ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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切りの良いところで投稿するのでいつもより短めです


19話 真実

コアネットワークを介した通信は言葉を発する事なく思考のみでの会話が可能となる、故に聞かれたくない会話はこれを使えば良い

 

オレとクロエは表面上は何事もないかのように装いつつ会話を始めた

 

『さっきも話したが、シャルロットの命じられた内容には穴が多すぎると思うんだ。少なくともデュノア社長の指示じゃないと思う。最後期とはいえあれ程に汎用性の高く、その性能故にシェア率の高い機体を開発可能なだけの技術を擁し、実際に成功させるだけの経営手腕を持つ人間にしては不用意に過ぎる』

 

『私も同じ意見です。本当にデータを盗み出す事が目的ならもっと上手くやれる人間を選ぶ筈です。少なくともシャルロットさんの動きは訓練を積んだ物でもなく、本人にも隙が多すぎると思います。広告塔として利用するにしても男装させてまで送り込むにはリスクが高過ぎます。シャルロットさんの容姿は確かに中性的に見えますが、それよりも女性のままでハニートラップを仕掛けた方が成功率も高そうに思えます』

 

『だよなあ。そうなるとデータ云々は後付けで別の目的があると考えた方が良いな』

 

『命令系統の違いとかでしょうか?シャルロットさんの話だと正妻の方から嫌われていたようですが、そのようにシャルロットさんを疎んでいる勢力による干渉があったと考えてみれば、わざと捕まるように仕向ける事で排除しようとしたのだと思います』

 

『だが命令は社長のアルベール・デュノア本人から直接受けたらしい。ならどんなメリットがあるのか、そこを考えた方が良い』

 

そもそもシャルロットを手駒としか扱ってないにしては色々と待遇が良すぎる、愛人の娘なんて企業としては外聞が悪い、にも関わらず引き取ったのはIS適性が高かったから……というのも理由の一つか

 

テストパイロットにしても専用機として与えたままにするのもな、信用というか裏切られる可能性もある存在に兵器を預ける、ならばそのリスクに対するメリットは?

 

適性が高いのは理由付け……テストパイロットとしたのも表向きの理由……目的はシャルロットにISを持たせる為だとするのなら

 

『そもそも、アルベール・デュノアはシャルロットを疎んでいない。表立って伝える事が出来ないが、寧ろ愛している?うん、その前提でちょっと組み立て直してみよう』

 

まずデュノア夫妻に子供はシャルロットしか居ない、デュノア夫人が子供を生めない体質というのは聞いていたから、自然と跡取りはシャルロットになる

 

デュノア夫人がシャルロットを疎んでいるのは話を聞く限り可能性が高い、そして愛人の娘に跡を継がせる事も面白いとは思わない筈だ

 

逆にアルベール・デュノアにとっては愛人の娘、愛人という事はある程度の愛情を抱いているのは間違いない、となると彼はシャルロットを保護する事が目的と言える

 

そうなるとシャルロットにISを渡した事も辻褄は合う、身を守るのにIS程便利な物はないだろうからな

 

更に言えばデュノア夫人の実家は資産家と聞く、もしもシャルロットが居なくなればデュノア社を継ぐの者が夫人の一族から出てくるかもしれない

 

途端に構図が見えてきた気がする、シャルロットを保護したいアルベール・デュノアと、排除したいデュノア夫人とその家族、そう見れば何となくだが見えてくる物もある

 

全ては推測でしかないが遠くはない筈だ、後はそれを補完する情報さえあれば

 

「なあ二人共、一つオレの推測を聞いてはくれないか?」

 

その為にもシャルロットに確かめなければならない事がある、だからオレは今の推測を二人に話した

 

一通りオレの推測を聞いた二人は一部は納得したような、だが釈然とはしない顔をしている

 

「話しは分かったけど、それなら何でシャルロットはIS学園に送り込まれたんだ?それも男装してまで」

 

「学園に入れたのは学園のセキュリティが目的だと思う。仮にシャルロットの暗殺を夫人側が企んでも、フランスに居た頃に比べるとその難易度は天地程に差がある。が、男装の理由がなあ……そこだけが矛盾の塊なんだよ。それらしい理由としては、夫人側から社長へと圧力が掛かった、とか。そうまでしないといけない程に経営が切羽詰まっている、とか」

 

「あ、そういえば……」

 

「何か心当たりが?」

 

「う、うん、実は日本に来る飛行機に乗ってる途中でISにタイマー式で開封されるメッセージデータがあったんだ。その、お父さんが映像で直接言葉で話してくれていた物なんだけどね」

 

「ほう、その内容は?」

 

「えっとね、その、始めに『改めてお前のIS学園での目的についての説明だが―――』って所で、また同じ男装して同じ男性操縦者のデータを盗めって指令だと思って、途中で閉じたら勝手に消えちゃったんだけど……」

 

「それだな」

 

「それだよな」

 

「それですね」

 

重要な鍵となる情報に間違いない、だが問題は再生された後は消えたという事だ、残すのはマズイと思ったのか予めそうプログラムされていたんだろうな

 

「シャルロットさん、私がデータの復元をしてみます。ISへのアクセスを許可して下さいますか?」

 

「う、うん、それは是非とも」

 

「では失礼します」

 

と、篠ノ之博士に頼むしかないかと思っていたらクロエが先にシャルロットの首飾り、待機状態のISに触れた

 

クロエはそのままの姿勢を保ち、傍目には何をしているのか分からないが一分と経たない内に手を放した

 

「復元完了です。これでデータの閲覧が可能になりました」

 

「は、早いな……」

 

「私は元は戦闘よりもこのような情報処理の方が得意でしたので」

 

その復元の早さに一夏が驚いているが、確か篠ノ之博士が言っていた電子戦に特化した特殊な黒鍵とかいうISをクロエが持っていたと思うから、それが理由だろうな

 

とはいえ復元出来たのなら問題ない、後は閲覧して真実かそれに準ずる物がある事を期待しよう

 

「それじゃあ、再生するよ」

 

オレ達にも見えるように空中に投影する形でデータを表示するシャルロット、そこに映っている男性がアルベール・デュノアか

 

『これを見ている時、お前は既に飛行機に乗りフランスを発っている事だろう。改めてお前のIS学園での目的についての説明だが―――』

 

此処からがシャルロットの見ていない先だ、部屋の中の誰もが食い入るように注目する

 

『男装し、他の男子生徒と接触、専用機のデータを盗み出す。私は確かにお前にそう命じた。だがその全てを忘れろ』

 

「これって!?」

 

「ビンゴ、という事か。静かに、まだ続きがある」

 

シャルロットは見て分かる程に動揺している、だが可能性があるだけだ、まだ決まってはいない

 

『男装する必要もない。事実上の学園長でもある轡木氏とも話しは着いている。お前は何も気にする事なく学生生活を送りなさい』

 

途端に映像の中のアルベール・デュノアの表情が変わる、それは経営者としての威厳のある顔から、娘を想う一人の父親の顔だ

 

『済まなかった、シャルロット。サラにも悪い事をした。愛すと言ってまともに会う時間さえ取ってやれなかった。捨てたのだと、今更になって何をと思われても仕方のない事をした。それでも言わせて欲しい、私はサラの事を今でも愛している。サラとの間に生まれたお前の事もだ』

 

「お父、さん……っ……」

 

『今はまだ会う事は出来ない。社の派閥の一部がお前の暗殺を企んでいたからだ。表向き、お前は男子という事になっている。政略結婚の駒にしない為にだ。それでも、いつまでも隠し通せるものではない。これから私は社内の不穏分子を一掃する為に動く。誰もお前の未来を邪魔しない為に。シャルロット、お前はお前の生きたいように生きなさい。会社を継ぐ義務もない。継ぎたいというのなら応援するが、それはサラの最期の願いにも反する』

 

「お母さんの……?」

 

『サラが入院した後、私は一度だけ見舞いに行く事が出来たんだ。その時お前は学校に行っていたが、サラが私に言ったんだ。『あの子の、シャルロットの夢を応援してあげて』と。お前が何を願っているのかはまだ分からないが、私もそれを応援しよう。それが彼女との、サラとの最期の約束だ』

 

「あっ……ああ……」

 

『ふぅ、もう時間がないな。シャルロット、私達の愛しい娘、例え離れていても、私はお前を愛している。だがお前は何も心配する事はない。私も、サラも、そしてああいう言動こそしたがロゼンダも、お前の事を愛しているんだよ。今度会う時、三年後に学園を卒業した時にはサラの事を話そう。その時までには私も掃除を終わらせておく。その時の事を楽しみにしているぞ』

 

「お、父さん……お母、さん…………うっ……うわあぁぁぁぁぁんっ!!」

 

映像はそこで終わった、それと同時にシャルロットは今まで抑えていた物が決壊したかのように泣く

 

オレは一夏を連れて廊下まで出た

 

「女の涙は見ないのがマナーだ」

 

「でも、慰めた方が良かったんじゃないか?」

 

「あれは良い涙だ。母親を失って不安に押し潰されそうになって、それでも自分は愛されていたと知った、喜びの涙だ。今は泣かせるだけ泣かしておこう」

 

「そう、だな。けど、あの父親も、何もああなるまで放っておかなくても良かっただろう!もっと早く話せばアイツがああなるなんて事は!」

 

「そうかもな。だが、アルベール・デュノアは父親であると同時に大企業の社長でもある。その背には自分の家族だけでなく、大勢の社員の生活も乗っているんだ。甘さを切り捨てなければならない程にな」

 

「けど、けどよ……やっぱり俺は納得出来ねえ!」

 

感情に任せて憤る一夏、それは一般的には正しいのかもしれないが、それでもオレにはアルベール・デュノアの気持ちも分かるよ

 

「一夏、お前確か両親が居ないって言ってたな」

 

「ん?ああ、そうだけど、それがどうした?」

 

「なら分からないかもしれないがな。父親ってのはいつも一言足りないんだよ。その分は、子供が自分で埋め合わさなくちゃならない」

 

「康太の父親もそうだったのか?」

 

「さてな。けどお前にだってあるんじゃないか?意地になって、自分一人で全部背負ってしまおうって事が」

 

親父も一度だけあったな、無茶して仕事を続けて体調を崩して、普段から病気しないだけにその時はオレも取り乱して、理由がオレが何気なく言った幼馴染と会いたいという一言だったからな

 

幼い頃に隣の家に住んでいたその幼馴染は父親の仕事の都合で日本に来ていた

 

そんな幼馴染も八歳を迎えた頃にまた父親の仕事の都合で国に帰った、カナダにだ

 

そんな幼馴染と会うとなればカナダに向かうしかない、オレの親父は遠出する為に休日出勤繰り返して長期休暇を取れるようにしてさ、そんなもの夏休みとかの日程を使えば良かったのに、直ぐに行けるようにと仕事を片付けようとして、結局は体調を崩していた

 

言ってさえくれればそんな事にはならなかったのに、子供の我が儘を叶える為に一人で背負って、嬉しさよりも不用意な発言をした事の後悔と悲しみが勝った程だ

 

シャルロットの事情はオレのそれよりも重いが、父親の想いという点に関しては大差ないだろう

 

それが親から子への愛に変わりはないのだから

 

一夏も意地になる事を自覚したのか考え込んでいる、オレも親父の事を思い返していると、少し経ってから部屋の扉が開いた

 

「もう大丈夫との事です」

 

「分かった、話の続きだな」

 

シャルロットの気持ちが落ち着いたのか呼びに来たクロエに続いて部屋に戻る

 

中に居たシャルロットは目こそ赤く腫らしているが視線は真っ直ぐであり、そこには不安など一切見られない

 

オレ達の姿を確認したシャルロットはまず最初に深々と頭を下げた

 

「一夏、康太、二人共ありがとう。クロエには言ったけど、三人のお陰でお父さんの本当の気持ちを知る事が出来たよ」

 

「気にするなよ、シャルロット。俺達が力になりたいと思ったからやっただけだぜ!」

 

「そうだな。シャルロットだけならオレは動かなかったと思う。真っ直ぐな熱い馬鹿が居たから手伝ったような物だ。それに、推測する以外には何もしていないしな。そういう点で言えばデータを復元したクロエと、早い内にラッキースケベ発動して問題解決の切っ掛けになった一夏の手柄だろう」

 

「あ、あはは……」

 

「康太、お前実は俺の事嫌いだろう?」

 

「何を言う、一夏。普通は男だと思っていてもシャワー室に入ろうとは思わないだろう。オレは事実を言っただけだ」

 

「ぐっ……」

 

さてと、一夏が黙ったところで今後の方針を話すか

 

「それで、シャルロットはこれからどうする?もう男装する必要もない訳だが」

 

「うん、それについてはもう少し続けるよ。近い内にボクは一度、お父さんに会いに行こうと思うんだ」

 

「……理由を聞いても?」

 

「あの映像でお父さんの想いは知れた。でも、何も知らないままでは居たくない。直接会って、ボクの気持ちも伝えたいんだ」

 

「それが父親にとって余計なお世話だとしてもか?」

 

「お父さんが言ったんだよ、自分の好きなように生きろって。だったら本当の親子になりたいっていうボクの願いも叶えて良いよね?」

 

「成る程、そう来たか。別に止める権利もないしな。だが一つだけオレからも良いか?」

 

「どうしたの?」

 

「いや何、どうせならシャルロット経由でアルベール・デュノア氏にアポイントメントを取ろうかと思ってな」

 

「えっ?ええっ!?」

 

あの映像からアルベール・デュノアという人物の人となりは知れた、ならばオレの夢にも一つ関わって貰おうかと思ってな

 

娘の問題も解決したんだ、おまけにラビットフット社の社員であるオレなら向かうも断れまい

 

具体的に言えばラビットフット社とデュノア社の提携だな、今までも様々な企業から打診があったが利権やら何やら面倒だからと篠ノ之博士が断っていたのだ

 

だが正直に言って他の企業も巻き込んで宇宙開発を目指した方が早いからな、もしも信頼出来る企業が相手ならば巻き込もうというのは篠ノ之博士も言っていた

 

付け加えればデュノア社もISメーカーだし、開発に難航しているというのなら技術を見返りに交渉可能だ、資金集めの必要もない

 

デュノア社が宇宙開発に参加して他の企業もラビットフット社と接点を作ろうと宇宙開発に力を注ぐのなら、それは篠ノ之博士の求める夢に、オレの夢に近付くという事だ

 

寧ろそうなるように仕向ける、アルベール・デュノア氏は人間としても信用出来る人物と分かった以上、利用しない手はないからな

 

「な、何か悪い事を企んでる顔だよ!?」

 

「あー、気にしない方が良いぞ。多分、康太の夢にちょっと協力させようと画策してるだけだと思うから」

 

「そこは確信してるの!?デュノア社、大丈夫かな……」

 

「大丈夫、大丈夫、ちゃんとISの設計思想のデータをあげるから、その代わりにちょっと協力して貰うだけだから」

 

具体的にはマスドライバー施設の部品生産とかでちょっとライン借りたりしたいだけだから、篠ノ之博士の説得もオレがやっとくから

 

手土産の設計思想も汎用性の高いラファールならちょっとの改良で直ぐに対応出来るさ、寧ろその汎用性を伸ばせるぞ

 

「さて、篠ノ之博士へのプレゼン資料作るか。後はデュノア社へのプレゼン資料に、普段から纏めてたデータの整理と、色々やる事が増えたなあ。フフ、フフフフフ……」

 

「ボク、もしかして相談する相手間違えたかな?」

 

「だ、大丈夫だって。康太も根は善人だから、悪い事にはならないって。康太に相談するのを決めた責任もあるし、もしもの時は俺が身を挺してでも……」

 

二人が何か言ってるけど気にしない気にしない、さてと漂流物の中にデータがないからオレの記憶の中から設定を全部拾ってこないとなあ、画像に関してはアニメを基に3Dデータを作成する必要があるけど、これは後でやるか

 

まだ宇宙に出てないから装甲材を開発出来ないのは惜しいが、篠ノ之博士にもプレゼン資料として組み込むか

 

その日、一夏達が帰った後もオレは資料を作成し、切りの良い所でデータを保存しておいた、フォルダのタイトル部分には『GAT-X105』と名付けてだ




ジェガンにもI.W.S.P.が載るとか載らないとか
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