夏休みも後半戦に突入しようかという時期になってきたある日、一夏はIS学園からの呼び出しによりアリーナに来ていた
まだ本国に帰ったりしているメンバーが居るのでIS学園に居る人間だけでも集まるように言われている
何でも対デビルガンダムの為の部隊として世界中からISが派遣されて大部隊が結成されるという話なのだ
なのでアリーナのピットには既に多くの人が集まっていた、色々な人が居るが例えば一番後ろの方で控えていた黒髪の青年などが―――
「って、男!?」
自分や兄、そして同じ企業の同僚を除けば四人目となる男性IS操縦者の存在に一夏は驚きの声を上げる
その声に反応したのか黒髪の青年が振り返り、一夏と目を合わせる
「あ、悪い。えっと、アンタは?」
「俺の名はガンダム・刹那・F・セイエイ、ソレスタルビーイングのガンダムだ」
「ガ、ガンダム……?」
それは同僚である紫藤康太の魂とも言うべき名だった筈、何故その名を知っているのか、聞き返そうとしたが向こうは既に一夏を見ていない、というよりも―――
「俺がガンダムだ、俺がガンダムだ、俺がガンダムだ、俺ガンダム俺ガンダム俺ガンダムガンダムガンダムガンダムガンダムガンダムガンダム………………」
一人でずっとガンダムと呟き始めていた、どう見ても狂人の類いに一夏は関わらない方が良いとその場を離れる
そしてピットの中を進むとアリーナでは模擬戦が行われているらしく、モニターで二機のISが戦闘を行って―――
『ハルフォーフ大尉、ラウラを、離せぇぇぇッ!』
『邪魔をするな、織斑一秋ッ!』
「……何やってるんだ、一秋兄?」
戦闘を行っているのは自身の兄と見慣れない黒いISを纏ったこれまた知らない女性だった
何があったのか全く分からない一夏は、近くに鈴が居たので訪ねる
「なあ鈴、アレ何があったんだ?」
「何って、あの人ラウラの元部下らしいのよ。復隊出来るよう上に掛け合うって、だから帰って来てくれってお願いしてたんだけど、一秋との関係を優先したいってラウラが言ったら、あんな状況になったのよ」
「えぇ……」
それで決闘に、何というかラウラ本人の意思は何処にいったのかと思った一夏だが、モニターの中の二人は止まらない
『ラウラを惑わして!』
『貴様の言うセリフかあぁぁぁッ!』
黒いISがレールガンを放ち一秋の白式のシールドを弾き飛ばす
対する一秋もまたライフルで黒いISのカスタムウイングを破壊し、一進一退の攻防が続く
『ならば!』
だがそこで黒いISが仕掛ける、杭のような物を掴み白式へと迫る
『墜ちろ、織斑一秋ッ!』
鋭い加速からの一撃、武装を持ち替える暇もない速度の攻撃に一夏は兄の撃墜を悟る、だが突如として割り込んで来た射撃により黒いISは回避を余儀なくされる
そしてモニターがその攻撃を行った機体を捉える
「あれは!?」
その機体は赤い装甲を持ち頭部に何処か鎧武者を思わせる意匠の施された機体であった
パイロットの顔は見えるが、そのパイロットもまた面頬を彷彿とさせる仮面を身に付けている
が、その相手は一夏の知っている相手だ
『とんだ茶番ダム。いい加減止めたらどうだ?』
『康太?』
同じようにその正体に気付いた一秋がその名を呼ぶ、だが康太は不敵に笑うだけだ
『違うな。最早紫藤康太を超え、ISをも超越し、今の私はガンダムだ!』
「な、何それ……?」
隣に居る鈴が引き気味に呟くが一夏も全く同じ気持ちだった
割りと奇行に走る事がある康太だが、此処までぶっ飛んでいただろうか、と
しかし康太はそんな声など知らぬとばかりに続ける
『私はガンダムとなった!』
力強く力説して―――
『ガンダムガンダム、私はガンダム!愛を斬り裂き、その手に勝利を抉じ開ける!人呼んで、シドウガンダム阿修羅スペシャル!』
抜き放ったビームサーベルを振るい、やけにリズムの良い言葉に乗せて名乗った
『これがやりたかった(コウタ&作者)!生き恥を晒した甲斐が、あったというもの!』
既にこれ以上ない程の生き恥を晒していると思うが、ツッコミを入れるだけ野暮だろうか?
一夏が現実逃避をしようかと検討していると、立ち直ったのか黒いISのパイロットが溢す
『貴様、痛いな……』
「どっか行けバーカ!」
見れば鈴が待機形態のISに向かって怒鳴っていた、どうやらコアネットワークを介して通信しているらしい
『何だと……邪険に扱われるとは!ガンダムとは、死ぬことと見つけたり……!』
『何をやってるんだお前は!?』
まるでハラキリでもするかのようにビームサーベルを握る康太、すかさず一秋が止めに入る程である
『私は豆腐メンタリズムなガンダムだという事を忘れるな!』
『言ってくれなきゃ、分からないじゃないか……』
『熟知しているさ。だがしかし、敢えて言わせて貰おう。私が、ガンダムだ!』
お前の何処か豆腐メンタルだ、そうツッコミを入れようとした時だった、アリーナのピットから紅く発光する何かが飛び出す
『違あぁぁぁぁぁうッ!俺がァァァッ、ガンダムだッ!!』
それは先程自らをガンダムと名乗った青年であった、彼の機体が凄まじい速度で移動すると康太の機体の腕を斬り裂く
『俺がガンダムだ……』
『そうか……御免―――――ッ!』
「お前ら、何処かおかしいよ……」
「口にしなくても分かるわよ」
結局、何があったのか完全に分からぬまま、ぐだぐだと時間が進んでいくのだった
◆
その後、なんやかんやあって学園の外に出て訓練が行われる事となった
流石に人数が多いだけに部隊行動となるとアリーナだけでは足りなくなったのだ
そして予定されているポイントに向かう途中であった
『ガンダムガンダムガガンダム!ガガンガガンガン、ガガンダム!』
またしても無駄に良いリズムで意味不明な歌のようなものを口にしながらそれは現れる
というかさっき聞いたばかりの声である
「そこかッ!」
「待ちかねたぞ、少年!」
「やはり貴様か!」
先程撃破された機体から乗り換えたのか、今度はより鎧武者らしいシルエットとなった黒い機体で現れた康太、それに先程は紅く発光していた青と白の機体を操る青年が反応する
先程と違うのは康太だけではなく、その青年の機体にも背中に戦闘機のような物がドッキングしているところだろう、だが一夏は既にこの二人の相手が面倒に思えてきていた
「そうとも、この私、シドウガンダム!そして盟友が造りしガンダム、マスラオ改めスサノオ!」
そう堂々とガンダムを名乗るが、一夏はそれに対してツッコミを入れる
「ガンダムじゃない」
二つの目とV字アンテナがガンダムの特徴だと他ならぬ康太が言っていた筈だが、この男は何を言っているんだ、そう一夏がげんなりとしていると康太はある一点を示した画像を送ってきた
「とくと見るがいい。正しく、ガンダムだ!」
送られてきた画像はスサノオとやらの頭部の一部を拡大したものらしい、そこには『GUNDAM』と文字が刻まれたプレートが溶接されている
「と、言われても……」
それでガンダムなのかと一夏も思う、だが
「ガンダム……!?」
「刹那?」
「ガンダムだ!」
「お前は何処かおかしいよ……」
というよりは二人ともおかしい、だがそんな周囲の反応もお構い無しに二人は止まらない
「だが貴様は違う!貴様は歪んでいる!」
そう言って両腰から剣を抜き放つ刹那、対する康太も刀のような実体剣を組み合わせ
「歪んでいる―――」
「ガンダム!人呼んで―――」
「歪ンダム!!」
「よく言ったンダム!!」
そして二人にしか通じ合っていないノリで激突する、共に近接戦闘型であるだけに双方の剣が激しく火花を散らす
「私は純粋にガンダムという存在!」
「貴様はガンダムではない!」
「シドウガンダム!」
「絶対に違う!」
「何度言えば解る、だから私はガンダムで―――」
「―――ガンダムで、あるものかあッ!」
激しく繰り広げられる剣劇の舞台、明らかに狂人同士の会話なのだがそこで交わされる攻防は無駄にレベルの高いものであった
「埒が明かンダム……ならばガンダムとは、何だ!?」
「俺だ!!」
「フンッ、何を根拠に」
「そんなもの、あるものか!!」
「グッ、これ程とは……それでこそガンダム!!」
そして再び剣劇が始まる、最早勝手にやってろと二人を残して全員が移動していくのだった
◆
その翌日、一夏はまたアリーナのピットに居た
所属不明のISコアの反応が確認された為、何人かで正体を確かめに向かうのだ
ピットにあるカタパルトを利用し、何人かの機体が発進していく
一夏の前に居るのは刹那である
「ガンダム・刹那・
何か昨日名乗ってた名前より増えてるが一夏は気にしない、気にするだけ無駄と分かっているからだ
「織斑一夏、行きます!」
カタパルトに到着、そして掛け声と共に発進をしようとするのだが―――
「違う!織斑・ガンダム・一夏、出る!」
「なあっ……!?」
「織斑・ガンダム・一夏!」
「出来ねえよお……」
「お前はガンダムになりたくないのか?」
「当たり前だ」
「貴様は歪んでいる!!」
「俺は
発進するところから既に一夏は疲弊するのだった、主に精神的に
◆
なんやかんやあったものの無事に全員が発進したところで所属不明機に当たろうとする、だがそれより先に立ちはだかる者が―――
「そうとも、シドウガンダムである!」
「貴様かあぁぁぁぁぁッ!」
「そうですそうです、刹那・F・セイエイ、会いたかったぞ!」
「違う!ガンダム・刹那・FF・セイエイだ」
「ナンセンスだな!」
「貴様が言うか!」
恒例の流れとなりつつある康太の出現、流石に慣れたもので
一応、一夏だけがこの場に残り念のために待機となった、完全に貧乏クジである
再び剣劇を繰り広げつつ、鍔迫り合いになりながら康太は告げた
「少年!私は見付けたり……」
「何を!?」
「自らの歪みを断ち切るべく、私は武道を身に付けた。そうとも、武を得た紫藤。つまりはブシドー!」
「何ッ!?」
「そうとも、ようやく理解した!つまり私は、グラハム・エーカーという存在だ!」
勝ち誇るかのように告げる康太、一夏は既に半分以上を聞き流すようにしている
「人種が違う!」
「ゑ!?」
「貴様は日本人、アメリカ人ではない!」
「オオオォォォォォォォォォォッ!!」
何故か康太のスサノオの頭部が砕け散る、そして機体を翻すと捨て台詞を残してそのまま何処かへと去っていく
「覚えておくが良い!」
「とんでもねえ馬鹿だ……」
どうやって収拾つけるんだこれ、というかアイツは何がしたかったんだ、と一夏は思う
だが深く考える必要はないと先に向かっていたメンバーと合流する
そして所属不明機と接触するという時に刹那とそのオペレーターが恋仲のようにも思える会話をしていたのを聞いた後、何処から飛んで来たのか分からない巨大なビームに巻き込まれて一夏は死んだ
◆
「ていう夢を見たんだよ」
「何よそのカオス過ぎる夢……」
いつも通りの日常を過ごす一夏は学園の食堂で朝食を食べていた
そして今朝見た夢の事をたまたま一緒になった鈴に話していたのである
そのあまりに荒唐無稽かつ混沌とした内容に鈴の頬は引きつっていた
特に康太の変貌振りが凄まじい、秘密は多いがそのような狂人とも言える振る舞いはなかったので、何があればそこまで変化するというのか
「本当、夢で良かったよな」
「そうね。それと、自分が死ぬ夢は縁起が良いみたいだから良かったじゃない」
「そういや何かそんな話聞いた事があるな」
「何の話をしている?」
と、そこに背後から聞き慣れた声、件の康太の声が聞こえてくる
どうやら康太も朝食をとりに来たようだ
「聞いてくれよ、康太。今朝見た夢なんだけど、康太が仮面を着けててな」
「ほう、それはもしや、このような仮面かな?」
その言葉に一夏は背筋が凍る思いだった、そしてゆっくりと振り返り後ろに居る康太の姿を確認する
そこに居たのはIS学園の制服を陣羽織風に改造し夢で見たものと全く同じ仮面を着けた康太の姿だった
続かない(断言)
という訳で悪ふざけ回、あの伝説の神MAD動画こと「武力介入できないCBシリーズ」の一部をこの小説のキャラに当て嵌めてみました
あの当時、誰がグラハムガンダムが本当に公式化されると予想出来たのか、最近見返してみましたがやっぱりカオスですね
なお今回の話は本編とは全く関係ないです、次回から何事もなかったかのように真面目に進行していきます
この話を書いた理由?こんな御時世だからはっちゃけたかったんです、赦して下さい