ソードアート・オンライン 蒼騎士の太刀   作:ロングボウ

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41 邂逅

 眼前に火花が散り、その衝撃にクイナは思考を停止することを強制される。

なんとか足を踏ん張り、クイナは顔をあげた。

 

「うぅ~~……」

 

 自分と同じくらいの少女が眼を回して唸っているのが見えた。

彼女が激突したのだろうか。

 

「あっ、だ、大丈夫ですか!?」

 

 こちらに駆け寄ってきた青年が頭を下げる。

どうやら彼は彼女の知り合いらしく、眼を回す彼女を抱き上げると、困ったような表情を浮かべた。

 

「すいませんっ。シオンを見失ったばかりに……」

「し、おん……その子ですか?」

「はい。あ、僕はラファルといいます。あともう一人……おーい! ジンさーん!」

 

 ラファルはきょろきょろと辺りを見回しながら相棒の名前を呼ぶ。

 

(ジン……)

 

 脳裏にあの白髪に紅い眼の青年がよぎる。

だが人違いだろう、そう判断して力を抜いたとき――――

 

 クイナは見た。

 

 雑然と伸びた白い髪から気だるそうな紅い瞳を覗かせる、その青年を。

 

「ッ――――!!」

 

 瞬時に背後へ跳んだ。

すぐに背中が壁に激突するが、クイナにそれを気にする余裕はない。

 

「あなたは……」

「……チッ」

 

 腰の小太刀に手を伸ばすクイナに対し、ジンは顔を歪めて舌打ちを返した。

 

「あれ、知り合い、かい……?」

 

 そのまぬけな声は、両者の間に散る殺伐とした空気を当たられて困惑したラファルの呟きだ。

 

(この人、ジンを知らない……!?)

 

 確かにジンはラフィンコフィンの幹部、あるいはその候補ではあるが、ザザやジョニーブラックほど知られてはいない。

しかし彼が優秀なプレイヤーであり、同時に殺人者であることは、ある程度は有名なはずだった。

クイナは驚きながらも、これ以上刺激しないよう細心の注意を払って、口をつぐむ。

 

「……はァー……たしか、クイナだっけか?」

 

 彼は気だるそうにため息を吐いた。

まるで気まずい関係の知り合いとうっかり出会ってしまった、そんな風に。

 

「……ええ。――――あのときのことは、感謝します」

「ああ? ……ああ、そォいやいたな。あの兜頭……クロスはどうした」

(クロスさんを狙ってる……? でもラフィンコフィンはもう……)

 

 ラフィンコフィンが壊滅したという話は記憶に新しい。

<攻略組>に名を連ねるギルドが合同で討伐隊を結成、ラフィンコフィンアジトを急襲。

両陣営に数名の死者を出したものの、ラフィンコフィンは無事壊滅した、とのことだ。

第一階層でのデスゲーム開始、血に塗れたラフィンコフィンの結成宣告、そしてこれが、アインクラッドを震撼させた三度目の事件と言えるだろう。

 

 だがまだ『殺人者(レッドプレイヤー)』の恐怖が消え去ったわけではない。

<赤眼>のザザやジョニーブラックといった高名な幹部を捕らえることは成功したものの、まだその権化である頭領プーを捕らえるには至っていない。

それに潜在的なレッドプレイヤーを入れると、まだ気を抜くことはできなかった。

 

 それが公開されている情報だ。

討伐隊のメンバーや作戦日時は復讐などを防ぐためか、正式には公表されていない。

そうだとしても、<攻略組>の主要メンバーが参加したことは誰の目にも明らかではあるのだが。

 

「……知って、どうするんですか?」

「はァー……。疑問ばっかだな、テメェ」

 

 再び重いため息を吐く。

 

「そゥ警戒すんな。言われても信じねェだろォけどな」

「……、」

 

 その言葉をそのままの意味と取っていいのか、それともなにかのメッセージなのか。

ジンの真意をクイナははかり知ることはできなかった。

 

「……あなたは今、なにを?」

「なんでもいいだろ。テメェには関係ねェ」

 

 色々な疑問がないまぜになった質問に、ジンはぶっきらぼうに返す。

 

「俺はもう、〝何者〟でもねェ。過去を背負って、生きるだけだ」

 

 そしてやはり、その言葉の真意をはかり知ることはできなかった。

 

 背を向けて人ごみに消えていくジン。

シオンとラファルは状況の理解が追いついておらず、呆然とジンの背中へ視線を向けるだけだ。

そしてその背中は、実在した革命家たちの、孤独で惨めな最期のようでもあった。

 

 

 




いつも読んでくださってありがとうございます。

前回、とうとう40話を越えました(いまさら)。
そして、新年初投稿だということにも気づきました(今更)。

明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。
そして鬼は外~、福は内~!
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