そして各短編の冒頭の人物が動き出す
地上へと帰還してからは簡単な事情聴取を一時間程受ける事となった
その後は箝口令として今回の事件に関しては他言無用と誓約書を書いたり、この件で今日の訓練を中止にしたりと、色々あった
そして今日もホテルにて休息を取ろうとしたのだが、今回の件で話があるという事でセシリアから自宅に招かれる事になったのである
普段は割りとお転婆なところがあるから忘れかけているがセシリアは貴族でお嬢様、自宅というが実際には屋敷という表現が適切な建物だ
その応接室にてオレとクロエと奏、そして家主でもあるセシリアとチェルシー・ブランケットは相対していた
「改めて康太様には妹のエクシアを救って頂いた事、感謝致します」
「いや、別にそこまで気にしなくても良い。オレへの報酬はフォン・スパークから貰ってるからな」
ガンダムと擬似太陽炉、この二つを得られただけでもオレにとっては今回の件でお釣りがくる程の収穫となったのだから
傷の方も割れたバイザーで頭を少し切ってただけだ、ガーゼを貼り付けて止血もしてあるから直ぐに治る
「それでも康太様が成してくれた事で私は妹と再会する事が出来たのです。そして、それだけではありません。あのまま闇の中に堕ちそうになっていた私も結果的に貴方様に救われたのです」
「チェルシー、それはどういう意味ですの?」
セシリアの言葉はオレも気になった点である、何がどう繋がればチェルシー・ブランケットを救う事に繋がるのか分からない
問われた彼女は少し思い悩む様子を見せたが、しっかりと顔を上げて言葉を紡ぐ
「これから話す事は私が独自で調べていた事と、とある組織よりもたらされた情報です。決して、誰にも話される事のないようにお願い致します。そして、セシリアには辛い話になるかもしれません。お嬢様、御両親の死に関する真実を知る覚悟は御座いますか?」
「ッ!?」
チェルシー・ブランケットより聞かされた言葉、その言葉に息を呑む声がセシリアから発せられる
だが動揺は一瞬、セシリアは先程よりも強い意思を宿した瞳でしっかりとチェルシー・ブランケットを見詰め返した
「お願いします、チェルシー。あの事故が事故でないのなら、私は何があったのか知りたいのです」
「分かりました。ではそこに至る為に、まずエクシアについてお話します。エクシア、入りなさい」
「エ、エクシア・ブランケット、入ります!」
チェルシー・ブランケットが名を呼ぶとノックの後でメイド服に身を包んだエクシア・ブランケットが現れる
「驚いたな、もう動けるのか」
「は、はい!康太様、この度は私を助けて頂き、誠に感謝申し上げます!」
「いや、お姉さんの方にも言ったが気にするな。必要だからやっただけだ」
救出した後は意識もなく検査の為に医務室に運ばれていたらしいが、こうして目覚めて動けているのを見るに特に問題はなかったのだろう
まあ挨拶は軽くにして、本題に入るとしよう
オレはチェルシー・ブランケットに続きを促す
「彼女は生まれながらにして心臓に病を抱えていました。ですがその命を繋いで下さったのが前当主様、セシリアの御両親なのです。国際法にて禁じられている、ISとの生体融合措置という形で」
「それは……」
フォン・スパークが言っていた事である、エクスカリバーは生体融合型のISであると
それを改めて聞かされれば確かに何故そのような手段を使ってと疑問に思う
「前当主様はエクシアの為でもありますが、何よりもセシリアの為に独自にISコアを入手して実行に移しました。それがあのエクスカリバーなのです。あれを、来るべき戦いの時に、セシリアの力になるようにと」
「そんな……!?」
「ですが、それは国を裏切る行為でもありました。そのISコアはとある組織よりもたらされた物だったのです。そして、その結果としてセシリアの御両親は……」
「そうだったのですね。お母様とお父様は、私の為に……」
命を賭してでも娘の為に力を残した、それはそれだけセシリアの両親が子供の事を想っていた証左だろう
だがまだ謎が残る、そのとある組織の事、そして数に限りがあり国が厳重に管理しているISコアをどうやって渡したのか、だ
「康太様は既にお気付きのようですね。前当主様にISコアを渡した組織、その名を
「亡国機業……」
「私も後で知った事ですが、彼等は各国のISを強奪しているテロリストです。そんな彼等が前当主様にISコアを渡した理由はエクスカリバーの掌握にあります」
「成る程、兵器を自分達で作るより安上がりで足も付きにくい、そういう事か」
「恐らくはその通りです。ですが、そんな彼等との取引によって前当主様、セシリアの御両親は……」
「口封じの為に、事故に見せ掛けて殺されたのですね……」
「はい、私はそう教えられました。他ならぬ、亡国機業より」
「ッ!?」
再びセシリアが息を呑む、オレは万が一の事を考えて首に掛けてある待機形態のプルトーネに手を伸ばす
「エクシアの行方を独自に追っていた私は、その途中で彼等に声を掛けられました。エクシアの居場所を知っていると。いざという時にはISコアを奪取する手引きをしろと、そう取引を持ち掛けて来たのです。今のエクシアがどのような状態なのか、エクスカリバーの詳細な事は教えて貰えませんでしたが、既にその情報は伝えられていました」
「そんな、チェルシー、貴方は……」
「はい、それは祖国を裏切るも同然の行為。長く葛藤しましたが、エクシアの為ならと覚悟を決めようとした時です。今日、康太様のお陰でこうしてエクシアと再び会う事が出来ました。罪を犯す前に、貴方様が全てを解決してくれた。だから感謝を、妹だけでなく、私自身を救って頂いた事に深く感謝致します。例えどのような要求でも生涯を賭けてでもこのご恩はお返し致します」
「成る程、だからか」
彼女自身が救われたという理由に納得がいった
だが、だからと言ってそんなに畏まる必要もないのだが
「何度も言ってるが、オレは自分がやりたいからやっただけだ。その結果、勝手にそっちが助かっただけの話だから、感謝される謂れはないさ。そんな訳で気にするな」
「ですが……」
「くどい。オレが良いって言ってるんだからそれで良いんだよ。それでもと思うなら、その亡国機業に関して知っている限りの事を教えてくれ」
「分かりました。貴方様がそう望むなら」
「その前に、ふと思ったのですが、あのフォン・スパークという男が亡国機業に関与している、という可能性はありますの?」
「フォンが?いや、その可能性は低いだろうな。まずエクスカリバーを手中に収めようとしていた亡国機業と行動が噛み合わない。亡国機業とやらの真の目的にもよるが、あの男ならむしろ亡国機業は気に入らないと感じる筈だ」
「そうなのですか?」
「あの男はテロで父親を失っている。テロを憎んで、自らもテロリストになって。それでも困難に立ち向かうような人間には手を貸したりする。今回のエクスカリバーを爆破した件もそうだろうな」
オレをエクシア・ブランケットの救助に向かわせるつもりだったのは間違いない、だがその救出に向かう為には一つ問題点があった
「エクスカリバーはフォンが制御を奪ったとはいえ、その預かりはイギリスだ。オレがエクシア・ブランケットを救出する為には、エクスカリバーを破壊する事になる。一介の協力者であるオレがアメリカとイギリスの共同開発した兵器を破壊するのは政治的によろしくないだろう?」
「あっ……」
その説明でセシリアも合点がいったらしい、今回の出撃は割りと此方の独断専行であった
あの場でオレに対して王女殿下からの依頼があったから表向きは問題ないが、それでも越権行為と取られかねない行為を王女殿下はしていたのだ
「だがフォンはオレの足止めとしてエクスカリバーを爆破した。それによりエクスカリバーは地球への落下コースに入る。オレは人道的な観点からエクスカリバーのパイロットであるエクシア・ブランケットを保護。都市部に向けて落下するエクスカリバーの破壊を行うしかない。オレの力を確かめると同時に、その行動は全て予測されていた。テロもフォンにとっては今更罪状が一つや二つ増える事なんて気にしないから、そうしたんだろうな」
ジェガンのエネルギーが尽きてもオレにはプルトーネとフラッグ、そして実は巧妙に偽装してあるがフラッグの待機形態の腕輪と一体になっているジェガン・サーガがあったのだ、帰還するのに問題はなかった
むしろその程度も思い付かないならそのまま死ねとか考えるだろうな、フォンならやりかねない
「全てはあの男の掌の上、という事ですのね」
「一見粗雑な言動に見えてその実、頭がキレるからなフォン・スパークという男は。あのエクスカリバーを使ったのも亡国機業を炙り出す為、なんて理由があるのかもしれない。何処まで見通しているか、オレには見当もつかん」
扱いに困ったアリー・アル・サーシェスですら追放という形を取るしかなかった男だ、排除なんて考えれば先手を打って爆弾仕掛けられて終わる
そういう、キレすぎるが故に危険視される程の人物なのだ、フォン・スパークという人間は
「ともあれ、フォンに関しては今は置いておこう。テロリストだけあって潜伏も上手いからな。警戒はするが、今はより身近に迫る脅威についてだ」
取り敢えずフォンの事は置いておく、何か企んでいるのは確かだが亡国機業への対処の方が先だ
セシリアによって中断されたチェルシー・ブランケットの話に戻る
亡国機業、第二次世界大戦の頃から存在が確認されている謎の組織、ISコアの強奪、それによる戦力は未知数、そういった情報が彼女から伝えられる
しかし肝心の亡国機業の目的そのものは彼女も聞かされていないらしく、今後何をするのかも不明らしい
「私が知る情報は以上になります」
「目的不明が一番厄介だな。少なくとも、目的さえ分かれば敵の動きも予想が立てられるんだが。とはいえ、近く仕掛けてくるのは確かだろうな」
「それは何故ですの?」
「連中が保有する予定だったエクスカリバーは破壊した。ならば計画の修正と共に、エクスカリバーのコアを回収しようと動く筈だ」
オレはエクシア・ブランケットを見る
その心臓の代わりに埋め込まれたISコア、連中が保有する数は正確なところは分からないが何もせず放置するとは思えない
「彼等は動くでしょうね。恐らくはお嬢様が居なくなった時を狙って」
「そんな!?チェルシー、直ぐに軍部に保護を申し出ますわよ!そこなら少なくともリスクを減らせる筈です!」
「その代わり、エクシアは研究対象として見られる事になるでしょう。それでは今までと何も変わらないのです」
「ですが、相手もISを持っている以上は……」
そこでオレに視線を向けてくるセシリア、何が言いたいかは分かるがオレは困った時のドラえもんか何かかな?
「ラビットフット社もそう色々抱えられんぞ?パイロットは流石に五人も居れば十分だし、技術者って訳でもないだろう。表向き周囲を納得させて、かつその安全を確保出来るような役職なんて―――――あ」
一つだけ仕事があった、それも割りと大急ぎで欲しい人材として
改めてチェルシー・ブランケットを見る、彼女はセシリアのメイドだ、当然ながら炊事洗濯掃除といった家事全般は出来る
そしてラビットフット社が管理してる中で一つだけその能力を可能な限り手早く欲しい場所があった
おまけに素性もセシリアに仕えていたという事ではっきりしてる、特にこれが一番ポイントが高い
「何かありますのね?」
「まあ、子供達の面倒を見る人が欲しかったからな。紫藤院っていう孤児院の管理だ。奏の他に小さいのが三人居る」
「そこは安全ですの?」
「昼間は学校もあるが、奏には専用機を渡してあるし、無人機が二機、常に施設を警備してる。今は世話をする人が居ないから色々大変なんだが、引き受けてくれるなら色々と助かる」
普段は奏が面倒を見てくれているが、今回の教導の間はエイフマン教授が見ている
「必要ならば機体を貸す事も出来る。適性によってはカスタム出来るし、少なくとも生半可な戦力で手を出してくる事はない筈だ」
ラビットフット社が関わっているだけに誘拐などが危惧されるだけに緊急時にはその事を報せる発信器も持たせてあるからそうそう大きな事件が起きる事はないと思うし、そういう意味では安心ではある
「良いですわね。チェルシーとエクシアがそこに入るのは可能ですの?」
「能力は十分だし、何よりも素性がはっきりしているって点は何物にも変えがたい信頼だ。オレから話を通しておく事は出来る」
「決まりですわね。チェルシー、本当ならIS学園に一緒に連れていきたい所ですが、不可能な以上は手段を選んでられませんわ。康太さんのお話通り、ラビットフット社で厄介になりましょう」
IS学園は基本的に関係者以外立ち入り禁止である、いくらセシリアが代表候補生で貴族でも使用人の同伴は認められていない為に学園に居る事は出来ない
そして転入も代表候補生のレベルになってようやく認められる程だ、そのような肩書きを持たない二人の身の安全を確保するなら、オレには他に思い付かない
「しかし、それではこの御屋敷の管理は―――」
「そんな物より貴方達の命が大事ですわ!チェルシーだって長年探し続けていた妹とようやく再会出来たのですから、もっと我が儘を言っても良いのです!他ならぬ、お母様とお父様の死後も私に仕えてくれた大事な家族なのですから」
「セシリア……分かりました、これより暫しのお暇を頂きます。ですが、私は貴方の使用人である事に変わりはありません。状況が落ち着いたら必ず貴方の下に戻ります」
「ええ、それで構いませんわ。康太さん、改めてチェルシーとエクシアの二人の事、お願い致します」
「分かった。可能な限り早く安全が確保出来るようにしよう」
こうして、ラビットフット社で経営している孤児院にチェルシー・ブランケットとエクシア・ブランケットの二人が管理人として入る事になったのであった
その為にも簡単な経緯を篠ノ之博士に確認したら二つ返事で返ってきた
許可が降りた事を伝えると、二人は早速就労ビザの取得など慌ただしく動き出す事になるのだった
◆
某所、地下に存在するその施設の中で一人の女性が通信を介して報告を受けていた
「そう、エクスカリバーが破壊されたのね」
『正体不明の男と偶然その場に居合わせたラビットフット社の紫藤康太との戦闘の末に爆破、地球への落下コースに入った為に完全に破壊されました』
「正体不明の男の方について何か分かった事は?」
『イギリスに潜ませてある諜報員からの報告によれば、名前はフォン・スパーク。偽名だと紫藤康太本人が語っていたそうです。互いに既知の存在なのか、彼の口から幼少期からテロ活動に従事していたと判明しています。また、両者の交戦記録を確認したところ、フォン・スパークと呼ばれる男が使っていた機体を【ガンダム】と呼称していました』
ガンダム、その名を聞いて女性は納得した
彼女はそれが何なのか知っていた、組織でも限られた人間しか知り得ないその名前に隠された真実を知るが故に
「良く分かったわ。フォン・スパークもイレギュラー認定。今後もその動向を探りなさい。そして紫藤康太をイレギュラーから
『了解しました、スコール』
端末に映っていたウィンドウが消え、報告を行っていた者との通信が途切れる
それを確認したスコールと呼ばれた女性はその美貌に相応しい妖艶な笑みを浮かべるとソファーへと体を預ける
「特異点、彼はデビルガンダムに精通し、尚且つ他の技術体系から生まれたと思われるガンダムにも精通している。なら他のガンダムを知らないとは言えない」
フォン・スパークに関しての情報は少ないが、康太が多くを知っている事だけは確定した、故に扱いをイレギュラーから特異点へ格上げしたのだ
「本格的に捕獲する為の計画を練らないといけないわね。その前にレインに接触させるべきかしら?いえ、そこまで器用な真似が出来る子ではなかったわね。それに今は他の子に御執心みたいだし、その子を取り込めれば更にISコアを確保出来る。それならあの子はそれに使うべきね。そうなると、やはり手段は強襲しかないのだけど」
今は夏休みであり、ラビットフット社に所属している為にかの天災の気紛れで突発的に動く事がある為に予想出来ない、だからIS学園の行事が行われている時を狙えば確実に彼はそこに居る
「一番近いのは九月にある学園祭の日。オータムに頼んで、Mにバックアップをお願いするのが良さそうね」
そうしてより詳細な計画を煮詰めていくスコール、だが彼女は知らない、そんな計画を立てる前から知っているまだ見ぬイレギュラーが現れようとしている事を
◆
チェルシー・ブランケットとエクシア・ブランケットに関して色々と動き出したものの、オレは自分に依頼されていた教導の件を放り出すつもりはなく、翌日も訓練を行っていた
参加メンバーであるイギリス代表候補生の全員も昨日、実際に戦闘が行われたのを見たからか気合いの入り方が違っていた、士気が高いのは良いことなので昨日も使ったシミュレータで再びデビルガンダムに対抗する為の訓練を続ける
シミュレータを行ってはフィードバックされた痛みにのたうち回り、何処が駄目だったのかを反省し、次に活かす
それまでとは違い全員が真剣に訓練に打ち込んだお陰か、四日目は有意義な訓練が出来たと思う
そして最終日となった五日目、代表候補生全員とラビットフット社からオレと奏、そして追加としてラビットフット社無人機部隊のジェガン十二機を加え、シミュレータの操作を行うクロエを除く全戦力とも言える戦力で挑んだところ、無人機のジェガンがデビルガンダム本体の背に乗り、背後からビームサーベルでその頭部を貫き生体ユニットの撃破に成功した
「通常戦力は周囲でデスアーミー軍団を引き付け、IS部隊が戦力を集中し一点突破で本体を叩く」という王女殿下の作戦が上手くいった結果である
結果として何度か失敗したが一度だけとはいえ成功したという事実が全員の自信に繋がった
その時の喜びようはそれまでの比ではなく、シミュレータから現実に帰還した時には割れんばかりの大歓声となった程だ
とはいえ成功はその一度だけ、同じ戦法でも失敗する時は失敗したので過信は出来ないが、残念ながらその時点でオレは帰る事となった
シミュレータは王女殿下にそのまま預ける事となった、彼女が今回の訓練で得た教訓を基に欧州で動く為に使わせる為である
その試みが上手くいくかはまだ分からないが慢心する事もなく成長した事を信じてだ
帰る際にはイギリス代表候補生にならないかと強く勧誘されたりしたが丁重に断った
そうしてノッセルで日本に、IS学園に戻ったオレ達だったが篠ノ之博士のところに報告に行ったら、疲れているだろうから後回しで良いと言われ、お言葉に甘えて自室で休む事にした
「今回は色々と大変だったな。暫くはゆっくりしよう」
「そうですね。ですが、どうやら第二回の開催を各国から打診されているみたいですよ。今度は是非うちの国で、と」
「勘弁してくれ……流石に夏休みで何度も海外に行くのは疲れる」
「束様もそのつもりのようなので、暫くは大丈夫だと思います。レイネシア殿下も動かれるみたいですし、それで何件かは減ると思いますよ」
研究室から出て夏休みですっかり人の減った学園の寮の廊下をクロエと並んで歩く
奏はエイフマン教授が預かっていたチビ共三人を連れて孤児院に戻っている頃だろう
部屋の前に着いたオレ達は鍵を開けて中に入る、数日放っておいたから埃が積もっているかな、と思っていたのだが―――
「よう、お帰り」
「フォン・スパーク……」
人のベッドに寝転がってマイペースにガンプラの説明書を読んでいるフォン・スパークが居た
また会う事になるとは思わなかったが、まさか此処に侵入してきているのは予想外だった
………………あと、ベッドの横に簀巻きで転がされている生徒会長は何をしているのだろうか?
◆
彼女は知らない場所で目覚めた、周囲を見渡しても直前まで覚えていた場所とは全く違う風景が広がっている
「此処、どこ?」
一人呟くが彼女に答えてくれる者などそこには誰も居ない、その場を動こうにも周囲には何も見当たらない、それでも何か手掛かりはないかと目を凝らす
そして遠目にアスファルトに覆われた道路を見付ける、人工的な道だ、その道を辿ればいつかは人の居る場所に辿り着ける、荒野の中を希望を持って進んでいく彼女は一時間程歩き続けて、ようやく道路に辿り着いた
辿り着いた先、そこには人の姿は見えないが看板が設置してあった、現在地が分かるかもしれないと彼女はその看板に書かれている文字を読む、「United States Highway 95」、そう書かれている看板に彼女は正確ではないまでも今居る国を知った
「アメリカ……」
そこは彼女の祖国に近いと言えば近い、だがそれは北のカナダである
どうして自分がそんな場所に、全く理由の分からない彼女は愕然とする
それからどうやって帰れば良いのか、カナダ大使館は何処だったか、調べようにもスマートフォンの類いは見当たらない、今のところ時間帯が悪いのか人通りもない
空には太陽が上り容赦のない日射しが肌を焼く、遠くない内に脱水症状を引き起こしかねない状況に彼女はどんどんと絶望していく
だがそんな中で彼女は直感のように西を向いた、何故だか分からないがその方角に彼が居る、そう感じたのだ
「コウ?」
ならばそちらに向かおう、そう決意した時、彼女の胸元で、彼女が身に付けた覚えのないペンダントが光った
そのペンダントは翼を広げた鳥のような形で銀色に輝いていた
コウタくん達が帰ってくる日付を見計らって今度こそと意気込んでいた楯無さん、この小説で扱いがかなり不憫な気がします、そんなつもりないんですけどね
そして次回は一話の短編挟んで夏休み篇最終話の予定です、次回『