ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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タイトルの通り戦闘メインですね、米軍も登場します


47話 研究所強襲

レストラン地下から抜け出し、バイクで道路を駆け抜け、意外と対応が早かった追っ手の車が三台程来て、防弾にもなっていないフロントガラスをライフルで破り運転手を仕留めて追っ手を撒いた後、康太達は一度移動拠点であるノッセルに帰還していた

 

といってもISを展開した訳ではなくクロエがノッセルを動かして崖下に来たところに康太達が崖を伝って降りてきたのだ

 

それからはまた一度沖に戻り、その中で改めた自己紹介という形となった

 

「改めて、オレはSNARKこと紫藤康太だ。一先ずは信じてくれた事、感謝する」

 

「クロエ・クロニクルと申します。今回はコウタさんのサポートをしていました」

 

「わたしはリリアナだよぉ。こっちこそ助けてくれてありがとうねぇ」

 

「色々と聞きたい事はあるが……まずは着替えるか。いつまでも拘束衣のままじゃあ大変だろう?」

 

「幾つかのサイズの服もありますから大丈夫ですよ。拘束衣は脱ぎにくいと思いますので私もお手伝いします」

 

そう言ってクロエはリリアナを連れて空いている部屋に入っていく

 

その間に康太は使用した弾薬の補充を済ませていた、とはいえ使った量はそこまで多くないので直ぐに終わる

 

次の戦闘では使用する場面があるか分からないが自らの生命線である武器の扱いが雑では赦されない、時間があるならと簡単に点検整備も行いつつ過ごしていると部屋からクロエ達が出てくる

 

「まともな服なんだか久し振りだよぉ。なんだか変な感じぃ」

 

そう感想を述べるリリアナの格好は白い無地のTシャツにカーゴパンツというラフな格好である

 

そしてクロエは着替えたりしていないのだが、康太にも目に見えて落ち込んでいるのが分かった、その原因も

 

「この歳であの大きさだなんて……私もあのくらいのサイズになるのは分かってますけど、それでも……」

 

クロエが自分の胸を押さえながらそう呟いている、そして何の事か分かってなさそうなリリアナだが、その胸には自己主張の激しい二つの膨らみがある

 

リリアナの体格は小柄な方であるがその部分だけが歳不相応とも言える状態に研究所の所長がリリアナにイヤらしい視線を向けていたと言っていた理由に康太は合点がいく

 

そして目に見えている地雷を踏みにいくほど馬鹿ではない為に話題を逸らす

 

「着替えたか。早速で悪いが研究所の位置を頼む」

 

「良いよぉ。それじゃあ空から見た写真ってあるかなぁ?」

 

「これで良いか?ルーカスバレー保護区の辺りで足取りが途絶えたのは分かってるんだが」

 

リリアナからの要求にノッセル内に作戦会議用という事で備えたモニター機能の台にルーカスバレー保護区周辺の航空写真を表示する康太、それを眺めるとリリアナは一点を指差した

 

「多分ここで合ってるよぉ。前にヘリコプターで運ばれた時、こんな感じだったからぁ」

 

「曖昧だな……けど、闇雲に探すよりは良いか。分かった、信じる」

 

「うん。それとぉ、ミネッサちゃんの事もよろしくねぇ」

 

「分かった。最優先で保護するとしよう」

 

「出来なかったらぁ、わたしも本気で怒っちゃうかもだからぁ、頑張ってねぇ」

 

「ああ。そういえば、他に被験者の仲間とか居ないのか?同じ時期に実験をされていた奴とか」

 

「もう居ないよぉ。みんな死んじゃったからぁ」

 

「そうか……悪い事を聞いたな」

 

実験に耐えられずに死亡した、康太はリリアナの言葉からそう判断したが気にした様子もなくリリアナは驚愕する内容を口にする

 

「だってぇ、みーんなわたしが殺しちゃったからぁ」

 

「……何だって?」

 

「最後の試験でそれまで残ってたみんなで殺し合ったのぉ。時間内に一人だけになれなかったら毒ガスでみーんな死んじゃうって言われたからねぇ」

 

「それは……」

 

「悲しかったけどぉ、みーんな死んじゃうよりは一人でも生き残った方が良いよねぇ。それでぇ、わたしも死にたくなかったからぁ、みーんな殺しちゃったんだぁ」

 

それはまるで蠱毒のような内容であり、それをやって笑ってられるリリアナの異質さを物語っていた

 

「そうしないと生き残れないならやるよぉ。だってスラムだとずっとそうやって生きてきたからねぇ」

 

「そうか……」

 

そもそも生まれ育った環境が違う、その為に形成された常識や倫理観に大きな隔たりがある、それを実感した康太はそこまでやる必要のある研究所に対して怒る事でその気持ちを誤魔化し、再び出撃するのだった

 

 

強化兵士を生み出している研究所で一人の少女が頭を抱えて自分のデスクに突っ伏していた

 

何もかもが嫌になる、それでも耳を塞ごうとも同じ研究所で働いている研究員達の話し声は聞こえてくる

 

「今日出荷されたのってL57だったか?」

 

「L57?ああ、あのやたら胸のデカかった実験体か。そうだぞ」

 

「そうか。実験の時、ちょっと触るの楽しみだったのにな」

 

「お前、そんな事してたのか?所長にバレたら怒られるぞ、真面目にやれって」

 

「その所長だってそういう目で見てたんだから良いだろう別に。それより、次の出荷予定の製品はどんな仕上がりなんだ?」

 

「まだ数が揃ってないから最終試験は先だろうな。けどそれなりの仕上がりにはなってきてる。データの方も期待出来るな」

 

そう言って笑い合う研究員達、そんな彼等の会話を耳にしながら少女、ミネッサ・トムソンは嫌悪していた

 

(イカれてる、コイツら絶対にイカれてるわ!)

 

ミネッサは今年で十五歳になった、その歳で大学を卒業し機械工学や生体工学、脳科学といった分野を博士号を取得している、所謂天才というものであった

 

だが大学を卒業した後は散々であった、何処の研究室もミネッサを引き取ろうとはせず、腫れ物扱いしていた

 

なのでミネッサの実績は全て単独でのものだ、それだけの頭脳があったものの、逆にそれが災いした

 

研究者達の間で年若い天才というのは忌避されるようになっていたのだ、その原因は稀代の天才にして天災、篠ノ之束という存在にある

 

ISという存在を独力で造り上げた能力は評価されている、だがその能力を評価させる為に『白騎士事件』を引き起こした点は当然ながらそれ以上に問題視されているのだ

 

それから年若い天才は危険だと見なされる傾向が強くなった、ミネッサはそんな風潮の犠牲者だ

 

それでも論文と、自らの修めた学問の全てを注ぎ込みミネッサはある発明をした、それらが博士号取得の理由となるのだが、それらは設計だけで止まっていた

 

ミネッサが発明したのは義手である、しかし従来の物と違い完全に生身の腕と変わらない程の使い心地となっている

 

IS技術の応用により脳から送られる電気信号のパターンを完全に解析、それらを送る為に義手と人間の神経を接続し、更に生身の腕と同じく動きを可能とした義手本体により使用者は生身と変わらない感覚で義手を動かせるようになるのだ

 

しかしその義手の設計を発表しても何処の研究室も取り合わなかった、その為にミネッサは予算も得られず設計だけで実際に義手の開発が出来た訳ではない

 

試作も出来ていない為に設計が良く見えても机上の空論、おまけに使用している技術は高い物が必要とされコストも嵩むとなれば企業も二の足を踏む

 

結果として彼女の研究は誰にも評価される事なく埋もれる事となるのだった

 

そしてそんな彼女に声を掛けたのが今の彼女が居る研究所である

 

その義手の技術は素晴らしいと、誰にも認めて貰えなかった中で声を掛けられた事で誘いに彼女は乗った、乗ってしまった

 

それが彼女の望む結果とかけ離れた場所であるとも知らずに

 

「とはいえ、L57が出荷されたのは惜しいな。いや胸とかいう意味ではなく、アレのデータはかなり興味深かっただろう?」

 

「そうだな。手足を改造する時に麻酔無しで手足切り落としても泣き言一つ溢さなかった。加えて戦闘能力も高い。これまでで最高傑作と言える仕上がりだったからな」

 

「だから出来るなら手元に置いておきたかったのに、上が早く成果を見せろとうるさいからな」

 

「全くだ。予算は潤沢だが、それさえなければ此処は良い職場だ」

 

訪れてみれば行っている事は子供を何処かからか調達してきて、その手足を切り落として義手義足に付け替えて生身の人間を凌駕した身体能力の兵士を生み出す事だった

 

そもそもミネッサがこの道に進んだのは歳を経るにつれて足腰の痛みに苦しんでいた祖母がまた趣味の登山を問題なく行えるようにという願いを込めてのものだった

 

残念ながら祖母は五十代という比較的若い時期に癌になっていた事もあり既に亡くなってしまったものの、そこから手足を失った人の為にという目標に切り替えたのだ

 

だが研究所はそれを兵器としての能力に転用した、子供の身でも常人を遥かに超える膂力が出せるなら被弾面積の縮小や暗殺時などに相手に警戒を解かせる外見、成熟していない常識、何より今の世界では実験体はスラムに幾らでも居るなど、様々な要素から子供が都合が良いとされた

 

手足を失った人々の為にと開発した医療用の義体が、自分よりも幼い子供達の健常な手足を切り落として出力の上げられた戦闘用の義体に取り替えられていく、それはミネッサの精神に大きな影響を与えるには十分過ぎる事だった

 

(殺す、この研究所に居る狂人共は全員殺す。例え、露見したとしても一人でも多く道連れにして殺す)

 

こんな研究所など存在してはならない、その想いでミネッサは研究所の食べ物や飲み物に毒を盛ろうと画策していた

 

幸いにもその材料はある、遅効性の毒になる化合物を調合して食堂で使われる材料に混ぜれば良い、その為の隙を探っているところだった

 

子供を実験体にする事に何の忌避感も抱かないどころか切り刻んだ時の泣き叫ぶ反応を楽しんですらいる狂人共を排除する為にミネッサは計画を練る

 

だがその時、研究所に大きな振動が広がる、アメリカでは地震が起きる事など滅多になく、そして連続して響く中に僅かな爆発音も聞こえて来ていた事から自然に起きる事ではないと理解する

 

ミネッサが手を下すまでもなくこの日、死神が訪れるのだった

 

 

リリアナからの情報通りの座標で空から見ただけでは分からないように偽装された明らかに人工物な扉を見付けた康太はトレーラーが数台は並んでも余裕がありそうな扉にジェガン・サーガのビームアサルトカービンで穴を空けた後、そこに腰のコンテナから取り出したハンドグレネードを設置して抉じ開けるという方法で研究所内部に侵入していた

 

それと同時に基地周辺にジャミング装置、散布した後で暫く滞留するミノフスキー粒子よりは滞留しないという理由でGNコンデンサーに散布装置を付けただけの簡易的な装置によるジャミングを行っていた

 

おまけにコンデンサー内部のGN粒子を使い切れば自爆するようになっているので回収の必要もなかった、構造も単純でありジャミング目的なので初期型擬似太陽炉のGN粒子でも問題ないのである

 

そうして無線で増援が呼ばれる事を防いだ康太は施設内部を進む、途中で見付けた端末にリリアナの首輪を外した際に使用した装置、コアネットワーク経由でヴェーダに接続する為のハブ機能を持たせた通信機により量子コンピューターからのハッキングでそのセキュリティも奪っている為に行動も早い

 

更には隔壁を降ろす事で研究所の人間が移動する事も防いでいた、彼等が叩いている隔壁が開いた時は康太が移動する時であり、彼等が死ぬ時だ

 

研究データもハッキングの際に吸い上げられており、その実験内容、子供達を兵器とする人体実験を行い最終試験と呼ばれる子供達同士を殺し合わせる性能評価の話も真実だと知った康太の手には一切の加減がない

 

『コウタさん、データの中にリリアナさん達に必要な化合物のデータがありました。成分の他に製法も一緒です』

 

「そうか、一先ずは安心だな。ミネッサという研究者の方は何か分かったか?」

 

『現在地より一つエリアを隔てた先です。直進すれば到着します』

 

「了解」

 

隔壁を通る度に現れる警備兵は康太により排除されていく

 

そんな中で最優先に確保する相手の所在を掴んだ康太はそのまま隔壁を通り抜けて進んでいく

 

『それと被験者達ですが、首輪には発信器の他に遠隔操作で電流や爆破する機能が盛り込まれていました。今は解除してあります。それと独房の扉も開いているので既に脱走が始まっています』

 

「そうか。人数は?」

 

『今の研究所内には五人の被験者が居ます。自由になった途端、警備兵を殴り倒して武装を奪ってますね。可能な限りで誘導しておきます』

 

「分かった。頼んだぞ」

 

『はい』

 

その子供達とも後から合流しよう、突然の自体にも関わらず的確な対処を行う被験者となった子供達をそう思いながら康太はミネッサの元へと向かうのだった

 

 

初めの振動と爆発音がしてから暫く、ミネッサは何が起きているのか正確な事は何も把握出来ずにいた

 

電子的に制御されている扉は動かない、端末を操作してみようと試みても恐ろしい早さで制御を奪われている為に操作を受け付けない

 

完全に閉じ込められる形となったミネッサ達、先程まで雑談をしていた男性研究員二名も同じ部屋に居るが扉を蹴りつけるばかりでろくな解決策が見付かっていない

 

そんな時、唐突に閉じられていた扉が開く、まだ蹴り続けていた研究員はその勢いのままつんのめり体勢を崩すが扉の向こうに居た相手にぶつかる

 

だが普通の人間ではあり得ない固い金属の感覚に血の気が引いていく

 

「ア、IS……!?」

 

それは康太のジェガン・サーガだった

 

今現在研究所で起きている非常事態、その研究員は目の前の存在こそがその元凶だと理解したが、既にビームピストルの照準が合わせられていた

 

心臓の位置をビームによって穿たれる研究員、先程まで話していた同僚の死に直面したもう一人は出口が無いのを分かっていても康太から少しでも離れようと背を向けた

 

しかし走り出そうとした時には無慈悲に放たれたビームが背後からその心臓を撃ち抜く

 

糸が切れたように倒れる男はそのままミネッサの近くに転がる、光のない瞳が見開かれており、それがミネッサと目を合わせる

 

「ひぃっ!?」

 

それが自分を見ている訳ではないと理解していてもミネッサにはその男がまだ生きている自分を恨めしそうに見ているように感じられた

 

そして不用意に悲鳴を上げた自分の口を咄嗟に塞ぐが視線を動かすと攻撃をしてきた機体の頭部が此方を向いていた

 

「ス、スナーク……」

 

通常のジェガンとは違い黒を基調としバイザー等のセンサー系は赤に変わっているその姿、何より赤い文字で肩にSNARKと書かれている機体、少し前にニュースにもなっていた存在に思わず声を漏らす

 

そして他の機種よりも歩行する事に長けている脚部でゆっくりと地面を踏みしめながらジェガンがミネッサに近付いてくる

 

その右手には未だに先程研究員を殺害したばかりのビームピストルが握られている

 

「あ、あぁ……」

 

自分も同じように殺される、目前に迫った死への恐怖とこのまま死ねばもうおぞましい実験が行われる事はないという頭の片隅に思い浮かんだ事実、それらがミネッサの許容量を超過した事で今のミネッサは泣きながら笑い、恐怖で失禁して自分が座り込んでいる床を濡らすという状態になっていた

 

そしてその手を伸ばせば捕まえられる距離に来たところでジェガンから機械を挟んだマシンボイスが聞こえてきた

 

『研究員ミネッサで間違いないな?』

 

「……えっ?」

 

唐突に呼ばれる自分の名前に多少の冷静さを取り戻すミネッサ、その事を理解するよりも早く再び康太は問い掛ける

 

『研究員ミネッサで間違いないな?』

 

「そ、そうだけど……確かに私はミネッサ・トムソンよ」

 

少なくとも直ぐに殺されるような事はない、そう理解したミネッサは問い掛けられた同じ質問に今度はしっかりと答える

 

『被験者であったリリアナより保護を頼まれている。同行願おう』

 

「リリアナ……もしかして、そのリリアナって金髪のショートヘアーで、体格の割りにふざけた胸の大きさしてる、あのリリアナ?」

 

『そうだ。必要なら中継しよう。彼女は今、我々が保護している』

 

「そう……お願いするわ」

 

自身の知っている名前、被験者として実験を行われていた歳の近い少女の名前を出されてミネッサは完全に冷静さを取り戻した

 

少なくとも彼女の味方なら目の前の相手は敵じゃない、研究員を殺害したがそもそもは自分が手に掛けるつもりの相手だったので仲間意識なども無いのだ

 

そしてミネッサが望んだ事で康太は通信を開く、康太の状況はノッセルの方で映像付きで把握している為に直ぐにリリアナが通信を代わる

 

『ミネッサちゃん聞こえるぅ?わたしだよぉ、わたしぃ』

 

「リリアナ!本当にリリアナなのね!?」

 

『うん、そうだよぉ。さっきまでミネッサちゃんが色々言ってたあのリリアナだよぉ』

 

「うっ……」

 

自身には全くないものを持っているだけにリリアナに多少の嫉妬はしていたミネッサはそこを指摘されて少し言葉に詰まる

 

とはいえほんの少しである、自分が色々な方法に手を出したりしているのに効果が無かったのにスラム育ちの栄養状況でどうやったらあのサイズに、等は思っていない

 

『大丈夫だよぉ、怒ってなんかないからぁ。ミネッサちゃんはそこでもわたし達にこっそりお菓子とかくれたもんねぇ』

 

「リリアナ……」

 

『だからミネッサちゃんも一緒にそこから出ようよぉ。わたし、待ってるからねぇ』

 

「ええ、直ぐに行くわ!こんなゴミ捨て場みたいな場所、今日限りで退職よ!」

 

実際にリリアナの声を聞いた事でミネッサの意思は固まった、このような機会を逃せば次はないからだ

 

「そういう訳だから保護をお願いするわ!えっと、何て呼べば良いのかしら?」

 

『今は任務中だからな、SNARKと呼んでくれ。顔見せは後でにしよう。今ちょっと厄介な事になった』

 

「厄介な事?」

 

『所属不明のISが急速接近中だ。ジャミングから此処の襲撃を気付かれたな』

 

ジャミングをせずとも無線で増援を呼ばれるのなら、通信で詳しい情報が伝わらないようにした方が良い

 

その為のジャミングであったが、そこで何かが起きている事に違いはないので確認の為に送られた存在だろうと康太は推測する

 

そしてクロエが米軍の動きを確認しても動いたように見える部隊が不明な事から表向きは存在しない事になっている特殊部隊の類いだと当たりをつけていた

 

「ちょっと、大丈夫なの!?」

 

『退路を塞がれた形になるから大丈夫じゃないな。だが閉鎖空間内での戦闘なら此方に有利だ。保護用のカプセルを展開しておく。手榴弾を喰らっても無事だから多少は安心出来るだろう』

 

「そう……頼んだわよ!」

 

『当然だ』

 

ミネッサの問いに自信を感じさせる声で答えた康太はカプセルを展開した後、通路を出口の方に向かって戻っていくのだった

 

 

上層部より特命を受けた米軍特殊部隊『名も無き兵たち(アンネイムド)』で『隊長』と呼ばれている女性は詳しい情報を与えられずに現地に派遣されていた

 

その事に疑問はない、『need to know(必要なだけ知る)』、それは特殊部隊以前に軍人であれば基本とも言える事だからだ

 

敵は不明、だがISが投入されている可能性が高い、施設の人間は攻撃禁止、但し敵が人質に取る等の行為をした場合は迷わず諸ともに排除、短く簡潔に伝えられた命令に従うだけである

 

ジャミングによりハイパーセンサーにも多少の影響がある、電子戦にも既存の兵器を上回る能力を持つISにこれ程のジャミングが行える事は隊長にも予想外だったが任務に変更はない

 

セキュリティを奪われているのか開かない隔壁を破壊しながら進む彼女の駆る機体はファング・クエイクである

 

だがそれは代表的なパイロットであるイーリス・コーリングの機体とはかなり違う、サンドカラーではなく紺色に近いネイビーブルーに、特徴的な大型のクローは外され予備のナイフを格納する改造が施されたステルス仕様だ

 

だがステルス仕様といえどもISのパワーにより隔壁は軽々と破られていく、元より反乱に備えて歩兵用の火器を想定した隔壁はそこまで厚くないのだ

 

そしてまた立ちはだかる隔壁を破壊しようとした時、不意に彼女の進路上の隔壁が全て開いていく

 

それと同時に通路の奥から飛来したビームが直撃、ファング・クエイクのシールドエネルギーを削る

 

「クッ!?あれは、スナークか!」

 

頭部を狙った狙撃はシールドバリアで防いだ、だが正確無比な狙撃を行った相手を見て隊長は警戒する、それは単機でヴァルハラを壊滅させた事で軍からも警戒されている謎のIS、ジェガンの改造機であるSNARKだからだ

 

その機体が片膝立ちで機体を安定させビームアサルトカービンを構えていた、その事からこの施設を襲撃していた敵がSNARKであると隊長は把握する

 

加えて装備から見ても向こうは射撃主体、ファング・クエイクは近距離での戦闘を得意とする機体である事からまずは接近しなければ戦闘にならない

 

故に隊長は機体を加速させる、ISなら大した距離ではなく、多少の被弾は覚悟しても距離を詰める事を優先する

 

その間も狙撃が続き、その何れもが頭部や胸部といった人間の急所を狙ってくる為にシールドバリアで防いでも多めにエネルギーを消費してしまう

 

その事に気を取られた隊長は移動しながらアサルトライフルによる牽制を行い接近する、それによりSNARKも左肩に装備している小型のシールドを動かして防御を行う

 

SNARKが手に持つビームアサルトカービンは明らかに両手で保持する事を前提とした武装、片手で撃てなくはないがその命中精度は落ちる

 

だがSNARKの武装はなにもビームアサルトカービンだけではない、狙撃を諦め武装を右肩にマウントすると膝立ちになる為に床に置いていたビームサブマシンガンを手に取り先程までの狙撃とは打って変わって弾幕による攻撃にシフトした

 

更に隊長は知る由もないがジェガン・サーガのシールドにはセンサーが内蔵されており攻撃を防ぎながらも敵の姿を捉える事が出来る、それにより安定した姿勢と正確な照準によりファング・クエイクの被弾は重なる、ビームアサルトカービン程ではないが威力に優れたビーム兵器の連続被弾ははっきり分かるレベルでシールドエネルギーを削っていく

 

更にはビームの一部が構えていたアサルトライフルに命中、弾薬の詰まった弾倉が爆発し武装を失ってしまう

 

だが距離はかなり詰めていた、膝立ちで射撃をしていたSNARKも今では二本の足で立って射撃している

 

ならばこのまま押し切るとIS用の大型ナイフを抜いて瞬時加速を行う隊長、相手の武装は銃で高速切替(ラピッド・スイッチ)でも間に合わない距離になる

 

だがSNARKは左手で背部に備えているビームピストルⅡを抜くとナイフを受け止める、ビームコーティングが施されているだけでなく斧のように使用する事も考慮して作られているだけに頑丈なのだ

 

そして右手に握っていたビームサブマシンガンを床に落とすと右脚のホルスターからビームピストルを抜いて隊長へと突き付ける

 

完全な至近距離から頭部を狙った攻撃、咄嗟に後ろに下がろうとするが引き金を引く方が早い

 

ビームピストルとビームピストルⅡによる変則的な二挺拳銃による射撃、それによって更にエネルギーが削られ隊長の中に焦りが生まれる

 

完全に向こうのペースに乗せられている事から挽回する機会を窺おうとする隊長、だが距離を離してもどうにかなるという問題でもなかった

 

「しま―――ッ!?」

 

両手にビームピストルではなくビームサブマシンガンを二挺持ったSNARK、距離に応じて対応する銃を使い分けるジェガン・サーガによって先程の倍の弾幕を受け今度は距離を詰める間も無くシールドエネルギーを削り切られるのだった




表側に近いナターシャやイーリスよりも汚れ仕事として登場させ易かった『隊長』の出番でした

8巻の内容、束さん達が味方寄りなところに居るからね、こういう時じゃないと出番がないんですよ
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