「まさか、あそこまで重いとは……」
本来なら何人かで押すISの乗ったカートを片付け終えたオレは更衣室で一人制服に着替えていた
とはいえペナルティが一台のみで残りはジェガンを使って運んで良いと言われて助かった、どうやら織斑教諭も鬼ではなかったらしい
とはいえ最初の一台で結構な時間を消費したので時計もかなり進んでいる、遅くなるから昼食は別で摂ると伝えたのは間違いではなかったか
というよりは助かったと言うべきだろうか、今日はいつもの面子の中で女性陣が弁当を作ると言っていたのだが、その中でもセシリアの料理を食べなくて済んだと安堵している
本人はイギリスの代表候補生だからとあまり関係ない事を言っていたが、言うだけあって綺麗な見た目の料理を作る
尤も、見た目だけであって味は衝撃的だ、見た目がまともで美味しそうに見えるだけに落差が酷かった、具体的にはサンドイッチを例に挙げるとやたらと辛い卵サンドや、やたらと甘いBLTサンドなどだ
繰り返し言うが、見た目が普通で美味しそうに見えるだけに、余計にだ
前に一度食べた時は気合いで呑み込んだ、今頃は一夏や一秋が犠牲になっているだろうが、黙祷を捧げておこう
さて、オレは学食に行くか、そう思い着替えたスーツを収納したケースを片手に更衣室を出て廊下を進もうとしてそこにクロエが居たのに気付いた
「あ、コウタさん」
「クロエ、どうして此処に?まさか待っていてくれたのか?」
「はい、他の皆さんには先に昼食を頂いて貰っています」
「気にしなくても、オレは一人でも平気だったのに」
「それでもです。一人より、誰かと一緒に食べた方が良いと、前にコウタさんも言っていましたから」
「そうか、ありがとうな」
「いえ、私が自分で選んだ事ですから」
そう言う事なら悪い気はしない、むしろ気恥ずかしい気持ちになる
数秒、互いに無言になっていたが、クロエが先に口を開いた
「あの、コウタさん。実はお弁当を作ったので、一緒に食べませんか?今日は自分でも上手に作れたと思うので、その感想も貰えると嬉しいです」
「ああ、例の。分かった、付き合うよ」
以前、クロエに料理に関するアドバイスを頼まれた事があった
美味しい料理を作って食べて貰いたい人が居る、その練習に付き合って欲しいと
篠ノ之博士の事だと思うが、それを受け入れた当初の様子は大変というか、前途多難だと思った
まず包丁で食材を切る時から危なっかしいと思った、猫の手が基本と教えるまで、指を伸ばした状態で食材を押さえていたからだ
案の定、それまでにも何度か指を切った事があったようで、驚いた表情をされた
そしてその他にも、食材を炒めたりと火を使う作業の時、フライパンを火に掛けながら食材を切っていた
料理に慣れた人なら問題ない手順かもしれないが、包丁の扱いに慣れていないクロエは一つの食材を切り終えるまでの時間が長くなり、付け加えて切った食材はフライパンに投入され、クロエは次の食材を切るのに移って、その間にフライパンの食材は焦げていった
結果、出来たのは簡単な炒め料理の筈が炭化した食材の成れの果てに変わっていく、あらかじめ全ての食材を切っておき一気にフライパンで炒めればとアドバイスしたら、その手があったか、と言葉ではなく表情で語られた
他にもスープを作ろうとしたら、半分くらいぶよぶよとしたゲル状になったりだ、粉末スープの素を入れすぎか原因だったので、箱の裏に書かれている目安を教えたりと、まあ誰からも教わってない中でレシピ本に書かれたりしていない物を自分なりにやって失敗したらしい
なので今は簡単な料理ならこなせるようになっていた、あれならば焼くか炒める程度しかレパートリーがないオレよりも直ぐに上達するだろう
そんなクロエが自信作という料理だ、期待が高まるのと、空腹が気になってきた事もあり近くにあった木陰にあるベンチに座って戴く事にした
「今日作ったのはこれです。簡単で私一人でも上手く作れそうな料理でしたので」
そう言ってバスケットの中から取り出されたのは一見するとホットドッグのように長めのパンに焼いた長いソーセージが挟まれて、そこにソースが掛けられた物だ
「ケチャップと、マスタードじゃないな。匂いからしてカレーか?」
「カリーヴルストです。ドイツのホットドッグとでも呼べば良いんでしょうか?ベルリンやハンブルクで広く食べられている大衆食になります」
「成る程、確かにドイツと言えばソーセージだもんな」
後はビール、年齢的に呑めないけど
ソースの掛け方が多少不恰好ではあるが手についたりする心配もなさそうだ、片手で掴んで食べられるし、篠ノ之博士が研究で忙しい時でも助かりそうだな
「じゃあ、いただきます」
後は味だけど、ケチャップの酸味とカレー粉の辛味がアクセントになり、パンの柔らかさとソーセージを噛んだ時に出てきた肉汁の甘味といい、冷めていても美味いと感じられる美味しさだ
「あの、お味はどうですか?」
「十分だよ。お手軽だけど、ちょっとソースの配分を変えたりしたら色んな味が楽しめそうだ」
「はい、色々と合いそうなソースも作ってみたいです。けど、ちょっとだけソースがはみ出してしまいました……」
「このくらいは誤差の範囲だよ。見た目より味が重要だからな。セシリアの料理とか、一度食べれば分かるけど、かなり特徴的な味だったからなあ……」
今頃はその料理を食べているであろう二人はどうしてるだろうか、前と同じように表向きは何事もないかのように振る舞っているのか
真実を伝えて料理の腕前を向上させるのが良いのか、頑張って作ってくれた料理をちゃんと食してみせるのが良いのか、どちらが幸せなんだろうな
「と、そういえばドイツ料理なのはクロエの故郷だからか?」
「はい。とはいえ育てられた施設の外を知らないのですが、生まれた国というのは変えられないので」
戦う為だけに生み出されたが、それを受け入れた上でか、強いなクロエは
改めてカリーヴルストを食べる、やはり何度食べても美味い物は美味いな
「ヴルストの焼き加減も分かってきたので、今度は温かい方を食べて下さいね」
「ああ、楽しみに待っているよ」
「はい!それと、いつかジャガイモでフルコースの料理を作れるようになってみせます」
「あー、そういえばジャガイモもドイツの定番か。それだけジャガイモ料理もあるって事なんだな」
思い付く限りだとアイントプフかな、色々な野菜と一緒に煮込んだスープで農家のスープとも呼ばれる物らしいし、楽しみだ
それに作って貰ってばかりだとなんだか悪い気もするし、たまにはオレも料理をしてみるかな
焼くか炒める程度しかレパートリーないとは言ったが、中でも生姜焼きは中々に自信があるんだ、今度市販の生姜焼きのタレを買っておこう
そう思いながらカリーヴルストを食べ終え、用意されていたおかわりの分も含めて五つも食べてしまうのだった
◆
昼食の後、水筒に用意してくれていたキャラウェイのハーブティーを飲みながらベンチでゆっくりと過ごしていた
ちょっと食べ過ぎたと思っていたがキャラウェイには消化促進効果もあると言われて、よく考えてるなあ、と実力を伸ばしているクロエの料理の腕前を実感した
その休憩もそろそろ昼休みの終わりが近付いてきた事から教室に向かおうかとなってベンチから立ち上がり、クロエと並んで歩く
「やっぱりちょっと食べ過ぎたかな?午後の授業、寝ないか心配だなあ」
「作り過ぎましたか?今度からはもっと調整します」
「いや、美味しかったからこそだよ。腹八分目を考えなかったオレが悪いからクロエが気負う必要はないって」
多少、お腹の辺りが重く感じるが問題はない、午後からの授業は座学だし、ISで飛び回る訳でもないから平気だ
問題は午前中の授業での疲労と、満腹からくる眠気だが、それはオレの自己管理の問題なのでクロエに責任はない
だからそんな申し訳なさそうな顔をする必要は―――
「クロエッ!」
気付いたのは偶然か、微かな風を切る音と小さな足音、後は曖昧だが勘とでも呼ぶべきものによってオレは即座に振り返り、その背にクロエを庇うように立つ
同時に右手に持っていたケースは放しジェガンの待機形態であるハロも左手から後ろに投げる
そして空いた両手を使って勢いよく飛んできた蹴りを受け止めた
「ほう、少しはやるな」
「本職の人間に誉めてもらえるとは光栄だ。それで、何の用だ、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
遊びでじゃれついたという訳ではあるまい、そう訊ねたが返ってきたのは笑みと、拳だった
「くっ……!」
顔を狙って放たれたそれを首を傾ける事で避けた後、一度牽制として右手でジャブを放つ
だがそれは容易く回避され、挙げ句にはその繰り出した腕を支点に倒立、オレの背中に組み付こうとしてきた
そのまま首を絞める気か手が回ってくるのを感じたがその前にオレは背中の方から勢いよく壁に叩き付ける
これで制圧出来ればと思ったがそこまで甘くはなかった、オレの意図を察したのか直前で逃げられた
オレは咄嗟に受け身を取ったとはいえ、向こうは余裕といった笑みを浮かべている、事実向こうの方が実力では上だろうよ
「コウタさん!」
「よし、ナイスタイミング!」
だが時間稼ぎは終わった、クロエがオレの落としたケースから拳銃を取り出しオレに投げ渡してくる
それを掴んだオレは即座に安全装置を解除、両手で構えてボーデヴィッヒに向けた
「何が目的だ?」
「フッ、あの篠ノ之博士が近くに置いている人間がどのようなものか知りたかっただけだ。まあ、単なる素人よりはマシなレベルだったな」
「生憎と少し前までは一般人だったんでね。付け焼き刃もいいところだ」
「格闘戦はお粗末だが、銃の構え方は様になってるじゃないか。その様子だと命中精度もそれなりに高いな。動きにも迷いが無かった。やはり貴様は他とは違う、覚悟も、訓練内容も」
「それで、まだ続けるか?軟質ゴム弾とはいえ、当たればそれなりだぞ」
流石に実弾は訓練時にしか使ってない、普段から装填されているのは暴徒鎮圧等にも使われるゴム弾だ
それでも頭部などの重要な器官に当たれば死亡する危険性もある、衝撃もプロボクサーのパンチ並の威力はあるから体に当たっても効果は高い
オレ達の背後に篠ノ之博士が居る関係から所持を許可されている武器でもある、ISが展開不可能な場合に備えての護身用としてな
それでも使わないに越した事はないが、いざという時には、だ
オレはボーデヴィッヒの腹部の辺りを照準して問い掛けた、そこが人体で一番動きが遅い、確実に当てるならそこを狙うべきだから
「いや、生身での実力の程はある程度分かった。これ以上は必要ない」
「流石に銃が相手だと分が悪いか?」
「そうだな。だが下手な挑発はしない方が良いぞ。まさかさっきの動きが私の本気だと思っているのか?」
「いいや、訓練を短期間しか受けていないオレが本職の軍人相手に捌けるなんて思える程、慢心していないからな」
さっきの動き、明らかにオレが反応出来る程度に抑えていた、本気で襲っているなら気付かせもしなかっただろう
だから続ける気が無いのは本当なのだろう、それだけが用件とも思えないが
「それとは別に、クロエが目的でもあるな。何をしに来た。祖国の暗部を知られるのがマズイと考えているのか?」
「成る程、貴様は知っているのだな。なら話は早い。私は確かめに来ただけだ。何故、私の知らない同類が此処に、篠ノ之博士の下に居る?お前は誰だ?」
その言葉を聞いた途端、クロエの体が小さく震えたのを感じた
オレはボーデヴィッヒへの敵意を強め、引き金に掛かる指に力が入るのを押し止める
「私と同じ存在は全て私の所属するシュヴァルツェ・ハーゼに居る筈だ。なのに私の知らない存在が居る。それも見たところ私と同様の遺伝子か?」
「わ、私は……」
「答えろ、お前は何者だ?」
「逆に問うぞ、お前は誰だ?」
流石に我慢の限界だ、衝動に任せて撃ってしまわないよう、リスクを承知で銃を下ろしてオレはボーデヴィッヒへと問い掛ける
「何を言っているのだ、貴様は?私はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍IS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ隊長、階級は少佐だ」
「だろうな。けどそれは与えられた物だろう。クロエは違う。幸運もあっただろう。けどな、クロエ・クロニクルとして自己を確立し、自分の夢と目標を持つ、お前とは天地程の差がある、人間だ」
兵器として生まれた、だから何だ?
兵器が兵器としてではなく、単なる対抗意識から戦えるようになりたいと思うか?
食べて欲しい人が居るからと料理を上達したいと思うか?
そうだとも、それは兵器ではない、人間だ、何処にでも居る普通の女の子だ
目の前の似通った容姿を持つ相手とは断じて違う、人間だ
「コウタさん……」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ、お前は何の為に戦っている?何の為にISを駆る」
「何を言うのかと思えば。私は兵士だ。命令を受ければ戦うに決まっているだろう。それが何の問題がある」
「そうか」
それを聞いてオレは銃の安全装置を掛けてクロエが拾っていたケースへと戻した
この事は予想外だったのか、ボーデヴィッヒは怪訝そうな顔をしながら訊ねてきた
「何をしている?敵を前に銃を仕舞うのか?」
「その理由は自分で考えろ、と言いたいが教えてやる。命令がないと戦えないんだろう?人間ですらない駒に付き合う時間が勿体ないというだけだ。ああ、それとな―――」
オレは続いて拾い上げたハロを操作して、空中に時計を表示させた、さっき腕時計を見て確認した時間を
「―――あと五分もしない内に次の授業だ」
言うや否やクロエの手を引いて廊下を走る
クロエも少しだけ驚いたような表情をしたが直ぐに歩調を合わせてオレと一緒に廊下を走る
途中、オレの顔には自然と笑みが浮かんでくるのが自覚出来た
「ククッ、アイツの間の抜けた顔、笑えたな」
オレ達の今の立場は軍人でも篠ノ之博士の部下でもない、学生だ
当然ながら学業こそがオレ達の本分であり、授業への遅刻などもっての他である
その事を失念していたのか、オレがそれまでのやり取りを一気に切り上げて学生として走り出した時に見えたボーデヴィッヒの表情は呆気に取られて口を開けるというものだった、少なくとも軍人の表情ではないだろうな
そして何事もなければオレ達は授業までに教室に間に合う、ボーデヴィッヒの足の速さは知らないがさっきので出遅れたのが影響すれば最悪は遅刻だ
結果、授業の開始一分前には教室に辿り着く事が出来たのに対して、ギリギリのところで教室に入ってきたボーデヴィッヒの姿を見て、クロエは小さく笑っていた
そこには先程までの震えもなく、いつもの様子が見える姿だった
とはいえオレは今回のやり取りで一つだけ心に決めた事がある、今後ラウラ・ボーデヴィッヒがクロエの事で余計な真似をするというのなら、オレの手で対処するという事だ
篠ノ之博士にも頼らず、オレの手で、その為にまずは放課後に行っていた生身での訓練に、より気合いを入れて取り組むのだった
◆
色々とあったあの日から五日が過ぎた、IS学園では土曜日も午前中は授業が行われ、昼からは自由時間となる
しかし土曜日はアリーナが完全開放される為、専用機持ちも一般の生徒もISの実機訓練をする事が多い、特に一年生は本格的な実習も始まった事でより多くISに触れたいという生徒も多く、複数人で訓練機を借りていたりする
オレは専用のジェガンがあるからアリーナの使用申請のみで済むのだが、今回はちょっと違っていた
「一夏、上だ!」
「うおぉっ!?何だこれ、セシリアのビットより厄介だぞ!」
「は、速いっ!?これが、通常の三倍……?」
「どういう設定したらこうなるのさぁ!?うわ、瓦礫を足場に加速した!?」
オレ、一夏、一秋、シャルルの四人は宇宙にてクシャトリヤとシナンジュを相手に苦戦していた
オレと一夏はクシャトリヤが放つファンネルと本体からのビーム攻撃に翻弄され、一秋とシャルルはシナンジュに翻弄され、だ
その数分後には全員が撃墜され、シミュレーションが終了した
「皆お疲れ~!中々に面白いデータが録れたよ~!」
「多分何も知らない人間が見たら変なパントマイムをしてるみたいに見られるとは思いますけどね。けど、彼処までする必要ありますか?どちらか一機だけでもキツいですよ、あれ」
オレはジェガンを解除して一息吐き、一夏も同様にユニコーンを解除した
一秋とシャルルは機体の解除に加えて頭に付けていたゴーグルも外す、今までのは全て映像であり、実際にクシャトリヤやシナンジュと宇宙で戦闘を行っていた訳ではない
そしてこの出来事の原因でもある篠ノ之博士は笑顔で持ち込んだパソコンの画面を眺めていた
隣には監視役というべきか織斑教諭も居た
「でもでも、こうやって新型シミュレータの実験が出来たから良いでしょ?それに簡単にクリアされたらつまらないしね!それでちーちゃん、どうかなこのシステム?将来的には複数のISを利用して、被弾すれば衝撃とか機体へのダメージを計算して、それに合わせて機体の出力を落として機体へのダメージを再現とかも出来るようになるよ。そうすれば一回一回ISを修理しなくても本物と変わらない訓練が出来るでしょう?」
「確かに悪くはない。学園にも機体の修理予算はあるからな。それが抑えられるならそれに越した事はない。お前もたまには役に立つ物を作るな」
「まるで私がいつも変な物ばかり作ってるような言い方だね」
このように、全ては篠ノ之博士が作った新型シミュレータの稼働実験なのだが、アリーナで訓練していたら男子四人呼ばれてシミュレータを使うように言われたのだ
因みに映像に向けて撃っても現実の機体が本当に発砲しないようにシミュレータを使った時にシステムが変更されている
なので映像を見ているオレ達は本当に宇宙にてクシャトリヤやシナンジュを相手に奮闘しているのだが、傍目からは何もない空間に銃を向けてながら何かを相手に戦っている変な集団に見えていた筈だ
「それでも動きを基に取り敢えずプログラムを組んだだけで、相手の性格とかまで再現し切れなかったんだよね。だけど可能性は見えた。こーくん、次は部隊運用のデータを録らせてくれる?仮想データで十一機のジェガンD型を付けるから、それを上手く指揮してみてね。各ジェガンの装備はこーくんが決めて。指示を出した後はAIが機体操作を行うから、こーくんは大まかな指示だけで良いよ。勿論、明確にイメージすればその動きをしてくれるけどね。ああ、それとAIの動きはこーくんのデータが基になってるからね」
「成る程、やってみます」
「十二人の康太とか、勝てる気がしねえ……」
「ガンダムなら割りとよくこの戦力差でも負ける事があるんだよなあ」
まあ後で『ぜ、全滅!?12機のジェガンが全滅!?三分ももたずにか!?』とならないように努力はするけどさ
改めて部隊編成をするが、ジェガンは全て通常のビームライフルとシールド装備で出撃する
まずは試しという事なので指揮の方法を確かめてみる、口頭で指示を出すと応えてくれて、脳内でどのような動きをすれば良いか想像すると確かにその通りに動く
とはいえ戦闘になれば細かな指示までは行き届かないだろうから、ある程度しか期待は出来ないな
そしてシミュレーションが始まり、センサーが敵の反応を捉えた
「機種照合、ヤクト・ドーガか」
これならまださっきのシミュレーションよりは楽だが、相手は黄色ベースなので強化人間のギュネイ機だな
それに向こうAIも完全じゃない、単にアニメの動きから算出しているだけだ、ならやりようはある
「ファンネル射出確認、密集隊形!」
頭でイメージし、かつ口頭で指示を出す
すると他のジェガンが集まってきて円陣を組むとオレの動きに合わせて回転、四方八方にビームライフルを放ち、周囲を囲もうとしたファンネルを撃墜していく
ガンダムOOにて頂武ジンクス部隊が見せた戦術、対ファング用に見せた物をジェガンにて再現した
あれは疑似太陽炉搭載型だからこその動きだが今のオレの機体はISだ、似たような動きは出来る
それにより六機のファンネルを撃墜し、ヤクト・ドーガ本体からの射撃により後で此方も三機が撃墜されたものの、ヤクト・ドーガを包囲し撃破した
流石にパイロットがニュータイプの勘の良さを持っていれば違ったかもしれないがそこまで再現されておらず、精々が反応速度が早いくらいだったから倒せた
それで一度篠ノ之博士の所に戻ってみると面白そうな様子でモニターを確認していた
「やっぱりこーくんは私の思った通りに部隊での動き方を知ってたね。ISって数が少ないから部隊運用って精々が二機とか三機になるんだけど、最初の戦術とかはあの弾幕となるとそれなりの数を揃えた部隊でないと出来ないよ」
「そういえばそうですね。けど、その数なら篠ノ之博士なら簡単に揃えられますよね?」
「確かにね。けど部隊運用なんてデータが無いから知りたかったんだよ。うん、有意義なデータになったし、ありがとうね、こーくん」
「役に立てたなら何よりです」
「このデータもきっと何かの役に立てるよ。私はシミュレータの仕上げがあるから今日は戻るね。完成したシミュレータは学園に設置されると思うし、その時は使ってみると良いよ。それじゃあちーちゃん、行こうか」
「唐突に人を引っ張り回したと思えば今度は帰るか。まあいい、そのシミュレータは確かに役立つ物だ。それだけの価値はあったと考えるとしよう」
と、そこで篠ノ之博士は織斑教諭を連れてアリーナから去っていった
オレ達も元は訓練の為にアリーナに来ていたのだ、時間が余ったというのなら残りは訓練に入るとしよう
それを伝えて他の男子三人と、さっきまでは見学に回っていたクロエを加えて訓練に入ろうとした時、アリーナの一角が不意にざわめき始めた
「アレは……」
「ドイツの第三世代機だな。パイロットは当然ながら、アイツだ」
咄嗟に口に出たのだろう、一秋からすれば見た覚えのある機体の筈だ、夢で見ていたというあの機体、シュヴァルツェア・レーゲンの事は
そして最新鋭機であるそんな機体を保有する人物などこの学園では一人しか居ない
近頃は望む望まないに関わらずよく会う相手である、ラウラ・ボーデヴィッヒだ
なおドイツでは『ジャガイモで料理のフルコースを作れないとお嫁にいけない』という言葉があるそうで(かといって現代のドイツ人の主食はジャガイモではありません)
他にもキャラウェイの花言葉は『迷わぬ愛』だったり、ちょっとずつアプローチを掛けるクロエ
でもコウタくんはその辺りの情報を知らないので効果まが無かったり……
後半で出てきたシミュレータ、特に部隊運用なんかは後日その成果が出てくるかも?