取り敢えず鈴が落ち着くのを静かに待つ、ある程度泣き止んだところで部屋に新しく置いといた小型冷蔵庫の中からオレンジジュースの缶を渡しておく、喉が渇いただろうしな
「ぐすっ、ありがとう……」
「どういたしまして。それで、何があったんだ?」
「うん、実は―――」
それから鈴が話し始めたのだが、簡単に纏めると一夏と昔の約束の件で大喧嘩したとの事だ
一夏の部屋に行ったら箒と同室だと知り、その事で揉めた流れで約束の件に流れ着いたのだが、一夏と鈴で約束の内容に齟齬があり、それにキレた鈴が怒鳴り、売り喧嘩に買い喧嘩とばかりに一夏も意固地になり鈴が部屋を飛び出した、と
「ふむ、大体分かった。まあ女の子泣かした時点で一夏の非が大きい気がするな」
「でしょ、それなのに一夏ったら、女の子の心を弄んで!」
「けど、そんな約束を詳細は違えど覚えてはいた事にも驚きなんだよなあ、あの一夏だし」
「うっ、否定出来ないわね……」
短い付き合いではあるが一夏の女性関係に於ける評価は唐変木である、明らかに好意を寄せている相手が傍に居るというのに気付かない鈍感だ
だがそれとは別に聞いておかなければならない事もある、その件の約束とやらの内容だ
「それで、鈴はアイツといつ、どんな約束をしたんだ?」
「そ、それは……一夏には絶対内緒にするって誓える?」
「そうだな、何にと言われればオレは信心深くはないから神よりも、オレが命を懸ける愛機に誓って一夏に話さないと誓おうか」
「えぇ、それで良いわ。中二の終わり、私が中国に帰る事になったあの日、空港に見送りに来てくれた一夏に言ったのよ。『私が料理を上手くなったら、毎日酢豚を作ってあげる』って」
「あー、味噌汁的なアレで?」
「そうよ。それなのに、一夏ったら、『酢豚を奢ってくれる』って勘違いしてたのよ!女の子の必死の告白をあんな風に覚えてるなんて信じられない!思い出したらまた腹が立ってきたわ!」
怒髪天を突く、ツインテールを振り乱して怒りを表す鈴の言葉から大体の事情は理解出来た
まあ悪いのは一夏だな、短気過ぎる鈴も悪い点はあったと思うが、八割くらい一夏が悪い、残りは鈴の短気で状況がややこしくなった事かな
「取り敢えず暴れれば収まるだろうし、丁度今度のクラス対抗戦では一夏とも戦うんだ。その時に全てぶつけてやれ」
「そうさせて貰うわ。ありがとう、誰かに話したら私もスッキリした。今度のクラス対抗戦、康太には悪いけど優勝は二組が貰うわね!」
「オレは賞品には興味ないが、立場上は一夏を鍛える事になる。そこに手を抜くつもりはないから、精々気を付けるんだな」
「当然よ、そうでないと勝つ意味がないわ。それじゃあ私はもう行くわ。またね、康太。おやすみ!」
そうして鈴はオレの部屋から出ていく、その表情は最初の頃の陰りはなく寧ろ獰猛な笑みが浮かんでいる
「さて、オレも明日の訓練の準備をするか」
近接戦闘用装備を設定して、一夏をボコボコに出来るようにする
えーっと、確かジーライン・アサルトアーマー用のヒートランスがあったな、ヒート機能を切っておけば一夏をどつき回すには十分か
それから数日、訓練を行っているアリーナでショットガンを食らい体勢を崩したところをランスで突かれたり、グラップル・シールドで拘束されてぶん回される一夏の悲鳴が上がったとかなんとか、一体誰がやったんだろうな、恐らくは面倒事を持ち込まれた誰かがやったんだろう、きっと
◆
数日間に及ぶ特訓という名を借りた一夏へのシゴキが終わりを告げ、クラス対抗戦が行われる事となった今日、既に多くの観客がアリーナに来ている中、オレと一夏、箒の三人はピットに通じる廊下に居た
「あれだけ訓練したんだ。不安はないな?」
「あれって訓練か?俺には訓練という名のイジメに感じられたんだが……」
「わざわざオレがお前の得意な距離で戦ったんだぞ。得られた数少ない情報から鈴も近接戦闘が得意って事は分かったんだ。オレだけじゃなく、箒も手助けしたんだぞ。何を弱気になっているんだか」
得られた数少ない情報というのはネットに公開されている試合映像の事だ、機体も中国の第二世代機だったから今の機体とは違う
それでも近接戦闘に秀でているという鈴のスタイルが把握出来ただけでも収穫と言える
「そうだぞ、一夏。私も手助けしたのだ。これで敗けたのであれば、この次は私と康太の二人同時で相手するぞ」
「それはヤバいな……うし、そんな事にもならない為にも、勝ってくるぜ!箒!康太!」
「ああ、勝ってくるのだぞ、一夏!」
「敗けたら一日鈴の下僕って条件も付けておくか。勝ったなら、そうだな、食堂の高いステーキ肉奢ってやるよ」
「お前、アレって一万もする高級ステーキだぞ!?本当に良いのか!?」
「安心しろ、アテはある」
その為にもこの後に一つ仕事があるのだが、なに、楽しみながらやらせて貰うさ
そして一夏は一気に士気を揚げてアリーナへと向かう、普段は質素な食生活をしているからな、たまにはお祝い事として高い物を食べるのも良いだろう
そろそろ始まる時間だし、オレも移動するか
「じゃあ、オレはこっちだから」
「うむ、康太も己の仕事をしっかり果たすのだぞ。ではな、今回は私もセシリアと観客席で応援させて貰うとしよう」
というより関係者以外ピットに立ち入り禁止だから観客席に行くしかないんだけどな、オレは仕事の為に箒と別れて通路を進んでいく
さあ、仕事の時間だ
◆
クラス対抗戦はそれぞれの学年毎に別れて開催されるのだが、やはり一年一組のクラス代表は織斑一夏という世界でも三人だけの男性IS操縦者の中の一人である為に注目度は高い
自分の学年の試合も見ずに二年生や三年生の生徒の姿も見える観客席の中、箒はセシリアと共に並んで座っていた
「いよいよだな。セシリアならこの試合をどう見る?」
「そうですわね、まず鳳さんの実力ですが、一夏さんと同じく近接戦闘に秀でているのは確認済みです。それも、青竜刀型のブレードによる二刀流、手数では一夏さんを上回りますわ。それに加えて中国の第三世代機の特殊兵装が気になります。どのような武装なのか、全く情報がないんですもの。対して一夏さんは既に試合を行い手の内を見せた後。対策をされていると見て間違いないでしょう」
共に放課後に訓練をする事が多い二人はすっかりと打ち解けており、今も試合の内容について語っていた
「そうだな。確かに剣道でも二刀流はあるが、使い手は少ない。故に一夏もその相手をした経験が少なくなる。それに対し、どのようにして一刀で立ち向かうかだな」
「威力では一夏さんに分がありますが、取り回しの問題ですわね。あの変形、デストロイモードとやらが発動するかどうかでも一気に戦術が変わりますわ」
二人は共に訓練時の一夏の様子を思い返す
意思の強さに応じてデストロイモードへの変形が行われるという説明は聞いたが、訓練中に一度もデストロイモードへと移行した事はなかったのだ
それだけ厳重にロックされているのもパイロットへの負担が大きい能力であると知っているだけに仕方ないとは思うが、それが本番でも使えるか分からない点が不安であった
そうこうしている内に試合の予定時刻が迫ってきた、だがアリーナに一夏達が現れる前に音響設備から声がアリーナ中に響き渡る
『はい、試合開始三分前になりました!今回の実況はこの私、放送部二年のミホシがお送りします!そして今回は解説としてゲストをお呼びしています!ではどうぞ!』
『ラビットフット社所属、一年一組の紫藤康太です。未熟な身ではありますが、解説を務めさせて頂きます』
スピーカーから流れる声、片方は放送部として学園内で様々な連絡事項等を伝えていた女生徒だが、もう一人の声は康太であった
この試合に於ける解説こそが康太が頼まれていた仕事であり、報酬として食堂高級ステーキの半額クーポン券が渡されるのだ
『康太くんは知っての通り今回の出場者である織斑一夏くんの同僚であり、専用機ユニコーンの知識もあり、またテストパイロットを勤めている関係で幾らかの武装にも詳しいという事でお呼びしました!では康太くん、今回の試合について何か一言お願いします』
『どちらも得意な距離は近接戦闘ですので、激しいぶつかり合いに期待したいですね』
『ありがとうございます!それでは試合開始の時刻になりました、選手入場です!』
ワァッ!とアリーナ全体が湧き、両端に設けられたピットから一夏と鈴が現れると試合開始位置で静止する
両者共にその目には戦意が溢れ、間にある空間がビリビリと音を発しているかのようだ
「待ちわびたわ、この時を。それで、素直に謝って降参するなら今の内よ?」
「残念ながら、俺に訓練をつけてくれた皆の為にも戦わずに敗けを認めるなんて出来ないんだ。真剣勝負で行かせて貰うぜ、鈴!」
「そう、よく分かったわ。なら―――」
『試合、開始!』
「全力で叩きのめして、謝らせてあげる!」
ブザーの音と共に動き出す両者、一夏は大剣であるクレセントムーンを、鈴は一対の青竜刀型のブレードである双天牙月を構え真正面からぶつかり合う
上段から振り下ろされるクレセントムーンに対して交差させた状態の双天牙月で受け止めた鈴は、そのまま宙返りし、勢いの止められたクレセントムーンの柄を蹴り上げた
それにより両腕が跳ね上げられた一夏は腹部が無防備な状態となり、そこに双天牙月の柄を連結させて長刀状にした鈴の連続攻撃が炸裂する
バトンのように回転する双天牙月により何度も腹部に攻撃を受けた一夏は、牽制として頭部バルカンを放つが鈴はより一夏の懐に飛び込む形で避けつつ、分離した双天牙月を振るう
小回りの利かないクレセントムーンでは対処出来ない距離、それに対して一夏が取った行動はクレセントムーンを手放し、両手のビーム・サーベルを抜き放つという対処だった
「なっ!?」
「二刀流には、二刀流だ!」
今度はまさか一番の威力を持つ得物を手放すとは思ってなかった鈴の反応が遅れる
その気を逃さずに畳み掛けるようにビーム・サーベルを振るう一夏、だがレーザーの刃が鈴に届くかという時、その体に強烈な衝撃が加わった
「何だ!?」
「まさかこうも早く使わせられるとは思わなかったわ」
鈴の両手は双天牙月により塞がっている、ならば康太やセシリアのような砲撃かと思えば周囲にはそのような砲身を持つ物は見当たらない
そんな正体不明の攻撃を受け混乱する中、鈴の反撃が始まった
その様子を見ていた放送室でも実況は行われる
『僅か短時間の間に怒濤の剣劇!しかし、両者とも二刀流という更なる剣劇が起こるのかという状況で鳳選手から不可視の攻撃!康太くん、あれはどのような武装なんでしょうか!?』
『肩に砲を担いでいるとか、イギリスのブルー・ティアーズのように移動式の小型砲台を放っていたという訳ではなく、不可視という点が謎ですね。とはいえ威力は実弾程高くはないようです。装甲が売りの全身装甲機であるユニコーンは私のジェガンよりも強固な装甲で覆われています。その衝撃こそ一夏へと響くものの、シールドエネルギーは殆んど減少していませんから』
ほら、と康太が促せばアリーナに表示されている一夏のユニコーンと鈴の甲龍、その二機のシールドエネルギーは殆んど試合開始時点から変動していない
それは何度も攻撃を受けた筈のユニコーンの装甲の性能は、鈴の攻撃をシールドバリアーを使うまでもないと判断した証拠であった
『本当ですね!?これは鳳選手にとって非常に厳しい戦いです!ブレードによる攻撃も、あの不可視の攻撃も、織斑選手のユニコーンの前には通じていません!康太くん、貴方ならあの装甲をどう突破しますか!?』
『私のジェガンもですが、ラビットフット社の機体は強固な装甲に覆われ、実弾ではISの標準的なライフル程度なら防ぎます。なのでより火力の高いミサイルやバズーカ、レーザー等のエネルギー兵器にて対処します。ですが鈴の甲龍は見たところ武装はブレードと不可視の攻撃のみ。なので普通は勝ち目がないとお思いでしょう。ですが一つだけ突破口があるんです』
『突破口、ですか?それは一体?』
『殴って殴って殴り続けて、一夏の意識を飛ばせばルールでは一夏の戦闘不能により勝利となります』
『成る程、鳳選手が織斑選手の守りを崩せるか、それとも先に織斑選手が勝負を決めるのか、勝負の行方はまだ分かりませんね!』
アリーナでは一夏と鈴が未だに激突を繰り返していた
だがその様子は明らかに一夏が不利であった
まともに剣を振ろうにも鈴からの不可視の攻撃が的確に動きの起点を潰し、まともな行動を封じていた
一夏も全身装甲により明確なダメージこそ負っていないものの、その動きは精細さを欠いていた
度重なるダメージにより意識が朦朧としており、それにより更に被弾が増えるという悪循環により、意識を手放すのも時間の問題である
だがその眼はまだ闘志を失ってはおらず、ふらつく頭の中で逆転への道を模索している
今もまた謎の衝撃を肩に受け体勢を崩したものの、即座に立て直すと、体勢を崩した瞬間を狙ってきた鈴の双天牙月の一撃を避ける
「チッ、立て直しだけ異様に上手いわね!」
「生憎と、最近の訓練で似たような事をしてたんだ。その対処には、嫌でも慣れるよ!」
あまり距離を詰められるのは得策ではない、そこで一夏はビーム・サーベルを収納し両肩にハイパー・バズーカを担ぎ散弾を放つ
これが康太であったなら『散弾ではなぁ!』と言いつつ弾雨の中を突っ切って来るのだが甲龍は全身を装甲で覆わずに機動性を高めた現行で主流のタイプである為に装甲の無い部分に被弾、シールドエネルギーが減っていく
その後も不可視の攻撃により一夏が体勢を崩す事はあるが立て直しがより短時間で済むようになり隙が減っていく
有効打こそ与えられていないが一夏が反撃をするようになった為に鈴も攻めあぐねていた
『織斑選手、慣れてきたのか立て直しが早い!というより、なんか手慣れてませんか?』
『あー、実はなんですが最近の一夏との訓練で私はジェガンの近接戦闘用装備が新しく届いたので、習熟がてら使ってたんですよ。それでその装備がショットガンという、相手の体勢を崩す装備を使ってまして、更に言えば刀身こそエネルギー兵器なんですが、剣も二刀流であり柄を連結して長刀として使ったりで、偶然とはいえ鈴の戦闘スタイルと似通ってた訳でしてね』
『つまり、その経験が今こうして活かされているという訳ですね』
『そういう事です。メイン武装には槍を使ってたんですが、サブに切り替えての訓練もしていた訳で、鈴には申し訳ないんですが、偶然にも対甲龍戦とも言える訓練を一夏に施していた事になります』
そんな放送室からの声に鈴が「ふざけるなっ!」と憤慨していたが、その時、ユニコーンのセンサーが遂に不可視の攻撃の正体を暴いた
そしてそれは放送室で解説をしている康太も同時だった
『それと不可視の攻撃の正体が分かりました。一夏のユニコーンもセンサーで捉えたようなのでネタバレしますね。両肩のユニットで周囲の空間に圧力を掛けて空気を砲弾にする兵器のようです。空気なので目には見えません、それがあの攻撃の正体でした。分かりやすく言えば未来から来た猫型ロボットの持つ秘密道具だと思って下さい』
『それって対処法あるんですか?不可視ってだけで避けられませんよね?』
『はい、その不可視である事こそが最強の特性のようです。砲弾は当然ながら砲身さえも空気なので見えないですが、まああの肩のユニットから放つというのは分かるので、後は一夏が自分で答えに辿り着けるかですね。そして鈴が一夏をより早くノックアウト出来れば勝利ですが、状況は一夏が有利になってきました。此処からどのように逆転出来るか見物ですね』
この試合の流れがどうなるのか、誰もが見守る中、アリーナで対峙する二人の顔には笑みが浮かんでいた
「凄いな、鈴。こんなに強いなんて思わなかったよ」
「当然よ。けど、アンタもよく動けてるじゃない。機体の性能があるとはいえ、此処まできてまだ勝負が決まらないなんて思わなかったわ」
「そうだな、俺もビックリだよ。でもこれは皆のお陰なんだ。皆と一緒に訓練したから俺は此処まで強くなれた。だから―――」
地上付近まで降りていた二人、そして一夏が今拾ったのは試合開始当初に自ら手放したクレセントムーンであった
それを両手で構えた一夏は真っ直ぐな視線で鈴を見据えて言う
同時に、ユニコーンの装甲の継ぎ目から赤い光が漏れだしている
「俺は敗けられない。それと鈴、この試合が終わったら伝えたい事がある。大事な事なんだ」
「はっ!?えっ、ちょっと待ちなさいよ!?それこの状況で言う!?」
「今だからだよ。そして、俺は今からお前に勝つ。このユニコーンで!」
次の瞬間、ユニコーンの装甲がスライドしデストロイモードへと移行していく
データとしては知っている、まだ一秋との試合でしか見せていないそれを見て鈴は身構えた
その眼には既に先程の一夏と言葉で動揺していた様子はなく、一人の戦う者としての姿があった
また激突が始まる
◆
(ようやくか。それにしても、思わせ振りな発言だな。あれだと鈴なら別の事を想像するだろうに)
そんなアリーナの様子を見ていた康太は口には出さず苦笑していた
まるで告白するかのような一夏の言葉に、しかし一夏がどういった人間か大体理解してきた康太は伝えたい事が告白ではないと理解していたのだ
そして一夏は勝つという意思によりユニコーンをガンダムへと変形させた、それがどのような戦いを見せるのか、康太は解説を半分忘れ試合に注視する
だがそこにISのコアネットワークを通して通信が入る、一夏や鈴は試合中は繋げられない為、セシリアかと思っていたが相手は一秋だった
朝から既視感からか頭痛がする、今までにないレベルだといって寮の自室で寝ていた筈の一秋からの通信に首を傾げつつ応答した
『寮に居ると聞いていたが、何かあったのか?』
『康太、直ぐに試合を中止させて皆を避難させてくれ、頼む!』
コアネットワークを通した通信は実際に声を出す必要はない、それで解説の仕事と平行して通信していた康太だが、大した要件ではないだろう、そう思っていた一秋からの声には普段からは信じられないような焦りがあった
このような状態の一秋の事を、己の既視感の事を話した時と同じ逼迫感を感じた康太は意識を切り替えて一秋の話しに集中する
『何があった?何か、見えたのか?』
『空から何かが来る!閃光が見えて、そこから何かが!』
空、そう言われてアリーナの上空を見るが康太の視界には何も存在していない、ハロのセンサーで見ても同じだ
『こっちからは何も見えない。ハロもそう言っている。取り越し苦労じゃないのか?いや待て、今反応が―――』
センサーの範囲内に現れた一機のIS反応、その解析を行おうとした次の瞬間、康太の胸に激痛が走る
―――逃げて!
「ぐぅっ!?」
「康太くん!?どうしました!?えっ、何これ、光が?」
康太の苦悶の声に反応したミホシが見れば康太が首から掛けていたもの、サイコフレームが金色の光を放っていた
そのような状態でどうしたら良いのか分からないミホシを余所に、康太は窓から見える空に光が集まっているのを見た
それを見て急ぎ放送室のマイクを掴み、出せる限りの声で叫ぶ
『一夏!鈴!上だ、逃げろ!!』
「えっ!?」
「上だって!?」
デストロイモードとなり全ての機体性能が向上したユニコーンと、それに食らいつこうと動く甲龍、それを駆る二人は呼ばれた声に剣を振るう事を忘れて動きを止める
それが明暗を分けた、停止した二人の間、もしそのまま剣を振るっていれば居たであろう場所に極大な出力を持つ閃光が降り注ぐ
その余波の衝撃波により吹き飛ばされる二人、それを見下ろしながら、今の閃光により穴が空いたアリーナのシールドバリアーを通り抜け、その存在は地上へと舞い降りる
圧倒的な威力の閃光を放った存在、その姿を見た時に一夏と鈴は戦慄した
それは血のように紅い眼をした死神だったのだから
襲撃がないと言ったな、あれは嘘だ
襲い来る謎の襲撃者、応戦する一夏と鈴、その時、康太はどのような選択をするのか
次回、『蒼い死神』!
どう見ても襲撃者が何の機体なのか、隠す気のないタイトルである