今更どのタイミングで投稿してんの?ってなるかもですが、理由は最後に語れたらと思いますので、お暇な方はあとがきまでご覧いただければと思いまち()
それでは、今回もお楽しみください。
善「うっ……くうっ……」
柚「ほれ、涙をお拭いよ善子さんや」
善「ううっ……ヨハネよぉ……」
某日、柚希は休日を利用し映画を観に沼津まで訪れていた。
遡ること数時間前。
駅前の複合施設にある映画館へ向かう途中、なんとびっくり、バッタリと善子と出会った。
聞けば、映画を観る約束をしていたクラスメイトが、急遽風邪をひいて行けないとのことで、駅前のオブジェ前に腰掛けてボケーっとしていたらしい。
「ケーキでも食べて帰ろうかしら……」と、ぬるっと立ち上がり、とぼとぼ歩き始めて僅か数歩。
一人の人間とぶつかった。
頭を下げて謝り、頭を上げて見えた顔はよく知る中性的な顔立ちの男、高海柚希だった。
「わおヨハネちゃん!偶然だね、何してるのー?」と陽気に話しかけてきた柚希に、先程まで呪っていた運の悪さにおサラバ、MAXテンション満面の笑顔で、「今から映画!観に行かない?!」と何も考えず思いのまま突発デートのお誘いをした善子。
「わお、それも偶然……実は映画観ようと思って沼津まで来てたんだよね」と、思わぬ返答に善子のテンションは限界突破。
「じゃあじゃあ!映画!観に行こっ!」なんて、子供のように目を輝かせて柚希に無自覚アプローチ。
普段は"堕天使ヨハネ"を名乗ってカッコつけてる善子だが、無邪気に笑ってキャッキャする善子は、どうやら柚希にとってかなりのギャップだったらしく、意外な善子の一面に少しだけ鼓動が速まる。
そんなことに気付くはずもなく、「なにみる〜?」なんて柔らかすぎる笑顔で話しかけてくる善子に、柚希は頬を少し紅潮させるが、すぐに平静を装っていつものペースに。
柚「ヨハネちゃんは何が観たい?」
善「うーんそうねぇ……私が誘ったんだし、柚希が観たいもの観ましょ?」
柚「え、いいの?」
善「もちろんよ。私は友達に誘われてとりあえず来ただけだったから、柚希は観たいものがあって来たんじゃないの?」
友達に誘われて映画館に来ていた善子だったが、誘われていた映画は正直あまり興味のないジャンルだった。
だが「クラスメイトとさらに距離を縮めるチャンス……!」と意気込んで来ていたために、風邪でキャンセルになった時はかなりテンションが落ちていた。
柚「一応観たいやつはあるんだけど、ヨハネちゃんの趣味に合わないかもよ?」
善「へーき!柚希が観たいものならなんでも大丈夫よ!」
柚「んー、じゃあお付き合いしてもらっちゃおうかな?」
善「任せなさいっ!」
と、何を観るかも知らずに意気揚々と映画館に向かい、柚希の観たい映画が、国内で話題沸騰の感動作"子猫といじめっ子"だった時の善子の反応たるや。
善子は感動作、特に動物系の感動作品にはめっぽう弱く、ひとたび見れば涙腺は瞬く間に決壊し、大雨洪水警報が発令される。
大好きな人の前で号泣する姿を見せてしまうかもしれないという不安から、別作品を提案しようとも考えたが、自分から「大丈夫」と告げているため、今更その言葉を曲げる訳にも……とぐぬってしまった善子であった。
対する柚希は、よほど楽しみにしていたのか、チケットを購入後売店に向かい、パンフレットとグッズのボールペンを購入していた。
「今日は泣く準備してきたから、ハンカチとティッシュはバッチリ!」と、観る前からルンルンである。
善「ね、ねぇ柚希……これ、ほんとに、泣けちゃうやつなのよね……?」
柚「もちろん!国内で話題沸騰!誰しもが涙する超感動作なんだから!……って、内容はまだ知らないんだけどね……」
善「そ、そうよね、泣けるのよね……」
柚「それじゃ、行こっか?」
善「……へい」
受付でチケットを渡し、指定のシアタールームへと向かう廊下でも頭を抱えながら、うんうん唸っていた善子。
座席に着いて上映前の映画の宣伝やら、カメラとパトライトの被り物を被った人たちの映画盗撮撲滅の映像やらを見終えた頃に、「せっかく柚希と映画を観に来られたんだから、もうとにかく楽しもう」と決意。
そして映画が始まり25分後、冒頭の状況になっていたというわけである。
*****
柚「もー、感動系に弱いんだって言ってくれればよかったのにー」
善「自分から観るって言った手前そんなこと言えないわよぉ……」
言いながら柚希から借りたハンカチで涙を拭う善子。
映画を見終わり、南口に移動してカフェに入った2人。
映画の感想を語り合おうとしたわけだが、未だ涙の止まらない善子を慰めるばかりで、語り合えない状況が5〜10分続いている。
善「ん……ありがと……落ち着いた……」
柚「どういたしまして。落ち着いてよかった」
善「てか柚希、あんたどうしてそんなケロッとできてるの?」
意外にも柚希は善子ほどダムの決壊はしておらず、静かに涙を零すくらい。
柚希も感動作には割と弱い方。
故に平気な顔して自分を慰めてくれているのが不思議に思った善子。
感動作とはいえ万人に刺さる作品ではなかった……というわけではなく。
柚「あー……カッコつけとかじゃないんだけど、善子ちゃんがあれだけ泣いてたら、なんか守ってあげなきゃって思って……」
善「そっ、そんなに泣いてないわい!」
柚「いやいやいや、あたしのハンケチびしょびしょじゃないすか……」
善「こ、これは……その……なんというか……」
たじろぐ善子。
柚希が貸した水色のハンカチは、善子の涙を吸いに吸って、深い青に色が変わっていた。
柚「そのハンカチあげるからさ、ちゃんと涙拭きなね?」
善「ぐぅ……」
柚「ぐうの音が出た……」
善「…………っていうか!ヨハネ!!!」
柚「あはは、ディレイかかってたね〜、ごめんごめん」
2時間程度の映画を見て、現在時刻は15時過ぎ。
まだ内浦に帰るのには少し早い。
内浦方面の終バスまであと5時間近くもある。
柚「ね、ヨハネちゃんさえよければもう少しこの辺で遊んでかない?」
善「ふぇ……?べ、別にいいけど、どこに行くの?」
柚「しまった何も考えずにお誘いしたわ」
善「ぷっ……!」
額をぺちっと軽く叩きおどける柚希に、思わず吹き出す善子。
いつもの調子が少しずつ戻ってきたようだ。
善「なら、このヨハネが上級リトルデーモンの柚希を、エスコートしてあげるわっ」
柚「えっ、いいの?」
善「もちろん!だって今日、不幸のどん底にいた私を幸せにしてくれたんだもの」
柚「そんな大袈裟な……でもそういう事なら、今回はヨハネちゃんに甘えちゃおうかな〜」
善「ふふん、任せなさいっ」
*****
柚「ねぇヨハネちゃん、あれなんだろ?」
善「ダンボール……よね?」
善子がエスコートする、とは言ったもののやはりノープランだったため、仲見世通りを抜けて閑静な住宅街を、なんとなくぷらぷらと歩いていたところ、ひとつのダンボールを見つけた2人。
何やら貼り紙も付いている。
柚「拾ってください……?」
善「柚希、これ……」
ダンボールの中には黒い小さな何か。
みゃー。
か細い声で鳴き、もぞもぞ動く黒い小さな何か。
柚「子猫ちゃんだ」
黒い子猫。
善「こんな小さな子……」
みゃー。
か細い声で鳴き続け、何かを訴えている(と思われる)子猫。
柚「よく鳴く子だねぇ〜、お腹すいた?でもごめんね、君が食べられるもの持ってないや……」
みゃー。
子猫は鳴くと善子の方に顔を向け、小さな箱の中をよちよちと移動し、箱の壁に両前足をかけ、善子にこの箱から出すよう訴えるように、もう一度鳴いた。
みゃー。
善「……っ!」
柚「お、どうやらこの子猫ちゃんはヨハネちゃんと遊びたいみたいだ……ね……?」
善「……ぐすっ……ううっ……」
柚「え、え、ど、どどどどどーしたの善子ちゃん?!」
柚希が善子の方に目をやると、目尻から大粒の涙を流しながら、子猫の鼻付近に人差し指を近づけていた。
善「寂しかったよね……辛かったよね……」
動物系の感動作品に弱い善子だが、現実でそんな事が起きようものなら、フィクションのそれとは比べ物にならないくらい心を揺さぶられてしまう。
善「決めた、もう大丈夫だよ子猫ちゃん。私が、私が君のママになるからね……ぐすっ……」
柚「ちょちょちょ、善子ちゃんのおうちはペットNGじゃなかった?」
善子が住んでいるのは沼津駅南口からほど近いマンション。
近年はペットの飼育が可能な所も多いが、善子のマンションは残念ながら当てはまらなかった。
以前、沼津駅北口の建物でレッスンをした後、帰り道で犬を拾った時は、梨子の家で預かってもらったこともあった。
善「この子はペットじゃなくて家族!家族なら大丈夫なの!」
柚「おーっと、ルールの抜け道みたいな無茶苦茶理論持ってきたぞ」
善「今日から一緒に暮らしましょ、バステト!」
柚「名前までつけちゃった……しかも猫の神様の名前……」
ちなみに、以前拾った犬に付けた名前はライラプス。
ギリシャ神話に登場する猟犬の名前から取ったそうだ。
シェルティに猟犬の名前……?と当時の柚希は思ったらしいが、ニコニコ楽しそうな善子にそんなことを言えるはずもなく、柚希もニコニコと見守っていた。
善「柚希!ケージとご飯買いに行くわよ!」
柚「ちょいちょいヨハネちゃん、一旦落ち着こう。まずはお母さんに連絡してみた方がいいんじゃないかな?いきなり連れて帰ったら、いくらこの子猫ちゃんが家族って言ったってびっくりするでしょ?」
善「そ、そんなこと……ない……こともない……のかもしれない……」
以前拾ったシェルティは、母親にマンションのルールをもってして一蹴され、善子がマンションの裏にあるひっそりとした稲荷神社でこっそり飼っていたという経緯を柚希は聞いていた。
今回も同じ結末を迎えるのであれば、以前梨子に頼ったように誰かしらに泣きつくのは明白。
善「じゃあ電話してみる……」
柚「うん、いい答えもらえるといいね」
*****
善「こうするしかないのよ……お願いよ柚希!この子に生きていく道を与えて!」
結局善子の母親から得られた答えは、無慈悲にもNo。
ただどうしても諦めきれない善子は、前回同様家の裏で飼うことを画策したが、季節は夏。
しかも真っ盛り。
子猫にはあまりにも酷な環境になってしまう。
そこで柚希が提案したのは、譲渡会への参加だった。
譲渡会であれば、猫への愛を持った素敵な家族が見つかると考え、参加までの期間であれば自分の家で飼育すればいいと、あまり深く考えずに提案したのだった。
譲渡会に参加するとなると、ワクチンの接種や便の検査、ノミダニの検査、猫風邪の検査、生後経過期間によっては去勢避妊手術などなど……
これらの全てをクリアしてからでないと参加出来ないことを、提案直後に調べて知ったのである。
しかしどこのダイビング少女に影響されたのかは分かりかねるが、考えるより行動に移すことが少しずつ板に付いてきた柚希。
早速近くの動物病院へ連れて行ったのである。
幸い空いていたおかげですぐに診てもらうことができ、子猫の基本情報が分かってきた。
生後およそ3ヶ月、メスの黒猫。
外傷などの目に見える異常はなく、皮膚病も罹患していないうえ、そこまで痩せている訳でもないため、直前までちゃんと飼育されていたことが伺えるとのこと。
また、猫風邪なども患っていなかったが、ワクチンだけは未接種であったため、明日接種をすることに。
理由としては午前中に接種することで、その後の変化を観察しやすくなるためと説明してもらった。
ワクチン接種の予約を済ませ、2人は帰路に着くことに。
善「……柚希、ごめんなさい」
柚「へ?なんで謝るの?」
善「私がわがまま言うから柚希にいっぱい迷惑かけちゃって……」
柚「…………えい」
善「いたっ」
柚希は善子の頭に優しくチョップした。
柚「俺は幸せだよ。ヨハネちゃんにワガママ言ってもらうこと」
善「え、なんでよ……?」
柚「Aqoursに勧誘した時も言ったじゃん。嫌なら嫌って言う……ってそれは千歌ちゃんのセリフか。まぁでも思いは一緒だよ」
善「柚希……」
柚「もっとヨハネちゃんのワガママ、いっぱい聞きたいな」
濁りのない、澄んだ瞳でさらっとキザな言葉を並べる柚希に、善子は少し頬を赤らめ、俯く。
善「じゃ、じゃあ、こんなワガママ、伝えてもいい……?」
より頬を紅潮させた善子が顔を上げ、柚希の瞳を見つめる。
鈍すぎる柚希でもこの時ばかりは流石に全てを察し、体温が上がっていくのが分かった。
善「わ、わたし……の……こ……こい――」
みゃーーーっ!!!
善「きゃぁっ!」
柚「うおっ?!」
突然大きな鳴き声をあげた子猫、もといバステト。
猫の神はまだ
「「ぷっ……!」」
呆気にとられたふたりは目をまん丸にして見つめ合い、お互いに吹き出した。
善「ふふふっ……帰ろっか?」
柚「ふふ、うん、そうだね」
譲渡会まで、あと2ヶ月。
To be continued
いかがでしたでしょうか???
ヨハちゃんが動物系の感動作に弱いっていうのは実は公式設定(設定言うな)なんですよ。
どえげつねぇほどに解釈一致すじて勢いのまま書き始めました。
ヨハヨハは善い子なので、さすがにみなさんもあーしと同じく解釈一致でしたよね?ね??んーね???
えと、ここからはわたしの空白の1年間についてつらつらと。
いきなりぶっ込むんですけど、実は恥ずかしながら少しばかりAqoursちゃんから離れておりまして、わたしの頭の中は虹ヶ咲と野球と馬(賭ける方も見る方も)と酒でいっぱいになってまちた()
日本酒とウイスキーだいすち人間になりまちた()
あと推しの馬が出来まちた(引退したけど…)
なんでまた投稿したかと言いますと、もう内容から察してると思いますけど、幻日のヨハネですねぇ…はぁい。
ヨハ子ちゃんは元々すちだったのですが、一気に加速しちゃいまして、昨年11月と今年1月ってか4日前に沼津行きまして、もう沼津とヌマヅにスブズブです。
Aqoursちゃんの曲とかも一気に追い始めて、ちょっといまモチベがえげつねぇです。
そんなこともあり今回のヨハちゃん回は前後編でお届けすることにしました。
社畜やってるんでなかなか投稿できない日々が続くかもですが、これからも応援していただけたら嬉しい限りです。
それでは、また次のお話で。