ソードアート・オンライン 蒼騎士の太刀   作:ロングボウ

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書いたのはテスト期間中なので、大丈夫。……じゃないです。大問題です。
投稿を待ってくれていた方、後れてしまい申し訳ありません……


19 再会。というより遭遇

 ボス出現場所から少し離れたところにある安全地帯で、三人は座り込んでいた。

安全地帯は枯れた樹木に囲まれた、かつては鬱蒼としていたであろう場所にあり、周囲は枯れ木の柵のようなもので囲まれている。

中からはよく見え、外からはわかりづらいというまさに安全地帯、といった感じの様相だ。

その分プレイヤーから見てもわかりづらいので、探すのに少し手間取った記憶がある。

 

「はぁー……。ってクロス! 油断しないでよね!」

 

「す、すまん……」

 

 謝ると、アギルは頬杖をついて呟いた。

 

「うぅ、あんなに火力が高かったなんて……」

 

「だが、さすが強化版だな。硬直時間が短く、怯まない。面倒だ……」

 

「ええ。攻撃力も上がってる。でも、防御力は低そうだわね」

 

「ああ。大太刀でも一撃で切断は出来ないと思っていたんだがな。……どうした?」

 

「え、ああ、いえっ!」

 

 見ると、クイナが唖然とした表情を浮かべている。

いったい、どうしたのだろうか。

 

「あの、さっきのでそこまでわかったんですか……? 初見なのに?」

 

「ああ。普通のヒュドラと戦った経験もあるが、そんなもんだろう?」

 

「……、」

 

「ん? ……まぁいい。クイナ。サモナーはどうだった。わかったことを言ってくれ」

 

 手頃な岩にちょこんと座るクイナに話を振った。

俯いていた彼女が小さく飛び上がるようにして驚く。

 

「え、あ、はい! 防御力は全然高くないです。一撃でも半分以上削れましたし、ヒュドラと連携されなければさほど強くないと思います」

 

「ふむ。じゃあどっちも防御力は低いのか」

 

 遠距離範囲攻撃が中心のサモナーと、連続攻撃が可能なヒュドラ。

地味に面倒な組み合わせなようだ。

 

 どちらかを集中攻撃することはいっけん良い案に聞こえる。

しかし、それは下策だ。

 

 ヒュドラの防御力がいかに低いといってもその体力は侮れず、またサモナーを狙えばヒュドラの八連砲にやられる。

そのサモナーもおとなしくやられてくれるとは限らないし、ハイリスクハイリターンだ。

 

「じゃあ俺がヒュドラのヘイトを稼ごう」

 

 なら、囮がいればいい。

俺がこの中で一番強いし、素早さも耐久力もある。

 

「え、き、危険ですよ!」

 

「ええ。それがいいかもしれない。でもクロス。無茶しちゃダメよ」

 

 二人が心配してくれるが、そう言っていられない。

 

 アギルは攻略組ではなく、ましてや戦闘が得意なプレイヤーですらない。

クイナは単純に、ボスモンスターに対する知識や、作戦提示の経験が足りない。

 

 だからこの中で最も強く、かつ経験豊富な俺が行かなければならないのだ。

 

「――――ン? 誰かいんのかァ?」

 

 そのとき、どこかで聴いたような声が鼓膜を震わせた。

 

「っ!? お前は……!」

 

「アァ、この前オレンジ狩りしてた、クロスか、テメェ?」

 

「あ、あなたは、あのときの……!」

 

 俺とクイナは思わぬ再会に唖然とした。

 

 白い髪に真紅の目。

背負った槍のようなものに、白い革鎧。

 

 間違いない。

 

 かつてオレンジ狩りに出たときに出会った男、ジンだ。

逃走しようとしたパララを一撃で屠り、またクロスの大太刀を最初に知った者の一人。

 

「っ! あなたはッ!!」

 

 アギルが短剣を抜いて、ジンに突きつける。

 

「おい! アギル!」

 

「へェ~、テメェが情報屋のアギルか」

 

 アギルを静止する俺に、ジンの声が重なった。

そして、アギルは突きつける。

 

「クロスッ! コイツ知らないの!? <ラフィンコフィン>の幹部候補よッ!!?」

 

「か、幹部、候補……!?」

 

 俺は愕然とした。

 

 俺の中の印象では、ジンは方法や言動こそ過激であるが、何人かいるオレンジ狩りのプレイヤーだと思っていたのだ。

それが、あの悪魔のギルド<ラフィンコフィン>の一員であり、さらに幹部候補であるとは思いもしなかった。

 

 俺はそのネームに押しつぶされて、何も言い返せない。

 

「――――ハッ」

 

 だが、その緊迫した静寂を、ジンの哄笑(こうしょう)が破った。

片手のひらで髪をかき上げて、口角を吊り上げる。

 

「アァ? まさか知らなかったのかお二人さん? そうさ、俺ァ人殺しだよッ! アハハ!!」

 

「……ラフィンコフィン……! 私の、場所を、奪った……」

 

「っ! おい、やめろッ!」

 

「――――殺すッ!!」

 

 アギルの姿がかすみ、直後甲高い音と共にジンの眼前に紫色の障壁が出現する。

アンチクリミナルコード。

アギルがジンを攻撃したのだ。

 

「おいおい、ここは安全地帯だぜェ? ンなもん効かねェよ」

 

 いつもは見せない憤怒を浮かべるアギルを、ジンが嘲笑う。

 

「やめろアギル! ここでやっても意味がない!」

 

 思わずジンとアギルの間に割って入り、二人を引き離した。

だが、アギルに俺は見えていないようだった。

俺に、いや俺の後ろにいるジンにこれまでにないほど強く怒鳴る。

 

「アンタたちが、私のッ! ギルドのみんなを殺したッ! なんで!? 殺してやるッ! 殺してやるッ!」

 

「……、」

 

「……やめろ、アギル。アイツに言っても仕方がないだろう。復讐に意味は、無い……」

 

 正確には、復讐に意味はある。

復讐することで己の気持ちを整理し、過去と向き合うことが出来るのだ。

そこから立ち直るか、廃れるかは個人の問題だが、少なくとも過去から逃げることは出来なくなるのだ。

だから復讐に意味が無いわけではない。

 

 だが、ここでそれを言えば、アギルは止まらなくなってしまう。

だから嘘をついた。

 

(現実に還れたら、謝らないとな……)

 

 気がつけば、ジンの姿は消えていた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「ごめんね。ほんとに、ごめん……」

 

「気にしなくていいですよっ。また行けばいいんですからっ」

 

 帰路につく俺たちに、アギルが気まずそうに謝罪した。

クイナが跳ねながらそんなアギルを励ますが、芳しくないようである。

 

 ジンが消えた後、そのまま俺たちは撤退していた。

もちろんボスモンスターのヒュドラとサモナーに予想外に苦戦したこともあるが、アギルの今の状態で戦闘するのは危険だと判断したためだ。

アギルもそれを察しているのか、それともラフィンコフィンと遭遇したからか、少し申し訳無さそうな疲れた表情をしている。

 

 しかし、気になることがあった。

 

「ジンが<ラフィンコフィン>だったとはな……」

 

 呟くように小さい言葉は、風に阻まれて誰にも聞こえない。

 

 ジンが<ラフィンコフィン>なら、なぜ彼はオレンジ狩りをしていたのだろうか。

 

 <ラフィンコフィン>以外のオレンジプレイヤーが許せなかったのだろうか。

 

 それとも、別の理由があったのだろうか。

 

 考えても意味の無い事が渦巻く。

 

「――――ロスさん? クロスさんっ」

 

「っ!? どうした?」

 

 気づけばクイナが上目遣いに覗き込んできていて、俺は思わず驚いた。

 

 言っては悪いが、この少女には自分が美少女であるという自覚が足りない。

いくら年齢差があるといっても、女性経験が皆無な俺にとっては色々とこっ恥ずかしい事が多いのだ。

 

 まぁ兜のおかげで、周囲には全く気づかれていないのが幸いである。

 

(これだから、この鉄兜を手放す気になれないんだよ)

 

 

 

 




いつもご愛読ありがとうございます。
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