白い影編、終わりませんでした。
しかし次話ではクロスとクイナが登場してくれます。
ジンとクロスの物語が関わってくれるのはいつになるのでしょうか・・・
街の転送広場に転移したジンは、例の青年たちに連れられて近くの宿に向かった。
宿は古めかしいアンティーク調のレイアウトで、その建材のほとんどが木だ。
唯一石材らしき物は、カウンターの奥に見える竃《かまど》くらいである。
いくつか並ぶ木の丸テーブルには数人のプレイヤーが腰掛け、宿はそれなりに賑わっていた。
「あ、ではこっちに座ってください」
「おう、ありがとな」
青年はそう言って空いているテーブルを取ると、ジンのために椅子を引いた。
ジンを含めた5人が座り、みな何かしらの料理を注文したあと、青年が口を開く。
「えー、ではまず。あの、助けていただいて本当にありがとうございました。僕はラファルといいます」
「ラファル……〝疾風〟ってか?」
ジンは同名の戦闘機のことを思い出しながら、誰にもわからないほど小さく笑った。
「はい。フランス語です。よくご存知ですね」
青年も理解しておらったことが嬉しいのか、線の細い顔をほころばせる。
「改めてだな。俺はエリュヤだ。アンタの言うとおり、装備が安モンのメイス使いだぜっ」
今度はエリュヤというタンクが少し自嘲的な言葉で言うと、自らの青銅色の鎧をカチャカチャと鳴らした。
歳は30くらいだろうか、まるで鍛冶屋のドワーフのような、恰幅の良い男だ。
彼の鎧は丸い輪郭線を持つプレートアーマーで、角ばっているところが少ないためか小柄に見える。
同じ色の兜は顔の上半分を覆っていて、側面には小さく盾のような紋章が刻まれていた。
背にかけられたカイトシールドには十字が描かれ、メイスは銀色の輝きを放っている。
――――まるで十字軍のようだ。
そんな言葉が、一年半近くでファンタジー系の知識が急速に養われたジンの脳裏に走った。
そして視線をまわし、もう一人の両手剣使いを見る。
「……フェンフだ」
それに気づいたのか、フェンフというタンクは兜を脱いで無愛想に挨拶した。
歳は20代半ばだろうか。
オールバックにした黒髪に、彫りの深い顔立ちが印象的な男だ。
装備はエリュヤのプレートアーマーに対して角ばっていて、見るからに強固そうである。
兜も顔全体を覆う近世風のアーメットヘルムで、背中のシンプルな両手剣と合わせてまさに『騎士』というイメージそのものを表したような装備だった。
「すいません。フェンフは無口な人なので……」
「いや、別にかまわねェよ。後は……シフォンだったか?」
「シオンですよ」
適当に言ったジンに、すぐさまラファルが訂正した。
「あァそうか、すまねェな」
「い、いえ……よろしくお願いします」
シオンはどういえば良いのかわからなかったのか、それだけ言ってぺこりと頭を下げる。
「ああ、俺はジンだ。……で、話ってこれだけか?」
「いえいえ!あ、あのですね……」
短く済ませようとするジンを、ラファルが慌てたように呼び止める。
怪訝な顔をするジンにラファルは言いづらそうだったが、少し間を置いた後、意を決したように言った。
「あの、ジンさんに、手伝って欲しいんです!」
「……あ?」
ますます訝しがって、瞳だけを動かし、ラファルを睨みつける。
そのあまりに鋭い真紅の眼光に、ラファルも萎縮してしまった。
「なんでだ?別に俺じゃなくてもお前らを手伝える奴なんていくらでもいるぜ?それにんなことすんのめんどくせェしな」
「確かに……そうかもしれません。でも実際に僕たちを助け、助言をくれたのはジンさんですっ。だからお願いしますっ!」
ラファルはそう言って、深く頭を下げる。
ジンはしばらく何も言わず、ただ頭を下げるラファルを見つめていた。
そして、深くため息を吐く。
「……ったく、仕方がねェな。だが俺も暇じゃあねェ。なんか用あったら呼べ」
そう言ってジンは席を立つと、ラファルに背を向けて宿の出口に向かった。
ラファルは慌てて頭を上げる。
「はい!ありがとうございます!」
ラファルの嬉しさに満ちた感謝の言葉を背中に受けて、ジンは宿を出た。
見ると、もう外は暗くなっていて、各所に備えられた灯りが煌々と燃えている。
(さて、こっからどうすっかな……)
歩き出しながら、そんなことを思う。
「……ん?」
そのとき、ジンの耳に心地よい鈴の音が聞こえた。
メッセージ着信を告げる、本人にしか聞こえない音だ。
どうせプーやザザあたりがなにか言いにきたのだろう。
(はぁ、だりィなァ……)
そう思って、ジンはメッセージを開く。
『今暇ですよね? 手伝ってください! ラファル』
「……、」
ジンが先ほど出たばかりの宿の扉を思い切り蹴り開け、怒鳴り散らしたのは言うまでも無かった。
いつもご愛読ありがとうございます。
次回からは、通常通りです。