それと―――
コウタ「この世界は歪んでいる。神のせいか、それとも……」
作者「ISのせいです」
アメリカ西海岸にある代表的な州であるカリフォルニア、海に面しているこの州の海岸沿い、道路が通っている近くの崖に一人の男が居た
全身を黒のパイロットスーツで覆い頭はスモークシールドのされたヘルメットと、一切の露出がないその人物は今しがた沖に一キロ程の位置に停泊している船から海に潜り、潜水服としても使えるパイロットスーツを利用して誰にも見つかる事なく崖下に到着、高さ十メートルはあろうかというその崖を命綱も無しによじ登って来たのだ
道路が近く誰かに見付かる可能性もある中で比較的背の高い草が生い茂っていた場所を選んだその男は姿勢を低く保ったままISのコアネットワークを利用し通信を行った
「此方
『予定通りだな、ブランクがあるとは思えん。えっと、この台詞は本当に必要なんでしょうか?』
「その辺りは博士の悪ふざけだろうな。オレでも知ってる有名ゲームの台詞だった筈だ」
無事に崖を登りきった後で連絡する際の符丁としてゲームの台詞を使用したのは彼と通信を行う彼女の上司でもある一人の天災の悪ノリだった
しかし海から崖を伝って潜入する、ISに頼らない動きを行っているのは米軍による探知を避ける為だ
そしてそんな無茶な入国を果たしたのは今回の任務が明らかな違法行為であると理解しているからである、何処に違法な研究所を破壊しに来たと申告して入国する者が居るというのか、男は正規の手続きを踏まない不法入国という手段で自由の国アメリカの地を踏んでいた
『では、気を取り直して。今回の目標は第一に研究所の所在の確認。第二に研究所への強襲になります。米軍へ察知される事を避ける為に第二段階までISの使用は厳禁。第二段階完了後は被験者を確保していた場合はその護送を行います。その後、第三段階で離脱になります。予想では研究所に車両があると考えられています。ですから被験者を保護する場合はその確保も忘れないで下さい』
「ああ、分かってる。移動中もずっと頭の中に叩き込んでいたからな」
『私は今回ノッセルからサポートのみになりますので、どうかお気をつけて、コウタさん』
「了解した。SNARK、作戦行動に入る」
そう言ってSNARK、紫藤康太は行動を開始した
◆
上陸地点から移動した康太は初めの内はISが使用出来ない為に足として用意されたバイクを拡張領域より取り出す
その際に周囲から見えないように隠れ、タイミングを見計らってバイクを押していく
崖の方は特に柵があったりする訳ではないが海が一望出来る高さはある、なので傍目から見れば海を眺める為に道を逸れていたように見えるだろう
そして道路の端に着いたところでエンジンを吹かして跨がる、カワサキ製ニンジャH2、それが今回の足として確保されたバイクである
日本ではレース専用車のみで市販モデルは正規で販売していない車種であり入手には海外から逆輸入する必要があるそんなバイクが選ばれたのは性能の高さからである
通常はリミッターが掛かっているもののその最高速は優に時速300kmを超える、そして当然のようにリミッターは外してあった
流石に目立たない為にそのような速度を出す事はないが康太は慣れた様子でバイクを操作して道路を走る
当然ながら本人はアメリカどころか運転免許を持たない為に無免許運転になるのだが不法入国の時点で今更である、そんな康太が自然な手付きでバイクを動かせるのは以前からISが展開不能な場合の逃走手段として叩き込まれたからであり、イギリスへの教導の際にも使用したシミュレータの導入によりその技量は主に訓練中に悪ノリして難易度を上げまくった何処ぞの天災兎のせいで更に高まっていた
他にも車くらいは動かせるようになっているのだが今は関係ないので置いておく、そして機動性が大事という事もバイクが選ばれた理由である
康太はバイクに乗って道なりに北上していく、それから一時間程度走っていると大都市の姿が見えてくる、アメリカ西海岸でも随一の都市、サンフランシスコである
街中に入った康太もその都市の華やかさに思わず目移りする、急な坂道やそこを走る路面電車といった風景は観光地としても有名であり、海に目を向ければサンフランシスコ湾に有名な刑務所のあるアルカトラズ島が見える事だろう
任務でなければ観光で来たかった、事故を起こさない程度に周囲の様子を眺めた康太はそう感想を漏らしながら目的地へと向かう
そしてサンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジを渡り、アメリカで最も危険な街とも呼ばれるオークランドに足を踏み入れたのだった
とは言っても直ぐにスラム街が広がっている、という訳ではない
此処は海運で重要な役割を果たす場所でもあり昼間はまだ比較的安全である、夜や路地裏といった場所に近付かなければ無事で済む事も多い
しかし一番治安が悪化しているウェスト・オークランドでは現在頻繁にマフィア同士の抗争が行われている
1960年代から悪化し始めた治安は近年は改善傾向にあった、だがとある事件を切っ掛けに再び治安が悪化する事となったのである
それこそが『白騎士事件』、ISが絶対の兵器として君臨する事になる出来事だ
直接的に影響があった訳ではない、だがISの兵器としての有用性を世界に知らしめたその影響は世界を変えるには十分過ぎる出来事だった
ISの存在により増長した女尊男卑の流れ、過激化する女性権利団体の増加、そういった社会の流れからやがて企業の中に『男だから』という理由で解雇するという事例が現れる
当然ながら抗議しても聞き入れられない、そして数が多くなると政府が対応しようとも浸透していた女性権利団体の手の者が妨害を行い対策が遅れる
働ける人材を手放した企業は業績が悪化、それに対して更に男性社員のリストラを行うという動きが全てではないが少なくない数、起きたのだ
そうして理不尽な失業から薬物に手を出す者が増加した、その市場に目を付けたマフィアは薬物の流通量を増やす
多額の利益が見込める状況、そしてオークランドは海運の要とも言える土地である、大量の薬物を密輸するのに適していたし、ISの登場以前から警察も夜間のパトロールは躊躇うような土地だった為に薬物の売買で都合が良かったのもある
結果、マフィア達の間でオークランドという土地の価値があがり利益を独占しようと抗争も激化し治安が急速に悪化した
加えてISの台頭により通常兵器の軍縮も行われる事となる、それによりリストラされた元軍人達が溢れる事となり、彼等もまた薬物に溺れたり、中にはマフィアの武力要員として雇われたりする者が一定数現れる事になる
マフィアに雇われた者達が訓練を行う事で素人だったマフィアの武力要員は高度に組織化され、更には軍縮の流れで廃棄される筈だった武器が横流しされ、警察の手に負えなくなる
しかし組織化された事で理性的な行動が出来るようになったお陰で無闇に民間人を巻き込むような事は起きなかった、勢力を拡大した事で軍隊が派遣されるのを恐れたマフィア達の暗黙の了解として広まっていたからだ
その間に各マフィアは政府の要人とも独自に繋がりを持つようになる、そうしてマフィア達は余程の真似をしなければ手出しされる事のない地位を手に入れた
後は余計な同業者を排除すれば栄華は約束されたも同然、そう確信出来る状況なだけに複数の勢力が入り乱れたこの地は規模こそ大きくはないが銃声が途絶える日はないのである
「これも女尊男卑の弊害か……」
メインストリートは特に問題ないように見えて歩道を見れば一人か二人は地面に転がったり壁に凭れかかって無気力そうにしている者達の姿が見えていた
先程まで見ていたサンフランシスコとたった13km程しか離れていたいにも関わらず対岸のそんな有り様を眺めつつ康太は小さく呟く
目的地へ向けてバイクを進めメインストリートから離れていく程にそのような光景は増えていく、中には薄汚れた服を着た子供達の姿もある
ここ数年で急激に増えた、生まれた子供が男だったからと、女児であってもIS適性が低いからと親から捨てられた子供達
救いたいと康太が願ってもその数は膨大だ、故に康太では救えない、なら初めから手を差し伸べたりしない
そこまで考えて康太は自嘲する、それでも被験者となっている子供達は助けるのか、彼等もまた恵まれない子供達じゃないのか、と
「結局は自分の為のエゴだな」
そもそもが偽善だと分かっている、そんな事をしても世界が変わりはしないと
この土地にも残留思念は残っており康太はそれを感じている、以前のように呑まれる事はないがその訴えは聞こえている
薬物の使いすぎで死んだ者、抗争で死んだ者、生き延びれなかった子供達、様々な者達の声が聞こえるが最終的には女尊男卑に対する恨み言に帰結する、ISさえ生まれなければこんな事にはならなかったと言っていた
「世界を変えたい、か。ソレスタルビーイングではないが、確かにこれは変えたいと願っても仕方ないな」
フォン・スパークがヴェーダからの情報のみでなく己の目で世界を見て回る事に拘った理由も康太には理解出来ていた、これは直に見なければ分からない事だと
しかし康太はそこで思考を切り替える、予定していた地点に到着したからである
考え込む事は止めて任務に集中する、康太は建物と建物の間ににバイクを進める
その間隔は狭くバイクがギリギリ入る程度しかない、そこを中頃まで進んでから一度バイクを量子化しようとし、子供が数人居る事に気付く
流石に目の前でバイクを量子化すれば怪しまれる、それがIS絡みだと気付かれると面倒な事になる、だから穏便に追い払おうとした時に背後から近寄ってくる足跡に気付く
「へ、へへ、随分高そうなバイクに乗ってるじゃねえか。それをこんな路地に持ってきてよ。俺が何を言いたいか、分かるよなあ?」
康太が振り返れば男が手にあまり整備された様子のない拳銃を持って立っており、康太に英語で話し掛けてくる
多くの国から留学生がやって来るIS学園に在籍しているとはいえ学園が日本にある事から日本語を使っており、その関係でISパイロットの間では日本語が共用語となっている
その為に先日のイギリスでの教導も康太は日本語で話していた、そんな彼に英語で語り掛けても意味は通じない―――
「
―――事はなくアメリカ英語とイギリス英語の中間の辺りの発音をするカナダ訛りの英語で丁寧に答えた、この男、実は話せるのである
対する男は激昂し持っていた拳銃で康太を撃とうとする、どうせ殺しても此処では珍しい事ではない、血を洗い流してからバイクを売り捌けば良い、薬物で目の焦点がやや定まらない状態で理性的な判断があまり出来なくなった男はそう考えていた
狭い路地裏で響く銃声、だが撃たれたのは銃を持っていた筈の男だ、その拳銃を握っていた手の方の肩を撃ち抜かれている
「ぐ、ぎ、あぁぁぁッ!?」
「何の備えもしない訳がないだろう、間抜けめ。これ以上オレの銃の機嫌が悪くならない内に消えるんだな」
相手が銃を向けるよりも早くホルスターから抜いた銃を構える康太、今回の任務に限りエウクレイデスにあったソレスタルビーイングのパイロットスーツならば撃たれても特に問題はないのだが、わざわざ撃たれてやる必要もないので早撃ちで倒したのだ
この場で殺しても誰も気に留めない、それは男に対しても同じであり撃たれた肩を押さえて足を縺れさせながら逃げていく
それから康太が視線を正面に戻すと先程の子供達は路地の向こうから此方を覗いており、康太が視線を向けると素早く逃げていく
そんな子供達の手にも様々なナイフが握られていたのを見た康太は深いため息を吐いた
「全く、嫌な世界だ……」
だが結果として目撃者は居なくなったのだ、康太はバイクを量子化し任務を続けるのだった
◆
「此方SNARK、第一段階の目的地に到着。偵察行動を開始する」
『了解です。ISの一部使用を許可します』
「了解」
建物と建物の間で手足を伸ばして体を支えながら屋上に登った康太はそこでノッセルで待機しているクロエに状況を報告した
そのクロエから許可を得た事で康太はISを部分展開する、今回はセンサーユニットを装備するEWACジェガンの腕である
そんなセンサーユニットを向けている先はメインストリートに近い位置にある大きめのレストラン、その裏口だ
一見すると何の変哲もないように見えて経営しているのは今回の目標である研究所と繋がっているマフィアであり、その地下で人身売買のオークションが行われるのである
距離にして1km程は離れているがISの、それも索敵に特化したEWACジェガンのセンサー系であれば目と鼻の先である
そうして暫く待機していると一台の大型トレーラーが停車した
荷台には運送会社のロゴが描かれ、運ばれていく荷物も野菜などの絵が入った大きめの段ボール箱であり、一見レストランで使う食材を運んでいるかのように思える
だがセンサーユニットはその中の生体反応をしっかりと捉えていた上に、その反応を解析すると体の中に様々な機械が埋め込まれている人間の少女だと判明する
「ビンゴだ。あのトレーラーをマークしてくれ」
『はい。街中の監視カメラや人工衛星にアクセス、進行ルートを押さえます』
ヴェーダの演算、情報処理能力を利用してネットワークに繋がっている監視カメラ等からあのトレーラーが来た場所を探る
とはいえ完全ではなく、監視カメラの無い場所や人工衛星が通っていない場所までは終えない、運が良ければ最後まで追えるが、今回は追えなかったらしい
『駄目です、ルーカスバレー保護区の辺りで足取りが消えました』
「そうか。まあ地域を絞れた辺りで十分な収穫か。最悪、EWACジェガンで探査すれば見付けられるだろう」
少なくとも広いアメリカの中でそこまで割り出せたのは幸運である、時間さえ掛ければ問題ないと康太は判断する
『これからどうしますか?』
「引き続きトレーラーの位置は追ってくれ。オレは連中に仕掛ける」
『大丈夫ですか?』
「一人だけだが被験者を見付けたんだ。確保出来るならしておきたい」
そう言うと康太は二つのコンテナを拡張領域から取り出して担ぎ、建物の屋上を駆け抜けた
◆
康太達が見張っていたレストランの裏口、食材の搬入口としても使われる大きめの出入口の建物側では四人の男達が警備についていた
男達は手にM4A1カービンライフルを持っており幾ら治安が悪化した場所にあるとはいえレストランの警備にしては過剰な装備である、その為に表向きは一般のレストランを装っている事から怪しまれない様に建物内で待機しているのだ
とはいえこのレストランにこの街でも大きめのマフィアのボスが出入りしているのは周知の事実となっていた
レストランとマフィアの繋がりが分からなくともマフィアのボスのお気に入りの店、そう判断されるだけで強盗の類いは狙うのを避ける
逆にそのボスを狙う敵対する組織が襲撃してくる事もあるがその際は直属かつ精鋭の護衛が片付ける、どちらにしろ男達の出番は殆んどない
なので今も気を抜いて雑談に興じている、出番があるとすれば無知な間抜けの強盗が来た時くらいで、その時は米軍が廃棄した物を横流しの武器と防弾チョッキで出て蜂の巣にすれば良い、それで金も女も、そして薬も手に入る楽な仕事だ
だから彼等は初め気付かなかった、その裏口から隠れる様子もなく堂々と、まるでそれが当然、自分も関係者だと言うように通り抜けようとする康太の姿に
スモークシールドのフルフェイスのヘルメットで見慣れない格好に、背中に見たこともない型だがライフルを背負って右腰の辺りにもサブマシンガンを携えていてまず通してはいけない人間だ
だが堂々とし過ぎて実は連絡を見逃してただけで来客の予定があったのではないかと他の仲間達と顔を見合わせる、そして誰もが首を横に振ると大慌てで手に持っていたカービンライフルを突き付ける
「お、お前ッ!何も―――」
一番近くに居た男がヘルメットの部分に銃口を向ける、だが康太はその銃口を左手で下から押し上げると男の懐に飛び込み右掌で男の顎を打ち据え、次の瞬間には両手をその頭に回して首を捩り折る
「野郎ッ!」
仲間が殺された、それを理解した他の三人はカービンライフルをフルオートで発砲するが康太は今殺したばかりの男を楯にする、防弾チョッキと死体に阻まれた銃弾は康太に当たる事なく防がれる
そして男達が弾切れになった瞬間ホルスターから拳銃を抜き素早く男達の眉間に銃弾を叩き込む
幾ら防弾チョッキを着ていようとも頭は剥き出しである為に意味はない、崩れ落ちていく男達を尻目に康太は先に進む
ふと監視カメラを見付けたが直ぐに視線を戻す、その辺りのセキュリティは既にネットワークから侵入したクロエにより掌握されているからである
康太は音を立てないように進む、目的の被験者が居る場所は監視カメラのログから割り出している為にその動きに迷いはない、ヘルメット内で身に付けている青いバイザー状のディスプレイにマップも表示されているから尚更だ
それに加えて康太には絶対的なアドバンテージもある
『通路先より三人、武装は何れもサブマシンガンです。少し前の通路に』
「了解」
掌握したセキュリティの監視カメラの映像から敵の動きを把握し、電子ロックの扉であればクロエが解除する
セキュリティを掌握しても先程の男達が派手に銃声を響かせたお陰で他のマフィアの構成員も何かが起きているのを察知していた
連絡がないのと、セキュリティが機能していない為に直接確認に向かった者達が近付いてくるのを事前に伝えられた康太は少し戻りに裏口に続く通路とは別の通路に隠れる
『3、2、1、今です』
そしてそれに気付かずに通り過ぎていく構成員達、それらが通路を通り過ぎた事をクロエが康太に教えると康太は陰から飛び出して構成員達を背後からサブマシンガンで銃撃する
その奇襲に対応出来なかった三人の構成員はそのまま通路に倒れ伏す、被験者を回収した後で退路に立ち塞がる事になるから予め排除されたのだ
それからも二度同じように構成員を排除した康太は被験者の居る場所まで辿り着く、他とは違い此処だけ電子的なロックの掛けられた扉だった為に康太が近付くとクロエが解除して扉が横にスライドする
康太がその中に入ると拘束衣に包まれ、大きめの機械の首輪を嵌められた少女が更にベルト付きの椅子に拘束されていた
「目標を発見。これより確保する」
『映像でも確認しました。ですが彼女の首輪は恐らく発信器などが仕掛けられていると思います。先に解除しましょう』
「分かった」
バイザー状のディスプレイに備えた小型カメラからの映像を確認したクロエからのアドバイスで首輪の解除を試みる康太
その為に少女に近付くと当然ながら少女は抵抗しようとするが拘束されている為にモゾモゾと身動ぎする事しか出来ない
そして康太も言葉で説明するよりは早いと何も言わずにUSBメモリのような装置を取り出すと機械の首輪の端子部分に近付ける
すると装置の方から端子の規格に形式を合わせ接続される、それから一秒も経たない内に首輪が外れて地面に落ちる
それからナイフを抜き周囲のベルトを切断していく、拘束をある程度解かれた少女は自由になった両手で舌を噛み切って自殺する事を防ぐ為に着けられていたマスクを外すと多少の警戒を滲ませながらも康太に問いかける
「あなたぁ、誰ぇ?」
多少間延びした独特な口調で話す少女、少なくとも被験者という事は戦闘用に鍛えたり改造されたりしていると思うのだが、どちらかと言うとおっとりした様子の彼女に康太は少しばかり驚きつつも手短に答える
「オレは……今はSNARKと名乗っておこう。少なくとも君と戦うつもりはない。余計なお世話かもしれないが、助けに来た」
「助けにぃ?」
「そうだ。人体実験を行う研究所を破壊したり、君のような被験者を保護したりしている」
「本当にぃ?」
「そこは簡単には信用出来ないよな。君が良ければ一緒に此処から出よう。強制はしないが、どうする?」
「行くよぉ。けどぉ、ちょっと聞いても良いぃ?」
「何だ?」
「わたしを連れ出した後ぉ、研究所には行くのぉ?」
「ああ、これから正確な位置を割り出して襲撃するつもりだ」
「そっかぁ。じゃあねぇ、その正確な位置を教えてあげるからぁ、わたしの友達も助けてくれるぅ?」
「友達?その子も被験者なのか?」
「ううん、その子は研究者だよぉ。でも無理矢理連れて来られたらしくてぇ、いっつもわたし達にごめんなさい、ごめんなさいって言ってたのぉ」
「成る程……その子の特徴は?」
「ミネッサちゃんって言ってぇ、一人だけ子供の研究者だから直ぐに分かると思うよぉ」
「分かった、ミネッサだな」
「うん、お願いねぇ。それとぉ、他の研究員はみーんな殺してねぇ。嫌がるわたし達を見て面白そうに笑ってたしぃ、特にわたしの事をイヤらしい目で見てたぁ、所長とかいう人は絶対の絶対ねぇ」
「お、おう……」
元より研究データ含めて目撃者は保護対象以外は全員排除するつもりだった康太だが少女の念の押しように少しだけ気圧された
「とはいえ取引成立だな」
「うん。あ、わたしはリリアナだよぉ、よろしくぅ」
だが取引は成立した、互いに合意した以上はこの場に留まる必要もない
だが康太はライフルを背中から手に持つと部屋の出入り口に向けて構え、扉が開くと同時に突入しようとしてきた男達に銃弾を浴びせていく
「まずは此処から脱出だな」
「そうだねぇ。武器拾ったからぁ、わたしも戦うよぉ」
「使えるのか?」
「バッチリぃ」
敵の持っていたサブマシンガン、MP7を拾い康太と同じようにマフィアの構成員達を的確に撃ち倒していくリリアナ
その様子に康太は感心し、強化兵士として改造されたのは伊達ではないかと認識を改めた
そしてそのままリリアナと共に敵を薙ぎ払いながら康太は地上へと駆け抜けていくのだった
因みに束さんの悪ノリの例
束「こーくん、ちょっとシミュレータで良いから生身で戦車撃破してみようぜい!」
↓
仮想とはいえ痛みのある例のシミュレータで歩兵用の武器で戦車に挑まされる
↓
何十回と死んだ後、バイクで機動力を補い戦車の機銃をライフルで無力化、戦車の主砲に捉えられないよう旋回しながら無反動砲で車両を撃破する
といった具合でした
なお今回の話、構想段階だと追跡してたトレーラーに尾行に気付かれて機銃で撃たれたのをバイクで回避、増援として呼ばれたヘリを相手にバイクとライフルで立ち回るという、お前何処のハリウッドキャラ?な展開があったりしました
因みにバイクがカワサキのニンジャH2なのは作者の趣味