ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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遅れましたが更新です。

今回は訓練メイン、リリアナの機体やシミュレーターの使い道の話になります。


62話 Zの鼓動

シミュレータールームに居た先客、それはミネッサとリリアナの二人だった

 

基本的に自由に研究をしているミネッサと、基本的に何か食べているかトレーニングをしているリリアナ、この二人は良く二人で行動している事が多く、訓練をする時は割りとバラバラな時間で利用している為に放課後の時間帯に会う事は少ない

 

なので今日会ったのも割りと偶然である、向こうにも今日はオレ達が来る事を伝えていなかったからな

 

とはいえリリアナの訓練にもなると思えば丁度良かったとも言える、いつもはAIかオレやクロエ、リナといった固定メンバーなので初めて戦う相手は新鮮に感じられる事だろう

 

リリアナの技量も一月とはいえそれなりに向上している、一方的に敗北するような事はないだろう、特に生身での戦闘経験の多いリリアナは戦いの素人という訳ではないからな

 

そんな訳で取り敢えずは自己紹介となった、以前夏祭りに行った際に一夏や一秋、箒やラウラとは会った事があるので、まだ会った事のない鈴やセシリア、シャルロットに会長などと挨拶を交わしていく

 

「あ、そうだったわ。頼まれてた強化装備、完成したから渡しとくわね。細かな調整もするから、今着てきなさいよ」

 

「お、完成したのか。分かった、何処にある?」

 

「大丈夫よ、持ってきてるから」

 

軽く自己紹介が終わった後、シミュレーターを始めようかというその時、ミネッサが唐突に思い出したようにそう言うと、何も無い場所から小型のトランクケースを取り出してオレに渡してくる

 

ISの拡張領域を利用した機能であり、ミネッサもまた作業用に自作したISを持っているのだ、コアだけは篠ノ之博士が与えたものではあるが

 

まあそれはともかく、取り敢えず受け取ったそれに着替える為にオレはシミュレータールームの隣に備え付けられているシャワールームにて着替えを済ませ、再びシミュレータールームまで戻ってくる

 

受け取った強化装備の見た目は全身をぴっちりと覆うような黒いスーツであり、背中には小さいながらもバッテリーのような物を背負う為のバックパックが備えられている、頭にもバイザーのような物を着用しているが様々な情報を表示可能にしている、全体的に着用した感覚としては多少厚く感じるものの、注文していた内容に対してはかなり薄く仕上がっていると思えるものだ

 

「康太、それは何なんだ?」

 

「ああ、これはな―――」

 

「コウタの注文を受けて私が作り上げた歩兵用強化装備、名付けて『強化服パワードサイレンス』よ!」

 

そんなオレの姿を見た一夏からの質問に、オレが答えるのを遮るようにミネッサが自信満々に答えた

 

「コウタからのオーダーで身体能力を向上させて防弾性と防刃性を持たせて、かつISの展開が難しい屋内での使用を前提として、何よりも普段から着用出来るような装備なんて無茶苦茶とも言える代物だったけど、こうしてきちんと完成させた私の自信作なの!」

 

「へ、へぇ……」

 

「一番外側に見える黒い生地はドクター・シノノノの開発した最新の防弾・防刃繊維を使用してるから対物ライフルでもない限り貫通はされないわ!加えてその一段下は衝撃吸収材になっているから歩兵のライフルくらい当たっても大した痛みは感じないわよ!そしてその下には私が開発した人工筋肉を採用する事で着用者の身体能力を超人レベルまで高める事に成功したの!それ等を動かす為のバッテリーは背中の小型バックパックに収めているわ。日常生活だと不便だから外せるけど、内蔵の小型バッテリーだけでも十分は稼働出来るから、それまでに追加のバッテリーを装着すれば問題ないわ!加えて屋内戦闘での使用だけど、手の中指の先に小型カメラを備えているから、そこから入手した情報をバイザーに表示出来るの!銃の方にも対応したカメラセンサーを取り付ければそれも表示出来るから遮蔽物に身を隠しながら正確な射撃も可能よ!その銃もバックパックの側面に懸架出来るようになってるわ!当然、コウタがISパイロットである事も加味して、コウタの持つISが待機形態で収集する情報も連動する事でバイザーに表示出来るの!そして一番凄いのはそこまでの機能を搭載しながらちょっと厚めのインナーってレベルまでコンパクトに纏めた事ね!これなら普段の制服の下に着込んでも問題ない、ドクター・シノノノには流石に敵わないかもだけど、天才たる私はスゴいって事ね!!」

 

「そ、そうなんだ。それはスゴいな、うん」

 

強化装備、正式名称は『強化服パワードサイレンス』というらしいが、その説明をミネッサは一気に捲し立てた為に一夏が引いていた

 

その間にオレは着込んでいる強化服の調子を確かめる、動いてみて体が軽くなったような感覚を感じ、更には軽く跳躍しただけで一メートルは跳び上がるという能力に感嘆の声を漏らす

 

それからは実際にISの中に量子化しておいた歩兵用の装備を取り出し、その全てを身に着けてみる

 

言われた通りにオレが使用しているライフルであるHK416とHK417は背中のバックパック側面に懸架し、普段から懐に収めている拳銃のGSRは右の脚にホルスターを巻いて仕舞っておく

 

加えて近距離での銃撃戦を想定して本来ならHK416との選択式にするUMP45をスリングで前に掛ける

 

体の方にはマガジンポーチを兼ねたタクティカルベストを強化服の上に着込み、前後二列横四列あるマガジンポーチにそれぞれのマガジンを詰めていく

 

続いてに左足、GSRとは逆の位置には同じようにマガジンポーチを巻き、そこにハンドガン用のマガジンを二つ収める

 

最後は左腰、そこにはそれまで身に着けていた銃とは違い刃物を携えている、鞘に収められているが見た目の刃渡りは三十センチといったところだろう、だがそんな刃の長さに反して柄は両手で握る事が可能な程に長い

 

これには理由があるのだが、実際に抜く必要もない今は説明する必要もないだろう、最近篠ノ之博士より渡された物だが、要はそれまで使用していたナイフの代わりである

 

空いているのは右腰くらいで、そこは状況に応じて薬品やらスタングレネード等を収めるポーチがあるが中身は入っていない

 

総重量は数十キロ、しかし強化された身体能力によりその重さを全く感じさせない事に感嘆しつつ、バイザーの方を起動

 

付属のカメラセンサーとやらを銃のスコープの横に装着すると、そのセンサーの映像がバイザーの一部に表示される

 

その状態で走れば普段よりも速く走れ、跳べば軽々と一階の屋根に飛び乗れるくらいには跳躍力も上がっている

 

「―――という訳で、この強化服から戦闘能力をオミットした簡易版を作成すればより低コストの物が出来るわ。装甲部分が必要なくなるからもっと薄手の物になるから楽に着込める、それこそ普段のインナーみたいに使えるわね。これを使えば現行のちょっと大きめのサポート機械なんかより嵩張らずに使えるから、介護の現場などで活躍が期待出来るわね。その他にも怪我なんかで筋力が落ちた人が日常生活を送りながらリハビリを行えるようになるし、良いこと尽くめだと思わない?」

 

「あ、ああ、そう思うぜ……」

 

なお、その間もミネッサの説明は続いていたらしく、一夏が頑張って相槌を打っていた

 

オレの方は一通り試したから銃は外していく、細かな調整とやらが残っているようだし、そろそろ止めておくか

 

「ミネッサ、調整は良いのか?」

 

「あ、そうだったわね。でもサイズはある程度の伸縮性があるから問題ないみたいね。残りはセンサーとISの連動だから、ちょっとIS借りるわよ」

 

言われてオレは自身のISの待機形態となっているドッグタグを渡す

 

それをミネッサは機材で少し作業をすれば直ぐに返され、受け取ったそれをオレは元の首の位置に戻しておく

 

「これで全部完了よ。強化服専用銃の方はもう少し掛かるけど文化祭までには仕上げておくわ」

 

「分かった。色々思うところはあると思うが、次も頼んだ」

 

「まあ、アンタなら悪いようには使わないだろうから別に良いわよ。けど、今度データの提出をしなさい。もっと最適化出来るようにしておくから」

 

「ああ、そうしよう」

 

ミネッサは以前の研究所で非人道的な実験に協力させられていただけにこういった兵器類は作らないのかと思ったが、結構乗り気で作ってくれた

 

それは自身の研究にも繋がるものだったからなのか、正確な理由は分からないがそうして生み出されたのがこの強化服だ、有り難く大事に使わせて貰うとしよう

 

「さて、少し時間を取らせて悪かったな。シミュレーターを始めようぜ」

 

「色々とツッコミたい事があるけど、一つだけ聞くわ。何でそんな装備作ったのよ?」

 

「そりゃ、文化祭の時の警備用だ」

 

「康太は何と戦おうとしてるんだろうね……」

 

なおシミュレーターを始める前に鈴とシャルロットからツッコまれたが力はあって困るものでもないからな、余計な敵が生まれる事はあるが無力よりはマシだ

 

「その強化服、私も頼めば作って貰えるかしら?」

 

「コウタのは正真正銘の一点物よ。新しく作るつもりはないわ」

 

それと会長が強化服に興味を示していたが、呆気なくミネッサに振られるのだった

 

 

大分遅れたものの、シミュレーターによる訓練が開始され各自で自分がやってみたい訓練をする事になった

 

それというのもラビットフット社に置かれているシミュレーターは特別な物であり、学園に置かれているシミュレーターには無い機能が追加されていたのである

 

それこそがミッションモードと、対エース戦モードの二つである

 

ミッションモードは決められた内容に沿って戦闘を行うものであり、様々なフレーバーテキスト等と相まってストーリー仕立てになっており、ミッションをクリアすると次のストーリーが現れる仕様となっていた

 

ぶっちゃけてしまうと康太が各ガンダムシリーズのストーリーを再現したものである、難易度も三段階あり、エースといった一部の機体のみIS仕様となる初級、一部の敵以外も多少のシールドバリアを使用してくる中級、全ての敵がIS仕様となる上級の三つがあった

 

もう一つの対エース戦モードはその名の通りガンダムシリーズに登場するエースパイロットをモデルにしたAIと、劇中の戦場を再現したフィールドで戦闘を行う事になる

 

これはミッションモードとは違い基本的に一対一での戦闘になる、例外は黒い三連星などのチームで一つのエース部隊となる場合などだ

 

そんな訳で各自興味のあるモードで訓練を行っている、だが通常の訓練を行う者もおり、そういった者達は康太と共にリリアナとの訓練を行っていた

 

そして今回、再現された青空、眼下に広がる海を眺めながら飛行する一夏と箒がその相手となっている

 

「一夏はリリアナがどのような機体を使うのか、聞いてはいないのか?」

 

「いや、俺も知らないんだ。会ったのも箒と同じで夏祭りの時が初めてだったからな。パイロット候補っていう事しか聞いてないんだ」

 

「そうか。しかし相手には康太が居るのだ、どちらにせよ油断は出来ぬな」

 

「そうだな。こうしてる今も、何処かから狙ってるかもしれないからな」

 

リリアナ自身の実力は未知数、だがこと戦術という点に於いて互いの機体を知り尽くしている康太が加わる事が重大な懸念事項として存在していた

 

先日のネェル・アーガマを使用した模擬戦に於いて光学兵器を封じ大量の実弾によって圧倒するという戦術のように、相手の得意な分野を潰してみせるような戦術を取ってくるかもしれない、その為に一夏達は警戒を強めている

 

そんな時である、センサーに反応が一つあり、真っ直ぐに二人の下へと突き進んできていた

 

それは康太の駆るジェガンよりも遥かに速く、リリアナの機体だと当たりを付ける一夏達、雲に隠れて姿が見えないものの、雲が光ったのを見た瞬間、左右に分かれる

 

直前まで二人が居た空間を貫く高出力な赤いビーム、それを追うようにして現れたのは戦闘機のようなシルエットを持つ青い機体と、その背に乗っているジェガンの姿だった

 

「サブフライト、システム?」

 

「兎に角追うぞ!また見失っては狙撃されるかもしれぬ!」

 

「あ、ああ!」

 

既存のどれとも違う形状のそれは新型のサブフライトシステムのように見えたが、どうにも違和感を拭えない一夏、だが直進を続け離脱していこうとする康太を逃がす訳にもいかないと箒が追い、一夏もその背を追う

 

しかし康太の乗るサブフライトシステムの速力は凄まじく、現行のISの中では殆んどの機体の追随を許さない程の速さを持つ紅椿でも少しずつ引き離される程だ

 

「何という速さなのだ、アレは!?」

 

「そこまでスラスターを使ってないように見えて、マッハ3を超えてるなんて!」

 

加えてジェガンが背後に向けて正確な射撃をしてくる為に二人は回避せざるを得ず、その分だけ速度が落ちた事で更に引き離されてしまう

 

完全に追いつけなくなった事で追撃を止めた二人は、今度は大きく旋回して再び此方へと向かってくる康太を迎撃しようと身構える

 

先程と同じように高速で近づいてくる康太の姿を見据えていた中、ある程度の距離が詰められたところで康太は武装を量子化すると両腰からビームサーベルを抜き二刀流で構え、それまで乗っていたサブフライトシステムらしき機体から飛び降りる

 

「狙いは私だな!」

 

そのままジェガンが自分に向けて接近してきている事を悟ると同じように二刀流で迎撃しようとする箒、一夏は何か引っ掛ける思いで康太が乗り捨てたサブフライトシステムに注意を向けていた

 

乗り手が居なくなったからか軌道変更する事もなく真っ直ぐに進んでいく青い機体、取り越し苦労かと思い始めたその時、スラスターを噴きながら制動を掛けたその機体の戦闘機然とした姿が崩れ去り、一秒にも満たない時間で人の姿を取ると機体全長程もある巨大なビーム砲を構える、その銃口の先には康太との鍔迫り合いを行っている箒に向けられていた

 

「箒!」

 

それを見て咄嗟に割り込みシールドを構える一夏、シールドに搭載されているIフィールド発生装置が稼働するのと引き金が引かれるのは殆んど同時だった

 

「一夏!?」

 

「無事か、箒!」

 

「あ、ああ……だが、今のは……」

 

「あの青い機体だ。あれは可変機、あれがリリアナの機体だったんだ!」

 

「な、何だと!?」

 

誤射を避ける為だったのかビームが放たれる直前には鍔迫り合いを止め離脱していた康太、それによりフリーとなった箒は一夏からの警告を受けて初めて背後からの攻撃に気付いたのだった

 

青い機体、一夏達は知らないがリゼルを駆るリリアナは攻撃が防がれたのを見ると直ぐに構えていたメガ・ビーム・ランチャーを切り離すとビームライフルを装備し、攻撃を始める

 

ビームライフルとシールドのビームキャノンから立て続けに連射されるビーム、それらもシールドで防いでいると背後よりビームサーベルを構えたジェガンが接近してくる

 

「一夏、後ろだ!」

 

「うおぁっ!?」

 

箒からの警告により咄嗟にシールドをそちらに向ける一夏、Iフィールドとビームサーベルが拮抗する、だが康太は首を振りながら頭部バルカンを発射する事でシールドのIフィールド発生装置を破壊する

 

それにより先程までの拮抗は無くなり、ビームサーベルがシールドを少しずつ切り裂いていく

 

すかさず一夏の救援に向かおうとする箒だが、そこに可変形態へと変形したリリアナのリゼルが射撃しながら突っ込んで来た為に足を止めざるを得ず、リリアナは康太の直ぐ近くを通り抜けるように通り過ぎていく

 

更にはその時に康太がビームサーベルを格納した右手でリゼルの主翼部分を掴み、そのまま引っ張られる形で離脱していく

 

置き土産とばかりに左腕のグレネードランチャーから二発のグレネードを一夏へと叩き込んだ後は移動をリリアナに任せ空いた左手に持ったビームライフルを一夏と箒に向けて撃ち続ける

 

その後も同じような一撃離脱を繰り返す戦法により翻弄され続けた一夏と箒、逃げに徹されては追い付く事は出来ず、移動を全て任せる事で射撃のみに集中する康太の命中率は高かった事により、やがてそのエネルギーを全て消耗し、燃費の悪い紅椿を駆る箒が墜ちた時点で近接戦による猛攻を二機掛かりで行われた為に一夏も程なくして撃墜される事となるのだった

 

後ほど、ミッションモードや対エース戦モードなどのシミュレーター機能を存分に体験していた鈴やセシリアといった代表候補生の面々も同じように康太とリリアナのペアに挑み、追い付けないならと狙撃でリリアナを落としたセシリアを初め、様々な手段で二人の連携を阻害するなど、貴重な経験を積んだリリアナは今日一日だけでも機体の動かし方を学んでいき、一夏達もまた様々な機体を相手に戦闘経験を積む事が出来たのであった

 

また、全員の動きを見て改善点などを指摘していく楯無の活躍もあり、それぞれに足りない物を見つめ直す等、有意義な訓練となっていた

 

 

なお、シミュレーターでの訓練を行った後日の事である

 

「紫藤、束の奴がシミュレーターにはミッションモードや対エース戦モードといった機能もあると言っていたんだが、本当か?」

 

「難易度高めに設定してありますが、ありますよ。ただ普通の学生レベルだとあまり練習にならないと思って廃止してます。代表候補生レベルでクリア出来るかどうか、ってレベルですね。ああ、アリーナに設置してあるシミュレーターでも本体と接続すれば利用は出来ますよ」

 

「ほう。ならどちらか試しに実演してみろ。それで希望者が居れば試しにやってみるとしよう。なに、代表候補生レベルなんだろう?多少は動けるようになってきたひよっ子達に体験させてみるのも悪くはない」

 

「うわぁ、スパルタ……調子に乗る前に叩き潰す気だこの人……コホン、ならミッションモードで、敵エースが出てくるので、可能なら一騎打ちに近いシチュエーションで条件設定して、ランダムに選出と…………あー、『第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦』かあ……確かに難易度は高いなあ」

 

ラビットフット社のラボで専用機持ち達がシミュレーターによる訓練をしていた事を束との世間話の時により伝えられた千冬がシミュレーターの機能に興味を示し、授業中に康太に実演を頼んだのである

 

ミッションモードが戦場を模していると言うことから、ISパイロットとしてそのような事もあるという事を生徒に伝えようとした千冬、康太が引き受けた事で行われたシミュレーターが開始される

 

宇宙への進出を果たした人類、しかし過酷な宇宙での活動の為に遺伝子操作により生まれたコーディネイターと、遺伝子操作を行っていないナチュラルとの対立が激化、コーディネイター側の勢力であるプラントが地球連合に対して独立戦争を開始、地球連合軍による核兵器の使用が為された『血のバレンタイン』などの出来事を含め戦局を軽く説明するプロローグと、ミッションの内容を説明するブリーフィングを挟んでシミュレーターが開始される

 

フリーダムと呼ばれた翼を持つ機体を操り戦場を駆け抜ける康太、ミーティアという巨大な拡張ユニットを使用しての殲滅力は千冬としても見事なものだと感心していた

 

核ミサイルの迎撃、第三勢力として圧倒的な戦力を誇る地球連合軍とザフトの両陣営と渡り合い、使用された巨大なガンマ線レーザー砲ジェネシスの破壊を目指すと、目まぐるしく戦況が変化していく中を攻略していた

 

核ミサイルを一発でもプラントに通したら失敗、ジェネシスの地球への発射の阻止と、やるべき事が多く確かに高難易度だと千冬は思った

 

しかしそれだけで終わりではなく、一機のISとの戦闘により康太はそれ以外の戦闘から離脱する事となった

 

灰色の装甲を持ち、大型のビーム砲とシールドを兼ねた大型ビームサーベルを装備し、背部の円盤状のバックパックから無数のビーム砲を射出しオールレンジ攻撃を行ってくる機体、プロヴィデンスと表示されている機体である

 

『また君か。厄介な奴だよ、君は!在ってはならない存在だというのに』

 

『何をッ!?』

 

だがその機体との交戦を始めてから、康太の声に熱が籠もる、このシミュレーターは味方との交信により個別に指示を出す事も出来るが、敵との交信は今回が初めてであった

 

『知れば誰もが望むだろう!君の様になりたいと!君の様でありたいと!……故に許されない。君という存在も!』

 

『僕は……それでも僕は!力だけが、僕の全てじゃない!』

 

『それが誰に分かる。何が分かる。分からぬさ!誰にも!』

 

オールレンジ攻撃を大型のミーティアを巧みに動かす事で避け、反撃として大量のミサイルを放ち、ビーム砲で攻撃する、その間にも康太と敵機は言葉を交わしていくのを見る内に、そもそも敵機がガンダムタイプであるのを見て千冬はミッションモードがそもそも康太の言うガンダムシリーズの再現だと悟った

 

それでも行われている戦闘は高度なものであり、現に同じくビット兵器を使用するセシリアは自身の成長に取り入れられるものが無いか、真剣な表情でモニターを見つめている

 

ならば多少は見逃すか、そう考え千冬はモニターに視線を戻す、加えて先程の会話の中であった言葉が千冬の胸に残っていた事もある

 

その後もミーティアに被弾し、武装をパージし、ビームサーベルを抜いて撃たれたビームを切り裂くといった高度な技術を見せる康太、だが大型であるが故に避け切れない攻撃もあり、遂には致命的な損傷を受けてしまう

 

本体であるフリーダムは無傷だがミーティアは使用不可能となった時、近くを救命艇が浮遊している

 

プロヴィデンスが、そのパイロットが笑いながら右腕に構えたビーム砲を救命艇に向け、ビームを放ち、それに手を伸ばす康太は間に合わない、だがミーティアより射出されていたシールドが偶然に割り込みビームを防いだ時にはモニターを見ていた全員が安堵した

 

だが次の瞬間には別の方向から放たれたビームにより救命艇は被弾、推進部に命中した事で誘爆し、爆散する

 

その爆発に煽られたフリーダム、それを見たプロヴィデンスは去っていく

 

その後、煙の中から現れたフリーダムは翼を広げ、その後を追う

 

フリーダムが発進した母艦を狙うプロヴィデンス、それに追い付きビームを放ちながら接近していく

 

ミーティアを失った代わりに小回りが利くようになったフリーダムとプロヴィデンスは先程よりも激しい攻防を繰り広げ、人類を否定する言葉と、可能性を肯定する言葉を交わしながら互いに被弾し、傷を負っていく

 

右手右足を失い、それでも戦意を衰えさせる事はなくビームサーベルの柄を連結しプロヴィデンスに肉薄する康太、対するプロヴィデンスも被弾し、その右腕は無く、幾つかのビーム砲、ドラグーンも失っている

 

『それでも、守りたい世界があるんだ!』

 

一度は避けられた、しかし直ぐに追い、ドラグーンから放たれたビームを頭部に受けながらも強引に突き進んだ康太は、そのままビームサーベルをプロヴィデンスに突き立てる

 

それと同時にジェネシスが発射、レーザーにプロヴィデンスが貫かれるもフリーダムは離脱する、だが誘爆した余波を防ぎきれず翼が折れていく

 

それでも何とか生き延びた康太、停戦を呼びかける通信が入ってきたところでミッションがクリアとなったのであった

 

「それで、あの会話は何だったんだ?確かにお前という存在と、その地位を羨む人間は多いだろうが、微妙に食い違っていただろう?」

 

「それはそもそものミッション、フリーダムのパイロットの設定がコーディネイターの中でも、『最高の能力を持った人間を創造する事を目的として生み出されたスーパーコーディネイター』だからというのと、対するプロヴィデンスのパイロットが『クローンとして生まれ、望まれた能力を持たなかったが故に捨てられ、世界の全てを憎んだ者』だったからですね」

 

「…………………………そうか」

 

シミュレーターが終わった後、康太にミッションの詳細、というよりは康太の言葉の意味を訊ねた千冬、正直やり過ぎたかと思っていた康太は一撃くらい出席簿が叩き込まれる事を覚悟していたが、それに反して千冬は重苦しく一言だけ告げて済ませた

 

その後、当初の通り希望者のみミッションモードや対エース戦モードを体験し、他は通常通りの訓練に励む事となった

 

中にはプロヴィデンスに対エース戦モードで挑む者も居たが、康太と同じくフリーダムを使用しても勝てた者は他に居なかった

 

それは専用機持ち達も、自身の機体を使用して挑んだ時も同様であり、そのような敵が本当に出てこなくて良かったと、シミュレーターの後で苦笑いしていた

 

しかしこの時は誰もまだ知らなかったのだ、シミュレーター上の敵だと思っていた機体が、本当に存在するという事を




『知れば誰もが望むだろう!君の様になりたいと!君の様でありたいと!……故に許されない。君という存在も!』

ちっふーにクリティカルヒットなセリフ、割りと最後の方はこれを言いたかったが為に出したと言っても過言ではありません


リリアナの機体はリゼルになりました、義肢だから変形機構にも対応可能な為です。

リゼルは大気圏内での運用なので基本的にウイングユニット装備の一般機、ある程度は自動で機体側が変形時の姿勢制御を行ってくれます。

その飛行データの収集はコウタくんがシミュレーターでやってました、なお本人はリゼル(隊長機)を使用し、慣性ですっ飛びながら片足だけスラスター吹かして横方向に回転しながら周囲を囲む的を撃破するなど、変態飛行していた模様。


次回からは文化祭に入ります、色々ネタを仕込みたいところです。
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