ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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シミュレータとはいえ、イギリス代表候補生達へ実戦の洗練

つまり、ISは持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない、強力な兵器なんですよ(盟主王並感)

それと、タグをまた幾つか追加しときました


40話 教導4

一番手として選ばれたレイネシアを含む六人のイギリス代表候補生達はシミュレータに関する説明を受けていた

 

聞けば聞く程に高性能なシミュレータであり、小型でありながら既存のコンピューターとは圧倒的な差を持つその演算能力は、聞けば量子コンピューターによるものだと返される

 

今のスーパーコンピューターが数年もの時間を掛けて計算するような問題を数秒で終わらせる事が出来ると言われている量子コンピューター、その実物が目の前にある事に技術系に強い人達が驚いていたが、康太は意に介す事もなく人数分の用紙を取り出した、そこには誓約書と書かれている

 

「このシミュレータだが、電脳空間での処理だから痛覚も再現出来る。緩める事も出来るが、デフォルトだと軽減なしなんだ。そして様々な状況を再現出来ると言ったが、さっきの廃墟のような場所だけでなく市民の生活している街を再現する事も出来る。次のシチュエーションであるロンドン防衛戦だが、当然避難の完了していない一般市民の姿も再現可能だ。場合によっては彼等の避難誘導やら、防衛も任務に入る。取り敢えずは現実をとことん追求した戦場を用意したんだが、まず確実にトラウマになるだろう。冗談抜きにISパイロットとして再起不能になる可能性もある。その覚悟があるならば誓約書にサインしてくれ。サインした者のみシミュレータに参加だ」

 

誓約書の内容を見れば例え今回のシミュレータで心的外傷を負ったとしてもラビットフット社は一切の責任を負わないという内容が書かれていた

 

多くの者はどうせ強めに脅しているだけだろうと気負わずにサインをしていく

 

そんな中でサインする手を止めたまま考え込んでいるのはレイネシアとセシリアの二人である

 

このセシリアは康太の性格を把握している、レイネシアはその真面目さから、此処までやるからには本気だと感じ取っているのだ

 

「康太さん、参考までに康太さんが受けた痛みがどれくらいの物か聞いてもよろしいですか?」

 

「ん?オレのか?さっきのデビルガンダムのビーム、あれを直撃喰らった事があるんだが、全身を焼かれた痛みがあって、現実に戻った後もその感覚が残ってたな。一瞬で塵になったと思うんだが、死ねないから永遠に続くかと思った……だから可能ならばシミュレータ内でも撃墜されないようにすると良い。さっきみたいに、無理なら撤退しろ」

 

「それは……皆覚悟の上であろう」

 

「そうか。だったら一つだけ忠告がある。死ぬほど痛いぞ」

 

康太のその言葉に早まったかと思うパイロットも居たが、その時には既に誓約書に署名し康太へと渡してしまった後でありもう後戻り出来ない状態だった

 

更には話を聞いたレイネシアとセシリアも誓約書に署名したので、今更自分だけ降りるなどと言い出せなかったのだ

 

「よし、ならAチームはシミュレータへ。ロンドン防衛戦、状況を開始する」

 

そうして地獄への幕が上がった

 

 

レイネシアがシミュレータに接続した装置を身に付けると視界が暗転し、先程モニターで見ていた白い部屋に居た

 

『全員の接続完了。体の動きに違和感はあるか?』

 

部屋の中に響く康太の声に全員が軽く体を動かして確認する、その感覚は現実のものと全く遜色ないものだった

 

「凄まじいものだな。これを使えばISコアの不足により訓練を受けられない、という事が無いではないか。何よりどれだけ戦闘を行おうとも機体が壊れず修理する必要がない」

 

『欠点としてはISコアへの戦闘データが蓄積されない点がある。専用機を持たない者なら良いが、これに頼り過ぎると専用機持ちは二次移行が更に遠退く事になる』

 

なおシミュレータにISコアを接続すればその問題は解決するのだがアラスカ条約に抵触する恐れがあるので康太は言わない、公にしていないだけで康太はそれをしているがバレなければ問題ないのである

 

そして参加メンバーの全員が動きに何の問題もない事を確認したところでシミュレータが開始される、彼女達が最初に降り立った場所は今の訓練でも使用しているアリーナのグラウンドであった

 

全く現実と同じ感覚に感嘆の声を上げる彼女達、違いがあるとするならば視界の端にシミュレータという黄色い文字が浮かんでいる点だろう

 

そんな彼女達の首にはシミュレータ開始時に選択したISが待機形態で身に付けられている、その仮想のISから通信が入る

 

『緊急事態発生!ドーバー海峡を北上する巨大物体を確認、データよりデビルガンダムと断定!各IS部隊は速やかに迎撃に向かわれたし!繰り返す―――』

 

それは聞いた事のない女性の声だが、通信先はイギリス国防省の国防委員会からとなっている、その辺りも設定されたAIと合成音声で処理されているのである

 

「ふむ、成る程な。では全員行くぞ!我に続け!」

 

『了解!』

 

状況を理解したレイネシアは早速ISを展開し指揮を執る、号令に従い他の代表候補生もそれぞれにISを展開し飛翔した

 

内訳はレイネシアの専用機カリバーンとティアーズ型が三機、汎用性に優れるラファールが二機の六機、これだけの数のISが同時に動いているというのは他ではIS学園でしか見られない光景である

 

そんな六機はロンドン市街上空を東へと飛行する、その途中で再び通信が入る

 

『沿岸警備隊より報告!テムズ川に向けて侵攻する多数の機影を確認!デビルガンダムの尖兵、デスネービーと推測!ロンドン市街が近い、IS部隊は至急確認、敵であれば迎撃を開始せよ!』

 

「成る程、敵の先陣という訳だな。全機、聞いての通りだ!針路変更、迎撃に向かう!」

 

ドーバー海峡を通過しているという報告を受けて真っ直ぐにそちらに向かおうとしていたが、その報告を受けてレイネシア達は海へと出る

 

ISの速度ならば直ぐに海に出られる、だがそこに広がっていた光景はシミュレータと分かっていても戦慄するような物であった

 

「これは……」

 

「酷い……」

 

到着して目にした光景、それは炎と黒煙に包まれた海であった

 

小さい物は漁船から、大きい物は貨物船やタンカーまでもが襲撃され、砕かれた破片が海を漂い、漏れ出た燃料が引火して海面を炎で覆う

 

その光景を作り出しているのがデスネービーであった、今もまた一隻の貨物船が攻撃を受けその船体が傾斜していく

 

本体下部の水中機動ユニットを魚雷として使用し船体を破壊、傾斜していく船へと三叉の槍を手に乗り込み手当たり次第に人間を殺傷していくデスネービーにレイネシアは照準を合わせ引き金を引いていく

 

「各機、遠慮などするな!速やかに奴等を撃破せよ!」

 

『了解!』

 

これはシミュレータであり現実には何の影響もない、しかしこのような光景が現実になる可能性もあると突き付けられてレイネシア達の表情から一切の油断が消えた

 

此処で何も出来なければ有事の際に誰かを護る事など出来ない、そう理解したのだ

 

貨物船に取り付いていたデスネービーの数は十も居なかった為に即座に殲滅する事が出来た、しかし残りは水中に居る為にレイネシア達の装備では対処が出来ず、歯痒い思いをしていた

 

「クッ、此方から仕掛けられんとは……!」

 

狙うには先にデスネービーが攻撃を仕掛けて海上に現れるのを待つしかない、シミュレータで分かった対潜装備の不足に、レイネシアは技術者へその開発を行うよう決意した

 

HQ(司令部)よりIS部隊へ。レーダーで方位180より接近する複数の機影を確認。恐らくデスバーディと思われる。現在、ベンソン空軍基地よりタイフーンの一個飛行隊がインターセプトに向かっている。また、各地の基地より戦力を移動中だ。IS部隊からは念のため、一機を航空部隊の支援に向かわせて欲しい』

 

司令部とのデータリンクにより他の部隊の動きも分かる、レイネシアが確認してみると味方を示す光点が幾つもこの場に向かって移動をしていた

 

その中にはポーツマス海軍基地から移動する艦隊の姿もあった、旗艦はクイーン・エリザベス級航空母艦であり、姉妹艦のプリンス・オブ・ウェールズもまた別方向より向かっている

 

時間が経てばそれだけ戦力は増える、まさに総力戦といった様相にレイネシアは一先ず安堵の息をついた

 

「ふむ、ならば支援に向かうのは―――」

 

「王女殿下、私が志願します」

 

「ふむ、マリー・リードか。良かろう、行くがよい」

 

「了解!」

 

レイネシアから下った下知にマリー・リードははっきりと返礼を返すと意気込んでデスバーディの迎撃に向かう

 

その背中を見送ったレイネシアもまだ水中に潜むデスネービーを捉えようと視線を向けるが、立て続けに通信が入る

 

『HQより全部隊へ、方位090より新たに敵大部隊の接近を確認!敵主力と思われる、IS部隊は分散し対処に当たれ!』

 

「主力か。二機は此処に残りデスネービーの対処を、残りは私に続け!」

 

『了解!』

 

複数の方向からの攻撃、それに対してレイネシア達も戦力を振り分けて対処するのだった

 

 

マリー・リードは単機で移動し、デスバーディの迎撃に向かう

 

その途中で味方を示すマーカーがあり、確認するとイギリス空軍の一個飛行隊と表示される

 

数は八、対空ミサイルを装備したデスバーディを相手にする為の機体である

 

「旧式の兵器ね」

 

その姿を見てマリーはそう呟く、ISの台頭によって数を減らしている、無駄金喰らいと揶揄されてきた戦闘機、それがマリーの評価だ

 

そんな部隊の支援に来たは良いが、マリーはそれをあてにしてはいない、一人で全てを相手にするつもりであった

 

『エコー1より全機、アームオン。目標を被らせるなよ。アムラーム、全弾発射!FOX3!』

 

並走し眺めていると隊長機と思われる機体からの指示で八機のタイフーンからミサイルが発射される

 

一機につき六発、計四十八発のミサイルがレーダーで捉えているデスバーディの群れに向かう

 

デスバーディの数は百に近い、向こうはレーダーを持っていない為に自らに飛来するミサイルに気付く事もないだろう、事実放たれたミサイルは全て命中、半数近いデスバーディを撃墜した

 

『全弾命中!次、サイドワインダー発射用意!射程に入るまでもう少しある。焦るなよ』

 

少し間を置いてから放たれたのはそれぞれが二発ずつ積んでいた短距離の対空ミサイルである

 

それもまた命中、敵の数は四十を下回った

 

「なかなか使えるじゃない。アンタ達は下がりなさい、後は私がやるわ!」

 

先程の短距離対空ミサイルでタイフーンは全てのミサイルを撃ち切っている、なら補給に戻れば再び攻撃の機会がある、そう考えて残りはマリーが片付けるつもりであった

 

しかし下された指示はそれに反するものだった

 

『HQよりエコー隊へ。後続部隊が到着するまで現空域に待機。敵残存部隊の足止めに移行せよ』

 

『エコー1よりHQ!こっちはミサイルを全部撃ち切っている、機銃だけでやれって言うのか!?』

 

『その通りだ。積極的に仕掛ける必要はない。敵が抜けそうになったら撃墜しろ。以上だ』

 

『クッ、了解!』

 

つまりは足止めとして囮になれと言うような命令にマリーも眉をひそめる

 

それこそ足止めでなく、ISで殲滅してしまえば良いのだ

 

「司令部、何でISを投入しないのよ!?私なら残りを全部やれるわ!」

 

『現在の敵戦力ならば通常戦力で対処可能だ。IS部隊は無用な消耗を避け、後詰めに回れ。以上だ』

 

「こ、このっ!」

 

だがマリーの進言は却下される、貴重なISは要所に投入する、それは理解しているが今がその時ではないのか

 

尚も反論をしようとするマリーだが、嗜める声が入ってきた、その戦闘機部隊の隊長機からである

 

『やめときな、嬢ちゃん。それが命令である以上、やるのが俺達軍人だ。それにな、ISの登場で今まで冷飯を食わされてきた中でようやく国の為になれる機会なんだ。嬢ちゃんだけ行かせて後ろに引っ込んどくなんて出来るかよ!各機、ファイターパイロットとしての誇りを見せろ!』

 

『了解!!』

 

エコー隊と呼ばれた戦闘機部隊は士気も旺盛に接近してきたデスバーディの編隊に機銃による格闘戦を仕掛けていく

 

ビームに翼を焼かれようとも、機体に組み付かれようとも、退くことなくデスバーディと相対する戦闘機の姿に、マリーはISがありながら何もさせて貰えない状況に、何の為のISなのかと己へと問い続けるのだった

 

 

「一度見て、理解したと思ったのだがな……」

 

敵主力への攻撃を始めたレイネシア達は他の戦力も合わせれば勝てると思っていたのだったが、それは呆気なく覆される事となった

 

レイネシアの駆るカリバーンも右側の大型アームが破壊され、パワーアシストに劣る自身の腕で大剣を保持している

 

序盤はまともに戦えていた、中盤も四天王クラスの敵が現れたが通常戦力からの支援砲撃により動きを止めたところをレイネシアの大剣で切り裂いた

 

しかし今現在、最終目標であるデビルガンダムと対峙してからは全く歯が立たない状況になっているのである

 

無数に沸いて出るデビルガンダムヘッド、そしてデビルガンダム本体からの高出力ビーム砲の攻撃、三機居たIS部隊だが既に一人はデビルガンダムからの砲撃で消し飛んでいる

 

そして残っていた一人も今、疲弊したところに後ろからデビルガンダムヘッドに喰らい付かれてしまう

 

「ヒッ!?いやっ、だ、誰か、誰か助けて!!」

 

「クリスティーナッ!おのれ!」

 

クリスティーナと呼ばれた少女はラファールを纏っている為に胴体部分に喰らいつかれてもシールドバリアによってパイロット自身が傷付く事はないが絶対防御の発動はエネルギーを多く消費してしまう

 

送られてくるデータからクリスティーナの機体のエネルギー残量もかなりの勢いで削られていた、レイネシアはデビルガンダムヘッドを大剣で斬りつけるが切断には至らない

 

そうしている内にラファールのエネルギーが枯渇、機体が強制解除され生身で空中に放り出されたクリスティーナはそのままデビルガンダムヘッドに喰い千切られる、その寸前で消えた、シミュレータからログアウトしたのだ

 

味方がやられたがシミュレータから出たのを見てホッとしたレイネシアだが、その油断はこの状況では命取りである

 

他のデビルガンダムヘッドがレイネシアの背後から突進、その背に強烈な体当たりを仕掛け、レイネシアの体が跳ね上げられる

 

「がはっ……!?」

 

やけにゆっくりと見える視界の中でレイネシアの目が偶然にもデビルガンダム本体を捉える、その口に巨大なエネルギー反応がある事もISを通して見ていた

 

「や、めろ……」

 

そして悟る、デビルガンダムが向いている方向、その射線上には自分の他に何があるのかを

 

「やめろぉぉぉぉぉっ!!」

 

レイネシアは叫ぶが無情にもデビルガンダムからビームが放たれた、それはレイネシアを掠め、その向こうへと一直線に突き進んでいく

 

着弾したのはロンドン、護るべき筈だった自らの国、自らの故郷である

 

掠めたとはいえ機体と肉体の半分を消し飛ばされ、薄れゆく中でレイネシアが見たのは、先程のシミュレータで見たのと同じように割れて焼かれていく街の姿であった

 

 

「か、ハァッ!?」

 

「王女殿下もお目覚めか。まあ、あの負傷なら遠からず死ぬわな」

 

今の今までシミュレータに挑戦していた代表候補生達の姿をオレ達はモニターで観察していた

 

今目覚めた王女殿下で六人全員が目覚めた事になる、あの前にもデビルガンダムにやられた者以外でデビルガンダム四天王に撃破され死亡判定されたのだ

 

そんな彼女達の顔色も悪い、中でもデビルガンダムヘッドに喰われ掛けたクリスティーナ・ホワードは自分の体を抱き締めて震えている

 

他のパイロット達も死ぬような負傷を負う前に戻したが、程度の差こそあれ一様に青い顔をしていた

 

「さて、諸君もデビルガンダムとの戦闘を軽くとはいえ、感じる事は出来ただろう」

 

「アレが、デビルガンダムか……しかし、この有り様は……」

 

王女殿下は先程までシミュレータに参加していた面々を眺める、少なくとも直ぐにまたシミュレータに参加出来るような奴はいないだろうな

 

「少なくともあれだけの強さは想定しているという事だ。Bチームは今のAチームの動き等から反省点を見付けて活かしてみると良い。各自シミュレータに接続しろ」

 

「ちょっと待ちなさいよ!クリス達を放っておく気!?」

 

「事前に誓約書を書いただろう。シミュレータで負った心的外傷に関して一切の責任を負わないと」

 

「そ、それは……けど、仮にも教官ならフォローするでしょう!?」

 

「そうだな、確かに教官役だ。だがオレは先に言っていたぞ。確実にトラウマになると、場合によってはISパイロットとして再起不能になる可能性もあるとな。その覚悟があって、誓約書に署名したのではないのか?」

 

反発してくる人間が居るとは思っていた、だがオレから言わせればそんなものは甘えだ

 

「ならどんな訓練が良かったんだ?優しく温い訓練を受けさせてやれば良いのか?それであのデビルガンダムに挑ませると?無駄に死体を増やすだけだな」

 

「ぐっ……」

 

「何の為の訓練を受けている?デビルガンダムを倒す為ではないのか。生半可な力をつけさせて、それで戦場に送り出しても直ぐに落とされるだけだ。それは先程のシミュレータで理解したと思ったのだがな」

 

「それは、デビルガンダムが強すぎるからで……他にも、四天王も強いし……」

 

「少なくともあれ位の力はあると想定しているからだ。それに、四天王に関してはヘブンズソードとグランドは以前の交戦データを基にしてある。ウォルターは回収出来た残骸からしか試算出来ていないが、概ね正しいだろう。マスターに関しては少し物足りないかもしれないと危惧してはいるがな」

 

反論は必要な物は潰していく、少なくとも数の暴力と四天王の強さ、デビルガンダムの強さはISであっても危険なものだ

 

ISは絶対の兵器などと夢見ているのなら今の内に醒まさせてやるのが最善だろう

 

それに彼女達の中から実際にデビルガンダムとの戦闘に駆り出される可能性があるのだ、ならば彼女達が生き残れるように情けは不要、下手な情は彼女達を殺す事になるのだから

 

その事を話すつもりはない、教官役は憎まれるくらいで丁度良いのだ

 

とはいえ多少のフォローはしてやるか、互いに冷静になる為にもな

 

「頭を冷やして考え直してくると良い。戦術を構築するも良し、仲間のフォローをするも良し、今から三十分の休憩時間としよう。その後で改めてシミュレータへの参加を―――」

 

『あげゃ、甘ぇな』

 

「何ッ!?」

 

突如としてミーティングルーム内のスピーカーより響く男の声、そのような予定など無かっただけにオレは意表を突かれる

 

そして同じように今までシミュレータの内容を映し出していた大型モニターが切り替わっていく、そこに現れたのは黒いパイロットスーツに身を包み、首を一周するように大きな傷を持つ一人の男と、ネコミミのようなものを頭に着けた小さな少女だった

 

男の方は好戦的な笑みを浮かべており、スピーカーから聞こえてきた声の正体もこの男だ

 

そしてオレはこの男と少女を知っている、この世界に来ているかもしれないと高い可能性を感じていた存在、エイフマン教授と同じガンダムに於ける西暦世界の最凶のガンダムマイスター

 

「フォン・スパーク……!」

 

『ハッ、やっぱりオレ様の事を知ってるか。だがオレはテメェを知らねえ。ヴェーダにも情報が無かった。ならその正体として考えられる可能性はそう多くねえ』

 

「………………」

 

フォンに指摘されて口をつぐむ、頭がキレるフォンに対して余計な情報を与えるのは悪手でしかない

 

『黙りか、つまらねえな。まあ良い、オレ様が用があるのはテメェだ、紫藤康太』

 

「オレだと?」

 

『ああ、ニュータイプって言葉に聞き覚えがあるだろう?』

 

当然ながらガンダムシリーズを見ているのだからその単語は知っている、だがオレが驚いたのはフォン・スパークという男の口からその言葉が出た事にだ

 

「ニュータイプ?」

 

『普通の人間は知らねえだろうな。極限状態に置かれた人間が進化した存在。強力な感応波や未来予知にも近い能力を持つ、宇宙に適応した人類。定義はどうでも良い、オレ様が知りたいのはその力がどれだけの物かって事だけだ』

 

ニュータイプというこの世界には存在しない概念にセシリアが首を傾げ、フォンが軽く説明する

 

その後にフォンがモニター越しにオレを指差して告げた

 

『人類初のニュータイプの可能性がある人間、つまりはテメェの事だな、紫藤康太。オレ様の要求は唯一つ。オレ様と戦え。オレ様にお前の全てを見せろ、ニュータイプ!あげゃげゃげゃげゃげゃ!!』

 

その名の由来ともなった笑い声を上げて宣告するフォン、だがオレにそのメリットは今のところない

 

「貴様の実力は知っている。その上で勝負しよう等と考えないさ」

 

『だろうな。けどテメェは受けざるを得ねえ。コイツを見てみな』

 

オレの言葉に反論するフォン、モニターの一部に宇宙の映像が流れ、その中央には剣のような形の何かが浮いている

 

それが何なのか、この場の誰もが分からずにいるとフォンが口を開いた

 

『その様子だとお姫様も知らねえか。コイツはエクスカリバー、米国と英国が共同開発した衛星兵器だ。コイツの制御をオレ様が奪った』

 

『なっ!?』

 

そのような兵器が存在していた事にも驚きだが、その兵器の性質によっては宇宙条約に違反するような代物である事にこの場の全員が息を呑んだ

 

そして、もしもそれが実際に撃たれる事があれば―――

 

「イギリスに、ではなく他国に撃てば戦争だな。テロリストに制御を奪われたと真実を言っても、どれだけの人間が信じるか。逆に管理体制などの責任を問われる事になるだろう。オレが行かなければ撃つ、そういう事か」

 

『そういう事だ。それからそこに居るセシリア・オルコットは出てきな。テメェにも話がある』

 

「私ですの?」

 

この状況で更にセシリアに用とは何か、理由は分からないが呼ばれたセシリアがフォンと相対する

 

『テメェのメイドのチェルシー・ブランケットを呼べ。なに、「エクシアは預かった」と伝えれば飛んで来るだろうよ』

 

「エクシア?」

 

『テメェの考えてるエクシアとは別だな。詳しくはチェルシー・ブランケットが来てから説明してやる』

 

エクシアという言葉からガンダムエクシアを連想したが、それとは別のものか

 

セシリアは直ぐに連絡を取る為に部屋を出た、到着を待つまでの間、フォンはオレに更に条件を付け加える

 

それはオレが思ってもみなかった条件であった

 

『オレ様はテメェとは戦いたい。だが無理矢理駆り出してもモチベーションが上がらねえだろう?それじゃあ本気が見れねえ。だからよ、オレ様の居る場所まで来ればその時点でテメェにオレ様の持つガンダムを一機くれてやる』

 

「成る程、オレに対するエサという訳か。ガンダムを持ち出せば食い付く、中にデカい釣り針が入ってそうだな。普通ならそんな見え見えの罠に飛び込む輩など居ないだろう」

 

「そう言いながら着々と準備している姿は全く説得力が感じられんぞ、コウタ・シドウよ」

 

「私は我慢弱く、落ち着きのない男なのさ。しかも、ガンダムに関しては殊更目がないときている。罠だと分かりきってはいるが、動かずにはいられない!」

 

フォン・スパークとの戦闘に向けて装備の取捨選択を行う、色々と持って行きたいが容量の関係で選ばなければならないからな

 

『あげゃ、テメェもエクシアのパイロットとは別でガンダム馬鹿って事だな』

 

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

『そういう所も一緒って訳か!あげゃげゃげゃげゃげゃ!』

 

心底愉快そうに笑うフォン・スパーク、ガンダムエクシアのパイロットである刹那・F・セイエイと並んで評されるとは光栄の一言だ

 

そうしている間にセシリアが呼んでいたチェルシー・ブランケットというメイド服に身を包んだ少女が現れ、事態は更に進んでいくのだった




という訳で計画を前倒ししてフォン・スパークが登場

次回、コウタくん大暴走(グラハム的な意味で)
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