一ヶ月もの間更新停止していれば、もう失踪と思われても仕方ないですし・・・
長く待っていただいた方には申し訳ありませんでした・・・
「はぁぁぁぁぁっ!」
裂帛の声が、赤茶けた荒野に響き、放たれた紫の斬撃がモンスターを横薙ぎに切り裂いた。
わき腹を裂かれた骸骨型モンスター<ルイン・スケルトン>の紅い双眸から光が失われ、次の瞬間、青いガラス片となって砕け散る。
儚い残滓となって見えない風に流されていく青いポリゴン片に目もくれず、漆黒の衣を纏う少女は振り向いた。
「どうですか、クロスさんっ!」
その視線の向こうには、蒼い騎士。
腰に刀を差した一風変わった騎士は、いつも被っている無骨な兜を外していた。
「おう、なかなかいいんじゃないか? レベルもそれなりになってきたしな」
「はい!」
蒼い騎士、クロスの評価に少女は嬉しそうに跳ねる。
「クロスさんっ、何で大太刀使わないんですかっ? 今はわたしだけですよ?」
「あのなぁクイナ。俺はあのスキルをマスターしてるし、それにここは荒野だ。遠くからでも少しは見える」
「むぅ……かっこいいのに、もったいないです」
クイナが不満げに頬を膨らませた。それはどこか小動物のように見えて、クロスは微笑ましく思う。
クイナが半ば強引にクロスと組んでから1週間。
現在の最前線第60階層の荒野フィールドで、クロスとクイナはレベル上げをおこなっていた。
現在クロスとクイナのレベルはそれぞれ75と67だ。
階層より10上のレベルが安全圏と言われているここではクイナのレベルは少し物足りない。
クロスは十分なため観戦しているだけだ。
時たま刀や大太刀以外の武器カテゴリの練習をしているが基本はクイナの観察である。
やましい意味での「観察」ではなく、戦闘関連での「観察」である。
「じゃあそろそろ戻るか。暮れて来たし」
「はい」
健気に頷く小柄なクイナにぎこちなく笑いかけながら、クロスは転移結晶を取り出した。
「転移、アルゲード!!」
たくさんの鈴を鳴らすようなきれいな音とともに、クロスとクイナの体が蒼い光に包まれる。
オレンジに照らされた荒野が霞んでいき、最後には白い光に埋め尽くされ――――光が消え去った時には、転移は完了していた。
「おい、あれ……」
「ああ、〝蒼騎士〟と〝夜陰〟……あの二人が組んだって噂は本当だったんだな」
転移門広場から歩き始めた二人に周囲の者がざわつく。
それに怯えたのか、クイナがキョロキョロしながら声をかけてきた。
「ク、クロスさん……」
「気にするな」
二人が裏通りに入ると視線は途絶えたが、クイナはまだ少し怖いようだ。
クロスの袖をつかみ隠れるようにしてあたりを世話しなく見回している。
「……そんなに気にすることか?」
「いえ、前にあんな目の人たちに付き纏われたことがあって……」
なるほど、ストーカーというやつだろうか。
好きになるのは一向に構わないが、本人の迷惑にはならないで欲しいものである。
「……そうか……」
短く答えると、クイナはさらに続けた。
それは今まで抑えていたものを吐き出すようだった。
「何人も、ぞっとするような目で、舐め回すように見てきて……。知らない人からもたくさん話しかけられて、ボックスされたり、付き纏われたり、おどされたりしたんです。だからずっと一人で生きてきました。パーティの誘いも断って……」
「……そうか……」
突然の告白に、クロスはただそう言うことしかできなかった。
◇ ◇ ◇
「ようクロス!! 調子はどうだ?」
その野太い声の主はエギルだ。
「調子は……まぁまぁだな」
クロスが歯切れ悪そうにいうと、エギルは笑った。
「そうか……で、今日はどうした?」
「ん?あぁ、ちょっとアイテム補充」
クロスはそう答えながら品物一覧からアイテムを名指しし購入していく。
「そういえば、最近変な噂を聞いたんだよ」
「……どんな噂だ?」
クロスは内心エギルの言う「噂」を知っていたが、自分では言わないようだ。
「お前があの『夜陰』とパーティ組んでるって噂だ」
「へ、へぇ……そんな噂流れてるのか……」
クロスは答えたが、歯切れが悪い。
一方、内心ではひどく毒づいていた。
(だからクイナを隠してるんだろうがっ!!)
「で、どうなんだ?ホントなのか?」
気味が悪いニヤニヤ笑いを浮かべたエギルがカウンターにもたれながら言う。
「……そんなわけないだろ。クイナってあれだろ、忍者みたいな短剣《ダガー》使い」
「そうだよなっ!!俺はそうだと思ってたぜ!筋金入りの女嫌いのお前が美少女とパーティ組むなんてなっ! しかも貧乳!!」
エギルは爆笑しながら、腹を抱えていった。
心なしか、最後の一言でマントの中のクイナの気配が大きくなった気がする。
クロスはその様子に苦笑しながら購入の項をタッチし、買ったアイテムがストレージに入っているのを確認して頷いた。
「まったく、噂ってのは役にたたねぇもんだぜ、クラインなんか、夜陰とお前が恋人同士なんじゃないかって―――――」
「そそ、そんなわけなんじゃないですかッッ!!!」
エギルの笑い声を遮ったのは、可愛らしい少女の声。
目を丸くするエギル。
一方クロスは「まったく……」と自分のマントの影に潜む相棒に呆れ顔を浮かべていた。
「な、なんですか恋人ってっ!!?なんでそんな噂が立ってるんですかっ!!」
もう隠れる気も無いとばかりに堂々とマントから出てきたクイナは小さい背丈を伸ばして猛然とエギルに食いかかる。
突如くだんの少女が現れたエギルは慌てていた。
「えっ!?な、なんで―――――」
「なんでってそりゃ―――――あ」
「……はぁ……お前って奴は……」
クロスはため息を吐く。
彼にはクイナの「あっ」と言う引きつった表情と、エギルの驚愕の表情がひどく滑稽に見えた。
短いのは更新速度をほんのわずかでも上げるためです。
物足りないでしょうが、ご了承お願いします。