今回はつなぎの回です。
投稿バグが起きなければいいですが・・・
さてさて、場所は変わり―――――
ゴールドシーフに見事に逃げられたクロスであるが、彼はその後3体のゴールドシーフを狩ることに成功していた。
その分もあって、日はとうに沈み、あたり一体は薄闇に包まれている。
遠景には街の明かりやフィールドに設けられた光る鉱石や植物が輝いているのが見えるが、やはり昼と比べると頼りない光度だ。
夜間はモンスターの強さも昼と比べて上がって危険なのだが、最前線プレイヤーであるクロスにはそれでも到底敵わない。
時おり襲い掛かってくる凶暴化したモンスターを片手間に蹴散らしながら、クロスは主街区へと帰還する。
「クロスさん!」
主街区に入り、クロスの視界にその旨のメッセージが表示されたのとほぼ同時に、クイナの声がクロスの耳に響いた。
「レベルは上がったか?」
「はい!2つ上がりました!でももうすぐ経験値も溜まるので、3つ上がったようなものですよ!」
なぜか知らないが、妙にクイナのテンションが高い。
「ああ。俺も両手剣スキルがかなり上がった」
クロスも兜をつけたまま言った。
ゴールドシーフで金稼ぎもしていたことは秘密である。
クイナはうさぎのようにピョンピョン跳ねながら言った。
「では行きましょう!最近いい貸家を借りたんですよ!」
「……あぁ」
一瞬、クロスは不審そうな顔をする。
疲れた身体はすぐに思考を放棄して、クロスはうれしそうに先導するクイナについていった。
五分ほど歩くと、少し前を歩いていたクイナが立ち止まった。
「ここ、ここですよっ」
そう言ってクイナが指差したのは、質素な二階建てのログハウス。
街の西郊外、NPCもプレイヤーも少ない場所に、それはあった。
元々この階層の街は山岳沿いにあり、高低差が激しい。
モデルの都市はイタリアにある山岳都市、マテラだろうか。
半ば斜面と融合する形で急傾斜に建てられたログハウスは、また石造りが多いこの街では目立っていた。
しかしここの貸家が取られていなかった理由は、不便で目立たない郊外にあるからに違いない。
「クロスさん!こっちです!」
ドアを開けたクイナに手招きされて、クロスもログハウスに入った。
予想通り、中も木材重視で、温かい感じのするレイアウトだ。
シンプルなテーブルには穏やかそうな中年の女性が腰掛けている。
「あの人に言うと借りられるんですよ。……あのー!」
そういうが早いか、クイナは女性NPCに声をかけ、貸家の契約を始めた。
(はぁ……なんでクイナはあんなに元気なんだ……)
そして数分後。
貸家であるログハウスの二階を借りたクロスとクイナは、二階に上がってくつろいでいた。
二階は風呂やベッド、小さいながらもテラスまであって、確かにクイナの言うとおり優良物件である。
だが、クロスにはいささか疑問に感じるところがあった。
(……なんで俺も入れたんだ?)
身長も同年代の中では大きく、また声も低いのはクロス自身も知っている。
だがいくら年齢を言っていないからと言っても、彼がまだまだ若いことくらいはわかるはずなのだ。
当然クイナは未成年であり、そしてクロスはなんだかんだ言っても男である。
元より女性が苦手で、堅苦しい会話しかできないのに、急に招待などされても「借りてきた猫」の状態に陥るだけなのだ。
正直言って、勘弁して欲しい。
ここで羨ましいとか、爆発しろとか願った奴。
ちょっと考えてみてくれ。
仕事やネットに入り浸りで対人スキルゼロ、女子との会話率が一月3%切ってる人間が、急に美少女の部屋に連れてこられたらどうする?
まぁ、だいたいの事をあげてみよう。
・襲い掛かってコード発動、黒鉄宮送り。
・パニックになって変なことを口走り、追い出される。
・硬直してNPC同然になる。
この中でクロスが陥ったのは三つ目だ。
「……あの、クロスさん?」
「ん?ア、いや、大丈夫ダ」
首をかしげるクイナに、クロスはいつもよりもさらに硬い声で応じる。
「……ホントに大丈夫ですか?」
当然のごとく不審に感じたクイナが、訝しげな表情で言った。
「ああ、大丈夫ダ」
「そうには見えないです……。あっ!それより、ボス攻略のこと、知ってますかっ!?」
クイナはテーブルから身を乗り出して、輝くような笑顔を浮かべて言う。
「今募集中らしいです!私たちも参加しましょうよ!」
「うん?だが普通の戦闘とはわけが違うぞ?俺もあまり攻略に参加したことは無いんだが、圧倒的な強さだという……」
今まで10回ほどしかボス攻略に乗り出していないので、断言はできなかった。
しかしキリトやクラインに聞いたところではかなり強いらしく、優秀な指揮官と入念に練られた作戦でなんとか犠牲者ゼロを保っているのだという。
そうなると、今回も緻密な作戦のもとに攻略されるのだろうが、それでも万一と言うものがある。
(せめてフィールドボスくらいは経験させてからが良いんだが……)
だが、そう心配するクロスをよそに、クイナは初めてのボス戦を楽しみにしているようで、
「はい!大丈夫です!」
と気丈に言う姿はとても活気に満ち満ちていた。
制止などできるわけもない。
クロスはクイナと会ってから急激に多くなったため息を吐く。
「……わかった。だが無理はするなよ。お前はまだまだ攻略組内では低レベルなんだからな」
「わ、わかってますっ!!」
クロスの付け足した言葉に、クイナは怒ったようにふくれながら言った。
(久々の攻略……面倒なことがなければいいが……)
そのクロスの疑問は結局消えないまま、攻略は始まる。
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