ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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この小説、可能な限りでアンチ・ヘイトがないようにしてる訳ですが、時たま思う訳なんですよね、「愉悦書きたい」と

この小説が完結したらザマァとなるような小説書くんだあ……


29話 KATANA

IS学園の臨海学校二日目、今日からは実際にISを用いての実習が行われる事となる

 

学園のアリーナとは違い広い空間を使えるというだけに学園では行えない試験も可能だ、それが朝から夜まで丸一日も予定されている

 

そんな中でオレは自分の予定していた装備の試験をする為に砂浜にコンテナを運んでいた

 

「さて、残りは一つか」

 

幾つもの装備、ジェガンは汎用性の高い機体だけにテストでの評価に持ってこいの機体だ、それだけに数も多い

 

おまけに今回はデュノア社とも共同で行うテストがある、休む暇はない

 

此処まで来る時に乗ってきたノッセルの甲板に載せられたコンテナ、その最後の一つを運び終えたところで一休みする

 

「ふぅ、終わった。後はコイツを渡すだけか」

 

目の前にある一つのコンテナ、その中身は篠ノ之博士が生み出した一機のISだ

 

今日の日の為に博士が造ったのだ、その性能もまた現行のどの機体よりも優れている

 

そしてオレが博士に教えた結果装備された特殊兵器も同様に積まれている、それで何を斬るか、そこだけは間違って欲しくないものだ

 

「コウタさん、そろそろ時間です」

 

「分かった、こっちも今終わったところだ」

 

コンテナを眺めているとクロエがオレの事を呼びに来た、一度全体で集まって織斑教諭からの説明事項があるからだ

 

なのでオレもクロエと一緒に皆が集まっている場所に向かう、何故かオレとクロエが一緒に居るところを見て専用機持ちの女性陣と箒の表情が引きつっていたが何故だろうか?

 

まあそれは兎も角として、全員が集まって色々と説明された後、専用機持ちと一般生徒と別れて試験が行われる事となる

 

「ああ、篠ノ之。お前は今日から専用機持ちだったな」

 

「その通り!箒ちゃんに頼まれてた物、ちゃんと出来てるよ!こーくん、ちょっとよろしく!」

 

「了解です。例の刀も一緒に、ですね」

 

篠ノ之博士に言われてオレはジェガンを展開、先程のISを収めていたコンテナを運んでくる

 

そうしてコンテナが開かれ、中から現れたのは鮮やかな赤を基調とした機体だった

 

「じゃじゃ~ん!これぞ箒ちゃん専用機こと紅椿!全スペックが現行のISを上回る束さんお手製のISなんだよ!」

 

「これが……」

 

「近接戦闘主体の万能型に仕上げてあるから箒ちゃんとの相性も悪くない筈だよ。ちょっとこーくんの話にあった近接武装を幾つか追加したけど、要らないなら外せるよ?」

 

「康太が?」

 

篠ノ之博士の言う通り、ガンダムシリーズで近接戦闘特化の機体の武装を聞かれたから幾つか教えてある

 

例えば爪先にビームブレードを展開する機構やら、長さの調整が可能で柄を連結出来るビームサーベルやら、掌に仕込んだ短射程のビーム砲とか、折り畳み式のナイフとか、SEED系の技術を基本にしてみた

 

今は全て積んであるが、それとは別でもう一つの武装がある、それだけはオレが別のケースに収めて持っていた

 

「まあ外せるとは言っても、必要ないと思えば紅椿が自動で外すし、外しても必要と思えばまた後で展開するから何か手間を加えるって事はないんだけどね。それが紅椿の真骨頂、展開装甲なんだよ!」

 

「展開装甲?」

 

「うん、それ自体が形を変えて幾つもの役割をする装甲だよ。白式の雪片弐型に組み込んでたんだけど、紅椿は更にその発展型で攻撃・防御・機動の全てに対応するんだ。分かり易く言えば武器にもなるし、装甲としてそのまま使えるし、スラスターに変形するって訳だね。その時の状況に応じてその場で機体特性を変化させる事が出来る万能機、世界中で研究してるけどまだ机上の空論となっている第四世代機、それがこの紅椿なんだよ!」

 

篠ノ之博士のその言葉に聞いていた全員から、特に各国が必死になって第三世代機を開発し、それを受領している専用機持ち達の間には動揺が走る

 

「第四世代……そんな物が」

 

「まあ、この方式だと装甲を破壊されたら機能が制限されるって事でもあるから、諸刃の剣とも言えるな。まあ、装甲を破壊出来るならば、と付くが」

 

ショックを受けた様子のセシリアに一応のフォローはしておくが、その装甲を抜けるとするならばビーム兵器しかないから難しいところだ

 

それとオレが先程言った武装は基本的に予備であり、メインとなる武装は両腰にある日本刀型のブレードだ

 

そこに加える三本目の刀をオレが持っている

 

「まず武装ね。右手が雨月、左手が空裂だよ。データ送るから見てね」

 

「これは……!」

 

「見たね。じゃあテストだよ!こーくん、軽く相手して!」

 

「了解!」

 

さて、此処からはオレの出番でもある

 

事前に伝えられていた事、それはこの紅椿の相手になる事だ

 

篠ノ之博士が造った万能型のISと、I.W.S.P.という万能型のストライカーパックを装備したオレのストライク・ジェガンの比較試験だ

 

即座に飛翔、左手に装備したコンバインド・シールドに格納されているガトリング砲を向け発砲する

 

分間6000発という圧倒的な連射力から放たれる銃弾の雨、突発的な奇襲になるが箒は反応して上空に逃れる

 

「康太、いきなり攻撃とは卑怯ではないか!?」

 

「前に言った筈だ。力を求めるには代償が要ると。その力、この先にも狙われる。ならばこの程度、凌いでみせろ!」

 

右手をライフルから対艦刀に持ち変え、オレは紅椿との空中戦へと突入する

 

その中でオレはふと、あの日の事を思い出していた

 

 

箒が放課後に相談があると言って屋上に呼び出されたのは、オレがクロエと水着を買いに行こうとした日の前日だった

 

オレがラビットフット社と、篠ノ之博士と関わりがあると分かってからは避けられていたのだが、此処に来て相談というのに違和感を感じながらもオレは指定された通りに一人で放課後に屋上に来た

 

そこには既に箒が待っており、此方に背を向けて立っていた

 

「来てくれたのか」

 

「違和感が拭えないからな。それで、わざわざ呼び出して相談ってのは何なんだ?」

 

「ああ、どうしても聞いておきたい事があったのだ。お前と姉さんについての事だ」

 

「オレと博士と、か」

 

「そうだ。知っての通り、姉さんは世界中から追われ、隠れていた。そんな姉さんと、どうやって知り合ったのだ?」

 

「オレがISを起動させた後、向こうから接触があったんだ。そのまま何も分からないオレを色々と面倒を見てくれた。詳しい事はすまないが機密事項でな。だが一言で言うのならば、オレにとってあの人は恩人だ」

 

それは偽りのない事実だ、何故オレがこの世界に来たのか、右も左も分からない中で拾い、この世界での戸籍をくれた

 

一人ではどうしようもない事態を救ってくれた、それに恩を感じないなんて事は絶対にあり得ない

 

「そして、またオレに夢を見させてくれた。オレは宇宙に行きたい。篠ノ之博士のように星の海を巡るんじゃなくて、地球という揺り籠を出て宇宙に新たな人類の大地を作りたい、そう思ったんだ」

 

スペースコロニーの建造、月面都市の建設、ガンダムの世界を実現するという荒唐無稽とも言える夢、それを実現出来るかもしれないという可能性を見せてくれた

 

「だからオレは篠ノ之博士に従っている。博士の行く道がオレの夢と重なるからだ」

 

「そうか……」

 

「お前は、篠ノ之博士を恨んでいるんだろう?」

 

「っ!?当たり前だ!あの人のせいで、私達家族がどのような事になったか!」

 

「聞いているさ。国に家族をバラバラにして監視されるようになった。転校を繰り返す事になったとな。何かを成すには代償が必要となる。篠ノ之博士は宇宙に出る可能性を獲た代わりに、家族を失った訳だ」

 

「そんなもの、あの人の勝手な都合で私達は巻き込まれたんだぞ!?それを恨んで何が悪いというのだ!」

 

「そのお陰でオレは夢への可能性を掴んだ訳だがな」

 

「き、貴様!」

 

わざと煽るように箒に言うと、予想通り箒はオレへと殴り掛かってくる

 

以前までならその攻撃を避けるような真似は出来なかっただろう、だがこの世界に来てから訓練に明け暮れたオレは剣道をしているとはいえ素人の拳を受け止めるくらいなんて事はなかった

 

「お前はさっきから何が言いたいんだ?悲劇のヒロインのつもりか?ああ可哀想だ、篠ノ之博士が悪い、そんな風に薄っぺらな同情が欲しかったのか?」

 

「くっ、放せ!」

 

「言われずとも放すさ。そんな重みもない攻撃、当たったところで高が知れてる」

 

受け止め、掴んでいた拳を放してやる、箒は敵意の籠った視線で睨むが、そんなものは軽く受け流せる

 

「フンッ、何が不幸なんだか。家族は別居しているとはいえ生きている。電話で言葉も交わせる。それの何が不満なんだ?」

 

「何だと!?お前に、私達の何が分かるというんだ!?」

 

「分からぬさ!だがお前もオレの事を知らないだろう?ならお互い様だ」

 

「何を―――」

 

「オレの家族はこの世界には居ない」

 

「なっ!?」

 

「唐突に別れて、言葉を交わす術もない。そして他に身寄りもない。親戚なんて存在もない。オレの家族は、血の繋がった存在はこの世界に一人として存在しないんだ。親父ともお袋とも、明日もまた顔を合わせて何気ない日常が続くんだと、そう思っていた時に、突拍子もない出来事のせいで、だ」

 

ああそうだとも、親子とまたガンダムの話をしたり、それをお袋に苦笑されたり、三人で食卓を囲んで普段の日常を過ごしていくと思っていた

 

この世界に来てからは子供の頃に親子に話した夢に向かって進んでいく事で誤魔化していた

 

それでもふと思うんだよ、また顔を見て馬鹿みたいにはしゃいでいたあの時のような日常に戻りたいって事も!

 

「そしてオレはこの世界で貴重な男性操縦者だ。身寄りのない子供一人、消えても誰も気にしない。それこそ、人体実験のモルモットにしても問題ないとは思わないか?」

 

「そ、それは……」

 

「それに、セシリアもだ。三年前、列車事故で両親を失っている」

 

「ッ!?」

 

「それから両親の遺した資産を、家を、貴族としての誇りを、欲にまみれた俗物共の手から守る為に一人努力して今の地位を手に入れたと聞いた」

 

「………………」

 

「何もせずにオレも、セシリアも、シャルロットも、鈴も、ラウラも、そしてクロエも、今の地位に居る訳じゃない。皆、何かしらの事情は抱えている。今のお前はただ甘ったれてるだけだ。自分の事しか見ずに、周りを見ていない。だから視野が狭くなる。覚悟も何もない、そんな身でよくもまあ恨みだけを吐けた物だな」

 

「わ、私は……」

 

「取り敢えずは良く考えておけ。お前が何を思うかは、何を目指すかは自由だ。その後でお前はお前の道を行け」

 

そうしてオレは屋上から去っていった、箒からの相談が何だったのか、その目的の本当のところは分からない

 

だがその後、篠ノ之博士が箒と直接会って話をしたと嬉しげに話していた事からきっと良い方向に動いたのだろう

 

 

空中戦は苛烈を極め、砲火と剣劇の音が響き渡る、そんな中でオレは紅椿の圧倒的な性能に振り回されていた

 

「クッ、速い!」

 

「あの時、私は何も返せなかった。今もまだ明確な答えは見出だせていない。だが姉さんと話をして、これからこの紅椿と共に探すと、そう決めた!康太、あの日の答えがこれだ!」

 

両手に握られたブレード、箒がそこからビームを放ちオレを狙ってくる

 

連射の利く雨月、威力と範囲に優れる空裂、その二つを使い分けて追い込むように、だ

 

実際、シールドが限界に近くなってきた、あと少しで砕ける、そんな状態で再び始まるビームの嵐、可能な限りで回避して無理な物だけシールドで受け止める、だが遂に限界が訪れてシールドが砕け散った

 

「貰った!」

 

「誰が!」

 

だが砕けたシールドから溢れ落ちた一つの武装を左手で掴んで即座に放つ、I.W.S.P.の追加武装の中で唯一のビーム兵器、ビームブーメランだ

 

「何ッ!?」

 

「どれほどの性能差であろうと!」

 

不意討ちとも言える一撃を横に回避する箒、だがブーメランである為に攻撃は戻ってくる

 

それに対処する間もなくオレが二刀を抜いて接近、前後から挟まれた状況に箒の判断が遅れて無防備な隙を晒す

 

「今日の私は!阿修羅すら凌駕する存在だ!」

 

ブーメランの進路上から退避してオレの迎撃に当たるつもりの箒、しかしその体勢が整うよりも早くオレの二刀による斬撃が紅椿を捉える

 

「ぐあっ!?」

 

だがその装甲に明確な傷が入り、更なる追撃を仕掛けようというところで通信が割り込んできた

 

『ストップストップ!こーくんもヒートアップしてるところ悪いけど、あくまで模擬戦だから勝敗着くまでやらなくて良いんだよ!?』

 

「あっ」

 

つい熱くなってしまい加減するのを忘れていた

 

その後、篠ノ之博士の制止の通りにオレと箒は試験を中止して砂浜へと戻る

 

そこで待ち構えていた篠ノ之博士によって今回の総括が行われた

 

「はい、まず箒ちゃんからね。まず自分で紅椿を動かしてみて、どう感じた?言っておくけど、紅椿の性能はチューンしてるとはいえジェガンなんて歯牙にも掛けない程だよ」

 

「それは……最後に斬られたところからも、私の未熟さを痛感したところです」

 

「うんうん、今まで第二世代機の打鉄だったから性能の差に戸惑うのは分かってたよ。でも紅椿は完全に性能を引き出すならそれこそブリュンヒルデくらいの技量が要るから、頑張ってね」

 

「精進します、姉さん」

 

そうして箒の評価は終わった、その二人の様子からも前よりは幾分か打ち解ける事が出来たらしい

 

「じゃあ次はこーくんね。うん、ぶっちゃけ予想外。何が予想外って、性能的に絶対に紅椿の圧勝だと思ってたからだね。見てよこのグラフ、一時的とはいえこーくんのIS適性がなんとSになってるんだよ。これブリュンヒルデとかヴァルキリーレベルだからね?ジェガンの性能が殆んど引き出されてたんだよ」

 

「そんな戦闘中に変化する物なんですか?」

 

「まあね。こーくんってかなり適性が不思議だよ?例えば、普通の機体ならBで、ジェガン系列だけA、過去のデータを遡ると、二回だけ。どっちも試合じゃなくて実戦の時だけSに届いてるんだ」

 

「つまり?」

 

「極限状態で本人の資質が引き出されてるって事かな?データが少ないから何とも言えないけど、これはこれで興味深いデータだね。技量に関しては問題ないから、これでどんどん経験を積めば近い内に世界大会レベルに到達してもおかしくはないね。その時は日本代表になるのかな?まあそれはその時に考えれば良いか!」

 

「そんなに、ですか?」

 

「うん、そんなに。自信を持って良いよ、こーくん。君は確実に成長してるんだからね」

 

「そうですか。オレが……」

 

改めて篠ノ之博士に言われると感動してきた、今までの出来事は全くの無駄ではなかったのだと実感したのだから

 

「終わったか?ならば予定外の事もあったがこれより各種試験を開始する。それぞれの持ち場に急げ!」

 

と、そんな余韻に浸る間もなく織斑教諭から駆け足の指示が出た為にオレはラビットフット社の試験場所へと移る事となったのだった

 

「そういえばこーくん、なんか途中でいつもと様子違ってたけど、アレって何?」

 

「自己暗示というか、単に自分で自分に発破かけてただけですね」

 

 

さて、オレはデュノア社の開発チームと合流して合同テスト、となる前に箒のところに寄った、渡すべき物があるからだ

 

「康太か。どうしたのだ?」

 

「さっきの模擬戦の結果を見て、渡しても良いかなと思ってな。受け取れ、これが紅椿の三振り目の刀だ」

 

そう伝えてオレは量子化していた刀を取り出す

 

「妖刀フカサク、可能ならば使いこなしてみせろ」

 

「う、うむ。それにしても妖刀とは……なぜそのようなネーミングなのだ?」

 

「安心しろ、妖刀と呼ばれたシステムは積んでないから名前だけだ。色々と理屈はあるが、そいつは超振動により刃の触れた相手を砂塵にする。本来なら機体本体で放つ技だが、機体が先に潰れる可能性もあるから安全策でその形になってる。気をつけろよ、それは理論上は斬れない物は存在しない。呑まれれば自分が斬りたくない物まで斬ってしまうぞ」

 

「それを聞くと妖刀と呼ばれても仕方ない物に聞こえるな。後は私の心の持ちよう次第か……精進するとしよう」

 

「そうだな、普段は量子化して格納しておくと良い。あと、これは個人的な誕生日プレゼントだ。時間が見付けられないから先に渡しておく。料理用の包丁だ」

 

力の意味を理解してくれていれば良いが、そこは箒の今後の成長次第となる

 

そしてオレが買っておいた箒への誕生日プレゼントの包丁を渡しておく事にした、量子化して持ち歩いてはいたが渡すタイミングが掴めそうにないからな

 

「そういえばそうだったな。ありがたい、大事にさせて貰う」

 

「応。それじゃあオレは仕事に戻るから、そっちはそっちで頑張れよ」

 

「うむ、先程のような結果とならぬよう、私も己を磨くとしよう」

 

こうしてオレは箒に新たな刀を託した

 

この後、篠ノ之博士は箒の他に一夏とクロエ、それからラビットフット社に移籍したラウラが新たに得たの機体のテストをする予定だ

 

それとは別で同じストライカーパックシステムを導入しているオレがデュノア社との合同テストに参加する事になっている、そして当初の予定とは違うがエイフマン教授も此方に参加となる

 

「あ、康太、エイフマンさん!こっちだよ!」

 

「少し寄り道した。それで、そっちの人がデュノア社の開発スタッフか?」

 

「初めまして、デュノア社IS開発部の開発主任を務めていますレナール・マルタンと申します。本日はよろしくお願いいたします」

 

「初めまして、マルタン主任。ラビットフット社テストパイロットの紫藤康太です」

 

「わしはレイフ・エイフマンだ。ラビットフット社では新参者となるが、よろしく頼む」

 

他にも色々とスタッフの人は居たがそのトップの人とまずは挨拶をする

 

マルタン主任は五十代程だろうか、初老の男性で少し猫背で禿頭、丸眼鏡が特徴な人だ

 

「お二人の事はお嬢様からお聞きしておりますよ。今回は試作ストライカーパックのテストという事で、よろしくお願いいたします」

 

「ええ、此方も別の設計思想で開発されたストライカーパックには興味があります」

 

「それはそれは、ラビットフット社のテストパイロットにそう言って貰えると技術者冥利に尽きます。それにしても、ストライカーパックシステムというのは本当に素晴らしいですね」

 

「そうですか?」

 

「ええ、今までのように初めから機体を設計せずとも規格さえ合わせれば既存の機体にも新装備を実装出来る。予算という厄介な制限があっても、全て新規設計するより安く自分達のやりたい事が出来る。この方式が私達開発部にとってどれ程の役に立った事か……」

 

確かにストライカーは汎用性の高さが特徴である、例え機体の性能が落ちてこようとストライカーパックの性能を加えれば第一線でも使える、そんな芸当も可能となる

 

「フフフ、今まで予算で五月蝿く言われて実装出来なかったアレコレを現実に……これ程にそそる物はありませんよ」

 

「なあシャルロット、この人大丈夫か?色々な意味で」

 

「悪い人じゃないのは確かなんだけどね……」

 

どうにも闇が見えるマルタン主任の様子にシャルロットも言葉を濁していた、何か過去に予算に関して嫌な事でもあったのだろうか?

 

とはいえその技術は確かなようで、試作品の一つを早速見せて貰った

 

「これが我が社の開発した試作ストライカーパック、ガンナーストライカーです」

 

「機体全高と同じくらいの長さの銃と、大型のセンサーモジュールか。ふむ、どうやらビームの収束率を上げる事で射程距離を伸ばしているようだな」

 

「遠距離から狙撃で倒す、もしくは損害を与える装備ですね。例え被弾せずとも長距離からの狙撃を避けながら距離を詰めるという過程で精神的にも損耗します。敵として出会いたくはないですね」

 

発想としてはクロスボーンガンダムゴーストに出てきたバイラリナのニードル・ヴェスバーに近い装備だが、あれが機体の構造で少し無理していたのに対して、これは装備そのもので完結している

 

スラスターとかはないから完全に静止しての狙撃に特化しているな、同じ射撃型のランチャーストライカーに比べると一撃の威力では劣るが射程、連射力では此方が上か、面白い装備だ

 

「センサー系はそもそもISのハイパーセンサーがあるがそれを更に大型化して補助する……このビームは荷電粒子だがミノフスキー粒子を用いればそれこそ成層圏まで狙えるか?」

 

デュノア社に提供したビーム兵器の技術はSEED系の技術である為に大気の影響を受けるがミノフスキー粒子を使ったオレ達ラビットフット社の武装は磁場や電場の影響を受ける事がない

 

なのでこのガンナーストライカーを狙撃すれば地上から宇宙の標的も狙えるだろう、普段は制限されているがISのハイパーセンサーならば可能な筈だ

 

しれっと戦略級の兵器を開発しているがその実力だけでもマルタン主任の腕は確かだと理解出来た

 

「良い装備ですね。此方でも導入したい位です」

 

「ありがとうございます。それで、ラビットフット社は確か新たな支援機の開発を行ったとか。そちらの方も見せて頂けますでしょうか?」

 

「当然です。実機はあのコンテナに。此方が詳細なデータになります」

 

一通りガンナーストライカーについて確認した後はラビットフット社の装備を御披露目する事になった

 

とはいえコレはストライカーパックではなく、支援機なのだが

 

取り敢えずはデータをマルタン主任とシャルロットに渡して感想を貰う

 

「こ、これは!?」

 

「ストライカーパックを前線のISに運ぶ為の機体……そしてストライカーパックは追加のエネルギーパックを内蔵してるから……凄い、戦場でISのネックになるエネルギー補給に対して一つの解決策だよ!」

 

見せたのはラビットフット社で篠ノ之博士が開発したコスモグラスパーのデータだ

 

コスモグラスパーは簡単に言えばSEED本編に出てきたスカイグラスパーの宇宙版であり、専用に再設計したエールストライカーを装備している

 

何でコスモグラスパーの名前にしたのかと言えば無人機なのでスカイグラスパーのコックピットに当たる部分がカメラと装甲で埋まっている姿がコスモグラスパーの方に近かったからである

 

そして二人はこのコスモグラスパーが生み出す戦術的な優位性に直ぐに気付いた様子だ

 

「これは直ぐに全ての試作ストライカーパックをコスモグラスパーに対応するよう再設計しなくては!いやしかし、実際に換装する様子を見ないと……ええい、悩ましい!」

 

「試合だと使えないだろうけど完全に実戦を想定した機体だね。いざという時に他国のISに対して稼働時間で圧倒的なアドバンテージを握る事が出来る。これは一種の革命だよ!」

 

そんな二人の反応から次のテストは予定を変更してコスモグラスパーの試験を行い、実際に空中換装を披露する事となった

 

その結果からデュノア社でもコスモグラスパーの導入を決定、ストライカーパックの新規開発にコスモグラスパー対応可能な規格を再設計する事となる

 

そうして他にも二社の間で様々な装備のテストが行われ、一度昼休憩に入ろうかという時であった

 

「たっ、た、大変です!お、おお、織斑先生っ!」

 

割りと普段から慌てている事が多いような山田先生が普段とは全く違うレベルの慌てようで織斑教諭の元へ走ってきたのだ

 

一般生徒の監督を行っていた織斑教諭が山田先生と何やら話し合うと大きく手を叩いて生徒全員の注目を集める

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること。以上だ!」

 

唐突に発生した異常事態、そしてこれこそが今後この世界に大きな影響を与える事になる事件の幕開けとなるのだった

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