ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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まだまだ続くよ日常回、次でクラス対抗戦です


10話 中国からの転入生

クラス代表が一夏に決まってから三日、それはクラスメイトである相川さんからだった

 

「パーティー?」

 

「うん、折角織斑くんに代表が決まった訳だから、そのお祝いをしようと思って!」

 

「本当なら代表になるの紫藤くんでも良かったんだけどね、スイーツの無料券的には!」

 

「みんなでお菓子とか、軽い食べ物を持ち寄って集まるんだよ~」

 

上から順に相川さん、谷本さん、のほほんさんの台詞だが、この三人はよく一緒に居るので覚えた

 

それにしてもパーティーか、クラスの親睦会的な意味でも良いかもしれないな

 

「成る程。で、オレは何を準備すれば良いんだ?」

 

「特には必要ないかな。あ、でもお菓子とかいくらあっても足りないかもだから、何か持ち込んでくれると嬉しいかな」

 

「分かった。何か売店で買っておくよ」

 

「うん、時間は夜の七時に寮のレクリエーションルームだからね!」

 

という事である、放課後までにはお菓子を買っておこう、今日の訓練もパーティーの時間を考えると短めで、六時には切り上げるとするか

 

さてと、一夏にもこの事は伝わっているだろうが、念のために話しておくか

 

 

その日の授業が終わり、放課後となり生徒達もそろそろ部活を終えようかという時間になった頃、IS学園の門前では一人の少女が腕を組み立っていた

 

「此処がIS学園ね」

 

そう言う少女の肩には小柄な体躯に反して大きなボストンバッグが掛けられていた、通常は外に出掛けるにせよそれだけの大荷物を持つ事は少ない、それもその筈、彼女は今日初めて此処に来たのだ

 

「それにしても大きな学園よね。まあISの事を考えればこれで普通なんでしょうけど。えっと、まずは本校舎一階の総合事務室……って、何処よ!地図すらないじゃない!」

 

学園に着いてからの事を記したというメモを渡されていた少女、だがそこには淡々と文字で次の指示が書かれているだけ、手書きの簡易な地図さえも書いてはいなかった

 

セキュリティの関係でIS学園の地図は外にはあまり出回らないようになっている、その為にメモを用意した人間も手続きを行う為の場所を名前で聞いてはいたのだが詳細な場所までは把握していない為に地図を書けなかったのだ

 

とはいえそのような事を少女が知る筈もなく、苛立ち自分一人で何とかすると門を通ってどんどん先に進んでいく

 

誰か居ればソイツに道を訊けば良いだろう、そんな考えでいた少女が学園の寮の近くを通り掛かった時、その誰かを見付けた

 

「じゃあ、オレは急用があるから、お前達は先に行ってろよ」

 

「おう、また後でな、康太」

 

「うむ、私も向かうからな。また後で会おう」

 

殆んど女性しか居ない筈のIS学園で聞こえる年若い男の声、しかも片方は聞き覚えのある声と気付き少女は反射的に物陰に隠れると話し声が聞こえる方を覗き見ると二人の男子と一人の女子が居るのが見えた

 

会話を終えたのか片方の男子は此方に向かってきていたが、声に聞き覚えのある方の男子の姿を見て少女は胸が高鳴るのを感じた

 

「居た、やっぱり一夏だ!」

 

声を潜めつつ、だが歓喜の思いを一杯に詰めた言葉を呟いた少女は、しかしまだその時ではないと今にでも出ていきたい気持ちを必死に押し殺す

 

というのも彼女が気になる男子、一夏の隣には何度か顔を合わせた事のある恋敵の姿を見たからだ

 

此処で偶然に出会ったとしても印象深い再会にはなりない、もっとより劇的ではっきりと今の自分の姿を刻み付けるような再会でなければ、と考える少女、だがその様子を、まるで不審者を見るような目で見ていた少年の姿には、声を掛けられるまで気付かなかったのである

 

 

「何だアレ?」

 

放課後、訓練も終えてパーティー会場であるレクリエーションルームに向かおうかという時になって寮で織斑教諭に呼び止められ、荷物が届いているから受け取って来いと言われた

 

普通に寮まで届けて貰えば良かったのだが、中身がジェガン用の実弾等の補給品なので事務室で受け取り手続きをするようにとの事だ

 

なのでオレの事を呼びに来た一夏と箒には悪いが先に行って貰い、オレは荷物を受け取りに寮の外に出たのだが、その寮の門の辺りで百面相しながら奇妙な動きをする少女の姿を見付けたのだ

 

普通なら不審者として警備に突き出すのだがIS学園の制服を着ているし、生徒の誰かかと思い取り敢えずは声を掛ける事にした

 

「あー、大丈夫か?」

 

主に頭が

 

「うひゃいっ!?」

 

と、声を掛けるとすっとんきょうな声を上げて驚く少女、それから色々しどろもどろしながらバタバタする少女だが、一度深呼吸すると少しは落ち着いたのか勝ち気な眼でしっかりとオレを見据えて答えた

 

「だ、大丈夫よ!」

 

「まあ、それなら良いんだが……」

 

ビシッという音が聞こえそうな程に姿勢を正した少女、大慌てしていたのを見なかった事にすれば格好が付くんだがなあ

 

「それより!ねえアンタ、本校舎一階の総合事務室って何処か分かる?」

 

「ああ、それなら向こうの建物に入って廊下を右だ。オレも弾薬受け取りの手続きがあるし、一緒に行こうか?」

 

「あ、そうなの?助かるわ!今日転入してきたんだけど、行き先だけのメモ渡されて地図もなくて困ってたのよねえ」

 

成る程、彼女は転入生だったのか、道理で見掛けない顔だと思った

 

そのまま二人で本校舎まで歩いていくのだが、彼女は何というか、全く止まらない性格で会話を続けてくる

 

「そう言えばまだ名乗ってなかったわね。私は鳳鈴音、一応は中国の代表候補生よ!」

 

「へぇ、意外だな。代表候補生なら既に全員入学してきていたと思っていたが」

 

「本国で教官に学ぶ娘も多いのよ。私もそうするつもりだったんだけど、今年の入学生では面白い人が多いじゃない。そうでしょう、世界で三人目の男子IS操縦者の紫藤康太?」

 

まあ知ってるだろうとは思ってたさ、世界中でも稀少な男のIS操縦者だからな

 

しかもオレの場合は見た目で、織斑兄弟じゃない方、という識別が可能である為に、三人の中で一番に覚えられる事が多かった

 

「よくご存知で」

 

「まあ資料には目を通したからね。名前と顔だけは覚えたわ」

 

「そうか。と、着いたぞ」

 

「えっ、もう?んー、まだ色々と訊きたい事があったけど、またにするわ。それじゃあね、紫藤」

 

「康太で良いさ」

 

「そう、なら私の事も鈴で良いわ。じゃ、私は手続きがあるから」

 

「おう、またな」

 

共に事務室に入るが向こうは転入生、対してオレは実弾とはいえ受け取り手続きだけ、ISを扱う学園だけに普通なら扱わない代物ではあるが此処では毎日消費される物だ、そこまで複雑化はしていない

 

結果、オレは手早く処理を済ませた後、事務室から出て寮に戻りパーティー会場へと向かうのだった

 

 

「という訳で、織斑一夏くんクラス代表就任おめでとうパーティーを始めます!」

 

『イェーイッ!!』

 

女三人寄れば姦しい、とは言うが此処には三十人程は居る訳で、必然的に賑やかになる室内

 

あの後、自室でパーティー用に用意していたお菓子を持ってレクリエーションルームを訪れたオレが最後だったようで、まだ予定の時間ではなかったがパーティーを始める事になった

 

それぞれの手に紙コップに入れた飲み物を手に乾杯の音頭を取るのは相川さんである、イベント大好きな性格なのかこういった事をよく提案しているらしい

 

オレも一夏と、それと既視感の件で打ち解ける事になった一秋と共にパーティーに参加し、たまに他のクラスメイトと会話をしながらパーティーを楽しんでいると見慣れない、クラスメイトではない人が部屋に来た

 

「どうも~、新聞部の副部長、二年生の黛薫子でーす。噂の男子生徒三人組が参加してるって聞いてやって来ました!取材、良いですか?」

 

そういえば新聞部もこの学園にはあるんだったな、とはいえオレ達は基本的にはアリーナで訓練してたから向こうも取材の申し込みが出来なかったようだけど

 

「ではでは、早速インタビューしていきます!まずはクラス代表になった織斑一夏くん!今の心境はどうですか?」

 

そして有無も言わせずにインタビューをしてきたよ、まあ別に校内新聞くらいなら構わないけどさ

 

「えっと、精一杯頑張ります」

 

「う~ん、もうちょっと何か欲しいかなあ」

 

「自分、不器用ですから」

 

「うわ、前時代的!?まあいっか、適当に捏造しとくね。じゃあ次は、お兄さんの織斑一秋くんね。弟さんがクラス代表になってどんな心境ですか?」

 

捏造って、それは記者として良いのだろうか、等と疑問に思う暇もなく次に質問が飛ぶ

 

なんというか、黛先輩もまた逃げ道を与えずに質問する姿勢、確かに記者としては向いてそうだよな

 

「ええと、一夏の剣術を始め自分より実力があるので、頑張って欲しいと思います」

 

「んー、そこは嫉妬に燃えるコメントとか欲しかったなあ。まあいっか、次、紫藤康太くんね。一夏くんとは同じ会社の所属だけど、何か思うところは?」

 

ああ、オレの番か

 

そうだなあ、今の一夏は操縦にも慣れてきたし、模擬戦の頃よりは更にレベルも上がってる

 

その中で言うとするならば、やっぱりアレかな

 

「もっと射撃も上手くなれ、ですかね。ガトリングとバズーカは使ってますけど、他の強力な射撃兵装持ってて使えないとか宝の持ち腐れですよね」

 

「うぐっ……」

 

ビーム・マグナムを使えるようになれば射撃戦でも有効打を与えられるんだけどなあ、一夏の場合ガトリングとかも撃ちながら狙いを合わせるからまず初弾が当たらない

 

牽制にはなるが、どんなに強力な攻撃も、当たらなければどうということはないぞ、一夏よ、そこで胸を押さえて崩れ落ちてる場合か

 

「良いねえ、そういうコメント待ってたの!うんうん、じゃあ次は―――」

 

「このイギリスの代表候補生である私がコメントを―――」

 

「あ、そういうの良いから」

 

「何でですの!?」

 

そんな中で意気揚々とインタビューに答えようとしたセシリアに黛先輩がバッサリ斬り捨てたが、それに周囲がどっと湧く

 

その後もコントのようなやり取りが続いたり、オレが持ち込んでいたきのこの山が原因できのこたけのこ戦争が起きたり、のほほんさんがそれを天然のおっとり気質で終結させたりと、色々あった

 

そんな楽しい時間ではあったが、残念ながら物事には終わりが訪れるものだ

 

「はーい、それじゃあ最後に男子三人組で写真撮ろうか。代表になった織斑一夏くんを真ん中に、左右に挟むように立ってね」

 

最後に記事に載せる為の写真を、という事になって黛先輩の指示通りにオレが一夏の右、反対に一秋が並ぶ

 

「それじゃあいくよー、はい、揚げチーズ」

 

そこは普通にチーズで良いのでは、と思ったがシャッターが切られる

 

と、一体いつの間に動いたのか他のクラスメイトの皆も写真に入っていた

 

どうやって示し合わせたのか知らないが、誰も被る事なくカメラに顔が収まるようにだ

 

「あ、ちょっと!?」

 

「いやぁ、やっぱり思い出作りとしては皆で撮りたいと思って」

 

「後で焼き増しして下さいね、先輩」

 

「あー、もう、分かったわよ。でも記事には必要なんだから、次は邪魔しないでね」

 

はーい、という返事と共に二度目のシャッターが切られ、その写真は後日見掛けた校内新聞に載っていた

 

そして最初の皆で写っていた写真は約束通りに参加者全員に一枚ずつ配布される事となる

 

オレはその写真をこの世界に来てから作り始めたアルバムに綴じておいた

 

その後、夜遅くまでパーティーは続き、寮長の織斑教諭が来た事でお開きとなった

 

それなりに疲れもしたが悪くはない、そう思いながらオレは布団に入った

 

 

翌日、教室に入るとクラスメイトの女子、というか相川さんが話し掛けてきた、よく話をするからすっかり女子との会話も慣れたな

 

「ねえねえ、紫藤くん。転入生の話って聞いた?」

 

転入生、それも今朝からとなれば思い当たる人間は一人しかいない、鈴こと鳳鈴音だろう

 

「昨日、弾薬受け取りに行った途中で会ったよ。事務室の場所を訊かれたから、一緒に行ったけど」

 

「えっ、そうなの!?ねぇ、それってどんな人だった!?」

 

予想以上の食い付きだったが、改めて鈴について思い出しながら答える

 

そうだな、鈴の特徴と言えば

 

「まず小柄だったな。それに勝ち気な性格。本人いわく中国の代表候補生って話だ」

 

「中国なら私達の知ってる情報と同じだし、確定だね!で、他には?」

 

「そうだなあ、髪型がツインテールにしてたのと、あとやたら元気というか、勢いがあるというか、兎に角グイグイ来るタイプだったな。誰にでも物怖じしない、というべきか。短い付き合いだったし、この位かな」

 

後は知らない、そういえば代表候補生って話だったがセシリアのように専用機を持ってるのかも聞いてないな

 

まあISは数に限りがあるから、余程の成績でないと学生の身に専用機なんて割り振られる事はないのだが

 

「中国、ツインテール、勝ち気な性格……何だろうな、俺の知り合いも似たような感じなんだよなあ」

 

と、そこに一夏が来た

 

どうやらさっきのオレの話を聞いていたらしい

 

「案外、その知り合いだったりしてな」

 

「ハハハ、まさかそんな偶然がそうそうある訳がないじゃないか」

 

まあそりゃそうだ、ISの操縦者は狭き門、人口の多い中国なら尚更であり、それこそどれだけの倍率かと考えれば可能性なんてかなり低いからな

 

ああ、そういえば鈴の名前も聞いてたんだった、それも付け加えないとな

 

そう思った時、教室の扉が勢いよく開かれ腕組みして仁王立ちする小柄な人影が見えた

 

「そうね、偶然なんかじゃないわ。私が此処に来たのは必然よ!」

 

自信満々な笑みを浮かべて立つ人物、昨日会った鳳鈴音がそこに居た

 

「鈴?お前、鈴か!?」

 

おや、一夏の知ってる相手だったか、というか本当にその知り合いだったんだな

 

「ええ、そうよ。中国の代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来てやったわ!」

 

ビシッ、という音が聞こえそうなポージングで一夏に指を指す鈴、昨日もやってたなそれ

 

だが一夏の反応は違っていた

 

「何格好つけてるんだ?似合ってないぞ、それ」

 

「何てこと言うのよ、アンタは!?威厳出してたのに台無しじゃないの!」

 

そういう雰囲気を出そうとしていたのだろうが背が低いから威圧感はあまりなかったな、多少は出ていたのも一夏へ反射的に返した言葉で更に台無しだ

 

そういった威圧感とか、威厳っていうのは、それこそ織斑教諭レベルでないと出ないものだ、それこそ今教室の入り口に立っているような―――あっ

 

「おーい、鈴、後ろ後ろ」

 

「は、何よ?後ろに何か……あっ」

 

オレの声で後ろを振り向く鈴だが、その正体を確認すると冷や汗を流して固まった

 

本物の威圧感を放つ存在、織斑教諭が肩に出席簿を乗せて立っていたからだ

 

「ふん、気付かなかったのなら一撃加えていたが、紫藤のお陰で命拾いしたな」

 

「ち、千冬さん……!?」

 

「織斑先生だ。もうSHRの時間だ。早く自分の教室に戻れ。それといつまでも入り口に立つな。通行の邪魔だ」

 

あの鋭い眼光で睨まれた鈴は素早く教室から出ていった、一夏の知り合いならば織斑教諭とも知り合いだろうが今のやり取りで何となく力関係が分かった

 

その後は何もなかったかのように授業が行われていく、何か変わった点があったかといえば箒が上の空になって織斑教諭から叩かれたくらいだな

 

 

 

そして昼休み、昼食を取ろうと食堂まで行った時の事だ

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

食券販売機の前にて仁王立ちする鈴の姿が、というか邪魔になるぞ、他の生徒も困ってるから

 

「あー、取り敢えずどいてくれるか?周りの迷惑にもなるぞ」

 

「わ、分かってるわよ」

 

おっと、先に一夏が注意したか

 

それにしても近くに置いてあるお盆には既にラーメンが載っていた、わざわざ一夏を待っていたんだろうな

 

あのままだと麺が伸びて冷めるだろうし、オレ達も早く買って付き合ってやるか、どうせ一緒に食べるつもりなんだろうし

 

という訳で一夏と一秋は日替り定食、箒はきつねうどん、セシリアはサンドイッチセット、オレは適当に選んだカツ丼を手にテーブルへと座った

 

そして食べながら会話をする

 

「さて、それで二人はどういう関係なんだ?」

 

「それは私も気になりますわね。普通の友人にしては少し距離が近いようにも感じますが」

 

まず口を開いたのはオレだ、セシリアも同意見のようだが今朝から二人のやり取りを見ていて知り合いというのは分かっていたが、それがどのような仲なのかは知らない

 

「ああ、そういえば話してなかったな。俺達と鈴は幼馴染なんだ」

 

「正確には、箒が小四で転校して小五の頭で入ってきたんだ。丁度、入れ替わる形だな。そして中二の終わりに中国に帰った訳だが」

 

「成る程なあ。さしずめ、箒がファースト幼馴染、鈴がセカンド幼馴染といった感じか」

 

箒が転校したのは確かISが軍事的に利用されるようになった例の事件の影響だったと篠ノ之博士が言っていた気がする、まあそれはそれとして

 

「まさか鈴が来るとはな。それも、代表候補生とは……」

 

「そういうアンタは普通の一般生徒としてみたいね、箒。ま、私が優秀だったって事ね」

 

「クッ……」

 

「箒と鈴も知り合いなのか?」

 

互いに、というか鈴の方から挑発しているな

 

箒は悔しそうな顔をしている、というかあまりの力に箸が折れた

 

「箒と鈴は、鈴が俺の剣道の大会で応援に来てくれた時に出会ったんだ。けど、顔を合わせるといつもああなってさ」

 

「原因に心当たりはあるが、この調子だからな……」

 

「あー……」

 

互いに同じ相手に好意を寄せる恋のライバル、という事か

 

一秋の何とも言えない表情が今までの気苦労を表しているかのようだった、恐らくは本人達の問題とどちらにも肩入れしないよう気を遣ってたんだろうな

 

「それで鈴、いつ日本に帰って来てたんだよ。おじさんとおばさんは元気してるか?」

 

「あ、うん、元気よ……それより、アンタもだけど、一秋がISを動かせたのにはびっくりしたわ。おまけに康太まで三人も男でISを動かせる人間が居るなんて思わなかったわ」

 

うん?少し強引に話題を変えてきたような……けど一瞬だけ鈴が浮かべた表情を考えれば触れない方が良い話題という事か

 

「それは、済まない……」

 

「何で一秋が謝るのよ。別に責めてる訳じゃないけど、あれから気弱になるの、治ってないのね。前も言ったけど、一秋のせいじゃないわよ、アレは。そもそもの犯人が悪いんだから」

 

「そうだな、ありがとう、鈴」

 

「別に良いわよ、幼馴染なんだし」

 

「そうだぜ、一秋兄。この間の試合でも強かったじゃないか。もっと自信を持とうぜ」

 

「一夏……そうだな、自分もISを扱えるんだ。こんなんじゃ、駄目だよな」

 

一秋が誘拐されてそれを気にしているのは知っていたが、そういえば時期的には鈴もその事を知っているんだったな

 

勝手に振り回す人間かとも思ったが、ちゃんとフォローも出来る、良いやつだな、鈴

 

ならついでに、この中で一人だけ接点がなくて会話に混ざれない人間が居るのに気付いてやってくれ

 

「あの、鈴さんと仰いましたわね。貴方も代表候補生なのでしょう?なら、私と同格ですわね」

 

「うん?誰よアンタ?いつから居たの?」

 

「最初から居ましたわ!?それより、この私をご存知ありませんの!?イギリスの代表候補生であり、今年の入学首席であるセシリア・オルコットを!」

 

「あー、何となく知ってるわ。康太に負けた代表候補生でしょ?」

 

「なっ!?確かに康太さんには敗れましたが、今は対等なライバルですわ!これからは互いの力量を高め合い、そしていつかはリベンジを―――」

 

「でも敗けは敗けでしょ?」

 

「キィイィィィィィッ!」

 

悔しさから金切り声を上げるセシリアだが、すまん、ジェガンの宣伝の為に『第三世代機に迫る性能を持つ第二世代機』と銘打ってあの模擬戦の試合、一秋の分と含めて一部を会社のホームページで公開してるんだ

 

当然、見せ場となるトドメのシーンはちゃんと入れてる訳で、一撃で消し飛んだ一秋よりインパクトは劣るが、セシリアが敗けた時のも入ってるんだった

 

「確かに康太も強いとは思うけど、ISの操縦時間はアンタの方が上よね?なら、敗けはないわよ、敗けは」

 

「そ、そこまで言うのでしたら貴方も康太さんと戦ってみれば良いのですわ!そうすれば康太さんの実力という物を理解出来るでしょう」

 

あれ?いつの間にかオレが巻き込まれてる?

 

嫌だなあ、鈴の性格からして勝っても敗けても面倒な事になりそうだ

 

「んー、確かに気になるけど、今は止めとくわ」

 

「あら、逃げるんですの?」

 

「違うわよ!私、二組のクラス代表になったのよね。そんで専用機もあるんだけど、どうせなら今度のクラス対抗戦、そのタイミングで御披露目したいじゃない?」

 

ザワリ、専用機持ちという事実が分かった途端に周囲の空気が変わった

 

話によると鈴が国に帰ってから一年程度しか経っていない、にも関わらず専用機を与えられる程の実力を国から認められている

 

その技量はどれ程のものか、この場の全員が戦慄した

 

「という訳で一夏、アンタが一組のクラス代表だって聞いたわよ。その時まで首洗って待ってなさい」

 

それじゃあね、と言って丁度食べ終えた鈴は席を立つ

 

残されたオレ達はその様子を眺めながら軽く息を吐くのだった

 

「取り敢えず、オレの新装備を慣らしながら一夏の相手をするか。中国の新型、情報が何もないんだよなあ」

 

篠ノ之博士に頼めば分かるが、そうして事前準備ばかりをしても不測の事態への対処能力が下がりそうだし、スイーツの半年フリーパスを狙っているクラスメイトには悪いが、今回は自力でなんとかする方向で行こう

 

「そうだな。ていうか、また新装備が出来たのか?早くないか?」

 

「早さに関してはあのプロフェッサーだぞ?今回は近距離メインでの装備だったけど、なに、上手く扱ってみせるさ」

 

近距離は一夏の得意距離でもある、それへの対処にはオレも慣れる必要があるからな、これも良い機会だ

 

という訳でオレと一夏は打倒鈴に向けて放課後の訓練に臨む

 

クラス対抗戦までは残り二週間程度、みっちりと訓練をして本番の日を迎える、予定だったのだがなあ……

 

「どうしてこうなった」

 

「うぐっ……ひぐっ……一夏が、一夏がぁ……!」

 

今日の訓練終えて寮に戻ってよし寝よう、という辺りで部屋を何度も何度もノックする音が聞こえてきたので出てみれば鈴が号泣して部屋の前に立っていた、正直怖い

 

それで部屋の前で泣いてる女の子をそのままというのも居心地が悪いので部屋に上げたのだが、何だかまた面倒事の予感がするなあ……

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