い血でよごれている。
彼らは苦しそうにうめきながら学校を離れていった。
「なんだか……苦しそうでしたね」
里奈は救急箱を握り締め夏美を見詰める。
彼女が何を言いたいのか夏美にはすぐに分かった、しかしなかなか危険な賭けではある。
夏美は少し苦い顔をしたが、すぐに笑って胸を叩いた。
「よし助けに行きましょう!
護衛は自信ないですけど、誰かについてきてもらえば大丈夫です!」
「……! 先輩! ありがとうございます!!」
「ごめんなさい先輩達、私の我がままにつきあってもらっちゃって……」
「いいんですよ、この世界って完全な怪人はいないみたいですから。あのまま見過ごすのは私としてもどうかと思いますし」
「そうだぞ気にするな、よくついて来たな椿、感心だぞ」
「だってよぉ……俺、正直最近活躍って活躍してないんだよねぇ。流石になんかやっとかないとなぁ的な。つか、まあそう簡単に敵さんと遭遇なんて――」
たまたま近くにいた椿と咲夜に助けを求めた二人、時間がないためにとにかく急いで行動しなければならない。
四人はすぐにあの三体がいた方向へと――
「おい! 貴様等! 人間だな、こんな所で何をしている!」
「………ま、お約束っちゃお約束だわなww」
やばい! 速攻で見つかった!!
夏美は里奈の車椅子を掴むとおもいっきり走り出す。
「あっ! 携帯が!」
その衝撃で里奈の携帯はポーチから落ちてしまった。
夏美は後で拾えば大丈夫ですと投げやりなコメントでごまかし、一気に加速して行く。
「待てっ――ごわっ!」
兵士の顔に咲夜の鋭い蹴りがめり込む。兵士はそのまま崩れ落ち、気を失った。
「ふっ……」
「ふっ、じゃねぇよ! なにドヤ顔決めてんだお前! どうすんだコレ!」
真っ青になる椿だが、咲夜はあくまで冷静のようだ。
「ユウスケ達から電話があっただろう。
この世界で何が起こってるのかは知らんがおそらくは戦争に近いものだ。
ワタシ達はどちらの味方にもなるつもりはない。つまりコレが手っ取り早いのだ」
「つ、つまりの意味はよくわかんねぇが……まあ確かに今は早く光達を追うのが先決だわな」
そのまま里奈と夏美がしばらく進んでいると、先程の三体が路地裏で倒れているのが見えた。
相当苦しそうだ、早く治療しないと危険かもしれない。
「だ、大丈夫ですか?」
里奈は恐る恐る声をかける。
正直少し怖かった。だけどこのまま見過ごす事はもっと怖かったから、彼女は声をかけるのだ。
それは果たして良いことだったのだろうか? 少なくとも命を賭けた争いとは無縁の世界で生きてきた為に倒れている人を見たら助けると言う行動が彼らの中で優先されるのは当然の事でもある。
「ぐっ……人間か――ッ!!」
三体の内、青い狼が素早く戦闘態勢に入る。
他の二体は既に気を失っているようで、実際狼も足元がふらついている。
とてもじゃないが戦うなんて不可能だろう。立っているのも苦しい筈だ。
「大丈夫です、私達は敵じゃありません! 信じてください!」
「信じ――られるわけ……が――………」
やはり、もう限界は近かったのか狼はその場に倒れ気を失う。
夏美はそれを確認するとすぐに三体の近くに駆け寄った。
「そうとう傷が深いみたいですね。はやく治療しましょう」
「はい!」
そう言って里奈は救急箱の蓋を開けた。
人間じゃない者に有効かは知らないが、応急手当程度だがしないよりかはマシだろう。
椿達もやってきて四人で手当てを始める。少しでも良くなってくれれば良いのだが――
「治療中はおかしな事になっても対処できねぇからな。気をつけないと」
「ピカチュウはおやつに入る訳ないだろ、真面目にやれ」
「言ってねぇからんな事ッ! お前こそ真面目にやれよ! ビックリしたわ! ココでボケるかねこの女は!!」
「す、少し聞き間違えただけだろう!!」
「ハーレム物の主人公かよお前は! 耳の構造どうなってんだ!?」
「はいはい、しっかりやってください!」
「「すいません…」」
そんな話をしていると三体は目を覚ました。
自分たちの体に巻かれた包帯と、目の前にいる少女達の姿を見て本当に彼女達が敵では無いと確信する。
敵なら気絶している時に殺せばいいだけだろう。それに敵ならば手当てなどする筈もない。
『私も見てたけど本当に敵じゃないみたいよ』
狼の影から小さなコウモリが現れる。
『はぁい、キバーラよ、よ・ろ・し・く・ね!』
自らをキバーラと言ったコウモリは夏美の周りを飛び回る。
どうやら彼女も夏美達が敵で無いと確信したのだ。
「……すまない、疑ってしまって。オレはガルル」
「いいんですよ、いろいろ大変な事になっているみたいですし」
「この国の事を知らないの?」
緑の魚人バッシャーも、紫のフランケン(?)ドッガも元気とは言えないが喋れるくらいには回復したようだ。
応急手当程度のものだったが、まさかここまで回復するとは――
やはり体の構造が人間とかけ離れているのだろう。回復能力も桁違いの様だ。
「私達は別の世界から来たんです。信じてもらえないかもしれませんが……」
「……いや、俺は信じるさ。お前達の目を見ればわかる」
「この世界の人間ならボクらの事を知らない訳は無いだろうしね」
なら、話すべきだろう。夏美は少し自分達の事を説明して同時に説明を求めた。
そして四人はこの国で起こっている事を聴く。種族間抗争、王の暗殺、互いの差別――
「………」
里奈達は暫く何も言わずにソレを聞いていた。
人間とファンガイアの戦いは激化していく一方で、このままでは本格的な戦争になるだろうと
「それを止める方法はないんですか?」
「残念だが何も思い浮かばない。
我々の言葉では状況を変えることはおろか悪化させてしまう可能性が高い……」
再び皆沈黙する。
なんとかはしたいがガルルの言うとおり状況を悪化させる可能性が高い、いやほぼ確定だろう。
もう今は何を言っても無駄の様な気がしてならない。
「……ッ」
里奈は唇をぐっと噛んだ。
自分も体験したことがある差別の眼差し、どんなに普通にしていても自分に向けられるのは好奇や同情の目。
もちろんそれが不快で仕方ないと言う訳ではない。自分をを気遣っての好意である為に仕方ないといつも心で割り切っていた。
だけどやはり普通に、何の気負いもしないで生活できたらどんなに良かっただろうか?
自分の不器用さのせいで通行の妨げになったとき、後ろ指をさされて馬鹿にされる時もあった。
車椅子にいたずらをされた時も多い。そしてなによりも、自分の周りにいる人間が自分の事をどう思っているのか? それが重圧になるときもあった。
『遊園地行こうよ! え? 里奈ちゃん? ああ、あの子はいいよ。だって足が――』
苦い記憶が蘇る。
同時に心が張り裂けそうだった、たまたま聞いてしまったクラスメイトの声。
どうしようもなく悲しくて苦しくて――だからその誘いをキッパリと断った亘、アキラ、我夢の三人にはとても嬉しくて、申し訳なかった。
『里奈ちゃんだってボク達と何も変わらないだろ!』
「……あ、亘君」
いつだったか亘に言われた言葉、それと同時に亘が学校にもどっているのではないかと思う。
自分がいなくなって焦っていたら――
「夏美先輩、携帯を貸してくれませんか? 亘君に一回連絡を取りたいんです」
「あ、うん! そうですね、それがいいです」
そういって夏美が携帯を取り出そうとした時――
『あらぁ……! あれって、ヤバいんじゃないのぉ……』
キバーラの視線の先、こちらに向かって歩いてくる人間の姿が見えた。
同時にガルル達の雰囲気が変わる。確実な戦闘態勢、あの女性は何者なんだろう?
「おやおや、これはこれは王の側近の」
ふんわりとしたショートパーマ、スッキリとした香りの香水、スリムなスタイルに似合うスーツ。
現れた長身の女性は薄ら笑いを浮かべながらこちらにやってくる。
「ふふっ、傷だらけですねぇ。王を殺した報いと知りなさい!」
「なっ! 違う! ボク達は王様を殺してなんかない!」
バッシャーは女の言葉を全力で否定する。
しかし女は冷めた目でバッシャーを睨むと、視線を里奈達に移した。
どうやらバッシャーの言葉などまともに聴いていなかった様だ。
「言い訳を。それに人質とは汚い真似をする」
「ち、違いますよ! 私たちはガルルさんたちに何にもされてません!」
里奈はガルルを庇うように移動する。
しかし女には届いていないようで、それすらも強要されたのではないかと言われた。
「そうじゃないと言ってるだろう!
ガルル達は無実だ、謝罪を求める! どうしてそんなに疑うんだ!?」
咲夜はイライラしているのか声を荒げて女に詰め寄る。
だが女性は表情を変える事も無くガルルをにらんでいた。彼女もまた恨みと混乱に飲まれた者なんだろう。
「こいつらが化け物だからに決まっているでしょう? 危険分子は――」
女は手を後ろに回す。そして瞬間響く電子音――!
『R・E・A・D・Y』
「なっ!」
「ふふ、変身」『F・i・s・t o・n』
咲夜は危険を察知して後ろへ思い切り跳ぶ。
同時に女の前方に鎧が現れ、女と重なる様にして装着された。
白いアーマーに金色の装飾が見える。その顔は十字をもした様だった。
「くっ、イクサ!」
「って事はこいつが人間側のリーダーかよ!」
皆一斉に走り出す。
里奈達ならまだしもイクサはガルル達を殺す気だ。止まるわけにはいかない!
「どうして? 皆少し前までは幸せに暮らしてたんでしょ?」
里奈は必死にイクサに問いかける。しかし――
「時代は変わったのです。御嬢さん、今その化け物達から救ってあげますよ!」
「そんな……どうして――」
ボロボロと里奈の目から涙がこぼれる。
その涙でさえイクサには強要されたものに映るのだろう。
憎悪は時に人の思考を支配し、目に映る真実を歪に変形させる。
「逃がしません……よ?」
路地を曲がった時に、イクサはガルル達を見失う。
「ッ?」
向こうは大人数で怪我人もいる。
路地を曲がってから自分が彼らに追いつくまでに逃げるのは不可能のはずだが……?
何か特殊な力を使ったか、隠れていると言う訳でもなさそうだ。ならば完全に逃がしたと言う事になろう。
「……まあ、いいでしょう」
イクサは変身を解除すると、再び戦場へと歩き出したのだった。
「……助かりましたクイーン」
「いえ、いいのですよ。今まで大変でしたねガルル、ドッガ、バッシャー」
路地に逃げ込んだ一行を助けたのは王の妃、クイーンだった。
クイーンは街にいくつもの隠し小屋を作っており、その一つに一行はかくまってもらったと言う訳だ。
美しく落ち着いた雰囲気の女性だ、思わず夏美も見とれてしまう。
「どうやら状況は悪化しているようですね……
ビショップやポーンもファンガイア派として人間に敵対している状況にあります」
クイーンはどうやら里奈達の考えを分かってくれる人物らしく、安心できる人だった。
やさしそうな女性で、一見は人間となんら変わり無い様に見える。
しかし彼女もまたファンガイア、きっと種族の壁に挟まれ苦悩しているのだろう。
「クイーン。その……無礼な質問かもしれませんが、王を殺した犯人に検討は?」
「残念ですが、全く……」
「そう……ですか」
「王様はどんな状態だったんですか?」
ガルルによれば王の死体を確認できたのはクイーンと大臣ぐらいらしい。
一般の民にも、そしてガルル達でさえ死んだという情報だけだったそうだ。
つまり死体を見たのは大臣とクイーンのみ。
「王……は心臓を一突き、それで絶命していました。」
クイーンは複雑そうな表情で視線を落とす。
「犯人は憎いですが、ソレが人間でもファンガイアでもその種族全体を怨もうなどとは思っていません」
たしかに種族間抗争は前々からあった、それを収集できなかったのはクイーンも王も嘆いていた事だ。
しかしそれでも二つの種族は互いに支えあい笑いあえていたはず。今、この世界は間違っているとクイーンは言う。
「互いが互いに疑いあう世界などに幸福などありえましょうか?」
クイーンは苦悩の表情を浮かべ外を見る。
彼女は人間とファンガイア同士で争う事は間違っているとはっきり言った。
一方、亘は里奈とアームドモンスターを探すため街中を駆け回っていた。
ここは両陣地でもない境界線部分だ、それは同時にどちらからも狙われる可能性が高い場所。
早くしなければ――
「なかなか見つからないね」
『無事だといいんすけどねぇ……』
そうやって探索していくと空地にやってきた。そこにはなんと子供たちが遊んでいるではないか!
しかもキバットが言うには四人いる子供たちの中で二人はファンガイアらしい。
ギョッとする亘、このままだと危険だ。亘は急いで子供たちに駆け寄る。
「ここは危ない! はやくお家に帰るんだ!」
亘は子供達に帰宅を促すが子供たちはソレを聞かない。
「だって……ここじゃないと皆と遊べないんだもん」
「え? ど、どう言う事?」
『!!』
意味が分かったキバット、そして遅れて亘もその意味をすぐに理解する。
今までは仲良くやってきた者達がいる。しかし憎みあう中で当然その絆は他者の意思によって引き剥がされてしまう。
それはココにいる子供達だけではない、きっと他にも多くこの子供達と同じ状況にある者がいる筈。
恋人であったり、もしかしたら家族であったり。子供達の言葉はキバットにとっても亘にとっても深く突き刺さる一言だった。そうなのだ、その通りである。
「おい、何をしている!」
「!!」
それと同時に後ろからファンガイア側のリーダー、サガが現れた。
上品な茶髪の貴族風の青年と言った所か、さすがファンガイアの血を引き継いでいるだけあって雰囲気がが圧倒的だ。
思わず沈黙する亘、サガはそんな彼を注意しつつ遊んでいる二つの種族を確認する。そして迷わず人間側の子供たちに剣を向けた。
「お、おい! 待ってくれ!」
「貴様は……人間か? おのれ、よくも子供たちを危険な目に!!」
大人はそれを理解しようとしない、いやしない様に世界が変わってしまっているのだ。
亘はその現実に激しい怒りと苛立ちを覚えた。違うから拒むのか、違うから否定するのか!?
「ち、違うだろ! 子供達はそんな事望んでないんだよ、皆は一緒に遊びたいんだよ!」
「何……?」
ココは引けない、亘は目の前にいる彼に怯えつつも拳を振り払う。
もしもココで自分が呑まれれば、きっと一気に心が喰われてしまう。
キバットと交わした約束、そして目の前にいる子供達の為にもこの世界の今を壊さなければならないんじゃないか!?
自分にそんな大それた事はできないかもしれないが、せめておかしいと思う事には全力で牙を立てさせてもらう!
「なんでそんなに種族でいがみ合うんだ。人間が何した? ファンガイアが何した?
勝手に決めつけて、互いの話を聞こうともしない。それでよく一方を蔑めるよな! 呆れるぜ!!」
「人間は王を殺したに違いない! そんな種族など滅んでしまえばいい!」
「だったらもしファンガイアが犯人だったらどうなるんだ!
全員、お前を含めて滅ぶのが正解なのか? 違うだろう!? 人間だってそうじゃないのかよ!!」
「だ、黙れ!」
これ以上の会話は無駄と判断されたか、否定的な返事と共にサガは変身して亘に切りかかる。
亘はソレをギリギリでかわすとサガと少し距離をとった。やはり、戦う運命なのか?
「いや――ッ!」
違う!
そうだ、あきらめるな。この宿命に屈するのはまだ早い!!
確かに弱い自分なら何もできなかったろう、弱い弱い"人間"の自分だったら偉そうに意見を言うだけで現実を変える事はできなかったろう。
「キバット!」
『わ、亘さん!』
亘はキバットを構え呼吸を落ち着かせる。
何のために自分はココにいる? 何のために自分にその紋章は刻まれた?
選ばれた筈だ、なら今はそれに怯えるより、怯むより、鼻を高くして力を使ってやろうじゃないか!
調子に乗って、乗って乗って乗りまくってやろうじゃないか!
「ボクにこの争いをすぐに止めるだけの力は無い。だけど――」
このふざけた宿命くらいは変える!
人間とファンガイアが殺し合う未来を築かせるな。ボクには今、その力がある!
子供達の言葉を強引にはかき消させはしない、その言葉を主張させる力がある!
亘が想うのは彼女の後ろ姿。兄の後ろ姿、従妹の後ろ姿。そして皆の後ろ姿。
「ボクに力があれば、誰かの背中を押してあげる事はできる筈だ!」
『わ、亘さん……オイラに噛ませるって事がどんなことか分かってます?』
キバットの牙を介して彼の力を自分の血液に織り交ぜる。
そうすれば自分は純粋な人間ではなくなるのだろう。しかし亘はむしろ唇を少し吊り上げるだけ。
それは彼がまだ中学生と言う若さが生む判断なのか、それとも若さが与える青い勢いなのか――。
「当然、ボクはそれを望んでる」
『亘さんは戦わなくちゃいけないんすよ!』
亘は無言で頷く。守る為でも、傷つける為でもない。終わらせる為に戦おう。
それを可能にする力があれば、自分は胸を張って、むしろ頭を下げても力を授かろうではないか。
そしてソレに呼応するかのように闇の鎖が出現、亘の腰に巻かれていき衝撃と共に弾けた。
「っ! 貴様それはッッ!」
鎖はベルトへと姿を変える。
その光景にサガは目の色を変えた。そう言えば昔聴いた事がある。
人間を象徴し守護するベルト・イクサ。ファンガイアを象徴し守護するベルト・サガ。
この世界にはこの二本のベルトで調和を保ってきたと言う。だが、ベルトの数は『2』が正解ではない。
『3』が正解なのだ! 互いが争った時、現れるとされる第三の調和。
キバットが牙を介し送り込むファンガイアエネルギーと、それを受け止める人間の器。
二つが混じりあう事で生まれるのは――亘は、目を閉じてゆっくりと呟いた。
「キバット……出会ってまだ一日も経ってないボクを信用するのはできないかもしれない」
『っ!』
「でも、ボクはこのムカつく世界を一刻も早く終わらせたい。
君が同じ気持ちなら……どうかボクに力を貸してくれないか?」
『はっ! ハイ!』
亘は笑顔で再び頷く。
そしてキバットに自らの手を差し出す、キバットはそこへ勢いよく噛みついた。
ビキビキと音を立てて亘の顔にステンドグラスを模した色彩の刻印が刻まれていく。
流れ込むのは調和の力、凄まじいパワーが感じられた。
『ガブーッ!』
「……変身!」
亘はキバットをベルトへと装填する。すると彼の体が銀のオーラで形成された外殻に包まれる。
そして電子音と共に、発生する音波の衝撃波、それが外殻を破壊し吹き飛ばす。
そこにいたのは――
「貴様は第三の調和……! 混血、キバか!!」
仮面ライダーキバ。さあ、歪んだ宿命を解き放て!
次回は後半となります。
キバは意外とドッガのテーマ曲がかっこいいんだけど、テレビじゃ一回も流れて無いんですよね。もったいない。