ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

28 / 82
気付いたら前回から十日近くも感覚が空いてしまった……これも時間があったら何処までもプレイ出来るFallout4っていうゲームが悪いんだ(責任転嫁)


28話 群青2

海上に出たオレはジェガンで演算する、先程の離岸流に巻き込まれた時のデータが待機形態のジェガンにも残っていたので海流の速さから現在位置の予想を立ててその周辺を重点的に捜索する

 

全長一メートル以下の生命体をセンサーの反応から消していく、浮き輪があるという事から溺れる可能性は限りなく低いが沖合いになれば波は浜辺付近よりも高い、何かの拍子に投げ出される可能性も少なくないのだ

 

「機動性は上がっている。後は時間との勝負だ」

 

今のストライク・ジェガンに装備されているのはスペキュラムストライカー、エールストライカーを再設計した物でスラスターの増設、翼下にパイロンや各種ミサイルの装備を可能とした事で全ての性能はエールストライカーを上回っている

 

今回は速度重視という事で翼下には何も装備していない、その速度を以て現在位置と予想される範囲を捜索する

 

センサーのみに頼らず自分の目も使って捜索を行う、そうしているとセンサーが海の真っ只中に漂流している浮き輪を見付けカメラで捉えられたそれを拡大表示する、だがそこに探していた人間の姿はない

 

「まずい、何処だ!?」

 

大急ぎで浮き輪の周辺まで飛び周囲を見渡す、だがセンサーに捉えられる人間の生体反応は感じられず最悪の事態が頭を過る

 

まだ諦めるなとそんな考えを振り払う、だが海の中へと沈んでしまったのならば一刻の猶予もない、焦る気持ちをなんとか押さえ付けながらセンサーを稼働させる

 

それでも見付ける事は出来ない、浮き輪だけが流されて別の場所に居るのではと思った時、一瞬だが海の中に別の色が見えた気がした

 

センサーには何の反応もない、それでもそこに居るのだと不思議な確信があり、オレはそこまで飛翔すると一度スペキュラムストライカーを外し素体となるジェガンのみで海中に潜る

 

そして見付けた、のほほんさんの言っていた特徴と一致する少女の姿を

 

苦しそうにもがいているがまだ生きている証拠だ、シージェガンではないから思ったよりも真っ直ぐ進まないが確実に前進し、しっかりとその少女の手を掴んだ

 

 

「あれ、私……?」

 

康太が救助した少女、更識簪が目覚めた時、そこは見慣れない和室だった

 

何故海に居た筈の自分がそこに居るのか、その事に疑問を抱いたが直ぐに思い出した、浮き輪に乗って沖合いに流された事と、そして冷たい海の中で自分へと伸ばされる手を

 

一瞬だけ見えたその姿、あの機体は確か―――

 

「かんちゃ~ん!」

 

「きゃっ!?ほ、本音!?」

 

「良かった!本当に良かったよ~!」

 

しかしそんな思考を打ち切るかのように横から自らの従者でもある少女に抱き付かれた

 

今は前と違って少し距離を開けてしまっていたのほほんさんこと布仏本音、だが彼女は一方的に距離を開けられても昔と変わらないように自分を心配してくれているのだと簪は感じる

 

「ごめんね、本音」

 

「うん、大丈夫だよ~。でも本当に良かったよ~。しどっちのお陰だね~」

 

「そういえば……ねえ、本音。私を助けてくれたのって―――」

 

「救助に向かったのは紫藤で間違いない」

 

のほほんさんの言葉から自分が見た姿を思い出した簪は確認の意味でその事について聞こうとしたところに第三者の声が聞こえてくる

 

先程ののほほんさんの事といい、自分が周囲をちゃんと確認していなかった事を思い出した簪は周囲を一度見渡し、そして部屋の入り口の襖を開けて一年一組の担任である織斑千冬が立っていた

 

「簡単に説明すると浜辺で遊んでいた紫藤とクロニクルが布仏からお前が沖合いに流されたと説明を受け、クロニクルが私達に知らせに、紫藤が先行して捜索に向かっていた。即座に各専用機持ちや教員部隊を動員して救助活動を行おうとしたところで紫藤からお前を発見したと連絡があった。医師の話では体に問題ない筈だという事だ。何か不調はあるか?」

 

「いいえ、大丈夫です」

 

聞かれて思い返すが特に不調は感じられない、少しの疲れはあるがそれだけだ

 

「それと紫藤だが今は報告書兼反省文の作成をしている。それというのも、お前は救助された直後は意識もはっきりしていたらしい」

 

「え?ならどうして……」

 

「紫藤がその後で加減を間違えたらしくてな。シールドは張っていたが移動時に掛かったGによって気絶したらしい。緊急時につきISの展開等、その辺りの点は責任を問われないが、その後の対応の仕方がだな……」

 

「えぇ……」

 

自分が意識を失っていた理由を説明されて簪は微妙な気分になった、なんとも締まらない理由で気絶していたからだ

 

「だが紫藤の機体ログを見る限りお前の救出はかなりギリギリだった。一分でも遅れていれば危険だっただろう。その点は感謝しておけ」

 

「はい」

 

千冬に言われるまでもなく簪はその気だった、最後こそ締まらなかったものの自分の命の恩人である事は間違いない

 

なので直接礼を言おうと思い、伝える事は全て伝えたとばかりに千冬は部屋を出ていった

 

「ところで本音、今は何時なの?」

 

「えっとね、今夕方の六時回ったくらいだよ~。もうちょっとでご飯だね~」

 

ならばその前後で声を掛けよう、簪はそう決心したのであった

 

 

「ふむ、まあこれで良いだろう」

 

「後は機体のログを渡しておきますよ。映像もあるのでそれを参照して下さい」

 

救助活動を行った後、オレは織斑教諭から言われた報告書の作成を行い夕食の少し前の時間に完成させた

 

それを織斑教諭に提出しようとしたら何処かへ向かったらしく、少し待っていたら戻ってきたのでそのまま提出した訳である

 

「分かった。それにしても、ISのセンサーよりも先に直感で位置を捉えた、か」

 

「本当にそうとしか言い様のない感覚でしたからね。自分でも分からないですし、もしかしたらニュータイプとして覚醒したりするんですかね?」

 

「人類進化の可能性か。束の奴から聞いた時は眉唾物だと思っていたが別の世界の住人であるお前が此処に居るんだ。そのような可能性もまたあるのかもしれないな」

 

あの時に感じた感覚、あれは不思議なものだった

 

それこそまるでニュータイプのような、本当に覚醒する事が出来るのだとしても、こんな短時間に覚醒したとは思えないが今度サイコミュ兵器でも試してみよう、まともに動けばニュータイプとして覚醒した証拠になるからな

 

「まあその辺りはお前達の領分だ、私は関与しない。後少しで夕食の時間になる。早めに行動して損はないぞ」

 

「分かりました。それとエイフマン教授の分も手配してくれた事、感謝します」

 

「確かに急ではあったが、その立場を考えると放り投げる訳にもいかないからな。とはいえISコアを作製出来る二人目の人物、おまけに束のように人間性が破綻している訳でもなく良識的な人物ときている。このような情報が外に漏れてみろ、間違いなく世界は荒れるぞ。それこそ戦争を起こす事も躊躇わんだろう」

 

「ですね。教授が表舞台に出るにしてもまだ先の話になると思いますよ」

 

「そう願いたいものだな。よし、もう行け。時間だ」

 

「はい」

 

という訳で部屋から出て夕食を食べる為に宴会場となっている大部屋に向かう

 

既に多くの生徒が集まっているようで、オレも自分の席に、いつもの面々が集まっている辺りに座った

 

「お、康太、報告書は終わったのか?」

 

「まあな。一応は合格だとさ」

 

「アンタもよくよくトラブルに巻き込まれるわよね。でも無事に救助出来て良かったじゃない」

 

「そうですわね、その生徒も無事に見付かって何よりですわ」

 

「ボク達にも召集が掛かった途端に発見の報告が来たからね。状況的にギリギリだって聞いてるよ」

 

「うむ、こういったイベントは皆が楽しんでこそと教わった。その者も感謝しているだろう」

 

「そういえば、その相手とは話したのか?」

 

席に着くなり口々に言葉を掛けてくる面々、オレも無事に救助出来たというのは喜ばしい事だ

 

「オレも織斑先生から聞いただけだが、先程目覚めたらしい。まあ、その気を失っていた原因がオレな訳だが……」

 

「康太がそんなミスやらかすなんて珍しいよな」

 

「うるさいぞ、一夏。お前なら救助したら速攻で瞬時加速するだろう」

 

「いやそんな事は!しない、ぞ……」

 

「声が震えてるぞ、一夏」

 

と、アホな会話をしていると時間となり織斑教諭等も大部屋にやって来た

 

最後の方に篠ノ之博士とエイフマン教授も続く、それと篠ノ之博士に同伴してクロエも一緒だ

 

「康太さん、あのお年寄りの方はどなたなのでしょう?お昼頃に康太さんが肩を貸していたところは見ていたのですが、何も聞いておりませんわよ」

 

「エイフマン教授の事か?詳しくは言えないがラビットフット社の技術者だ。今日合流した」

 

「ああ、それで康太達は最初別行動だったんだね。でも篠ノ之博士も一緒だったって事は、かなり優秀な人だよね?IS業界でそんな人、聞いた事ないけどな?」

 

「私も本国に居た頃に世界的に有名な技術者の名前と顔は覚えさせられたけど、そんな名前の人なんて聞いた事がないわよ」

 

「その辺りも含めて、必要なら話すさ。今はまだ、本当に色々とあって話せないんだ」

 

初耳というのは当然だ、一体誰が異世界から来た技術者だと思うのだ

 

そしてその能力、ISコアの明確な作製方法を知る人物など、簡単に口外すればどのような反応が起きるかは明白、特に各国に所属している形となるセシリア、シャルロット、鈴にも話せない

 

だがそこに丁度織斑教諭が全体の注意を集めた事で切り抜けられた

 

「さて、全員揃っているな。食事の前だが一つ追加で説明事項がある。皆も気になっていると思うが此方のご老人についてだ。教授、自己紹介をお願いします」

 

「うむ。お初お目に掛かる。わしの名はレイフ・エイフマンという。ラビットフット社に所属する技術者だ。先程、織斑教諭とも話し合いたまにだがISに関する授業を受け持つ事となった。よろしく頼む」

 

が、聞かされた内容はオレでも初耳の内容だった、確かにエイフマン教授は名前の通り教鞭を取る事も出来る、ビリー・カタギリやスメラギ・李・ノリエガことリーサ・クジョウも彼の教え子だからだ

 

とはいえまさか今日の内に関わったばかりのISでの教鞭を取るとは思わなかった

 

そして此処までなら篠ノ之博士も認める技術者が学園で授業を行う、それだけで済んだ

 

しかし次の瞬間、その予想は吹っ飛んだ

 

「むふふ~、お爺ちゃんはスゴいよ~!なんと、この束さん以外にISコアを製造出来る数少ない人なのです!」

 

「ぶっ!?博士!?」

 

選りに選って一番秘匿しなければならない情報を篠ノ之博士が暴露してしまった

 

これは予定になかった行動なのだろう、織斑教諭でさえ驚いた表情で篠ノ之博士を見ている

 

そしてISコアは篠ノ之博士にしか製造出来ない、そんな常識を打ち砕かれた他の人間の反応など分かりきっている

 

『ええぇぇぇぇぇっ!?』

 

途端に大部屋の中に事情を知らない大多数の人間の声が響いた

 

その大音量に耳を塞いだ後、その大音量にも負けないレベルの織斑教諭の一喝が響く

 

「静かにしろ、馬鹿者共が!!」

 

その声により一度は収まる生徒達の声、そこに静かに織斑教諭が言葉を続けた

 

「色々と気になるがあるだろうが質問は受け付けん。余計な真似も許さん。分かったな」

 

『は、はい……』

 

「宜しい、では説明事項は以上だ。ゆっくり、そして静かに食事を摂るとしよう」

 

そう言って織斑教諭やエイフマン教授、篠ノ之博士は自分の席に着いた

 

そうして夕食が始まった訳だが、エイフマン教授に余計な真似はしなければ良いだけで事情を知っている人間に声を掛けてはならないとは言われていない

 

「どういう事ですの、康太さん!?」

 

「そうよ、本当にISコアの製造出来る技術者なの!?」

 

「道理で詳しく話せない訳だよね……」

 

「まあこうなるよな。ハァ……」

 

結局、その後は国家代表候補生でもある面々から質問責めに遭うのであった

 

 

「ふぅ、疲れた……」

 

怒濤の如く続いた質問責めにある程度答えた後、オレは一人入浴道具を持って温泉へと向かっていた

 

オレも逃げようとしたさ、だが国に報告する義務もある三人の圧力からは逃れる事が出来なかった

 

取り敢えず自分は関係ないからとそそくさと逃げていった一夏は後で締める、まあ関係ないのは事実なのだが、ムカつくから八つ当たりだ

 

「それにしても、篠ノ之博士も何を考えているのやら……」

 

いや、あれは何も考えてなかったのか?何でも良いから誰かに自慢したかった子供みたいな雰囲気を感じたぞ

 

どれだけ嬉しかったのやら、分からないが明日以降、確実に世界が荒れるな

 

取り敢えず、この臨海学校までの間はゆっくりするとしよう、その為にも今から温泉だ

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

だが背後から声を掛けられた為に足を止め振り返る、そこに居たのは動物みたいなパジャマを着たのほほんさんと水色の髪の、昼にオレが助けた少女が居た

 

「確か、更識簪、だったか?体調はもう良いのか?」

 

「えっ?どうして私の名前を?」

 

「学園に在籍している代表候補生並びに各専用機持ちの情報は入学前に叩き込まれたからな」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「それと、昼間はすまなかった。生身にも関わらず、無茶な機動をしてしまった」

 

「それは、気にしてない。私を助ける為だったから」

 

「そうか。それなら良いんだが……」

 

「うん…………」

 

「………………」

 

……気まずい、気にしていとは言っているが、ならばどのような用件で此処まで来たのか分からない

 

向こうも無言になったし、どう切り出せば良いのやら

 

「かんちゃ~ん、しどっちに伝えたいことあるんだよね~?」

 

「本音……うん、そうだね。あの、紫藤くん。遅くなったけど、助けてくれてありがとう!」

 

「えっ?あ、うん、どういたしまして」

 

「う、うん、それだけ伝えたかったから。じゃあね、助けてくれて本当にありがとう」

 

「分かった」

 

「しどっち、おやすみ~!また明日ね~!」

 

「ああ、のほほんさんもまた明日」

 

それだけ伝えると更識簪はのほほんさんと一緒に去っていった、どうやら本当にお礼を伝えたかっただけらしい

 

「さて、温泉に行くか」

 

そして用件が終わったでオレもまた温泉に向かい廊下を進んでいくのであった

 

 

康太が温泉へと向かっている頃、千冬と束が泊まる予定の部屋には一年生の簪を除く各専用機持ちと箒が集められていた

 

唐突な呼び出しに何事かと身構えていた少女達だが、千冬は楽にしろと言って冷蔵庫から飲み物を取り出して各自に配る

 

何が目的かは分からないが緊張から口の中が乾いていた全員がその飲み物に口をつけたのを見て千冬がニヤリと笑う

 

「よし、飲んだな」

 

その言葉を聞いて何か入っていたのかと警戒するが千冬はなに食わぬ顔で再び冷蔵庫を開けると中から缶ビールを取り出し、内片方を束へと渡した

 

そしてプシュッという音と共にプルタブを開けると勢いよくその缶ビールを呷った

 

「ふぅ、美味い!」

 

「ちーちゃんとお酒なんて久し振りだね!それに、私もこんなの用意して来たよ!」

 

「ほう、中々に上物じゃないか。今から楽しみだな」

 

あっという間に缶ビールを一本ずつ飲み干した千冬と束、更に何処に仕舞っていたのか束が日本酒の瓶を取り出したのを見て他の全員は呆けた顔をしていた

 

「む、どうしたお前達?」

 

「いえ……その、お酒を……」

 

「私だって酒くらい飲むさ。それに今は勤務時間外だ、問題はない。それに口止め料も払っているだろう?」

 

その指摘に全員が手元にある飲み物を見て「あっ」と声をあげる

 

だがそんな普段とは違う千冬の様子に一先ずは緊張の解けた面々であった

 

「さて、こうして読んだ理由だが別に深い意味はない。単なる飲み会だ」

 

「恋バナとかしようぜ~い!という訳で箒ちゃんから!」

 

「何故私からなのだ、姉さん!?」

 

「そりゃ私が知りたいから!ほれほれ、箒ちゃんはいっくんの何処に惚れたのかなあ?」

 

グラスに氷と日本酒を入れて飲みつつ束はニヤニヤと笑みを浮かべながら箒を弄る

 

「私は別に、一夏の事など……」

 

「そう言うが周囲からはバレバレだぞ。ふむ、なら次は鈴だな」

 

「アタシ!?ア、アタシはほら、一夏とは腐れ縁なだけで……」

 

「私は誰も一夏などとは言っていないぞ?」

 

「なあっ!?」

 

してやられた形になった鈴だが既に千冬の興味は別に移っている、その視線の先に居るのはシャルロットだ

 

「で、デュノアは一夏の何処に惚れたんだ?」

 

「えっと、ボクは……私は、その、優しいところ……です」

 

顔を赤くしながらも好意を抱いている事を隠さずに話すシャルロット、その反応に千冬からの質問を誤魔化していた箒と鈴の二人は戦慄する

 

「ほう、だがアイツは誰にでも優しいぞ?」

 

「そうですね、そこはちょっと悔しいかなあ、アハハハハ……」

 

「う~ん、これはしゃるるんが一歩リードかなあ。頑張らないとね、箒ちゃん!」

 

「クッ、精進します……」

 

「ぐぬぬ、本当の敵はシャルロットみたいね……」

 

一夏とは一番付き合いの短い相手、だが幼馴染ではない故に強敵となり得る存在に危機感を抱く二人、そしてそれを煽る束、場がピリピリしてきた中で次に千冬が狙ったのはラウラだ

 

「それで次はラウラだな。お前は一秋と付き合っているが、何処がそんなに気に入ったんだ?」

 

「それは、その……まずは強いところです」

 

「いや、弱いだろう。強さでいけば一年では紫藤がダントツだぞ?」

 

「そうですが、一秋の強さは心が強いです。それに、あの、私にあれだけの好意を向けてくれるなど……兵士だった私には縁のない事だと、下らない事だと思っていたのですが、それでもと……」

 

「成る程、お前が義理の妹になる日も近そうだな」

 

この中で一人だけ恋人として相手が居るラウラ、その様子に周囲の恋する乙女達は羨望の目で見つめる

 

そしてまずは千冬の弟達の様子を聞き終えた訳であるが、そんな中に入っていない面々も居る

 

「オルコットは居ないのか、気になる相手が」

 

「私は今は居ませんわね。三人の中でしたら康太さんになりますが、ライバルであって恋愛対象ではありませんもの」

 

「そうか。行き遅れなければ良いな」

 

「どういう意味ですの!?」

 

「んー、高飛車で、家の格も高くて、おまけにエリートだから相手が尻込みするって意味だと思うよ」

 

「そ、その程度で尻込みする相手など此方から願い下げですわ!」

 

「行き遅れ確定だな。将来酒を奢ってやるぞ」

 

「そ、そんなの認めませんわ!絶対、絶対に素敵な殿方を射止めてみせます!」

 

なお自分も行き遅れになる可能性は千冬の頭から抜け落ちていたりする、束の方はそもそも自分に釣り合う男が居るわけないと確信しているので結婚する気はさらさらない

 

そしてセシリアが騒ぎ立てる中、順番的に最後の一人となったクロエに視線が集中する

 

「最後はお楽しみ、くーちゃんの番だね。まあ誰が好きなのかは知ってるけどさ!」

 

「まあ紫藤だな。普段の様子を見ていても分かる」

 

クロエの好きな相手、それは既に全員の知るところとなっていた

 

なので千冬の言葉にも全員が頷く

 

「それで、クロニクルはアイツの何処が好きなんだ?」

 

「……言わなければダメですか?」

 

「ダメだ、全員言ったからな、一人だけ逃げるのは許さん」

 

「分かりました」

 

千冬は酔ってきたのか多少言動が怪しくなっていた、そしてそんな絡み方をしてくる千冬の様子に観念してクロエは口を開く、その表情は無表情に見えるがしっかりと頬が赤くなっていた

 

「その、まず雰囲気が好きです。普段は緩んだ雰囲気ですが戦闘中の凛とした雰囲気とのギャップが好きです」

 

「ほう」

 

「そして優しいところが好きです。色々なところで私を助けてくれます」

 

「ふむ」

 

「それと、あの大きな手が好きです。頭を撫でて貰った時、とても落ち着きます」

 

「成る程な」

 

「あと、匂いが好きです。たまに、その、コウタさん留守中にベッドで転がったりします」

 

「……うん?」

 

「それから、声が好きです。時々、その喉笛を食べたいと思ってしまいます」

 

「………………」

 

何やら猟奇的な方に向かっていくクロエの思いに千冬がどんどん言葉を無くしていく

 

そして周りで聞いていた面々もまた引いている

 

その後もちょっとそれはどうなんだ、と思うようなクロエの『好き』が本人から語られていくがクロエは止まらない

 

そうして全員のSAN値がガリガリと削られていき、そろそろ誰か止めろという雰囲気になった時の事だ

 

「―――でも、一番好きなのは自分の夢に向かって進むコウタさんの姿なんです。コウタさんの事は好きですけど、恋愛でコウタさんの足を引っ張りたくないんです。だから私は近くでコウタさんを支えつつ、あの人を想っているだけで良いんです」

 

最後に締めるように語られたクロエの一途な想い、がそれまでに語られた狂愛とも言える数々の想いに一人を除いて素直に受け止める事が出来ずにいた

 

「うんうん、ならくーちゃんがこーくんと結ばれる為にも早く宇宙に出ないとね!くーちゃんの想いを初めて聞けたし、心機一転私も頑張っちゃうよ!」

 

「ありがとうございます、束様。勿論、束様の事も尊敬しています」

 

「まあ、お前達が良いのなら私は何も関与しないさ。だが法に触れるような真似はしてくれるなよ?」

 

周りを置いて盛り上がる主従の二人、その二人を眺めながら千冬はこの場に居ない康太の冥福を祈るのであった




クロエと束さんの関係みてて、クロエってかなり依存しそうだなあと感じたのでこんな展開に……クロエの狂愛を目の当たりにした皆さん、SAN値チェックです

なお

篠ノ之束 SAN値 0 → 0

という感じだったとかなんとか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。