遅れて申し訳ございません、次こそはもっと早く投稿できるようにします。
今回は戦闘メインの回になります
新学期が始まり生徒会に入ったり戦技研を立ち上げたりと様々な事があり、更には学園祭の準備などやるべき事は多いものの、やはり学園なので授業も普段通りに行われる
そんな訳でいつもの実機を使うISの実技授業の時間だ、とはいえ今回は訓練機を運び出してはいない、アリーナに新たに建設された地下に全員が集まっている
そしてオレはそこに設置された機械の操作を行っている、学園にラビットフット社が設置した新型シミュレーターだ
「設定完了、使用ステージはアリーナに設定。いつでも使えますよ、織斑先生」
「助かった、紫藤。まだ上手く操作を覚えて無くてな」
「自由度が高い分、設定項目が多いですからね。とはいえこれを使えばアリーナだけでなく市街地、砂漠、密林、水中、宇宙と様々な環境でISを動かしているような経験を積めますし、機体も壊れないので便利ですよ」
「そうだな。取り敢えず初回は慣れているアリーナで問題ないだろう。現実との差も体感出来るしな」
「個人的には色々な状況が再現出来るので戦術を考えるのが楽しいですね。まあ、電子で構成された世界だからかどうにも勘が鈍るような気がするんですが」
まだ導入されたばかりであり、その操作も割りと複雑なシミュレーターの設定を織斑教諭に代わって行い、後は実際にシミュレーターを起動するだけにする
実機を使わないと感覚のズレがあるように感じられるのが難点だが、市街地などは絶対に戦闘を行えない場所であり、対テロ戦闘などを想定した訓練などが行えるのは大きい
今回は初めてのシミュレーターを使った授業という事でアリーナを再現したステージを設定してある、その方がクラスの皆にも受け入れ易いだろうからな
「ああ、それとこのシミュレーター、結構な数、データ上ですが機体を登録してます。今回、オレはそれを使いますね」
「そうか。それは他の生徒も使えるのか?」
「使ってもいいですよ。ああ、当然ながら戦闘データは収集させて貰いますけどね。ウチも完全な慈善事業ではないので」
「そんな事だろうとは思っていたさ。さて、見ての通り今学期からラビットフット社より新型のシミュレーターが提供された。その為、これで授業を行っていく事も増えるだろう。では、実際に使ってみるとしよう。紫藤、続けてで悪いが実演を頼めるか?」
「分かりました。相手は誰にしますか?」
「ふむ、そうだな。織斑弟、お前がやってみろ」
「えっ、俺?わ、分かりました、織斑先生」
とはいえ実際にシミュレーターで何処までやれるのかクラスの皆は知らない、一年一組と二組の合同授業だが、この中で実際にシミュレーターを使った事があるのはラビットフット社の関係者を除けば夏休みで教導を行った時のセシリアくらいだからな
そんな訳でオレと一夏はシミュレーターに接続された楕円体のカプセルに入り込んでいく、色々改良されてシミュレーターを利用中の利用者の肉体を保護する為に用意されたものだ
ロックも掛かるし、もしもカプセルが外から開けられるような事があればシミュレーター中の本人に通知が行くようになっている
カプセルの中でオレは一夏の使用機体をユニコーンに設定しておく、オレは登録してある機体、ガンダムシリーズの中で主要な機体、主人公機やライバル機をメインとして登録してある機体の中からランダムで選出されるようにしてシミュレーターを起動、意識を電子の世界へと飛ばした
◆
シミュレーター自体は夏休みの間に完成した為、話には聞いていても実際に体験するのは初めてだった一夏は起動と同時に遠のいていた意識が覚醒すると自身の愛機であるユニコーンを纏った状態でアリーナのカタパルトに居た
その再現度は初めにシミュレーターと言われなければ気付かない程であり、実際に視界の端にシミュレーター中と表示されてなければ信じられなかったかもしれない
「おお、本当に本物みたいに動けるんだな」
軽く体を動かして調子を確かめた一夏、それが終わるとカタパルトに機体をセットし、アリーナへと向かう
そして空中で待機しているのだが、周囲を見渡しても康太の姿はなかった
まだ来ていないのか、そう思っていると向かい側のピットから一機のISが現れる、白を基調として青や赤が目立つカラーリングをし、頭部には四本の角を備えており二つの目のようなセンサーがある事から一夏はそれがガンダムである事を察する
しかしその機体は初めて見た機体であり、どのような戦闘スタイルなのか、その手に一切の武器を持たない事で推測する事も出来なかった
その機体を駆る康太は一夏と同じように空中の開始位置に着く、それから開始の合図であるブザーが鳴った事で両者は動き出した
だが一夏が空中でビームマグナムを構えたのに対し、康太は地上に降りていき、その足を地に着ける
そのまま仁王立ちをする姿に本当に戦う気があるのか戸惑う一夏、そこに康太の声が響く
「織斑一夏、貴様にガンダムファイトを申し込む!」
「はっ?えっ、ガンダム、ファイト……?」
「貴様もファイターであれば分かる筈だ!さあ、降りていざ尋常に、勝負!」
さていつもの様子とは随分と違うなあ、と一夏は思いつつも地上での戦いの康太が望んでいるのは伝わった事で一夏は同じように地上へと降り立った
それは地に足つけて戦う方が己の剣道の経験を大いに活かす事が出来る為であり、ビームマグナムを格納した次に背中からクレセントムーンを引き抜く
「では行くぞ、一夏!ガンダムファイト!レディィィィィィッ!!」
「ゴーッ!!」
康太のノリは一夏にはわからない、だが何故か言わなければならないという義務感のようなものに突き動かされた一夏は康太の呼び掛けに答える
合図と共にそのまま駆け出した二人は真正面からぶつかり合う、クレセントムーンによる上段からの振り下ろしを放つ一夏に対して康太はその場で回転、スラスターを加えた鋭い回し蹴りをクレセントムーンの刀身のに横から叩き込む
それにより攻撃を逸らされた一夏であるが、更に康太が一歩踏み込んだ事で剣の間合いより更に距離が詰められる
「おおおおおッ!」
「うわあああああッ!?」
そして繰り出されるインファイト、素早く繰り出される拳がユニコーンを打ち据え、一夏は咄嗟に後ろへと下がろうとする
「逃さん!ゴッドスラッシュ!」
「え、遠距離もッ!?ぐあっ!?」
だが康太により居合いのように振るわれたビームソードからエネルギーの斬撃が宙を舞い、一夏を捉えた
それにより空中で体勢を崩す一夏、その隙を逃さず康太は両腕を上に伸ばし、片膝を上げさらなる技を繰り出した
「超級覇王電影弾!!」
頭を除く全身を回転させながらエネルギーを放出する事でエネルギーの渦を生み出しそのまま敵へと突撃する技、見た目もさる事ながら初見で、体勢を崩した状態で対応出来る訳もなく直撃を食らった一夏は吹き飛び、地面へと叩きつけられる
仮想空間で擬似的に再現されているとはいえ、その衝撃で意識を朦朧とさせる一夏、そこにさらなる追撃が加えられた
地面に着地した康太の機体の胸部の装甲が開かれエネルギーマルチプライヤーが露出、背部のバックパックから伸びたエネルギー発生装置が展開し光の輪が発現する
「流派東方不敗が最終奥義―――」
そのまま両手にエネルギーを込めるように合わせ、右腰の辺りに移動させる康太、構えているとエネルギーが段々と蓄積されていっているのが分かった
「―――石破天驚拳!!」
蓄積されたエネルギーが極限まで溜まったのか、その両手を前に向けて伸ばすと同時に拳のような形をしたエネルギーが一夏へと迫り、大爆発を起こす
そのまま戦闘終了を示す文字が表示され、残心を取った康太と一夏は現実へと送り返される事となった
◆
「なんだ、お前としては真面目にやっていたつもりなんだろうが、アレはどうにかならなかったのか?」
「そう言われてもゴッドガンダムはああいった機体で、ランダムに選ばれた結果なのでオレにはどうしようもありませんよ」
「それはそうなんだろうが、他の生徒が使えるのか、アレは?」
「正直近接戦闘の中でも完全な格闘機体なので初心者にはオススメしません」
シミュレーターのデモンストレーションが終わった後、オレはシミュレーター前で正座しながら織斑教諭からの意見を聞いていた
正直オレも幾つも登録している機体の中からゴッドガンダムを引くとは思わなかった、相手が近接戦闘が得意な一夏でなければ苦労していただろう
あと流派東方不敗の動きは流石にアシストがあるようにされている、気の力を利用するとか普通の人間には出来ないからな
「ともかく、今のでは他の生徒に対して参考にならない。もう一度別の機体で頼めるか?」
「分かりました、ファイター系の機体は条件から外しておきます」
正直なところ、オレも他の生徒がゴッドガンダムを始めとしたGガンダムの機体を扱うのは厳しいと思う
なのでランダムに選ばれる機体の中からGガンダムの機体は除外しておく、そして次の対戦相手であるが―――
「紫藤、このシミュレーターは何人かで同時に稼働可能だったな?」
「はい、このシミュレーターだと最大二十人の同時接続が可能ですよ。『戦技研』の物は更に倍の四十人を予定しています」
「ふむ、ならばそうするか。オルコット、デュノア、凰、お前達もやってみるか?」
―――織斑教諭の指示で代表候補生の三人が選ばれた
が、その前に一つだけ聞いておかなければならない事があるな
「その前に、このシミュレーターはラビットフット社の量子コンピューターに接続してある。流石に他社の機体は正確なデータが入ってない。ISを一度接続すれば機体データを読み込んで再現可能になるぞ」
「そうなの?だったら読み込ませるのが先ね」
「いや、そっちの特殊兵装から機体構造まで全部抜かれる事になるから機密情報の保持という意味で慎重になって欲しいんだ」
織斑教諭の言葉に特に問題ないのかセシリアとシャルロット、鈴の三人はシミュレーターに接続しようとするのに待ったを掛ける
なのでオレの説明を聞いても危険性に気付かなかった鈴により詳しい説明をするとピタリと動きを止める
「それ、マジなの?」
「マジだ。一応、これまでの訓練時のデータとかを使って再現した機体はあるんだが、やっぱり本物との誤差はあるだろう。だから訓練なのに実機との誤差があるのは、正直どうかと思ってな」
三人の機体はラビットフット社の機体ではない為に正確なスペックや操縦方法が再現されているとは言い難い
だがそもそもその機体はそれぞれの国の、企業の物だ、その誤差を埋める為にデータを勝手に取るのは流石に憚られる
「ボクの機体はラビットフット社からの技術提供で完成した機体だから大丈夫だよ」
「私も、以前の教導の際に国から許可があったと聞いていますわ。なので私も問題ありませんわね」
尤もセシリアとシャルロットはその辺りはクリアしていた、片やラビットフット社との合作とも言える機体と、既にシミュレーターを利用した事のある機体だからだ
なので残るは鈴だけなのだが、やはり迷っているようである
「ぐぬぬ、私だけじゃ決められない問題ね……とはいえ本国に許可を取る時間もないし……」
「という訳で鈴、こんな機体があるんだが?」
「ん?何よこの機体?」
「これなら青竜刀もあるし、なんなら一部武装を外して二刀流にしても良い。初めて乗る機体で不安はあるだろうが、オレもランダム選出だから大丈夫だろう」
「んー、まあ良いわ、今回はこの機体を使ってあげる!で、この機体の名前は何て名前なのよ?」
「ふふん、聞いて驚け、『
「あら、『
こうして鈴の代わりの機体も決まり、シミュレーターが開始される
さて、次の機体は何が出てくるかな?
◆
以前にも体験した事のある感覚と共に仮想空間に降り立った事を自覚したセシリアはまず戦場となる場所がアリーナではない事に気付いた
そこは都市だったのだろう、だが幾つも並び立つビルは殆どが途中で折れ、地上にその瓦礫が散乱している
シミュレーターの設定を確認してみれば、その名称が『廃墟都市』となっている事からも確定だろう
「ですが、これならこれで好都合ですわね」
まずセシリアがこのフィールドを見て思ったのは広さだ、少なくとも数キロに渡って広がっているフィールドは遠距離からの狙撃を可能とするブルー・ティアーズに有利に働くだろうと予測していた
そして周囲を確認し、狙撃に適した場所を確保しようと考えていた時、コア・ネットワークを通して通信が入る、相手はシャルロットだった
『あ、通信は繋げられるみたいだね。聞こえてるかな、セシリア?』
「ええ、聞こえてますわ、シャルロットさん。それで、どのような用件ですの?」
『うん、実はこのシミュレーターの設定って今はバトルロイヤルになってるみたいなんだけど、折角なら共闘しないかなって思ってさ』
通信を繋げシャルロットと話すセシリア、その内容に少し興味を惹かれた事で続きを促した
「それはどういう理由で、ですの?」
『まず今回のシミュレーターだと、康太って新しい機体を使ってるよね』
「そうですわね。事前にそう聞いていましたわ」
『で、ボク達ってその機体がどんな機体なのか知らないし、向こうは知ってるよね。それから、機体によっては康太の戦闘スタイルがガラリと変わってたのはさっきのシミュレーターで見てたから、もし個別に当たって初見殺しとかあったら直ぐに落とされると思ったんだ』
「それは、確かにそうですわね」
言われて思い出すのは先程のシミュレーターでの様子、基本的に射撃の方が得意な康太が、その射撃を投げ捨てて超至近距離の格闘戦を行っていた様子だ
機体特性もあるのだろうが、明らかに率先して格闘戦を仕掛けに行っており、更には動きにも迷いはなかった事から、ランダムに選出された機体も乗り慣れていなくとも扱えない訳ではないと分かる
特に先程のシミュレーターでは一夏がその差に対処出来ずに一方的に敗北していた、そしてセシリアもまた仮にも代表候補生としてそのような結果を晒す事は望んでいない
結果、シャルロットの提案に乗ったセシリアは同じように鈴にも声を掛け、三対一でまずは康太と相対する事に決めたのだった
◆
特に康太に捕捉される事もなく指定した場所に集結する事が出来た三人は改めて互いの状況を確認していた
「ところで、新しい機体はどのような感じですの?」
「悪くないわ。情報を見てるだけでもこの装甲凄いわよ。実弾にも光学系にも高い耐性があって、おまけに電磁波とかを吸収するからステルス性もあるみたいね。武装も近接戦闘が得意な物で揃えてあるから問題ないわ」
「じゃあ作戦としては鈴が前衛、セシリアが後衛でボクが遊撃って感じだね」
この状況で一番の不確定要素は康太がどのような機体を扱っているかだが、次点で乗り慣れない機体を扱う鈴である
だが全身装甲という普段の機体と全く違う機体であっても動きが阻害される事もない事を確認した事で問題無しと判断した
そしてシェンロンガンダムに乗る鈴、ブルー・ティアーズに乗るセシリア、エールストライカーを装備したストライク・ラファールに乗るシャルロットと、機体特性からそれぞれの役割を決めた三人は索敵を開始する
普段のアリーナとは違い遮蔽物も多く視界が利かない中でセンサーを頼りに都市を移動していく
半壊しているビルとビルの間を飛行し、影すら見えない康太に対して嫌でも緊張感が高まっていく中で、気付けたのは偶然であった
縦一列に並んで飛行する中で一番後方に居たセシリアがふと視線を向けた崩れ掛けたビル、残っているビルの中でも一際高いそのビルの最上階付近が光ったと思った時には咄嗟に動いていた
「回避!!」
「「ッ!?」」
たった一言、だが殆んど本能的に動いた事で一歩遅れてではあるものの鈴とシャルロットは咄嗟に瞬時加速を行い離脱する
その判断は正しく、直前まで鈴が居た空間を始めとしてシャルロット、セシリアの位置までを薙ぎ払うかのように極大のビーム攻撃が通り過ぎた
もしもセシリアが気付かなければ今の一撃で終わっていた、そう思えるだけの威力に一瞬だけ血の気が引く思いの三人、だが直ぐに思考を切り替えると即座に今の狙撃地点を確認する
「捉えましたわよ!」
そして三人の中で一番センサーの性能が高く、狙撃に秀でているセシリアが康太の機体を捉える
ビルの内部、最上階より少し下の階で片膝を着き機体全高と同じくらいの長大なライフルを構える機体の姿を視界に入れると同時にデータベースがアップデート、康太の駆る機体が『ウイングガンダム』と表示される
「まずは接近するわよ!各自で接近、的を絞らせないように動きなさい!」
「なら私がお二人を援護しますわ!行って下さいまし!」
康太の狙撃地点まで凡そ三キロ、ISなら直ぐの距離であり武装の関係で近付く必要のある鈴とシャルロットが二手に別れて康太への接近を試みる
唯一射程距離に入っているセシリアのみその場で康太への狙撃を行う、回避機動を取ればその分だけ二人が楽になり、康太から撃たれる心配が減るからである
何より先程の威力を見るにチャージまで時間が必要となる、そう睨んでいたセシリアだが回避機動を取りつつ右手のライフルを自身へと向ける康太の姿にセシリアも回避機動を取る
だが康太の持つライフルから放たれたのは先程と同様のビーム攻撃であり、直撃こそ避けたものの余波だけでセシリアの体は大きく揺さぶられる事となった
「くうぅ、何て連射速度ですの!?」
体勢を崩されたセシリアが再び康太へと目を向ける頃には既にライフルを此方へと向け直していた、向こうも動きは止まっているのだが狙撃する余裕もなく回避に専念する事で再び放たれたビーム攻撃を回避する
だが時間を稼いだ事でシャルロットも射程範囲内に康太を捉えた事で連射性に優れたビームライフルを撃ち、回避行動に入った康太はそのままビルの裏手に回り込んでいく
「逃しませんわよ!」
それならそれでビルの裏手から出てきた瞬間に撃ち抜く、そう闘志を燃やすセシリアだが、康太はビルの壁を突き破り内部から現れる、その姿は先程までの二対の翼を持つ人型と大きく異なり鳥のように見える姿へと変貌していた
「鳥!?」
「可変機でしたのね。ですが、以前にも見た事がありますわ!」
思い出すのはイギリスでの教導の際に未確認機として現れた時の戦い方である
あの時は一撃も有効打を与える事が出来なかったが、今度こそはと精神を集中させる
その最中、ウイングガンダムの機体下部に吊り下げるように配置されているパーツの中で片方の中身が無くなっている事に気付いた
そしてその中身は良く見ればウイングガンダムの持つライフルに装着されており、それがカートリッジである事をセシリアは見抜く
スラスターが全て後方に向いた事で人型の時とは比べ物にならない速度で空を駆けるウイングガンダム、そのライフルから再び極大のビーム攻撃が放たれセシリアへと向かう
「此処ですわ!」
だが康太が攻撃に移る時こそ最大の攻撃のチャンスとなる、人型の時と違いバード形態になったウイングガンダムがバスターライフルを撃つには機首を標的に向ける必要があるからだ
その瞬間は康太の動きを完全に見切る事が出来る、そう判断したセシリアは康太が攻撃に移った瞬間に狙撃で返した
回避はしたが機体の左半身がビームを受け絶対防御の発動によりブルー・ティアーズは半壊する、だがスターライトMkⅢより放たれたレーザーは的確にウイングガンダムの残っていた予備のカートリッジを撃ち抜く
被弾と同時に切り離し距離を取る康太、だがエネルギーを物質化寸前まで縮退化させ詰め込んだカートリッジ三つ分の誘爆は激しく、咄嗟に変形して左手の盾を構えるも防ぎ切る事は出来ず、その機体に大きな損傷を負う
「一気に畳み掛けるよ!」
「ようやく私の得意な距離ね!」
そこに追撃を仕掛けるシャルロットと鈴、康太はバスターライフルに残ったカートリッジの内の一つを外すとシャルロットへ向けて蹴り飛ばす
狙いが分かったシャルロットは機動性を活かし全力で回避に移り、カートリッジを狙い放たれたビームが到達するよりも早く爆発の範囲内から離脱する
しかし距離を取る事になり鈴との連携は断たれる、鈴は構わずビームトライデントを右手に、獠牙と呼ばれるシールドに備えられた青竜刀型の武装を左腕に康太との距離を詰める
カートリッジを全て使い切ったバスターライフルを捨てた康太も同じようにシールド裏に懸架されていたビームサーベルを抜く、だがリーチと手数、どちらも鈴に軍配が上がり、切結ぶ度に微かではあるが損傷が増えていく
加えてシャルロットが地上で換装したランチャーストライカーのアグニを攻撃を背後から受け、スラスターを破壊され満足に飛行する事さえ覚束なくなってしまう
そんな動きの鈍った相手の隙を鈴が逃す筈もなく、獠牙の振り下ろしをまともに受けた康太は地上へと叩き付けられる
撃破を確認する為に鈴とシャルロット、そして機体が半壊しつつも辛うじて飛行が可能だったセシリアは康太が墜ちた場所へと向かっていく
そこには傷付き満身創痍な状態ながらも立ち上がるウイングガンダムの姿があった、だが機体が立つと康太は機体から生身で降りて来た為、三人は訝しく思いながらも警戒しながら距離を詰めていく
そして生身でも声が聞こえる位置まで近付いたところで康太は右手に握ったスイッチを三人にも見えるかのように前へ突き出す
「任務達成は不可能と判断。機密保持の為、自爆する」
その言葉にギョッとする三人、淡々と言い放った康太は何の躊躇いもなくスイッチを押すと、直ぐ後ろにあるウイングガンダムの胸部を中心に各部が光を放ち、次の瞬間には爆発した
その爆風から逃れた三人だが、煙が晴れた時、三人の目に映ったのは地面に叩き付けられ、瞳孔が開き切った目をして事切れた康太の姿であった
◆
「何故あそこで自爆した!?何故自爆した!?」
「
「お前の常識が周りの常識と同じだと思うな!他の生徒がトラウマになるだろう!」
あの後、シミュレーターを中断されてオレは現在シミュレーター前で織斑教諭に正座をさせられていた
だが、オレが何の覚悟もなく自爆したとは思われたくない
「伊達や酔狂で自爆したなんて思わないで下さい。他と違ってオレは痛覚軽減なんて施してないんです。文字通り死ぬ程痛い上で覚悟して自爆したんですから」
「尚更悪いわ、馬鹿者!」
「ギャンッ!?」
だが反論はあっさりと出席簿によって返される
まだ全身に自爆した時の痛みの余波が残っている中で新たに増えた頭の痛みに身悶えながらも、尚も反論させて貰う
「ですが痛みの無い訓練に意味なんてないですし、敗北すればどうなるかの覚悟も無いよりは良いじゃないですか」
「それはそうだが、やるにしても事前に心構えはさせるべきだ。突然画面にクラスメイトの死に顔が映った級友の事を考えろ」
そう言われて納得する、確かに事前に伝えておいた方がまだ気持ちの整理は出来るだろう、と
「分かりました、次からは『見ておくがいい、戦いに敗れるとは、こういうことだ!』と言ってから手榴弾抱えて自決します」
「それを止めろと言っているのだ、大馬鹿者!!」
「グラブロッ!?」
再び出席簿を頭に食らった事で再び身悶える事になってしまった
そんなオレを見下ろしながら、深い溜め息をつきながら織斑教諭はオレに問う
「もっとこう、普通の機体は無いのか?扱い易く、自爆もない機体だ」
「逆に多すぎて絞り切れませんよ。ああ、実際には作れるけど相手が居ないから作ってない機体ありますね」
「ほう、どんな機体だ?」
「超大型の追加パーツがあって大量のミサイルや巨大なビーム砲、大型ビームサーベルを備えて、核融合炉搭載の為にシールドエネルギーも無尽蔵、通常のISなんて十機束になっても敵わないような機体です。サイズもあって通常戦闘では使えず、もう艦隊相手ぐらいしか使い道ないんじゃないかって機体ですよ。開発コードは『わがままな美女』です」
「却下だ!何処が普通の機体なんだそれは!」
「でも今のところ臨海学校の件で真面目に開発が検討されてますよ、これ」
「確かに、それを考えればな……他には無いのか?」
「仮想敵としてMSでも使いますか?母艦含めてオレが指揮執りますよ?」
「ふむ、そういう方向性か。数はどれだけ出せる?」
「MSだけで三百機、後は母艦が戦闘します」
「まあ、普通では出来ない体験を出来るという点では有効か。で、お前が自爆したりする可能性は?」
「艦橋に乗り込まれない限りは指揮に専念しますよ」
「では最後のデモンストレーションとして、それを行うとするか。参加人数はどれだけ必要だと思う?」
「専用機持ち全員で良いと思いますよ。それを相手にするだけの戦術もあります。今後を見据えて多数の敵を相手にする訓練、そう思えば必要かと」
「良いだろう、これで最後だ。オルコット、デュノア、凰、さっきのアレの後でキツいかもしれないが、参加するか?」
此処まで色々と調整してようやく決定したところで織斑教諭が先程のシミュレーターに参加した三人を見る
三人は少し青い顔をしていたが参加するようだ
こうして、最後のデモンストレーションとなるシミュレーターに一年一組と二組の専用機持ちが全員乗り込む事になるのだった
???「私の道を阻むな!ゴッド・グラハム・フィンガー!!」
S「しゃっくりって100回出すと死んじゃうらしいよ」
N「もう99回目……」
S「アァ…オワッタ…!」
N「自爆するしかねぇ」
S「は?」
という訳で出てきた機体は半分ネタ混じりの回でした
なおこのシミュレーター、たまにコウタくんが歴代ガンダムシリーズの再現をして遊んでるとかなんとか
次回はコウタくんの指揮する部隊VS専用機持ちになります、タイトルは『教典に近いもの』です