ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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取り敢えず短編①は終了、最後にあの人の登場です


36話 戦う理由

女性権利団体ヴァルハラの拠点の殲滅、その任務を達成した康太は一度束のラボへと帰投していた、康太が保護する事を決めた少女達も周辺に展開していた無人機に抱えられて一緒である

 

そして報告として束の前に来ていた

 

「私は目撃者は全て排除ってオーダーした筈だけどね」

 

「敵対している相手だけ排除すれば良いと判断しただけですよ。優秀な素質を持つ人間を仲間に引き込めると思えば十分でしょう?」

 

「……まあ、こーくんのお願いだし良いけどさ。暫くはこのラボに部屋を与えておくよ。その後はダミーの名義を使って孤児院を作ってそこで保護するね。そっちの子はパイロットになるの?」

 

(かなで)と言います、篠ノ之博士。ヴァルハラを倒せるなら、私は戦いますよ」

 

「ふーん、なら良いけどね。まあ直ぐには使わないよ。IS与えてもあっさりやられるような人間は要らないし、少しは訓練しないとね。それで、あの施設で色々情報を仕入れた訳だけど、こんな感じだね」

 

そう言って束がモニターに地図を表示する

 

その全てがヴァルハラの拠点であり、日本国内だけでも数十はある

 

各拠点には何があるのかが簡単に示されており、その資金源と目されるような内容もあった

 

試しに束がその内の一つを拡大するとそこは麻薬の製造拠点となっている場所で、添付されている報告書によると過疎化が進んだ限界集落を占領し、そこに住んでいた住人達に大規模な麻薬農園を維持させているらしい

 

更には警察にも手を回し摘発される事もない、武装した人員が配置されて近くに来る者や逃げ出そうとする者を排除しているとも書かれている

 

「麻薬か……」

 

麻薬と聞いて渋い顔をしたのは同じ部屋に居たエイフマン教授である

 

「お爺ちゃん、何かあったの?」

 

「わしは麻薬という物が嫌いでな。かつてわしと同期に優秀な技術者が居たが、開発に難航した時に麻薬に手を出してその将来を断たれた者が居たのだ。それがなければどのような物を生み出していたかと思うと、どうしても悔やみ切れぬのでな」

 

「そっか、なら次の標的にするならそこだね。こーくん、次の出撃だけど―――」

 

「やりますよ。直ぐに出ます」

 

「えっ?あ、うん、それは別に良いけど、大丈夫なの?」

 

「何がですか?大丈夫ですよ、やれます。オレがやらないと、オレが……」

 

大丈夫、と言う康太ではあったが、誰の目にも大丈夫には見えない

 

しかし康太は機体の準備をすると出撃する、拡張領域に入っているストライカーパックを全て外し、空いた部分にベースジャバー用のエネルギータンクを兼ねた追加ブースターを幾つも入れ、ガンダム世界と同じく規格を合わせたそれを一基はジェガン・サーガの背部に付けて航続距離と速度を伸ばして、だ

 

弾薬も補給した康太はそのまま出撃していった、束が言っていた麻薬農園に向かって行く

 

「んー、何か調子が変だけど、こーくんが大丈夫って言うなら良いか!今度はちゃんと数値が伸びてるかな?」

 

そんな康太を見ても束はあまり気にしない、それよりも康太がニュータイプとしてどのような反応をするかを気にしてモニターを見ている

 

「コウタさん……」

 

「むう……」

 

「えっと、あの……?」

 

そして撮影スタッフの護衛から戻っていたクロエ、エイフマン教授、奏の三人はそんな束の様子に困惑しつつ、ラボから一度出るのだった

 

その後はクロエとエイフマン教授は奏と廊下で待っていた他の少女達を取り敢えずの住居としての部屋に案内した後で二人になると、クロエの方からエイフマン教授へと話し掛けた

 

「あの、教授。コウタさんはどうしたのでしょうか?」

 

「ふむ。お嬢さん、時に人はどのような時に禁忌を犯すと思うかね?」

 

「禁忌、ですか?それは……」

 

「シドウ君の場合は殺人という禁忌を犯した。最初はミス・シノノノがそう誘導した。しかし、今は必要のない殺人を行っている。確かにヴァルハラの行為は見過ごせないが、シドウ君は自分でなければ、と思っている。それが何故か、分かるかね?」

 

言われてクロエは考えるが分からない、止める間も無く出撃していった康太の様子は尋常ではなく、彼女も見た事がなかったからだ

 

「人は殺人を禁忌としているが、その禁忌は実は簡単に犯してしまうものなのだよ。言うなれば普段は倫理という名の錠が掛かっているような物だ。しかし、それは対応する鍵があれば簡単に外れてしまうという事でもある」

 

「錠と鍵……」

 

「左様。例えば、強盗に襲われ、自分の手には銃がある。そして強盗は自分の家族にナイフを持って迫っている。その時、人は銃で強盗を殺してしまうだろう。自分が強盗を殺さねば家族が殺されるという状況が鍵となり、殺人を禁忌とする倫理という名の錠を開けてしまうのだ」

 

クロエは考えた、その理論で康太が虐殺をする事を忌避しない理由を

 

そして戻ってから教えて貰った情報を整理して考えてみる

 

「デビルガンダム……もしかして、DG細胞による人体実験が行われていたからでしょうか?」

 

「ふむ、その可能性は高いと言えるな。彼の言うガンダム世界の技術で、非人道的な技術を使っていた事が彼の逆鱗に触れたのだろう。わしの居た世界でも人革連という勢力が非道な人体実験をしていた。恐らく、その研究をしたとなれば彼は同じようにその手に銃を取るだろうな。そして、今の彼は初めの、ミス・シノノノに半ば強制的に引き金を引かされた時とは違う。自らの意思で引き金を引く覚悟を決めている。その彼が戻った時、その心が壊れぬよう引き留めるには君が適任と言えるだろう。どうか彼の傍に居て欲しい」

 

「エイフマン教授……分かりました、私がコウタさんを支えます」

 

「うむ、彼の事はわしも気に入っているのでな。頼んだぞ」

 

エイフマン教授に伝えられて決意を決めるクロエ、康太が戻ったのはそれから更に一日が経った夜であり、一睡もせずにヴァルハラの拠点を襲撃し続け、補給が必要となれば無人機を使い、確認されていた日本国内全ての拠点を壊滅させてからだった

 

 

戻ってきた康太は報告も少なめに寮の自室へと戻っていったと聞いたクロエは直ぐにそこに向かった

 

康太とは同室であり、鍵を開けて中に入ると部屋は明かりも点けておらず、そこで康太は自分のベッドに腰かけて頭を抱えていた

 

クロエが部屋に入り、明かりを点けると顔を上げる康太、その目には隈が浮かび、誰が見ても憔悴し切っているのが見てとれた

 

「コウタさん……」

 

「クロエか……」

 

そんな普段の彼とはかけ離れている姿にクロエは少しだけ怯んだが、直ぐに意思を固めると康太の前へと進む

 

「コウタさん、あの時、貴方に何があったのですか?」

 

「なあクロエ、オレは誰なんだ?」

 

「えっ?」

 

康太は尋常ではなかった、ならば康太の身に何かがあったに違いない、そう思い訊ねたのだが返ってきたのは意味がよく分からない質問だった

 

「初めて引き金を引いて、あの女を殺した後、女の方から怨念みたいな気配が流れ込んでくるのを感じた。これ以上、撃ってはいけない、そう頭の何処かで感じているのに、撃たないといけなくて………………地下の牢獄や研究室に行った時には聞こえるんだ。子供達の声が、『痛い』『暗いよ』『恐い』『助けて』って、泣いて、叫んで、オレに訴えてくる……」

 

「それは……」

 

「そしてヴァルハラの拠点に行くと何処に行っても聞こえるんだ。子供達の、男達の、老人達の、性別も年齢も何もかも別々なのに、誰もが痛がっていて、泣いていて、怨んで、怒って、それから誰もが言うんだ……『赦さない』『怨めしい!』『撃って』『撃てっ!』『殺して』『殺せっ!』『ころせコロセ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ』『『奴等を全員殺し尽くせッ!!』』と、そう誰もがオレに望む、嘆願する、死んでいった者達の嘆きの声が!連中の勝手な理屈で虐げられて殺されていった者達の怨嗟の声が!!」

 

それは康太が戦闘を始めてからずっと聞こえてきた声だった

 

自発的に撃つように誘導されて、戦いを始めてからはそんな声達に背中を押されて、そうやってずっと引き金を引き続けてきた

 

「気付けば引き金を引いていた!撃って、更に撃って!殺して、もっと殺して!そうすれば声は消えていく!けど、新たな声が同じように言う!まだだ、まだ殺せと!オレは……誰だ!?引き金を自分で引いたのか!?それとも彼等に呑まれて引かされたのか!?俺は、本当のオレは誰なんだ!?オレの本当の意思は!?」

 

康太の目に浮かぶのは恐怖に泣く子供のような怯えた色だった

 

自分の知らない人間達が自分の中に入り込んで溶けていくかのような得体の知れない感覚、自分が自分でなくなるのではないかという恐怖に康太は怯えていたのだ

 

錯乱しクロエの肩を掴む康太、加減が利かなくなりその力は強いが、クロエは痛がる素振りもなく康太の頭を自分の胸に抱えるように抱き締めると、その背を優しく撫でる

 

「貴方は貴方です、コウタさん」

 

「オレは、オレは……」

 

「コウタさん、貴方は本当はどうしたかったのですか?与えられた命令ではなく、あの時、引き金を引く前に、貴方自身はどうしたかったんですか?」

 

「オレは……撃ちたくなんて、無かった…………殺したくなんて、無かったんだ……それでも……」

 

「なら、それが貴方の意思です。撃ちたくない、殺したくない、それが紫藤康太という人間の意思だったんです」

 

「だが、結果として引き金を引いた……何人も、何百人も、この手で殺した……」

 

「はい、それは事実です。ですが、自分ばかりを責めないで下さい。貴方はちゃんと、救いもしたのですから」

 

康太が撃たなければ人体実験に使われた子供達の数はこれからも増えただろう、壊滅させた拠点で無理矢理労働に従事させられたままの人々が居ただろ

 

そんな人々は康太の手で解放された、それもまた紛れもない事実である

 

「もしも貴方が罪の意識を抱えているなら私も背負います。またその手に銃を取るというのならば、私もその隣に立ちます。これから先、貴方がどのような選択をしても、私はその傍で貴方を支えます。ですから、一人で抱え込まないで下さい。貴方は一人ではない、私も一緒に居ます」

 

「ぐ、あああああぁぁぁぁぁっ!」

 

優しく、諭すように抱き締めてくるクロエの胸の中で康太は小さな子供のように泣いていた

 

その慟哭を受け止め、康太が落ち着くまでの間、クロエはずっとその背を撫で続けるのだった

 

暫くした後、昨日から一睡もしていなかった康太はそのまま疲れはてて眠ってしまう、クロエは康太の体に布団を掛けてから部屋を出る

 

そして決意と共に束の居るラボへと向かった

 

 

「う~ん、数値の伸びが良くないなあ。やっぱり生存本能が呼び覚まされる程の危機的状況に陥っていないからかな?そうすると無人機を使って臨海学校の時みたいな状況を作るべきかな?けど同じシチュエーションだと効果が薄いかもしれないしなあ。あ~あ、どっかにこーくんが死にかけるくらいの相手が居ないかなあ」

 

束は自らのラボの中で康太のデータを確認していた

 

しかし現在のデータと臨海学校の後のデータを見比べてもあまり変化が見られない、それどころか昨日は数値が大きく乱れるという結果となった

 

それはそれで貴重なデータではあるのだが真のニュータイプを見たい束としては不要なデータだった

 

これまでの傾向から実戦を行う度に康太のニュータイプ能力は上昇が見られ、臨海学校の時はそれまでに類のない程の上昇率を見せた

 

だからこそ束は実戦こそがニュータイプ能力を開花させる鍵と信じてきた、だが昨日から丸一日以上の戦闘を続けていたというのに康太の数値は殆んど変動していない

 

ならば足りない要因は何かと考え、それは康太の生存本能による能力の喚起であると結論付けたのだ

 

そうすると康太が苦戦するような、命の危機を感じるような相手を選ぶ事になるのだが、既に国家代表レベルに片足を突っ込んでいる康太が死にかける相手など、どのように準備するか悩ましいところであった

 

それと付け加えるならば康太が死んでは意味がないのだ、現状でニュータイプ能力の覚醒の予兆が見られるのは康太のみ、そんなサンプルとしての面で死なれると困るのが束の現状である

 

さてどうしようかと束が思案していた時、ラボの扉が開いてクロエが入ってくる

 

「おや、くーちゃん。こんな時間に珍しいね」

 

「束様、私から無理を承知でお願いがあります」

 

「くーちゃんからのお願い?私はくーちゃんのお願いなら叶えられる範囲でならいつでも良いよ」

 

「ありがとうございます。では単刀直入に、コウタさんにこれ以上の無理な出撃は控えさせて欲しいのです」

 

滅多にワガママを言ったりしないクロエからのお願いとあって束は興味を惹かれた、しかしその内容に雰囲気を豹変させる

 

「ふーん、成る程ね。でも何でそう思うのかな?」

 

「今のコウタさんでは危険です。少なくとも生きた人間を相手にする事は絶対に止めて下さい」

 

「ふんふん、それは何でかな?」

 

「コウタさんが死んだ人間の思念に取り憑かれてしまうからです。昨日からの戦闘で途中からコウタさんの様子が変貌したのはそれが原因です。ニュータイプに関連する資料は私も確認しています。あの場所に残っていた残留思念がコウタさんの機体に積まれてるサイコフレームに取り込まれて増幅され、コウタさんを蝕んでいると推測されます」

 

クロエの推測というのは束も当然ながら考えていた事だ

 

潰れてしまっても困るから対応策として康太のパイロットスーツに感応波を遮断する機能を盛り込もうかと考えていた

 

そして対応策があるなら出撃も可能だと考えるのが束だった

 

「理由は分かったよ。でもそれはこーくんのパイロットスーツに感応波を遮断する処理を施せば解決するからね、出撃をしない理由にはならないよ」

 

「それは一つの解決法ですが、コウタさんが人を殺す事に自責の念を抱かない訳ではありません。どうしてそこまでコウタさんの出撃に拘るのですか、束様?」

 

「くーちゃん、私はね、ニュータイプの可能性ってヤツを見たいんだよ。凡人達は色々な事をやりもしないで無理だと決め付けてしまう。そんな連中にニュータイプが起こす奇跡を見せたらどうなると思う?無理なんかじゃない、可能性はあるんだって世界に、凡人達に示せると思わない?そうなれば世界は宇宙にも行けるって、可能性があるんだって信じる。地球よりも、宇宙という極限環境で人は新たな種への進化が促されるって。それはこーくんの望みでもあるんだよ」

 

「それでも、ニュータイプは道具ではありません。コウタさんは一人の人間なんです」

 

康太の望みは束と同じ宇宙開発である、しかしクロエはそれが遅くなったとしても康太の身を案じる事を選んだ

 

康太が無茶をするのをそれまではただ見ている事しか出来なかったが、今は自分も同じ道を共に歩むと決めたから

 

その為に康太を守る、それがクロエの選択だった

 

そんなクロエをじっと見つめる束は、少し経つと息を吐いて纏っていた敵意を霧散させる

 

「くーちゃんが本気でこーくんを想ってるのが分かったよ。うん、なら私の都合で無茶な出撃はさせない。くーちゃんが少しでも言葉に詰まるようなら取り合わなかったけど、本気も本気、これ以上にない程にこーくんを愛してるんだねえ。ハァ、束さんジェラシーだなあ……」

 

「申し訳ありません、束様。ですが私が束様の事も尊敬しているのは変わりません。束様が居なければ私は今もこうして生きてはいなかったのですから」

 

「良いよ、子供がいつか反抗期を迎えるのは当たり前だからね。これもくーちゃんの成長の証、喜びこそすれ嫌に思う事なんてないよ」

 

束にとってクロエは娘のような存在である、自分の命令には何でも従ってきたクロエが、自分自身の意思で束に反発してみせた

 

人形のようだった彼女が見せた人間としての成長、それは束にとって好ましい事でもあった

 

「くーちゃんはこーくんの所に戻って良いよ。こーくんの今回の後始末は私がやっておくからね。今はこーくんの傍に居てあげた方が良いんだと思うからさ」

 

「ありがとうございます、束様。では、失礼します」

 

「うん、おやすみ~」

 

クロエが去っていった後、束はパソコンの操作を行いヴァルハラで得たデータの解析や康太が行った殲滅戦に対する情報操作を行う

 

とは言ってもラビットフット社が関わっている事を隠しながらヴァルハラの犯罪行為を纏めたデータをメモリーに入れて各報道局にばら蒔いたり、インターネット上にサイトを作って情報を拡散したりだ

 

実際に短時間でヴァルハラの悪行は世界に広がっていっている、康太が襲撃したヴァルハラの拠点の中には一部都市に構えられていた物があり、そこでは麻薬農園で栽培した薬物や海外から密輸、または3Dプリンター等で製造していた銃火器等を纏めていた倉庫もあったので一般人の目にもジェガン・サーガの攻撃は一部目撃されていたのだ

 

ヴァルハラが襲撃を受けた、という事実に新たにその理由が付加される、既にSNSを中心に出回っていた情報は新たな燃料を与えられてその勢いを増していく

 

インターネット上でこれだけ大々的に盛り上がっている大事件をマスコミが取り上げない訳がない、多くの目撃者も居る中で女尊男卑を掲げる世界的な組織の大スキャンダルにマスコミが食い付かない訳がないのだ

 

しかしその流れがあまりにも順調な事に束は違和感を覚える、女尊男卑派の声があまりにも少なすぎるのだ

 

確かに連中と同じ思想をする組織の大スキャンダルともなれば余計な飛び火を恐れて口をつぐむだろうが、現実が見えずヒステリックに喚き立てるような連中も出てこない事が気にかかる

 

何者かの介入が行われている、その何者かの正体に束は一つだけ心当たりがあった

 

「更識、かな?」

 

自身が知る対暗部用暗部とかいう日本に代々仕えてきた一族の介入を感じ取る束

 

その諜報能力の高さは束もそこそこ認めている、その現当主が今のIS学園で生徒会長を務めている事も知っている

 

「まあ良いか、邪魔してる訳じゃないしね」

 

此方の邪魔をしないのなら構わない、勝手に協力してくるなら見逃してやろう、束はそう判断して更識の介入を放置する

 

しかしその事に対して束は笑みを浮かべた

 

「更識が動くなら近い内にまた何か動きがある。くーちゃん、私は確かにこーくんに、私の都合での出撃はさせないって言ったよ。けどね、向こうからやって来ないは訳がないし、今回みたいにガンダム世界の非道な技術を彼が放置する理由もないんだよ」

 

特にIS学園は今のところ何らかのイベントがある度に騒動に巻き込まれている、その中で康太は死にかけている

 

「私がニュータイプの光を早く見たいのは確か。でもそれを私の手で早めなくても、こーくんは直ぐに戦いに巻き込まれる。またその手に銃を取る」

 

科学者として運任せというのは少し気にかかるが、ニュータイプとしての覚醒は時間の問題、そう考えていたのもあって束はクロエのお願いを受け入れたのだ

 

「ニュータイプに共通して言える精神的な脆弱性。けどその中にはある意味『パートナーとの共生』という形でアイデンティティーを保つ存在も居た」

 

それこそ、目の前で母親が無惨な死を迎えたとしてもアイデンティティーを見失わずに居た地球生まれ地球育ちのニュータイプの話を康太から聞いた

 

「くーちゃんがそのパートナーの役になってくれたなら、こーくんの精神的脆弱性は克服される。二人には是非ともそうなって欲しいね」

 

究極的には自身の命さえも駒としか見ない、篠ノ之束という人間の歪んだ望みがそこにはあった

 

 

「お嬢様、ヴァルハラに対する情報工作の方は全て手配が完了しました」

 

「そう、ありがとう、虚ちゃん」

 

IS学園の生徒会室、そこでは水色の髪と紅い目をした猫のような雰囲気の少女と、ヘアバンドを付け眼鏡をかけた真面目そうな少女が夜遅くにも関わらず残っていた

 

水色の髪の少女は名を更識楯無といい、同じ頃にラボで束が思い浮かべた更識の現当主であり、この学園の生徒会長でもある

 

その彼女をお嬢様と呼んだもう一人の少女はその従者である布仏虚であり、康太と同じクラスに居るのほほんさんこと布仏本音の姉だ

 

そんな彼女達だが、今はIS学園の生徒会としてではなく暗部の更識として活動を行っていたところだ

 

とは言っても今回は情報操作であり、楯無が指示を出して虚が各所に連絡を取り、その部下達が命令を実行に移すという暗部としては軽い仕事であったが

 

「どのメディアもヴァルハラ襲撃犯とヴァルハラの犯罪行為を翌朝に大々的に取り上げるつもりのようです。これで女尊男卑派の勢いと、それに関わる汚職、不正の摘発に移れます」

 

「機会を伺ってきたけど、まさかこうして暴けるとは思わなかったわ。このスナークさんには感謝しないといけないわね」

 

楯無の前にあるパソコンの画面、そこに映るのは一機の黒い塗装が施され、左肩に赤くSNARKと書かれているIS、ジェガンのカスタム機であった

 

都市部のヴァルハラの拠点を襲撃した際に偶然にも一般人が撮影した写真、多少のブレはあるが辛うじて文字が読み取れる写真は少なく、マスコミもこの写真を使うつもりであった

 

「その正体が不明だからこそ、警戒を怠れないのですが」

 

「そうね。スナーク、『不思議の国のアリス』で有名なルイス・キャロルのナンセンス詩、『スナーク狩り』に出てくる架空の生物。食用として狩られる立場みたいだけど、このスナークさんは一方的に狩っている。しかも私達が把握していた国内の拠点が全て短期間で壊滅していた事に加えて、集まった目撃証言から複数の機体による同時多発的な動きではなく、全てはこの一機による犯行ね」

 

「調べましたが、スナークの中にはブージャムと呼ばれる見た者を存在ごと消滅させる危険な種も居るとされていますね。この機体がスナークの名を冠しているのはそれが理由でしょうか?」

 

「恐らくはそうでしょうね。それでその正体だけど、この学園で一番有名なジェガン使いの彼の行動は?」

 

「篠ノ之博士のラボに昨日から入って例のエイフマン教授が手掛けた新型機のテストを行っている事になっています。ラボの内部は管轄外なので真実かどうかは不明ですが、その新型機の表面上のスペックデータが学園に提出されています」

 

「そうなの?って、何この機体!?可変機構の採用だなんて、エイフマン教授って人はどういう発想をしてるのよ!?」

 

「私も初めて見た時は驚きましたが、どうやらコア同士をリンクさせて遠隔操作する無人機らしいです。名称はフラッグ。少なくとも一朝一夕で造れる機構ではない事から、そのテストをしていたと信じるのなら紫藤康太君の関与は否定されるかと思います」

 

提出されたログやらテストの映像を見てもリンクしたISのコアは康太のジェガンのコアと同じ物である

 

しかし当然これは束が作ったダミーであり、実際のテストはまだ行われていない

 

だが精巧な映像によりダミーだと見抜かれる危険性は少ない、そして表向きなスペックも改良したとか言えば通る為に予想値よりも低く提出されていた

 

それでも楯無は康太が怪しいと睨む、報告書を読んだ臨海学校での康太の知っていた情報に関してもだが、何より彼女の勘がそう告げていた

 

「なら康太くんは私が調べるわ。近い内に仕掛けるとしましょう」

 

「よろしいのですか?下手に探って篠ノ之博士の逆鱗に触れるような真似はするなと政府からも釘を刺されていますが?」

 

「同時に、可能なら接触して交渉して欲しいとも言われてるわね。二律背反する命令をしてきてるのに痺れを切らしそうな連中が余計な事をする前に動くべきよ。大丈夫、まず接触するのは康太くんだけ。臨海学校の時に簪ちゃんを助けれくれたから、個人的にそのお礼も兼ねてね」

 

公私混同とも言われかねないが、妹を助けてくれたお礼として接触するならば違和感とは受け取られない

 

実際、彼女は自身のISのオーバーホールにロシアまで出向いていた為に帰国したのは数日前であり、理由として不審なところは見られない

 

こうして建前の為に色々と準備を進めつつ楯無は康太への接触を試みるのだった




クロエがコウタくんを抱き締めてるシーン書いててバブみとか思った私は殴られても文句言えないと思うの

そして楯無さんの登場、原作よりも早い接触になります


そしてそして、関係ないですけど神獄塔メアリスケルターFinaleの発表に狂喜乱舞してる作者でした
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