ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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予想以上に好評だったので二話目も投稿

とはいえ一話に比べるとそこまで物語の勢いはないとは思いますが


2話 不思議の国へ

「コイツの身柄を引き取る?お前がか?」

 

「むぅ~、私のこと信用してないな~?」

 

「当たり前だ。少なくともお前に誰かの面倒を見るなんてことが出来る訳がないだろう」

 

「ヒドッ!?そこまで否定されると流石にちーちゃんでも許せないよ!?」

 

「日頃の行いのせいだ。それで、何が目的なんだ?」

 

「ん~、何のこと?」

 

「惚けるな。お前がただの善意で他人の面倒を見る訳がないだろう」

 

「本当に他意はないよ。望む望まないに関わらず、この子は私の夢に必要な物を持ってきてくれた。ならそのお礼として力を貸してあげるのは普通じゃないの?」

 

「そういう殊勝な心掛けが既にお前らしくないという事だ」

 

「ふふ~ん、やっぱりちーちゃんは私の事なら何でも分かってるね!まあ隠すようなことでもないし、別に良いよ。ねえキミ。キミは今の自分の状況について、どれだけ理解しているのかな?」

 

しばらく二人だけで話していたスーツ姿の女性とウサミミの女性、その流れからオレに話が振られた

 

あまり口を挟める状況ではなかったので二人の話には耳を傾けていた、ガンダム関連だけは反応したが、後は静かだった

 

その為、今の会話の流れで聞いていた情報から知りえた内容を吟味し整理していたので、その質問には即座に答えることが出来た

 

「此処が平行世界だってことと、恐らくはオレという存在を証明する戸籍とかの一切が無いこと。そして貴方に協力して貰えば戸籍なんかの問題点は解決できそうだってこと。後は、まだよく分かってはいないけど、アイエスという物を動かせる、数少ない男だってことくらいですかね?」

 

「うん、大体その認識で合ってるよ。それで、キミに相談なんだよね。キミには今から二つの選択肢がある。まずは私が戸籍を用意するから、それを利用してこの世界で生きていく。この子が居るからキミは世界で二人目の男性IS操縦者としての地位を得ることが出来るけど、これは正直オススメしないかな。後ろ楯も名にもないキミは世界中から狙われる。ISを動かせることを隠して生きていくつもりなら問題はないけどね」

 

―――それともう一つ

 

「キミにはこの天才である束さんの夢に協力するって道だよ」

 

自らを天才と称するウサミミの女性、目の前の女性、その夢とは何なのか、何故オレという凡人の力を必要とするのかは分からない

 

だがその道はオレが今までの人生で歩んできたような平凡な道とは違う、様々な波乱に満ちたものになるだろう、不思議とそんな予感がする

 

だからオレは、迷わずにその手を取った

 

「ならオレは貴方の夢に協力しよう。こんな凡人が何処までやれるか分からないが、それでも力になるというのなら」

 

「……ふ~ん、まだ私は何も話してないけど?単に恩返しとかのつもりなら止めておいた方が良いよ?その代価は既に貰ってるからね」

 

「恩返しなんてつもりはない。ただオレの勘がそう告げていたからだ」

 

「キミ、やっぱり面白いね。でもそれは公平な取引じゃないから先に簡単に説明するね。私はね、宇宙に行きたいんだ。月とか火星とか、そんな近くじゃない。太陽系の外、広大な星の海を見に行きたいの。その為の前準備、宇宙開発の起点としてISという手段を作ったんだからね。キミはどうかな?宇宙、興味がある?」

 

改めて聞かされた彼女の夢、それはとてもではないが荒唐無稽とも言える話だった

 

だが宇宙へと、星の海へという話には心惹かれる、それはその過程で人類が宇宙に拠点を持つようになるだろう事を意味する、ガンダムで見た世界を現実にする事に

 

地球の周囲に浮かぶスペースコロニー群、コロニー間を行き交うシャトルが人や物を運び、旅行感覚で月へと降り立つ、そんな光景を幻視したとき、ふと昔の事を思い出した

 

『康太、お前は大きくなったらどうしたい?』

 

『ボク、宇宙に行きたい!』

 

―――出来る筈がないと思ったのはいつからだろうか

 

『宇宙?宇宙飛行士になりたいってことかい?』

 

『ううん、宇宙にあるコロニーに住みたい!ガンダムみたいなコロニーに!』

 

『ハハハ、そうか。康太もガンダムが大好きだもんな。でも、まだ技術が足りないから先は長そうだぞ?それでも宇宙に行きたいかい?』

 

『だったらボクが作るよ!今からいっぱい勉強して、ボクが宇宙にスペースコロニーを作るんだ!』

 

―――自分には無理だと諦めてしまったのはいつからだろうか

 

『そうか、康太になら出来るかもな。その時は父さんも連れていってくれよ?』

 

『うん、ボクがお父さんを宇宙に連れていくよ!そして一緒にガンダムに乗ろうね!』

 

―――そもそもそんな夢を見ていた事さえも忘れてしまったのはいつからだろうか

 

現実を知り、誰かがやるだろうと逃げ、熱さえも失ってしまった小さな頃の夢

 

まだ真実を知らない、希望しか見えていなかった子供が語った、大人からすればとるに足らないような荒唐無稽な夢だ

 

オレは何処までも平凡で、突出したものなんてなかった、宇宙への憧れを教えてくれたガンダムも、ただの趣味になってしまって、叶う筈のなかった夢を、目の前の彼女は現実にしようとしている

 

それはとても眩しくて、心の何処かではまだ無理だと言っていて、それでもオレを惹き付けてくれる、絶対に叶えるのだとその眼が語っている

 

そんな姿を見る限り、オレは何度でも、何があろうとも立ち上がれる気がする

 

だからオレが持ち合わせている答えなど、何を言われようとも最初から決まっていたのだろう

 

「オレは宇宙に行きたい。コロニーを作って、地球という揺り籠から出たい。子供の頃の夢を、ただの空想だけで終わらせたくない。一度は忘れてしまった夢を再び見たい」

 

惰性で生きていた人生は今日で終わりにする、知識の面では明らかに頼りきりになってしまうだろうが、それでも彼女の手助けをしたい、宇宙への道を閉ざしたくはない

 

そんなオレの答えに満足したのか、彼女は満面の笑みを浮かべて手を差し伸べてくれた

 

「うん、百点満点の答えだよ!改めて自己紹介するね!私は篠ノ之束!星の海を夢見る一人の天才科学者だよ!」

 

「オレは紫藤康太です。オレに何が出来るのかはまだ分からないけど、お役に立てるよう頑張ります」

 

まだ未来は分からない、だが篠ノ之博士の手をオレはしっかりと握り返した

 

彼女がオレを引き取ろうとした事が出会いならば、これは契約だ

 

オレは彼女の為に非才である事を自覚しつつも全力を以て雑事を処理する、彼女は己の夢へとひたすらに突き進む、その先にオレが見たい世界があるのだから

 

 

それから先はとにかくあっという間だった

 

互いの夢を確認したと思いきや、握手した手をそのまま引っ張られて、スーツ姿の女性が後ろから制止する声も何のその、取調室から出て建物の外に刺さっていた巨大ニンジンに押し込まれた

 

扉が閉まって真っ暗になったと思えば唐突に上下が反転、何も分からないままに振動と共に強烈な慣性を感じて数分間そのままとなった

 

閉所恐怖症な人間なら発狂すること間違いなしな状況が終わり、再び地面に突き刺さっていたニンジンから出て周囲を見渡せば白い砂浜だ

 

あまりの急展開に頭が混乱しそうになったが、ニンジンの上には篠ノ之博士が腰掛けている

 

状況から察するに、このニンジンに乗ってたのはオレだけだと思うのだが、彼女はどうやって此処まで来たのだろうか?

 

「ふふ~ん、驚いてるね?此処は束さんのラボがある秘密の島だよ!世界中の人間が探し出そうと血眼になってる、世界でも最先端の科学が存在する不思議の国なんだ」

 

「いや篠ノ之博士?さっきの場所もよく知らないんですけど、どれだけ移動したんですか?」

 

明らかに絶海の孤島なんですけど、大陸どころか他の島さえも見えませんよね?

 

「細かいことは気にしない気にしない♪取り敢えず、キミには此処で三日間過ごして貰うね。色々とこの世界のこと、ISのことを教えないといけないからね」

 

「ハァ、それでも何故三日間?」

 

「それはね、キミにはまたさっきの場所、IS学園に通って貰う為だよ」

 

さっきの場所、という事は先程の新兵器の実験施設だと思っていた、オレの目覚めた場所という事だろう

 

あそこ、学園だったのか……それにしてはとてつもないセキュリティレベルだった気がするけども、それはあのパワードスーツ、アイエスなるものが関わっているのだと予測は出来る、学園の名前にもついていることだし

 

「そして此処が今からキミの拠点にもなる、束さんのラボ、【吾が輩は猫である~名前はまだない~】だよ」

 

砂浜から歩いて少し、篠ノ之博士に続いて島の中へと進んでいたのだが、彼女が立ち止まり手で示した場所にはただの岩壁が聳え立っているだけだ

 

それにオレが首を傾げていると篠ノ之博士は特別なことは何もないかのように岩壁に向かって歩きだし、そして壁の中へと消えていった

 

そんな現実離れした光景に目を疑うが、恐る恐る壁に手を触れるとあるべき筈の岩の感触はなく、手は壁の中に沈み込む

 

篠ノ之博士も問題なく向こうへ行った事だし、意を決して体ごと壁の方に飛び込むと、そこは今までの自然しか無かった場所から一転して人工物で埋め尽くされた建物の中であった

 

「ふふ~ん、驚いたでしょう?ラボの入口は普段は誰にも気付かれないようにホログラムでしっかりと隠してあるのです!でも中からは見えるから、キミが恐る恐る手を伸ばしてる様子は面白かったよ」

 

「ぐぬぬ……」

 

まんまとしてやられた、という事なのだろう

 

イタズラっぽい笑みを浮かべて微笑ましいものでも見たような目を向けてくる篠ノ之博士の様子に遊ばれたのだと理解して羞恥心が込み上げてくる

 

しかも当の本人は直ぐに切り替えると奥にあった重厚そうな金属扉の解錠作業を行っていた

 

短い付き合いなのだが、この人のやる事に一々驚いていたら駄目なのだと、こういった非常識な光景を作り出すのが平常なのだと理解した

 

網膜認証とかDNA照合とか、生体認証と思われる様々なセキュリティを受けた篠ノ之博士が端末を操作し、扉を開いた後、オレを手招きしてくる

 

割りとSF的な光景に感動していたのだが、それから今度はオレのセキュリティ登録をする事になった

 

「これをしとかないと侵入者として排除されちゃうからね。此処に入るには必要な事なのです」

 

「具体的に、その侵入者ってどのくらいのレベルを想定してます?」

 

「う~ん、それなりに誤差はあるだろうけど、大国の軍隊が入り込もうとしても撃退出来ると思うよ?実際に試した事なんてないから分からないけどね」

 

軽く言ってのける篠ノ之博士だがとんでもない事を言っているのにそれが嘘だとも誇張だとも感じられない、大真面目なのだとその口調が語っていた

 

この人と契約した時から薄々予感はしていたのだが、やはりオレが進もうとしている道とは予想もつかないような出来事が起こりそうな気がする

 

でも後悔なんて気持ちは微塵もない、一度は夢破れたんだ、この胸に灯された火が消えれば今度こそオレは何者にもなれないで終わるだろう

 

無くしたと思っていた夢を再び掴めそうな、この先に絶対に無いであろう折角の幸運を、その程度の些末な事で捨てるなんて真似は出来ないのだから

 

やがて登録が完了したのか、目の前の扉がゆっくりと開いていく

 

さっき言っていた軍隊を想定してなのか知らないが重厚な扉はそれこそメートル単位でありそうな代物であり、開くのに多少の時間が掛かった

 

そして少しずつ上へと上がっていく隔壁の向こうに人影が見えた

 

流れるような銀髪に白と青のゴスロリ系ドレスに身を包んだ人形のように容姿が整った少女、その瞳は閉じられているがそれがよりミステリアスな雰囲気を助長している

 

見たところオレと歳は変わらないか少し年下くらいか、そんな彼女は見えていない筈なのに篠ノ之博士の方を向くと恭しく頭を下げた

 

「お帰りなさいませ、束様」

 

「ただいま、くーちゃん!私が留守にしていた間、何もなかった?」

 

「はい、特に問題はありませんでした。それと、そちらの方は?」

 

「この子はね、私が知らない468番目のコアを持っていたこーくんだよ!なんと、平行世界から来た二番目の男性IS操縦者なのです!」

 

「この方が……それに、やはり男性だったのですね。初めまして、私はクロエ・クロニクルと申します。此処で束様の研究のお手伝いをさせていただいております」

 

「あ、どうも。紫藤康太です。何が何やら分からなかったところを篠ノ之博士に拾って貰いました。よろしくお願いします、クロニクルさん」

 

「クロエと呼び捨てで結構です。それに敬語も不要です。貴方の方が歳上ですので」

 

「あ、はい。えっと、よろしく、クロエ」

 

「はい、よろしくお願いいたします」

 

最初に見た時からかなりの美少女と思っていたが声も綺麗で物腰もお淑やかなクロエ

 

あまり同年代の女性経験なんてないものだから気後れしつつもクロエと握手する

 

一先ずは互いの自己紹介を終え、それを見届けた篠ノ之博士が満足そうな笑みで口を開いた

 

「くーちゃんは私の娘みたいなものだからこーくんも仲良くしてあげてね」

 

「はい。というか、こーくん?」

 

「うん、康太だからこーくんだよ!」

 

「束様は気に入られた相手をあだ名で呼ばれるのでお気になさらないで下さい」

 

「こーくんも私のことをあだ名で呼んで良いよ!くーちゃんも、様付けなんて畏まった呼び方をしないで、お母さんって呼んでも良いんだよ?」

 

「私は此方の方が慣れてますので。それで束様、康太様の御部屋はどうされますか?空いている部屋がありませんが」

 

「適当な場所に拡張しちゃって良いよ。私はこーくんが持っていたデータを解析してるから、くーちゃんはこーくんに一通りラボを案内してくれる?それとお互いに話して親睦を深められたら良いかもね」

 

「分かりました、居住区に一部屋追加しておきます。それではコウタ様、御案内しますので私の後に続いて下さい」

 

トントン拍子で話が進んでいき、流れるように空中に表示されたディスプレイで何らかの、恐らくはオレの部屋の拡張を機械か何かに指示したであろうクロエの後に続きラボの中を進む

 

先程の会話の内容から篠ノ之博士がクロエの事を大切に想っている事は十分に伝わってきていた

 

どのような出会いがあったのか、二人の素性さえもはっきりとは知らない、だが互いの事を大切に想い合う二人は血の繋がり等はなくても家族なのだと感じられるものであった

 

オレは何も言えずに別れる事になってしまったが、親父とお袋、二人はどうしているだろうか?

 

元の世界に帰れるのかは分からない、でも篠ノ之博士の夢に魅せられたオレは帰れる道があったとしても、宇宙を見てみたいと思ってしまった

 

心残りがあるとすればちゃんとした別れが出来なかった事だけだ、あの二人なら例え会えなくても夢に進むオレの事を応援してくれる、そのくらいの確信は二人の息子としてちゃんとあるのだから

 

「一番始めは此方です。主に束様が発明された物の性能テストに使う実験場になります」

 

と、この世界には居ないであろう両親の事を想っているといつの間にか目的地に着いたようだった

 

道は通路を進んで最初の十字路を左折してから真っ直ぐだったので迷う事はないと思うが、折角案内してくれているんだから真面目に聞かないとな

 

改めて気持ちを切り替えた後、案内された場所を見渡してみる

 

最初に訪れたのは四角い広大な空間、実験場という事もあってか頑強に作られているらしく、周辺の壁には焼け焦げた跡や何かで削れられた跡が見える、何らかの兵器の実験をした、と見るのが普通だろうな

 

「そういえばISコアを所有していたという事でしたが、専用機があるのですか?」

 

「ああ、オレの世界のアニメの機体として一緒にな。今は篠ノ之博士が持ってるぞ。多分、データを解析してるんだと思う」

 

最初に突然やってきたと思ったらハロを取り上げてデータ確認だったからな、此処に来てからもずっと抱えていたし

 

「束様が認めていたので嘘ではないと思いますが、平行世界というのは俄には信じがたい話です。機体の方は後日返却されると思いますので、その際は機体の練習は此処で行って下さい」

 

「分かった。オレも動かしてはみたかったから助かるよ」

 

「いえ、お気になさらないで下さい。それにしても、束様が興味を示されたデータとは何なのですか?差し支えなければお教えしていただいても?」

 

「別に隠すような事でもないから構わないぜ。簡単に言えば、オレの世界ではアニメだった筈の物が現実の技術としてハロ、あのアイエスの中に入っていたんだ。一部を見ていて、スペースコロニーとかエンジン、ロケットとかの図面とかが詰まってきたらしい」

 

「成る程、納得しました。束様の夢に関するデータだったのですね」

 

「そういうこと。で、オレはその後で博士に保護された。そのアニメと同じ、宇宙にコロニーが浮かんで人類が地球という揺り籠から羽ばたく光景を、小さい頃の夢を見せてくれると思ったから、その力になりたいと願ったんだ」

 

―――凡人でも出来る事があるのなら、と続けるとクロエは微笑んだ

 

彼女からすればオレは得体の知れない人物であり、警戒するのは当たり前だ

 

それでもオレの夢に、篠ノ之博士と同じ宇宙を目指すという夢に納得してくれたらしい

 

「この世界では本当の意味で束様の味方になってくれる方は貴重です。その夢へと心から賛同されているだけでもありがたい事です。今後ともよろしくお願いいたします」

 

「こちらこそ」

 

改めて互いの事を認識した後、食堂やら建設中のオレの部屋の位置やらを確認し、オレ達は食堂に居た

 

というのも、篠ノ之博士は自らの研究室に籠って作業をしており、機体もないので訓練も出来ない、食事までの時間もまだあるので、今はお茶でも飲みながらクロエと色々話をしていたところだ

 

とはいえ特別なことを話していた訳ではない、オレの世界のことや日常でのことをメインにして、クロエが聞きたい事に答えるといった感じだ

 

どうにも彼女はあまり外の世界というのを知らないらしく、普通の生活での光景を知りたがっていた

 

オレにとっては何気ない日常でも彼女にとっては経験した事のない特別なこと、だから知りたかったらしい

 

この世界とは違うのかもしれないが、そこは平行世界ではそうなのだと違う点も楽しんでいたので問題ないだろう

 

そんな会話を暫く続けていると篠ノ之博士が食堂に入ってきた

 

その顔には溢れんばかりの笑みが浮かんでおり、閲覧したデータの内容がお気に召したようだ

 

「いや~、とっても有意義なデータだったよ!今にでも作って宇宙に飛び出したいくらいだからね!」

 

だけど、と切り替えた篠ノ之博士はオレに向き直ると真面目そうな表情をして話を続ける

 

「幾つかのデータに意図的に作ったみたいな欠損が見えたんだよね。私ならその穴を自分で埋められるけど、それには時間も掛かる。そして、そんな事をしなくても良いかもしれない方法が見付かったんだよね」

 

「方法?欠損していたデータが、例えば何処かに存在している、と?」

 

「うん、その通り!実はこーくん以外にも、こーくんと同じような反応が世界中で見られたんだよね。とはいえこーくんの時よりもかなり小さくて、私も色々なパターンで世界中を見ていたからこそ見付けられたような反応だったんだけどね。多分だけど、こーくんの世界から同じような物が流れてきたんじゃないかな?」

 

何やら漂流物みたいな扱いをされた気がするが、篠ノ之博士は空中にディスプレイを投影すると説明を続けた

 

そこに写されたのは世界地図、それはオレの知る物と全く同じであり、篠ノ之博士の言うように平行世界という言葉が合っていたのだと感じた

 

そしてその地図には五つの光点が記されており、日本への一つがオレだったとするのなら残りは四つになる

 

「これが観測された異常なデータのあった場所だよ。そして、この場所に無人機を飛ばして確認させてたんだけど、さっき一つ回収してきたから確認だね」

 

地図の光点の内、日本と太平洋のど真ん中にあった二つが消えた

 

篠ノ之博士の手に握られているアタッシュケース、それが今回回収したという物だろう

 

オレの世界の物なのかという確認を含めてこの場で開けるらしい、中身は本人もまだ見ていないという事か

 

そして、そのアタッシュケースの鍵を何らかの工具であっさり切断した博士は机の上に置かれたケースを勢いよく開いた

 

それを覗き込む三人だが、篠ノ之博士とクロエは首を傾げて、逆にオレはガッツポーズをした

 

「ん~、何だろうコレ?プラモデル?」

 

「ガンダムシリーズのプラモデル、通称ガンプラですね!それもガンダムUCの機体ばかり!」

 

1/144スケールのHGUCである、ラインナップはユニコーンガンダムから連邦軍の量産型、そしてシナンジュ等のジオン側の機体のセットであった

 

そして恐らくは未開封、つまりは自分で組み立てられるという事だ!

 

「あ、コレはこーくんの機体と一緒だね。こっちの白いのは同じ機体なのかな?」

 

そんな中ら篠ノ之博士が手に取った箱はスターク・ジェガンとユニコーンガンダムの箱であった

 

「ああ、そっか。ユニコーンガンダムはHGだと変形が再現されてなかったのか。同一機体の、リミッター解除の有無と思って貰って大丈夫ですよ」

 

見た目でデストロイモードの方が解除した方と分かるだろう

 

「成る程~、こういった仕組みの機体も面白いね~。うん、IS開発のインスピレーションがグッと刺激されるよ!ただのプラモデルと侮れないなあ」

 

「これの一個上のスケールなら変形まで完全再現してるんですけどね」

 

この中にはHGモデルしかないが、オレはそのシリーズの方が好きなので問題ない

 

とはいえまさかのガンプラ入手である、これならばオレはまだまだ戦える!

 

「ねえ、この説明書に書かれてるNT-Dってシステムはどんなシステムなの?」

 

「それはニュータイプ・ドライブ、という偽装をしたニュータイプ・デストロイヤーというシステムであり、その名の通りニュータイプかそれに準ずる強化人間を抹殺する為のシステムです。具体的には相手のニュータイプの脳波を感知した時点で圧倒的な機動性を発揮する為のリミッター解除、デストロイモードへの移行に加えて敵のニュータイプ用の兵装であるサイコミュ兵器の制御を奪うサイコミュ・ジャック等を使用する事も可能です」

 

もっとも、ユニコーンガンダムに於いては真の意味でニュータイプ・ドライブとも呼ぶべきシステムに変化していたのだが、ネタバレになるので割愛

 

ユニコーンは表現も良いので是非とも自らの目で確認して欲しいのである、ハロの中にデータあったから尚のこと、な

 

「ふーん、つまりは特定の相手を倒す為だけに特化したシステムってことだね。それで、その特定の相手であるニュータイプってのは何なのかな?」

 

「ニュータイプはガンダムシリーズの中で多く語られ登場しますが、一言で言うのであれば『人の革新』です。宇宙に出た人類が宇宙に適応した事で出現する進化した人類ですね。とはいえテレパシーや未来予知のような超能力とも言えるような力の発現はしていても何を以てニュータイプとするか明確な定義は無く、その劇中での扱いとしては単に戦闘能力にのみ傾けられる事も多いです。その他にも、ガンダムシリーズに於いてはそのような特別な、人類の進化した姿とも呼ぶべき存在が多く登場しています」

 

初めてニュータイプという言葉が出た初代ガンダムを手掛けた富野監督ですら明言していない概念であるそれを、オレは篠ノ之博士に説明した

 

それを聞いた篠ノ之博士はかなりの間、思考をしていく

 

やがて考えが纏まったのか、篠ノ之博士は一つ頷いて告げた

 

それは当面のオレの目的となる一言であった、少なくとも普通の人間であれば一笑に付すような考えであろう、それを

 

それが後に、全ての人類に広がっていく思想となる事も知らずに

 

「ねえこーくん、ならそのニュータイプになる事を目指してみない?」




なお此処までやって束さんはヒロインではありません。ヒロインは別の予定。

コウタくんの目標が一つ追加、書いてる途中で人類進化の道を模索するルートとか面白そうと思ったので。

なんだかガンダムEXAのレオスくんみたいなルートに入ってしまった。
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