新年二回目の投稿です!
なんと我輩、正月の御話は書き忘れておりました! 申し訳ないでござる!
そして、今年もどうぞよろしくお願いいたす!
改めて、このような世迷い事のごとき小説を読んでくださって、ありがとうございまする!
ところどころに生えたクリスタルが、淡い光で漆黒の壁を照らしている。
通常のフィールドとはケタ違いの「重さ」によって造られたボス部屋前の広場は、訪れたプレイヤーたちに荘厳な威圧感を与えていた。
そして黒鉄と金の金具で作られた大きな両開きの扉の前には、武者鎧を纏うムラマサが、腕を組んで堂々と立っている。
「皆の者!! 覚悟はよいかッ!!」
「もうアンタの自慢話で削ぎ取られたよ……」
声を張り上げるムラマサに、クロスの隣に立っていたキリトが疲れきった顔で言った。
「まぁ、運が悪かったんだ。それより、気を引き締めろ」
「わかってる」
クイナはプレッシャーに耐えているのか、何も言わない。
「そういえばキリト。お前最近<閃光>さんと仲良くやってるらしいな。噂になってるぞ」
「なっ! 別にそういうのじゃねぇよ」
キリトは憮然とした態度で答えた。
その少年らしい態度にクロスは兜の中で笑うと、前を向く。
ムラマサの演説は、終わろうとしているところだった。
ムラマサは刀を抜き、見せ付けるように高々と掲げる。
「ではゆくぞ!! 開放の日の為にッ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」
扉が開くと同時に、ムラマサを先頭としてプレイヤーたちが次々と突入していく。
クロスたちも重々しい扉を抜け、中に入る。
扉を抜けると、足元から水を蹴散らす音が聞こえた。
――――情報通り、部屋の中は水があるようだ。
くるぶしにも届かない、水溜り程度のものだったが、その水がどれだけ移動時にシステムに影響を及ぼすのかまではわからないから、油断は出来ない。
偵察隊の話では霧が立ち込めていたそうだが、今のところ視界を邪魔する物は何もなかった。
「意外と滑るな……」
「あぁ、気ぃつけんと足すくわれんでコレ……」
周りのプレイヤーの声が漏れ聞こえる。
「だ、大丈夫なんですか……?」
「あぁ、扉が閉まったあと、ボスが現れる。そう不安になるな」
不安げな表情でダガーを構えるクイナは、きょろきょろと部屋中を見回していた。
「おい、霧が来たぞ!」
男性プレイヤーの声。
見てみると、たしかに白い霧がゆっくりと部屋に漂いつつあった。
遠くにいるプレイヤーの影が白い霧に飲まれ、消えていく。
少し離れたプレイヤーも灰色の影のようにしか見えなくなって、ついにはすぐ隣にいるクイナとキリトすらわずかに白く見えるほどだ。
「こりゃやばいぞ……連携がとれないじゃないか……」
「あぁ。まさかこれほどとはな……。クイナ、離れすぎるなよ」
「はいっ」
クイナは神妙な顔で頷くと、クロスに近づく。
「――――来たっ!! 広がって!!」
突如霧の中に響き渡った声は、聞き覚えのあるものだ。
アインクラッド最強の細剣士(フェンサー)であり、最も美しいと云われる、<閃光>のアスナ。
その声を聞いたプレイヤーは即座に散開し、それぞれの武器を手に駆けていく。
クロスも霧の中に出現したフォントを睨みつけながら、刀を構える。
<HEZE GREY BEER>。
それは、全長5メートル近くにも及ぶ、巨大な熊だった。
霧のせいか体毛のせいか、その姿は灰色の影にしか見えない。
しかし大木のような腕を振るい、タンクに重い攻撃を繰り出している姿は、ボスモンスターであり、クロスたちの敵だった。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ムラマサが刀を振り、猛然とクマの足を切りつける。
それは予想通りさまになっていて、彼が実力者であるということを示していた。
ムラマサを筆頭に大きな盾を構えたタンク部隊が突入し、クマの攻撃をいなす。
その隙にアスナ率いる第二陣が攻撃を仕掛け、鋭い突きがクマを貫いた。
「へぇ、なかなかいい作戦だな」
――――数時間前、ムラマサが提案したのは、『波状攻撃』と呼ばれるものだった。
レイドを「タンク部隊」「第一陣」「第二陣]「第三陣」と四つにわけ、順番に攻撃するという作戦だ。
まず、タンク部隊はボスモンスターの周囲に張り付き、ヘイトを稼いで他のプレイヤーに攻撃がいかないようにする。
次に第一陣が突撃し、一、二撃加えた後、モンスターの背後へと駆け抜ける。
そのあとも第二陣、第三陣と同様の攻撃を加え、それを繰り返して少しづつ攻撃を加える。
それが、ムラマサの立てた作戦だった。
「よし、次は俺たちだぜ」
「はい!行きましょう!」
クロスたちは第三陣だ。
猛然と大地を蹴って、十数人のプレイヤーが突進していく。
「はあぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」
キリトが黒剣を振るい、血のような紅いエフェクトが散る。
霧に紛れそうな<ヘイズ・グレイベア>のHPゲージがわずかに減り、それが波状攻撃のたびに削られていく。
「よし! いけるぞッ!」
「うむッ! 皆の者、この調子だッ!」
全部で5本あるHPゲージ。
その1本目が、今にも消滅しそうなほど減っていた。
「はあぁぁぁっっ!!」
そのわずかな残りも、重厚な金属鎧に身を包み、分厚い両手剣を持ったタンクの攻撃で削りきられる。
――――ようやく一本!
見え始めた目標に、全員の闘志が燃え上がる。
だが、そのとき、霧の中で凄まじい咆哮が響き渡った。
「グォオォォォォォォォッッッ!!!」
足元が揺れ、大気が震える。
その怒り狂う龍のごとき咆哮に、全員の足がすくんだ。
「な、なんだ、これ……」
「た、ただのクマじゃねぇのか……」
そのすくんだ声を、別の声が一喝する。
「お、おい! ただデケェ熊が霧にいるだけじゃねぇか! ただの――――――」
――――――ゴウ。
荒々しく、だが静かな風切り音とともに、灰色の影が駆け抜ける。
その豪腕は紅い光芒を放ち、置き去りにされた燐光が淡い線を描いた。
小さな人影が、チリのように舞う。
それは数十メートル弾き飛ばされ、青いガラス片を撒き散らしながら四散した。
「――――――え?」
誰かが呟いた。
誰も、今起きた刹那の光景の意味を、理解していなかった。
プレイヤーの何倍も巨大な体躯を持つ猛獣。
その双眸は白い闇の中でも煌々と真紅に輝き、だらりと垂れた豪腕は、まるで獲物を誘うように揺れていた。
感想ありがとうございます!
やはり感想が来るとやる気がみなぎります!
いや、こんなこと言うのはおこがましいんですけどね(苦笑)。