ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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タイトル通りに学年別トーナメント開始、そしてコウタくん達の試合も開始

そしてあのシステムも登場……


20話 トーナメント開幕

シャルロットの件が起きた後、初の登校日となった月曜日、オレは欠伸を噛み殺しながら授業を受けていた

 

というのも資料を纏めてたいたら楽しくなってどんどんと掘り下げて、それにイラスト加えて、無ければ3DCG作ってと、広く手を出し過ぎたのが原因だ

 

完璧に自業自得なのだが、それだけに割りと会心の出来となった資料は昨日の夜に篠ノ之博士に提出してある、ストライカーパックの話はかなり食い付きが良かった、あれなら試作品の規格を合わせるのも楽になるとの事だった

 

それとは別にR型にする当たって目標性能に達するように割りと無茶な強化をしたジェガンの性能底上げも可能になるとの事だ、データが存在しない為に本物ではなく篠ノ之博士が独自の技術で強化した為に、R型は少し余裕がない設計になってしまったらしい

 

それを外付けのパーツで補う為にもストライカーパックを使用したいらしい、実装は学年別トーナメント後という事だ

 

そしてその学年別トーナメントなのだが、より実戦的な戦闘を行う為という名目でタッグ戦となっていた、実際には先のクラス対抗戦に於けるブルーディスティニーの乱入というアクシデントを踏まえて不測の事態が起きた際の対処能力を高める為らしいが

 

なので参加する際はパートナーを決めて申請するか、当日の抽選で決まった相手と組むか、どちらかを選ぶ必要がある

 

一夏はシャルロットと組むようなので、オレはクロエと組むか、そう思っていた放課後なのだが

 

「すまない康太、自分と組んでくれ!」

 

「あー、一秋、どうしてそこまでオレに拘るんだ?」

 

「ちょっとでも勝率を上げたいっていうのもあるんだけど、そうした方が良いって気がするんだ」

 

「例の既視感か?」

 

「ああ、次の学年別トーナメントでも、何かが起きるって予感がある」

 

一秋の既視感、それは以前にブルーディスティニーの乱入を言い当てているだけに無視は出来ない

 

間接的にとはいえクロエがそれに救われただけに、オレ達はそれを受け入れる事にした

 

「本当に大丈夫か、クロエ?」

 

「私の事なら気にしないで下さい。それに、抽選で決まった即席のペアの方が連携するには勉強になりそうです。いつもコウタさんと連携していたので即興で何処までやれるか、やってみたいんです」

 

「お前がそう言うのであれば止めないけどな。けど、何か分からない事があれば聞いてくれ。可能な限りで手伝うぞ」

 

まだ戦闘に関しては不安なところが残るクロエだ、機体性能からも他の一般生徒よりは戦えるだろうが、連携となるとな

 

とはいえ他の生徒もISの搭乗時間からして連携なんて無理か

 

殆んどの試合は同じ舞台で一対一が二つ繰り広げられるだけ、先に倒されればそのまま二対一になるだけだろう

 

そうなると性能も技量もクロエが上になる、なら一般生徒と組んでもある程度は勝ち抜けるかもな

 

それでも一応はクロエの師匠だから頼っては欲しいのだが

 

その後、放課後での訓練はトーナメントでは敵同士という事で一夏達やセシリア達とは別で訓練をする事になった

 

とはいえクロエはオレや一秋と三人で訓練している、クロエと組む相手が誰であれ訓練機を使うだろうから機体性能の差がある、仮にオレ達のペアと当たっても問題ないとの判断からだ

 

そして今、オレは一秋とクロエの攻撃を捌き、逆に対艦刀による一撃を両者に当てたところだった

 

「げほっ、ちょっとは手加減してくれよ……」

 

「二対一ならハンデだろ。そしてオレは使い慣れていない新装備だ。しかもあまり慣れてない刀剣、これ以上の手加減は無理だぞ」

 

オレの両手に握られているのはI.W.S.Pに搭載予定の対艦刀、その試作品である

 

昨日、ストライカーパックの説明を篠ノ之博士にした後で即席で作られた代物だ、どうにも要求性能に達しているかテストして欲しかったらしい

 

設定ではビーム兵器に継ぐ切れ味との事だったが、試作品の段階でも既にそれなりの切れ味を持っている

 

一秋が乗る白式にはエネルギーを消滅させる零落白夜がある、ビームサーベルでの斬り合い等が出来ないので助かってはいるが、やはり実体があるだけ重い、ビームサーベルと同じ感覚で扱うのは無理か

 

とはいえ悪くはない、このまま採用されても問題ないと思える仕上がりだ

 

ビームサーベルの代わりに設けられた両腰のアタッチメントに対艦刀を格納しつつオレは一秋とクロエに告げる

 

「トーナメントまで残り二週間。それまでは徹底的に動きの精度を上げて、連携を物にする。一秋の勘も何かが起こると言ってるんだ。やれる事は全部やるぞ」

 

何が起こるかまでは分からない、それでも備えて力を付けるに越した事はない

 

一応は織斑教諭にも話してはあるが、何が起きるか分からないのでは対策のしようもないので、警備レベルを上げるに留まっている

 

当日は学園の外からも来賓として他の企業の人間が来たりする、そこにも人手を割いてるが最善を尽くすと言っていた

 

それでもその言葉にただ甘えるだけでは居たくないからな、一秋もその事を思い出したのか目の色が変わる

 

その後、二対一での訓練はメンバーを入れ換えたり、全員が敵の三つ巴で行ったり、ひたすらに実戦形式で鍛え上げた

 

そして遂に運命の日が訪れる

 

 

学年別トーナメント、その名の通りに各学年ごとに三つのアリーナを用いて行われるIS学園の毎年の恒例行事だ

 

一年生は触れたばかりのISで何処までやれるのかを、二年生は一年間学んだ事で何処まで技量の伸ばせたかを、三年生にもなると進路にも大きく影響してくる、自分の実力を企業等に大きく宣伝する為の場である

 

それだけに三年生のアリーナは遠目に見ても剣呑な雰囲気が漂っているものの此所一年生のアリーナでの空気はまだ緩い

 

とはいえ別に手を抜いている訳ではない、それこそ一部の生徒は普通の学校行事とは思えない程に鬼気迫る雰囲気を纏わせている

 

そんな彼女達の繰り広げる試合をオレは観客席から眺めつつ、その試合内容を分析していた

 

今回、試合の相手は通常は公開されているのだがオレ達の相手は伏せられたままだ、理由としては相手のペアが抽選組なので試合本番の数試合前に決まる為である

 

そんな中、見知った人物が舞台に登場してきた

 

「おっ、弟の出番だぞ、一秋」

 

「そうだな。にしても、相手は箒か。相方は四十院さん、大和撫子ペアか?康太は知ってる相手か?」

 

「ああ、前に実機訓練の時に一緒になった事があるが、筋は悪くない。寧ろ、早くに慣れていた方だったな」

 

出てきたのは一夏・シャルロットのペアであり対するのは箒と四十院さんのペアだ

 

箒と四十院さんの機体は共に訓練機の打鉄、二人共技量は悪くないのだが運が悪い、専用機持ちのペアを相手にするには厳しい物がある

 

「さて、どうなるかな」

 

性能だけで勝負が決まる訳ではないが、搭乗時間にも差があるだけに箒・四十院ペアが不利に思える中で試合開始を告げるブザーが鳴った

 

打鉄を纏う二人は同時に加速、日本刀型のブレードを展開して一夏を集中して狙う

 

「あれは駄目だな。ユニコーンの機体特性を理解していない。開幕速攻で一機を集中的に狙うのは悪くないが、狙うならシャルルを狙うべきだった」

 

その動きを見てオレは悪いとは思いつつ箒・四十院ペアの敗北を悟った

 

狙いは悪くないが恐らくは箒が一夏を意識し過ぎたのだろう、標的を間違えている

 

ユニコーンの装甲は固く単なる実体ブレードでは抜けない上に全身を覆う装甲である為にダメージを与えるには間接部等の装甲が薄いか存在しない箇所を狙うしかない

 

織斑教諭ならそれをやってのけるのだが、まだ実機に乗って日が浅い二人にそれだけの技量を求めるのは酷だ、やるなら機体の性能差も小さく攻撃の通りやすいシャルロットを狙うべきだったのだ

 

そこから素早くシャルロットを倒して二対一で一夏を相手にするなら勝機はあった、だが一夏が二人を引き付けている間にシャルロットが武装を展開している

 

アサルトカノンであるガルムの二挺撃ち、それにより気を取られた二人に振るわれるユニコーンの持つ大剣クレセントムーン、只でさえビームにより威力が高く、慣性の乗った、だめ押しとばかりに峰のブースターで加速するそれを受けて二人纏めて吹き飛ばされる箒と四十院さん

 

吹き飛ばされ壁に激突し、シャルロットが展開したミサイルランチャーによって二人のシールドエネルギーが尽き、試合が終了となった

 

一夏とシャルロットはまずは一勝とばかりにハイタッチを交わしてアリーナを後にする

 

それから数試合は続き、また知っている名前が出た

 

『セシリア・鈴ペア 対 更識簪・布仏本音ペア』

 

「またバランスが良いな。遠距離型のセシリアと近距離型の鈴、機体が特化型なだけに役割と連携が明確になる」

 

そして何だかんだ言いながらあの二人の仲は悪くない、共に訓練をしてきただけに互いの動きも知っているから連携のタイミングも合わせられるだろう

 

そして対する二人だが片方ののほほんさんは同じクラスで何度か授業も一緒だったから知っている、普段ののんびりした性格と同様、ISの操作も緩慢というか、たまに転けそうになる事もあった

 

だが射撃は多少は出来ていた、少なくとも牽制くらいは出来るさ、多分

 

そしてもう一人の更識簪という水色の髪をした少女だが名前は知っている、日本の代表候補生であり専用機の打鉄弐式を有すると、入学前に篠ノ之博士から渡された各代表候補生の資料には書かれていた

 

だがその資料の内容と今の姿には違和感があった

 

「弐式ではなく、通常の打鉄?」

 

そう、機体が違うのだ

 

あの時はまだ開発中と聞いていたから仕方ないにしても、外装系は完成してたと聞いていたから完成まで秒読みだと思っていたのだが、まだだったのか

 

とはいえ操縦者は代表候補生だ、その機動は他の生徒と同じ打鉄でありながら別物の機体と思わせる程に鋭い

 

得物も珍しい薙刀型の武器であり同じく前衛を務める鈴と互角以上に立ち回っている、槍や薙刀の使い手を相手にするには相手の三倍の技量が必要となるというのは剣道三倍段だったか、ともかく鈴が攻めきれていない

 

鈴の得物も青竜刀であるから一概に同じとは言えないまでも、あそこまで優勢を勝ち取れるというのも珍しい

 

加えてのほほんさんの射撃だ、狙っているのかいないのか当たりこそしないものの嫌な位置に嫌なタイミングで飛んで来る

 

加えて機体はジェガン・ライトアーマーだ、装甲こそ薄いものの火力はオレのジェガンとも同等である、それをオレと手合わせした事のあるセシリアと鈴も知ってるからこそ警戒しているのか

 

だが状況は膠着しているかに見えて実はセシリア・鈴のペアが押している、というのも途中から鈴が更識簪の足止めに移行して、セシリアがのほほんさんを確実に仕留めに掛かったからだ

 

それにはのほほんさんも気付いたのだろう、だがのほほんさんは他の三人程の機動はまだ出来ない、被弾も増えていき遂には撃墜される

 

そして残った更識簪も機体が打鉄で尚且つ代表候補生が二人では耐えきれずにシールドエネルギーを減らし敗北した

 

だが今日行われた試合の中で一番に盛り上がった試合に変わりはない、観客席からも大きな歓声と拍手が巻き起こる

 

「康太、そろそろ自分達も試合だ」

 

「ん?ああ、もうそんな時間か。対戦相手も、もう決まっ、た……な……」

 

アリーナの巨大モニターに表示されているトーナメント表、そこにあるオレ達の名前の下の枠に書かれている名前、それを読んで言葉をオレは失った

 

『織斑一秋、紫藤康太 対 ラウラ・ボーデヴィッヒ、クロエ・クロニクル』

 

……………………………………………………マジで?

 

 

アリーナにあるピットの一つでは二人の少女が互いに向かい合っていた

 

同じ髪色をし、顔の造形も何処か似たような雰囲気を持つ二人、クロエとラウラであった

 

「まさか貴様とペアになるとはな」

 

「はい、私も驚きました」

 

「フンッ、紫藤といったか。確かにこの学園の一年の中では抜きん出ていた男だ。たがそんな男に現を抜かす貴様がペアとはな。もしもその男の気を惹こうと妙な真似をするようなら覚悟するんだな」

 

「そのような真似は絶対にしません。確かに私はコウタさんの事を、その、好意を抱いてはいますが、それは夢に向かって決して止まる事のない、前に進むのだという強い意思を見せているからこそです。それは戦闘も同じ。ジェガンではコウタさんの顔は見えませんが、あの人の強い意思はその機動からもしっかりと伝わってきます。私はそんなコウタさんに戦い方を教えて貰いました。なのに私がそんなコウタさんの名を貶めるような戦い方をする訳にはいかないんです」

 

これから共に戦うパートナーだというのに殺気さえ感じさせる視線でクロエを睨むラウラ

 

そんな視線を受けてもクロエは怯むどころか凛として返して見せた、その言葉の内容に感じられる本気さには同じように試合開始を待つ他の生徒も感嘆させられる程だ

 

しかしそんなクロエの様子をラウラは無言で切って捨てた、兵士に色恋の感情等は不要と、こんなに腑抜けた存在が自身と同じように生み出された者であるという事に苛立ちつつ

 

だがそれも些末な事だとラウラは思う、ならばその兵士としての欠陥品が想う相手を、自身の敬愛する教官の汚点とも言える存在共々、正面から叩き潰す、それだけの力が自分にはあるのだと信じて疑いもせずに

 

「そうだ、力こそが全てなのだ。私は運が良い、織斑一秋、そして紫藤康太、あの二人を一度に叩きのめす機会がこうも早く訪れたのだから」

 

憎悪すら感じさせるその声は誰にも聞かれる事なく消える

 

そして試合の時間が訪れた、力こそが自分の存在意義だと疑わぬ少女と、同じ遺伝子情報を持ちながらも兵器ではなく人間となった少女、二人は何の因果か共に同じ舞台に立つ

 

それに対するのは、本来ならばこの世には存在しない筈の異物(イレギュラー)である二人の少年だった

 

 

アリーナに四機のISが降り立ち、相対していた

 

片方は白式を纏う一秋とジェガンR型を纏う康太、対峙しているのはシュヴァルツェア・レーゲンを纏うラウラとバンシィ・ノルンを纏うクロエだ

 

試合開始までの僅かな時間、一秋は緊張した面持ちでラウラを見ており、ラウラは敵意を隠そうともせずに一秋を睨んでいる

 

そんな張り詰めた雰囲気の二人に反して康太とクロエは苦笑していた

 

「まさか第一試合で当たるとはな」

 

「はい、私も驚きました。でも、これで良かったのかもしれません。途中で他の専用機持ちの方達と当たっていたらコウタさんに教えて貰った本気を見せる事も出来ずに負けていたかもしれませんから」

 

「そうだな。確かに、自分が教えた相手の実力はこういった時くらいしか見れないかもしれない。そう考えると今で良かったのかもな」

 

普段と変わらない雰囲気で話す二人、だが次の瞬間にはその雰囲気も霧散する

 

「はい、なので私は―――」

 

「だからこそオレは―――」

 

アリーナ中に試合開始を告げるブザーの音が鳴り響き、四人はそれぞれに動き出した

 

「此所で散れ、織斑一秋!」

 

「自分は、過去から逃げない。立ち向かうんだ!」

 

「今日こそは貴方に勝ちます!」

 

「先任としても負けられない!」

 

白式が瞬時加速により一気に加速し、シュヴァルツェア・レーゲンがAICを発動する

 

ジェガンが強化型ビームライフルとシールド内蔵のミサイルを放ち、バンシィ・ノルンが本来よりは威力の抑えられたビームマグナムを撃つ

 

無鉄砲に突っ込んだ一秋はAICに捕まり、シュヴァルツェア・レーゲンのレールガンが白式をロックする

 

だがセンサーからの情報を受けたラウラは直ぐにその場を移動し、直前までラウラが居た空間を高出力のビームが通り過ぎる

 

「動きが直線的過ぎるぞ一秋!訓練を思い出せ!」

 

「クッ、康太、すまん!」

 

「チッ、足止め一つ満足に出来んのか貴様は!」

 

「今のは私のミスです。ですが向こうは単機でも強いです。連携を推奨します」

 

「ふざけるな!そんな物は弱者の使う手だ!邪魔だ、私が全て捩じ伏せてやる!」

 

ビームマグナムを回避した後、康太は足を止められた一秋の援護にビームライフルを撃っていた

 

連射の利かないビームマグナムの発射ラグを把握しての射撃であり、クロエはそのフォローが間に合わなかった

 

その為、今は左手にジェスタ用のビームライフルを別で取り出しており、射撃による支援を行おうとした所で合流した康太達が先手を打った

 

「一秋、例の戦術だ!プランB、一気にブッ放せ!」

 

「OK!」

 

その時には既にジェガンが全身にミサイルを装備していた、肩に三連装ミサイルポッドを備え、その外側に計四発の大型ミサイルを載せ、両腰のビームサーベルがあった場所にはM型と同様の五連装ミサイルポッド、更には両手に陸戦型ガンダム等の六連装ミサイルランチャーを持ち、両腕には四連装ミサイルランチャーを二門備えたシールドを固定している

 

おまけに一秋の白式も康太からロックの解除されている六連装ミサイルランチャーを二つ構えており、次の瞬間には暴力的なまでの数のミサイルが大量の白煙と共に放たれる

 

それらは広い範囲を狙っており到底避けられる数ではない、その為に迎撃という手段を取ろうとするラウラだが自分へと向かってくるミサイルの数だけでもそれなりに多い

 

連射の利かないレールガン、AICでも止められるのは二つだけ、迫るミサイルの中には威力の高い大型ミサイルも含まれており、ワイヤーブレードを犠牲にしてでも迎撃しようと覚悟を決める

 

だがそれより先にシュヴァルツェア・レーゲンの前に割り込む影があった、クロエのバンシィ・ノルンである

 

「たあぁぁぁぁぁっ!」

 

右腕のビームマグナムで複数のミサイルを巻き込み、左手のビームライフルをマシンガンのようにフルオートで発砲、頭部のバルカンと背負っていたアームドアーマーDEのビーム砲で迎撃する

 

シュヴァルツェア・レーゲンの武装では確実に被弾していた攻撃を、しかしクロエは得意の情報処理能力で瞬時に驚異度の優先順位を付け効率的に迎撃したのだ

 

それによりクロエ達が居る空間だけはミサイルの脅威は無くなっており、周囲では爆発が立て続けに起きる中で無傷になった

 

「お前―――」

 

「来ます!」

 

何故、と訊ねようとするラウラを遮ってクロエはビームマグナムの銃身下部に備えられたリボルビング・ランチャーを未だに残るミサイルの爆煙に向けた

 

次の瞬間、爆煙を切り裂いて少しでもセンサーに感知されないよう対艦刀を右手に携えたジェガンが現れる

 

その姿を確認した途端、素早く狙いを合わせたクロエがリボルビング・ランチャーより瞬光式徹甲榴弾を放つ

 

四発放たれたそれはジェガンが構えていたシールドに命中した後、一拍時間を置いてから発光し爆発する

 

その武装を知っていた康太は既にシールドを投げ捨て後方に退避している、クロエが康太の奇襲に気付けたのは普段から康太の戦い方を見ていたからこそだった

 

「次は白式に警戒、コウタさんだけが奇襲を仕掛けるとは考えられません」

 

「ならば、そこか!」

 

言われて周囲を見渡したラウラは不自然に爆煙が動いている箇所を見付けてレールガンを撃ち込む

 

それは直撃こそしなかったが爆煙を晴らし白式の姿を暴く事に成功する

 

「一秋、上がれ!」

 

「ッ!分かった!」

 

奇襲を防がれた、だが爆煙の外から康太が呼び掛けると一秋は白式を上空へと飛翔させる

 

それを見たクロエはアームドアーマーDEを前面に展開、爆煙の向こうに隠れた康太を想定し、行動に移す

 

「ビームが来ます、私の後ろに!」

 

「了解!」

 

クロエの声にラウラも可能な限りバンシィ・ノルンの後ろに隠れられるよう機体を屈ませる

 

一拍置くと赤い色をしたビームが水平に薙ぎ払われるも、アームドアーマーDEの備えたIフィールドによりビームが拡散、直撃を回避した

 

更にはビームの照射により残っていた爆煙も完全に晴れ、三脚に固定したメガ・ビーム・ランチャーを構えるジェガンの姿を露出させた

 

「チッ!」

 

「させん!」

 

即座に第二射を放とうとする康太、だがラウラがワイヤーブレードを放った事で退避し、ブレードは残されたメガ・ビーム・ランチャーを破壊する

 

更には追撃としてクロエがビームマグナムを放つが、それは零落白夜を発動させた一秋が射線上に割り込み切り裂いた

 

それにより両チーム共に合流した事になり、仕切り直しとばかりに互いに距離を取り、武装を整え出した

 

短い間に行われた攻防、そこに含まれる連携に観客席からは歓声が上がる

 

だがそんな彼等の事を悪意を持った眼で見ている存在が居た事は他の誰も気付いてはいなかった

 

 

アリーナの観客席の中でも来賓用に設けられた個室、その中では軍服を着た氷のように冷たい眼をした男と、端末を持った白衣を着た痩身の男が居た

 

「博士、自慢の人形は学生にも手こずっているようだが?」

 

「そ、そんな筈はない!アレは成功品なんだ!たかが学生に遅れを取る等!」

 

「しかし実際には攻めきれていない。それどころかパートナーの手が無ければ早々に被弾、撃墜されていた様子も多々ある。おまけに相手は学生でも入学前まで一切ISに触れた事のない男子生徒だ。この事はどう説明するのかね?」

 

「そ、それは……あ、あれは篠ノ之博士の部下だぞ!?ならばその機体がどのような新技術を持っていても不思議ではない!」

 

「確かに片方はかの篠ノ之博士の手が入っている機体だ。しかし量産機でもある。多少の手は入っていても、素人だった人間に負けるような物なのかね、君の自慢の人形とやらは。まあいい、その件は今は置いておこう」

 

「そ、そうか。そうだな、今は問題点を洗い出す方が先決という物だ」

 

「そうだとも博士。それで、その問題点だ。あの人形のパートナーである少女は明らかに人形と同じものだろう。博士、君は失敗作は全て処分した、そう言ってはいなかったかね?」

 

「ッ!?」

 

白衣の男は遂に来たと悟った、試合開始時点でその姿を目にした時からずっと気にしていた事だ

 

そう、処分した筈なのだ、記録でもそうなっている、だが現実にアリーナに居る少女は他人の空似で片付けるには不可能な程に人形(ラウラ)と似ていた

 

「フンッ、まあ今はそれも置いておこう。だが後日、責任を追及する事は忘れるな。ああ、しかし貴様の研究が有用な物であると証明されたのであれば処罰は軽くなるかもしれないな」

 

「わ、分かった、成果を出せれば良いのだな?それなら簡単な事だ、直ぐに結果は出る。それと、私は少し席を外させて貰う」

 

そう言って白衣の男は廊下に出ると少し離れて人気が無くなった辺りで直ぐに端末を操作しだした

 

「クソッ、何故私がこのような目に!あの失敗作が生きているのも、私以外の人間が余計な情を人形達に抱いて逃がしたからだろう!何故私が責任を追及されねばならない!」

 

そう毒づきながら男は端末を操作し、目当てのプログラムを呼び出す

 

「このままでは他の無能共の生け贄にされてしまう。蓄積した研究データは惜しいが、大本の研究内容は私の頭の中にある。それを手土産に別の国に売り込めば私は研究を続けられる」

 

その為の手を打つ、白衣の男は呼び出したプログラムを走らせ、そしてアリーナから、学園から立ち去ろうとする

 

「忌々しい役立たずの人形め、せめて最後の最後くらいは役に立ってみせろ。クククッ、あの胡散臭い男が渡してきたシステムのテストも出来るしな。ふふふ、これで最後まで邪魔にしかならなかった面倒な失敗作も屠れる。そうだとも、私はこんな所で終わる人間じゃないんだ。あの人形も、失敗作も、余計な力を見せた男達も、私の障害になるのであれば全て死んでしまえ!」

 

どす黒い感情を抱きながら白衣の男は素早くその場を立ち去っていく

 

彼が持っていた端末、その画面には小さくではあるがしっかりと『Berserker SYSTEM』と表示されていた




おまけ・コウタくん達の試合を見ていたとある少女の反応

「あ、あれは、ガリアンのマグネシウムアロー!?わ、私も使いたい!」

「かんちゃん楽しそうだね~」

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