ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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エイティシックスって面白いよね(毎週三回は見直してる原作既読者、ただの遅れた言い訳)

すみません、面白い作品とか見付けるとついつい寄り道してしまいました。

それと、最近やってたソシャゲのサービス終了と共に新しいソシャゲに手を出そうとしてるのですが……流行りにのってウマ娘(アニメ未視聴)をやるか、前々から興味のあったドルフロをやるか、迷ってます(また投降遅れるフラグ)


64話 学園祭2

時刻は十一時を過ぎようとしていた頃、初めこそ侵入を企てようとする者達の対応に追われていた康太であったが、それも時間と共に減っていき、今では自衛丸が三機で十分に対処可能となっていた

 

それ以外では大きなトラブルもなく、至って平穏な時間が流れている

 

そして昼も近いという事と、手軽に食べられるという利点もあり康太はトルコ出身の生徒が中心となって開いていたドネル・ケバブの屋台にいた

 

「うん、やっぱりヨーグルトソースの方が美味いな。砂漠の虎の言い分は正しかった訳か」

 

本場の味に近付けた為か香辛料の量が多めで味付けがされたそのケバブにヨーグルトソースのさっぱりとした酸味で中和した事で後味も良く幾らでも食べられそうであった

 

なお既にヨーグルトソースとチリソースの二つを食べ比べた後であり、今が三つ目のケバブであったりする

 

そしてその三つ目を頬張っている時のことだった

 

『こちら虚です。正門にて不審者を複数名確認。武器は見えませんが、懐に何かを隠しているのか挙動不審な動きをしています。別件の不審者への対処で現在、正門付近に警備部隊が不在となっています。可能な限り時間稼ぎをしますが、至急応援をお願いします』

 

正門にて受付と不審者の判別を行っていた布仏虚、彼女からの応援要請を聞いた康太は口に含んでいたケバブを直ぐに呑み込み応答する

 

「こちら紫藤、了解です。今から向かいます」

 

手短に答え、まだ残っていたケバブを口に押し込むと一緒に買っておいたコーヒーで流し込む

 

それから額に押し上げていたバイザーを下ろし、身に着けている強化服を起動、地面を蹴ると大きく跳躍し手近な建物の屋根に着地、そのまま屋根を伝い最短距離で正門の方へと向かうのだった

 

 

時間は少し遡る、正門にて受付を担当していた布仏虚は来場者の持つチケットを確認し、問題なければそのままゲートに設置された金属探知機などの設備にて危険物の持ち込みがないかをチェックしていた

 

そして今もまた、金属探知機に反応は無かったものの対象の動きに僅かな違和感を覚えた虚は警戒しつつ訊ねると、声を掛けられた男は素早く懐に手を伸ばし、取り出した物を虚に向ける前に腕を掴まれ、足を払われた事で受け身も取れずに地面に叩き付けられる

 

そのまま呻いている男を手錠で拘束し、近くで待機していた自衛丸に指示を出して運ばせる

 

虚は男が取り出した物、金属探知機に引っ掛からないポリカーボネート製であり殺傷力を高める為に研がれ、先端の鋭くなったナイフを拾い、それもまた自衛丸に渡して持ち場に戻る

 

なお念の為に二機一組で不審者を運ぶ自衛丸なのだが、なにも十手に提燈と、そこまで岡っ引きの装備で揃えなくてもと思う虚であった

 

ひとまず不審者の移送は自衛丸に任せ、虚は先程の男が持っていたチケットを調べる、埋め込まれたタグは正規のものであり、このチケットが本物である事を証明している、そしてチケットだが調べれば九州出身の生徒に割り当てられた物である事がわかるが、その生徒と先程の男との接点が見出だせず、学園内に来客として紛れている更識の配下に警戒するよう伝えておいた

 

なお出身地が遠方故に親族が来れない事で余ったチケットをオークションに出していた事が後程判明する、それを善からぬ事を企む輩が落札した為にこのような事になったのだが、まだ全てを把握出来ていない虚は一応警戒するようにしたのだ

 

そして引き続きゲートにて受け付けを行う虚、そんな中で数人が一塊になって行動しているのに気付いた

 

「うおぉ、此処が女の園、IS学園か……」

 

「ちょっと、キョロキョロしないでよ、お兄。不審者丸出しじゃん」

 

「け、けどよ、周り女の子しか居ないんだぜ?しかも皆レベル高いし……」

 

「そういうキモいこと言ってるからモテないんだよ、お兄は」

 

まず頭にバンダナを巻いた兄妹と思われる赤毛の男女

 

「良い、人が多いんだから絶対に逸れないこと。もしも迷子になったら直ぐに近くの人に助けを求めるの、分かった?」

 

「ほーい」

 

「はいなのです」

 

「分かったよ、奏お姉ちゃん」

 

そして小学生を三人引き連れた虚よりも少し歳下と思われる少女

 

「此処がセシリア様の通われる学園、楽しみです」

 

「ええ、たまにはこうして楽しむのもいいですね。ですが普段の授業とは違いますが、お嬢様がどのように過ごされているか、折角チケットを用意して頂いたのですからそれもしっかりと確認しなければいけませんよ」

 

「はい、姉様!」

 

そしてそして、最後に何故かコスプレのような物ではなく着慣れている様子でメイド服を着用している姉妹と、一塊になっているが繋がりが全く分からない者達の集まりであった

 

それだけの人数がチケットを入手するのは並大抵の事ではない、だが四人の少女とメイド姉妹に関しては虚も書類で見たことがある、ラビットフット社に関係のある者達という事で警戒対象から外す

 

残りの赤毛の兄妹に関しては不明だが、残りの者達と顔見知りだと思われる為に、警戒レベルは下げられた

 

そうして全員が受付に来たところでチケットを確認していく、四人の少女達とメイド姉妹に関しては康太とリナ、クロエにセシリアといったラビットフット社と関係のある面々と、生徒会権限で追加発行した分のチケットだと確認する、基本は駄目なのだが重要度の高さから特別に行ったのである、可能なら将来的にIS学園に、更に言えば生徒会に取り込みたいという打算もある

 

それで残りの赤毛の兄妹に関してであるが―――

 

「配布者は……あら、織斑一夏くんと織斑一秋くんね」

 

「え、えっと、知ってるんですか?」

 

「もう一人の男子の康太くんを含めて、この学園で彼等を知らない人は居ないでしょうね。はい、返すわね」

 

学園に通う双子の兄弟、その友人であれば兄妹揃ってチケットを持っていてもおかしくはないと判断した虚は赤毛の兄の方の質問に答えながらチケットを返す

 

「あ、あのっ!」

 

「何かしら?」

 

「い、いい天気ですね!?」

 

「そうね」

 

それから唐突に天気の話を振ってきた兄の方であるが、そのまま話が続く事なく会話終了、なにやら重い空気を漂わせて落ち込む姿を不思議そうに眺めつつ、虚は元の受付の業務に戻る

 

なおそんな兄の姿に妹の方は残念なものを見るような目を向け少し距離を取るのだった

 

そうして次にやって来る者達の受付を始める虚、そんな中でとある四人組の、恐らくは高校生と思われる男子に視線を向ける

 

髪を染め、耳にピアスやイヤリングといった装飾を施しお世辞にも柄が良いとは言えない姿をした四人組、虚は更識に仕える者として磨いてきた観察眼で不穏な気配を感じ取り、四人組が自分達の懐を気にする様子から何かを隠しているのを感じ取った事で素早く連絡を取る

 

「こちら虚です。正門にて不審者を複数名確認。武器は見えませんが、懐に何かを隠しているのか挙動不審な動きをしています。別件の不審者への対処で現在、正門付近に警備部隊が不在となっています。可能な限り時間稼ぎをしますが、至急応援をお願いします」

 

先程の不審者に対応してからまだ警備の自衛丸が戻って来ていない為、応援を求めた虚、そこに手短に返答が返って来る

 

『こちら紫藤、了解です。今から向かいます』

 

一人でもやれなくはないが、他の来客に被害が及ばない為に確実性を取る虚、後は康太の到着まで時間稼ぎをするだけである

 

そして、警戒対象となっている四人組が受付までやってくる

 

「失礼だけど、チケットを見せて貰ってもいいかしら?」

 

まずはチケットの確認から、十中八九持っているとは思えないが万が一という事もある為に必要な事だ

 

「は?ねーよ、んなもん」

 

とはいえ予想通りの反応、どちらにせよゲートを通す訳にはいかなくなった

 

「学園の警備の観点からチケットを持たない人は通せないの。申し訳ないけど、今日のところはお引き取り願えるかしら?」

 

「るせーな、良いから通せよ」

 

「規則は規則だから、そういう訳にはいかないのよ。もう一度言うわね。帰りなさい」

 

「チッ、とにるせーな、良いからどけっつってんだろ!!」

 

男の中の一人が実力行使に出ようとする、元より話が通じる相手ではないと思っていたが、今のやり取りで一般客は距離を取っている為に大丈夫と判断、仕掛けてくると同時に反撃に移ろうとした時だ

 

「おおおお前ら、そ、そういうのは良くないと思う!ぜ!?」

 

男たちと虚の間に先程の赤毛の兄が噛み噛みながらも咄嗟に割り込んで来たのだ

 

「ああっ!?何だテメェは!?」

 

「馬鹿、下がってなさい!?」

 

「お、女の子に対して暴力とか、い、いい、いけない事だろ!?」

 

「るせぇっ!関係ねえヤツは引っ込んでろ!!」

 

「ぶはぁっ!?」

 

しかし呆気無く左の頬に拳を打ち込まれ、後ろに吹き飛ばされて虚に受け止められる

 

急に割り込まれた為に虚も反応出来ず、殴られた兄の方を受け止めるのに精一杯だった

 

「お兄!?」

 

「このっ!」

 

それを見て妹の方が悲鳴を上げ、一人の少女が自身の保有していたISを起動しようとする

 

だが次の瞬間、学園側よりゲートの上を跳び越えて現れた人物により追撃でもう一度拳を放とうとした男は腕を掴まれ背負投げの要領で地面に叩きつけられる

 

「チッ、少し遅れたか。貴様ら、今大人しく投降するなら、余計な怪我はせずに済むぞ。が、抵抗するなら関節の一つや二つは覚悟しておけ」

 

その人物はそう言うと実際に今投げた男の掴んでいた腕を捻じり肩の骨を外す、途端に男の絶叫が響き、残りの男三人は思わず後退る

 

それだけ目の前の人物、康太から放たれる怒気は凄まじいものであった

 

「フゥー……フゥー……お前ら、コイツを殺れ!早くしろ!!」

 

まだ痛むのか関節を外された男が肩に手を当てつつ、息を荒げて残りの三人に指示を出す

 

言われた三人はそれぞれ懐に手を伸ばすとそこからバタフライナイフを取り出し、刃を露出させる

 

武器を握った事で多少は持ち直したのか笑みを浮かべる男達、だが康太はそれを冷めた眼で眺め、同じく懐からナイフを取り出す

 

鞘に収まった状態では刀身は短いながら柄が長く、刃が短めの脇差のような印象を受けるそのナイフ、だが鞘から引き抜かれた刀身は60センチ程の長さがあり、浅く反り返っているその姿は完全に日本刀でいう打刀と呼ばれるものであった

 

相手も武器を、それも自分達よりもリーチの長い刀を持つ姿を見て男たちは明らかに動揺する、その隙を見た康太は一気に踏み出すと刀を振るい、男たちの持つナイフの刀身だけを斬り飛ばす

 

あっという間に使い物にならなくなったナイフに驚く男たち、更に広がった大きな隙を逃さず距離を詰めた康太は刀の柄尻で一人目の顔を殴打し、続く二人目は刀を放した手で殴り飛ばし、三人目の側頭部に回し蹴りを叩き込む

 

康太は強化服を着ている為に全力ではない、それでも強烈な衝撃を受けた男たちはそのまま倒れ伏す

 

そうしてあっという間に三人の男たちを無力化した康太、残ったリーダー格の男に死線を向けると、残った男は目に見えて動揺する

 

「……」

 

「ま、待て、来るな。ほんの出来心だったんだ……やめてくれ、来るな、来るなぁぁぁぁぁ!?」

 

無言のまま歩いて男に近付く康太、男の方は先程外された関節の痛みを思い返したのか腰が抜け、地面に座り込みつつも必死に距離を取ろうとする

 

しかし直ぐに追い付かれ、肩を外された腕を康太に掴まれ、更に訪れるであろう痛みに恐怖で顔を歪める

 

「フンッ」

 

「い、ぎゃあぁぁぁッ!?」

 

そのまま康太は外れていた関節を元の位置に嵌め直した、とはいえ痛みが走った事に違いはなく、男は再び痛む肩を押さえながら地面に転がる

 

と、そこに先程の不審者を留置場に運んできた自衛丸が二機、走って戻ってきたところで、康太は男たちに手錠を掛けていくとその身柄を自衛丸に預け、自衛丸は元来た道を再び運んでいく

 

「ハァ、ISの撃墜から余計な事を考える馬鹿が出るとは思ってたが、本当に来るとはな……」

 

完全に場を鎮圧したのを確認した康太はため息を吐くと当事者達に向き直る

 

「遅れてすみません、虚先輩」

 

「いえ、来てくれて助かったわ。ありがとう」

 

「とはいえ、一般人に危害が加えられたのはオレが遅れたからです。そちらも、この度は大変ご迷惑をお掛けしました。後日改めて謝罪に向かわせて頂きます」

 

「えっ?はっ、いや、単に俺が割り込んだだけで……というより、紫藤康太、で良いんだよな?」

 

「そうですが、何か?」

 

「いや、いつも一夏と一秋が世話になってるって言ってたし、夏休みの時は蘭も世話になったみたいだったから、会ってみたいと思ってたんだ。俺は五反田弾、同い年だしタメ口で構わねえよ。呼び方も弾で良い」

 

「五反田……一夏達の友人で、蘭の兄っていう、あの。じゃあお言葉に甘えて。改めて、オレは紫藤康太、康太でいい。ラビットフット社のテストパイロットで、一夏とは同僚、一秋とはクラスメイトになる。妹さんにはオレの義妹達も世話になってるから、これからもよろしく頼む」

 

当事者の内、赤毛の兄、五反田弾は以前から友人である織斑兄弟に康太の事を聞いていた事と、この学園に於いて他の男子生徒は一人しか居ない事、夏休みに自身の妹も会った事があり、荷物持ち等を手伝ってくれた事などを聞いていた

 

その為に他人の気がしなかった事もあり、康太に対して友人のように話す事にしたのだ

 

そもそも同年代の相手に格式張った話し方をされるのがキツかったし、そもそも自分が咄嗟とはいえ割り込んだ事も原因であり、謝罪も必要ないと思っていた

 

「とはいえ、実際に殴られたわけだし念の為に治療を受けた方が良い。虚先輩、医務室に付き添いをお願い出来ますか?その間、受付の方はオレが担当しておきます」

 

「えっ、マジで!?」

 

「それは別に構わないのだけど、大丈夫かしら?」

 

「問題ありません。流石に銃を持った相手に馬鹿やるような人間はそうそう居ないでしょうから」

 

言いながら懐のホルスターより愛銃であるGSRを取り出し、マガジンを抜いて弾頭がゴム弾である事を確認した康太がマガジンを戻し初弾を装填、安全装置を掛けてから制服の上にホルスターを持ってきて外からも見えるような位置に銃を収める

 

その明らかに手慣れた様子に弾は引きつつも虚を医務室への付添としてくれた事に心の中で盛大に感謝しながらその場を去っていった

 

そうして残ったのは妹達やメイド姉妹の方であるが

 

「という訳で案内とか出来なくなったから自由に見て回ってくれ。警備上の理由で地図がないから、行きたいところは他の人に聞いてくれると助かる」

 

「あ、はい。それと康太さん、あれはお兄が自分からやった事なので気負わないで下さいね。謝罪も要りませんから、本当に」

 

「ああ、ありがとう。そうそう、一夏は今から二時間くらい後に執事としてシフト入ってるから、今から並べば丁度いいくらいじゃないかな?」

 

「分かりました、ありがとうございます康太さん!行こう、奏ちゃん!」

 

「え、ええ。それじゃあ兄さん、また」

 

赤毛の妹の方、五反田蘭は康太からの情報を得るとお礼を言って素早く学園の方に向かっていった、それに奏や年少組もついていく

 

「ところで康太様、お嬢様のシフト等はご存知でしょうか?」

 

「セシリアの方は逆に今から一時間後くらいに休憩に入るな。一緒に学園祭を見て回るには良い時間帯かもな」

 

「感謝致します。では私もこれで。行きますよ、エクシア!」

 

「はい、姉様!あの、康太様、失礼します!」

 

「おう、ごゆっくり」

 

そしてメイド姉妹、チェルシーとエクシアの二人も自分達の主であるセシリアの情報を聞いて同じように学園の中へと進んでいく

 

それらを見送った後、康太は受付の場所に向かうとそれまで遠巻きに様子見をしていた一般客の方に向き直り、口を開く

 

「では次の方どうぞー」

 

「お、お願いします……」

 

なお康太が男たちを鎮圧し、その後拳銃を右腰の辺りに装着したのを見ていた彼等は多少声に怯えを含ませながら自分達のチケットを提示していくのだった

 

 

その後、一時間程受付にて業務を担当していた康太、戻って来た虚と交代した後は再び学園内の警備を続けていたが、一時になったところで第三アリーナに居た

 

そこで行われるのはラビットフット社並びにデュノア社の新型MS発表会、世界初の民間用MSの発表に幾つかのマスメディアや主要先進国より招かれた警察や消防といった公共機関の代表が集まっている舞台だ

 

そんな第三アリーナのピットにて、発表されるシビリアンアストレイを装着した康太は自身の出番を待っている

 

『それではお見せするとしよう。民間用MS、シビリアンアストレイの姿を』

 

通信機越しに伝わるのはプレゼンターとしてアリーナにて来賓に向けた司会と説明を行うエイフマン教授の声、そしてお披露目の言葉と共に康太は機体を立ち上げ、ピットより飛び出す

 

ISのように素での飛行能力は持たないシビリアンアストレイ、デフォルトで装備されているのは背部のロケットブースターと足裏のスラスターのみであり、慣れない人間であればピットから飛び出したところで着地するのは難しい

 

しかし康太は自身の技量のみで着地に合わせブースターを吹かし着地の衝撃を緩和すると、地面に足を着け、一拍置いてから地上を疾走する

 

全身を金属に覆われながら、その重さを微塵も感じさせない軽快さで進み、途中で設置されている障害物を時にスラスターにて飛び越えながら観客の前に辿り着く

 

その機動性には観客からも感嘆の声が上がる、訓練が必要になるだろうが、生身以上の走破性を見せたのは一定以上の評価があった

 

『機動性に関しては今御覧頂けたように、使いこなせれば生身の人間よりも速く、軽快に動く事が出来る。そしてパワーの方では、カタログスペック上は最大にして二百キロまで運搬可能だ』

 

次に用意されたのはそれぞれ百キロや百五十キロと表示された金属製の重りだ、この辺りはエイフマン教授の護衛兼補佐として控えていたクロエがISを展開して運んでいた

 

百キロの重りは割りと軽々と、百五十キロの方は少し慎重に持ち上げて見せた康太、カタログスペックでの二百キロの重りも用意されていたが、この辺りが安全に持ち上げられる限界という事で関節部に余計な負荷が掛からないようより慎重に持ち上げる

 

『このパワーを活かし、人間では運用の困難な装備の使用も可能となる。例えば、命中精度を追求した狙撃用ライフル、または防御力を重視したシールド等だな』

 

エイフマン教授の言葉に応じて次にクロエが用意したコンテナの中には大型のライフルが入っており、アリーナの端に設置されていた的に向けて康太が構える

 

直立して構えながら一切ブレる事のない照準、機械であるが故に手ブレを補正して狙いが定まらない事はなく、試しに発砲しても反動で銃口が跳ねる事もなく完全に抑え込んでいた

 

実際、撃たれた的の方は描かれているターゲットの持つ銃器に立て続けに命中しており、更に狙ってから撃つまでの速度も精度も高い

 

続けて紹介された大盾を装備すれば、生身で持ち上げるのは不可能と思える程の重量があり、厚さもそれなりのものだ

 

これを片手で構える康太、対してクロエが軍用のアサルトライフルを取り出し、躊躇いもなくフルオートにて引き金を引く

 

立て続けに放たれる小銃弾、しかし甲高い音を立てながらも盾が貫通される事はなく、弾切れになると同時に新たに構えられる対物ライフルに対しては両手で盾を構えるが、先程のように撃たれても耐え切ってみせる

 

これらのパフォーマンスは警察向けのものであるが、特に反応が良かったのはアメリカの警察からの代表者だった

 

銃犯罪が多発し、民間で売られているライフルはセミオートのみにしてあるにも関わらずフルオートに改造される事もあるアメリカ、しかし今のパフォーマンスで民間人でも手に入れられる可能性のある対物ライフルにも耐え切った姿と、武器のみを狙撃し無力化した精度は十分に魅力的なものであった

 

『続いて、シビリアンアストレイには専用規格によるバックパックが用意されている。まず初めにお見せするのは、フライトユニットである『シュライク』だ』

 

そうして基本的な能力をある程度披露していった次は拡張機能による用途の多様化である

 

まず基本となるバックパックが下方に下がり、顕になったコネクターにクロエが持ってきたフライトユニットが装備される

 

それはM1アストレイが装備していたシュライクであり、大型のローター二基によりヘリコプターのような飛行能力を与えるものである

 

『この装備により、基本的には地上にて運用されるシビリアンアストレイは空という新たなステージを得る事が出来る。その用途は様々であり、警察機関であれば犯罪者の追跡、消防機関であれば災害現場への急行などが考えられる。その為、オプションとして様々な追加装備を装備する事も可能となる。詳しくはお手元の資料、その三十八ページより先を御覧頂きたい』

 

言われて、この発表会の初めに配られた資料を来賓達は目を通していく、そこにはシュライクと同時運用可能な装備の数々があり、それぞれ自分達の役割に合った装備を見付けては真剣に読み込んでいく

 

例えば、ガンカメラと呼ばれる手持ち式の複合センサーがあった

 

アストレイアウトフレームの物と外見が同じそれは、カメラの名の通り撮影を行えるだけでなく、望遠機能にサーモグラフィ、暗視機能といった機能を備えており、現在はヘリコプターを利用して行っている様々な事を、これ一つで賄える能力を持っていたからだ

 

その分、値段もそれなりの価格となっているが、ヘリと装備一式よりもMS一機とシュライク、ガンカメラの方が安くつく計算となっている

 

山岳救助など、長時間の捜索が予想される任務などには追加のバッテリーを装着する事で稼働時間を延ばす物もあり、更にはそれだけの装備を一人で運用可能という事もあり、同時に複数の場所での捜索活動など使用用途が膨らむ可用性を感じさせる

 

中には医療用の設備を運び、現場でテントを展開し臨時の診療所とする事も可能なホスピタルパックと呼ばれる物もあり、災害の多い日本の消防機関からは既に配備に前向きな姿勢を見せていた

 

そんな可能性の塊とも言えるシビリアンアストレイ、後日資料がそれぞれ本国に持ち帰られ、試験運用として一部に導入され、その有用性が評価された事で生産を請け負っているデュノア社に発注が行われる事となる

 

そして何処かで有用性が判明すれば招待されなかった国も揃って導入しようとし、注文が殺到した事で急遽生産ラインを増設する事になるデュノア社、過去最高の純利益を叩き出し翌年以降も生産が途絶えない状況になり、社長であるアルベール・デュノアは喜びはしたが、過労で倒れかけたのは余談である

 

なお、日本を含め一部の国の警察機関では素のシビリアンアストレイではなく、その日IS学園に展開していた無人機の自衛丸を気に入り、その有人型として導入する事になる

 

また、その日本に於ける導入を主導していた者達が密かに『特車二課』などと言う部署を新設しようと画策し、本当に実現してちょっとした話題になるのは、もう少し先の事である




唐突な機体解説、デュノア社MS編2

シビリアンアストレイ……本編でも過去に名前が出てきた、ラビットフット社設計、デュノア社生産の民間用MS。

軍用と違いパワーは抑えてある為にバッテリーに余裕がある為に稼働時間が長くなっている。

各公共機関に向けたカスタマイズを可能としており、その幅広い用途から世界中から注文が殺到する事になった結果、過去最高の黒字と引き換えに社長以下デュノア社の者達を多少の差はあれど過労死寸前に追い込む事になる。

本編で使用したライフルは独自設計により、銃本体の重さと引き換えに精度に優れ、7.92x57ミリモーゼル弾を使用する対人用の狙撃ライフル、外見はジム・スナイパーⅡの75ミリスナイパーライフルをセミオート化した物である(そもそも設定では7.92ミリ弾を使用するKar98kを元に開発されている繋がりで)

シールドはジム・ガードカスタムの物をモデルに、マシンガンを取り払っている、本編通り防御力を重視しており、歩兵用の自動小銃どころか対物ライフルも防げる。

ガンカメラはアストレイアウトフレームの物と同様の外見、センサー系が弱い本体の外付け用のセンサーとして活用し、得た情報は頭部内のモニターを通じパイロットに表示される。

飛行能力を持たせるシュライクが登場したが、他には海難救助用に水中用の装備等も用意されており、優秀な基本設計により場所を選ばない運用が可能、だからデュノア社が過労死しかけるんだよ。

ホスピタルパックは医療機器や医薬品、テントと設備用の予備バッテリーを搭載したシュライク、現地への道が寸断されても空路にて単身で現場に向かう事が可能となる。その為、一部の医者にMSパイロットとしての訓練を施し、有事の際に即座に展開出来るようにする試みが成されている。


また、アストレイがガンダムタイプの頭という事もありヒロイックな外見から一般からの人気は高い、とはいえ中には一部の者達の拘りによりジェガンタイプの外見をした機体も居るらしい。
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