ソードアート・オンライン 蒼騎士の太刀   作:ロングボウ

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伏線を引きまくっている私ですが、回収しきれない場合があります。


16 思い出

 あのあと、俺は28階層から移動した。

最強のストーカーがいなくなった今、俺が篭るのは前まで借りていた郊外の借家だからだ。

 

 借家の主であるNPCと契約したあと、俺は当然のごとく引き篭もった。

外に出るとまた<カタナ>使いに絡まれるのは眼に見えているからだ。

 

 それに、親しい奴らにはメッセージを送ってあるから、会いたければここに来るだろう。

 

 ふと、細木の枠に切り取られた窓を見た。

窓の向こうには、ようやく温かくなり始めたかどうかという、冬の終わりの風景が広がっている。

 

 2024年、4月。

 

 現実世界では桜がつぼみをつけ始め、入学式や卒業式がひっきりなしに行われている季節だ。

当然SAOにそんな行事は無いし、まだ見つかっていないだけかもしれないが、きっと桜も無いだろう。

 

 新芽が伸び始めた黄緑色の景色は綺麗だが、もう2年も桜を見ていないとなると、少し恋しかった。

 

 こんな光景を見ていると、思わず思い出してしまう。

 

 今度はおもむろにメニュー画面を開いた。

装備一覧とともに出現した己のフィギィアを眺める。

 

 

 レベル88

 右武器 業物(わざもの)太刀 白焔+2

 左武器 (両手武器のため装備できません)

 頭部  ダークナイトヘルム+13

 胴部  ナイトブルーアーマーコート+10

 腕部  ブレイヴブラックグローブ+7

 腰部  ローグベルト+9

 脚部  近衛騎士の軍靴(ぐんか)+9

 付属品 流星のカフス

 付属品 白金のアンクレット

 

 

 昔と比べて随分と成長したものだ。

変わってないのはもう、近衛騎士の軍靴とダークナイトヘルムのみである。

 

 今度は違う項目をタップして、慣れた操作でスクロールし、止めた。

 

 

 <大太刀>。

 

 

 俺に新たな力を与え、今の仲間と出会うきっかけをくれたスキルでもあり、また、俺から『なにか』を奪っていったスキルだ。

 

 

「――――へぇ~、そうなんやっ! じゃあ今からクロちゃんな! よろしく!」

 

 

 どこまでもようきな、彼女の声が聞こえた気がした。

彼女の若草色の長髪が、風に揺れる。

緑と白の、清潔そうなワンピースが、目に映った。

その周りを、8人の人影が囲んでいる。

その中には、鉄兜を被り、カタナを差すどこか見慣れた奇妙な騎士の姿もあった。

 

 零細ギルド<チェイフル>。

 

 無口なソロプレイヤーだった俺に親しく接してくれたそのギルドマスターは――――

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――もう、どこにもいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 こんこん。

 

 静かな部屋に、こもったノックの音が響いた。

誰だろうか。

 

外を見ると、いつのまにか日は傾いて、階層の隙間から斜光が差し込んでいた。

若草色の光景は黄金の光に包まれて、神秘的なな情景を生み出している。

 

 この場所を知っているのは、本当に数少ない。

 アギル、クイナ、キリト、クライン、エギル。

そしてボス戦以降少し親しくなったムラマサ。

 

 本当にそのくらいだ。

 

 誰だろうと思いながら、質素な木製のドアを開ける。

 

「――――なっ!?」

 

 俺は思わず仰け反った。

だが、ノックの主はその無礼に眉をひそめることもなく、俺を見つめる。

 

 

「――――やぁ、こんにちは。クロス君」

「ヒースクリフ……!?」

 

 ヒースクリフ。

最強ギルドの一角<血盟騎士団>のリーダーであり、俺の<大太刀>と同じユニークスキル<神聖剣>を用いる聖騎士。

第50階層ボス攻略戦での多大な功績は、このアインクラッドで最強のプレイヤーであると謳われるには十分であり、そのユニークスキルも相まって、名実ともに最強プレイヤーの一人に挙げられる。

 

 そのわりには攻略に参加することは少なく、<血盟騎士団>の実質の指揮権は副団長<閃光>のアスナにあった。

謎の多い男である。

 

 だが、問題はそこではない。

 

 なぜ俺の居場所がわかったのか。

そして、その目的は何なのか。

 

 俺は思わず怪訝な眼をヒースクリフに向けた。

真鍮色の磁石のような魔力を持つ瞳が、無感情にこちらに向けられる。

 

「……なんのようだ?」

「それは君もわかっているのではないかね?」

「……ユニークスキルのことか? いっておくが、俺は出現条件なんて知らんぞ」

 

 その言葉に、ヒースクリフはわずかに嘲笑を浮かべた。

 

「そんなことをたずねるつもりは無いよ。ただ、二人目のユニークスキル獲得者がどんな人物なのか、見ておきたくてね」

 

 どこか達観した、ある意味上から目線とも取れる言葉。

 

「……そうか」

「では……。それを踏まえた上で、たずねたい」

 

 周囲の空気をさらに冷えさせる口調で、ヒースクリフが言った。

 

 

「――――君に、血盟騎士団に入ってもらいたい」

 

 

 




ヒースクリフって、謎ですよね。
ユニークスキルは仕方ないとしても、最強なのに攻略に参加しないとか、非難されないんだろうか・・・
<聖竜連合>と仲が悪い原因のひとつのような気がします。
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